説明

加圧水型原子炉

【課題】加圧水型原子炉の原子炉圧力容器内のダウンカマ部での冷却材の流れによる励振力を低減させ、炉内構造物に生じる流体励起振動を抑制する。
【解決手段】加圧水型原子炉は、原子炉圧力容器1と、原子炉圧力容器1の内側面との間で環状流路部9を形成するコアバレル2と、原子炉圧力容器1側面に形成された複数個の冷却材出口ノズル5a、bおよび複数個の冷却材入口ノズル4a〜4dと、環状流路部9に設置され冷却材入口ノズル4a〜4dから流入した冷却材の、環状流路部9の下部における流速分布を均一化させる流動抵抗板21とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、加圧水型原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な発電用の加圧水型原子炉の原子炉圧力容器においては、炉心に導かれた1次冷却材が、炉心に設置された燃料集合体から発生される熱エネルギーによって加熱されて、蒸気発生器へと導かれる。
【0003】
冷却材は、ここで熱交換され、蒸気となって、発電用タービンを駆動させる。
【0004】
原子炉圧力容器内にコアバレルが支持されており、このコアバレル内に炉心を構成する燃料集合体が設置され、この燃料集合体の周囲はコアシュラウドで覆われている。
【0005】
特許文献1で説明されているように、燃料集合体は、下部炉心支持板によって下部を、上部炉心支持板によって上部を定位置に支持されている。
【0006】
1次冷却材は、複数設置された冷却材入口ノズルから流入して、原子炉圧力容器とコアバレルとの間で形成される環状流路部、すなわちダウンカマ部を下降する。
【0007】
ダウンカマ部を下降した1次冷却材は、燃料集合体の下部に形成される下部プレナムで合流して流れ方向を上向きに反転する。
【0008】
続けて、下部炉心支持板を通過して、炉心を構成する燃料集合体を取り囲むコアシュラウド内を上昇する。
【0009】
燃料集合体を通過時に加熱された冷却材は、上部に複数設置された冷却材出口ノズルから流出して、蒸気発生器へと導かれる。
【0010】
加圧水型原子炉において、通常運転時には、1次冷却材の流動が高圧かつ高速になるため、冷却材入口ノズルからダウンカマ部へと流入する冷却材は、時間的にも空間的にも大きく乱れた乱流となる。この流れの大きな変動は、流れが連通しているコアシュラウド内を流れる冷却材の流量分布に影響を及ぼし、燃料集合体の温度分布を不安定にする。
【0011】
この結果、原子炉の出力が不安定となる問題を生じさせる。したがって、ダウンカマ部を流れる冷却材には均等な流量分布を与えることが好ましい。
【0012】
例えば、特許文献2にあるように、ダウンカマ部を流れる1次冷却材に均等な流量分布を与えるため、冷却材入口ノズル同士の間を通って鉛直方向に延びる仕切り板を、コアバレルに設ける構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭62−266492号公報
【特許文献2】特開平10−111379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ダウンカマ部を流れる1次冷却材の流れの大きな変動は、原子炉の炉内構造物、中でもコアバレルに振動を発生させる励振力となる。
【0015】
コアバレル内には炉心を形成する燃料集合体を内蔵しており、長期の使用において、原子炉設備の信頼性や安全性を一層高めるには、コアバレルの振動を低減または抑制させる必要がある。
【0016】
そこで、本発明は、加圧水型原子炉の原子炉圧力容器内のダウンカマ部での冷却材の流れによる励振力を低減させ、炉内構造物に生じる流体励起振動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した目的を達成するため、本発明の実施形態に係る加圧水型原子炉は、鉛直方向を軸とする円筒状の原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器内に設けられて該原子炉圧力容器の内側面との間で環状流路部を形成する筒状のコアバレルと、前記原子炉圧力容器の側壁に互いに間隔をあけて水平に並んで形成され、炉心上部と直接に接続する複数個の冷却材出口ノズルと、前記原子炉圧力容器の側壁に互いに間隔をあけて水平に並んで形成された複数個の冷却材入口ノズルと、前記環状流路部内の、周方向の位置は前記各冷却材入口ノズルの出口間であって、前記冷却材入口ノズル下端よりも高くない高さに、水平方向に広がるように設けられ、前記冷却材入口ノズルから流入した冷却材の前記環状流路部の下部における流れを均一化させ炉内構造物に生じる流体励起振動を抑制する流動抵抗板と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施形態によれば、加圧水型原子炉の原子炉圧力容器内のダウンカマ部での冷却材の流れによる励振力を低減させ、炉内構造物に生じる流体励起振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る加圧水型原子炉の第1の実施形態の構成を示す立断面図である。
【図2】本発明に係る加圧水型原子炉の第1の実施形態の構成を示した図1のII−II線矢視水平断面図である。
【図3】本発明に係る加圧水型原子炉の第2の実施形態の構成を示す水平断面図である。
【図4】本発明に係る加圧水型原子炉の第2の実施形態の水平板型振動抑制部の構成を示す図3のIV−IV線矢視立断面図である。
【図5】本発明に係る加圧水型原子炉の第3の実施形態の構成を示す水平断面図である。
【図6】本発明に係る加圧水型原子炉の第4の実施形態の構成を示す立断面図である。
【図7】本発明に係る加圧水型原子炉の第4の実施形態の構成を示す図6のVII−VII線矢視水平断面図である。
【図8】本発明に係る加圧水型原子炉の第5の実施形態の構成を示す図6のVIII−VIII線矢視水平断面図である。
【図9】本発明に係る加圧水型原子炉の第6の実施形態の構成を示す水平断面図である。
【図10】本発明に係る加圧水型原子炉の第6の実施形態のヘッダ管近傍の図9のX−X線矢視立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明に係る加圧水型原子炉の実施形態について説明する。ここで、同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0021】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る加圧水型原子炉の第1の実施形態の構成を示す立断面図である。
【0022】
また、図2は、本発明に係る加圧水型原子炉の第1の実施形態の構成を示した図1のII−II線矢視水平断面図である。
【0023】
本実施形態による加圧水型原子炉は、たとえば発電用であって、鉛直方向を軸とする円筒状の原子炉圧力容器1、原子炉圧力容器1に設けられた冷却材入口ノズル4、冷却材出口ノズル5および原子炉圧力容器1内の構造物を備える。
【0024】
前記の冷却材入口ノズル4、冷却材出口ノズル5は、原子炉圧力容器の側壁に互いに間隔をあけて水平に並んで形成されている。
【0025】
冷却材入口ノズル4は、原子炉圧力容器1の周方向に等間隔、すなわち中心角90°ごとに4か所設置されている。これら冷却材入口ノズル4は、周方向に第1から第4の冷却材入口ノズル4a、4b、4c、4dの順に並んでいる。
【0026】
冷却材出口ノズル5は、第1の冷却材出口ノズル5aが、隣接する第1の冷却材入口ノズル4aと第4の冷却材入口ノズル4d間の中央に、また第2の冷却材出口ノズル5bが原子炉圧力容器1の中心を挟んでその反対側すなわち第2の冷却材入口ノズル4bと第3の冷却材入口ノズル4c間の中央にと計2か所設置されている。
【0027】
原子炉圧力容器1内には、燃料集合体3a、燃料集合体3a他で構成される炉心3、炉心3の周囲に設置された筒状のコアバレル2、上部炉心支持板6、下部炉心支持板7、フロースカート8が設置され、原子炉圧力容器1は、原子炉圧力容器下部鏡10を有する。
【0028】
コアバレル2の外側面と原子炉圧力容器1の内側面との間でダウンカマ部9を形成する。
【0029】
冷却材出口ノズル5と炉心3上部とは、原子炉圧力容器1の半径方向に延びる出口ノズル連結部12によって連結され、炉心3を出た高温の冷却材111が冷却材入口ノズル4から流入した低温の冷却材111と混合せずに冷却材出口ノズル5から外部に導出されるようになっている。
【0030】
また、原子炉出力の制御および緊急時の原子炉での反応の停止のために、炉心3の上部から、制御棒を挿入するための制御棒駆動機構11が設置されている。
【0031】
本実施形態ではさらに、環状流路部に設置され、冷却材入口ノズル4から流入した冷却材111のダウンカマ部9の下部における流れの均一化のために流動抵抗板21が設置されている。
【0032】
流動抵抗板21は、ダウンカマ部9の周方向に水平に広がる扇状であって、冷却材入口ノズル4の間で、冷却材入口ノズル4の下端の高さより高くない位置、すなわち下端の高さと同じ高さかそれよりも低い高さで、コアバレル2壁面側に設置されている。
【0033】
冷却材111は、原子炉圧力容器1の外部の配管(図示せず。)から冷却材入口ノズル4を経由して原子炉圧力容器1の内部に流入する。原子炉圧力容器1内に流入した冷却材111は、ダウンカマ部9を下方向に流れ、原子炉圧力容器下部鏡10上に設置されたフロースカート8を通り、流れの向きを上方向に変えて、下部炉心支持板7を経由して炉心3に流入する。
【0034】
炉心3で生じた熱により温度が上昇した冷却材111は、炉心3から上部に流出し、冷却材入口ノズル4と同一レベルに設置された冷却材出口ノズル5を経由して、原子炉圧力容器1の外部の配管(図示せず。)に流出する。
【0035】
冷却材入口ノズル4から流入した冷却材111は、まず、正面のコアバレル2の壁面に衝突し、上下左右に拡がる。ここで、左右の方向は、出口ノズル連結部12によって妨げられるので隣り合う冷却材入口ノズル4から流入する冷却材111同士が衝突し合いながらダウンカマ部9を下降することになる。
【0036】
このため、冷却材入口ノズル4の直下および冷却材出口ノズル5の真下に比べて、互いに隣接する冷却材入口ノズル4間であって出口ノズル連結部12が存在しない領域、すなわち第1の冷却材入口ノズル4aと第4の冷却材入口ノズル4d間、第2の冷却材入口ノズル4bと第3の冷却材入口ノズル4c間の下方位置における流れが相対的に速く圧力変動も大きい、不均一な流れ場となっている。
【0037】
しかしながら、そのように流れが相対的に速く、また圧力変動の大きい部位に流動抵抗板21が設置されているので、当部位の流れが妨げられ、流動抵抗板21の周囲の流れの量が抑制される。
【0038】
この部分に付加された流路抵抗と、出口ノズル連結部12によって妨げられる流路抵抗とがバランスするような流動抵抗板21を設置することにより、ダウンカマ部9下部での流れが均一化される。
【0039】
本実施形態によれば、隣接する冷却材入口ノズル4間の環状流路に冷却材入口ノズル4下端レベル以下の高さでコアバレル2壁面に流動抵抗板21を設置することにより、ダウンカマ部9の流れが均一化される。
【0040】
これにより圧力変動が抑制され、ダウンカマ部9への冷却材の流れによる励振力が低減し、炉内構造物に生じる流体励起振動を抑制することができる。
【0041】
[第2の実施形態]
図3は、本発明に係る加圧水型原子炉の第2の実施形態の構成を示す水平断面図である。
【0042】
また、図4は、本発明に係る加圧水型原子炉の第2の実施形態の水平板型振動抑制部の構成を示す図3のIV−IV線矢視立断面図である。
【0043】
本実施形態では、下降流抑制のための流動抵抗板21および渦流抑制板22を備えている。流動抵抗板21については、第1の実施形態と同様に、ダウンカマ部9の周方向に広がる扇状であって、冷却材入口ノズル4の間で、冷却材入口ノズル4の下端の高さより高くない位置、すなわち下端の高さと同じ高さかそれよりも低い高さで、コアバレル2壁面側に設置されている。
【0044】
渦流抑制板22は、流動抵抗板21の下部に取り付けられ、鉛直方向および原子炉圧力容器の半径方向に広がっている。
【0045】
第1の実施形態でも述べたように、冷却材入口ノズル4から流入した冷却材111は、隣接する他の冷却材入口ノズル4からの冷却材111と衝突し合いながらダウンカマ部9を下降していく。また、左右の方向は、出口ノズル連結部12によって抑制される。
【0046】
このため、冷却材入口ノズル4の直下および冷却材出口ノズル5の真下に比べて冷却材入口ノズル4間、すなわち第1の冷却材入口ノズル4aと第4の冷却材入口ノズル4d間、第2の冷却材入口ノズル4bと第3の冷却材入口ノズル4c間の下方位置における流れが相対的に速く圧力変動も大きい、不均一な流れ場となっている。
【0047】
しかしながら、そのように流れが相対的に速く、また圧力変動の大きい部位に流動抵抗板21が設置されているので、当部位の流れが妨げられ、流動抵抗板21の周囲の流れの量が抑制される。
【0048】
第1の実施形態と同様に、出口ノズル連結部12によって妨げられる流路抵抗とがバランスするような流動抵抗板21を設置することにより、ダウンカマ部9下部の流れが均一化される。
【0049】
一方、流動抵抗板21を通過した流れは、端部で流れが剥離し周期的な渦が発生することが考えられる。
【0050】
そこで、本実施形態では、さらに、渦流抑制板22を設置することにより、このような下流側の渦発生が抑制される。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、流動抵抗板21の下部にさらに渦流抑制板22を設置することにより、ダウンカマ部9の流れがさらに均一化される。
【0052】
[第3の実施形態]
図5は、本発明に係る加圧水型原子炉の第3の実施形態の構成を示す水平断面図である。
【0053】
本実施例は、第1の実施形態における流動抵抗板21に鉛直方向に孔をあけた多孔流動抵抗板31を有するものである。
【0054】
第1および第2の実施形態でも述べたように、冷却材入口ノズル4から流入した冷却材111は、隣接する他の冷却材入口ノズル4からの冷却材111と衝突し合いながらダウンカマ部9を下降していく。また、左右の方向は、出口ノズル連結部12によって抑制される。
【0055】
このため、冷却材入口ノズル4の直下および冷却材出口ノズル5の真下に比べて冷却材入口ノズル4間、すなわち第1の冷却材入口ノズル4aと第4の冷却材入口ノズル4d間、第2の冷却材入口ノズル4bと第3の冷却材入口ノズル4c間の下方位置における流れが相対的に速く圧力変動も大きい、不均一な流れ場となっている。
【0056】
しかしながら、そのように流れが相対的に速く、また圧力変動の大きい部位に多孔流動抵抗板31が設置されているので、第1および第2の実施形態と同様に、当部位の流れが妨げられ、多孔流動抵抗板31の周囲の流れの量が抑制される。
【0057】
また、第1の実施形態において流動抵抗板21を設置する場合に比較して、本実施形態での多孔流動抵抗板31の場合は孔が設けられていることで、より流れがスムーズとなり、ダウンカマ部9下部の流れがさらに均一化される。
【0058】
本実施形態においても、ダウンカマ部9の流れが均一化されることで圧力変動が抑制され、ダウンカマ部9への冷却材111の流れによる励振力が低減し、炉内構造物に生じる流体励起振動を抑制することができる。
【0059】
また、多孔流動抵抗板31に加えてさらに第2の実施形態と同様の渦流抑制板22を備えていれば、このような下流側の渦発生は、さらに抑制される。
【0060】
[第4の実施形態]
図6は、本発明に係る加圧水型原子炉の第4の実施形態の構成を示す立断面図である。
【0061】
また、図7は、本発明に係る加圧水型原子炉の第4の実施形態の構成を示す図6のVII−VII線矢視水平断面図である。
【0062】
本実施形態では、第2の実施形態において、流動抵抗板21および渦流抑制板22が、コアバレル2の外側壁面に固定されていたものが、本実施形態では、原子炉圧力容器1の内側壁面に固定されている。
【0063】
このように構成された本実施の形態において、冷却材入口ノズル4の出口では流れが下向きになり、その後に周方向に広がるように、流動抵抗板21が原子炉圧力容器1内壁に設置されている。
【0064】
この場合も、コアバレル2に固定されている場合と同様に、ダウンカマ部9の流れは下方に促され、隣り合う冷却材入口ノズル4からの衝突流れが抑制される。
【0065】
本実施形態においても、冷却材入口ノズル4の出口の原子炉圧力容器1内壁に流動抵抗板21および渦流抑制板22を設置することにより、冷却材入口ノズル4間の衝突流れが低減し圧力変動が抑制され、ダウンカマ部9への冷却材111の流れによる励振力が低減し、炉内構造物に生じる流体励起振動を抑制することができる。
【0066】
[第5の実施形態]
図8は、本発明に係る加圧水型原子炉の第5の実施形態の構成を示す図6のVIII−VIII線矢視水平断面図である。
【0067】
この場合も同様に、第3の実施形態において、多孔流動抵抗板31が、コアバレル2の外側壁面に固定されていたものが、本実施形態では、原子炉圧力容器1の内側壁面に固定されている。
【0068】
本実施形態においても、第1の冷却材入口ノズル4aと第4の冷却材入口ノズル4d間、第2の冷却材入口ノズル4bと第3の冷却材入口ノズル4c間の下方位置における流れが相対的に速く圧力変動も大きく不均一な流れ場となっている部分に、多孔流動抵抗板31を設置していることから、その孔の効果により、これが緩和され、より流れがスムーズとなり、ダウンカマ部9下部の流れが均一化される。
【0069】
本実施形態においても、ダウンカマ部9の流れが均一化されることで圧力変動が抑制され、ダウンカマ部9への冷却材111の流れによる励振力が低減し、炉内構造物に生じる流体励起振動を抑制することができる。
【0070】
なお、多孔流動抵抗板31により当部位の下降流速が低下し、もともと流速の遅い領域へ流れが生じ分散・均一化されたのちに、多孔流動抵抗板31の場合であっても、端部で流れが剥離し周期的な渦の発生が予想され得る。
【0071】
この場合は、多孔流動抵抗板31に加えてさらに第2の実施形態と同様の渦流抑制板22を備えていれば、このような下流側の渦発生は、さらに抑制される。
【0072】
以上のように、本実施形態においても、冷却材入口ノズル4の出口の原子炉圧力容器1内壁に多孔流動抵抗板31を設置することにより、冷却材入口ノズル4間の衝突流れが低減し圧力変動が抑制され、ダウンカマ部9への冷却材111の流れによる励振力が低減し、炉内構造物に生じる流体励起振動を抑制することができる。
【0073】
[第6の実施形態]
図9は、本発明に係る加圧水型原子炉の第6の実施形態の構成を示す水平断面図である。
【0074】
また、図10は、本実施形態のヘッダ管近傍の図9のX−X線矢視立断面図である。
【0075】
本実施形態においては、冷却材入口ノズル4の出口に、ヘッダ管41が接続されている。
【0076】
ヘッダ管41は、それぞれの冷却材入口ノズル4の出口のダウンカマ部9において、部分的に周方向に環状に配置される。
【0077】
ヘッダ管には、複数の下向き開口42が設けられている。
【0078】
本実施形態においては、冷却材入口ノズル4からの冷却材211は下向き開口42を有するヘッダ管41に流れこみ、さらに下向き開口42からダウンカマ部9へ流れ込み、流れは下方に促され、隣り合う冷却材入口ノズル4からの衝突流れが抑制される。
【0079】
本実施形態によれば、冷却材入口ノズル4に下向き開口42を有するヘッダ管41を設置することにより、ダウンカマ部9への流入当初からそれぞれの下向き開口42で下向き流れを生ずることから、冷却材入口ノズル4間の衝突流れが低減し圧力変動が抑制され、ダウンカマ部9への冷却材111の流れによる励振力が低減し、炉内構造物に生じる流体励起振動を抑制することができる。
【0080】
[その他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0081】
また、たとえば、第3の実施形態の特徴と第1または第2の実施形態の特徴の両者を有する形態等、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。また、第4の実施形態で、渦流抑制板22がない形態、第5の実施形態で、渦流抑制板22が設置された形態でもよい。
【0082】
また、前記の各実施形態では、出口ノズル連結部12が存在しない領域に流動抵抗板21等を設置しているが、全ての冷却材入口ノズル4間に出口ノズル連結部12が存在する場合であっても、冷却材入口ノズル4出口の環状流路で、流れの大きな部分に設置してもよい。
【0083】
さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0084】
これら実施形態やその変形には、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0085】
1・・・原子炉圧力容器
2・・・コアバレル
3・・・炉心
3a・・・燃料集合体
4・・・冷却材入口ノズル
4a〜4d・・・第1〜第4の冷却材入口ノズル
5・・・冷却材出口ノズル
5a、5b・・・第1、第2の冷却材出口ノズル
6・・・上部炉心支持板
7・・・下部炉心支持板
8・・・フロースカート
9・・・ダウンカマ部(環状流路部)
10・・・原子炉圧力容器下部鏡
11・・・制御棒駆動機構
12・・・出口ノズル連結部
111、211・・・冷却材
21・・・流動抵抗板
22・・・渦流抑制板
31・・・多孔流動抵抗板
41・・・ヘッダ管
42・・・下向き開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向を軸とする円筒状の原子炉圧力容器と、
前記原子炉圧力容器内に設けられて該原子炉圧力容器の内側面との間で環状流路部を形成する筒状のコアバレルと、
前記原子炉圧力容器の側壁に互いに間隔をあけて水平に並んで形成され、炉心上部と直接に接続する複数個の冷却材出口ノズルと、
前記原子炉圧力容器の側壁に互いに間隔をあけて水平に並んで形成された複数個の冷却材入口ノズルと、
前記環状流路部内の、周方向の位置は前記各冷却材入口ノズルの出口間であって、前記冷却材入口ノズル下端よりも高くない高さに、水平方向に広がるように設けられ、前記冷却材入口ノズルから流入した冷却材の前記環状流路部の下部における流れを均一化させ炉内構造物に生じる流体励起振動を抑制する流動抵抗板と、
を具備することを特徴とする加圧水型原子炉。
【請求項2】
前記流動抵抗板の下部に鉛直方向および原子炉圧力容器の半径方向に広がる渦流抑制板を、
さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の加圧水型原子炉。
【請求項3】
前記流動抵抗板は、
鉛直方向に貫通する流通孔が形成されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加圧水型原子炉。
【請求項4】
前記流動抵抗板は、前記コアバレルに取り付け支持されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の加圧水型原子炉。
【請求項5】
前記流動抵抗板は、前記原子炉圧力容器に取り付け支持されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の加圧水型原子炉。
【請求項6】
前記冷却材入口ノズルに接続されて、前記環状流路部の周方向に延び、複数の下向き開口を有するヘッダ管、
をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の加圧水型原子炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−44646(P2013−44646A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182681(P2011−182681)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)