説明

加圧装置及び抽出機

【課題】多数の抽出カートリッジに加圧処理を施すことができる加圧装置を提供する。
【解決手段】搬送機構21を、テーブル29と、テーブル支持板30と、テーブル用モータとから構成する。テーブル29は、4本の支持柱31を有し、テーブル用モータの駆動力が伝達されるとテーブル支持板30と共に前後方向に移動する。4本の支持柱31にはカートリッジホルダが載置される。このカートリッジホルダは抽出カートリッジを複数列に並べて保持する。抽出カートリッジの各列が順にエアノズル41の直下に移動するようにテーブル29が移動し、抽出カートリッジの各列に加圧処理が施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定物質を含む液が注入されたフィルタ部材を有するカートリッジ内を加圧して、液をフィルタ部材に通し、特定物質をフィルタ部材に吸着させる加圧装置及びこの加圧装置を有する抽出機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の抽出機、例えば核酸を抽出する核酸抽出機としては、磁気ビーズを用いたもの、フィルタを用いたものなどが知られている。フィルタを用いた抽出機は、磁気ビーズを用いた抽出機に比べて、高純度、高収量で核酸を抽出することができるという利点を有している。
【0003】
フィルタを用いた抽出機は、核酸を含む試料液を分注してフィルタを通過させて核酸をフィルタに吸着させた後、回収液を分注してフィルタを通過させることで核酸とフィルタとを分離し、回収液とともに核酸を抽出するものである。フィルタを用いた抽出機としては、遠心機を用いる方式、減圧を利用する方式、加圧を利用する方式などが知られている。
【0004】
遠心機を用いる方式の抽出機は、各液を分注してフィルタを通過させる際に遠心機を用いるものである(例えば、特許文献1参照)。しかし、遠心機を用いた場合には、装置が大型化するとともに、操作が複雑になるという問題が生じる。また、全自動化が難しく、操作の一部を手動に頼らなければならないという問題が生じる。
【0005】
減圧を利用する方式の抽出機は、各液を分注してフィルタを通過させる際に減圧を利用するものである(例えば、特許文献2参照)。しかし、減圧を利用する場合には、最大でも1気圧の圧力をかけられるだけであり、抽出処理に非常に時間を要するという問題が生じる。
【0006】
本出願人は、加圧を利用する抽出機を提案している。この抽出機は、各液を分注してフィルタを通過させる際に加圧を利用するものである(例えば、特許文献3、4参照)。加圧を利用する場合には、任意の大きさの圧力をかけることができるため、抽出処理を短時間で済ませることができる。本出願人は、また、フィルタとして多孔質メンブレンフィルタを用いることを提案している(例えば、特許文献3、4参照)。この多孔質メンブレンフィルタは、従来から用いられているガラス繊維フィルタと比べて極めて薄く形成されており、高い核酸吸着性と容易な脱着性を有している。多孔質メンブレンフィルタを用いるとともに加圧を利用する抽出機により、より短時間、高純度、高収量で核酸を抽出することが可能となる。
【0007】
特許文献4に記載された抽出機は、8本の抽出カートリッジを一列に並べて保持するカートリッジホルダと、抽出カートリッジの下方において廃液容器及び回収容器を前後方向に並べて保持するとともに、前後方向に移動可能な容器ホルダとを備えている。抽出動作は以下の手順で行われる。まず、一列の抽出カートリッジに試料液を注入する試料液注入動作が行われる。次に、抽出カートリッジの直下に廃液容器を移動させ、試料液を加圧してフィルタ部材に核酸を吸着させる核酸吸着動作が行われる。洗浄動作などが行われた後、抽出カートリッジの直下に回収容器を移動させ、回収液を加圧して回収液とともに核酸を回収する核酸回収動作が行われる。
【特許文献1】特開2003−144150号公報
【特許文献2】特許第2832586号公報
【特許文献3】特開2003−128691号公報
【特許文献4】特願2004−232091号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4に記載された抽出機では、一連の抽出動作をまとめて行うことができるのは、抽出カートリッジ一列分に対応する8試料のみであった。そのため、多数の試料に処理を施したい場合には、一連の抽出動作を8試料ずつ繰り返さなければならなかったため、効率が悪く、作業に長時間を要していた。
【0009】
本発明では、多数の試料を短時間で処理することができる抽出機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特定物質を含む液が注入されたフィルタ部材を有するカートリッジ内を加圧して、前記特定物質を前記フィルタ部材に吸着させる加圧装置において、前記カートリッジを第1方向に少なくとも1列に並べてカートリッジ列を構成し、このカートリッジ列を前記第1方向に直交する第2方向に複数並べ前記カートリッジをマトリクス状に保持するカートリッジホルダと、前記カートリッジ列に対して少なくとも1列ずつ加圧する加圧手段と、前記加圧手段により各カートリッジ列に対して加圧を行うために、前記カートリッジホルダと前記加圧手段とを前記第2方向に相対的に移動させる移動手段とを備えたことを特徴とする。このように、前記カートリッジホルダを前記加圧手段に対して前記第2方向に移動させるか、または前記加圧手段を前記カートリッジホルダに対して前記第2方向に移動させればよい。
【0011】
前記移動手段は、前記カートリッジホルダを前記第2方向に搬送するホルダ搬送機構から構成されることが好ましい。
【0012】
前記加圧手段は、前記カートリッジ列の各カートリッジに対応させてエアノズルを前記第1方向に少なくとも1列に並べてなる加圧ヘッドと、前記加圧ヘッドを昇降させることにより、前記エアノズルを前記カートリッジの上端に気密に当てるエア供給位置と前記カートリッジの上端から離す退避位置との間で移動させる昇降機構と、前記エアノズルに対して加圧エアを供給するエア供給部とを有し、前記ホルダ搬送機構は、前記エアノズルが前記退避位置のときに前記カートリッジホルダを前記エアノズルのノズル列分だけ間欠送りすることが好ましい。このような構成とすることにより、多数のカートリッジを確実且つ迅速に処理することができる。
【0013】
前記ホルダ搬送機構は、前記第2方向に移動する移動台と、この移動台に設けられるカートリッジホルダ保持部と、このカートリッジホルダ保持部で保持されるカートリッジホルダの下方に設けられ、前記フィルタ部材を通過した液を受ける液受け容器を保持するための容器保持部とを有することが好ましい。このような構成とすることにより、カートリッジホルダに保持された抽出カートリッジから排出される大量の液を確実に収容することができる。
【0014】
前記カートリッジに注入される液は、特定物質を含む試料液と、前記フィルタ部材に付着した特定物質以外の不純物を洗い流す洗浄液及び前記フィルタ部材に付着した特定物質を分離して回収する回収液の少なくとも1つの液とであり、これらが順次に前記カートリッジに注入され、前記加圧手段で加圧されることが好ましい。
【0015】
前記容器保持部には、前記フィルタ部材を通過した試料液及び洗浄液を受ける廃液容器、または前記フィルタ部材を通過した回収液を受ける回収容器が載置されることが好ましい。
【0016】
前記廃液容器の上部には仕切枠が着脱自在に載せられており、前記仕切枠は、前記カートリッジホルダ内のカートリッジの一部を受ける仕切板を有することが好ましい。これにより、カートリッジが複数連結してカートリッジユニットとされている場合に、カートリッジユニットがたわむことを防止することができる。
【0017】
前記カートリッジは、前記第1方向に少なくとも1列分が連結されてなるカートリッジユニットであり、このカートリッジユニットは前記カートリッジホルダ内に前記第2方向に並べて収納されることが好ましい。
【0018】
前記移動台は検査ブロックを有し、この検査ブロックは、上面が前記カートリッジホルダ保持部で保持されるカートリッジの上部開口と同一面となるよう設置され、前記各エアノズルに対応する位置に加圧圧力検査用の検査部が設けられていることが好ましい。これにより、エアノズルのエア漏れ検査を行うことが可能となる。
【0019】
前記移動台は、前記カートリッジホルダ及び前記液受け容器を装填する装填位置と、前記カートリッジホルダ内の各カートリッジへ液を注入する注液位置へ移動が可能であることが好ましい。装填位置と注液位置を同一とすることにより、迅速な処理が可能となる。
【0020】
上記加圧装置を有し、前記注液位置の移動台に保持されたカートリッジホルダ内の各抽出カートリッジへ前記液を注入する注液装置を有することが好ましい。この注液装置は、カートリッジホルダ内のカートリッジに対し、一括して注入することで作業の時間短縮につながる。前記注液装置は、前記カートリッジホルダまたは前記液受け容器を把持して前記装填位置の移動台への装填及び取り出しを行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の加圧装置によれば、第1方向に少なくとも1列に並べたカートリッジ列を第1方向に直交する第2方向に複数並べてカートリッジをマトリクス状に保持するカートリッジホルダと、カートリッジ列に対して少なくとも1列ずつ加圧する加圧手段と、この加圧手段により各カートリッジ列に対して加圧を行うために、カートリッジホルダと加圧手段とを前記第2方向に相対的に移動させる移動手段とを備えたので、カートリッジホルダまたは加圧手段の移動に合わせて、多数のカートリッジに対して加圧処理を施すことができる。これにより、多数の試料の抽出処理を短時間で行うことができる。
【0022】
特に、第1方向に少なくとも1列分が連結されてなるカートリッジユニットを用い、このカートリッジユニットをカートリッジホルダ内に第2方向に並べて収納することとすれば、カートリッジが取り扱い易くなる。
【0023】
多数のカートリッジに対して加圧処理を施すことができる加圧装置を備えるとともに、カートリッジホルダ内に収納された多数のカートリッジに対して一括して液の分注を行う注液装置を備えた本発明の抽出機によれば、一連の抽出処理をさらに短時間で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の一実施形態である核酸抽出機を説明する前に、核酸抽出処理について説明する。核酸抽出処理は図1(A)〜(G)に示す手順で行われる。まず図1(A)に示すように、詳細を後述する抽出カートリッジ2に溶解処理された核酸を含む試料液Sを注入する試料液注入動作を行う。次に(B)に示すように、廃液容器3上の抽出カートリッジ2に加圧エアを導入して加圧し、フィルタ2aを通して試料液Sを通過させ、このフィルタ2aに核酸を吸着させる核酸吸着動作を行う。フィルタ2aを通過した液状成分は廃液容器3に排出される。
【0025】
この後、(C)に示すように、抽出カートリッジ2に洗浄液Wを分注する洗浄液分注動作を行う。次いで、(D)に示すように、抽出カートリッジ2に加圧エアを導入して加圧し、フィルタ2aに核酸を保持したままその他の不純物の洗浄除去を行う洗浄動作を行う。フィルタ2aを通過した洗浄液Wは廃液容器3に排出される。洗浄液分注動作及び洗浄動作は複数回繰り返してもよい。
【0026】
この後、(E)に示すように、抽出カートリッジ2の下方の廃液容器3を回収容器4に交換する。次いで、(F)に示すように、抽出カートリッジ2に回収液Rを分注する回収液分注動作を行う。最後に、(G)に示すように、抽出カートリッジ2に加圧エアを導入して加圧し、フィルタ2aと核酸の結合力を弱め、吸着されている核酸を離脱させて、核酸を含む回収液Rを回収容器4に回収する核酸回収動作を行う。
【0027】
抽出カートリッジ2におけるフィルタ2aは、基本的には核酸が通過可能な多孔性であり、その表面は試料液S中の核酸を化学的結合力で吸着する特性を有し、洗浄液Wによる洗浄時にはその吸着を保持し、回収液Rによる回収時に核酸の吸着力を弱めて離すように構成されてなる。その一例の具体的構成は、特開2003−128691号の核酸の分離精製方法に詳述されているように、例えば、フィルタ2aは表面に水酸基を有する有機高分子で構成されている。表面に水酸基を有する有機高分子としては、アセチルセルロースの表面鹸化物が好ましい。アセチルセルロースとしては、モノアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースのいずれでもよいが、特にはトリアセチルセルロースが好ましい。その表面が鹸化処理液(例えば、NaOH)との接触により鹸化され、その構造体はアセチルセルロースのままである。表面鹸化処理の程度(表面鹸化度)で表面の水酸基の量(密度)がコントロールでき、水酸基の数が多い方が核酸の吸着効果が高くなる。例えば、トリアセチルセルロースなどのアセチルセルロースの場合には、表面鹸化率が約5%以上であることが好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。アセチルセルロースは多孔性膜が好適である。
【0028】
「核酸を含む試料液S」は、細胞またはウイルスを含む試料に前処理を施した状態のものである。前処理とは、試料を溶解処理することにより核酸を液中に分散させた溶液に水溶性有機溶媒を添加する処理のことである。例えば診断分野においては、試料として採取された全血、血漿、血清、尿、便、精液、唾液等の体液、あるいは植物(またはその一部)、動物(またはその一部)など、あるいはそれらの溶解物およびホモジネートなどの生物材料から調製された溶液が対象となる。「溶解処理」は、細胞膜および核膜を溶解して核酸を可溶化する試薬(例えば、グアニジン塩、界面活性剤およびタンパク質分解酵素を含む溶液)を含む水溶液で処理するもので、例えば、対象となる試料が全血の場合、フィルタ2aへの非特異吸着および目詰まりを防ぐために赤血球および各種タンパク質を分解、低分子化し、抽出の対象である核酸を可溶化させるために白血球および核膜の溶解を行う。「水溶性有機溶媒」としてはエタノール、イソプロパノールまたはプロパノールなどが挙げられ、中でもエタノールが好ましい。水溶性有機溶媒の濃度は好ましくは5〜90重量%であり、さらに好ましくは20〜60重量%である。エタノールの添加濃度は、凝集物を生じない程度でできるだけ高くすることが特に好ましい。
【0029】
「洗浄液W」は、核酸と一緒にフィルタ2aに付着した試料液S中の不純物を洗い流す機能を有し、核酸の吸着はそのままで不純物を離脱させる組成を有する。主剤と緩衝剤、および必要に応じて界面活性剤を含む水溶液からなる。主剤としてはメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−イソプロパノール、ブタノール、アセトン等の約10〜100重量%(好ましくは20〜100重量%、さらに好ましくは40〜80重量%)の水溶液が挙げられる。
【0030】
「回収液R」は、塩濃度が低いことが好ましく、特には0.5M以下の塩濃度の溶液、例えば、精製蒸留水、TEバッファ等が使用される。
【0031】
本発明の一実施形態の核酸抽出機8は、図2に示すように、分注装置9と加圧装置10とから構成されている。分注装置9と加圧装置10は、互いに無線信号を送受信して共同して抽出処理を行う。
【0032】
核酸抽出機8には、図3に示す抽出カートリッジユニット11、図4に示すカートリッジホルダ12、廃液容器3及び回収容器4が用いられる。以下では、まず、これらについて説明を行う。
【0033】
図3に示すように、抽出カートリッジユニット11は、8本の抽出カートリッジ2から構成されている。8本の抽出カートリッジ2は一列に並べられ、抽出カートリッジ2間に配された連結部4によって、隣り合うもの同士が互いに連結している。
【0034】
抽出カートリッジ2は、上端が開口した筒状本体2bと、この筒状本体2bの底部に保持されたフィルタ2aと、筒状本体2bの下端中心部に細管ノズル状に突出形成された排出部2cと、筒状本体2bの側部において外面が平面となるように形成された位置決め突部2dとを有している。位置決め突部2dは、抽出カートリッジユニット11が複数列に並べられたときに、隣り合う位置決め突部2d同士が接触し、抽出カートリッジユニット11を列方向に対し垂直な方向に位置決めするものである。また、両端の抽出カートリッジには周面から突出した突出部7が形成されている。
【0035】
図4に示すように、カートリッジホルダ12は、抽出カートリッジユニット11を並べて保持することができる。カートリッジホルダ12には、上下方向に貫通した開口13が形成されており、この開口13に抽出カートリッジユニット11を挿入するようになっている。カートリッジホルダ12の内周壁は、各抽出カートリッジユニット11を前後方向(X軸方向)及び左右方向(Y軸方向)に位置決めした状態で上下方向(Z軸方向)にガイドするガイド壁12aとなっている。各ガイド壁12aには、壁面から突出して形成された係止部12bが設けられている。この係止部12bは、抽出カートリッジユニット11が挿入されたときに突出部7を係止し、抽出カートリッジユニット11がカートリッジホルダ12から下方に離脱するのを防ぐものである。抽出カートリッジユニット11が並べられて保持されると、抽出カートリッジ2は、前後及び左右方向におけるピッチ(本例では9mm)が等しくされた状態で、複数列(本例では12列)に並べられる。カートリッジホルダ12は、抽出カートリッジユニット11を複数セットした状態で、ホルダ用ラック(図示なし)に載置されて待機している。
【0036】
廃液容器3は、容器本体14と、この容器本体14の上部に装着される仕切枠15とから構成される。容器本体14は、矩形箱状に形成されており、廃液を収容する収容部14aを有する。仕切枠15の上部15aは、外周が容器本体14の外周とほぼ同じサイズとされ、仕切枠15の下部15bは、外周が容器本体14の内周とほぼ同じサイズとされている。仕切枠15を容器本体14に装着する際には、下部15bを収容部14aに挿入し、上部15aを容器本体14の上面に載置するようにする。仕切枠15には、上下方向に貫通する断面矩形の仕切孔15cがマトリクス状に形成されている。この仕切孔15cは仕切板15dによって区切られている。形成されている仕切孔15cは、その数がカートリッジホルダ12が保持可能な抽出カートリッジ2の数に対応し、そのピッチが抽出カートリッジ2のピッチに対応している。廃液容器3は、廃液容器用ラック(図示なし)に載置されて待機している。
【0037】
回収容器4は、容器本体16と、この容器本体16を支持する支持台17とから構成される。容器本体16には、各抽出カートリッジ2から排出される回収液Rをそれぞれ収容する有底の回収筒16aがマトリクス状に設けられている。回収筒16aは、その数がカートリッジホルダ12が保持可能な抽出カートリッジ2の数に対応し、そのピッチが抽出カートリッジ2のピッチに対応している。支持台17は、仕切枠15が装着された廃液容器3と同じ高さとなるように、容器本体16を支持する。これにより、搬送機構21にセットされた廃液容器3及び回収容器4の上面が常に同じ高さとなるようにされる。回収容器4は、回収容器用ラック(図示なし)に載置されて待機している。
【0038】
分注装置9(図2参照)は、試料に前述した前処理を施して試料液Sとする機能を備えている。また、分注装置9は、分注機構(図示なし)や、ハンドリング機構(図示なし)を備えている。分注機構は、試料液S、洗浄液7及び回収液Rを、カートリッジホルダ12に保持された複数の抽出カートリッジ2に対して、一括して分注することができる。ハンドリング機構は、カートリッジホルダ12、廃液容器3及び回収容器4を把持するクランプを有し、このクランプを3次元方向に移動させて、カートリッジホルダ12等を加圧装置10の搬送機構21にセットする。3次元方向への移動手段は、クランプを3次元方向にシフトさせるシフト機構や、多関節型ロボットアームなどから構成される。
【0039】
図5,図6に示すように、加圧装置10は、抽出カートリッジ2を搬送する搬送機構21、抽出カートリッジ2に加圧エアを供給する加圧エア供給機構22、メンテナンス用操作パネル23などを備えている。加圧装置10は、後述するシステム制御部24(図6参照)によって制御されている。システム制御部24は、無線信号送受信部25(図6参照)からの信号や、メンテナンス用操作パネル23の操作信号などに基づいて、各部を制御するものである。
【0040】
搬送機構21は、テーブル29と、テーブル支持板30と、テーブル用モータ32(図6参照)と、検査ブロック33とを有している。テーブル29はテーブル支持板30に固定されており、上方向に延びるようにして上面に固定された4本の支持柱31を有している。各支持柱31は断面が略L字状に形成されており、それぞれが内側を向くようにして設置されている。テーブル支持板30は前後方向(X軸方向)に延びるレール28上に載置されている。テーブル29は、テーブル用モータ32の駆動力が伝達されると、テーブル支持板30と共に前後方向に移動する。
【0041】
テーブル29には、前述した廃液容器3または回収容器4のいずれかを選択的に載置することができる。支持柱31の下部内面には位置決めガイド31aが突出して形成されており、この位置決めガイド31aは傾斜面を有する。廃液容器3がテーブル29に載置される際には、前記傾斜面に沿って廃液容器3の下端角部14b(図4参照)が案内されることで廃液容器3が前後方向及び左右方向(Y軸方向)で位置決めされ、廃液容器3がテーブル29上面に載せられることにより廃液容器3が上下方向(Z軸方向)で位置決めされる。この廃液容器3と同様にして回収容器4も前後、左右及び上下方向で位置決めされた状態でセットされる。
【0042】
支持柱31の上端部には、段部31bが形成されており、この段部31bに前述したカートリッジホルダ12が載置される。段部31bは、上方向へ延びる位置決めガイド31cを有している。位置決めガイド31cは傾斜面を有している。カートリッジホルダ12がテーブル29にセットされる際には、前記傾斜面に沿ってカートリッジホルダ12の下端角部12c(図4参照)が案内されることで、カートリッジホルダ12が前後及び左右方向で位置決めされ、カートリッジホルダ12が段部31bに載せられることにより、カートリッジホルダ12が上下方向で位置決めされる。
【0043】
テーブル29上に廃液容器3を載置した状態で4本の支持柱31にカートリッジホルダ12を載置すると、抽出カートリッジ2の排出部2cは廃液容器3の仕切孔15の上部に挿入される。このとき、廃液容器3の仕切板15dの上面が、抽出カートリッジ2の筒状本体2bの下面を受けるようにされている。これにより、後述するエアノズル41が抽出カートリッジユニット11の上端を押圧したときに、抽出カートリッジユニット11がたわむことを防止することができる。また、テーブル29上に回収容器4を載置した状態で4本の支持柱31にカートリッジホルダ12を載置すると、抽出カートリッジ2の排出部2cは回収容器4の回収筒16aの上部に挿入される。このときにも廃液容器3と同様に、回収容器3の容器本体16の上面が、抽出カートリッジ2の筒状本体2bの下面を受けるようにされている。
【0044】
テーブル支持板30上においてテーブル29より後方には、前後方向及び上下方向に平行な(ZX面に平行な)2枚の支持板34が設けられており、検査ブロック33は2枚の支持板34の上部に架け渡されて設置されている。検査ブロック33は、後述するエアノズル41のエア供給口41aのシール部が正常か否かを検査する、つまりエア漏れを検査するために用いられるものである。検査ブロック33には検査孔(検査部)33aがエアノズル41に対応する数及びピッチで設けられている。この検査孔33aは後述する加圧ヘッド40が下降移動した際に、対応するエアノズル41のエア供給口41aを塞ぐものである。検査ブロック33はテーブル支持板30と共に移動する。これにより、検査ブロック33は、エアノズル41の直下に位置する検査位置と、エアノズル41の直下から退避する退避位置との間で前後方向に移動する。なお、エアノズルのエア供給口の構成によっては必ずしも検査ブロックに検査孔を設ける必要はなく、例えば当接面が平面状とされた検査ブロックであってもよい。
【0045】
図6に示すように、システム制御部24は、テーブル用位置センサ35からの信号に基づいて、テーブル用モータ32の回転量を制御し、図5に示すテーブル29の前後方向の移動量を制御している。
【0046】
システム制御部24はテーブル29を前後方向に移動させる。テーブル29は、カートリッジホルダ12、廃液容器3及び回収容器4を載置する載置位置(装填位置)、抽出カートリッジ2に各液を分注する分注位置(注液位置)、エアノズル41の直下に検査ブロック33が位置する検査位置、エアノズル41の直下に先頭の抽出カートリッジユニット11が位置する加圧開始位置、エアノズル41の直下に最後尾の抽出カートリッジユニット11が位置する加圧終了位置に順次位置決めされる。載置位置、分注位置及び検査位置は、同一の位置であってもよい。また、加圧開始位置から加圧終了位置までは、抽出カートリッジ2のピッチ分(本例では9mm)ずつ間欠移動し、各抽出カートリッジユニット11で停止したときに加圧処理が行われる。
【0047】
なお、抽出カートリッジユニット11がカートリッジホルダ12の一部領域にのみセットされている場合には、必ずしも抽出カートリッジ2のピッチ分ずつ間欠移動させる必要はなく、エアノズル41の直下に、セットされた抽出カートリッジユニット11のみが順に位置するように間欠移動してもよい。この場合には、圧力センサが検出した検出値に基づいて抽出カートリッジがセットされていないことを判断し、次の列に進むようにされる。
【0048】
以下では、加圧エア供給機構22について説明を行う。図5に示すように、装置本体10aの前方上部には複数のエアノズル41が設けられ、装置本体10aの側方中部にはエアポンプ42、2つの結露除去用弁43,44、絞り弁45、及びエアフィルタ70が設けられ、装置本体10aの後方上部には複数の開閉弁46が設けられている。エアノズル41は加圧ヘッド40に取り付けられている。この加圧ヘッド40の内部には、図6,7に示すリリーフ弁47、複数の圧力開放弁48、複数の圧力センサ49及びリリーフ弁用の圧力センサ50が設けられている。各部は、エアチューブ(図示なし)によって適宜接続されている。特に、開閉弁46とエアノズル41とを接続するエアチューブは、装置本体10aの上部に設けられた2つのガイド筒53のいずれかを通過させることで束ねられている。これらの各部から、加圧エア供給機構22が構成されている。加圧エア供給機構22の各部は、システム制御部(図6参照)によって制御されている。
【0049】
加圧ヘッド40は、上下方向に延びるガイドレール54に取り付けられている。加圧ヘッド40にはボールナット55が設けられており、このボールナット55は上下方向に延びるボールネジ56に螺合している。加圧ヘッド用モータ57(図6参照)の駆動力がタイミングベルト58を介してボールネジ56に伝達され、ボールネジ56が回転すると、加圧ヘッド40がガイドレール54に沿って上下方向に移動する。このようにして、加圧ヘッド40の昇降機構が構成されている。
【0050】
図6に示すように、加圧ヘッド用モータ57は、システム制御部24によって制御されている。システム制御部24は、加圧ヘッド用位置センサ58からの信号に基づいて、図5に示す加圧ヘッド用モータ57の回転量を制御し、加圧ヘッド40の上下方向の移動量を制御している。
【0051】
複数(本例では8個)のエアノズル41は、左右方向(Y軸方向)に一列に並べられて加圧ヘッド40に設けられている。各エアノズル41は、加圧ヘッド40に対して、それぞれ独立して上下方向に移動可能に且つ下方に圧縮バネ59によって付勢されている。加圧ヘッド40が下方向に移動し、各エアノズル41が対応する抽出カートリッジ2の上端縁に当接し、さらに押圧されると、圧縮バネ59の縮みによる押圧力で各エアノズル41が各抽出カートリッジ2の上端開口を塞ぐ。
【0052】
加圧ヘッド用モータ57の回転によって加圧ヘッド40が昇降移動する。加圧ヘッド40の昇降移動によって、エアノズル41が加圧位置と退避位置との間で移動する。エアノズル41は、加圧位置では、対応する抽出カートリッジ2に圧接して加圧エアを供給し、退避位置では、対応する抽出カートリッジ2から離れて上方に退避する。
【0053】
図7に示すのは加圧装置10の空気圧回路図であり、各弁が全てOFF状態とされて待機しているときのものである。
【0054】
エアポンプ42の上流側には結露除去用弁43(本例では3ポート電磁弁)が接続され、エアポンプ42の下流側には結露除去用弁44(本例では3ポート電磁弁)が接続されている。配管内に結露が発生して水滴となると、この水滴が下流側へ流れてゆき、抽出カートリッジ2のフィルタ2aに吸着された核酸を洗い流してしまう場合がある。結露除去用弁43,44はこの結露を除去するためのものである。
【0055】
結露除去動作は以下の手順で行われる。まず、リリーフ弁47をON状態にし、結露除去用弁43,44を共にOFF状態からON状態にして、エアポンプ42を駆動する。A,B,C領域を通過したエアがエアポンプ42に供給され、このエアはD領域を通過して外部に排気される。これにより、A及びB領域の結露が除去される。C及びD領域にもエアが通過するが、このエアは湿っているため、この領域の結露は除去しにくい。次に、結露除去用弁43をOFF状態にし、結露除去用弁44をON状態のままにする。外部から乾いたエアがC領域を通過してエアポンプ42に供給され、D領域を通過して外部に排気される。これによりC及びD領域の結露が除去される。最後に、結露除去用弁43をON状態に、結露除去用弁44をOFF状態にする。エアはB〜E領域を通過する。これにより、E領域の結露が除去される。この後、結露除去用弁43,44を共にOFF状態にしてエアポンプ42の駆動を停止する。
【0056】
結露除去用弁44の下流側には、絞り弁45及びエアフィルタ70が接続されている。絞り弁45は、通過するエアの流量を調節し、下流側に供給される加圧エアの加圧速度を調節するものである。エアフィルタ70は、加圧エアに混じる塵埃等を取り除くためのものである。
【0057】
絞り弁45の下流側には、複数(本例では8個)の開閉弁46(本例では2ポート電磁弁)、圧力センサ50、及びリリーフ弁47が接続されている。開閉弁46は、上流側からの加圧エアの通過を阻止するOFF状態と、加圧エアを通過させるON状態をとる。開閉弁46は選択的にON状態にされて、加圧エアを下流側に供給する。圧力センサ50は、絞り弁45と開閉弁46及びリリーフ弁47とを接続する通路内の圧力を検出する。リリーフ弁47は、連続駆動されるエアポンプ42によって前記通路内の圧力が所定圧力以上になったときに、ON状態とされ、前記通路内の加圧エアを外部に逃がす。
【0058】
開閉弁46の下流側には、圧力開放弁48(本例では3ポート電磁弁)が接続されている。圧力開放弁48は、上流側からの加圧エアの通過を阻止するとともに、下流側を大気開放するOFF状態と、上流側からの加圧エアを下流側に通過させるON状態をとることができる。
【0059】
圧力開放弁48の下流側には、それぞれに対応するようにしてエアノズル41が接続されている。また、その通路の途中には、それぞれに対応するようにして圧力センサ49が接続されている。圧力センサ49は、圧力開放弁48とエアノズル41とを接続する通路内の圧力、つまりエアノズル41が押圧している抽出カートリッジ2の内部の圧力を検出し、検出信号をシステム制御部24(図6参照)へ送る。
【0060】
システム制御部6では、検出圧力に基づいて各弁を制御する。具体的には、開閉弁46と圧力開放弁48をON状態にしてエアノズル41に加圧エアを供給している際に、検出圧力が加圧上限の圧力となったときには、開閉弁46をOFF状態にして、エアノズル41及び抽出カートリッジ2内を密閉状態とする。また、この密閉状態とされている際に、検出圧力の変化に基づいて抽出カートリッジ2内の液全てが排出されたと判断したときには、圧力開放弁48をOFF状態にしてエアノズル41及び抽出カートリッジ2内を大気開放する。なお、エアノズル41へは、所定圧力範囲内(例えば30kPa〜200kPa、より好ましくは50kPa〜150kPa)の加圧エアを供給することが好ましい。
【0061】
また、システム制御部24では、検出圧力に基づいて、カートリッジホルダ12への抽出カートリッジ2のセットの有無検出、液の有無検出、液量不足の検出、フィルタ詰まりの検出なども行う。
【0062】
図5に示すように、メンテナンス用操作パネル23は、メンテナンス時に操作されるものであり、表示部60とキー操作部61とを備えている。キー操作部61を操作すると操作信号がシステム制御部24へと送られ、操作に基づいて各部を駆動させることができる。
【0063】
メンテナンス用操作パネルの下方には、メモリカードスロット62が設けられている。このメモリカードスロット62の奥には、メモリカード63に電気的に接続してデータの読み書きを行うカードリーダが組み込まれている。メモリカード63には、分注装置9と交信した通信情報や、抽出処理を行った処理情報などが書き込まれる。
【0064】
以下、上記構成による作用について説明する。核酸抽出機8を構成する分注装置9及び加圧装置10の電源をONにすると、まず、分注装置9が準備動作を行う。加圧装置10は、分注装置9から準備完了信号を受信すると、準備動作を行う。
【0065】
加圧装置10は、準備動作を完了するとエア漏れ検査を行う。テーブル29は検査位置へと移動し、エアノズル41の直下に検査ブロック33を位置させる。次いで、加圧ヘッド40を下方に移動させてエアノズル41を加圧位置に移動させる。エアノズル41のエア供給口41aが塞がれた状態で加圧エアが供給され、密閉状態で圧力変化が観察される。エア供給口41aのシール部に欠陥が生じていなければ圧力は変化せず、シール部に欠陥が生じていればエア漏れが生じ圧力は低下してゆく。空気漏れが確認された場合には、メンテナンス用操作パネル23の表示部60に警告が表示される。所定時間後、加圧ヘッド40が上方に移動してエアノズル41は退避位置に移動する。
【0066】
本例においては、テーブル29の検査位置と、載置位置と、分注位置とを同一の位置としている。また、この位置をテーブル29の初期位置としている。
【0067】
加圧装置10は、エア漏れ検査完了の信号を分注装置9に送信する。分注装置9のハンドリング機構は、廃液容器3を把持してテーブル29に載置し、次に抽出カートリッジ2を多数保持したカートリッジホルダ12を把持してテーブル29に載置する。この後、分注装置9の分注機構が、抽出カートリッジ2に試料液Sを分注する。
【0068】
加圧装置10は、分注装置9から試料液注入動作完了の信号を受信すると、加圧動作(核酸吸着動作)を開始する。テーブル29は加圧開始位置に移動し、エアノズル41の直下に第1列目の抽出カートリッジ2が位置する。次いで、エアノズル41が加圧位置に移動し、エアノズル41のエア供給口41aが対応する抽出カートリッジ2の上端開口に押圧される。全ての開閉弁46がOFF状態、且つ全ての圧力開放弁48がON状態で、エアポンプ42が駆動される。
【0069】
まず、1番目(最も左方)の開閉弁46がON状態にされて、対応する抽出カートリッジ2に加圧エアが供給される。圧力センサ49によって所定圧力に上昇したことが確認されると、1番目の開閉弁46がOFF状態にされる。次に、2番目の開閉弁46がON状態にされて、対応する抽出カートリッジ2に加圧エアが供給される。この動作が第1列目の抽出カートリッジ2の全てに行われる。試料液Sはフィルタ2aを通過し、フィルタ2aに核酸が吸着される。その他の液状成分は廃液容器3に排出される。試料液S全てがフィルタ2aを通過して圧力が低下すると、圧力開放弁48がOFF状態とされる。全ての圧力開放弁48がOFF状態とされた後、エアノズル41が退避位置に移動する。全ての圧力開放弁48は再びON状態とされる。
【0070】
第1列目の抽出カートリッジ2の加圧動作を完了すると、テーブル29は抽出カートリッジ2のピッチ分だけ後方に移動する。エアノズル41の直下には第2列目の抽出カートリッジ2が位置する。エアノズル41が加圧位置に移動し、第2列目の抽出カートリッジに対して第1列目と同様の加圧動作が行われた後、エアノズル41が退避位置に移動する。このようにして、各列に対して加圧動作が繰り返される。全ての列に対して加圧動作が行われた後、テーブル29は初期位置に戻される。このように、多数(本例では96個)の抽出カートリッジに対して短時間で加圧処理を施すことができる。
【0071】
加圧装置10は、分注装置9に加圧動作(核酸吸着動作)完了の信号を送信する。分注装置9の分注機構が、抽出カートリッジ2に一括して洗浄液Wを分注する。
【0072】
加圧装置10は、分注装置9から洗浄液分注動作完了の信号を受信すると、加圧動作(洗浄動作)を開始する。テーブル29は加圧開始位置に移動する。洗浄液Wに対する加圧動作は、上記した試料液Sに対する加圧動作と同様に行われる。フィルタ2aを通過した洗浄液Wは、核酸以外の不純物と共に廃液容器3に排出される。全ての列に対して加圧動作が行われた後、テーブル29は初期位置に戻される。
【0073】
加圧装置10は、分注装置9に加圧動作(洗浄動作)完了の信号を送信する。分注装置9のハンドリング機構は、カートリッジホルダ12を把持してホルダ用ラックに一旦載置し、次に廃液容器3を把持して廃液容器用ラックに載置する。この後、ハンドリング機構は、回収容器用ラックに載置された回収容器4を把持して加圧装置10のテーブル29に載置し、次に先ほどのカートリッジホルダ12を把持してテーブル29に載置する。分注装置9の分注機構は、抽出カートリッジ2に一括して回収液Rを分注する。
【0074】
加圧装置10は、分注装置9から回収液分注動作完了の信号を受信すると、加圧動作(核酸回収動作)を開始する。テーブル29は加圧開始位置に移動する。回収液Rに対する加圧動作は、試料液S及び洗浄液Wに対する加圧動作と同様に行われる。回収液Rはフィルタ2aを通過し、フィルタ2aに吸着された核酸と共に、回収容器4の対応する回収筒16aに収容される。
【0075】
加圧装置10は、分注装置9に加圧動作(核酸回収動作)完了の信号を送信する。分注装置9のハンドリング機構は、カートリッジホルダ12を把持してホルダ用ラックに載置し、回収容器3を把持して回収容器用ラックに載置する。回収容器3の回収筒16aにそれぞれ回収された回収液は、他の装置によって分析が行われる。カートリッジホルダ12に保持された使用済みの抽出カートリッジは廃棄される。
【0076】
加圧装置10は、分注装置9から回収容器を収容した旨の信号を受信すると、加圧エア供給機構22の配管内の結露を除去する結露除去動作を行う。この動作は抽出動作を妨げない任意のタイミングで行うことができる。例えば、核酸吸着動作と洗浄動作との間に行ってもよい。結露除去動作の後、抽出動作を続ける場合には、未使用の抽出カートリッジを保持する別のカートリッジホルダ及び未使用の回収容器等を用いて、上記した一連の抽出動作が繰り返される。
【0077】
本発明によれば、複数の抽出カートリッジが連結した抽出カートリッジユニットを用いているため、多数の抽出カートリッジを用いる場合等において抽出カートリッジを取り扱い易くなる。抽出カートリッジをカートリッジホルダにセットする作業は簡単になる。
【0078】
本発明によれば、多数の抽出カートリッジに対して短時間で加圧処理を行うことができる。また、多数の抽出カートリッジに対して短時間で分注を行うことができる。これにより、多数の試料の抽出処理を短時間で行うことができる。
【0079】
なお、上記実施形態では、エアノズルが1列に並べられている形態で説明を行ったが、エアノズルが複数列に並べられている形態としてもよい。この場合には、ノズル列分ずつテーブルを移動させる。例えば、エアノズルが3列に並べられている場合には、抽出カートリッジのピッチ×3(本例を適用すると27mm)ずつテーブルを移動させる。
【0080】
上記実施形態では、抽出カートリッジユニットを構成している抽出カートリッジは8本であったが、抽出カートリッジの数は任意でよい。

また、抽出カートリッジを複数列に並べて連結したマトリクス状配列の抽出カートリッジユニットを用いてもよい。
【0081】
上記実施形態では、カートリッジホルダが保持することができる抽出カートリッジは12列であったが、列の数は任意でよい。さらには搬送機構をエンドレス方式とすることにより、より多数の抽出カートリッジを処理することも可能である。
【0082】
上記実施形態では、カートリッジホルダをエアノズルに対して前後方向に移動させたが、カートリッジホルダを固定しておき、エアノズルをカートリッジホルダに対して前後方向に移動させてもよい。
【0083】
上記実施形態では、フィルタ部材を通過させるため各液に外力を加える手段として加圧を用いたが、減圧を用いてもよい。
【0084】
上記実施形態では言及しなかったが、各抽出カートリッジユニットまたは各抽出カートリッジに、各個体を識別させることができる個体識別体、例えばICチップを取り付け、この個体識別体に基づいて各抽出カートリッジユニットまたは各抽出カートリッジを管理してもよい。
【0085】
上記実施形態では、洗浄液による洗浄処理を施しているが、フィルタ部材の透過能力によっては必ずしも必要とされるものではない。上記実施形態では、回収液を用いて回収動作を行っているが、回収液は必ずしも必要ではなく、例えば、フィルタ部材に特定物質を吸着させたまま分析することも可能である。
【0086】
上記実施形態では、核酸の抽出機について記載しているが、これに限定されるものではなく、種々の特定物質をフィルタ部材に吸着させる場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】核酸抽出処理における各動作を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態の核酸抽出機の概要を示す説明図である。
【図3】抽出カートリッジユニットの外観図である。
【図4】カートリッジホルダ、廃液容器及び回収容器の分解斜視図である。
【図5】装置カバーを取り外した状態の加圧装置の外観斜視図である。
【図6】加圧装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】加圧装置の空気圧回路図である。
【符号の説明】
【0088】
S 試料液
R 回収液
2 抽出カートリッジ
2a フィルタ
3 廃液容器
4 回収容器
8 核酸抽出機
9 分注装置
10 加圧装置
11 抽出カートリッジユニット
21 搬送機構
22 加圧エア供給機構
29 テーブル
31 支持柱
31a 位置決めガイド
31b 段部
31c 位置決めガイド
33 検査ブロック
40 加圧ヘッド
41 エアノズル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定物質を含む液が注入されたフィルタ部材を有するカートリッジ内を加圧して、前記特定物質を前記フィルタ部材に吸着させる加圧装置において、
前記カートリッジを第1方向に少なくとも1列に並べてカートリッジ列を構成し、このカートリッジ列を前記第1方向に直交する第2方向に複数並べ前記カートリッジをマトリクス状に保持するカートリッジホルダと、
前記カートリッジ列に対して少なくとも1列ずつ加圧する加圧手段と、
前記加圧手段により各カートリッジ列に対して加圧を行うために、前記カートリッジホルダと前記加圧手段とを前記第2方向に相対的に移動させる移動手段とを備えたことを特徴とする加圧装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記カートリッジホルダを前記第2方向に搬送するホルダ搬送機構から構成されることを特徴とする請求項1記載の加圧装置。
【請求項3】
前記加圧手段は、前記カートリッジ列の各カートリッジに対応させてエアノズルを前記第1方向に少なくとも1列に並べてなる加圧ヘッドと、
前記加圧ヘッドを昇降させることにより、前記エアノズルを前記カートリッジの上端に気密に当てるエア供給位置と前記カートリッジの上端から離す退避位置との間で移動させる昇降機構と、
前記エアノズルに対して加圧エアを供給するエア供給部とを有し、
前記ホルダ搬送機構は、前記エアノズルが前記退避位置のときに前記カートリッジホルダを前記エアノズルのノズル列分だけ間欠送りすることを特徴とする請求項2記載の加圧装置。
【請求項4】
前記ホルダ搬送機構は、前記第2方向に移動する移動台と、この移動台に設けられるカートリッジホルダ保持部と、このカートリッジホルダ保持部で保持されるカートリッジホルダの下方に設けられ、前記フィルタ部材を通過した液を受ける液受け容器を保持するための容器保持部とを有することを特徴とする請求項2または3記載の加圧装置。
【請求項5】
前記カートリッジに注入される液は、特定物質を含む試料液と、前記フィルタ部材に付着した特定物質以外の不純物を洗い流す洗浄液及び前記フィルタ部材に付着した特定物質を分離して回収する回収液の少なくとも1つの液とであり、これらが順次に前記カートリッジに注入され、前記加圧手段で加圧されることを特徴とする請求項4記載の加圧装置。
【請求項6】
前記容器保持部には、前記フィルタ部材を通過した試料液及び洗浄液を受ける廃液容器、または前記フィルタ部材を通過した回収液を受ける回収容器が載置されることを特徴とする請求項5記載の加圧装置。
【請求項7】
前記廃液容器の上部には仕切枠が着脱自在に載せられており、前記仕切枠は、前記カートリッジホルダ内のカートリッジの一部を受ける仕切板を有することを特徴とする請求項6記載の加圧装置。
【請求項8】
前記カートリッジは、前記第1方向に少なくとも1列分が連結されてなるカートリッジユニットであり、このカートリッジユニットは前記カートリッジホルダ内に前記第2方向に並べて収納されることを特徴とする請求項1ないし7いずれか1項記載の加圧装置。
【請求項9】
前記移動台は検査ブロックを有し、この検査ブロックは、上面が前記カートリッジホルダ保持部で保持されるカートリッジの上部開口と同一面となるよう設置され、前記各エアノズルに対応する位置に加圧圧力検査用の検査部が設けられていることを特徴とする請求項4記載の加圧装置。
【請求項10】
前記移動台は、前記カートリッジホルダ及び前記液受け容器を装填する装填位置と、前記カートリッジホルダ内の各カートリッジへ液を注入する注液位置とが同一位置とされていることを特徴とする請求項4記載の加圧装置。
【請求項11】
請求項10記載の加圧装置を有し、前記注液位置の移動台に保持されたカートリッジホルダ内の各カートリッジへ前記液を注入する注液装置を有することを特徴とする抽出機。
【請求項12】
前記注液装置は、前記カートリッジホルダまたは前記液受け容器を把持して前記装填位置の移動台への装填及び取り出しを行うことを特徴とする請求項11記載の抽出機。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−197850(P2006−197850A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12988(P2005−12988)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】