説明

加工性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法

【課題】確実に125%以上の穴拡げ率λが得られ、TSが490MPa以上590MPa未満の加工性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.04〜0.1%、Si:0.3〜1.3%、Mn:0.8〜1.8%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、N:0.005%以下、Al:0.005〜0.1%を含有し、かつTi:0.002%以上0.03%未満、V:0.002%以上0.03%未満、Nb:0.002%以上0.02%未満の中から選択された少なくとも一種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、組織全体に占めるフェライト相の面積率が85%以上、ベイナイト相の面積率が10%以下、前記フェライト相とベイナイト相以外の他の相の面積率が5%以下であり、かつ前記フェライト相全体に占めるアシキュラーフェライト相の面積率が30%以上80%未満であるミクロ組織を有することを特徴とする加工性に優れた高強度熱延鋼板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として自動車用部材、例えば車体のメンバーやフレームなどの構造部材やサスペンションなどの足まわり部材に用いられる高強度熱延鋼板、特に、引張強度TSが490MPa以上590MPa未満の加工性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車車体の軽量化を図るために高強度鋼板の利用が積極的に行われている。なかでも、車体の構造部材や足まわり部材のような優れた表面品質が要求されない部材には、経済性に優れた高強度熱延鋼板が多用されつつある。
【0003】
従来から、TSが490〜590MPa級の高強度熱延鋼板の高強度化には、a) フェライト相中にSiなどを固溶させた固溶強化法、b) フェライト相中にTi、Nb、Vなどの炭窒化物を形成させた析出強化法c) フェライト相中にマルテンサイト相あるいはベイナイト相などを生成させた組織強化法、これらの方法を併用した強化法が利用されており、要求される特性に応じて種々の高強度熱延鋼板が開発されている。例えば、安価な汎用の鋼板として固溶強化や析出強化された熱延鋼板(HSLA)が、伸び性が要求される鋼板としてフェライト相とマルテンサイト相からなる組織強化された複合組織鋼板(DP鋼板)が、伸びフランジ性が要求される鋼板としてベイナイト相により組織強化された鋼板が挙げられる。
【0004】
このうち伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板として、特許文献1には、質量%で、C:0.010〜0.10%、Si:0.50〜1.50%、Mn:0.50〜2.00%、P:0.01〜0.15%、S:0.005%以下、N:0.001〜0.005%を含み、かつTi:0.005 〜0.03%、V:0.005 〜0.03%、Nb:0.01〜0.06%のうちの少なくとも一種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成からなり、体積率80〜97%で、かつ平均粒径10μm以下のフェライト相と、残部としてベイナイト相を含むミクロ組織からなる伸び性、形状凍結性、伸びフランジ性などの加工性に優れるTSが540〜590MPaの高強度熱延鋼板が提案されている。また、特許文献2には、質量%で、C:0.010〜0.15%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.06%以下、S:0.005%以下、Al:0.10%以下を含み、更に、Ti:0.005 〜0.1%、Nb:0.005〜0.1%、V:0.005〜0.2%、W:0.005〜0.2%のうちの少なくとも一種を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼片を1150〜1300℃に加熱後、熱間圧延における仕上温度を800〜1000℃とし、その後30℃/s以上の平均冷却速度で525〜625℃の冷却停止温度まで冷却した後、3〜10s冷却を停止し(空冷し)、引き続き鋼板の冷却が核沸騰となるような冷却方法で冷却し、400〜550℃で巻き取る加工後の伸びフランジ性に優れるTSが490MPa以上の高強度熱延鋼板の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-117039号公報
【特許文献2】特開2009-52065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、種々の自動車車体の構造部材や足まわり部材に問題なく加工するには鋼板の伸びフランジ性の指標である穴拡げ率λが125%以上必要であるが、特許文献1に記載された高強度熱延鋼板では、125%以上のλを達成するのが困難であり、また、特許文献2に記載された方法で製造した高強度熱延鋼板では、必ずしも125%以上のλが得られない場合がある。
【0007】
本発明は、確実に125%以上のλが得られ、TSが490MPa以上590MPa未満の加工性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、以下の知見を得た。
【0009】
i) 成分組成の適正化を図り、組織全体に占める面積率でフェライト相を85%以上、ベイナイト相を10%以下、フェライト相とベイナイト相以外の他の相の面積率を5%以下とし、かつフェライト相全体に占めるアシキュラーフェライト相の面積率を30%以上80%未満としたミクロ組織にすることにより、125%以上のλ、490MPa以上590MPa未満のTSを確実に達成できる。
【0010】
ii) こうしたミクロ組織は、熱間圧延後、50〜230℃/sの平均冷却速度で500〜625℃の冷却停止温度まで一次冷却し、空冷後、100℃/s以上の平均冷却速度で二次冷却し、400〜550℃の巻取温度で巻取ることにより得られる。
【0011】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、質量%で、C:0.04〜0.1%、Si:0.3〜1.3%、Mn:0.8〜1.8%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、N:0.005%以下、Al:0.005〜0.1%を含有し、かつTi:0.002%以上0.03%未満、V:0.002%以上0.03%未満、Nb:0.002%以上0.02%未満の中から選択された少なくとも一種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、組織全体に占めるフェライト相の面積率が85%以上、ベイナイト相の面積率が10%以下、前記フェライト相とベイナイト相以外の他の相の面積率が5%以下であり、かつ前記フェライト相全体に占めるアシキュラーフェライト相の面積率が30%以上80%未満であるミクロ組織を有することを特徴とする加工性に優れた高強度熱延鋼板を提供する。
【0012】
本発明の高強度熱延鋼板には、さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.005%、REM:0.0005〜0.03%のうち少なくとも一種や、B:0.0002〜0.005%を、個別にあるいは同時に含有させることが好ましい。
【0013】
本発明の高強度熱延鋼板は、上記の成分組成を有する鋼スラブを、Ar3変態点〜(Ar3変態点+100)℃の範囲の仕上温度で熱間圧延後、50〜230℃/sの平均冷却速度で500〜625℃の冷却停止温度まで一次冷却し、0.5s以上空冷後、100℃/s以上の平均冷却速度で二次冷却し、400〜550℃の巻取温度で巻取る方法により製造できる。
【0014】
このとき、一次冷却の冷却停止温度と巻取温度の差を100℃以下にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、確実に125%以上のλが得られ、TSが490MPa以上590MPa未満の加工性に優れた高強度熱延鋼板を製造できるようになった。本発明の高強度熱延鋼板は、自動車における車体のメンバーやフレームなどの構造部材やサスペンションなどの足まわり部材の軽量化に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体的に説明する。なお、成分組成に関する「%」表示は特に断らない限り「質量%」を意味するものとする。
【0017】
1) 成分組成
C:0.04〜0.1%
Cは、必要な強度を確保するのに効果的な元素である。490MPa以上のTSを得るためには、C量を0.04%以上とする必要がある。一方、C量が0.1%を超えると、全伸びElやλが低下する。したがって、C量は0.04〜0.1%とする。より好ましくは0.05〜0.09%である。
【0018】
Si:0.3〜1.3%
Siは、固溶強化により強度を上昇させるのに必要な元素である。Si量が0.3%未満では490MPa以上のTSを得るために高価な合金元素の添加量を増やす必要がある。一方、Si量が1.3%を超えると表面性状の著しい低下を招く。したがって、Si量は0.3〜1.3%とする。より好ましくは0.4〜1.0%である。
【0019】
Mn:0.8〜1.8%
Mnは、固溶強化およびベイナイト相の生成に有効な元素である。490MPa以上のTSを得るためにはMn量を0.8%以上とする必要がある。一方、Mn量が1.8%を超えると溶接性が低下する。したがって、Mn量は0.8〜1.8%とする。より好ましくは0.8〜1.3%である。
【0020】
P:0.03%以下
P量が0.03%を超えると偏析によるElやλの低下を招く。したがって、Pは0.03%以下とする。
【0021】
S:0.005%以下
Sは、MnおよびTiと硫化物を形成してElやλを低下させるとともに、高強度化に有効なMnやTi量の低下を招くが、その量が0.005%までであれば許容できる。したがって、S量は0.005%以下とする。より好ましくは0.003%以下である。
【0022】
N:0.005%以下
N量が0.005%を超えて多量に含有されると、製造工程で多量の窒化物を生成し熱間延性を劣化させるので有害である。したがって、N量は0.005%以下とする。
【0023】
Al:0.005〜0.1%
Alは、鋼の脱酸剤として重要な元素であり、それにはAl量を0.005%以上とする必要がある。一方、Al量が0.1%を超えると鋳造が難しくなったり、鋼中に多量の介在物が残存し材質や表面性状の低下を招く。したがって、Al量は0.005〜0.1%とする。
【0024】
Ti:0.002%以上0.03%未満、V:0.002%以上0.03%未満、Nb:0.002%以上0.02%未満の中から選択された少なくとも一種
Ti、V、Nbは、その一部がCやNと結合し微細な炭化物や窒化物を形成し、高強度化に寄与する元素である。こうした効果を得るにはTi、V、Nbの中から選択された少なくとも一種を含有させる必要があり、各元素の量は0.002%以上とする必要がある。一方、TiやV量が0.03%以上であったり、Nb量が0.02%以上だと、強度上昇の割りにElやλの低下が大きくなり、所望の強度、加工性バランスが得られない。したがって、Ti量は0.002%以上0.03%未満、V量は0.002%以上0.03%未満、Nb量は0.002%以上0.02%未満とする。より好ましくは、Ti量、V量は0.029%以下、Nb量は0.019%以下である。
【0025】
残部はFeおよび不可避的不純物であるが、以下の理由により、Ca:0.0005〜0.005%、REM:0.0005〜0.03%のうち少なくとも1種や、B:0.0002〜0.005%を、個別にあるいは同時に含有させることが好ましい。
【0026】
Ca:0.0005〜0.005%、REM:0.0005〜0.03%
CaやREMは、介在物の形態制御に有効な元素であり、Elやλの向上に寄与する。こうした効果を得るには、Ca量やREM量を0.0005%以上とすることが好ましい。一方、Ca量が0.005%を超えたり、REM量が0.03%を超えると鋼中介在物が増加し材質が劣化する。したがって、Ca量は0.0005〜0.005%、REM量は0.0005〜0.03%とすることが好ましい。
【0027】
B:0.0002〜0.005%
Bは、アシキュラーフェライト生成に有利な元素であり、そのためには0.0002%以上の添加が必要である。一方、B量が0.005%を超えると添加の効果が飽和し、コストに見合う効果が得られない。したがって、B量は0.0002〜0.005%とする。
【0028】
2) ミクロ組織
本発明の高強度熱延鋼板は、ポリゴナルフェライト相とアシキュラーフェライト相からなるフェライト相中にベイナイト相が分散しており、組織全体に占める面積率でフェライト相が85%以上、ベイナイト相が10%以下、フェライト相とベイナイト相以外の他の相の面積率が5%以下であり、かつフェライト相全体に占めるアシキュラーフェライト相の面積率が30%以上80%未満であるミクロ組織を有している。ベイナイト相とフェライト相の面積率をこのように制御することにより490MPa以上590MPa未満のTSを確保した上で高いEl値を達成できる。また、アシキュラーフェライト相の面積率をこのように制御することによりフェライト相とベイナイト相との硬度差が小さくなり、125%以上のλが確保されることになる。なお、アシキュラーフェライト相の面積率は30%以上79%以下とすることが好ましい。フェライト相とベイナイト相以外にパーライト相や残留オーステナイト相やマルテンサイト相などの他の相が存在しても、その割合が組織全体に占める面積率で5%以下であれば、本発明の効果を損なうことはない。このため、フェライト相とベイナイト相以外の他の相の面積率(他の相の面積率の合計)を5%以下とする。
【0029】
ここで、上記のフェライト相、ベイナイト相、あるいはその他の相の面積率は、走査型電子顕微鏡(SEM)用試験片を採取し、圧延方向に平行な板厚断面を研磨後、ナイタール腐食し、板厚中央部を倍率1000倍および3000倍でSEM写真を10視野で撮影し、フェライト相、ベイナイト相、その他の相を画像処理により抽出し、画像解析処理によりフェライト相、ベイナイト相、その他の相の面積および観察視野の面積を測定して、(各相の面積)/(観察視野の面積)×100(%)より算出した。また、フェライト相全体に占めるアシキュラーフェライト相の面積率は、上記と同様にして、アシキュラーフェライト相の面積を求め、(アシキュラーフェライト相の面積)/(観察視野の面積-ベイナイト相の面積-その他の相の面積)×100(%)より算出した。ここで、フェライト相は1000倍のSEM写真で灰色に観察される部分であり、粒界を除く白色に観察される部分が第二相である。第二相のうち3000倍のSEM写真で炭化物等の内部構造が観察される粒をベイナイト相と定義する。ただし、内部構造のうち間隔0.05μm以上のラメラ構造を有する部分はパーライトと定義してベイナイト相から除外する。また、アシキュラーフェライト相は等軸なポリゴナルフェライト相とは異なり伸びた形状を有するフェライト粒からなる相として観察され、各フェライト粒の最も長い径を長径とし、またこれに直交する方向での最も短い径を短径としたとき、長径/短径≧1.5を満たすフェライト粒からなる相をアシキュラーフェライト相と定義する。
【0030】
なお、アシキュラーフェライト相の面積率は、上記したように直接アシキュラーフェライト相の面積率自体を求めてもよいが、フェライト相の面積率からポリゴナルフェライト相の面積率を差し引いて求めることもできる。この場合は、ポリゴナルフェライト相は、上記の長径/短径<1.5を満たすフェライト粒からなる相として定義される。
【0031】
3) 製造条件
熱間圧延の仕上温度:Ar3変態点〜(Ar3変態点+100)℃
仕上温度がAr3変態点未満では鋼板の表層部に粗大粒や混粒が生じてElやλの低下を招く。一方、仕上温度が(Ar3変態点+100)℃を超えると結晶粒が粗大化し、所望の特性が得られない。したがって、仕上温度はAr3変態点〜(Ar3変態点+100)℃以上とする。
【0032】
なお、ここでいうAr3変態点は、冷却速度10℃/sの加工フォーマスタ実験で熱膨張曲線を求め、その変化点により求めた変態温度である。
【0033】
熱間圧延後の一次冷却条件:平均冷却速度50〜230℃/s、冷却停止温度500〜625℃
熱間圧延後の一次冷却の平均冷却速度が50℃/s未満では高温域からフェライト変態が開始され、所望の量のアシキュラーフェライト相が得られない。一方、一次冷却の平均冷却速度が230℃/sを超えると所望の量のアシキュラーフェライト相を確保できない。したがって、一次冷却の平均冷却速度は50〜230℃/sとするが、70℃/s以上とすることが好ましく、100℃/s以上とすることがより好ましい。なお、一次冷却の方法は、特に限定する必要はなく、例えば、公知のラミナー冷却による水冷も利用できる。
【0034】
一次冷却は500〜625℃の冷却停止温度で停止させる必要があるが、これは、500℃未満ではベイナイト相の生成が過剰となり、625℃を超えると所望の量のアシキュラーフェライト相が得られないためである。より好ましい冷却停止温度は500〜550℃である。これは、550℃を超えるとアシキュラーフェライト相が粗大化する傾向になり、望ましいλが得られなくなる場合があるためである。
【0035】
一次冷却後の空冷時間:0.5s以上
一次冷却後の空冷時間は、所望のミクロ組織を達成するために極めて重要である。特に、ベイナイト相を適正量生成させるために、一次冷却を行った後は、冷却を停止して空冷とする。空冷時間が0.5s未満ではオーステナイト相への炭素濃化が不十分となり、所望の量のベイナイト相が得られない。したがって、一次冷却後の空冷時間は0.5s以上とする。好ましくは5s以下である。
【0036】
空冷後の二次冷却条件:平均冷却速度100℃/s以上
空冷後は、空冷中に調整されたフェライト相の生成量が変動しないように、平均冷却速度100℃/s以上で巻取温度まで二次冷却する必要がある。なお、二次冷却の方法も、特に限定する必要はなく、例えば、公知のラミナー冷却による水冷を利用できる。
【0037】
巻取温度:400〜550℃
二次冷却後まで維持されたオーステナイト相をベイナイト相に変態させるために、400〜550℃の巻取温度で巻取る必要がある。これは、巻取温度が400℃未満ではベイナイト相より硬質なマルテンサイト相が生成し、また、550℃を超えるとパーライト相が生成して、Elやλが低下するためである。
【0038】
より優れた伸びフランジ性を得るために、一次冷却の冷却停止温度と巻取温度の差を100℃以下にすることが好ましい。これにより、主相であるフェライト相とベイナイト相などの硬質な第二相の硬度差がより小さくなり、λが向上するためである。
【0039】
その他の製造条件は通常の条件で行える。例えば、所望の組成を有する鋼は転炉や電気炉などで溶製後、真空脱ガス炉にて二次精錬を行って製造される。その後の鋳造は、生産性や品質上の点から連続鋳造法で行うのが好ましい。鋳造されるスラブは、厚みが200〜300mm程度の通常のスラブであっても、厚み30mm程度の薄スラブであってもよい。薄スラブにすれば粗圧延を省略できる。鋳造後のスラブは、そのまま直送熱間圧延しても、加熱炉で再加熱後熱間圧延してもよい。
【0040】
また、本発明の高強度熱延鋼板は、電気亜鉛めっき鋼板や溶融亜鉛めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板等のめっき鋼板とすることもできる。
【実施例】
【0041】
表1に示す組成とAr3変態点を有する鋼スラブNo.A〜Iを、1250℃に加熱し、表2に示す熱延条件で板厚3mmの熱延鋼板No.1〜13を作製した。なお、表1のAr3変態点は上記の方法により求めた。
【0042】
そして、上記の方法で組織全体に占めるフェライト相、ベイナイト相の面積率、フェライト相全体に占めるアシキュラーフェライト相の面積率を求めた。また、JIS 5号引張試験片(圧延方向に直角方向)および穴広げ試験用試験片(130mm角)を採取し、次のような方法によりTS、Elおよびλを求めた。
TS、El: JIS Z2241に準拠して、3本の引張試験片に歪み速度10mm/minで引張試験を行い、TSとElを求め、3本の平均値をTS、Elとした。
λ:鉄連規格JFST 1001に準拠して、試験片中央に10mmφの穴を打ち抜いた後、60°円錐ポンチをバリと反対側から押し上げ穴広げ試験を行い、亀裂が板厚を貫通した時点での穴径dmmを測定し、次式より算出し、3個の平均値によりλを評価した。
λ(%)=[(d-10)/10]×100
結果を表3に示す。本発明例では、TSが490MPa以上590MPa未満であり、かつElが29%以上、λが125%以上で加工性に優れていることがわかる。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.04〜0.1%、Si:0.3〜1.3%、Mn:0.8〜1.8%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、N:0.005%以下、Al:0.005〜0.1%を含有し、かつTi:0.002%以上0.03%未満、V:0.002%以上0.03%未満、Nb:0.002%以上0.02%未満の中から選択された少なくとも一種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、組織全体に占めるフェライト相の面積率が85%以上、ベイナイト相の面積率が10%以下、前記フェライト相とベイナイト相以外の他の相の面積率が5%以下であり、かつ前記フェライト相全体に占めるアシキュラーフェライト相の面積率が30%以上80%未満であるミクロ組織を有することを特徴とする加工性に優れた高強度熱延鋼板。
【請求項2】
さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.005%、REM:0.0005〜0.03%のうち少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1に記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板。
【請求項3】
さらに、質量%で、B:0.0002〜0.005%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の成分組成を有する鋼スラブを、Ar3変態点〜(Ar3変態点+100)℃の範囲の仕上温度で熱間圧延後、50〜230℃/sの平均冷却速度で500〜625℃の冷却停止温度まで一次冷却し、0.5s以上空冷後、100℃/s以上の平均冷却速度で二次冷却し、400〜550℃の巻取温度で巻取ることを特徴とする加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
【請求項5】
一次冷却の冷却停止温度と巻取温度の差を100℃以下にすることを特徴とする請求項4に記載の加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。

【公開番号】特開2012−57250(P2012−57250A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168870(P2011−168870)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】