説明

加工方法および加工装置

【課題】単結晶材料で構成されたワークの被処理面の形状が目的とする形状になるように、被処理面に効率よく修正加工を施すことができる加工方法および加工装置を提供すること。
【解決手段】本発明の加工方法は、結晶性材料からなるワーク10に対して、結晶性材料の結晶軸と被処理面101とのなす角度(カット角)が、目的とする角度(目的とするカット角)に修正されるよう、プラズマエッチング加工を施す方法であって、結晶性材料の結晶軸と被処理面101とのなす角度をX線回折装置で測定し、この角度に基づいて、エッチング加工における被処理面101の各部の加工量を求め、加工計画データを作成する。そして、この加工計画データに基づいてワーク10を加工する。なお、目的とする角度とは、例えばワーク10がATカットの水晶ウエハである場合、z軸に対して35度15分とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工方法および加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信機器、情報機器、民生機器等の電子機器に使用されている圧電振動子や圧電発振器等の圧電デバイスは、圧電材料からなる圧電振動片を備えている。圧電材料としては、一般に安定した周波数特性を得られることから水晶が用いられている。
このような圧電振動子に用いる水晶片は、人工的に育成した人工水晶の原石をマルチワイヤソー等の切断加工装置を用いて多数枚にスライスすることにより製造される。
【0003】
例えば、特許文献1には、半導体結晶を多数枚のウエハ状に切断するための多数のワイヤを備えたマルチワイヤソーが開示されている。
ここで、半導体結晶を切断する場合、この切断面は、半導体結晶の結晶軸に対して所定の角度をなしている必要がある。このため、マルチワイヤソーを用いて半導体結晶を切断する場合には、半導体結晶の結晶軸に対するワイヤの角度が、前記所定の角度になるよう設定される。
【0004】
このようなマルチワイヤソーは、人工水晶の切断にも適用することができ、これにより結晶軸に対して所定の角度で人工水晶を切断し、水晶片を製造することができる。例えば、結晶軸(z軸)から35度15分傾けた切断角度で切り出された水晶ウエハを用いて、いわゆるATカットの水晶振動片が製造される。
ところが、上述したようなマルチワイヤソーを用いたとしても、人工水晶の結晶軸と水晶片の切断面とがなす角度(カット角)を厳密に制御することは困難である。このため、前記角度が目的とする角度(目的とするカット角)からずれてしまうことが多々あった。
【0005】
仮に切断面の角度が目的とする角度からずれてしまった場合、そのような水晶片の切断面を追加工により修正することは、技術的に極めて困難である。このため、そのような水晶片は、角度がずれたまま水晶振動子として製品化するか、あるいは処分する他なく、これにより製品化した水晶振動子の特性低下を招いたり、あるいは生産歩留まりの低下を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−90923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、単結晶材料で構成されたワークの被処理面の形状が目的とする形状になるように、被処理面に効率よく修正加工を施すことができる加工方法および加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]
本発明の加工方法は、プラズマエッチング装置を用いて、単結晶材料で構成された板状のワークの形状を、目的とする形状に修正する加工方法であって、
結晶構造解析法により、前記ワークの基準となる結晶軸と前記ワークの被処理面とがなす角度を測定する結晶構造解析工程と、
前記測定された角度に基づいて、前記ワークの被処理面の形状を前記目的とする形状に修正するのに必要とされる前記ワークの加工量分布を求めるデータ変換工程と、
前記加工量分布を再現するように、前記プラズマエッチング装置の諸動作を制御しつつ、前記ワークにプラズマエッチング加工を施す加工工程とを有することを特徴とする。
これにより、単結晶材料で構成されたワークの被処理面の形状が目的とする形状になるように、被処理面に効率よく修正加工を施すことができる。
【0010】
[適用例2]
本発明の加工方法では、前記ワークの基準となる結晶軸と前記ワークの被処理面とがなす角度を実測角度とし、
前記ワークの基準となる結晶軸と前記目的とする形状の表面とがなす角度を目的角度としたとき、
前記データ変換工程における前記ワークの各部の加工量分布は、前記実測角度と前記目的角度との角度差に基づいて求められたものであることが好ましい。
これにより、加工量分布を簡単に求めることができる。
【0011】
[適用例3]
本発明の加工方法では、前記結晶構造解析工程に供される前記ワークは、あらかじめ前記加工量分布を見越した厚さの加工代を有しており、
前記データ変換工程において求められる前記加工量分布は、前記加工代に収まるように求められることが好ましい。
これにより、ワークの厚さを必要以上に減らしてしまうのを防止することができる。
【0012】
[適用例4]
本発明の加工方法では、前記ワークの各部の加工量分布のうちの最大の加工量は、前記加工代の厚さとほぼ同じであることが好ましい。
これにより、加工後のワークの厚さを、目的とする厚さに特に近づけることができる。また、加工代を最大限に利用することができ、ワークのより広い範囲について形状の修正をすることができる。
【0013】
[適用例5]
本発明の加工方法では、前記プラズマエッチング装置は、前記ワーク近傍に電界を発生させる電極と、該電極に高周波を印加する通電手段と、前記ワーク近傍に処理ガスを供給する処理ガス供給手段と、前記電極と前記ワークとを相対的に移動する移動手段とを有しており、
前記加工工程において、前記データ変換工程において求められた加工量分布に基づき、前記移動手段により、前記ワークの表面に沿って前記電極を移動させつつ、前記通電手段による前記高周波のRFパワー、前記処理ガス供給手段による前記処理ガスの供給量、前記移動手段による前記ワークと前記電極との離間距離、前記ワークと前記電極との相対移動速度の少なくとも1つを変化させることが好ましい。
これにより、結晶構造解析法により取得したワークの結晶構造に関する情報を直接利用して、ワークの加工量分布を求め、ワークを加工しているため、加工後のワークの被処理面の形状を目的とする形状に限りなく近づけることができる。また、加工前のワークの被処理面の形状を人為的に取得する場合に比べて、人為的誤りが介在するおそれがないため、この点においても有利である。
【0014】
[適用例6]
本発明の加工方法では、前記加工工程において、前記ワークの一方の面に対して前記加工量分布に基づいてプラズマエッチング加工を施した後、前記ワークを表裏反転し、前記ワークの他方の面に対しても、前記一方の面に対する加工量分布と同様の加工量分布に基づいてプラズマエッチング加工を施すことが好ましい。
これにより、両面の平行度が高いワークを簡単に製造することができる。
【0015】
[適用例7]
本発明の加工方法では、前記結晶構造解析法は、X線回折法であることが好ましい。
これにより、比較的簡単にワークの結晶構造を同定することができる。
【0016】
[適用例8]
本発明の加工装置は、対向配置された上部電極および下部電極と、
前記上部電極と前記下部電極との間に、被処理面を有し、単結晶材料で構成された板状のワークを載置する載置部と、
前記上部電極および前記下部電極の少なくとも一方と前記ワークとを相対的に移動する移動手段と、
前記被処理面に処理ガスを供給する処理ガス供給手段と、
前記上部電極と前記下部電極との間に高周波を印加する通電手段と、
前記ワークの基準となる結晶軸と前記ワークの被処理面とがなす角度を測定する結晶構造解析装置と、
前記移動手段、前記処理ガス供給手段および前記通電手段の少なくとも1つの作動を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記結晶構造解析装置が取得した前記角度に基づいて、前記ワークの被処理面の形状を目的とする形状に修正するのに必要とされる前記ワークの加工量分布を求め、該加工量分布を再現するように、前記移動手段、前記処理ガス供給手段および前記通電手段の少なくとも1つの作動を制御するよう構成されていることを特徴とする。
これにより、単結晶材料で構成されたワークの被処理面の形状が目的とする形状になるように、被処理面に効率よく修正加工を施すことができる加工装置が得られる。
【0017】
[適用例9]
本発明の加工装置では、前記制御手段は、前記ワークと前記上部電極とを相対的に移動しつつ、前記移動手段による前記ワークと前記上部電極との離間距離および前記ワークと前記上部電極との相対移動速度、前記処理ガス供給手段による前記処理ガスの供給量、前記通電手段による前記高周波のRFパワーの少なくとも1つを変化させるよう構成されていることが好ましい。
これにより、加工後のワークの被処理面の形状を目的とする形状に限りなく近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の加工装置の実施形態を示す図(断面図、側面、ブロック図)である。
【図2】図1に示すX線回折装置を模式的に示す概略図である。
【図3】本発明の加工方法の実施形態を説明するための図(断面図)である。
【図4】本発明の加工方法の実施形態を説明するための図(断面図)である。
【図5】マルチワイヤソーで人工水晶を切断する様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の加工方法および加工装置を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<加工装置>
まず、本発明の加工装置について説明する。
図1は、本発明の加工装置の実施形態を示す図(断面図、側面、ブロック図)、図2は、図1に示すX線回折装置を模式的に示す概略図である。
【0020】
本発明の加工装置は、結晶性材料で構成された板状のワークの少なくとも一方の面に、厚さ方向のエッチング加工を施す装置である。
なお、以下の説明では、図1中互いに直交する3つの方向をx軸方向、y軸方向およびz軸方向とする。そのうち、ワーク10の被処理面101をxy平面とし、被処理面101の法線方向をz軸方向とする。以下、対応する方向はその他の図においても同様である。
【0021】
図1に示すように、加工装置1は、一対の電極(上部電極21および下部電極22)と、上部電極21と下部電極22との間に処理ガスを供給する処理ガス供給手段3と、上部電極21と下部電極22との間に高周波電圧を印加する電力供給手段4と、上部電極21と下部電極22とをx軸、y軸およびz軸方向に相対的に移動する移動手段5と、処理ガス供給手段3、電力供給手段4および移動手段5の作動を制御する制御手段6とを有している。
【0022】
この加工装置1は、ワーク10を被処理面101を上側にして下部電極22に固定した状態で、処理ガス供給手段3により一対の電極21、22間に処理ガスを供給しつつ、電力供給手段4により一対の電極21、22間に高周波電圧を印加することにより、処理ガスを活性化してプラズマを生成させ、このプラズマが発生するプラズマ発生領域Sとワーク10とを移動手段5により相対的に移動することにより、前記プラズマにより被処理面101を局所的にかつ連続して加工する装置である。
【0023】
なお、ワーク10は、結晶性材料で構成されたものであり、本願明細書中の「加工」とは、結晶性材料の結晶軸と被処理面101とのなす角度(カット角)が、目的とする角度(目的とするカット角)に修正されるよう、被処理面101に施すエッチング加工である。
以下、加工装置1の各部の構成について説明する。
上部電極21は、例えば四角柱状をなしている。このような上部電極21は、導線42を介して後述する高周波電源41に接続されている。なお、上部電極21の形状は、円柱状等であってもよく、特に限定されない。また、円柱状をなす上部電極21を、例えばローラー状電極のように、その軸線がワーク10の被処理面101と平行になるよう配置してもよい。
【0024】
上部電極21の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、銅、アルミニウム、鉄、銀等の金属単体、ステンレス鋼、真鍮、アルミニウム合金等の各種合金、金属間化合物、各種炭素材料等が挙げられる。
下部電極22は、接地電極としての機能を有する電極であり、導線42を介して直接接地されている。これにより、下部電極22の帯電を防止することができ、プラズマ発生領域Sに確実に電界を発生させることができる。
【0025】
また、下部電極22はワーク10を載置する載置部としての機能も有する。本実施形態では、下部電極22の上面221にワーク10が接触して設置(載置)されている。これにより、ワーク10の被処理面101に対して確実に加工を施すことができる。
下部電極22の形状は、例えば平板状、円柱状など、特に限定されない。また、下部電極22の構成材料は、上部電極21と同様に、特に限定されない。
【0026】
処理ガス供給手段3は、所定のガスを充填し供給するガスボンベ(ガス供給源)31と、ガスボンベ31から供給されるガスの流量を調整するマスフローコントローラー(流量調整手段)32と、プラズマ発生領域Sに処理ガスを噴出するノズル33と、ノズル33とガスボンベ31とを接続する処理ガス供給流路34と、マスフローコントローラー32より下流端側で、処理ガス供給流路34内の流路を開閉するバルブ35とを有している。マスフローコントローラー32およびバルブ35は、それぞれ、制御手段6に電気的に接続していて、制御手段6によりその作動が制御される。
【0027】
このような処理ガス供給手段3は、ガスボンベ31から処理ガスを送り出し、マスフローコントローラー32により処理ガスの流量を調節する。そして、流量が調整された処理ガスを処理ガス供給流路34を介してノズル33からプラズマ発生領域Sに導入(供給)する。また、処理ガス供給手段3は、バルブ35を閉状態とすることにより、プラズマ発生領域Sへの処理ガスの供給を停止する。
【0028】
ガスボンベ31内に充填する処理ガスとしては、例えば、CF、C、C、C、CClF、SF等のフッ素原子含有化合物ガスやCl、BCl、CCl等の塩素原子含有化合物ガスなどの各種ハロゲン系ガスが用いられる。
また、処理ガスは、一般に、上記処理ガスとキャリアガスとからなる混合ガスが用いられる。なお、「キャリアガス」とは、放電開始と放電維持のために導入するガスのことを言う。
【0029】
この場合、ガスボンベ31内に、混合ガス(処理ガス+キャリアガス)を充填して用いてもよいし、処理ガスとキャリアガスとがそれぞれ別のガスボンベに充填され、処理ガス供給流路34の途中でこれらが所定の混合比で混合されるような構成であってもよい。
キャリアガスとしては、He、Ne、Ar、Xe等の希ガスを用いることができる。これらは、単独でも2種以上を混合した形態でも用いることができる。また、処理ガスの解離促進のためにOを混合ガスに混ぜてもよい。
【0030】
ノズル33は、プラズマ発生領域Sに隣接して設置されている。これにより、プラズマ発生領域Sに確実に処理ガス(混合ガス)を供給することができる。なお、ノズル33の配設位置、数および形状などは、プラズマ発生領域Sに処理ガスを供給することができれば、特に限定されない。
なお、処理ガス供給手段3によって、一対の電極21、22間に供給された処理ガスは、図示しない排気手段により排気されるようになっている。排気手段としては、特に限定されず、例えば真空ポンプやファンなどを用いることができる。
【0031】
電力供給手段4は、一対の電極21、22間に高周波電圧を印加する高周波電源41と、上部電極21と高周波電源41と下部電極22とを導通する導線42とを備えている。また、高周波電源41は、制御手段6によりその作動が制御される図示しない電力調整部を有しており、制御手段6の制御(指令)により、供給する電力の大きさを変更し得るようになっている。また、図示されていないが、供給する電力に対する整合回路(インピーダンスマッチング回路)や、高周波電源41の周波数を変える周波数調整手段(回路)や、高周波電源41の印加電圧を変える電圧調整手段(回路)などが必要に応じて設置されている。これにより、ワーク10に対する加工の処理条件を適宜調整することができる。
【0032】
ワーク10に対して加工を行うときは、高周波電源41が作動して上部電極21と下部電極22との間に高周波電圧が印加される。これにより、上部電極21と下部電極22との間に電界が発生し、処理ガス供給手段3により上部電極21と下部電極22との間に処理ガス(または混合ガス)が供給されると、放電が生じて、プラズマ発生領域Sにプラズマが発生する。
【0033】
一対の電極21、22間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、10〜70MHzであるのが好ましい。
移動手段5は、プラズマ発生領域S(すなわち、上部電極21と下部電極22の間の領域)とワーク10とを相対的に、x軸方向およびy軸方向に2次元的に移動する第1移動手段51と、上部電極21とワーク10とをz軸方向に相対的に移動する第2移動手段52とで構成されている。
【0034】
第1移動手段51としては、下部電極22をx軸方向およびy軸方向に移動させるNC(数値制御)ステージ移動装置が用いられる。この第1移動手段51は、ワーク10を加工する際に、下部電極22をx軸方向およびy軸方向に移動することにより、ワーク10の被処理面101をプラズマ発生領域Sに対して2次元的に移動する移動手段であり、移動速度(すなわち、プラズマ発生領域Sとワーク10との相対的な移動速度)や停止時間等を調整することができるように構成されている。このような第1移動手段51の作動は、後述するNC(数値制御)制御装置15により制御される。
【0035】
なお、本発明では、例えば下部電極22側が固定され、第1移動手段51が上部電極21側をx軸方向およびy軸方向に移動させるよう構成されていてもよく、上部電極21と下部電極22とをそれぞれx軸方向およびy軸方向に移動させるよう構成されていてもよい。
一方、第2移動手段52としては、上部電極21をz軸方向に移動する移動装置が用いられている。この第2移動手段52により、上部電極21とワーク10の被処理面101との間の間隙距離を調整することができる。このような第2移動手段52の作動は、制御手段6により制御される。
【0036】
なお、本発明では、例えば上部電極21側が固定され、第2移動手段52が下部電極22側をz軸方向に移動させるよう構成されていてもよく、上部電極21と下部電極22とをそれぞれz軸方向に移動させるよう構成されていてもよい。
以上のような構成の移動手段5により、プラズマ発生領域Sは、ワーク10の被処理面101の上方の空間において、ワーク10に対して、相対的に、xyzの3次元空間内で任意の位置(座標)に移動可能となる。
【0037】
次に、加工装置1の回路構成について説明する。
図1に示すように、この加工装置1は、入力等の各操作を行う操作部(入力手段)11と、記憶手段12と、加工装置1の全体の作動(駆動)を制御する制御手段6と、目標形状データ入力部13と、X線回折装置14と、NC制御により第1移動手段51の作動を制御するNC制御装置15とを備えている。
【0038】
操作部11としては、例えば、キーボード、液晶表示パネル、EL表示パネル等を備えたタッチパネル等を用いることができ、この場合は、操作部11は、各種の情報を表示(報知)する表示手段(報知手段)を兼ねるものでもよい。
目標形状データ入力部13は、ワーク10の被処理面101の目標形状を示す目標形状データを入力する手段である。目標形状データは、目標形状データ入力部13から制御手段6に入力される。入力されるデータとしては、例えばワーク10が水晶からなる場合、ATカット、BTカット等のカットの種類、または、結晶軸からのカット角等が挙げられる。
【0039】
X線回折装置14は、ワーク10にX線を照射し、ワーク10の格子面で散乱されたX線の回折角と強度とを検出することにより、ワーク10の結晶構造を同定する手段である。
このX線回折装置14は、図2に示すように、X線管のようなX線源141と、電荷結合素子(CCD)やイメージングプレート(IP)のような検出器142とを有している。
X線源141からワーク10に対してX線を照射すると、ワーク10に含まれる格子面でX線が散乱され、所定の干渉条件を満たす複数の格子面で散乱されたX線が互いに強め合い、検出器には、特定の位置に点状の干渉パターン(以下、「ブラッグスポット」という。)が観測される。
【0040】
上述した干渉条件は、ブラッグの条件として一般的に知られており、ブラッグスポットの回折角を測定することにより、X線の干渉をもたらした格子面と、X線回折装置14の基準面とがなす角度を算出することができる。
一方、X線回折装置14は、ワーク10を支持する支持部144を有しており、支持部144の支持面1440はワーク10の下面102を支持するようになっている。
【0041】
この支持部144の支持面1440と前述したX線回折装置14の基準面とを関連付けることにより、ワーク10のX線の干渉をもたらした格子面とワーク10の下面102とがなす角度(以下、この角度を「実測角度」という。)を間接的に測定することができる。
そして、この実測角度と、ワーク10の目的とするカット(例えばATカット等)の結晶軸からの理想的な角度(以下、この角度を「目的角度」という。)との差を求めることにより、X線回折装置14により、ワーク10の下面102について、目的とする面からの角度ずれの程度を測定することができる。
【0042】
なお、ワーク10は、図2に示すように、下面102が水平方向になるよう支持されていてもよく、それ以外の方向(例えば鉛直方向)になるよう支持されていてもよい。
また、X線回折装置14は、検出器142と電気的に接続され、CPUまたはこれを備えるコンピューター等の解析手段143を備えている。この解析手段143により、上記実測角度および実測角度と目的角度との差といった角度データを算出できるようになっている。
【0043】
また、解析手段143により算出された角度データは、加工装置1の制御手段6に入力される。
制御手段6は、例えば、CPUあるいはこれを備えるマイクロコンピューターやパーソナルコンピューター等のコンピューターで構成されている。この制御手段6には、操作部11からの信号、目標形状データ入力部13およびX線回折装置14からのデータ等が、それぞれ入力される。
【0044】
制御手段6は、予めテストピースを用いて求めた、所定条件(高周波電圧の大きさ、処理ガスの供給量、電極間距離、相対移動速度等)でのエッチングレートと、操作部11からの信号、目標形状データ入力部13およびX線回折装置14からのデータ等とに基づき、予め設定されたプログラムに従って、加工計画データ(加工量分布)を作成する。そして、制御手段6は、作成された加工計画データに基づいて(作成された加工量分布を再現するように)、加工装置1の各部の作動、例えば、処理ガス供給手段3、電力供給手段4、移動手段5等の作動をそれぞれ制御するための制御データを作成する。
【0045】
これらの制御データには、例えば、下部電極22の移動パターン(すなわち、プラズマ発生領域Sとワーク10との相対的な移動パターン)、下部電極22の移動速度、一対の電極21、22間に印加する高周波電圧の大きさ(RFパワー)、上部電極21と下部電極22の離間距離、処理ガスの供給量などのデータが含まれている。
記憶手段12は、記録媒体を有していて、この記録媒体に、目標形状データ入力部13で入力された被処理面101の目標形状を示す目標形状データ、X線回折装置14により測定された被処理面101(図2に示す下面102)の傾きのデータ、前記加工計画データ等を記憶する。記録媒体としては、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、ICメモリー等が挙げられる。この記憶手段12における書き込み(記憶)、書き換え、消去、読み出し等の制御は、制御手段6によりなされる。
【0046】
NC制御装置15は、例えば、CPUあるいはこれを備えるマイクロコンピューターやパーソナルコンピューター等のコンピューターで構成されており、NC制御装置15には、制御手段6により作成された加工計画データ(すなわち、第1移動手段の駆動パターン)等が入力される。NC制御装置15は、制御手段6からの加工計画データ等に基づき、予め設定されたプログラムに従って、NC制御により第1移動手段51の作動を制御する。
【0047】
ワーク10としては、前述したように結晶性材料で構成された単結晶板が挙げられ、具体的には、水晶、サファイア、LiTaO、LiNbO、ダイヤモンド等の圧電材料、シリコン、ガリウム−ヒ素、炭化ケイ素等の半導体材料などの基板が挙げられる。
このようなワーク10としては、例えば人工水晶の原石のような結晶のインゴットをスライスして得られる板状のウエハが挙げられる。以下、人工水晶からワーク10を切り出す方法について説明する。
この切り出しには、例えば、マルチワイヤソー、マルチブレードソーのような機械的加工法、放電加工のような電気的加工法、レーザー加工のような光学的加工法等が挙げられるが、これらの中でも大型のインゴットを安定して加工可能なマルチワイヤソーが好ましく用いられる。
【0048】
図5は、マルチワイヤソーで人工水晶を切断する様子を示す平面図である。
図5に示すマルチワイヤソー7は、表面に周方向に沿って一定の間隔で形成された複数の溝を有する、円筒状の溝付きローラー71を2本有している。これらの2本の溝付きローラー71、71は、互いに離間した状態で、回転軸710を回転中心としてそれぞれが回転自在に設置されている。
【0049】
また、これらの溝付きローラー71、71は、互いの回転軸710が平行になるよう配置されており、これらの溝付きローラー71、71間に橋渡しするように、それぞれの溝付きローラー71の溝に、環状のワイヤ72が架けられている。そして、それぞれのワイヤ72が一定の張力で引っ張られるように、2本の溝付きローラー71、71の離間距離が調整されている。
【0050】
このような状態で、2本の溝付きローラー71、71を同じ方向に回転されると、それに伴ってワイヤ72が回転する。そして、図5に示すように、回転中のワイヤ72に被加工物(例えば人工水晶10’)を押し当てることにより、人工水晶10’を所定の間隔で切断し、複数枚のワーク10を得ることができる。
この際、ワーク10の目的とするカットの種類に応じて、ワイヤ72の延伸方向と、人工水晶10’の結晶軸Aとがなす角度αが適宜設定される。例えば、ATカットの水晶ウエハをワーク10とする場合、前記角度αが35度15分になるように、ワーク10を配置すればよい。
【0051】
<加工方法>
次に、加工装置1の動作(本発明の加工方法)を説明する。
図3および図4は、それぞれ、本発明の加工方法の実施形態を説明するための図(断面図)である。
ワーク10に対して加工を施す方法は、大きく分けて、[A]加工計画データを作成する準備工程と、[B]加工計画データに基づいてワーク10を加工する加工工程の2つの工程を有している。
【0052】
以下、各工程を順次説明する。
[A]準備工程
[A−1]結晶構造解析工程
図3は、加工前のワーク10の断面を示しており、実線は加工前の被処理面101を表し、破線は基準となる格子面110に対して理想的な角度をなす被処理面、すなわち加工後の被処理面101’を表している。
【0053】
まず、ワーク10を図2に示すX線回折装置14の支持部144により支持し、ワーク10にX線を照射して、ブラッグスポットを検出器により検出する。そして、ワーク10のブラッグスポットの生成をもたらした格子面とワーク10の下面102(被処理面101)とがなす角度を算出する。
なお、ワーク10中には、面方位の異なる多数の格子面が存在しており、上記角度は、これら多数の格子面と下面102とがなす角度であるため、必然的に多数の値が存在することとなる。換言すれば、ブラッグスポットは、異なる位置に多数検出されることとなる。本工程では、この多数のブラッグスポットから、基準となる面方位の格子面に対応するブラッグスポットを、ワーク10を構成する結晶性材料の結晶モデルに基づいて特定する。ここでは、図3に示す格子面110が、この「基準となる面方位の格子面」に相当するものとし、この格子面110とワーク10の被処理面101とがなす角度を「実測角度θ」とする。
【0054】
一方、加工後のワーク10の被処理面101は、本来、ワーク10の使用目的に応じて、基準となる格子面に対して所定の角度を有している必要がある。具体的には、例えばワーク10が水晶であって、ワーク10から水晶振動片を製造する場合、上記の特定の角度には、ATカット、BTカット、XYカット、CTカット、DTカット、SLカット等の種類があり、例えば、ATカットでは、本来、ワーク10の結晶軸のxz面(z軸)と、ワーク10の被処理面101とがなす角度(カット角)が35度15分付近の特定角度に厳密に設定されている必要がある。なお、ワーク10におけるx軸、y軸、z軸については、それぞれ電気軸がx軸、機械軸がy軸、光軸がz軸に対応している。また、図3では、格子面110と目的とする所定の角度をなす理想的な面とがなす角度を「目的角度θ」とする。
【0055】
したがって、例えば、ATカットの水晶振動片を製造する場合、ワーク10の被処理面101とxz面(基準となる格子面)とがなす角度(カット角)は、前述したように、本来は35度15分(目的とするカット角)であることが理想である。よって、前述したマルチワイヤソーでは、被処理面101とxz面とがなす角度が35度15分となるようにスライスされる。
【0056】
ところが、ワイヤソーにおいて被処理面101とxz面とがなす角度を厳密に制御することは極めて困難である。このため、図3に示すように、実測角度θが目的角度θから外れてしまったワーク10が製造されることになるが、従来は、ワーク10の実測角度θを修正することが技術的に困難であった。このため、切断後のワーク10は、そのまま水晶振動子として製品化されるか、あるいは処分される他なく、その結果、水晶振動子の特性低下を招いたり、あるいは生産歩留まりの低下を招いていた。
本発明の加工方法および加工装置によれば、このようにして目的角度θから外れたワーク10の実測角度θに対し、適切な追加工を施すことが可能である。これにより、ワーク10の実測角度θを目的角度θに近づけることができる。その結果、水晶振動子の特性低下を防止するとともに、生産歩留まりを高めることができる。
【0057】
[A−2]データ変換工程
次いで、X線回折装置14により測定・算出された実測角度θ等のデータと、目標形状データ入力部13で入力されたカットの種類等データとに基づき、実測角度θと目的角度θとの角度ずれを算出する。そして、この角度ずれを有する2つの仮想面を想定し、これらの仮想面同士の離間距離の分布を算出する等して、ワーク10の被処理面101の加工計画データ、および加工装置1の各部の制御データを作成する。このような方法によれば、簡単に加工計画データおよび制御データを作成することができる。
【0058】
なお、人工水晶からワーク10を切り出す場合、ワーク10に加工を施した後の最終的な製品厚さ(例えば水晶振動片の厚さ)に対して、あらかじめ図3に示す加工代(加工しろ)120のような余分な厚さを含むように切り出すことが好ましい。これにより、後述する加工工程において、修正可能な形状の幅が広がることとなる。換言すれば、加工代120の厚さが厚いほど、実測角度θと目的角度θとの角度ずれの許容される範囲をより広げることが可能になる。
【0059】
[B]加工工程
まず、ワーク10を、被処理面101が上部電極21に臨むように、下部電極22の上面221上に載置する。
次いで、処理ガス供給手段3のバルブ35を開く。そして、マスフローコントローラー32によりガスの流量を調整し、ガスボンベ31から処理ガスを送り出す。これにより、処理ガスは、処理ガス供給流路34内を流れノズル33から噴出される。噴出された処理ガスは、プラズマ発生領域S(ワーク10の被処理面101上)に供給される。
【0060】
処理ガスの供給とともに、電力供給手段4を作動させることにより、上部電極21と下部電極22の間に高周波電圧が印加され、プラズマ発生領域Sに電界が生じる。
プラズマ発生領域Sに流入した処理ガスは、放電によって活性化され、プラズマが発生する。このようにして発生したプラズマ(活性化されたガス)は、ワーク10の被処理面101に接触することにより、図4(a)に示すように、被処理面101にプラズマエッチング加工(以下、単に「エッチング加工」という。)を施すことができる。
【0061】
プラズマ発生領域Sは、上部電極21とワーク10の相対位置の変化に応じて移動するため、移動手段5によってワーク10を移動させることにより、被処理面101の任意の領域に局所的なエッチング加工を施すことができる。
ここでは、図3に示すワーク10に対して、図3に実線で示す被処理面101が破線で示す被処理面101’の形状になるように加工を施す場合について説明するが、この被処理面101’は、X線回折装置14および目標形状データ入力部13からのデータに基づき、制御手段6で作成した加工計画データに相当する加工結果である。
【0062】
このような加工を行うため、制御手段6は、処理ガス供給手段3、電力供給手段4および移動手段5等の作動を適宜制御する。
なお、制御手段6が制御する具体的条件としては、前述したように、高周波の出力、上部電極21と下部電極22との離間距離、処理ガスの供給量(濃度)、プラズマ発生領域S(上部電極21)とワーク10との相対的な移動速度等が挙げられるが、これらの条件は、いずれも、プラズマ発生領域Sに発生するプラズマの濃度を左右する条件であり、プラズマの濃度が高くなれば、エッチング加工の加工量を高めることができ、一方、プラズマの濃度が低くなれば、エッチング加工の加工量を下げることができる。
【0063】
具体的には、例えば、高周波の出力を高めたり、上部電極21と下部電極22との離間距離を短縮することにより、いずれも、プラズマ発生領域Sでプラズマを発生させる際に供給される、単位時間あたりのエネルギー量を高めることができる。これにより、プラズマ発生領域Sに発生するプラズマの濃度を高めることができる。
また、例えば、処理ガスの供給量(濃度)を高めたり、プラズマ発生領域Sとワーク10との相対的な移動速度を下げたりすることにより、いずれも、プラズマの濃度を高めることができる。このうち、プラズマ発生領域Sとワーク10との相対的な移動速度は、例えばNCステージのような機構によって厳密に制御することが可能であるため、再現性が高い条件である。このため、この移動速度の条件を適宜設定することにより、プラズマ濃度を厳密に制御することができ、ひいてはエッチング加工の加工量を厳密に制御することができる。
【0064】
上記のような一定の関係に基づき、制御手段6は、適切な制御データを作成することができ、これにより、図3に実線で示すワーク10の被処理面101を、図3に示す被処理面101’に修正することができる。その結果、図4(b)に示すワーク10が得られる。
なお、制御手段6において、図3に破線で示すような加工結果(被処理面101’)を求める場合、実測角度θと目的角度θとの角度ずれのデータに基づいて、ワーク10の各部の加工量の分布が求められるが、この加工量分布は、ワーク10の全体で加工代120の厚さに収まるように設定するのが好ましい。これにより、ワーク10の厚さを必要以上に減らしてしまうのを防止することができる。
【0065】
また、図3に破線で示すような加工結果(被処理面101’)を求める場合、実測角度θと目的角度θとの角度ずれのデータに基づくと、最も加工量を大きくすべき領域が必然的に特定される。図3の場合では、この領域は、ワーク10の上面の右端部および下面の左端部に相当する。
したがって、前述した角度ずれの情報に基づいてワーク10の被処理面101の各部の加工量分布を求める場合、上面の右端部の加工量が、前述した加工代120の厚さと同程度になるよう設定されるのが好ましい。これにより、加工後のワーク10の厚さを、目的とする厚さに特に近づけることができる。
【0066】
なお、上記の観点に基づけば、制御手段6において、被処理面101’の高さ方向の位置を求めることが可能である。これにより、加工代120を最大限に利用することができ、角度ずれが比較的大きい場合でも、修正することができる。
また、以上のような方法で被処理面101’の高さ方向の位置を求める場合には、ワーク10の加工前の被処理面101の形状データをあらかじめ取得しておくことなく、目的とする形状のワーク10を得ることが可能になる。このため、形状の修正にかかる作業を省力化することができる。
【0067】
なお、ワーク10の加工前に、あらかじめ被処理面101の形状データ(プロファイル)を取得しておき、このプロファイルと、実測角度θおよび目的角度θとに基づいて加工計画データを求めるようにしてもよい。
以上のようにしてワーク10の一方の面を加工後、表裏を反転させ、反対側の面に対しても同様にして加工を施す。なお、ワーク10の表裏を反転する場合には、格子面110の向きが変わらないように、下部電極22上に載置することが必要である。これにより、両面の形状を目的とする形状に修正したワーク10が得られる。
【0068】
以上説明したような本発明では、X線回折装置14で取得したワーク10の結晶構造に関する情報を直接利用して、加工計画データおよび加工装置1の各部の制御データを作成し、この制御データに基づいてワーク10を加工している。このため、加工後の被処理面101’と格子面110とがなす角度は、前述した目的角度θに限りなく近づけることが可能である。また、加工前のワーク10の被処理面101の形状を人為的に取得する場合に比べて、人為的誤りが介在するおそれがないため、この点においても有利な加工方法である。
【0069】
このようにして形状を修正したワーク10は、例えば特性に優れた圧電デバイスや半導体デバイス等に適用することができる。
また、上記加工により、両面の平行度に優れたワーク10を製造することができる。その結果、圧電デバイスや半導体デバイスの各種特性のさらなる向上を図ることができる。なお、ワーク10の両面が平行である必要がない場合には、各面の加工計画データが異なっていてもよい。
【0070】
また、特に、ATカットの水晶振動片を備えた水晶発振器の場合、実測角度の目的角度からのずれは、その発振周波数等の特性に大きな影響を与える。具体的には、わずか数分程度の角度ずれが発振周波数の大きな変化をもたらすため、上述したような加工方法は、設計通りの周波数で発振する信頼性の高い発振器の製造においてその効果を顕著に発揮することができる。
以上、本発明の加工方法および加工装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0071】
例えば、前記実施形態では、準備工程において、X線回折法により実測角度を求める場合について説明したが、実測角度を求める方法はX線回折法に限定されず、電子線回折法、中性子線回折法等の結晶構造解析法で代替することもできる。なお、X線回折法によれば、比較的簡単にワークの結晶構造を同定することができる。
また、本発明の加工方法は、前記実施形態に、任意の目的の工程を追加したものでもよい。また、本発明のプラズマ加工方法は、真空下で実施しても良いし大気圧下で実施しても良い。特に大気圧プラズマ加工は真空排気時間やチャンバー、真空ポンプが不要である点で有利である。
さらに、本発明の加工装置における各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のもので置換してもよく、任意の構成物が追加されていてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1……加工装置 11……操作部 12……記憶手段 13……目標形状データ入力部 14……X線回折装置 141……X線源 142……検出器 143……解析手段 144……支持部 1440……支持面 15……NC制御装置 21……上部電極 22……下部電極 221……上面 3……処理ガス供給手段 31……ガスボンベ(ガス供給源) 32……マスフローコントローラー(流量調整手段) 33……ノズル 34……処理ガス供給流路 35……バルブ 4……電力供給手段 41……高周波電源 42……導線 5……移動手段 51……第1移動手段 52……第2移動手段 6……制御手段 10……ワーク 10’……人工水晶 101、101’……被処理面 102……下面 110……格子面 120……加工代 7……マルチワイヤソー 71……溝付きローラー 72……ワイヤ 710……回転軸 A……結晶軸 θ……実測角度 θ……目的角度 S……プラズマ発生領域 α……角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマエッチング装置を用いて、単結晶材料で構成された板状のワークの形状を、目的とする形状に修正する加工方法であって、
結晶構造解析法により、前記ワークの基準となる結晶軸と前記ワークの被処理面とがなす角度を測定する結晶構造解析工程と、
前記測定された角度に基づいて、前記ワークの被処理面の形状を前記目的とする形状に修正するのに必要とされる前記ワークの加工量分布を求めるデータ変換工程と、
前記加工量分布を再現するように、前記プラズマエッチング装置の諸動作を制御しつつ、前記ワークにプラズマエッチング加工を施す加工工程とを有することを特徴とする加工方法。
【請求項2】
前記ワークの基準となる結晶軸と前記ワークの被処理面とがなす角度を実測角度とし、
前記ワークの基準となる結晶軸と前記目的とする形状の表面とがなす角度を目的角度としたとき、
前記データ変換工程における前記ワークの各部の加工量分布は、前記実測角度と前記目的角度との角度差に基づいて求められたものである請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
前記結晶構造解析工程に供される前記ワークは、あらかじめ前記加工量分布を見越した厚さの加工代を有しており、
前記データ変換工程において求められる前記加工量分布は、前記加工代に収まるように求められる請求項1または2に記載の加工方法。
【請求項4】
前記ワークの各部の加工量分布のうちの最大の加工量は、前記加工代の厚さとほぼ同じである請求項3に記載の加工方法。
【請求項5】
前記プラズマエッチング装置は、前記ワーク近傍に電界を発生させる電極と、該電極に高周波を印加する通電手段と、前記ワーク近傍に処理ガスを供給する処理ガス供給手段と、前記電極と前記ワークとを相対的に移動する移動手段とを有しており、
前記加工工程において、前記データ変換工程において求められた加工量分布に基づき、前記移動手段により、前記ワークの表面に沿って前記電極を移動させつつ、前記通電手段による前記高周波のRFパワー、前記処理ガス供給手段による前記処理ガスの供給量、前記移動手段による前記ワークと前記電極との離間距離、前記ワークと前記電極との相対移動速度の少なくとも1つを変化させる請求項4に記載の加工方法。
【請求項6】
前記加工工程において、前記ワークの一方の面に対して前記加工量分布に基づいてプラズマエッチング加工を施した後、前記ワークを表裏反転し、前記ワークの他方の面に対しても、前記一方の面に対する加工量分布と同様の加工量分布に基づいてプラズマエッチング加工を施す請求項1ないし5のいずれかに記載の加工方法。
【請求項7】
前記結晶構造解析法は、X線回折法である請求項1ないし6のいずれかに記載の加工方法。
【請求項8】
対向配置された上部電極および下部電極と、
前記上部電極と前記下部電極との間に、被処理面を有し、単結晶材料で構成された板状のワークを載置する載置部と、
前記上部電極および前記下部電極の少なくとも一方と前記ワークとを相対的に移動する移動手段と、
前記被処理面に処理ガスを供給する処理ガス供給手段と、
前記上部電極と前記下部電極との間に高周波を印加する通電手段と、
前記ワークの基準となる結晶軸と前記ワークの被処理面とがなす角度を測定する結晶構造解析装置と、
前記移動手段、前記処理ガス供給手段および前記通電手段の少なくとも1つの作動を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記結晶構造解析装置が取得した前記角度に基づいて、前記ワークの被処理面の形状を目的とする形状に修正するのに必要とされる前記ワークの加工量分布を求め、該加工量分布を再現するように、前記移動手段、前記処理ガス供給手段および前記通電手段の少なくとも1つの作動を制御するよう構成されていることを特徴とする加工装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記ワークと前記上部電極とを相対的に移動しつつ、前記移動手段による前記ワークと前記上部電極との離間距離および前記ワークと前記上部電極との相対移動速度、前記処理ガス供給手段による前記処理ガスの供給量、前記通電手段による前記高周波のRFパワーの少なくとも1つを変化させるよう構成されている請求項8に記載の加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−209386(P2010−209386A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55545(P2009−55545)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】