説明

加工機械の表示装置

【課題】加工機械に異常が発生したときに迅速に異常箇所に到達できるようにする。
【解決手段】加工機械システムの異常情報表示盤20は、加工機械システムの異常情報を表示する装置であって、盤本体41と、異常箇所特定手段42と、検知手段43と、ガイド情報表示手段44と、を備えている。盤本体41は、表示部40を有し、加工機械システムに自在に移動可能なものである。異常箇所特定手段42は、加工機械システムに異常が発生するとその異常箇所を特定可能な手段である。検知手段43は、加工機械システムに対する盤本体41の位置を検知するための手段である。ガイド情報表示手段44は、検知手段43の検知結果に基づき、特定された異常箇所に作業者を案内するためのガイド情報を表示部40に表示する手段である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、特に、加工機械の異常情報を表示する加工機械の表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械やプレス機械などの加工機械には、操作用の操作盤が設けられている(たとえば特許文献1参照)。この種の操作盤には、工具の座標や異常情報であるアラーム情報が表示される表示部が設けられている。加工機械に異常が発生すると、表示部に異常内容を示すメッセージや異常内容の説明等が表示される。また、最近では、表示装置の進歩に伴って、写真等により異常箇所を表示することも行われている。
【特許文献1】特許3719167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来は、操作盤の表示部に異常情報を表示しているので、異常箇所に行くためには、表示された異常箇所が加工機械のどこであるのかを、図面等を用いて探す必要がある。このため、異常が発生しても、異常箇所に迅速に到達するのが困難であり、異常に対処するメンテナンスを迅速に行いにくい。
本発明の課題は、加工機械に異常が発生したときに迅速に異常箇所に到達できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る加工機械の表示装置は、加工機械の異常情報を表示する装置であって、装置本体と、異常箇所特定手段と、検知手段と、ガイド情報表示手段と、を備えている。装置本体は、表示部を有し、前記加工機械に自在に移動可能なものである。異常箇所特定手段は、加工機械に異常が発生するとその異常箇所を特定可能な手段である。検知手段は、加工機械に対する装置本体の位置を検知するための手段である。ガイド情報表示手段は、検知手段の検知結果に基づき、特定された異常箇所に作業者を案内するためのガイド情報を表示部に表示する手段である。
【0005】
この表示装置では、加工機械に異常が発生し、その異常箇所が特定されると、装置本体の加工機械に対する相対位置の検知結果に基づき、加工機械に対して自在に移動可能な装置本体の表示部に異常箇所までのガイド情報が表示される。このため、作業者は、装置本体をたとえば手で持って移動させても、移動に応じた装置本体の位置から異常箇所までのガイド情報を表示可能になり、ガイド情報を見ながら異常箇所に行くことができる。ここでは、加工機械に異常が発生すると、装置本体の位置から異常箇所まで作業者を案内するためのガイド情報が装置本体の表示部に表示される。このため、作業者は、この表示されたガイド情報を見て容易に異常箇所まで行くことができ、加工機械に異常が発生したときに迅速に異常箇所に到達できるようになる。
【0006】
また、ガイド情報表示手段が、装置本体が異常箇所に近づくにつれてガイド情報を変化させてもよい。この場合、異常箇所に近づくにつれてガイド情報が、たとえば、詳細になったり、表示が拡大したりすることにより、作業者が異常箇所に近づいていることを確実に認識できる。
さらに、装置本体と異常箇所とが所定距離以内に接近すると、ガイド情報に代えて異常に対処するための異常対処情報を表示部に表示する異常対処情報表示手段をさらに備えてもよい。この場合、異常箇所に接近すると、異常対処情報が表示される。このため、マニュアル等を見ることなく、異常に対処するメンテナンスを迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加工機械に異常が発生すると、装置本体の位置から異常箇所まで作業者を案内するためのガイド情報が装置本体の表示部に表示される。このため、作業者は、この表示されたガイド情報を見て容易に異常箇所まで行くことができ、加工機械に異常が発生したときに迅速に異常箇所に到達できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1及び図2において、本発明の一実施形態を搭載した加工機械システム(加工機械の一例)1は、たとえば、2台のCNC平行2軸の第1及び第2旋盤10,11と、1台のCNC対向2軸のターニングセンタ12とを備えている。また、加工機械システム1は、第1及び第2旋盤10,11及びターニングセンタ12に設けられ、ワークWを搬送する門型のローダ13,14,15と、第1旋盤10と第2旋盤11及び第2旋盤11とターニングセンタ12との間でワークWをそれぞれ搬送する搬送コンベア16,17と、第1旋盤10にワークWを搬入するための搬入コンベア18と、ターニングセンタ12からワークWを搬出するための搬出コンベア19と、を備えている。さらに、加工機械システム1は、加工機械システム1の異常発生時に異常情報を表示する異常情報表示盤(表示装置の一例)20を備えている。加工機械システム1は、搬入コンベア18から供給されたワークWを2台の旋盤10,11及び1台のターニングセンタ12により切削加工し、加工されたワークWを搬出コンベア19から搬出する。
【0009】
第1及び第2旋盤10,11は、第1及び第2旋盤本体21,22と、第1及び第2旋盤本体21,22及びローダ13,14を各別に操作するための第1及び第2操作盤23,24と、第1及び第2操作盤23,24の操作及びその加工プログラムや制御プログラムに応じて第1及び第2旋盤本体21,22及びローダ13,14を各別に制御する第1及び第2制御盤25,26と、を有している。ターニングセンタ12は、加工機本体27と、加工機本体27及びローダ15を操作するための第3操作盤28と、第3操作盤28の操作及びその加工プログラムや制御プログラムに応じて加工機本体27及びローダ15を制御する第3制御盤29と、を有している。なお、搬入コンベア18は、第1操作盤23により操作され、第1制御盤25により制御される。搬送コンベア16,17は第2操作盤24により操作され、第2制御盤26により制御される。搬出コンベア19は、第3操作盤28により操作され、第3制御盤29により制御される。
【0010】
第1及び第2旋盤本体21,22は、図示しないタレットに保持された工具により主軸に保持されたワークWを回転させながら主に旋削加工する。加工機本体27は、図示しないタレットに保持された工具を回転させながら、交差する2軸で移動するチャックに保持されたワークWを主にフライス加工する。第1及び第2旋盤本体21,22並びに加工機本体27は、第1〜第3操作盤23,24,28の下方に配置された盤取付部21a,22a,27aと、作業者の安全を確保するために加工部を覆う開閉する安全カバー21b,22b,27bと、を有している。盤取付部21a,22a,27aは、異常情報処理盤20を保持可能である。
【0011】
図1及び図2に示すように、第1〜第3操作盤23,24,28は、第1及び第2旋盤本体21,22並びに加工機本体27の前面に縦軸回り90度程度旋回可能に配置されている。第1〜第3操作盤23,24,28は、図4に示すように、第1及び第2旋盤本体21,22並びに加工機本体27を各別に数値制御するための操作キー部30,33,336と、工具やワークWの座標等を表示する表示部31,34,37と、異常情報表示盤20と無線通信を行うための無線通信部32,35,38と、を有している。第1〜第3操作盤23,24,28は、操作対象の機械の異常発生時に第1〜第3制御盤25,26,29から送られた異常情報を異常発生部位に応じた表示部31,34,37に表示する。また、無線通信部32,35,38を介して異常情報表示盤20に異常情報を無線で送信する。
【0012】
無線通信部32,35,38は、たとえば、Wi-Fi,Bluetooth(登録商標),ZigBee(登録商標)等の通信相手を互いに識別可能な比較的小電力の無線通信規格に依拠した電波で異常情報表示盤20と無線通信可能である。なお、無線通信規格は前述したものに限定されるものではなく、特定小電力規格等の種々の無線通信規格を適用可能である。
第1〜第3制御盤25,26,29は、第1及び第2旋盤本体21,22並びに加工機本体27の背面に設けられている。前述したように、第1制御盤25は、たとえば、搬入コンベア18と、第1旋盤本体21と、ローダ13と、を制御する。第2制御盤26は、第2旋盤本体22と、搬送コンベア16,17と、ローダ14を制御する。第3制御盤29は、加工機本体27と、ローダ15と、搬出コンベア19と、を制御する。第1〜第3制御盤25,26,29は、制御対象の機械の各所に配置されたセンサ類からの信号により制御対象の機械に異常が発生したときにその異常情報を生成する。第1〜第3制御盤25,26,29が生成する異常情報には、異常箇所や異常の内容等の情報が含まれる。この異常情報は第1〜第3操作盤23,24,28に送られ、そこで表示される。
【0013】
本発明の一実施形態に係る表示装置である異常情報表示盤20は、図3に示すように、作業者が手で持ち運び可能な質量及び大きさであり、内部に設けられた図示しない二次電池等の充電可能な電源により動作する。異常情報表示盤20は、通常は、図1に示すように、第1及び第2旋盤本体21,22並びに加工機本体27に設けられた盤取付部21a,22a,27aのいずれかに着脱自在に保持可能である。また、異常情報表示盤20は、盤取付部21a,22a,27aに配置すると充電されるように構成されている。充電方式は接触式でもよいし非接触式でもよい。
【0014】
異常情報表示盤20は、図4に示すように、表示部40を有し、加工機械システム1に対して自在に移動可能な盤本体(装置本体の一例)41と、第1〜第3制御盤25,26,29で制御される機械に異常が発生するとその異常箇所を特定可能な異常箇所特定手段42と、盤本体41の加工機械システム1に対する相対位置を検知するための検知手段43と、検知手段43の検知結果に基づき、特定された異常箇所に作業者を案内するためのガイド情報GIを表示部40に表示するガイド情報表示手段44と、を備えている。また、異常情報表示盤20は、盤本体41と異常箇所とが所定距離(たとえば、1m〜3mの範囲)以内に接近すると、ガイド情報GIに代えて異常に対処するための異常対処情報TMを表示部40に表示する異常対処情報表示手段45を備えている。
【0015】
また、異常情報表示盤20は、図3及び図4に示すように、表示部40の一側(図3右側)に配置され、加工機械システム1全体を非常時に停止するための非常停止ボタン46と、表示部40の表示をオンオフするためのオンオフボタン47と、をさらに備えている。
盤本体41は、内部に空間を有する、たとえば箱状に形成されている。盤本体41の内部には、図4に示すように、マイクロコンピュータからなる盤制御部48が設けられている。盤制御部48は、表示部40を表示制御するとともに、非常停止ボタン46、オンオフボタン47、及び表示部40に表示される後述すリセットボタン58の操作に応じた操作信号を生成して第1〜第3操作盤23,24,28に送信する。
【0016】
また、盤制御部48は、第1〜第3操作盤23,24,28のいずれかから受信した異常情報により異常箇所の位置を特定する異常箇所特定手段42として機能し、異常情報に基づきガイド情報GIを表示部40に表示することによりガイド情報表示手段44として機能する。さらに、異常発生時に盤本体41が異常箇所にたとえば2m以内に接近すると、ガイド情報GIに代えて異常対処情報TMを表示することにより異常対処情報表示手段45として機能する。
盤制御部48には、非常停止ボタン46と、オンオフボタン47と、検知手段43の一例である位置センサ49と、が接続されている。また、盤制御部48には、表示部40と、無線通信部50と、記憶部51と、が接続されている。
【0017】
位置センサ49は、加工機械システム1が設置された工場建家内に設置された、たとえば3つの電波発信器52a,52b,52cから発信された電波を受信し、受信した電波の方向から異常情報表示盤20の位置を三次元的に検出可能である。加工機械システム1の特定の位置(たとえば、第2制御盤26の位置)及び特定の位置と異常箇所との相対的な位置関係は予め記憶部51に格納されている。このため、位置センサ49の出力により、特定の位置と盤本体41との相対位置を検知することにより、盤本体41と異常箇所との相対位置を検出可能になる。
【0018】
表示部40は、液晶式のタッチパネル画面を有している。表示部40には、異常が発生し、異常情報を受信すると、検知手段43の検知結果に基づいて、加工機械システム1の平面的なレイアウトLIと、レイアウトLI上の盤本体41の位置PIと、異常箇所の位置TIとを含むガイド情報GIが画像表示される。図3では、一例として盤本体41の位置PIが長方形で、異常箇所の位置TIが円形で示しており、便宜上、位置PIと位置TIとを異なる傾きでハッチングしている。なお、表示部がカラーディスプレイの場合、位置PIと位置TIとを色分けして表示してもよい。
【0019】
また、図7に示すように、異常発生時に盤本体41が異常箇所に所定距離まで近づいて異常対処情報TMが表示されると、異常情報を取り消すためのリセットボタン58が矩形に表示される。さらに、異常対処情報TMの表示時に表示が表示画面に入りきらない場合に次の表示や前の表示を表示させるための前後の表示ボタン59,60が三角形で表示されるとともに、異常箇所の詳細情報DIが表示される。
無線通信部50は、第1から第3操作盤23,24,28の無線通信部32,35,38と前述した無線通信規格で無線通信可能である。
【0020】
記憶部51は、たとえばフラッシュメモリ等の不揮発メモリで構成されており、加工機械システム1のレイアウトLIのデータ、加工機械システム1の特定の位置のデータ、異常箇所毎の位置TIのデータが格納されている。また、リセットボタン58や表示ボタン59,60の表示データも記憶部51内に格納されている。さらに、加工機械システム1の周囲の歩行可能な通路のデータや異常箇所毎の異常対処情報TMが格納されている。
図3に示す異常情報表示盤20は、第3操作盤28内で異常が発生した状態の表示画面を示しており、盤本体41の位置PIと異常箇所の位置TIとレイアウトLIとが表示され、さらに、位置PIから位置TIに行くための最短の歩行可能な通路である経路RTが表示されている。
【0021】
次に、盤制御部48の制御動作について図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
盤制御部48に電源が投入されると、図5のステップS1で初期設定がなされる。ステップS2では、異常フラグがオンしているか否かを判断する。異常フラグは、異常情報を受信するとオンし、リセット信号を送信されるとオフする。異常フラグがオンしていない場合はステップS3に移行する。ステップS3では、加工機械システム1の異常によりいずれかの操作盤23,24,28から送信される異常情報を受信したか否かを判断する。
【0022】
異常情報を受信すると、ステップS4に移行する。ステップS4では、異常フラグをオンするとともに、異常情報に含まれる異常箇所に基づいて異常箇所の位置TIを記憶部51から読み出して異常箇所を特定し、ステップS5に移行する。ステップS5では、そのときの盤本体41の位置PIのデータを示す位置センサ49からの出力を取り込む。ステップS6では、盤本体41の位置が異常箇所と2m以内の位置にあるか否かを判断する。盤本体41が異常箇所から2mを超えて離れている場合はステップS7に移行する。ステップS7では、図3に示したようなガイド情報GIを表示部40に表示し、ステップS8に移行する。なお、ステップS7のガイド情報GIの表示画面では、前述したように、盤本体41の位置PIと異常箇所の位置TIとレイアウトLIとが表示され、さらに、位置PIから位置TIに行くための最短の歩行可能な通路の経路RTが矢印で表示されている。すなわち、図3では、図2の符号Aに示す第1操作盤23の前に作業者が異常情報表示盤20を持っている状態のガイド情報の表示画面を示している。
【0023】
ガイド情報GIが表示されると、作業者は、盤本体41を持ってメンテナンスの作業者が経路RTに沿って移動するだけで、異常箇所に迅速に到達できる。なお、図6に示すように、盤本体41の位置PIが異常箇所の位置TIに近づくにつれてガイド情報GIが拡大表示されるように表示が変化する。また、経路RTの方向が変化する手前では、その旨を示す文字が表示される。たとえば、図2に符号Aで示した位置から作業者が符号Bで示す位置に盤本体41を持って移動すると、図6に示すような拡大されたガイド情報GIが表示されるとともに、方向が変化する手前で「この先で機械に沿って左折してください」という文字が表示され、ガイド情報がさらに詳細になる。
【0024】
ステップS8では、非常停止ボタン46を操作されたか否かを判断する。操作されていない場合は、ステップS9に移行し、オンオフボタン47が操作されたか否かを判断する。操作されていないときは、ステップS2に戻る。
異常フラグがオンしているときは、ステップS3及び4をスキップし、ステップS2からステップS5に移行し、位置データを取り込む。異常情報を受信していないときは、ステップS3からステップS8に移行する。
盤本体41が異常箇所から2m以内に接近するとステップS6からステップS10移行する。たとえば、作業者がガイド情報GIに表示された経路を通って図2に符号Cで示した位置まで移動し、異常箇所に接近すると、ステップS10では、ガイド情報GIに代えて図7に示す異常対処情報TMを表示部40に表示し、ステップS11に移行する。
【0025】
異常対処情報TMの表示画面では、図7に示すように、表示画面のたとえば、左側に異常に対処するための異常対処情報TMが表示される。異常対処情報TMでは、異常の内容だけでなく、その異常に対応する方法なども記載されている。従来は、異常の内容は表示されるが、異常に対する対処方法までは表示されていない。このため、マニュアルなどを持ち出して異常に対処する必要がある。しかし、本実施形態では、異常の対処方法についても詳しく説明されている。たとえば、図7では、異常の内容として、主にターニングセンタ12を制御する第3制御盤29のサーキットプロテクタがオフしている警告が表示されるとともに、その下に、原因として考えられる要素が、複数項目(たとえば、4項目)記載されている。作業者のその項目の原因を一つずつ確認することより、異常に対処することができる。また、異常の対処したあと、異常情報(アラーム)をリセットするためにリセットボタンを押すように促す記載が表示される。
【0026】
さらに画面の右側には、リセットボタン58が表示され、その下には、異常対処情報TMの記載を次に進めたり前に戻したりする前後の表示ボタン59,60が表示され、その下に第3制御盤29内のサーキットプロテクタの位置を判別可能な画像CIがたとえば写真又はグラフィックで表示される。そして、サーキットプロテクタの位置がたとえばハイライト(図7では便宜上ハッチングで示している)表示される。
これにより、作業者は、異常に対処するメンテナンスを行う際に異常の場所を的確に認識できるとともに、異常の原因を迅速に確認できる。このため、異常に対するメンテナンスを迅速に行える。しかも通常は、操作盤に配置されているリセットボタンが盤本体41に表示されるので、異常対処後に迅速に正常状態に復旧できる。
【0027】
ステップS10では、リセットボタン58が押されてリセットされたか否かを判断する。作業者は、異常に対するメンテナンスが終わるとアラームをリセット、すなわち異常情報を削除するためにリセットボタン58を押す。リセットボタン58が押されておらずリセットなされていない場合はステップS8に移行する。リセットされた場合はステップS11からステップS12に移行し、リセット信号を第1から第3操作盤23,24,28に送信するとともに異常フラグをオフし、ステップS8に移行する。
【0028】
図8では、ターニングセンタ12の加工機本体27の安全カバー27bが開いている異常情報が発生した例を示している。この場合、作業者は第1操作盤23の前に立っている。そして、盤取付部21aに保持された異常情報表示盤20を手持ちすると、図8に示すようなガイド情報GIが表示される。そして異常箇所に近づくと、図9に示すようにガイド情報GIが拡大され、異常箇所に近づくと、異常対処情報TM及びリセットボタン58が表示される。この場合、異常対処情報TMが短いので前後の表示ボタンは表示されない。また、画面の右下には、安全カバーが開いている状態の画像が表示される。
非常停止ボタン46が押圧されたと判断すると、ステップS8からステップS13に移行し、無線通信部50を介して全非常停止信号を無線通信部32,35,38に送信する。これにより、加工機械システム1の全ての動作が停止する。
【0029】
オンオフボタン46が押圧されたと判断すると、ステップS9からステップS14に移行し、表示部40がオンしているときはオフし、オフしているときはオンする。これらの処理が終わると、ステップS2に戻る。
ここでは、加工機械システム1に異常が発生すると、盤本体41の位置から異常箇所まで作業者を案内するためのガイド情報GIが装置本体の表示部に表示される。このため、作業者は、この表示されたガイド情報GIを見て容易に異常箇所まで行くことができ、加工機械に異常が発生したときに迅速に異常箇所に到達できるようになる。
【0030】
また、ガイド情報表示手段44が、盤本体41が異常箇所に近づくにつれてガイド情報GIを変化させているので、異常箇所に近づくにつれてガイド情報GIが、たとえば、詳細になったり、表示が拡大したりすることにより、作業者が異常箇所に近づいていることを確実に認識できる。
さらに、盤本体41と異常箇所とが所定距離(たとえば2m)以内に接近すると、ガイド情報GIに代えて異常に対処するための異常対処情報TMを表示部40に表示する異常対処情報表示手段45をさらに備えているので、異常箇所に接近すると、異常対処情報TMが表示される。このため、マニュアル等を見ることなく、異常に対処するメンテナンスを迅速に行うことができる。
【0031】
<他の実施形態>
(a)前記実施形態では、加工機械として第1及び第2旋盤10,11とターニングセンタ12とを有する複数の機械を有する加工機械システムを例示し、その表示装置としての異常情報表示盤20を例に本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、加工機械としては、単体の機械であってもよいし、複数の機械を組み合わせた加工機械システムでもよい。また加工機械としては、その他にプレス機械等のワークWを加工するものであればどのようなものでもよい。また、それらの加工機械には、それらに付属するワークWや工具の搬送のためのコンベアやローダ等の付属装置も含まれる。
【0032】
(b)前記実施形態では、3箇所から発せられる電波を検知する位置センサを用いて検知手段を構成したが、本発明の検知手段はこれに限定されない。たとえば、音波や赤外線などを利用したものであってもよい。
(c)前記実施形態で開示したガイド情報及び異常対処情報は一例であり、本発明は、これらの開示に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、加工機械の異常を表示する表示装置で作業者を異常箇所に迅速に案内できるため、加工機械のメンテナンスの分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態が採用された加工機械システムの正面図。
【図2】その加工機械システムの平面図。
【図3】本発明の一実施形態による表示装置である異常情報表示盤の正面図。
【図4】その制御系の構成を示すブロック図。
【図5】盤制御部の制御フローチャート。
【図6】異常情報表示盤の拡大されたガイド情報の表示画面の一例を示す図。
【図7】異常情報表示盤の異常対処情報の表示画面の一例を示す図。
【図8】異常情報表示盤のガイド情報の表示画面の一例を示す図。
【図9】異常情報表示盤の拡大されたガイド情報の表示画面の一例を示す図。
【図10】異常情報表示盤の異常対処情報の表示画面の一例を示す図。
【符号の説明】
【0035】
1 加工機械システム(加工機械の一例)
20 異常情報表示盤
40 表示部
41 盤本体(装置本体の一例)
42 異常箇所特定手段
43 検知手段
44 ガイド情報表示手段
45 異常対処情報表示手段
GI ガイド情報
TM 異常対処情報
LI レイアウト
PI 盤本体の位置
TI 異常箇所の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機械の異常情報を表示する加工機械の表示装置であって、
表示部を有し、前記加工機械に自在に移動可能な装置本体と、
前記加工機械に異常が発生するとその異常箇所を特定可能な異常箇所特定手段と、
前記加工機械に対する前記装置本体の位置を検知するための検知手段と、
前記検知手段の検知結果に基づき、特定された前記異常箇所に作業者を案内するためのガイド情報を前記表示部に表示するガイド情報表示手段と、
を備えた加工機械の表示装置。
【請求項2】
前記ガイド情報表示手段は、前記装置本体が前記異常箇所に近づくにつれて前記ガイド情報を変化させる、請求項1に記載の加工機械の表示装置。
【請求項3】
前記ガイド情報は、前記加工機械のレイアウトと、前記レイアウト上の前記装置本体の位置と、前記レイアウト上の前記異常箇所とを含む、請求項1又は2に記載の加工機械の表示装置。
【請求項4】
前記装置本体と前記異常箇所とが所定距離以内に接近すると、前記ガイド情報に代えて異常に対処するための異常対処情報を前記表示部に表示する異常対処情報表示手段をさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の加工機械の表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−255225(P2009−255225A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107310(P2008−107310)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】