説明

加工玄米の製造方法

【課題】シクロアルテノール及び/又は24−メチレンシクロアルタノールの含有量を高めた加工玄米の製造方法を提供する。
【解決手段】
生玄米を90〜100℃の水中で10〜60分間加熱処理する工程、
加熱処理した玄米を110〜160℃の水蒸気で5〜90分間湿熱処理する工程、及び
湿熱処理した玄米を乾燥させる工程
を少なくとも含む、加工玄米の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工玄米の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、先進社会では豊かな食生活により肥満人口が急増しており、肥満と関係の深い糖尿病、動脈硬化症及び心臓病等の生活習慣病の罹患率は増加の一途をたどっている。
【0003】
4,4−ジメチルステロール類は米に存在する植物ステロールであり、様々な生活習慣病の予防・改善作用が報告されてきている。例えば、シクロアルテノールはアディポネクチン分泌促進作用を有し、抗動脈硬化剤、抗肥満剤、抗糖尿病剤等として利用しうることが報告されており(例えば、特許文献1参照)、また、24−メチレンシクロアルタノールは、高血糖改善作用やインスリン感受性の亢進作用を有することが報告されている(例えば、特許文献2、3参照)。
一方、発芽処理した玄米を水蒸気で湿熱処理し乾燥させることで、玄米の食感や食味を改善することが報告されている(例えば、特許文献4参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−68132号公報
【特許文献2】特許第3924310号公報
【特許文献3】特許第4176140号公報
【特許文献4】特開2004−49010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、シクロアルテノール及び/又は24−メチレンシクロアルタノールの含有量を高めた加工玄米の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、玄米中のシクロアルテノールや24−メチレンシクロアルタノールの含有量を高めることができれば、生活習慣病の予防・改善に有用な玄米を提供することができるとの考えの下、鋭意検討を行った。その結果、生玄米を特定の温度の水中で加熱処理した後、水を切った状態で高温の湿熱処理を施すと、シクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールの含有量が高まることを見い出した。また、この加工玄米を炊飯した米飯は良好な風味と食感とを有していた。本発明はこれらの知見に基づいて完成させるに至ったものである。
【0007】
本発明は、
生玄米を90〜100℃の水中で10〜60分間加熱処理する工程、
加熱処理した玄米を110〜160℃の水蒸気で5〜90分間湿熱処理する工程、及び
湿熱処理した玄米を乾燥させる工程
を少なくとも含む、加工玄米の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法により、生玄米を原料として、当該生玄米よりもシクロアルテノール及び/又は24−メチレンシクロアルタノールの含有量が高められた加工玄米を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の加工玄米の製造方法(以下、本発明の製造方法という。)は、原料として用いる生玄米に比べてシクロアルテノール及び/又は24−メチレンシクロアルタノールの含有量が高められた加工玄米を製造する方法である。本発明の製造方法により得られる加工玄米は炊飯して食するのに適している。
本発明の製造方法について以下に詳細に説明する。
【0010】
本発明の製造方法は、出発原料として生玄米を用いる。原料とする生玄米に特に制限はなく、ジャポニカ種の他、ジャポニカ種とインディカ種とをかけあわせたものであってもよく、また、うるち米であってももち米であってもよい。原料とする生玄米の品種に特に制限はなく、例えば、コシヒカリ、ヒノヒカリ、ミルキークイーン、サリークイーン、ヒトメボレ、アキタコマチ、夢十色等の一般的な品種を用いることができる。
【0011】
原料の生玄米は、特定の温度の水中で加熱処理される。生玄米を水中で加熱処理する水量は、通常には生玄米の加熱処理が終了した後においても、玄米が水中に浸漬した状態を維持できる量とするのが好ましい。生玄米を水中で加熱処理する際の水の温度は90〜100℃であるが、92〜98℃であることが好ましく、94〜96℃であることがより好ましい。水の温度は一定であってもよいし、上記温度範囲内で変動させてもよい。生玄米を加熱処理する時間は10〜60分であるが、15〜45分であることが好ましく、20〜40分であることがより好ましい。生玄米は、加熱処理直後の含水率が20〜70質量%となるように加熱処理することが好ましく、30〜60質量%となるように加熱処理することがより好ましい。含水率は絶乾前後の重量の差分として測定することができる。
生玄米を加熱処理する方法に特に制限はないが、生玄米を上記加熱処理温度以下の水中に浸漬させた状態で上記温度まで加温し、その状態で上記の時間保持する方法や、上記温度の水を用意し、これに生玄米を浸漬させて上記の時間保持する方法等が挙げられる。
生玄米は水中で加熱処理する前に洗米しておくことが好ましい。洗米は通常の方法で行うことができる。
【0012】
加熱処理された玄米は水中から取り出される。玄米を水中から取り出す方法は、玄米と湯とを分離できる方法であれば特に制限はない。例えば、水中に浸漬している玄米をざるにあげることで、玄米を水中から取り出すことができる。玄米を取り出す際の水の温度に特に制限はなく、加熱処理温度で取り出してもよく、加熱処理温度以下に冷却してから取り出してもよい。玄米を湯から取り出すことで、生玄米を加熱処理する工程が終了する。
【0013】
水中から取り出された玄米は、続いて湿熱処理に付される。湯から取り出した玄米を冷ますことなくそのまま湿熱処理に付してもよいし、所望の温度まで冷ましてから湿熱処理にかけてもよい。
湿熱処理における水蒸気の温度は110〜160℃であるが、120〜155℃であることが好ましく、125〜150℃であることがより好ましい。110℃以上の高温の湿熱処理を施すことで、玄米の香ばしさが増す一方、米糠臭が低減しうる。
湿熱処理を施す時間は水蒸気温度により異なるが、5〜90分の範囲内である。通常には水蒸気温度が高いほど処理時間が短くて済むため、例えば水蒸気温度が110〜130℃程度のときには、処理時間を30〜90分、好ましくは45〜75分程度とすることが好ましく、水蒸気温度が130℃〜160℃程度のときには、処理時間を5〜60分、より好ましくは7〜20分程度とすることが好ましい。水蒸気の温度は湿熱処理の間一定であってもよいし、変動させてもよい。湿熱処理後の玄米は、含水率が30〜80質量%、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%となっていることが好ましい。湿熱処理の圧力は飽和蒸気圧とすることができる。
湿熱処理は市販の短時間調理殺菌装置等により行うことができる。
【0014】
湿熱処理を施した玄米は続いて乾燥処理に付される。乾燥は、玄米中の含水率を低下させるための処理である。製造される加工玄米の保存性の観点から、乾燥処理により玄米中の含水率を15質量%以下、より好ましくは5〜15質量%とすることが好ましい。また、乾燥処理により玄米の水分活性を0.6以下、より好ましくは0.2〜0.6とすることが好ましい。水分活性は水分活性測定装置(商品名:IC−500、Novasina社製)を用いて測定することができる。乾燥方法に特に制限はないが、温度40〜60℃、好ましくは45〜55℃、湿度30〜70%RH、好ましくは50〜60%RHの条件下で、1〜5時間、好ましくは2〜3時間乾燥させることが好ましい。
【0015】
生玄米を上述の製造工程に付することにより、玄米中のシクロアルテノールの含有量を高めることができる。したがって、本発明の加工玄米中のシクロアルテノールの含有量は、乾物100g当たりで比較したときに、原料とした生玄米中のシクロアルテノールの含有量よりも高い。上述した製造方法により製造した加工玄米は、当該加工玄米の乾物100g中に含まれるシクロアルテノールの質量が、原料とした生玄米(加工前の生玄米)の乾物100g中に含まれるシクロアルテノールの質量の1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることが好ましく、1.7倍以上であることがより好ましい。ここで、本発明において、生玄米や加工玄米の「乾物」とは、生玄米や加工玄米を液体窒素にて凍結後、凍結乾燥(−80℃、5Pa、48時間)したものを意味する。当該加工玄米の乾物100g中に含まれるシクロアルテノールの質量の上限に特に制限はないが、通常には、加工前の生玄米の乾物100g中に含まれるシクロアルテノールの質量の3倍以下である。
【0016】
また、生玄米を上述の各製造工程に付することにより、玄米中の24−メチレンシクロアルタノールの含有量を高めることができる。したがって、本発明の加工玄米中の24−メチレンシクロアルタノールの含有量は、乾物100g当たりで比較したときに、原料とした生玄米中の24−メチレンシクロアルタノールの含有量よりも高い。上述した製造方法により製造した加工玄米では、当該加工玄米の乾物100g中に含まれる24−メチレンシクロアルタノールの質量が、加工前の生玄米の乾物100g中に含まれる24−メチレンシクロアルタノールの質量の1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることが好ましく、1.7倍以上であることがより好ましい。当該加工玄米の乾物100g中に含まれる24−メチレンシクロアルタノールの質量の上限に特に制限はないが、通常には、加工前の生玄米の乾物100g中に含まれる24−メチレンシクロアルタノールの質量の3倍以下である。
【0017】
また、生玄米を上述の各製造工程に付することにより、玄米中のシクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールの総含有量を高めることができる。したがって、本発明の加工玄米中のシクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールの総含有量は、乾物100g当たりで比較したときに、原料とした生玄米中のシクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールの総含有量よりも高い。上述した製造方法により製造した加工玄米は、当該加工玄米の乾物100g中に含まれるシクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールの総質量が、加工前の生玄米の乾物100g中に含まれるシクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールの総質量の1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることが好ましく、1.7倍以上であることがより好ましい。当該加工玄米の乾物100g中に含まれるシクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールの総質量の上限に特に制限はないが、通常には、加工前の生玄米の乾物100g中に含まれるシクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールの総質量の3倍以下である。
【0018】
シクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールはそれぞれ下記式(1)及び(2)で表わされる化合物であり、いずれも4,4−ジメチルステロール類に属する植物ステロールである。
【0019】
【化1】

【0020】
【化2】

【0021】
シクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールは主に米糠に存在することが知られている。生の玄米において、シクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールの多くがフェルラ酸とエステル結合したフェルラ酸エステル体や、脂肪酸とエステル結合した脂肪酸エステル体として存在しており、遊離体として存在している割合は少ない。一方、生活習慣病の予防・改善効果をはじめとする生理効果を有するのは主に遊離体であり、上記のエステル体は遊離体に比べて生理活性に乏しいことが知られている。本発明において、シクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールは、いずれも遊離体を意味し、エステル体等の結合体を包含しない。
【0022】
玄米中の遊離のシクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールは、上記のエステル体のエステル結合が切断されることで増加しうると考えられるが、シクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールの上記のエステル体は、通常、100〜200℃程度の熱処理によってはエステル結合が切断されにくいことが知られている。
本発明の製造方法では、加熱処理工程において90〜100℃の熱処理が行われ、湿熱工程において110〜160℃の熱処理が施されているに過ぎず、この程度の熱処理条件では、玄米中に存在するシクロアルテノールのエステル体及び/又は24−メチレンシクロアルタノールのエステル体のエステル結合は切断されにくいと考えられる。しかし、意外にも、本発明の製造方法により、玄米中のシクロアルテノール及び/又は24−メチレンシクロアルタノールの含有量は大幅に増加する。この理由として、玄米特有の成分が、シクロアルテノールのエステル体及び/又は24−メチレンシクロアルタノールのエステル体のエステル結合の熱切断を促進していることが考えられる。
【0023】
本発明の製造方法で製造された加工玄米中のシクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールの含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0024】
本発明の製造方法は、生玄米を原料として、該生玄米中のシクロアルテノール及び/又は24−メチレンシクロアルタノールの含有量を高めた加工玄米であって、炊飯して食するのに適した加工玄米を製造するために利用することができる。
【0025】
本発明の製造方法で製造した加工玄米は、生活習慣病の予防・改善に適した食材として好適に使用することができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
[分析方法]
玄米中のシクロアルテノールの測定と24−メチレンシクロアルタノールの測定:
シクロアルテノールおよび24-メチレンシクロアルタノールは、凍結乾燥玄米粉砕物(液体窒素にて凍結後、−80℃、5Pa、48時間凍結乾燥したもの)100gを溶媒(クロロホルム/メタノール=3/1)300gを用いて3回抽出操作を繰返して抽出した。ロータリーエバポレーターで溶媒を留去後、ヘキサンに再溶解し、遠心分離によって不溶物を除去した。その後溶媒を留去し、抽出油500mgをヘキサン5mLに溶解し、固相処理(Sep-Pak Silica)に供し、ヘキサン/エーテル=95/5で洗浄後、エタノール/エーテル/ヘキサン=50/25/25で溶出した。その後、HPTLC(Merk#1.13895 Sil60)に供し、ヘキサン/エーテル/酢酸=90/10/2、クロロホルム/エーテル=95/5で展開し、遊離ステロール部分を掻き取り、掻き取った担体から溶媒(エタノール/エーテル/ヘキサン=50/25/25)を用いて遊離ステロールを溶出した。得られた溶出物をアルカリでケン化分解し、コレステロールを内部標準物質として、ガスクロマトグラフィーによりシクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールを定量した。
【0028】
[実施例] 本発明の製造方法による加工玄米の製造
市販の生玄米(平成21年度魚沼産コシヒカリ)150gを原料として、これを洗米後にざるで水切りし、生玄米の乾物質量に対して1.5倍質量の水を加えた。これを火にかけて95℃まで加温し、95℃で30分間加熱処理した。加熱処理した玄米をざるで湯切りし、冷却後に短時間調理殺菌機(日阪製作所社製)を用いて125℃の水蒸気で60分間湿熱処理を施した。
湿熱処理を施した玄米をハイコーターラボ(フロイント産業社製)を用いて50℃で2時間乾燥し、加工玄米を得た(以下、本発明品1と呼ぶ。)。
【0029】
上記の本発明品1の製造方法において、湿熱処理の水蒸気温度を150℃とし、湿熱処理時間を10分としたこと以外は、本発明品1と同じ方法で加工玄米を得た(以下、本発明品2と呼ぶ。)。
【0030】
[比較例]本発明の製造方法によらない加工玄米の製造
上記の本発明品1の製造において、加熱処理した後にざるで湯切りした玄米を、湿熱処理に付さずに乾燥させた以外は、本発明品1と同じ方法で加工玄米を得た(以下、比較品1と呼ぶ。)。
【0031】
上記の本発明品1の製造方法において、生玄米を加熱処理する代わりに25℃で60分間水に浸漬させ、さらに125℃の蒸気で60分間の湿熱処理に代えて100℃の水蒸気で60分間湿熱処理を施した以外は、本発明品1と同じ方法で加工玄米を得た(以下、比較品2と呼ぶ。)。
【0032】
また、原料である生玄米そのものを比較品3とした。
【0033】
[試験例1] シクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールの測定
上記の本発明品1及び2並びに比較品1〜3について、それらの乾物を調製し、各乾物100g中のシクロアルテノールの質量(mg)と24−メチレンシクロアルタノールの質量(mg)とを測定した。
結果を下記表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1の結果から、水中での加熱処理しか行われていない比較品1の乾物では、生玄米の乾物である比較品3と比べて、100g中のシクロアルテノール含量及び24−メチレンシクロアルタノール含量のいずれの増加も認められなかった。このことから、通常の炊飯条件ではシクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールのいずれの含量も増加しないことがわかる。一方、加熱処理を行わずに湿熱処理のみを施した比較品2の乾物では、シクロアルテノール含量については若干増加する傾向が認められたが、24−メチレンシクロアルタノール含量の増加は認められなかった。
これに対し、水中での加熱工程と湿熱処理工程とを含む本発明の製造方法で製造した本発明品1及び2の乾物では、玄米中のシクロアルテノール含量及び24−メチレンシクロアルタノール含量のいずれもが、生玄米の乾物である比較品3と比べて1.7倍以上にも上昇しており、シクロアルテノールと24−メチレンシクロアルタノールの総含量も1.7倍以上に上昇していた。
これらの結果は、本発明の製造方法により、生玄米を原料として、該生玄米よりもシクロアルテノール含量及び/又は24−メチレンシクロアルタノール含量の高い加工玄米を製造できることを示す。
【0036】
[試験例2] 米飯の風味と食感の評価
本発明品1及び2並びに比較品1〜3を、それらの乾物質量の1.5倍の質量の水を加えて室温で1時間浸漬させた後、炊飯器(商品名:JKH−A、タイガー社製)の白米モードで炊飯した。こうして得られた米飯について、その風味と食感とを専門パネル6名にて、下記評価基準により協議により評価値を決定した。
[風味]
3:通常の玄米米飯(注)よりも米糠臭が抑えられ、さらに香ばしさが増している。
2:通常の玄米米飯と同じような米糠臭と香ばしさを有する。
1:通常の玄米米飯よりも米糠臭と香ばしさに劣る。
(注)生玄米を炊飯器の玄米モードで炊飯した一般的な玄米の米飯を意味する。
【0037】
[食感]
3:通常の玄米米飯よりもやわらかく、より弾力がある。
2:通常の玄米米飯と同じような硬さと弾力である。
1:通常の玄米米飯よりも硬く芯を感じる。
結果を下記表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
上記表2の結果から、ある程度の高熱処理を施して製造した加工玄米では、白米モードで炊飯しても、通常の玄米米飯のような風味と食感とを有する米飯に炊き上がることがわかった(比較品1及び2)。一方、未加工の生玄米は、白米モードで炊飯すると、通常の玄米米飯に比べても風味と弾力とに劣る米飯となった(比較品3)。
これに対し本発明の製造方法で製造した本発明品1及び2を白米モードで炊飯した米飯は、通常の玄米米飯よりも米糠臭が抑えられており、さらに香ばしさが増していた。また、通常の玄米米飯よりもやわらかく炊き上がっており、しかもほどよい弾力を有していた。
【0040】
上記試験例1及び2の結果から、本発明の製造方法により、玄米中のシクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールの含有量を高めることができ、しかも本発明の製造方法により製造した加工玄米は、炊飯器の白米モードで炊飯しても、風味と食感の双方に優れた米飯に炊き上がることもわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生玄米を90〜100℃の水中で10〜60分間加熱処理する工程、
加熱処理した玄米を110〜160℃の水蒸気で5〜90分間湿熱処理する工程、及び
湿熱処理した玄米を乾燥させる工程
を少なくとも含む、加工玄米の製造方法。
【請求項2】
加工玄米の乾物100g中に含まれるシクロアルテノールの質量が、加工前の生玄米の乾物100g中に含まれるシクロアルテノールの質量の1.2倍以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
加工玄米の乾物100g中に含まれる24−メチレンシクロアルタノールの質量が、加工前の生玄米の乾物100g中に含まれる24−メチレンシクロアルタノールの質量の1.2倍以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
加工玄米の乾物100g中に含まれるシクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールの総質量が、加工前の生玄米の乾物100g中に含まれるシクロアルテノール及び24−メチレンシクロアルタノールの総質量の1.2倍以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。