説明

加工装置

【課題】良質のミストエアを噴射することができる加工装置を提供すること。
【解決手段】加工装置1は、ボディ2と、ラム3と、ラム3を進退させる進退機構6と、工具Tと、工具Tを把持してラム3と一体に進退する把持手段5と、把持手段5を回転させる主軸モータMと、切削油とエアとを混合したミストエアを工具Tに供給するミストエア供給部10とを備え、ミストエアを供給しながら被加工物を加工する。工具Tは、ミストエアを刃部に送る貫通孔を有する。把持手段5は、工具Tを把持するコレット51と、コレット51が挿入される内筒部52aを有し、内筒部52aから外周部に亘ってミストエア供給部10からのミストエアが導入される通孔52dが形成されたコレットホルダ52とを備えている。内筒部52aには、通孔52dの内側開口端52fから工具Tの貫通孔Tcに向けて形成されたミストエア供給路55aを有する流路案内プラグ55が内嵌されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアと切削油とを混合して生成したミストエアを用いて被加工物を加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切削加工または研削加工において、切削油(クーラント)を被加工物及び工具に供給する方法は、一般に、工作機械やドリルユニットに内設した空間を通して切削油を供給する方法(いわゆるセンタスルー及びスピンドルスルー)と、外部に配置した切削油供給装置から切削油を供給する方法(いわゆるサイドスルー及び側方流体供給)との2種類がある。
【0003】
前記センタスルー及びスピンドルスルーの装置としては、摩擦の減衰やコスト削減等の解決を図り、加工装置の後方から切削油と空気(エア)とを混合した霧状のミストエアを工具及び被加工物に吹き付ける方式のものと、加工装置の後方から切削油とエアとを主軸と主軸の外周や側面からそれぞれ供給し工具及び被加工物に吹き付ける方式のものとが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
また、前記サイドスルー及び側方流体供給の装置としては、工具の取換えの容易化や、加工精度の向上等を図り、冷却用ミストエア供給装置を装置先端の工具側面に接続してミストエアを工具及び被加工物に吹き付ける方式のものが知られている(例えば、特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−316801号公報(請求項1及び図1参照)
【特許文献2】特開平11−320327号公報(請求項1及び図1,2参照)
【特許文献3】特開2002−178207号公報(請求項1及び図5参照)
【特許文献4】特開2008−207290号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来、センタスルー及びスピンドルスルー方式を採用できない構造のドリルユニットの場合にサイドスルー方式を採用するが、そのドリルユニットの壁面にミストエアの衝突する箇所が多い場合や、ドリルの貫通孔内へミストエアが入り難い場合や、あるいは、ミストエアが流れる流路内の空間容積変化が大きい場合に、ミストエアが液化し、切削油が内部に蓄積されて、ドリル先端からエアのみ噴射されることがあった。
この場合、ドリルユニット内部に所定量以上の切削油が貯溜されると、切削油がドリル先端から液状になって断続的に排出されるという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点を解決するために創案されたものであり、工具の前端部から良質のミストエアを噴射することができる加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る加工装置の発明は、略シリンダ形状のボディと、該ボディに進退自在に内装されたラムと、該ラムを進退させる進退機構と、被加工物を加工する工具と、該工具を把持して前記ラムと一体に進退する把持手段と、該把持手段を回転させる主軸モータと、エアを供給するエア供給手段からのエアと切削油を供給するオイル供給手段からの切削油とを混合して生成された霧状のミストエアを前記工具に供給するミストエア供給部と、を備え、前記ミストエアを加工に用いて前記被加工物を加工する加工装置であって、前記工具は、前記ミストエアを刃部に送るための貫通孔を有し、前記把持手段は、前記工具を把持するコレットと、該コレットが挿入される内筒部を有すると共に、該内筒部から外周部に亘って前記ミストエア供給部から供給された前記ミストエアが導入される通孔が形成されたコレットホルダと、を備え、前記内筒部には、前記通孔の内側開口端から前記工具の後端面の前記貫通孔に向けて形成されたミストエア供給路を有する流路案内プラグが内嵌されていることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、加工装置は、工具を把持するコレットが挿入される内筒部を有するコレットホルダに、その内筒部から外周部に亘ってミストエアが導入される通孔が形成されている。その内筒部には、通孔の内側開口端から工具の後端面の貫通孔に向けて形成されたミストエア供給路を有する流路案内プラグが内嵌されて、通孔とミストエア共通路とが連通されて、ミストエアが工具の貫通孔に向けて直接流れるようになっている。このため、コレットホルダの通孔に供給されたミストエアは、流路案内プラグのミストエア供給路を介して工具の貫通孔に真っ直ぐ流れて、その貫通孔に直接入り込むので、工具の前端面からスムーズに噴射できるようになる。その結果、加工装置は、良質のミストエアを噴射しながら加工することができ、被加工物を面粗度が良く滑らかに仕上げることができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の加工装置であって、前記通孔は、前記コレットホルダの外周面に形成された外側開口端から前記内側開口端に向かって軸方向へ斜めに形成されて、前記ミストエア供給路は、上流側開口端及び下流側開口端を介して前記工具の後端面の前記貫通孔に向かって軸方向へ斜めに形成され、前記流路案内プラグは、外側開口端に入り込んだ前記ミストエアが、前記通孔から前記ミストエア供給路を介して前記工具の前記貫通孔に連続的に流れるように配置されていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、通孔及びミストエア供給路は、上流側開口端から下流側開口端に向かって軸方向へ斜めに形成されると共に、通孔の外側開口端に入り込んだミストエアが、通孔からミストエア供給路を介して工具の貫通孔に連続して流れるように配置されている。このため、コレットホルダの通孔に供給されたミストエアは、工具の貫通孔に向けて最短距離を通って真っ直ぐに流れるようになると共に、ミストエアが流路の内壁等に衝突するのを極力低減させて避けることができる。その結果、通孔及びミストエア供給路は、把持手段内の流路を流れるミストエアの流動抵抗を小さくして、その流れをスムーズにすると共に、ミストエアを霧状の良好な状態のまま工具内に送り込むことができる。
また、コレットホルダの内筒部に挿入された流路案内プラグのミストエア供給路が、コレットホルダの通孔の内側開口端から工具の後端面の前記貫通孔に向けて連続的に配置されていることによって、流路の空間容積を小さくすることができる。このため、流路内に液状化した切削油が生成されたとしても、流路内に切削油が貯溜するのを抑制することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の加工装置であって、前記内筒部は、段差部に、前記コレットホルダと主軸とを連結する締結具を設け、前記締結具と前記流路案内プラグとの間には、前記締結具または前記流路案内プラグに固着したゴム部材が設けられていることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、締結具と流路案内プラグとの間にゴム部材が介在されていることによって、内筒部内の隙間を小さくして、流路中の不要な内部空間が形成されるのを抑制することができる。また、工具は、コレットホルダの内筒部に対して軸方向に、流路案内プラグ及びゴム部材を介在して挿入され、弾性的に支持される。このため、コレットナット締付時のコレット及び工具の引き込みによる工具の振れ精度の悪化をゴム部材によって防止することができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の加工装置であって、前記コレットホルダには、該コレットホルダに形成された前記通孔の位置と、前記流路案内プラグに形成された前記ミストエア供給路の位置とを位置合わせするための位置決めピンが設けられていることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、通孔の位置とミストエア供給路の位置は、位置決めピンによって位置合わせして流路案内プラグがコレットホルダの回転方向に固定されることにより、容易に両者の位置を合致させることができると共に、両者がずれて配置されるのを解消することができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の加工装置であって、前記ミストエア供給路の内径は、1〜3mmに形成されていることを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、ミストエア供給路の内径が、1〜3mmに形成されていることによって、ミストエアの流路空間容積の変化を少なくして、霧状のミストエアの状態を維持して、ミストエアが液状化するのを防止することができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の加工装置であって、前記進退機構は、圧縮エア供給源から供給されるエアによって駆動されるエアシリンダ機構からなり、前記主軸モータは、前記圧縮エア供給源から供給されるエアによって駆動されるエアモータからなり、前記エア供給手段は、前記圧縮エア供給源から供給されるエアが供給されることを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、進退機構と主軸モータとエア供給手段とは、同じ圧縮エア供給源から供給されるエアを利用していることによって、供給源(駆動源)の数を最少限に抑えることができると共に、装置全体をエアのみで駆動させることができる。そのため、電源がない不便な場所であっても、圧縮エア供給源があれば駆動させることができる。また、進退機構と主軸モータとエア供給手段とは、一つの動力源によって駆動させるので、部品点数及び組付工数を削減して構造を簡素化することができると共に、装置全体の小型化及びコスト低減に寄与することができる。
【0020】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の加工装置であって、前記ミストエア供給部に供給する前記エア及び前記切削油の流量を調整する流量調整手段を有することを特徴する。
【0021】
かかる構成によれば、ミストエア混合部は、エア及び切削油の流量を調整できる流量調整手段を有することによって、エアの流量を調整できるため、切削油が通孔から未噴射となるのを防止することができると共に、エアのみを流路に送って内部に溜まっている切削油を外部に吹き飛ばすことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る加工装置によれば、工具の前端部から良質なミストエアを噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る加工装置の一例を示す一部断面を有する概略側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る加工装置の使用状態を示す正面図である。
【図3】加工装置のエア流路を説明するためのブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係るドリル装置のミストエア混合部を示す図であり、(a)は正常時の状態を示す要部拡大概略図、(b)は切削油が逆流したときの状態を示す要部拡大概略図である。
【図5】本発明の実施形態に係るドリル装置の把持手段を示す要部断面図である。
【図6】図5のX−X断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るドリル装置のコレットホルダの通孔を示す要部拡大断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係るドリル装置を示す図であり、(a)は流路案内プラグとドリルの配置関係を示す要部拡大断面図、(b)はノズルの貫通孔を示す概略図である。
【図9】本発明の比較例を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る加工装置1を説明する。
なお、工具は、回転して被加工物(図示省略)を加工するものであればよく、以下、ドリルTの場合を例に挙げて説明する。また、図1に示す本発明の加工装置1は、油圧や空気圧や電動モータ等の駆動力を利用して、ドリルTを回転及び進退(往復動)させることによって被加工物を加工する装置であり、以下、圧縮エアでドリルTを回転及び往復動させるドリル装置1Aを例に挙げて説明する。
なお、便宜上、作業者がグリップ1aを持った状態を基準として、ドリルTが装置される側を前側(先端側)、その反対側を後側、グリップ1aが固定された側を下側、その反対側を上側として説明する。
【0025】
≪ドリル装置の構成≫
図1に示すように、ドリル装置1A(加工装置1)は、作業者(図示省略)がグリップ1aを持って位置決め用の治具プレートPに形成された位置決めブッシュPaにブッシュ13を挿入し、止めねじPbによりロックして穿孔作業を行なうハンドツールである。ドリル装置1Aは、被加工物(図示省略)にミストエア混合部8で生成したミストエアを供給しながらドリルTを回転させ、送りを与えて穿孔するサイドスルータイプの装置である。
【0026】
このドリル装置1Aは、略シリンダ形状のボディ2と、ボディ2に進退自在に内装されたラム3と、ラム3の後部に排気口E1を有するセンタバー40と、ラム3を進退させる進退機構6と、前記ドリルTと、ドリルTを把持してラム3と一体に進退する把持手段5と、把持手段5を回転させる主軸モータMと、切削油と圧縮エアとを混合して生成した霧状のミストエアをドリルTに供給するミストエア供給部10と、ボディ2の前部に配設されドリルTを覆うノーズピース12と、ノーズピース12の先端部に装着されドリルTの先端部をガイドするブッシュ13と、を主に備えている。
【0027】
≪ボディの構成≫
図1に示すボディ2は、往復移動(送りと戻り)するラム3、進退機構6、主軸モータM等を内装したハウジングである。ボディ2は、後退用流路L21(図3参照)からの圧縮エアでラム3を後退させる第1のシリンダ室61が内設された前部ボディ21と、前進用流路L22(図3参照)からの圧縮エアでラム3を前進させる第2のシリンダ室62が内設された後部ボディ22と、を連結してなる。ボディ2の上部には、油圧ダンパDが装着されている。ボディ2の下部には、ラム3の外周部に形成されたエア圧力室1cに連通するエア供給口1bを有するグリップ1aが固定されている。
【0028】
エア圧力室1cは、モータ用流路L11(図3参照)を介して、エア供給口1bから導入された圧縮エアを一旦、貯溜し、ラム3が送り動作に入って前進しセンタバー40の導入流路In2がエア圧力室1cと連通すると、導入流路In2から導入流路In1を通って主軸モータMに圧縮エアを供給して主軸モータMを回転させる。
主軸モータMに供給された圧縮エアは、排気流路(図示省略)を介して排気口E1から大気中に排気される。排気口E1には、主軸モータMの回転数を調整するための排気エア量を規制する排気絞り弁E2が設けられている。
【0029】
図1に示すように、センタバー40は、ラム3の後端部にねじ込まれて、ラム3の後端部を閉塞するようにして延設された軸棒部材からなる。センタバー40は、前記排気流路(図示省略)と、排気口E1と、前記モータ用流路L11(図3参照)とを備えている。センタバー40には、スクリュー支持板41を介してアジャストスクリュー42が配設されている。
【0030】
≪ラムの構成≫
ラム3は、把持手段5を介在してドリルTを圧縮エアによって往復移動させるための略円筒状の部材であり、ボディ2に進退自在に内装されている。ラム3は、ボディ2の先端部と中央部と後端部とにシール材(図示省略)を介在して摺動自在に支持されている。ラム3は、外周部の中央部に、圧縮エアによってボディ2内を前後方向に摺動する鍔状の拡径部(図示省略)が形成されている。
【0031】
<アジャストスクリュー及び油圧ダンパの構成>
アジャストスクリュー42は、ラム3の前進移動に伴って油圧ダンパDを押圧することにより、ラム3の送り速度を調整可能になっている。
油圧ダンパDは、例えば、ラム3の送り速度を調整するダンパと、穿孔加工における微速抜け送り速度を調整するダンパとの二種類を、ボディ2上に並設してなる。
【0032】
≪進退機構の構成≫
図1に示すように、進退機構6は、例えば、ラム3の外周部とボディ2の内周部との間に形成された第1のシリンダ室61または第2のシリンダ室62に、圧縮エア供給源4からエア流路L(図3参照)を介して供給される圧縮エアによってラム3、把持手段5及びドリルTを前進及び後退させるエアシリンダ機構からなる。
第1のシリンダ室61は、前記拡張部(図示省略)の前側に形成され、後退用流路L21(図3参照)を通って後退用の圧縮エアが導入されて、ラム3を後退させる。第2のシリンダ室62は、前記拡張部(図示省略)の後側に形成され、前進用流路L22(図3参照)を通って前進用の圧縮エアが導入されて、ラム3を前進させる。
【0033】
≪主軸モータの構成≫
主軸モータMは、ラム3に把持手段5を介在してドリルTを回転させるモータであり、例えば、前記圧縮エア供給源4(図3参照)からエア供給口1bを介してエアモータ室Maに供給された圧縮エアによって回転するエアモータからなる。主軸モータMの主軸Mbの先端部には、ドリルTを把持する把持手段5のコレット51及びコレットホルダ52が皿ねじ57によって連結されている。
【0034】
≪エア流路の構成≫
図3に示すように、エア流路Lは、圧縮エア供給源4からエア供給口1bに供給された圧縮エアを、主軸モータM、進退機構6、ミストエア供給部10を介してドリルT等へ供給するための流路である。エア流路Lは、圧縮エア供給源4に連通するエア供給口1bと、エア供給口1bの圧縮エアを主軸モータM等に供給する第1の流路L1と、エア供給口1bの圧縮エアを進退機構6等に供給する第2の流路L2と、エア供給口1bの圧縮エアを流量調整部7に送るミスト用エア供給路L3と、流量調整部7のエア流量調整部72からの圧縮エアと切削油量調整ねじ部74(オイル供給部)からの切削油とをそれぞれミストエア混合部8へ送ってミストエアを生成させるエアオイル分流供給管11と、ミストエア混合部8で生成されたミストエアをコレットホルダ52(図示省略)及び流路案内プラグ55を介在してドリルTに送る通孔52d及びミストエア供給路55aと、を備えている。
【0035】
前記エア供給口1bは、外部の圧縮エア供給源4に接続され、0.5〜0.6MPa程度の圧縮エアを供給する供給管が接続される接続口であり、グリップ1a(図1参照)の下端部に形成されている。エア供給口1bは、第1の流路L1、第2の流路L2及びミスト用エア供給路L3にそれぞれ連通している。
そして、第1の流路L1、第2の流路L2及びミスト用エア供給路L3は、それぞれ並列に接続されていることにより、主軸モータMの回転数(主軸回転数)の調整と、ラム3の往復移動速度(送り速度)の調整と、エア流量調整部72で行うミストエア混合部8に送る圧縮エアの流量の調整と、をそれぞれ独立して行なうことができる。
【0036】
図3に示すように、第1の流路L1は、主軸モータMを駆動させるモータ用流路L11と、このモータ用流路L11から分岐したラム3(図1参照)を前進させる第2の前進用流路L12と、を備えている。モータ用流路L11は、センタバー40の先端部から軸線方向に形成された導入流路In1(図1参照)と、導入流路In1に連通する導入流路In2(図1参照)と、を備えている。第2の前進用流路L12は、ラム3(図1参照)の後端部に圧縮エアを供給してラム3を前進させる。
【0037】
第2の流路L2は、ラム3(図1参照)、把持手段5及びドリルTの後退用の圧縮エアを第1のシリンダ室61に供給する後退用流路L21と、後退用流路L21に圧縮エアを流すためのリターンボタンRと、ラム3(図1参照)、把持手段5及びドリルTの前進用の圧縮エアを第2のシリンダ室62に供給する前進用流路L22と、前進用流路L22に設けられた減圧弁PVと、圧縮エアの流量を調整してラム3(図1参照)、把持手段5及びドリルTの進退速度を調整するスピードコントローラSPと、ラム作動用のスタートボタンSと、を備えている。
減圧弁PVは、グリップ1a(図1参照)の後方に装備され、圧縮エアを減圧してラム3の前進推力を調整できる。スピードコントローラSPは、ラム3の前進早送り速度を微調整できる。
【0038】
≪ミストエア供給部の構成≫
図3に示すように、前記ミストエア供給部10は、ドリルTに供給する切削油と圧縮エアとが霧状に混合されたミストエアを生成するミストエア混合部8と、このミストエア混合部8にエア流路Lを介して圧縮エアを供給するエア供給口1bと、ミストエア混合部8に切削油を供給するオイル供給手段(オイル供給管11b)と、ミストエア混合部8に圧縮エアを供給するエア供給手段(エア供給管11a)と、ミストエア混合部8に供給する圧縮エア及び切削油の流量を調整する流量調整手段(流量調整部7)と、ミストエアをドリルTの貫通孔Tc(図5参照)に送る通孔52d及びミストエア供給路55aと、を備えて構成されている。
【0039】
<ミスト用エア供給部の構成>
図1及び図3に示すように、ミスト用エア供給路L3は、ミストエア混合部8に圧縮エアを供給するエア供給装置である。ミスト用エア供給路L3は、上流側がエア供給口1bに接続され、下流側がハンドバルブ71に接続された第1エア供給管L31と、第1エア供給管L31の下流側を開閉するハンドバルブ71と、上流側がハンドバルブ71に接続され、下流側がエア流量調整部72に接続された第2エア供給管L32と、ミストエア混合部8に供給する圧縮エアの流量を調整するエア流量調整部72と、を備えている。
【0040】
<ハンドバルブの構成>
ハンドバルブ71は、ミスト用エア供給路L3を開栓及び閉栓する開閉ノブを有する手動バルブである。ハンドバルブ71を開栓すれば、圧縮エアがエア供給口1bから第1エア供給管L31、ハンドバルブ71、第2エア供給管L32、エア流量調整部72、エアオイル分流供給管11、ミストエア混合部8に流れ、このミストエア混合部8で切削油と混合してミストエアとなって把持手段5内の通孔52d、ミストエア供給路55a及び貫通孔Tcを流れてドリルTの先端からミストエアが噴射される。ハンドバルブ71を閉栓するとミストエアの供給も停止する。
【0041】
<エア流量調整部の構成>
図1に示すように、エア流量調整部72は、流量調整部7の流量調整部本体7aの側面に形成されたエア入口(図示省略)と、このエア入口から流量調整部本体7a内に入り込む圧縮エアの流量を調整する調整ねじ72a(図2参照)と、を備えて構成されている。
調整ねじ72a(図2参照)は、エア入口に形成された雌ねじ部(図示省略)に螺合している螺合量を回動調整することにより、第2エア供給管L32からミストエア混合部8に流れ込む圧縮エアの流量を調整することができるボリュームである。
【0042】
≪オイル供給部の構成≫
図1に示すように、オイル供給部L4は、ミストエア混合部8に切削油を供給するオイル供給装置である。オイル供給部L4は、切削油を貯溜した切削油タンク73と、切削油タンク73に連通する切削油供給口75と、切削油供給口75から切削油を切削油タンク73に供給するための切削油補給器76(図2参照)と、切削油タンク73からミストエア混合部8への切削油の流量を調整する切削油量調整ねじ部74と、を備えてなる。
【0043】
図1に示すような、切削油タンク73は、略ボンベ形状のタンクであり、取付具によってボディ2の上部に取り付けられている。切削油タンク73には、ハンドバルブ71を通過した圧縮エアを切削油タンク73側に送り込む分岐部73aと、この分岐部73aから取り込んだ圧縮エアによって切削油を加圧する加圧ピストン73bと、この加圧ピストン73bが進退可能に内設されたシリンダ状のタンク73cと、を備えている。切削油タンク73の開口部が、ミストエア混合部8と切削油供給口75とに連通して、切削油が出入りするようになっている。
【0044】
図2に示すように、切削油供給口75は、切削油補給器76が接続される供給口75aと、供給口75aに形成されたカプラ接続口に注入用接続管76cを接続するように構成されている。
切削油補給器76は、切削油を切削油タンク73に注入するオイルシリンジからなる。切削油補給器76は、切削油が入っているシリンダ状の容器76aと、容器76a内の切削油を押し出すピストンロッド76bと、先端が前記供給口75aに内嵌すると共に、基端部が容器76aの内底に連通した注入用接続管76cと、を備えている。
【0045】
<ミストエア混合部の構成>
図4(a)に示すように、ミストエア混合部8は、切削油と圧縮エアと混合してミストエアを生成する混合ノズル装置である。ミストエア混合部8は、圧縮エアを噴射するエアノズル81と、このエアノズル81内に挿入されて切削油を噴射するオイルノズル82と、図5に示す噴射管83と、ミストエア混合部8を覆うホイールキャップ84と、ミストエア混合部8をクーラントカバー56に接続するためのニップル85と、を主に備えて構成されている。
【0046】
≪把持手段の構成≫
把持手段5は、ドリルTを把持すると共に、前記ミストエア混合部8で生成したミストエアをドリルTに送るための流路を形成する部位である。把持手段5は、前記クーラントカバー56と、ドリルTを把持するコレット51と、このコレット51及び流路案内プラグ55が内嵌される段付き円筒状の内筒部52aを有すると共に、この内筒部52aから外周部に亘ってミストエア供給部10から供給されたミストエアが導入される通孔52dが形成されたコレットホルダ52と、ミストエアが流れるミストエア供給路55aが形成された流路案内プラグ55と、コレットホルダ52を主軸Mbに連結するための皿ねじ57と、コレット51をコレットホルダ52に固定するためのコレットナット58と、流路案内プラグ55をコレットホルダ52内の所定位置に固定するための位置決めピン92と、を主に備えて構成されている。
【0047】
<クーラントカバー>
図5に示すように、クーラントカバー56は、ミストエア混合部8をコレットホルダ52に形成された通孔52dに連通させるための部材である。このクーラントカバー56は、小径部と大径部とからなる段付円筒状の部材からなる。クーラントカバー56には、ミストエア混合部8の先端側連結部8aが接続されると共に通孔52dと一致する箇所に形成された接続部56aと、この接続部56aに対して軸方向に離間して配置されたOリングO1,O2が嵌入される環状溝56b,56cが形成されている。
図5及び図6に示すように、このクーラントカバー56の内壁面とコレットホルダ52の外周面との間には、OリングO1,O2間において、僅かな隙間Cがあるが、2つのOリングO1,O2によってミストエアが外部に漏れないようになっている。クーラントカバー56は、止めねじによってラム3に固定されている。このため、クーラントカバー56は、ラム3と一体に進退移動するようになっている。
【0048】
図6に示すように、前記隙間Cは、クーラントカバー56の内壁面と、主軸Mbと一体に回転するコレットホルダ52の外周面との間に形成されたリング形状の空間であり、常時、ミストエア混合部8及び通孔52dに連通している。このため、隙間Cは、コレットホルダ52が回転した際に、通孔52dがミストエア混合部8の先端側連結部8a内の管路の位置とずれたときに、ミストエア混合部8から送り込まれたミストエアが逃げ込むことにより、ミストエアの流動抵抗が瞬時に上がるのを緩和する逃げの役目を果たす。その結果、ミストエア混合部8の先端側連結部8aと通孔52dとの間において、ミストエアが流路の壁面に衝突して液化するのを防止することができる。
また、この隙間Cは、クーラントカバー56の内壁面と、コレットホルダ52の外周面との間に形成されていることによって、その間が非接触の状態になるため、摩擦抵抗が低減されてコレットホルダ52の回転を良好にすることができる。
【0049】
<コレット及びコレットナットの構成>
図5に示すように、コレット51は、ドリルTの後端面Tb側が装着される略円筒状の部材であり、コレットホルダ52の内筒部52aに拡開して形成された拡開部52kに内嵌されるテーパ部を外周面に有している。コレット51には、このコレット51を径方向に弾性変形し易くするための複数のスリ割り51aと、ドリルTを挿通するためのドリル保持孔51bと、が施されている。
コレットナット58は、コレット51をコレットホルダ52に固定するため固定具であり、コレット51の頭部を内嵌させた状態で、コレットホルダ52の雄ねじ部52iに螺合する雌ねじ部(図示省略)を有している。
【0050】
<コレットホルダの構成>
図5に示すように、コレットホルダ52は、把持手段5の本体を形成すると共に、ニップル85内を通って送られて来るミストエアをドリルTの貫通孔Tcに送るミストエアの供給路を内部に形成した略筒状の部材である。コレットホルダ52には、前側開口端52bから後側開口端52cに亘って軸方向に連通している内筒部52aと、コレットホルダ52の外周面に形成された外側開口端52gから内側開口端52fに向かって軸方向へ斜めに形成された通孔52dと、内筒部52a内の略中央部に縮径して段差状に形成され段差部52eと、前記雄ねじ部52iと、位置決めピン92が装着されるピン設置孔52jと、が形成されている。
コレットホルダ52は、通孔52dの外側開口端52gにミストエアが供給されて、ミストエアが、このコレットホルダ52内の流路案内プラグ55に形成されたミストエア供給路55aを介してドリルTの貫通孔Tcを通って刃先から加工部に供給されるようになっている。
【0051】
内筒部52aには、段差部52eから前側方向へ、ゴム部材91を備えた流路案内プラグ55、ドリルTが装着されたコレット51が順に挿入されている。図8(a)に示すように、この内筒部52a(図5参照)に内嵌された流路案内プラグ55のミストエア供給路55aは、通孔52dの内側開口端52fからドリルTの後端面Tbの貫通孔Tcに向けて形成された状態に配置されている。図5に示すように、内筒部52aの後側には、主軸Mbの前端部が挿入されて、その主軸Mbが皿ねじ57(締結具)によってコレットホルダ52に固定されている。前記段差部52eには、通孔52dの内側開口端52fが開口されると共に、皿ねじ57(締結具)の頭部が装着されている。
【0052】
≪皿ねじの構成≫
図5及び図8(a)に示すように、皿ねじ57は、皿ねじ57の頭部が内筒部52a内の段差部52eから前方向へ出っ張った状態にならないように、段差部52eに係合して内筒部52aを閉塞するように配置されている。この皿ねじ57と流路案内プラグ55との間には、ゴム部材91が互いに密着した状態に設けられている。この場合、ゴム部材91は、流路案内プラグ55の後端面に形成した凹部55dにゴム焼付けさせて固着されて、皿ねじ57の頭部に押し当てた状態に配置されているが、皿ねじ57の頭部に固着してもよい。
【0053】
≪位置決めピンの構成≫
位置決めピン92は、ピン設置孔52jに挿入し、その先端を流路案内プラグ55の外周面に形成されたキー溝状の位置決め部55eに係合させることによって、コレットホルダ52の通孔52dの位置と、流路案内プラグ55のミストエア供給路55aの位置とが、斜めに直線になるように位置合わせされる。
【0054】
<通孔の構成>
図5に示すように、通孔52dは、ミストエアが送り込まれるコレットホルダ52の外側開口端52gから内側開口端52f側に向かって軸方向へ斜めに形成されている。図7に示すように、通孔52dは、外側開口端52gがコレットホルダ52の外周面に切欠形成された油溜まり52hに開口されている。図8(a)に示すように、通孔52dの内側開口端52fは、流路案内プラグ55の上流側開口端55bと同一直線上に一致した状態に配置されて、ミストエアがスムーズに流れるように連続した状態に配置されている。
【0055】
<流路案内プラグ構成>
図5に示すように、流路案内プラグ55は、軸方向に対して斜めに穿設されたミストエア供給路55aを有して、内筒部52aに内嵌される略円筒状の部材である。図8(a)に示すように、この流路案内プラグ55は、通孔52dの外側開口端52g(図5及び図7参照)に入り込んだミストエアが、通孔52dからミストエア供給路55aを介してドリルTの貫通孔Tcに連続して流れるように配置されている。
つまり、ミストエア供給路55aは、このミストエア供給路55aの上流側開口端55bから下流側開口端55cまでが、ドリルTの後端面Tbの貫通孔Tcに向かって軸方向へ斜めに形成されて、上流側開口端55bに入り込んだミストエアが、貫通孔Tcに向けて一直線に流れるように形成されている。さらに、このミストエア供給路55aと前記通孔52dは、貫通孔Tcに向けて一直線になるように配置されて、この状態が前記位置決めピン92によって保持されている。
【0056】
この流路案内プラグ55のミストエア供給路55aの内径は、1〜3mmに形成され、好ましくは、1.5〜2mm、さらに好ましくは、2mmに形成されている。
なお、ミストエア供給路55aの内径は、上記の数値に限らず、加工径及びドリルTのオイルホール穴の内径によって、適切な寸法とする。例えば、加工径がφ5〜φ16の場合、加工するドリルTのオイルホール穴の内径は、基本的には0.6〜1.7mm(加工径の1/10プラス0.1mm)である。
【0057】
<ノーズピース、ブッシュ及びドリルの構成>
図1に示すように、ノーズピース12は、ボディ2の前部に配設されて、把持手段5及びドリルTの後端部側を覆うカバー部材である。
ブッシュ13は、このノーズピース12の先端部に装着されドリルTを支持する円筒状の部材である。
【0058】
図5及び図8(b)に示すように、ドリルTは、被加工物を加工する工具であり、前端面Taの刃部から後端面Tbに亘ってミストエアまたは圧縮エアが流れる複数の貫通孔Tcを有している。
【0059】
[作用]
以上のように構成された本実施形態に係るドリル装置1Aの動作について、図9の比較例を参照しながら説明する。
【0060】
≪比較例≫
図9は、本発明の比較例を示す要部拡大断面図である。まず、図9を参照しながら比較例を説明する。
図9に示すように、比較例のドリル装置100は、ドリル200を把持したコレット110を、コレットホルダ120内の内筒部122に大きな内部空間123が形成されるようにして装着している。その内部空間123には、主軸固定用の六角穴付ボルト300の頭部が内壁面から突出した状態に設けられている。コレットホルダ120には、外周面に、ミストエア混合部400からミストエアが供給されるストレート形状の通孔121が4つ形成されて、内部空間123に連通させている。
【0061】
このように構成されたドリル装置100を使用して、ミストエア混合部400で生成したミストエアを、4つの通孔121から内部空間123を介してドリル200の貫通孔210の送る実験を行った。すると、ドリル200の先端からは、霧状のミストが噴出されず、圧縮エアのみが噴出された。そして、ミストエアは、4つあるストレート形状の通孔121及び内部空間123の流路面積が広く、また、六角穴付ボルト300の頭部が流路内に突出していることによって、ミストエアが頭部に衝突し、その結果、ミストエアが液化した状態で内部空間123に貯溜し、ドリルTの先端から切削油が継続的に排出されることがあった。
【0062】
≪本発明の作用≫
本発明は、前記比較例を改良して良好なミストエアをドリルTの先端から噴出できるようにしたものである。以下その作用を説明する。
本実施形態に係るドリル装置1Aは、図1に示すように、スタートボタンSを押すと、圧縮エア供給源4からエア供給口1bに送られた圧縮エアが、図3に示す前進用流路L22を通り、減圧弁PV及びスピードコントローラSPを介して進退機構6の第2のシリンダ室62及び主軸モータMに供給されて、進退機構6が前進すると共に、主軸モータMが回転する。
【0063】
図1に示すラム3が、導入流路In2とエア圧力室1cとが連通する位置まで前進すると、導入流路In2から導入流路In1を通って主軸モータMに圧縮エアが供給されて、主軸モータMが回転する。このようにして、ドリルTを回転させながら、送りを与えて穿孔する。
【0064】
そして、ハンドバルブ71を開弁すると、圧縮エアが、エア供給口1bから第1エア供給管L31、ハンドバルブ71、第2エア供給管L32、エア流量調整部72、エアオイル分流供給管11、ミストエア混合部8に流れ、このミストエア混合部8で切削油と混合してミストエアとなって、通孔52d、ミストエア供給路55a、貫通孔Tcを流れてドリルTの先端からミストエアが噴射される。
【0065】
前記ミストエア混合部8で生成されたミストエアは、図5に示すように、同一径で形成された通孔52d及びミストエア供給路55aが、コレットホルダ52の外周部の外側開口端52gから下流側開口端55cを介して軸心方向にあるドリルTの貫通孔Tcに向けて斜めに一直線に形成されているので、貫通孔Tc内にスムーズに入り込むように流れる。このため、ミストエアは、最短距離を真っ直ぐ直線状に流れるようになり、流路内の壁面等に衝突することがないため、流動抵抗が小さい。その結果、ミストエアが液化するのを解消することができる。
【0066】
なお、コレットホルダ52に流路案内プラグ55を組み付ける場合は、図5及び図8(a)に示すように、1つの通孔52dを有するコレットホルダ52の内筒部52aに、ドリルTの後端面Tbを流路案内プラグ55に拡径面55fに当接させた状態で、ミストエア供給路55aを上にし、ピン設置孔52jを下にして流路案内プラグ55を内嵌させて、この状態を位置決めピン92をピン設置孔52jに係合させることで保持する。すると、通孔52dとミストエア供給路55aとが一致し、略管状に連続した流路を形成する。
このため、通孔52dからミストエア供給路55aを介してドリルTの貫通孔Tcまでのミストエアが流れる流路の流路容積は、前記比較例の流路容積よりも小さくなっている。その結果、ミストエアは、流路案内プラグ55内に一時的に滞溜することなく、かつ、壁面等に衝突せずにスムーズにミストエア供給路55a及び貫通孔Tcに向けて流れて、流動抵抗も小さいため、液化することがない。
【0067】
ミストエア供給路55aから噴射されるミストエアは、ドリルTの前端面Taが流路案内プラグ55のテーパ状の開口部に当接して配置されているため、貫通孔Tcに導入されるように噴射される。また、ドリルTの貫通孔Tcは、図8(b)に示すように、ピッチ間隔dが狭いため、流路案内プラグ55のミストエア供給路55aを通過したミストエアが、貫通孔Tcに入り込み易い。その結果、ミストエアは、ドリルTの前端面Taから良好なミスト状態になって噴射される。
【0068】
なお、把持手段5内のミストエア供給路55aに切削油が貯溜した場合には、切削油量調整ねじ部74を操作して切削油の流れを止めて、圧縮エアのみ送ることにより、図4(b)に示すように、ミストエア混合部8にある切削油をオイル供給管11b内に逆流させることができると共に、噴射するエアによって、流路内に貯溜した切削油を下流側へ吹き飛ばしてドリルTの先端から外部に排出させることができる。
【0069】
一方、リターンボタンRを押すと、圧縮エア供給源4からエア供給口1bを介して後退用流路L21(図3参照)を通り、進退機構6の第1のシリンダ室61に圧縮エアが供給されて、ラム3が後退する。そのラム3が後退して、導入流路In2とエア圧力室1cとが連通する位置からさらに後退すると、これに伴い導入流路In2とエア圧力室1cとの連通が遮断されて、主軸モータMへの圧縮エアの供給が停止されるので、主軸モータMが停止する。
なお、リターンボタンRは、マニュアル動作では前進動作中に後退する。また、オートリターン動作では、所定の前進端までラム3が到達すると自動的に後退する。
【0070】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0071】
例えば、往復運動体を有する加工装置1としては、図1に示すようなドリルユニットのラム3を送る場合を例に挙げて本発明の一実施例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、往復移動する往復運動体を有する機械であれば適用させることができ、その他の装置であっても構わない。
加工装置1は、往復動するラム3等の往復運動体を備えた機械、または、工具や被加工物等の物体を往復移動させるラム3を搭載した機械であればよく、往復動するラム3を何によって作動させ、どのようなものに使用するかは、特に限定されない。
【0072】
つまり、主軸モータMは、ラム3、把持手段5及びドリルTを回転させるものであればよく、例えば、油圧式モータ、電動モータ等であっても構わない。
また、進退機構6は、ラム3、把持手段5及びドリルTを前進及び後退させる装置であればよく、油圧シリンダ機構や、モータ歯車機構等のその他の機構を使用したものであっても構わない。
【0073】
前記実施形態では、工具の一例として、ドリルTを挙げて説明したが、タップ、リーマ、エンドミル等の回転工具を回転及び往復動させて被加工物を加工するものであれば、適用することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 加工装置
1A ドリル装置
2 ボディ
3 ラム
4 圧縮エア供給源
5 把持手段
6 進退機構
7 流量調整部(流量調整手段)
8 ミストエア混合部
10 ミストエア供給部
11a エア供給管(エア供給手段)
11b オイル供給管(オイル供給手段)
51 コレット
52 コレットホルダ
52a 内筒部
52d 通孔
52e 段差部
52f 内側開口端
52g 外側開口端
55 流路案内プラグ
55a ミストエア供給路
55b 上流側開口端
55c 下流側開口端
57 皿ねじ(締結具)
91 ゴム部材
92 位置決めピン
M 主軸モータ
Mb 主軸
T ドリル(工具)
Ta 前端面
Tb 後端面
Tc 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略シリンダ形状のボディと、
該ボディに進退自在に内装されたラムと、
該ラムを進退させる進退機構と、
被加工物を加工する工具と、
該工具を把持して前記ラムと一体に進退する把持手段と、
該把持手段を回転させる主軸モータと、
エアを供給するエア供給手段からのエアと切削油を供給するオイル供給手段からの切削油とを混合して生成された霧状のミストエアを前記工具に供給するミストエア供給部と、を備え、前記ミストエアを加工に用いて前記被加工物を加工する加工装置であって、
前記工具は、前記ミストエアを刃部に送るための貫通孔を有し、
前記把持手段は、前記工具を把持するコレットと、
該コレットが挿入される内筒部を有すると共に、該内筒部から外周部に亘って前記ミストエア供給部から供給された前記ミストエアが導入される通孔が形成されたコレットホルダと、を備え、
前記内筒部には、前記通孔の内側開口端から前記工具の後端面の前記貫通孔に向けて形成されたミストエア供給路を有する流路案内プラグが内嵌されていることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記通孔は、前記コレットホルダの外周面に形成された外側開口端から前記内側開口端に向かって軸方向へ斜めに形成されて、
前記ミストエア供給路は、上流側開口端及び下流側開口端を介して前記工具の後端面の前記貫通孔に向かって軸方向へ斜めに形成され、
前記流路案内プラグは、外側開口端に入り込んだ前記ミストエアが、前記通孔から前記ミストエア供給路を介して前記工具の前記貫通孔に連続的に流れるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記内筒部は、段差部に、前記コレットホルダと主軸とを連結する締結具を設け、
前記締結具と前記流路案内プラグとの間には、前記締結具または前記流路案内プラグに固着したゴム部材が設けられていることを特徴とする請求項または請求項2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記コレットホルダには、該コレットホルダに形成された前記通孔の位置と、前記流路案内プラグに形成された前記ミストエア供給路の位置とを位置合わせするための位置決めピンが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の加工装置。
【請求項5】
前記前記ミストエア供給路の内径は、1〜3mmに形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の加工装置。
【請求項6】
前記進退機構は、圧縮エア供給源から供給されるエアによって駆動されるエアシリンダ機構からなり、
前記主軸モータは、前記圧縮エア供給源から供給されるエアによって駆動されるエアモータからなり、
前記エア供給手段は、前記圧縮エア供給源から供給されるエアが供給されることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の加工装置。
【請求項7】
前記ミストエア供給部に供給する前記エア及び前記切削油の流量を調整する流量調整手段を有することを特徴する請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−189429(P2011−189429A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55695(P2010−55695)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000132161)株式会社スギノマシン (144)
【Fターム(参考)】