説明

加熱ヘッドおよびこれを備える加熱装置

【課題】媒体を均一に加熱する加熱ヘッドを提供する。
【解決手段】加熱ヘッドX1は、基板7と、複数の発熱部9と、複数の発熱部9のうち、第1方向D1における一方側に位置する発熱部9を第1発熱部、および第1方向D1における他方側に位置する発熱部9を第2発熱部とするとき、第1発熱部および第2発熱部を電気的に接続する電極17と、を備え、第1発熱部、第2発熱部および電極17は、発熱ユニットとして互いに隙間を介して、第2方向D2に複数分割されており、平面視して、隙間の第1方向D1における他方側に、第2発熱部が配置されており、隙間の第1方向D1における一方側に、第1発熱部が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
加熱ヘッド、およびこれを備える加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、媒体へのオーバーコート、媒体としてリライタブル媒体を用いた場合の記録の消去、あるいは媒体にラミネート加工等を行うために、媒体を加熱するための加熱ヘッドおよびこれを備える加熱装置が種々知られている。
【0003】
これらの加熱ヘッドは、基板と、基板上に設けられた一部が発熱部として機能する電気抵抗層とを備えている。また、発熱部が、第1方向に沿って、発熱ユニットとして互いに隙間を介して複数分割されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−340345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した加熱ヘッドでは、発熱部が発熱ユニットとして互いに隙間を介して複数分割されていることから、発熱部が存在しない隙間が生じてしまい、媒体を均一に加熱することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加熱ヘッドは、基板と、該基板上に設けられ、第1方向に沿って延設された複数の電気抵抗層と、該複数の電気抵抗層のうち、前記第1方向とは異なる第2方向における上流側に位置する電気抵抗層を第1電気抵抗層、および前記第2方向における下流側に位置する電気抵抗層を第2電気抵抗層とするとき、前記第1電気抵抗層の一部が発熱する第1発熱部をなし、前記第2電気抵抗層の一部が発熱する第2発熱部をなしており、前記第1発熱部および前記第2発熱部を電気的に接続する電極とを備えている。また、前記第1発熱部、前記第2発熱部および前記電極は、発熱ユニットとして互いに隙間を介して、前記第1方向に複数分割されている。また、平面視して、隣り合う前記発熱ユニットの前記第1発熱部同士の間に位置する前記隙間の、前記第2方向における下流側に、隣り合う前記発熱ユニットのうちいずれかの前記発熱ユニットに位置する前記第2発熱部が配置されている。また、隣り合う前記発熱ユニットの前記第2発熱部同士の間に位置する前記隙間の、前記第2方向における上流側に、隣り合う前記発熱ユニットのうちいずれかの前記発熱ユニットに位置する前記第1発熱部が配置されている。
【0007】
また、本発明の加熱装置は、上記に記載の加熱ヘッドと、加熱ヘッド上に媒体を搬送する搬送機構と、加熱ヘッド上に搬送媒体を押圧する押圧部材とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、媒体を均一に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の加熱ヘッドの一実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】(a)は図1に示す加熱ヘッドの一部を拡大して示す平面図、(b)は(a)に示すI−I線断面図である。
【図3】(a)は図1に示す加熱ヘッドの電気的な接続を示す概略説明図、(b)は電気的な接続の変形例を示す概略説明図である。
【図4】本発明の加熱装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図5】本発明の加熱ヘッドの他の実施形態を示し、(a)は一部を拡大して示す平面図、(b)は(a)に示す一点鎖線を拡大して示す拡大平面図である。
【図6】本発明の加熱ヘッドのさらに他の実施形態を示す発熱ユニットの平面図である。
【図7】(a)は本発明の加熱ヘッドのさらに他の実施形態を示す平面図、(b)は(a)に示す加熱ヘッドの変形例を示す平面図である。
【図8】図7に示す加熱ヘッドのさらに他の実施形態の変形例を示す平面図である。
【図9】本発明の加熱装置の他の実施形態を示す概略斜視図である。
【図10】図9に示す加熱装置を構成する加熱ヘッドの平面図である。
【図11】(a)は本発明の加熱ヘッドのさらに他の実施形態を示す平面図、(b)は(a)に示す加熱ヘッドの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
以下、本発明の加熱ヘッドに係る第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1,2に示すように、本実施形態に係る加熱ヘッドX1は、放熱体として機能する放熱基板1と、放熱基板1上に配置されたヘッド基体3と、ヘッド基体3に接続された、外部基板であるフレキシブルプリント配線板5(以下、FPC5という)とを備えている。なお、図2(a)では、FPC5の図示を省略して示している。なお、符号は、同一または類似する構成のものについて、例えば、「発熱部9Aa,9Ab」のように、同一の符号にアルファベットの付加符号を付することがある。また、この場合において、単に「発熱部9」というなど、上記の付加符号を省略することがあるものとする。
【0011】
図1,2に示すように、放熱基板1は、平面視で長方形状である板状の基部1aと、この基部1aの上面上に載置され、基部1aの一方の長辺に沿って延びる突起部1bとを備えている。突起部1bは、図1に示すように、基部1aの幅方向の両端部に設けられている。なお、放熱基板1を基部1aおよび突起部1bにより構成しなくとも、板状の基部1aのみで構成してもよい。この放熱基板1は、例えば、鉄、銅またはアルミニウム等の金属材料で形成されており、後述するヘッド基体3の発熱部9で発生した熱を効率よく放熱するように構成されている。
【0012】
放熱基板1は、上記のように金属材料により形成すると、熱伝導率が70〜450(W/m・K)となり、外部に効果的に放熱することができる。
【0013】
図1,2に示すように、ヘッド基体3は、平面視で長方形状の基板7を備えている。基板7は、アルミナセラミックス等の電気絶縁性材料あるいは単結晶シリコン等の半導体材料等によって形成されている。
【0014】
そして、基板7の幅方向における中央部に、側面視して、台形状の蓄熱層13が形成されており、蓄熱層13上に発熱部9および電極11が形成されている。
【0015】
ヘッド基体3は、放熱基板1の突起部1aの上面上に載置されている。突起部1bが設けられていない基部1aと、ヘッド基体3との間は空間が形成されており、放熱基板1がヘッド基体3の幅方向における中央部から熱を過剰に放熱しない構成となっている。また、ヘッド基体3の下面と突起部1bの上面とが両面テープ(不図示)によって接着されており、これにより、ヘッド基体3は放熱基板1に支持されている。
【0016】
両面テープは、例えば、アクリル系粘着剤を使用した両面テープを用いることができる。また、ヘッド基体3と放熱基板1とを接合させる機能を有していればよく、両面テープの代わりに、接着剤を用いてもよい。
【0017】
接着剤としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等を主成分とする樹脂系接着剤等を用いることができる。
【0018】
蓄熱層13は、印画する媒体を、発熱部9上に形成された後述する第1保護層12(図2(b)参照)に良好に押し当てるように機能する。
【0019】
蓄熱層13は、例えば、熱伝導性の低いガラスで形成されており、発熱部9で発生する熱の一部を一時的に蓄積することで、発熱部9の温度を上昇させるのに要する時間を短くし、加熱ヘッドX1の熱応答特性を高めるように機能する。蓄熱層13は、例えば、ガラス粉末に適当な有機溶剤を混合して得た所定のガラスペーストを従来周知のスクリーン印刷等によって基板上に塗布し、これを焼成することにより形成される。
【0020】
図2に示すように、基板7の上面および蓄熱層13の上面に電気抵抗層15が設けられている。電気抵抗層15は、媒体の搬送方向である第1方向D1(以下、第1方向D1と称する)に複数設けられており、第1方向D1の一方側に第1電気抵抗層15aが設けられ、第1方向D1の他方側に第2電気抵抗層15bが設けられ、第1方向D1において、第1電気抵抗層15aと、第2電気抵抗層15bとの間に第3電気抵抗層15cが設けられている。なお、第1方向D1の一方側とは、媒体の搬送方向における上流側を意味し、第1方向D1の他方側とは、媒体の搬送方向における下流側を意味する。以下、第1方向D1の上流側および下流側との表現を用いて説明する。
【0021】
電気抵抗層15は、基板7および蓄熱層13と、共通電極11と、接続電極17と、個別電極19との間に介在している。電気抵抗層15の領域は、ヘッド基体3を平面視して、共通電極11、接続電極17および個別電極19と同形状に形成されている。
【0022】
蓄熱層13上に配置された電気抵抗層15の領域は、図2(a)に示すように、平面視して、共通電極11、接続電極17および個別電極19と同形状に形成された領域と、共通電極11、接続電極17および個別電極19の間から露出した複数の領域(以下、露出領域という)とを有している。
【0023】
このように、電気抵抗層15の各領域が形成されているため、図2では、電気抵抗層15の一部は、共通電極11、接続電極17、および個別電極19により隠れており、図示されていない。
【0024】
電気抵抗層15の各露出領域は、電圧が印加されることにより発熱する発熱部9を形成している。そして、複数の露出領域が、図2(a)に示すように、蓄熱層13上に列状に配置されている。
【0025】
電気抵抗層15は、例えば、TaN系、TaSiO系、TaSiNO系、TiSiO系、TiSiCO系またはNbSiO系等の電気抵抗の比較的高い材料によって形成されている。そのため、後述する共通電極11と個別電極19との間に電圧が印加され、発熱部9に電流が供給されたときに、ジュール熱によって発熱部9が発熱する。
【0026】
発熱部9は、図1,2に示すように、第1方向D1に複数設けられており、加熱ヘッドX1においては、第1発熱部9a、第2発熱部9b、および第3発熱部9cが設けられて
いる。第1方向D1の一方側に第1発熱部9aが配置されており、第1方向D1の他方側に第2発熱部9bが配置されている。そして、第1方向D1において、第1発熱部9aと第2発熱部9bとの間に第3発熱部9cが配置されている。
【0027】
第1発熱部9aは、共通電極11と接続電極17とに接続されている。第3発熱部9cは、第1発熱部9a側の接続電極17と、第2発熱部9b側の接続電極17とに接続されている。第2発熱部9bは、接続電極17と個別電極19とに接続されている。
【0028】
そして、共通電極11と、第1発熱部9aと、第1発熱部9a側の接続電極17と、第3発熱部9cと、第2発熱部9b側の接続電極17と、第2発熱部9bと、個別電極19とを1つの発熱ユニット10として、隙間20を介して媒体の搬送方向と直交する方向(以下、第2方向D2と称する場合がある)に複数分割されている。
【0029】
具体的には、発熱ユニット10Aは、共通電極11Aと、第1発熱部9Aaと、接続電極17Aと、第2発熱部9Abと、第3発熱部9Acと、個別電極19Aとにより形成されている。また、発熱ユニット10Bは、共通電極11Bと、第1発熱部9Baと、接続電極17Bと、第2発熱部9Bbと、第3発熱部9Bcと、個別電極19Bとにより形成されている。
【0030】
発熱ユニット10Aと、発熱ユニット10Bとは、互いに隙間20を介して配置されており、第1発熱部9a同士の間に位置する隙間20aの、第1方向D1における下流側に、発熱ユニット10Aに位置する第2発熱部9Abが配置されている。また、第2発熱部9b同士の間に位置する隙間20bの、第1方向D1における上流側に、発熱ユニット10Bに位置する第1発熱部9Baが配置されている。また、第3発熱部9c同士の間に位置する隙間20cの、第1方向D1における上流側に、発熱ユニット10Bに位置する第1発熱部9Baが配置されており、第1方向D1における下流側に、発熱ユニット10Aに位置する第2発熱部9Abが配置されている。
【0031】
つまり、第1発熱部9a同士は隙間20aを介して配置されており、第2発熱部9b同士は隙間20bを介して配置されており、第3発熱部9c同士は隙間20cを介して配置されている。そして、隙間20は、それぞれ第2方向D2から見てずれた状態で配置されている。図2(a)においては、第3発熱部9c同士の間に位置する隙間20cが、第1発熱部9a同士の間に位置する隙間20aより第2方向D2にずれた状態で配置されおり、第2発熱部9b同士の間に位置する隙間20bが、第3発熱部9c同士の間に位置する隙間20cより第2方向D2にずれた状態で配置されている。
【0032】
そのため、隙間20a上を通過した媒体の一部が、第3発熱部9Acおよび第2発熱部9Abにより加熱される。同様に、隙間20b上を通過した媒体の一部が、第1発熱部9Baおよび第3発熱部9Bcにより加熱される。同様に、隙間20c上を通過した媒体の一部が、第1発熱部9Baおよび第2発熱部9Abにより加熱される。それにより、第1方向D1に見て、記録媒体が通過する領域においては、発熱部9が存在しない隙間20のみにより形成される領域が生じないこととなる。それにより、媒体を均一に加熱することができる。
【0033】
また、加熱ヘッドX1は、第1方向D1に第1発熱部9a、第3発熱部9cおよび第2発熱部9bと複数の発熱部9を有することから、媒体の搬送速度を早くした場合においても、所定の温度まで媒体を加熱することができる。そして、第2方向D2に複数の発熱ユニット10が設けられていることから、加熱ヘッドX1よりも小さい媒体を搬送する場合は、媒体に対応する発熱ユニット10のみに電圧を印加することができる。それにより、余分な発熱ユニット10に電圧を印加する必要がなく、効率的に媒体を加熱することがで
きる。
【0034】
また、本実施形態では、第1方向D1と第2方向D2とが略直交している。そのため、第1方向D1における加熱ヘッドX2の長さを最小化することができ、加熱ヘッドX1をコンパクトなものにすることができる。なお、略直交とは、第1方向D1と第2方向D2とのなす角が略90°±10°である状態を示し、製造誤差の範囲を含む概念である。
【0035】
さらに、加熱ヘッドX1は、隙間20aに対応する第2発熱部9bの長さが、隙間20aの長さ以上であることから、隙間20aに対応する領域すべてにわたって第2発熱部9bが存在することとなる。それにより、隙間20a上を通過する媒体の部位も良好に加熱することができる。
【0036】
また、第1発熱部9a同士の間に位置する隙間20aの、第1方向D1における下流側に位置する第2発熱部9bの長さおよび第1方向D1における下流側に位置する第3発熱部9cの長さが、第1発熱部9a同士の間に位置する隙間20aの長さ以上となっている。同様に、第2発熱部9b同士の間に位置する隙間20bの、第1方向D1における上流側に位置する第1発熱部9aの長さおよび第1方向D1における上流側に位置する第3発熱部9cの長さが、第2発熱部9b同士の間に位置する隙間20bの長さ以上となっている。同様に、第3発熱部9c同士の間に位置する隙間20cの、第1方向D1における上流側に位置する第1発熱部9aの長さおよび第1方向D1における下流側に位置する第2発熱部9bの長さが、第3発熱部9c同士の間に位置する隙間20cの長さ以上となっている。
【0037】
そのため、第1方向D1の下流側に位置する、隙間20aに対応する領域の全域にわたって、第3発熱部9cおよび第2発熱部9bが配置されることとなる。また、第1方向D1の上流側に位置する、隙間20bに対応する領域の全域にわたって、第1発熱部9aおよび第3発熱部9cが配置されることとなる。さらにまた、第1方向D1の上流側に位置する、隙間20cに対応する領域の全域にわたって、第1発熱部9aが配置されており、第1方向D1の下流側に位置する、隙間20cに対応する領域の全域にわたって、第1発熱部9aが配置されることとなる。それにより、隙間20上を通過する媒体の部位も良好に加熱することができる。
【0038】
さらに、平面視して、隙間20を構成する第1発熱部9a、第2発熱部9bおよび第3発熱部9cの一辺が、第1方向D1に沿って設けられている。そのため、第1発熱部9a、第2発熱部9bおよび第3発熱部9cと隙間20とに生じた段差も第1方向D1に沿って形成されることとなる。それにより、媒体から発生したゴミ、あるいは媒体が摩耗することにより生じるカス等が、段差に溜まることを抑えることができる。
【0039】
また、平面視して、隙間20を構成する第1発熱部9a、第2発熱部9bおよび第3発熱部9cの一辺が、第1方向D1に沿って設けられていることから、第1発熱部9a、第2発熱部9bおよび第3発熱部9cをフォトリソグラフィー技術等により形成した際に、第1発熱部9a、第2発熱部9bおよび第3発熱部9cを設けようとした位置から第1方向D1にずれた場合においても、第1発熱部9a、第2発熱部9bおよび第3発熱部9cの第2方向D2の長さが変わることを抑えることができる。第1発熱部9a、第2発熱部9bおよび第3発熱部9cの第2方向D2の長さが変わることを抑えることができることから、第1発熱部9a、第2発熱部9bおよび第3発熱部9cの第2方向D2の長さを一定に近づけることができ、加熱ヘッドX1を発熱させた際の温度分布を均一に近づけることができる。
【0040】
図1,2に示すように、電気抵抗層15上には、共通電極11、個別電極19および接
続電極17が設けられている。これらの共通電極11、個別電極19および接続電極17は、導電性を有する材料で形成されており、例えば、アルミニウム、金、銀および銅のうちのいずれか一種の金属またはこれらの合金によって形成されている。そして、これらの共通電極11、個別電極19および接続電極17に接続されている電気抵抗層15の一部が、発熱部9として機能している。
【0041】
以下、これらの電極について図1,2を用いて詳細に説明する。
【0042】
複数の個別電極19は、各発熱ユニット10の第2発熱部9bごとに接続されている。図1,2に示すように、各個別電極19は、一端が第2発熱部9bに接続され、基板7の側面に向かって個別に帯状に延びている。そして他端はFPC5に接続される。
【0043】
共通電極11は、複数の第1発熱部9aとFPC5とを電気的に接続するためのものである。この共通電極11は、図1,2に示すように、第1発熱部9aから基板7の側面に向けて延びるリード部11aを備えている。そして、共通電極11のリード部11aは、それぞれFPC5に接続されており、それぞれ電気的に接続されている。
【0044】
接続電極17は、第1発熱部9aおよび第3発熱部9cを接続している。また、第3発熱部9cおよび第2発熱部9bを接続している。接続電極17は、図2(a)に示すように、第1方向D1に沿った一辺が屈曲した状態で設けられている。より詳細には、第1発熱部9aおよび第3発熱部9cの間に位置する一辺が屈曲して設けられており、第3発熱部9cおよび第2発熱部9bの間に位置する一辺が屈曲して設けられている。そのため、隙間20を構成する第3発熱部9cの一辺である両端部が、第1方向D1に沿った形状とすることができる。同様に、隙間20を構成する第1発熱部9aおよび第2発熱部9bの一辺である両端部も第1方向D1に沿った形状となっている。
【0045】
上記の電気抵抗層15、共通電極11、接続電極17、および個別電極19は、例えば、各々を構成する材料層を、蓄熱層13が形成された基板7上に、スパッタリング法等の従来周知の薄膜成形技術によって順次積層した後、この積層体を従来周知のフォトエッチング等を用いて所定のパターンに加工することにより形成される。なお、本実施形態では、共通電極11、接続電極17および個別電極19は、同じ工程によって同時に形成することができる。また、電気抵抗層15の厚さは、例えば0.01μm〜0.2μmとすることができる。共通電極11、接続電極17および個別電極19の厚さは、例えば0.05μm〜2.5μmとすることができる。
【0046】
なお、共通電極11、接続電極17および個別電極19ごとに電極の厚さを変えてもよく、また、共通電極11、接続電極17および個別電極19を部位により厚みの異なる構成としてもよい。
【0047】
図2(b)を用いて、ヘッド基体3とFPC5との接合状態について説明する。
【0048】
図2(b)に示すように、蓄熱層13上、ならびに基板7の蓄熱層13側には、発熱部9、接続電極17、共通電極11の一部および個別電極19の一部を被覆する第1保護層12が形成されている。この第1保護層12は、蓄熱層13上の全体を覆うように設けられている。
【0049】
第1保護層12は、発熱部9、共通電極11、接続電極17および個別電極19の被覆した領域を、大気中に含まれている水分等の付着による腐食、あるいは加熱する媒体との接触による摩耗から保護するためのものである。第1保護層12は、例えば、SiC系、SiN系、SiO系およびSiON系等の材料で形成することができる。また、第1保護
層12は、例えば、スパッタリング法、蒸着法等の従来周知の薄膜成形技術や、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
【0050】
さらに、第1保護層12は、複数の材料層を積層して形成してもよい。なお、第1保護層12は、共通電極11、接続電極17および個別電極19の表面と発熱部9の表面との段差によって、その表面に段差が生じ易いが、共通電極11、接続電極17および個別電極19の厚さを、例えば0.2μm以下程度に薄くすることによって、第1保護層12の表面に形成される段差をなくす、または小さくすることができる。
【0051】
また、図2(b)に示すように、基板7の一部の蓄熱層13上から一部のFPC5上の間に、共通電極11および個別電極19を部分的に被覆する絶縁性の第2保護層16が設けられている。第2保護層16は、第1保護層12と、ヘッド基体3およびFPC5の接続部との間を被覆するように設けられている。なお、説明の便宜上、図1では、第2保護層16は図示を省略している。
【0052】
この第2保護層16は、共通電極11および個別電極19の被覆した領域を、大気との接触による酸化や、大気中に含まれている水分等の付着による腐食から保護するためのものである。第2保護層16は、例えば、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の樹脂材料で形成することができる。また、この第2保護層16は、例えば、スクリーン印刷法等の厚膜成形技術を用いて形成することができる。
【0053】
なお、図2(b)に示すように、FPC5と接続される共通電極11および個別電極19の端部は、第2保護層16から露出しており、その露出した領域とFPC5とが接続されるようになっている。
【0054】
FPC5は、発熱部9の配列方向に沿って延びて形成されており、上記のように基板7上に設けられた共通電極11、および各個別電極19に接続されている。このFPC5は、ベース基板5a上にパターニングされた配線導体5bが形成されており、ベース基板5aおよび配線導体5b上にカバー部材5cが設けられている。そして、カバー部材5cは、ヘッド基体3に接続される配線導体5bの部位が露出するように切り欠かれている。
【0055】
ベース部材5aおよびカバー部材5cは絶縁性の樹脂層により形成されており、配線導体5bは、一般に、例えば、銅箔等の金属箔、薄膜成形技術によって形成された導電性薄膜、または厚膜印刷技術によって形成された導電性厚膜によって形成されている。FPC5の各配線導体5bはコネクタ(不図示)を介して図示しない外部の電源装置および制御装置等に電気的に接続されるようになっている。
【0056】
そして、図2(b)に示すように、FPC5は、配線導体5bが、ヘッド基体3側の端部で露出し、導電性接合材料、例えば、はんだ材料、または電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方導電性材料(ACF)等により形成される接合材14によって、共通電極11および個別電極19と接続されている。
【0057】
なお、FPC5と接続される共通電極11および個別電極19にはCuあるいはAu等により、めっき処理を行いめっき層を設けてもよい。それにより、接合強度を向上させることができるとともに、FPC5と共通電極11および個別電極19との電気抵抗を小さくすることができる。
【0058】
次に、図3を用いて外部電源と加熱ヘッドX1との接続について説明する。
【0059】
図3(a)に示すように、ヘッド基体3は、FPC5により外部電源と接続されている
。そして、加熱ヘッドX1は、発熱ユニットごとの電気的な接続を切り替えるスイッチング回路18が設けられている。なお、加熱ヘッドX1にスイッチング回路18を設けた例を示したが、加熱ヘッドX1の外部にスイッチング回路18を設けて、外部に設けられたスイッチング回路18と加熱ヘッドX1とを接続する構成としてもよい。
【0060】
発熱ユニット10の共通電極11A,11B,11Cは、それぞれFPC5の配線導体5bにより、電気的に接続され等電位となっている。また、発熱ユニット10の個別電極19A,19B,19Cは、FPC5の配線導体5bにより電気的に接続されない状態で、FPC5の外部に引き出されている。そして、個別電極19A,19B,19Cは、それぞれスイッチング回路18に接続されている。スイッチング回路18が外部電源に接続されることにより、電圧を印加する発熱ユニット10を選択することができる。
【0061】
スイッチング回路18は、内部にスイッチング素子(不図示)を備えており、外部電源と、発熱ユニット10ごとの電気的な接続を切り替える機能を有している。
【0062】
なお、図3(b)に示すように、個別電極19と接続されるFPC5は発熱ユニット10ごとに分割されて複数のFPC5により形成されていてもよい。この場合においても、個別電極19ごとに接続されたFPC5がスイッチング回路18に接続されているため、電圧を印加する発熱ユニット10を任意に選択することができる。また、共通電極11に接続されるFPC5の配線導体5bは、FPC5の配線導体5bにて電気的に接続されていなくともよく、FPC5の外部にて電気的に接続されていてもよい。また、図3においては、ヘッド基体3を簡略して示してあるため、第1発熱部9a、第2発熱部9bおよび第3発熱部9cが第2方向D2にずれていない状態で配置されている例を示しているが、実際は、ずれた状態で配置されている。なお、FPC5内の共通電極11と接続される配線導体5bの面積を広くとる構成してもよい。また、共通電極11と接続されるFPC5を複数分割されたものを用いてもよい。
【0063】
次に、第1の実施形態である加熱ヘッドX1を用いたサーマルプリンタZ1について、図4を参照しつつ説明する。図4は、本実施形態の加熱装置Z1の概略構成図である。
【0064】
図4に示すように、本実施形態の加熱装置Z1は、上述の加熱ヘッドX1、搬送機構40、押圧部材であるロール50、電源装置(不図示)および制御装置(不図示)を備えている。加熱ヘッドX1は、加熱装置Z1の筐体(不図示)に設けられた取付部材80の取付面80aに取り付けられている。なお、この加熱ヘッドX1は、発熱部9の配列方向が、後述する媒体Pの搬送方向Sに直交する方向言い換えると主走査方向に沿うようにして、取付部材80に取り付けられている。
【0065】
搬送機構40は、感熱リライタブルカード、感熱リライタブルシート、カードおよびラミネート等の媒体Pを図4の矢印S方向に搬送して、加熱ヘッドX1の複数の発熱部9上(より詳細には、第1保護層12上)に搬送するためのものであり、搬送ローラ43,を有している。搬送ローラ43は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体に、ブタジエンゴム等からなる弾性部材を被覆して構成することができる。なお媒体Pの搬送方向Sは、第1方向D1と同じ方向である。
【0066】
ロール50は、媒体Pを加熱ヘッドX1の発熱部9上に押圧するためのものであり、媒体Pの搬送方向Sに直交する方向に沿って延びるように配置され、媒体Pを発熱部9上に押圧した状態で回転可能となるように両端部が支持されている。ロール50は、例えば、ステンレス等の金属からなる円柱状の軸体50aに、ブタジエンゴム等からなる弾性部材を被覆して構成することができる。
【0067】
電源装置は、上記のように加熱ヘッドX1の発熱部9を発熱させるための電圧を供給するためのものである。制御装置は、上記のように加熱ヘッドX1の発熱ユニット10を選択的に発熱させるために、スイッチングの動作を制御する制御信号をスイッチング回路18に供給するためのものである。
【0068】
本実施形態の加熱装置Z1は、図4に示すように、搬送機構40によって媒体Pを加熱ヘッドX1の発熱部9上に搬送しつつ、電源装置および制御装置によって発熱ユニット10を選択的に発熱させることで、媒体Pを均一に加熱することができる。さらに、媒体Pの大きさに合わせて加熱を行うことができる。
【0069】
<第2の実施形態>
図5を用いて本発明の第2の実施形態に係る加熱ヘッドX2について説明する。
【0070】
図5に示す加熱ヘッドX2は、共通電極11と、第1方向D1の上流側に第1発熱部9aと、接続電極17と、第1方向D1の下流側に第2発熱部9bと、個別電極19とを有している。そして第1発熱部9a間の隙間20aの第2方向D2の長さL1に比べて、第2発熱部9b間の隙間20bの第2方向D2の長さL2が長い構成となっている。第1の実施形態に係る加熱ヘッドX1と同様の構成については説明を省略する。
【0071】
共通電極11は、第1発熱部9aに接続された副配線部11cと、副配線部11cから基板7の側面に向けて延びるリード部11aと、発熱ユニット10の各共通電極11のリード部11aを電気的に接続する主配線部11bとを備えている。そして、主配線部11bがFPC5に接続される。このように、共通電極11を基板7上で主配線部11bにより電気的に接続してもよい。それにより、主配線部11bが、発熱部9により生じた熱を吸熱することにより、加熱ヘッドX2の熱応答特性を高めることができる。
【0072】
加熱ヘッドX2は,図5(b)で示すように、第1発熱部9aの間に位置する隙間20aの第2方向D2の長さL1に比べて、第2発熱部9bの間に位置する隙間20bの第2方向D2の長さL2が長い構成となっている。これにより、第1方向D1から見て、第1発熱部9aの間に位置する隙間20aに対応する接続電極17の段差の第2方向D2の長さを短くすることができる。それにより、ゴミ等が接続電極の段差に溜まることを抑えることができる。
【0073】
また、隙間20bの第2方向D2の長さL2が、隙間20aの第2方向D2の長さL1よりも長いことから、共通電極11の副配線部11cの幅よりも個別電極19の幅を小さくすることができる。それにより、第1発熱部9aから共通電極11により吸熱する吸熱量が、第2発熱部9bから個別電極19により吸熱する吸熱量よりも多くなることとなる。そのため、第2発熱部9bに比べて、第1発熱部9aの熱応答特性を高めることができる。
【0074】
また、加熱ヘッドX2は、隣り合う第2発熱部9bの隙間20b側に、第2発熱部9bの一部25が延在している。言い換えると、第2発熱部9bの一部25が、第1発熱部9aの存在する領域の下流側にまで設けられている。第2発熱部9bは、その一部25が、隣り合う第1発熱部9aの隙間20aの端から、第2方向D2の長さL3分だけ、隣り合う第2発熱部9bの隙間20bに向けて突出している。そのため、隣り合う第1発熱部9aの隙間20aの下流側に位置する領域に、確実に第2発熱部9bが配置されることとなり、媒体の加熱漏れを低減することができる。
【0075】
さらにまた、第2発熱部9bの一部25が、第1発熱部9aの存在する領域の下流側にまで延在していることにより、媒体に十分に熱を供給することができる。つまり、第2発
熱部9bの一部25が第1発熱部9aの設けられた領域の下流側にオーバーラップすることにより、第2発熱部9bの一部25が、隙間20a,20bによる熱の供給不足を補うことができ、媒体に十分に熱を供給することができる。なお、第2発熱部9bの一部25の第2方向D2における長さL3は、第1発熱部9a間の隙間20aの第2方向D2の長さL1、および第2発熱部9b間の隙間20bの第2方向D2の長さL2よりも長いことが好ましい。それにより、さらに媒体の加熱漏れを低減することができる。
【0076】
なお、第2方向D2において、隙間20の長さを位置によって変更してもよい。例えば、第2方向D2における中央部に位置する隙間20の長さを、その他の領域に位置する隙間20の長さよりも長くしてもよい。それにより、第2方向D2における加熱ヘッドX2の温度のばらつきを低減することができる。
【0077】
<第3の実施形態>
図6を用いて、第3の実施形態に係る加熱ヘッドX3について説明する。なお、図6は、加熱ヘッドX3を構成する1つの発熱ユニット10を拡大して示している。
【0078】
加熱ヘッドX3を構成する発熱ユニット10は、第1発熱部9a、第2発熱部9bおよび第3発熱部9cにそれぞれ、細孔22a,22b,22cが設けられている点で、加熱ヘッドX1とは異なる。その他の点については、同様であるため説明は省略する。
【0079】
発熱部9は、第1方向D1に沿った複数の細孔22が設けられている。図6に示すように、複数の細孔22は、発熱部9の内部に配置されており、発熱部9の第1方向D1の長さに対して50〜80%の長さで設けられている。また、細孔22の第2方向D2の長さは、1〜100μmである。
【0080】
これらの細孔22は、第1方向D1に流れる電流の流れを均一にする機能を有する。具体的には、第1方向D1の流れる電流量に差が生じる電流のばらつきを抑える整流機能を有している。
【0081】
細孔22の割合として、発熱部9の面積に対して3〜20%であることが好ましい。発熱部9の面積に対して3〜20%であることから、発熱部9の抵抗が高くなりすぎることを抑えるとともに、第2方向D2において電流のばらつきを抑えることができる。
【0082】
第1発熱部9aの細孔22a、第2発熱部9bの細孔22bおよび第3発熱部9cの細孔22cは、平面視して、第1方向D1に重ならないように設けることが好ましい。平面視して、第1方向D1に重ならないように設けることにより、第1方向D1において、発熱部9が少なく形成された領域が生じることを抑えることができる。
【0083】
ここで、細孔22は、第2方向D2における一端から他端にかけて設けられていてもよい。つまりスリット部(不図示)として設けられている場合においても、同等の効果を奏することができる。
【0084】
なお、細孔22を第1発熱部9a、第2発熱部9bおよび第3発熱部9cのそれぞれに設けた例を示したが、第1発熱部9a、第2発熱部9bまたは第3発熱部9cの1つのみに設けてもよい。
【0085】
<第4の実施形態>
図7を用いて第4の実施形態に係る加熱ヘッドX4について説明する。
【0086】
加熱ヘッドX4は、複数の発熱ユニット10のうち第2方向D2における端部に位置す
る発熱ユニット10A,10Dの長さW1が、複数の発熱ユニット10のうち第2方向D2における中央部に位置する発熱ユニット10B,10Cの長さW2よりも短い構成となっている。その他の点は加熱ヘッドX1と同様であり、説明を省略する。
【0087】
加熱ヘッドX4は、発熱ユニット10A,10Dの長さW1が、発熱ユニット10B,10Cの長さW2よりも短いことから、媒体の第2方向D2の長さに合わせやすい構成となっている。つまり、媒体の第2方向D2の長さに合わせて自在に、第2方向D2の端部における発熱ユニット10A,10Dに電圧を印加するか否かを選択することができる。
【0088】
また、発熱ユニット10A,10Dと、第2方向D2における両端部との間には隙間20A,20Dが設けられている。なお、図7(b)に示すように隙間20A,20Dを設けない構成としてもよい。図7(b)に示すように、隙間20A,20Dを設けない場合には、発熱ユニット10A,10Dを構成する第1発熱部9Aa,9Da、第2発熱部9Ab,9Db、第3発熱部9Ac,9Dc、共通電極11A,11D、接続電極17A,17Dおよび個別電極19A,19Dを設ければよい。このような構成とすることで、第2方向D2における両端部の発熱部9の割合が少なくなることを抑えることができ、加熱ヘッドX4が均一に媒体を加熱することができる。
【0089】
なお、発熱ユニット10の第2方向D2における長さとは、発熱ユニット10を構成する各部材が含まれる長さをいう。例えば、図7(a)においては、発熱ユニット10Bの幅とは、第1発熱部9Baの左端から、第3発熱部9Bbの右端までの長さを示す。
【0090】
図8を用いて第4の実施形態に係る加熱ヘッドX4の変形例について説明する。
【0091】
図8に示す加熱ヘッドX4´は、発熱ユニット10A,10B,10Cにより構成されている。加熱ヘッドX4´の発熱ユニット10Bは、加熱ヘッドX4の発熱ユニット10Bと発熱ユニット10Cとが連結されて構成されている。
【0092】
このように、第2方向D2における発熱ユニット10の分割する位置を変更することにより、複数の発熱ユニット10のうち第2方向D2における端部に位置する発熱ユニット10A,10Cの長さW1が、複数の発熱ユニット10のうち第2方向D2における中央部に位置する発熱ユニット10Bの長さW2よりも短い構成とすることができる。
【0093】
また、発熱ユニット10Bは、共通電極11のリード部11aが2つ設けられている。このように、共通電極11のリード部11aを発熱ユニット10に対して複数設けることにより、FPC5と共通電極11との間の電気抵抗を低減することができる。
【0094】
<第5の実施形態>
図9,10を用いて、他の実施形態に係る加熱装置Z2と、加熱装置Z2を構成する加熱ヘッドX5について説明する。なお、図9においては、加熱ヘッドX5の発熱部9および各種電極のパターンを省略して示している。
【0095】
図9に示すように、加熱装置Z2はロール50が第1方向D1に直交する第3方向D3に延びるように設けられており、第2方向D2は、第3方向D3から傾いた状態で配置されている。媒体(不図示)は、第3方向D3と直交する第1方向D1に搬送され、加熱ヘッドX5により加熱される。そのため、加熱ヘッドX5は、媒体の搬送方向である第1方向D1と直交しない状態で配置されている。
【0096】
より詳しくは、図10に示すように、加熱装置Z2を平面視して、第2方向D2が第3方向D3に対して傾いた状態で設けられているため、第2方向D2と第3方向D3とが第
1の角度θ1をなした状態で、加熱ヘッドX5が配置されている。つまり、加熱ヘッドX5は、第1方向D1に直交する第3方向D3と、加熱ヘッドX5の長手方向である第2方向D2とが、第1の角度θ1傾斜した状態で配置されている。
【0097】
加熱ヘッドX5は、図10に示すように、第3方向D3から第1の角度θ1だけ傾いた状態で第2方向D2に沿って配置されている。各発熱ユニット10は、同形状をなしており、第1発熱部9a、第2発熱部9b、および第3発熱部9cは、それぞれ第2方向D2に同じ長さを有している。また、共通電極11、接続電極17、および個別電極19も第2方向D2に同じ長さを有している。そのため、第2方向D2に直交する方向から見て、隙間20は、第2方向D2に直交する方向に沿って設けられている。
【0098】
加熱ヘッドX5の隙間20が存在する領域を、第3方向D3に投影すると、図10に示す領域Rとなる。領域Rを第1方向D1から見ると、隙間20は、第3方向D3から第1の角度θ1だけ傾斜した状態で配置されており、媒体のすべての部位は、第1方向D1の上流側から下流側に進むにつれて、第1発熱部9a、第3発熱部9c、および第2発熱部9b上を通過することとなる。そのため、媒体を均一に加熱することができる。
【0099】
このように、隙間20が第2方向D2に直交する方向に沿って設けられた加熱ヘッドX5においても、加熱ヘッドX5を第3方向D3から傾いた状態で配置することにより、媒体を均一に加熱することができる。なお、第1の角度θ1は、2〜20°であることが好ましい。なす角がこの範囲にあることで、媒体を均一に加熱することができるとともに、加熱ヘッドX5が第1方向D1に大型化することを抑えることができる。
【0100】
なお、加熱ヘッドX1〜X4を第3方向D3から傾いた状態で配置した場合においても、同様の効果を奏することができる。
【0101】
<第6の実施形態>
図11を用いて加熱ヘッドX6について説明する。加熱ヘッドX6は、第2方向D2における第1発熱部9a、第2発熱部9b、および第3発熱部9cの両端部に、第1方向D1の長さが短い狭小部24が設けられている。その他の点は、加熱ヘッドX4と同様であり説明を省略する。
【0102】
図11(a)に示すように、加熱ヘッドX6に設けられた狭小部24は、平面視して、第2方向D2の外側に向けて突出する三角形状をなしている。なお、狭小部24は、第1方向D1の長さが他の領域に比べて短くなっておればよく、例えば、半円形状あるいは半楕円形状であってもよい。
【0103】
発熱部9の電気抵抗値は、第1方向D1における長さに起因している。そのため、狭小部24における電気抵抗値は、他の領域における電気抵抗値よりも低い構成となっている。そのため、狭小部24近傍は、他の領域に比べて電流が流れやすい構成となる。
【0104】
ここで、第2方向D2の温度分布を見たときに、各発熱ユニット10の間に設けられた隙間20の部分が、発熱ユニット10の部分よりも低い可能性がある。そのため、隙間20上を通過する媒体の一部分の温度が低い可能性がある。
【0105】
しかしながら、加熱ヘッドX6は、第1発熱部9a、第2発熱部9b、および第3発熱部9cの両端部に狭小部24が設けられていることから、狭小部24の近傍に電流が流れやすい構成となり、狭小部24の近傍において、発熱部9の温度を上昇させることができる。それにより、隙間20における温度低下の影響を小さくすることができ、第2方向D2における温度分布を均一なものに近づけることができる。
【0106】
また、図11(b)に示すように、第1発熱部9a、第2発熱部9b、および第3発熱部9cが、第2方向D2に電気抵抗層15a,15b,15cを介して一体的に設けられていてもよい。つまり、電気抵抗層15a,15b,15cを第2方向D2に沿って、基板7の一端から他端にかけて設けてもよい。この場合、共通電極11、接続電極17、および個別電極19により接続される電気抵抗層15が、発熱部9として機能する。共通電極11、接続電極17、および個別電極19は、第2方向D2において、隙間20をあけて複数分割されているため、発熱部9も第2方向D2において、隙間20をあけて複数分割されている。そして、第2方向D2において隣り合う発熱部9の間に、電気抵抗層15が配置される構成となる。
【0107】
そのため、発熱部9と電気抵抗層15との基板7からの高さが略等しくなり、第2方向D2において、媒体との接触状況を均一に近づけることができる。それにより、媒体への熱伝達も均一に近づけることができることから、媒体を均一に加熱することができる。
【0108】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、実施形態X1〜X6を任意に組み合わせてもよい。
【0109】
また、加熱ヘッドX1を用いた加熱装置Z1の例、および加熱ヘッドX5を用いた加熱装置Z2について説明したが、この加熱ヘッドX1,X5に代えて、加熱ヘッドX2〜X6のいずれかを採用して加熱装置Z1,Z2を構成してもよい。
【0110】
なお、実施形態の説明では、第1方向D1に発熱部9が3つ設けられた例を示したがこれに限定されるものではなく、第1方向D1に発熱部9を2つ、あるいは4つ以上設けてもよい。
【0111】
さらにまた、第2方向D2における位置によって、発熱部9の第1方向D1の長さを変更してもよい。例えば、第2方向D2の中央部に位置する発熱部9において、第1方向D1の長さを他の領域よりも長くすればよい。そのような構成とすることにより、第2方向D2の中央部に位置する発熱部9の電気抵抗値を上昇させることができ、第2方向D2の中央部に位置する発熱部9に流れる電流量を少なくすることができる。それにより、第2方向D2の中央部に位置する発熱部9の発熱量を小さくすることができ、第2方向D2における温度分布の温度分布の均一化を図ることができる。
【符号の説明】
【0112】
X1〜X7 加熱ヘッド
Z1,Z2 加熱装置
1 放熱基板
1a 基部
1b 突起部
3 ヘッド基体
5 配線基板
7 基板
9 発熱部
9a 第1発熱部
9b 第2発熱部
9c 第3発熱部
10 発熱ユニット
11 共通電極
12 第1保護層
13 蓄熱層
14 接合剤
16 第2保護層
17 接続電極
18 スイッチング回路
19 個別電極
20 隙間
22 細孔
24 狭小部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に設けられた複数の発熱部と、
該複数の発熱部のうち、第1方向における一方側に位置する発熱部を第1発熱部、および前記第1方向における他方側に位置する発熱部を第2発熱部とするとき、前記第1発熱部および前記第2発熱部を電気的に接続する電極と、を備え、
前記第1発熱部、前記第2発熱部および前記電極は、発熱ユニットとして互いに隙間を介して、前記第1方向とは異なる第2方向に複数分割されており、
平面視して、
隣り合う前記発熱ユニットの前記第1発熱部同士の間に位置する前記隙間の、前記第1方向における他方側に、隣り合う前記発熱ユニットのうちいずれかの前記発熱ユニットに位置する前記第2発熱部が配置されており、
隣り合う前記発熱ユニットの前記第2発熱部同士の間に位置する前記隙間の、前記第1方向における一方側に、隣り合う前記発熱ユニットのうちいずれかの前記発熱ユニットに位置する前記第1発熱部が配置されていることを特徴とする加熱ヘッド。
【請求項2】
平面視して、
前記隙間を構成する前記第1発熱部および前記第2発熱部の一辺が、前記第1方向に沿って設けられている、請求項1に記載の加熱ヘッド。
【請求項3】
平面視して、
前記第1方向における他方側に位置する前記隙間の前記第2方向における長さが、前記第1方向における一方側に位置する前記隙間の前記第2方向における長さよりも長い、請求項1または2に記載の加熱ヘッド。
【請求項4】
前記第2方向における前記第1発熱部および前記第2発熱部のうち少なくとも一方の端部が、前記第2方向に長さの短い狭小部を有している、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の加熱ヘッド。
【請求項5】
前記第1発熱部および前記第2発熱部のうち少なくとも一方が、前記第2方向に電気抵抗層を介して一体的に設けられている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の加熱ヘッド。
【請求項6】
前記第1発熱部および前記第2発熱部のうち少なくとも一方に、前記第1方向に沿った細孔が設けられている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の加熱ヘッド。
【請求項7】
複数の前記発熱ユニットのうち前記第2方向における端部に位置する前記発熱ユニットの長さが、
複数の前記発熱ユニットのうち前記第2方向における中央部に位置する前記発熱ユニットの長さよりも短い、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の加熱ヘッド。
【請求項8】
前記第1方向が前記第2方向と略直交している、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の加熱ヘッド。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の加熱ヘッドと、前記第1発熱部および前記第2発熱部上に媒体を搬送する搬送機構と、前記第1発熱部および前記第2発熱部上に前記媒体を押圧する押圧部材とを備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項10】
前記加熱ヘッドは前記第2方向に延びるように設けられ、前記押圧部材は前記第1方向
に直交する第3方向に延びるように設けられており、
前記第2方向が、前記第3方向から傾いた状態で配置されている、請求項9に記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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