説明

加熱炉装入時のスラブ照合方法

【課題】装入する実スラブとこれに対応するスラブ情報とを確実に照合するとともに、装入オペレーションの合理化を可能とする。
【解決手段】この加熱炉装入時のスラブ照合方法は、コンピュータによる一次判定工程(S14)と、オペレータの目視による二次判定のための仮照合スラブ情報をコンピュータによる処理で生成する工程(S15)とを含み、一次判定工程(S14)は、スラブ情報に基づいて計算される重量と実測した重量との差が所定の許容値以内か否かを判定し、所定の許容値以内のときに限って、この実スラブの炉内への装入を許容し(S14でのYes)、仮照合スラブ情報の生成工程(S15)は、一次判定工程(S14)を経て自動装入される実スラブを撮像して取得されたスラブ番号Aと当該実スラブに装入時に紐付けられたスラブ情報Bとを同時に画像表示するように保存した仮照合スラブ情報を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼製品を熱間圧延により製造するための加熱炉設備において、加熱炉への装入時に行われる異材装入防止のためのスラブ照合の作業性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱炉設備におけるスラブ照合の目的は、熱間圧延設備の長期生産停止の要因となる異材スラブの圧延防止や異材製品の需要家への出荷防止をすることにある。そのため、従来は、加熱炉への装入時にオペレータにより圧延予定のスラブか否かを1本毎に目視で確認し、オペレータの判断に基づいて、加熱炉への装入やスラブヤードへの返却を行っていた。
【0003】
加熱炉装入スラブの照合作業自体はスラブ1本につき30秒未満で照合可能なものの、加熱炉内へのスラブ装入は、加熱炉に装入可能スペースがなければ装入できない。そのため、スラブ装入は圧延ピッチに左右されることとなり、スラブ1本の照合作業が圧延ピッチに応じて2〜5分毎に発生する。しかし、2〜5分程度の空き時間があっても、この程度の空き時間では装入オペレータは持ち場を離れて他の作業を行なうことができない。そのため、結局、装入オペレータは加熱炉設備に張り付き作業となり作業性が悪かった。
【0004】
ここで、装入オペレーションを自動化する先行技術として、例えば特許文献1には、棒鋼や線材を熱間圧延で製造するに際し、ビレットを加熱炉に装入する前に、ビレットの端面にマーキングされた文字や記号を読み取り、この読み取りデータを、トラッキングを実行しているコンピュータに伝達して現品照合を行い、コンピュータ内の装入順番と整合を取りながら、ビレットを加熱炉に装入する鋼片異材発生防止システムが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、スラブNo.がマーキングされたスラブを加熱炉に装入する際に、スラブNo.をカメラで撮影して実スラブNo.を判読するとともに、スラブをカメラで撮影し画像処理して実スラブ寸法を求め、この実スラブ寸法および実スラブNo.を、搬送制御装置内のスラブ情報と照合することで、加熱炉前で異材発生を防止するスラブの照合方法が開示されている。
また、特許文献3には、圧延コイルにマーキングされた文字を確実に検出するために、マーキング文字を複数の異なる方向から順次に照明して撮影し、得られた画像信号の一つで文字認識を行い、文字認識ができないときは順次に他の画像信号で文字認識を行う文字検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−164407号公報
【特許文献2】特開平11−124630号公報
【特許文献3】特開平5−290214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1ないし3等に開示されるように、マーキングの読み取り装置を用いたスラブ番号による自動照合方法も考えられるものの、読み取り装置の精度やマーキング自体の鮮明度等の技術上の問題は、加熱炉装入時のスラブ照合方法としては実用レベルで解決されているとはいえない。
つまり、特許文献3に開示されるような、圧延コイルにマーキングされた文字に比して、加熱炉装入時のスラブにマーキングされた文字を確実に自動検出する技術は開発途上であって、加熱炉装入時のスラブ照合方法として画像処理のみによる完全な照合は実際には困難である。そのため、仮に異材が加熱炉からの抽出時に見逃された場合は、熱間圧延設備の長時間に亘る生産停止や、客先に全く異なる性質の製品が出荷されることになり、加熱炉装入側にオペレータを配置しスラブ一本毎を確実に照合確認する必要がある。結局、装入側にはオペレータの配置が不可欠であり、装入作業の合理化のネックとなっていた。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、熱間圧延設備への装入前に加熱炉設備で行われる異材装入防止のためのスラブの照合作業において、実スラブとこれに対応するスラブ情報とを確実に照合するとともに、装入オペレーションの合理化を可能とする加熱炉装入時のスラブ照合方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、重量を計算可能なスラブ情報に関連付けされたスラブ番号が表面にマーキングされた実スラブを加熱炉へ装入する処理を行なう搬送制御装置を備える加熱炉設備に用いられ、前記スラブ情報とこれに対応する実スラブとを照合する方法であって、前記搬送制御装置の処理による一次判定工程と、オペレータの目視判断による二次判定のための仮照合スラブ情報を前記搬送制御装置による処理で生成する工程とを含み、前記一次判定工程は、前記スラブ情報に基づいて計算される計算重量と実スラブを実測した重量との差が所定の許容値以内か否かを判定し、所定の許容値以内のときに限って、当該実スラブの加熱炉内への装入を許容し、前記仮照合スラブ情報を生成する工程は、前記一次判定工程を経て自動装入される実スラブを撮像して取得されたスラブ番号と当該実スラブに装入時に紐付けられたスラブ情報とを同時に画像表示するように保存した仮照合スラブ情報を生成することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る加熱炉装入時のスラブ照合方法によれば、スラブ情報から計算される計算重量と実スラブを実測した重量との差が所定の許容値以内のときに限って、当該実スラブを加熱炉内に自動装入するので、オペレータは、重量に基づいて搬送制御装置で自動的に行なわれる一次判定により、監視負担がその分軽減される。そして、この一次判定の基礎となる重量に係るデータは、画像処理ではなく重量に基づくものなので、スラブのマーキング状態によらず確実に実施できる。そのため、加熱炉装入時のスラブ照合方法として採用してもその信頼性が高い。
【0011】
そして、続く二次判定自体はオペレータの目視判断によって実施されるが、この際にオペレータが監視する二次判定のための仮照合スラブ情報は、一次判定工程を経て自動装入される実スラブを撮像して取得されたスラブ番号と当該実スラブに装入時に紐付けられたスラブ情報とを同時に画像表示するように保存した仮照合スラブ情報として生成されるので、加熱炉内に装入後において、前記仮照合スラブ情報が設定された複数枚の実スラブを順次に画像表示し、これを目視によってオペレータが照合し、適正であるものは加熱炉からそのまま抽出して熱間圧延設備にて熱間圧延を実施し、そうでないものは異材と判断して熱間圧延設備での圧延をさせないようにすることができる。
【0012】
すなわち、加熱炉のオペレータは、複数本のスラブの照合作業を二次判定工程でまとめて実施できる。そのため、例えば30分以上のまとまった作業時間をオペレータは確保可能となる。したがって、従来に比べて加熱炉装入作業の作業時間を大幅に短縮可能であり、これにより、装入オペレーションの合理化を可能とし、この合理化による空き時間でオペレータは他の作業を実施することができる。
【0013】
また、上記先行技術に記載のマーキングの読み取り方式においては、読み取り率はマーキングの表示状態に左右されてしまうが、この二次判定ではオペレータが目視にて判断するため、マーキングの表示状態が悪くとも照合可能であり、スラブの切断面にマーキングがされる場合であっても問題なく加熱炉装入時のスラブ照合方法として採用することができる。
【0014】
ここで、本発明に係る加熱炉装入時のスラブ照合方法において、前記搬送制御装置の処理による仮照合スラブ振り分け工程を更に含み、当該仮照合スラブ振り分け工程は、前記一次判定工程を経て加熱炉に装入された実スラブのスラブ番号とこれに装入時に紐付けられたスラブ情報とを照合した結果の情報が入力されない場合には、当該実スラブが圧延可能な状況になったときであっても、未照合であるとして熱間圧延設備への抽出を許可しないことが好ましい。このような構成であれば、オペレータの監視漏れによる異材の熱間圧延設備への抽出が防止される。
また、前記仮照合スラブ振り分け工程は、前記結果の情報が入力されない場合に、対応する実スラブが所定のトラッキング位置に達したときに、アラームを出すことが好ましい。このような構成であれば、オペレータに監視の注意を促すことができる。
【発明の効果】
【0015】
上述のように、本発明に係る加熱炉装入時のスラブ照合方法によれば、熱間圧延設備への装入前に加熱炉設備で行われる異材装入防止のためのスラブの照合作業において、実スラブとこれに対応するスラブ情報とを確実に照合するとともに、装入オペレーションの合理化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る加熱炉装入時のスラブ照合方法のプログラムを実行する搬送制御装置を備える加熱炉設備の一実施形態を説明する図である。
【図2】図1に示す加熱炉設備が備える搬送制御装置を説明するブロック図である。
【図3】搬送制御装置で実行される一次判定処理および仮照合スラブ情報生成処理を説明するフローチャートである。
【図4】搬送制御装置で実行される仮照合スラブ振り分け処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、この加熱炉設備は、スラブの払出しクレーン(不図示)が隣接配置されたスラブヤード1と、払出しクレーンによって払出されたスラブが載置される払出しテーブル2と、払出しテーブル2で搬送されたスラブの重量を実測する秤量器3と、秤量器3上のスラブを撮像可能に配置されたカメラ6と、スラブを加熱するための複数列(この例では4列)の加熱炉7と、秤量器3でスラブ重量が実測されたスラブのうち、加熱炉7に装入させるスラブが載置される装入テーブル4と、加熱炉7に装入させないスラブを返却するための返却テーブル5と、加熱炉7を経て加熱されたスラブを続く熱間圧延設備に搬送するための抽出テーブル8と、加熱炉7へ装入するスラブのトラッキング処理等、この加熱炉設備で行われる一連の処理を実行する搬送制御装置10とを備えている。
【0018】
この搬送制御装置10は、図2に示すように、所定の制御プログラムに基づいて演算およびシステム全体を制御するCPU30と、所定領域にあらかじめCPU30の制御プログラム等を格納している記憶装置42およびROM32と、この記憶装置42およびROM32等から読み出したデータやCPU30の演算過程で必要な演算結果を格納するためのRAM34と、秤量器3、カメラ6、入力装置40、記憶装置42、表示装置44等に対してデータの入出力を媒介するインターフェース38とを備えて構成されており、これらは、データを転送するための信号線であるバス39で相互にかつデータ授受可能に接続されている。そして、CPU30、上記記憶装置42やROM32の所定領域に格納されている所定のプログラムを起動させ、そのプログラムに従って以下の一次判定処理および仮照合スラブ情報生成処理、並びに仮照合スラブ振り分け処理を実行するようになっている。
【0019】
以下、一次判定処理および仮照合スラブ情報生成処理、並びに仮照合スラブ振り分け処理について説明する。一次判定処理および仮照合スラブ情報生成処理、並びに仮照合スラブ振り分け処理は、この加熱炉設備が稼働中に常時割り込み処理として実行される。
図3に示すように、上記一次判定処理(一次判定工程)および仮照合スラブ情報生成処理(仮照合スラブ情報生成工程)は、まず、ステップS11に移行して、秤量器3上のスラブ(Sb)の実測重量を秤量情報として取得してステップS12に移行し、ステップS12では、カメラ6によって撮像された実スラブ(Sb)のスラブ番号Aを撮像情報として取得する。続くステップS13では、重量を計算可能なスラブ情報(スラブ厚さ、幅、長さおよび比重)を記憶装置42から参照して計算重量を算出してステップS14に移行する。
【0020】
ステップS14では、上記スラブ情報に基づいて計算される計算重量と実スラブを実測した実測重量との差が所定の許容値(±7%)以内か否かを判定する(一次判定処理)。つまり、所定の許容値(例えば±7%)以内であれば(Yes)ステップS15に移行し、そうでなければ(No)ステップS16に移行する。ステップS15では、仮照合スラブ情報を生成する(仮照合スラブ情報生成処理)。ここで、この仮照合スラブ情報生成処理は、上記一次判定を経て加熱炉7に自動装入される実スラブを撮像して取得されたスラブ番号Aと当該実スラブに装入時に紐付けられたスラブ情報Bとを同時に画像表示(図3参照)するように保存した仮照合スラブ情報を生成するものである。ステップS16では、一次判定に不合格の実スラブを異材と判定して返却テーブル5にて搬送し加熱炉7に装入させないようにして処理を戻す。一方、ステップS15に続くステップS17では、一次判定に合格した実スラブを加熱炉7内に装入して処理を戻す。
【0021】
次に、仮照合スラブ振り分け処理は、図4に示すように、まず、ステップS21に移行して、オペレータにより入力装置40から、上記一次判定工程を経て加熱炉7に装入された実スラブのスラブ番号Aとこれに装入時に紐付けられたスラブ情報Bとを照合した結果の情報(照合結果情報)の有無を取得する。なお、上記表示装置44には、仮照合スラブ(Sd)の装入時間に紐付けられたスラブ情報Bが、スラブ(Sd)の実スラブ番号Aと同時に、複数の仮照合スラブ(Sg、Sf、Se・・・)全てについて逐次表示できるようになっており、オペレータは、スラブ番号Aとスラブ情報Bのスラブ番号とが相互に一致した場合は、照合済み(合格)であることを入力装置40から照合結果情報として入力し、相互が一致しない場合は、入力装置40から異材であるとの異材情報を入力する。
【0022】
続くステップS22では、前記ステップS21で取得した照合結果情報の有無を参照する。そして、所定のトラッキング位置として、加熱炉7の出口側から二列目のスラブ(Sf)が、照合結果情報の有るスラブ(照合スラブ)か否かを監視する。このスラブ(Sf)が照合スラブであれば(Yes)ステップS24に移行し、そうでなければ(No)ステップS23に移行する。ステップS23では、表示装置44による表示や音声等によりオペレータに向けて照合要求のアラームを表示することで未照合スラブまたは異材が残されている旨の警告がなされ、処理をステップS21に戻す。
【0023】
ステップS24では、前記ステップS21で取得した照合結果情報の有無を参照し、加熱炉7の出口側から一列目のスラブ(Sg)が、照合結果情報の有るスラブ(照合スラブ)か否かを監視する。そして、このスラブ(Sg)が照合スラブであれば(Yes)ステップS25に移行し、抽出指定を受け付け可能として処理を戻す。一方、スラブ(Sg)が照合スラブでなければ(No)ステップS26に移行し、スラブ(Sg)の熱間圧延設備への抽出を許可しないという異材判定を行なって、処理を戻す。なお、このとき、照合結果情報が未入力な仮照合状態であることを加熱炉のオペレータおよび圧延オペレータのそれぞれにアラームを出すことが好ましい。
【0024】
次に、この加熱炉設備の動作、並びにこの加熱炉設備における、加熱炉装入時のスラブ照合方法の作用・効果について説明する。
この加熱炉設備では、スラブヤード1内のスラブは上位計算器でスラブ1枚毎に識別されており、熱間圧延計画に基づいて設定されたスラブの装入順に、該当するスラブ(Sa)をクレーンでスラブヤード1から払出す。払出しテーブル2上に払出されたスラブ(Sa)の情報は、搬送制御装置10(プロセスコンピュータ)へ伝送される。搬送制御装置10は、スラブの搬送位置(Sa〜Sg)をトラッキングする。
秤量器3まで搬送されたスラブ(Sb)は、秤量器3上で一旦停止して重量を実測(ステップS11)されるとともに、カメラ6によって実スラブ(Sb)のスラブ番号Aが撮像される(ステップS12)。また、搬送制御装置10の持つスラブ情報(スラブ厚さ、幅、長さおよび比重)に基づいて計算重量が算出される(ステップS13)。
【0025】
次いで、搬送制御装置10は、スラブ(Sb)が異材か否かの一時判定をする(ステップS14)。つまり、上記計算されたスラブ計算重量と実スラブを実測した重量とが比較され、計算重量と実測した重量との差が許容値(例えば±7%)以内であれば一次判定合格となる。一次判定に合格したスラブ(Sb)は、仮照合スラブ情報が設定され(ステップS15)、加熱炉7内への装入が許可される(ステップS17)。装入テーブル4に空きがある場合は、秤量器3上のスラブ(Sb)を仮照合スラブ(Sd)として装入テーブル4へ自動的に送り出し、加熱炉7内へ自動的に装入される。一方、スラブ(Sb)が異材であれば返却テーブル5でスラブ(Sc)を搬送し加熱炉7に装入させない(ステップS16)。
【0026】
このように、この加熱炉設備における加熱炉装入時のスラブ照合方法によれば、スラブ情報から計算される計算重量と実スラブ(Sb)を実測した重量との差が所定の許容値(例えば±7%)以内のときに限って、当該実スラブ(Sb)を加熱炉7内に自動装入するので、オペレータは、重量に基づいて搬送制御装置10で自動的に行なわれる一次判定(ステップS14)により、監視負担がその分軽減される。そして、この一次判定の基礎となる重量に係るデータは、画像処理ではなく重量に基づくものなので、スラブのマーキング状態によらず確実に実施できる。そのため、加熱炉装入時のスラブ照合方法として採用してもその信頼性が高い。
【0027】
ここで、上記設定される仮照合スラブ情報は、実スラブを照合用のカメラ6で撮像して取得されたマーキング面のスラブ番号Aと当該実スラブに装入時に紐付けられたスラブ情報Bとを同時に画像表示(図3参照)する合成画像として記憶装置42に保存される。なお、本実施形態では、一つの合成画像データが保存される例であるが、撮像画像とスラブ情報とが同時に画像表示されるように構成されていれば、データの格納自体は別個であってもよい。
【0028】
そして、加熱炉のオペレータは、所定の装入時間に対応しつつ適当なときに、仮照合スラブ情報を表示装置44により照合する。つまり、加熱炉7内に装入された仮照合スラブ(Sd)は、加熱炉7装入から抽出までの間に、オペレータによって、図3に示す実スラブ番号Aと搬送制御装置10に記憶されたスラブ番号(スラブ情報B)とが目視で照合(二次判定)される。仮照合スラブ(Sd)のスラブ番号(スラブ情報B)は、スラブ(Sd)の装入時間に紐付けて表示装置44に実スラブ番号Aと同時に画像表示され、複数の仮照合スラブ(Sg、Sf、Se・・・)について表示されているので、加熱炉のオペレータは、表示装置44に表示されている、加熱炉7に装入された複数の仮照合スラブ(Sg、Sf、Se・・・)表面のスラブ番号Aとこれにトラッキングされたスラブ情報Bとを目視によって順次に確認していくことができる。そして、装入された複数の仮照合スラブ(Sg、Sf、Se・・・)が異材でなければ、照合した結果の情報として、抽出テーブル8への送り出し許可の指示を入力装置40から搬送制御装置10に出す。搬送制御装置10は、加熱炉のオペレータからの照合結果情報を取得していれば(ステップS21〜S24)、抽出指定を待って加熱炉7内にスラブ(Sg)を装入する(ステップS25)。
【0029】
上記二次判定においては、オペレータは、表示装置44に表示された一覧表示画面を参照して、スラブ番号Aとスラブ情報Bのスラブ番号とが相互に一致した場合は、照合済み(合格)であることを入力装置40から照合結果情報として入力する。これにより、搬送制御装置10は、一覧画面から対応するスラブの表示を削除する。オペレータは、この照合作業を複数本(例えば最大20本)の仮照合スラブ(Sg、Sf、Se・・・)に対して実施することができる。
【0030】
一方、二次判定において、表示装置44に表示された一覧表示画面をオペレータが参照した結果、一次判定を経て装入された実スラブのスラブ番号Aと搬送制御装置10の記憶するスラブ情報Bのスラブ番号とが相互に一致せず、異材が装入されていたとオペレータが判断した場合は、オペレータは、入力装置40から異材情報を入力する。これにより、表示装置44の一覧表示画面には該当スラブが異材(不合格)であるフラグが表示される。搬送制御装置10は、当該異材スラブが加熱炉7の抽出扉から1本目(Sg)に到達時に、オペレータに対して焼き出しの指示をアラームにて知らせる(ステップS26)。その後、当該スラブは焼き出される(Sh)。
【0031】
このように、この加熱炉設備における加熱炉装入時のスラブ照合方法によれば、一次判定に合格した実スラブに対して、該当スラブのマーキング面の映像(実スラブ番号A)に対応するスラブ情報Bを重ね合わせて画像表示できるように生成し、これを装入時間に紐付けた画像として記憶装置42に保存しておき、仮照合スラブ(Sd)として順次に加熱炉7に装入後、前記装入時間でソートされた複数の仮照合スラブ(Sg、Sf、Se・・・)について、対応する装入時間に保存された画像をオペレータが表示装置44により参照し、この画像中の実スラブのスラブ番号Aとスラブ情報Bを目視にて照合し、炉内で仮照合スラブ(Sg、Sf、Se・・・)の振り分け作業を実施するので、加熱炉のオペレータは、複数本のスラブ(Sg、Sf、Se・・・)の照合作業を二次判定においてまとめて実施できる。そのため、例えば30分以上のまとまった作業時間をオペレータは確保可能となる。したがって、従来に比べて加熱炉装入作業の作業時間を大幅に短縮可能であり、これにより、装入オペレーションの合理化を可能とし、この合理化による空き時間でオペレータは他の作業を実施することができる。
【0032】
また、上記先行技術に記載のマーキングの読み取り方式においては、読み取り率はマーキングの表示状態に左右されてしまうが、この二次判定ではオペレータが目視にて判断するため、マーキングの表示状態が悪くとも照合可能であり、スラブの切断面にマーキングがされる場合であっても問題なく加熱炉装入時のスラブ照合方法として採用することができる。
【0033】
また、上述の搬送制御装置10の加熱炉装入時のスラブ照合方法によれば、加熱炉7の抽出扉(出口側)から2本目(Sf)まで仮照合のままで照合結果情報が入力されないスラブ(Sf)がある場合は(ステップS22でのNo)、オペレータに照合要求のアラームを出す(ステップS23)ので、オペレータに監視の注意を促すことができる。さらに、その後も、照合結果情報が入力されないスラブが加熱炉7の最前列(Sg)に到達し、当該スラブ(Sg)が抽出指定された場合に(ステップS24)、照合結果情報が未だ入力されないときには(ステップS24でのNo)、当該実スラブが圧延可能な状況になったときであっても、照合結果情報が未入力な仮照合状態であることを加熱炉のオペレータおよび圧延オペレータのそれぞれにアラームを出すとともに、未照合であるとして熱間圧延設備への抽出を許可しない、というロック機能を有するので(ステップS26)、オペレータの監視漏れによる異材の抽出が防止される。
【0034】
以上説明したように、この加熱炉装入時のスラブ照合方法によれば、装入する実スラブとこれに対応するスラブ情報とを確実に照合するとともに、装入オペレーションの合理化が可能である。
なお、本発明に係る加熱炉装入時のスラブ照合方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 スラブヤード
2 払出しテーブル
3 秤量器
4 装入テーブル
5 返却テーブル
6 カメラ
7 加熱炉
8 抽出テーブル
10 搬送制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量を計算可能なスラブ情報に関連付けされたスラブ番号が表面にマーキングされた実スラブを加熱炉へ装入する処理を行なう搬送制御装置を備える加熱炉設備に用いられ、前記スラブ情報とこれに対応する実スラブとを照合する方法であって、
前記搬送制御装置の処理による一次判定工程と、オペレータの目視判断による二次判定のための仮照合スラブ情報を前記搬送制御装置による処理で生成する工程とを含み、
前記一次判定工程は、前記スラブ情報に基づいて計算される計算重量と実スラブを実測した重量との差が所定の許容値以内か否かを判定し、所定の許容値以内のときに限って、当該実スラブの加熱炉内への装入を許容し、
前記仮照合スラブ情報を生成する工程は、前記一次判定工程を経て自動装入される実スラブを撮像して取得されたスラブ番号と当該実スラブに装入時に紐付けられたスラブ情報とを同時に画像表示するように保存した仮照合スラブ情報を生成することを特徴とする加熱炉装入時のスラブ照合方法。
【請求項2】
前記搬送制御装置の処理による仮照合スラブ振り分け工程を更に含み、当該仮照合スラブ振り分け工程は、前記一次判定工程を経て加熱炉に装入された実スラブのスラブ番号とこれに装入時に紐付けられたスラブ情報とを照合した結果の情報が入力されない場合には、当該実スラブが圧延可能な状況になったときであっても、未照合であるとして熱間圧延設備への抽出を許可しないことを特徴とする請求項1に記載の加熱炉装入時のスラブ照合方法。
【請求項3】
前記仮照合スラブ振り分け工程は、前記結果の情報が入力されない場合に、対応する実スラブが所定のトラッキング位置に達したときに、アラームを出すことを特徴とする請求項2に記載の加熱炉装入時のスラブ照合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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