説明

加熱装置

【課題】燃焼領域および燃焼領域に関連した燃焼ガス出口を有する溶鉱炉の熱風炉を加熱するための装置を提供すること。
【解決手段】本装置は、低位発熱量燃料の供給源と、燃焼領域に低位発熱量燃料を供給するための第1の管路と、空気源と、燃焼領域に空気を供給するための第2の管路と、少なくとも85容量%の酸素を含む酸化物質の供給源と、燃焼領域に酸化物質を供給するための第3の管路と、燃焼ガスを熱風炉から遠ざけて導くための、燃焼ガス出口と連通する第4の管路と、燃焼領域へ燃焼ガスを再循環させるように動作可能な第5の管路とを含む。この装置は、管路が燃焼領域と連通状態にされる様々なモードで動作することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、燃焼領域および燃焼領域に関連した燃焼ガス出口を有する溶鉱炉の熱風炉を加熱するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]溶鉱炉は、主として酸化鉄鉱を溶融鉄にするための還元用に使用されるが、このこと専用ではない。溶鉱炉の熱風炉の目的は、溶鉱炉に、多年の長期間にわたって、環境的に責任を持てる安全なやり方で、所望の流速にて均一な熱風温度を与えることである。溶鉱炉の熱風炉の動作は、原理上は単純である。空気燃料バーナは、燃料ガス(一般的には、主に溶鉱炉ガス)を燃やすために一般に使用され、燃焼生成物は、燃焼生成物の顕熱を捕捉する大きな質量の耐火れんがに通される。耐火れんがが、所望の動作温度に一旦到達すると、バーナが運転停止され、冷気が、熱風として溶鉱炉に送られる前にあらかじめ熱せられるように、れんがの上を通って熱風炉を通される。一般に、いくつかの熱風炉が加熱されている間に他のものが溶鉱炉に熱風を供給するように、熱風炉は3つまたは4つの群で操作される。
【0003】
[0003]溶鉱炉の熱風炉は、複数の別々の構成のうち任意のものを有することができる。一般に、各熱風炉は、燃焼が側面に沿って起こる第1の垂直室および耐火れんがが配置されている第2の垂直室を備える。このような熱風炉は、外燃室の部類と称されることが多い。燃焼領域が耐火室内に収容される熱風炉も知られている。これらは「内」燃式熱風炉と称される。別の構成では、燃焼室は、一般にドーム型の構造内にある耐火室の頂部に設置される。
【0004】
[0004]現行方式では、熱風炉から熱風へ伝達することができる熱量を最大化しようとする3つの主要な手法がある。できるだけ高い熱含有量を有する熱風を供給すると、溶鉱炉の製鉄用のコークス配合比が減少する。高い熱風温度を達成するために、熱風炉の許容可能なドーム温度によって設定された物理的制約条件内で、熱風炉の、耐火れんがまたは格子状耐火レンガをできるだけ高い温度に加熱する必要がある。その結果、バーナに送られる燃料ガスの発熱量は、高温火炎を適切に生成することができなければならない。
【0005】
[0005]溶鉱炉の炉頂ガス(溶鉱炉ガスと称されることが多い)は、従来、溶鉱炉の熱風炉を加熱するのに用いられる一次燃料であるが、この燃料を用いることには、その発熱量が変化しやすく、溶鉱炉を操作する技量に強く左右されるという難点がある。溶鉱炉ガスの発熱量の可変性は、溶鉱炉ガスの発熱量を増強し、必要な火炎温度を生成するために、コークス炉ガス、転炉ガスまたは天然ガスなどの高位発熱量燃料ガスを溶鉱炉ガスに混合することでよく知られているようなものである。代わりに、燃焼の上流で、燃料ガスおよび空気を熱風炉バーナで予熱することが知られている。実際、加熱サイクル中に熱風炉を出る燃焼ガスは、一般に250℃と400℃の間の温度であり、熱風炉に入力されるエネルギーの約18%を含む。いくつかの設備では、この比較的高温の煙道ガスが廃熱回収装置に送られ、その顕熱の一部分が捕捉されて予熱を遂行するのに用いられる。溶鉱炉の熱風炉を加熱する別の代替方法に、燃焼用空気を酸素で富化するものがある。燃焼用空気の一部分を置換するために酸素を追加すると、合計の分子酸素の流量が一定であれば燃焼生成物の窒素バラストが減少するので、火炎温度が上昇する。一般に、空気の酸素富化は、所望の火炎温度を生成するのに必要とされるコークス炉ガス、転炉ガスまたは天然ガスの量の低減を促進するために用いられる。
【0006】
[0006]動作中の、燃料および他のガスの入手可能性およびコストの変化を考慮に入れることができる融通性のあるやり方で、溶鉱炉の熱風炉の動作を改善するのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】PCT/SE2010/051301
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0007]本発明によれば、燃焼領域および燃焼領域に関連した燃焼ガス出口を有する溶鉱炉の熱風炉を加熱するための装置が提供され、この装置は、
a)低位発熱量燃料の供給源と、
b)低位発熱量燃料をその供給源から燃焼領域へ分配するように動作可能な第1の管路と、
c)空気源と、
d)空気を空気源から燃焼領域へ分配するように動作可能な第2の管路と、
e)少なくとも85容量%の酸素を含む酸化物質の供給源と、
f)酸化物質をその供給源から燃焼領域へ分配するように動作可能な第3の管路と、
g)熱風炉の燃焼ガス出口から遠ざけて燃焼ガスを導くように動作可能な第4の管路と、
h)燃焼ガスの一部分を燃焼領域へ戻すように動作可能な第5の管路とを備える。
【0009】
[0008]用語「燃焼ガス」は、ガス状の燃焼生成物を含むことを意味する。
[0009]本発明による装置は、燃焼領域と連通するように選択される第2、第3および第5の管路によって複数の別々のモードで動作することができる。これらのモードの中で最も重要なのは、燃焼を支援するのに用いられる唯一の酸化物質が、少なくとも85容量%の酸素を含む酸化物質であって、燃焼ガスが第5の管路を通って燃焼領域へ再循環するモードである。このモードで動作させることによって、複数の利点を得ることができる。第1に、コークス炉ガスまたは天然ガスなどのより高位の発熱ガスで富化するのでなく、燃料ガスとして溶鉱炉ガスを用いるだけで所望の火炎温度を達成することができる。第2に、燃焼ガスを再利用することにより、二酸化炭素の放出率の最終的な低減が可能である。第3に、空気の酸素富化によって得られるのと類似の利点(上記を参照されたい)が得られる。
【0010】
[0010]本発明による装置は、前記ガスを熱回収式熱交換器に通すことにより、燃焼ガスからの熱の回収で動作され得る。
[0011]燃焼領域に燃焼ガスを再循環させると、燃焼領域内の燃料と酸化物質の混合物が薄くなり、したがって温度が変わり、燃焼の結果としての熱風炉材料の損傷のリスクが低減する。燃焼は、実際には火炎がない可能性がある。
【0011】
[0012]本発明による装置は、燃焼を支援するために空気を利用する従来型の動作へ切り換え、また、溶鉱炉燃料に加えて、コークス炉ガス、転炉ガスまたは天然ガスなどの高位発熱量燃料を利用することにより、溶鉱炉燃料の発熱量を高める融通性を溶鉱炉の運転者に与える。
【0012】
[0013]したがって、本発明による装置は、高位発熱量燃料の供給源および燃焼領域に高位発熱量燃料を分配するように動作可能な第6の管路を含むことができる。
[0014]用語「低位発熱量燃料」は、一般に9MJ/Nm以下の発熱量を有する燃料を含むことを意味する。前述のように、溶鉱炉ガスは、一般に用いられる低位発熱量燃料である。用語「高位発熱量ガス」は、一般に9MJ/Nmより大きな発熱量を有するガスを示す。コークス炉ガス、転炉ガスまたは天然ガスは、本発明による装置で用いられる適切な高位発熱量燃料である。
【0013】
[0015]本発明による装置は、必要に応じて、第3の管路からの酸化物質を第2の管路の中へ選択的に導入するための手段をさらに含むことができる。このような機構は、溶鉱炉の運転者に、酸素富化された空気を用いて熱風炉を操作する選択肢を与える。
【0014】
[0016]本発明による装置は、望ましくは燃焼ガス用の通風管を含み、通風管は、一般に排気筒で終結し、一般に第4の管路と連通する。本発明による装置が、燃焼ガスの燃焼領域への再循環を用いて操作されるとき、燃焼ガスの一部分を逃がすと、循環するガスの不純物の増加を制限する。
【0015】
[0017]低位発熱量燃料ガスの供給源は、一般に、本発明による装置の一部分を形成する溶鉱炉の熱風炉が関連する溶鉱炉である。
[0018]空気源は、一般に、少なくとも1つの圧縮機、送風機または通風機である。この圧縮機は、一般に、溶鉱炉に空気噴流を供給する1つまたは複数の圧縮機から分離している。
【0016】
[0019]少なくとも85容量%の酸素を含む酸化物質の供給源は、一般に空気分離装置である。したがって、酸化物質は、少なくとも95容積%の酸素を含むことができる。空気分離装置は、例えば、分別蒸留または圧力スイング吸着法によって空気を分離する。
【0017】
[0020]第1から第6の管路のそれぞれが、開いたとき所望の流れを与え、閉まったときその流れを阻止する弁または一連の弁を含むことができる。すべての弁が、必要に応じて自動的に動作し得るプログラム可能な共通の制御装置に関連してよい。第1から第6の管路のそれぞれが、装置の全体の動作を支援する送量装置、安全弁および他の制御装置も含むことができる。
【0018】
[0021]必要に応じて、第4および第5の管路は、どちらも燃焼ガスを処理するための手段と連通してよい。燃焼ガスの処理は、燃焼ガスからの廃熱の回収、再圧縮、または両方を含むことができる。したがって、本発明による装置は、燃焼ガスから廃熱を回収するための熱交換器、および燃焼ガスを第4の管路から第5の管路へ通すための送風機または圧縮機を含むことができる。
【0019】
[0022]次に、本発明による装置が、添付図面を参照しながら一例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】[0023]従来型の製鉄所における溶鉱炉およびその関連する熱風炉の簡易図である。
【図2】[0024]外部燃焼室を有する溶鉱炉の熱風炉の概略断面図である。
【図3】[0025]溶鉱炉の熱風炉を運転するための本発明の装置を示す概略流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0026]これらの図面は、原寸に比例したものではない。ガス供給源の当技術分野で周知の、様々な送量装置、安全弁および他の制御装置は、すべて図面から省略されている。
[0027]図1を参照すると、製鉄所における溶鉱炉120および3つの熱風炉100の機構が概略的に示されている。溶鉱炉120の動作は、コークスなどの材料によって供給された炭素を用いる酸化鉄の還元によって溶融鉄を生産する。酸化鉄鉱を鉄へと還元すると、一酸化炭素の形成をもたらし、また、一酸化炭素、二酸化炭素および窒素を含むガス混合物が、溶鉱炉120の頂部から、3つの溶鉱炉の熱風炉100のそれぞれに対する溶鉱炉の炉頂ガスの供給を制御する燃料供給制御装置110まで流れる。各熱風炉100は、溶鉱炉120からの炉頂ガスを燃焼するための室および空気噴流を加熱するための室を有する。空気供給制御装置130によって空気噴流が供給される。空気噴流を加熱するための室は、しばしば格子状耐火れんがとも称されるセラミックれんがなどの形態の耐火金属を備える。各熱風炉100の燃焼室からの燃焼ガスは、空気加熱室を流れて耐火れんがに熱を渡す。一般に、各熱風炉は、あらゆる時点において、熱風炉のうち少なくとも1つが空気噴流を加熱するのに使用され、熱風炉の残りが溶鉱炉ガスの燃焼によって加熱されるように、所定のサイクルに従って操作される。
【0022】
[0028]耐火れんがが加熱されているとき、結果として生じる燃焼ガスまたは煙道ガスは、煙道ガス処理装置150に送られる。熱風炉100の目的は、溶鉱炉120に、多年の長期間にわたって、所望の吹込み速度で均一な熱風温度を与えることである。エネルギー消費を低減し、かつ安全操業および長期動作寿命の両方を助長するために、安定した熱風炉性能を達成するように燃焼を制御することは、当技術分野で周知である。各熱風炉100の燃焼室には、燃焼をもたらすバーナが備わっている。耐火れんがは、燃焼生成物の顕熱を捕捉する。格子状耐火レンガが、動作温度に一旦到達すると、バーナが運転停止され、冷気が、耐火れんがの上を通されて、「熱」風として溶鉱炉に送られる前にあらかじめ熱せられる。一般に、いくつかの熱風炉が加熱されている間に他のものが溶鉱炉に熱風を供給するように、熱風炉は3つまたは4つの群で動作する。
【0023】
[0029]図2は、外部燃焼室101、耐火材料102およびドーム103を有する従来型のカウパー熱風炉100を示す。熱風炉は、熱風炉100に損傷が引き起こされるほどドーム103の温度が高くならないことを保証するように運転される。内部燃焼室を有する熱風炉もあり、本発明による装置が、このような熱風炉の動作にも同様に適用可能であることを理解されたい。
【0024】
[0030]耐火材料が加熱されているとき、溶鉱炉の炉頂ガスが燃料入口105を通ってバーナ108に供給され、酸化物質が酸化物質入口104を通ってバーナ108に供給される。もたらされる高温の燃焼ガスは、室101を通って上方へ流れ、ドーム103を通過し、耐火れんが102で裏打ちされている室を通って下方へ流れる。結果として、耐火れんが102が加熱される。もたらされる燃焼ガスは、出入り口106を通って熱風炉100を出る。一般に、出ていく燃焼ガスの温度は、通常約200〜350℃である。れんがの耐火材料が所定の温度に達すると、動作が空気噴流の加熱に切り換えられる。次いで、空気が、耐火れんが102で裏打ちされた室を流れ、出入り口106を通って導入される。結果として、空気が加熱される。加熱された空気が、ドーム103および燃焼室101を通って流れ、出口107を通って外に出る。この時点で、噴射空気は、一般に1100〜1200℃の温度を有する。炉頂ガスは、好ましくは、熱風炉100から噴射空気が供給される溶鉱炉から得られる。このことは、溶鉱炉120の近くの熱風炉100用の機構の優れたエネルギー効率を可能にし、また、装置からの排気ガスの総計を減少させることを可能にするのを支援する。
【0025】
[0031]溶鉱炉の炉頂ガスは、一般に、約3.2MJ/Nmの発熱量を有する。必要に応じて、代わりに低位発熱量燃料が用いられ得る。
[0032]一般に、各熱風炉のバーナ108に酸化物質として空気が供給される場合には、空気を、必要とされる熱風温度へ加熱するように、十分高い火炎温度を達成するのに問題が生じる場合がある。
【0026】
[0033]さらなる熱を供給するために、溶鉱炉ガスは高位発熱量燃料ガスを追加される。一般に、この目的にはコークス炉ガスが用いられるが、転炉ガスまたは天然ガスなどの他のガスが代わりに用いられ得る。用いられる高位発熱量ガスの量は、溶鉱炉ガスの発熱量を9MJ/Nmまで高めるのに必要とされる量未満である。
【0027】
[0034]追加されなければならない高位発熱燃料ガスの量を低減するのに役立つ様々な技法がある。一例では、一般に250℃と450℃の間の温度を有する、熱風炉からの比較的高温の煙道ガスが、廃熱回収装置に渡され、ガスに含まれる顕熱の一部がこの装置で捕捉されて、熱風炉バーナによる燃焼に先立って燃料ガスを予熱するのに用いられる。
【0028】
[0035]第2の方法では、少なくとも85容量%の酸素を含む酸化物質(一般に少なくとも95容量%の酸素を含む)が、燃焼用空気の一部分を置換するのに用いられる。この置換は、一定の総計酸素流量では、燃焼生成物の窒素バラストが減少するので、火炎温度を上昇させる効果がある。許容し得る熱風炉のドーム温度が達成されていない場合、所望の火炎温度を生成するために追加されなければならない高位発熱量ガスの量を低減するように、より高い火炎温度が利用され得る。酸素によって富化することにより、高位発熱量ガスの低下された流速で所望の火炎温度が維持され得るが、熱風炉に入力されるエネルギーが低減される傾向がある。実際には、このことは、熱風炉バーナへの溶鉱炉ガスの流量を増加することにより改善される。より高い溶鉱炉ガスの質量流量率が、減少された空気質量流量を補償する。結果として、熱風炉内部の対流の熱伝達条件が、ひどく影響を及ぼされることはない。
【0029】
[0036]しかし、火炎温度が高くなりすぎて、一般的に耐火れんがおよび熱風炉のドームに損傷を与える危険を犯すことなく熱風炉(現行技術に基づくものである)で用いることができる酸素富化の量には実質的な限界がある。
【0030】
[0037]参照によって内容全体が本明細書に組み込まれている同時係属の国際特許出願PCT/SE2010/051301によれば、少なくとも85%の酸素を含む酸化物質を空気の代わりに利用し、燃焼ガスを熱風炉の燃焼領域の中へ再循環させることにより、高位発熱量ガスの使用がすべて解消され得る。熱風炉の材料に損傷をもたらさないように、再循環された燃焼ガスが、燃焼用の燃料と酸化物質の混合物を十分に薄める。実際、燃焼は、必要に応じて火炎なしにすることもできる。一般に、熱風炉で生成される燃焼ガスの約3分の1が、そのように再循環される。再循環される燃焼ガスと少なくとも85容量%の酸素を含む酸化物質とを用いる動作は、燃焼を支援するのに空気を用いる、燃焼ガスの再循環のない動作とはかなり異なるが、従来型の溶鉱炉の熱風炉を、この変化に適応させるのに必要とされる変更は、比較的小規模なものである。一般に、燃料ガスは、依然として既存の燃料ガス出入り口を通って流れるはずであり、また、再循環された燃焼ガスと少なくとも85容量%の酸素を含む酸化物質とが、前もって混合されて「合成空気」を形成することになり、これが既存の空気出入り口を通って導入され得る。すべての場合において、熱風炉を通る総計の質量流量は、従来型の空気燃料での動作の質量流量またはそれに非常に近い質量流量に維持される。溶鉱炉ガスの量は増加するが、熱風炉の中への他のガスの流量が相応して減少し、その結果、全体の質量流量は実質的に変更されない。
【0031】
[0038]再循環された燃焼ガスと少なくとも85容量%の酸素を含む酸化物質とを含む「合成空気」を形成すると、空気と比較して、比較的高濃度の酸素を有するガス混合物を形成することができる。必要に応じて、このようなガス混合物を扱うために必要なガス管路のそれらの部分は、銅または酸素との併用に対して安全な他の材料などの材料から形成されてよい。あるいは、このような材料の「合成空気」出入り口への吸気パイプの形成を不要にすることが望まれる場合、いくらかの酸素が1つまたは複数の酸素槍によって燃焼室の中へ導入されてよい。
【0032】
[0039]溶鉱炉は、通常、数年の期間にわたって連続運転される。このような動作期間を通じて、溶鉱炉および溶鉱炉の熱風炉への様々な供給物のコストおよび入手可能性が変化する可能性がある。したがって、一般的には燃焼ガスの再循環を用いる動作が望ましいと考えられるが、溶鉱炉の運転者は、溶鉱炉の熱風炉が運転されるやり方に特定の融通性を必要とする可能性がある。本発明による加熱装置の実施形態は、この融通性を提供する。この装置の一例が、図3に示されている。様々な一方向弁、流量調節弁などは、斬新な実施形態の理解を容易にするように、図3から省略されている。
【0033】
[0040]図3を参照すると、複数、例えば4つの溶鉱炉の熱風炉302、304、306および308が示されている。熱風炉302、304、306および308は、互いに並列に接続されている。この装置は、空気の主管路310、低位発熱量燃料(溶鉱炉ガス)の主管路320、高位発熱量燃料(コークス炉ガス)の主管路330、燃焼ガスの主管路340、酸素の主管路350、および再利用ガスの主管路360を備える。これらの管路は、様々な管路と熱風炉の入口および出口との間に適切な連通を与えるガスヘッダまたはガス分配器(図示せず)に関連しており、これらの入口および出口は、図2に示された熱風炉のものに基本的に類似である。したがって、空気入口の主管路310は、圧縮機309から空気を受け取って、熱風炉302、304、306および308のそれぞれの吸気口と、それぞれ分配管312、314、316および318を介して連通する。溶鉱炉ガスは、溶鉱炉ガスの主管路320から、熱風炉302、304、306および308へ、それぞれ溶鉱炉ガスの分配管322、324、326および328を介して分配される。同様に、コークス炉ガスまたは他の高位発熱量燃料は、熱風炉302、304、306および308へ、それぞれコークス炉の分配管332、334、336および338を介して分配され得る。熱風炉302、304、306および308から、それぞれ燃焼ガスの分配管342、344、346および348を通って流出する燃焼ガスは、すべて燃焼主管路340と連通する。
【0034】
[0041]管路340は、運用上の廃熱の回収装置380を通って延び、再利用ガス送風機370で終結する。廃熱回収装置380と再利用ガス送風機370の中間に、廃棄ガスを大気へ放出するために排気筒(図示せず)へ導く通風管路390がある。
【0035】
[0042]送風機370の出口は、燃焼ガスの再循環管路360と連通する。再循環ガス管路360は、空気分配管312、314、316および318のそれぞれに接続される。酸素主管路350は、分配管312、314、316および318のそれぞれに対して、空気分離装置351で生成された酸素を供給することができる。その代わりに、もしくはそれに加えて、酸素主管路350は、熱風炉302、304、306および308に、それぞれ酸素分配管352、354、356、358を介して、酸素を直接供給することができる。
【0036】
[0043]必要に応じてバイパス管が使用されてもよく、管路340の燃焼ガスが廃熱回収装置380を迂回することが可能になる。燃焼ガスから、溶鉱炉に供給されるガス空気に熱を伝達するために、一般的には廃熱回収装置380が配置される。
【0037】
[0044]図3に示される装置は、上記で説明された複数の別々のモードで運転され得る。これらのモードは、
a)熱風炉に、溶鉱炉ガス、例えばコークス炉ガスといった高位発熱量燃料ガス、および空気が供給されるが、酸素補給燃焼ガスの再利用および燃焼ガスからの廃熱回収はないモードと、
b)(a)と同様であるが、燃焼ガスの廃熱回収を用いるモードと、
c)(b)と同様であるが、空気を酸素富化し、高位発熱量燃料ガスは供給しないモードと、
d)溶鉱炉への供給、酸素供給および燃焼ガス再利用を用いるが、空気の供給、高位発熱量ガスの供給および燃焼ガスからの廃熱回収はしないモードと、
e)(d)と同様であるが、燃焼ガスからの廃熱回収を用いるモードと、
f)(e)と同様であるが、空気供給も用いるモードとを含む。
【0038】
[0045]上記の実例(f)は、実例(e)に基本的に類似であるが、燃焼用空気を酸素および再循環された燃焼ガスで全面的に置換することはなく、燃焼用空気は、これらのガスで部分的に置換されるのみである。
【0039】
[0046]酸素の供給源は、好ましくは、少なくとも純度95%であって一般的には少なくとも純度99.9%の酸素を生成する空気分離装置である。
[0047]装置が前述のモードのうち任意の1つで運転されることを可能にするために、オン/オフ弁の配列が設けられる。図3を再び参照すると、管路312、314、316および318には、それぞれ空気供給弁313、315、317および319が設けられており、高位発熱量燃料ガス管332、334、336および338には、それぞれ高位発熱量燃料ガス(コークス炉ガス)の分配弁333、335、337および339が設けられており、再利用ガス遮断弁342があり、酸素供給管352、354、356および358には、それぞれ主酸素供給弁353、355、357および359が設けられており、酸素富化弁393、395、397および399は、それぞれ管312、314、316および318を通って流れる空気の酸素が富化するように動作可能であり、再循環ガス弁363、365、367および369は、それぞれ管312、314、316および318と連通し、廃熱回収弁382および廃熱回収装置バイパス弁384がある。
【0040】
[0048]前述の弁は、実例(a)〜(f)によるモードのうち任意のもので熱風炉を加熱するように、示された装置を運転するために開閉され得る。必要な弁位置は、以下の表1に与えられている。一般に、熱風炉のうちの1つだけ(または場合により2つ)がいつでも加熱される。
【0041】
[0049]表1の実例(c)では、どの熱風炉が加熱されているかということに従って弁393、395、397および399によって空気の酸素を富化すること加えて、酸素が、任意選択で、熱風炉302、304、306、308の中へ直接注入されてよく、その場合、弁353、355、357および359は開かれる。
【0042】
[0050]この装置は、上記で説明された(a)〜(f)以外のモードで運転され得ることを理解されたい。例えば、廃熱回収は、(b)および(c)だけでなく、すべてのモードで利用され得る。
【0043】
[0051](a)〜(e)の動作モードに関するいくつかの例示的動作パラメータが、表2に示されている。
[0052]実例(c)〜(e)では、溶鉱炉ガスは、コークス炉ガスを補足される必要性がないことが理解され得る。二酸化炭素が捕捉されるかまたは回収されることになっている場合、実例(d)および(e)は、排気筒ガスの、より大きな二酸化炭素含量のために実例(c)より好ましい。
【0044】
[0053]モード(d)で運転することには、熱風炉に窒素分子が入る割合が他のモードより小さく、それによって窒素酸化物の形成が減少されるという特別な利点がある。図3に示された装置が再循環で運転されるときでさえ、窒素酸化物を除去するために燃焼ガスを化学処理する必要性はないはずである。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【符号の説明】
【0047】
100 熱風炉
101 外部燃焼室
102 耐火材料
103 ドーム
104 酸化物質入口
105 燃料入口
106 出入り口
107 出口
108 バーナ
110 燃料供給制御装置
120 溶鉱炉
130 空気供給制御装置
150 煙道ガス処理装置
302 熱風炉
304 熱風炉
306 熱風炉
308 熱風炉
309 圧縮機
310 空気の主管路
312 分配管
313 空気供給弁
314 分配管
315 空気供給弁
316 分配管
317 空気供給弁
318 分配管
319 空気供給弁
320 低位発熱量燃料(溶鉱炉ガス)の主管路
322 溶鉱炉ガスの分配管
324 溶鉱炉ガスの分配管
326 溶鉱炉ガスの分配管
328 溶鉱炉ガスの分配管
330 高位発熱量燃料(コークス炉ガス)の主管路
332 分配管
333 高位発熱量燃料ガス(コークス炉ガス)の分配弁
334 分配管
335 高位発熱量燃料ガス(コークス炉ガス)の分配弁
336 分配管
337 高位発熱量燃料ガス(コークス炉ガス)の分配弁
338 分配管
339 高位発熱量燃料ガス(コークス炉ガス)の分配弁
340 燃焼ガスの主管路
342 分配管
342 再利用ガス遮断弁
344 分配管
346 分配管
348 分配管
350 酸素の主管路
351 空気分離装置
352 酸素供給管
353 主酸素供給弁
354 酸素供給管
355 主酸素供給弁
356 酸素供給管
357 主酸素供給弁
358 酸素供給管
359 主酸素供給弁
360 再利用ガスの主管路
363 再循環ガス弁
365 再循環ガス弁
367 再循環ガス弁
369 再循環ガス弁
370 再利用ガス送風機
380 廃熱回収装置
380 廃熱回収装置
382 廃熱回収弁
384 廃熱回収装置バイパス弁
390 通風管路
393 酸素富化弁
395 酸素富化弁
397 酸素富化弁
399 酸素富化弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼領域および前記燃焼領域に関連した燃焼ガス出口を有する溶鉱炉の熱風炉を加熱するための装置であって、
a)低位発熱量燃料の供給源と、
b)前記低位発熱量燃料をその供給源から前記燃焼領域へ分配するように動作可能な第1の管路と、
c)空気源と、
d)前記空気をその空気源から前記燃焼領域へ分配するように動作可能な第2の管路と、
e)少なくとも85容量%の酸素を含む酸化物質の供給源と、
f)前記酸化物質をその供給源から前記燃焼領域へ分配するように動作可能な第3の管路と、
g)前記熱風炉の前記燃焼ガス出口から遠ざけて燃焼ガスを導くように動作可能な第4の管路と、
h)前記燃焼ガスの一部分を前記燃焼領域へ戻すように動作可能な第5の管路とを備える装置。
【請求項2】
前記第3の管路から前記第2の管路の中へ前記酸化物質を選択的に導入するための手段をさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第4の管路と連通する通風管をさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記低位発熱量燃料の供給源が、前記溶鉱炉の熱風炉が関連している溶鉱炉である請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記空気源が少なくとも1つの圧縮機である請求項1に記載の装置。
【請求項6】
高位発熱量燃料の供給源と、前記高位発熱量燃料の供給源を前記燃焼領域と連通状態にするように動作可能な第6の管路とをさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の管路から前記第6の管路のそれぞれが、所望の連通を選択的にもたらすか、または前記高位発熱量燃料の連通を防止するように動作可能な弁を備える請求項6に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−246568(P2012−246568A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−105707(P2012−105707)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【出願人】(391009659)リンデ アクチエンゲゼルシャフト (106)
【氏名又は名称原語表記】Linde Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Klosterhofstrasse 1, D−80331 Muenchen, Germany