説明

加硫促進剤として適切な1,2,4‐トリアジンおよびその調製方法

本発明は、下記の式(I)の1,2,4‐トリアジンおよびその製造方法およびその使用に関する:
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のトリアジン、その調製方法およびその加硫促進剤としての使用に関する。
【0002】
ジエンエラストマーのイオウによる加硫は、ゴム工業において、特に、タイヤ工業において広く使用されている。ジエンエラストマーを加硫するには、イオウ以外に、ベンゾチアゾール環系を含むスルフェンアミドのような一次加硫促進剤と、各種の二次加硫促進剤または加硫活性化剤、特に、単独でまたは脂肪酸と一緒に使用する酸化亜鉛(ZnO)のような亜鉛誘導体とを含む比較的複雑な加硫系を使用する。
【0003】
そのような加硫促進剤は、ジエンエラストマーおよび補強用充填剤をベースとし、特にタイヤの製造において使用し得るゴム組成物において使用するためには、十分な架橋を誘導させる共に、正確な、実際には改良さえされている遅延段階(delay phase;加硫開始に必要な時間)を保持しなければならない。
【0004】
加硫促進剤は、遅延段階(誘導時間)の達成において主要な役割を果し、当業者にとっては、このパラメーターは調整するが極めて困難であることが知られている。従って、さらなる促進剤の添加によって、必要に応じて調整できる長い遅延段階を誘導する加硫促進剤を取得することは当業者にとって特に有利である。
【発明の概要】
【0005】
本出願法人は、特定のトリアジン化合物、即ち、1,2,4‐トリアジンが、加硫促進剤として使用することができ、そのような化合物を使用するゴム組成物の流動度測定特性を、そのような組成物の他の諸性質を劣化させることなく改良することも可能することを見出した。
【0006】
従って、本発明の主題は、下記の式(I)の1,2,4‐トリアジンである:
【化1】

(式中、R1およびR2は、個々に、H、或いは線状、枝分れまたは環状のアルキル基およびアリール基から選ばれ、必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断されたC1〜C25炭化水素基を示し、R1およびR2は、一緒になって環を形成し得;
R3は、
・必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断され、且つ必要に応じて1個以上の環状C3〜C10アルキルまたはC6〜C12アリール基によって置換されている線状または枝分れのC1〜C25アルキル基;または、
・必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断され、且つ必要に応じて1個以上の線状、枝分れまたは環状のC1〜C25アルキルまたはC6〜C12アリール基(これらの基は必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断されている)によって置換されている環状のC3〜C10アルキル基;
を示す)。
【0007】
本発明のもう1つの主題は、上記で定義したとおりの1,2,4‐トリアジンの加硫促進剤としての使用である。
本発明のさらなる主題は、下記の化合物間の酸化カップリングによる、上記で定義したとおりの1,2,4‐トリアジンの調製方法であって、上記酸化カップリングを、塩基性組成物および酸化性化合物を使用することによって実施する上記調製方法である:
・下記の式(A)の1,2,4‐トリアジン‐3‐チオール化合物:
【化2】

(式中、R1およびR2は、上記で定義したとおりである);
・式R3NH2の第一級アミン(式中、R3は、上記で定義したとおりである)。
【0008】
本発明およびその利点は、下記の説明および実施例に照らせば容易に理解し得るであろう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
I. 使用する測定および試験法
1,2,4‐トリアジン加硫促進剤を試験するゴム組成物は、以下で示すように、硬化した後に特性決定する。
【0010】
流動度測定:
測定は、規格DIN 53529:パート3 (1983年6月)従い、振動室ディスクレオメーターにより150℃で実施する。時間の関数としての流量測定トルクの変化(Δトルク)によって、加硫反応の結果としての組成物の剛化の変化を説明する。測定値を規格DIN 53529:パート2 (1983年3月)従い処理する:t0は、誘導時間、即ち、加硫反応を開始するのに必要な時間であり;tα(例えば、t99)は、α%、即ち、最低トルクと最高トルクとの差のα%(例えば、99%)の転換率を達成するのに必要な時間である。また、加硫速度の評価を可能にする、第1順位であり、30%と80%の転換率の間で算出したK (分-1で表す)で示す転換速度定数も測定する。
【0011】
II. 本発明の実施のための条件
II‐1 本発明のトリアジン
上述したように、本発明の第1の主題は、下記の式(I)の1,2,4‐トリアジンである:
【化3】

(式中、R1およびR2は、個々に、H、或いは線状、枝分れまたは環状のアルキル基およびアリール基から選ばれ、必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断されたC1〜C25炭化水素基を示し、R1およびR2は、一緒になって環を形成し得;
R3は、
・必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断され、且つ必要に応じて1個以上の環状C3〜C10アルキルまたはC6〜C12アリール基によって置換されている線状または枝分れのC1〜C25アルキル基;または、
・必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断され、且つ必要に応じて1個以上の線状、枝分れまたは環状のC1〜C25アルキルまたはC6〜C12アリール基(これらの基は必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断されている)によって置換されている環状のC3〜C10アルキル基;
を示す)。
【0012】
環状アルキル基は、1個以上の環からなるアルキル基を意味するものと理解されたい。
上記1個以上のヘテロ原子は、窒素、イオウまたは酸素原子であり得る。
第1の実施態様によれば、R1およびR2は、個々に、H、メチル基またはフェニル基を示す。
有利には、R1またはR2は、フェニル基を示す。好ましくは、R2はフェニル基であり、R1は水素である。
R3は、シクロヘキシル基またはtert‐ブチル基を示す。好ましくは、R3は、tert‐ブチル基を示す。
【0013】
式(I)の好ましい1,2,4‐トリアジンは、R1が水素を示し、R2がフェニル基を示し、R3がシクロヘキシル基を示す1,2,4‐トリアジンである。そのような化合物は、3‐[(シクロヘキシルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジン (N‐シクロヘキシル‐S‐(5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジン‐3‐イル)チオヒドロキシルアミンとしても知られている)である。
式(I)のもう1つの好ましい1,2,4‐トリアジンは、R1が水素を示し、R2がフェニル基を示し、R3がtert‐ブチル基を示す1,2,4‐トリアジンである。そのような化合物は、3‐[(t‐ブチルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジンである。
【0014】
II‐2. 合成方法
式(I)の1,2,4‐トリアジンを、下記の化合物間の酸化カップリングによって調製することができ、上記酸化カップリングは、塩基性組成物および酸化性化合物を使用することによって実施する:
・下記の式(A)の1,2,4‐トリアジン‐3‐チオール化合物:
【化4】

(式中、R1およびR2は、上記で定義したとおりである);
・式R3NH2の第一級アミン(式中、R3は上記で定義したとおりである)。
【0015】
本発明の第1の実施態様によれば、式(I)の1,2,4‐トリアジンは、下記の工程を含む合成方法に従って調製し得る:
出発化合物は、下記の式(A)の1,2,4‐トリアジン‐3‐チオールである:
【化5】

(式中、R1およびR2は、上記で定義したとおりであり);
この1,2,4‐トリアジン‐3‐チオールは、限定するものではないが、1,2‐ジカルボニル化合物とチオセミカルバジド間の、例えば、Journal of Organic Chemistry, Vol. 52, No. 19, 1987, pp. 4280‐4287において、或いはthe work Summary of science and technology. Organic Chemistry Series, edited in 1990 by Viniti, Moscowの22巻の“1,2,4‐Triazines”と題した章においてL. M. MironovichおよびV. K. Promonenkovによって説明されている一般的方法に従う縮合によって得ることが可能である;
上記化合物(A)を、上記塩基性組成物と反応させる;この塩基性組成物は、有機または無機塩基の水溶液、例えば、水酸化ナトリウム水溶液であり得る;その後、
上記式R3NH2の第一級アミン(式中、R3は上記で定義したとおりである)を反応媒体に添加し、酸化カップリングを、酸化性化合物の存在下に実施する;酸化性化合物、例えば、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、次亜ハロゲン酸、または、例えば、次亜塩素酸ナトリウムのようなそれらのアルカリ金属塩のようなハロゲン化合物であり得る。
好ましくは、R1は水素を示し、R2はフェニル基を示す。
好ましくは、R3は、シクロヘキシル基を示す。
【0016】
本発明の第2の実施態様によれば、式(I)の1,2,4‐トリアジンは、下記の工程を含む合成方法に従い調製することができる:
a) 式R3NH2の第一級アミンを、上記酸化性化合物と反応させる工程、次いで、
b) 上記塩基組成物を含む組成物、上記式(A)の化合物および式R3NH2の第一級アミンを、工程a)において得られた反応媒体に添加する工程。
好ましくは、R1は水素を示し、R2はフェニル基を示す。
好ましくは、R3は、tert‐ブチル基を示す。
【0017】
上記塩基組成物は、有機または無機塩基の水溶液、例えば、水酸化ナトリウム水溶液であり得る。
上記酸化化合物は、ハロゲン化合物、好ましくは、塩素、臭素、ヨウ素および次亜ハロゲン酸並びにそれらのアルカリ金属塩から選択し得る。特に、次亜塩素酸ナトリウムを挙げることができる。
【0018】
II‐3. 加硫促進剤としての使用
上記したように、本発明の1,2,4‐トリアジン化合物は、加硫促進剤としての有利で且つ工業的用途を有する。従って、本発明の1,2,4‐トリアジン化合物は、1種以上のジエンエラストマー、1種以上の補強用充填剤および加硫系をベースとするタイヤ製造用のゴム組成物において使用することができる。
【0019】
そのような用途においては、上記1種以上のジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(“BR”と略記する)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらエラストマーの混合物からなる高不飽和ジエンエラストマーの群から選択する。そのようなコポリマーは、さらに好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)およびイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)からなる群から選択する。
【0020】
さらにまた、タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物を補強するその能力について知られている任意のタイプの補強用充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような補強用無機充填剤、またはこれら2つのタイプの充填剤のブレンド、特にカーボンブラックとシリカとのブレンドを使用することができる。
【0021】
用語“補強用無機充填剤”とは、本特許出願においては、定義により、カーボンブラックに対比して“白色充填剤”、“透明充填剤”実際には“非黒色充填剤”としてさえも知られており、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤ製造を意図するゴム組成物を補強し得、換言すれば、通常のタイヤ級カーボンブラックとその補強役割において置換わり得る、その色合およびその起源(天然または合成)の如何にかかわらない任意の無機または鉱質充填剤を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られているとおり、その表面でのヒドロキシル(‐OH)基の存在に特徴を有する。
補強用無機充填剤として特に適切なのは、シリカ質タイプの鉱質充填剤、特に、シリカ(SiO2)である。
【0022】
適切な加硫系は、イオウ(またはイオウ供与剤)および一次加硫促進剤をベースとする。この基本加硫系に加えるのは、酸化亜鉛、ステアリン酸もしくは等価化合物、またはグアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)のような各種既知の二次加硫促進剤または加硫活性化剤である。
【0023】
一次加硫促進剤は、ゴム組成物の架橋を、工業的に許容し得る時間内で、ゴム組成物を早期の加硫(“スコーチ”)のリスクなしで成形することができる最低限の安全期間(“スコーチ時間”)を保持しながら可能にしなければならない。
従って、本発明に従う1,2,4‐トリアジン化合物は、加硫促進剤として使用し得る。本発明に従う上記化合物は、通常の化合物、特に、スルフェンアミドと全てまたは部分的に置換わり得る。
【0024】
III. 本発明の実施例
III‐1. 3‐[(シクロヘキシルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジン
以下の実施例においては、本発明を、下記の式を有する3‐[(シクロヘキシルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジン (化合物B)によって実施する:
【化6】

【0025】
III‐1.1. 上記トリアジン化合物の合成
この化合物は、5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジン‐3‐チオールとシクロヘキシルアミンから、下記の合成スキームに従って調製する:
【化7】

【0026】
5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジン‐3‐チオール (CAS番号[15969‐28‐5])は商業的に入手可能であり、或いは、下記の文献に記載された手順に従って得ることができる:
1). Daunis, J. et al.; Bulletin de la Societe Chimique de France; 1969, 10; 3675‐3678;
2). Joshi, K. C., Dubey, K. and Dandia, A., Heterocycles (1981), 16(9); 1545‐1553。
【0027】
シクロヘキシルアミン (107.6g、1.09モル)を、水(700ml)中の5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジン‐3‐チオール(41.0g、0.22モル)と水酸化ナトリウム(20.0g、0.50モル)の溶液に添加する。混合物を0℃と−5℃の間の温度に冷却し、その後、NaOCl水溶液(4%活性塩素) (477 ml)を、30分に亘って滴下により添加する。反応媒の温度は、0℃と−4℃の間のままである。その後、反応媒を0℃と5℃の間の温度で1時間30分〜2時間撹拌する。
【0028】
石油エーテル(100ml)を添加し、その後、反応混合物を0℃と−4℃の間の温度で15〜30分間撹拌する。沈降物を濾別し、水 (200ml)と石油エーテル(50ml)で洗浄し、最後に、減圧下に2〜3時間乾燥させる。
125〜127℃の融点を有する白色固形物(42.9g、0.15モル、収率68%)を得る。
モル純度は97%よりも高い(1H NMR)。
純度が不十分である場合、酢酸エチルからの結晶化が、純粋生成物を得ることを可能にする。
【0029】
生成物をNMRによって完全に特性決定する。d6 DMSO中での1Hおよび13C NMRによって得られた化学シフトを下記の表に示している。較正をDMSO (1Hにおいて2.44ppm、また、13Cにおいて39.5ppm)に対して実施する。
【0030】
【化8】

【0031】
結果を、下記の表1に示している。

表1

【0032】
III‐1.2. 加硫促進剤としての使用(組成物の調製)
以下の試験における手順は、下記のとおりである:1種以上のジエンエラストマー、1種以上の補強用充填剤および必要に応じてカップリング剤を、1〜2分の混練後、加硫系を除いた各種他の成分を、70%満たし、およそ90℃の出発容器温度を有する密閉ミキサーに導入する。その後、熱機械加工 (非生産段階)を、1段階(およそ5分に等しい総混練時間)において、およそ165℃の最高“落下”温度に達するまで実施する。そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、その後、加硫系 (イオウとトリアジン化合物(または比較例においては“CBS”))を、70℃の開放ミキサー(ホモフィニッシャー)に添加し、全てをおよそ5〜6分間混合する(生産段階)。
その後、そのようにして得られた組成物を、その物理的または機械的性質の測定のためのゴムのプラーク(2〜3mm厚)または薄シートの形に、或いは、所望の寸法に切断および/または組立てた後、例えば、タイヤ用の半製品として、特に、タイヤトレッドとして直接使用することのできる形状要素の形にカレンダー加工する。
【0033】
III‐1.3. 特性決定試験(結果)
【実施例1】
【0034】
本実施例の目的は、主要補強用充填剤としてカーボンブラックを含み、タイヤトレッドの製造において使用することができ、3‐[(シクロヘキシルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジン(化合物B)を一次加硫促進剤として含むゴム組成物(組成物2)の性質を、N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド (“CBS”)を含むゴム組成物(組成物1)の性質と比較することである。
【0035】
各ゴム組成物の配合を、下記の表1に示している。量は、エラストマー100質量部当りの質量部(phr)で表している。

表2

* CBS (Flexsys社からの“Santocure CBS”)
** 3‐[(シクロヘキシルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジン
(1) 天然ゴム;
(2) 0.7%の1‐2、1.7%のトランス‐1,4‐、98%のシス‐1,4‐を含むポリブタジエン (Tg = −105℃) (モル%);
(3) ブタジエン/スチレンコポリマー:25%のスチレン、59%の1,2‐ポリブタジエン単位および20%のトランス‐1,4‐ポリブタジエン単位を含むSSBR (溶液中で調製したSBR) (Tg = −24℃) (モル%);乾燥SBRとして表した量 (9質量%のMESオイルで増量したSBR、即ち、76phrに等しいSSBR+オイルの合計量);
(4) カーボンブラックN234;
(5) 酸化防止剤 6‐p‐フェニレンジアミン。
【0036】
3‐[(シクロヘキシルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジンを含むゴム組成物2は、組成物1と同一であり、CBSを等モル量の3‐[(シクロヘキシルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジンと置換えていることを理解されたい。
【0037】
150℃での流動度測定特性を、下記の表3に示す。
【0038】
表3

【0039】
3‐[(シクロヘキシルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジン含む組成物2において得られた流動度測定特性は、CBSを含む組成物1において得られた流動度測定特性と等価である。さらに、遅延段階(誘導時間t0)は、3‐[(シクロヘキシルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジンを含む組成物2の場合においてより長く、有利であることに注目されたい。
さらにまた、化合物A、一般的には式(I)の化合物は、有利なことに、環境的影響に関しては、メルカプトベンゾチアゾール環系を含むスルフェンアミドと、このスルフェンアミドとは対照的に硬化中の分解時にメルカプトベンゾチアゾールを発生させないことによって取って代っていることに注目されたい。
【実施例2】
【0040】
本実施例の目的は、主要補強用充填剤としてシリカを含み、タイヤトレッドの製造において使用することができ、3‐[(シクロヘキシルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジン (化合物B)を一次加硫促進剤として含むゴム組成物(組成物4)の性質を、N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド(“CBS”)を含むゴム組成物 (組成物3)の性質と比較することである。
【0041】
各組成物の配合を、下記の表4に示している。量は、エラストマーの100質量部当りの質量部(phr)で表している。

表4

* CBS (Flexsys社からの“Santocure CBS”)
** 3‐[(シクロヘキシルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジン
(1) 0.7%の1‐2;1.7%のトランス‐1,4‐;98%のシス‐1,4‐を含むポリブタジエン (Tg = −105℃)(モル%);
(2) ブタジエン/スチレンコポリマー:25%のスチレン、59%の1,2‐ポリブタジエン単位および20%のトランス‐1,4‐ポリブタジエン単位を含むSSBR (溶液中で調製したSBR) (Tg = −24℃) (モル%);乾燥SBRとして表した量 (9質量%のMESオイルで増量したSBR、即ち、76phrに等しいSSBR+オイルの合計量);
(3) カーボンブラックN234;
(4) Rhodia社からのシリカ“Zeosil 1165MP”、“HDS”タイプ (BETおよびCTAB:およそ160m2/g);
(5) 酸化防止剤 6‐p‐フェニレンジアミン;
(6) 可塑化用オイル“軽度抽出溶媒和物(Medium Extracted Solvates)”(Shell社からのCatenex SNR);
(7) Kolon社から販売されている脂肪族樹脂(ピュアC5)“Hikorez A−1100”;
(8) カップリング剤 ビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPT) (Degussa社からの“Si69”);
(9) ジフェニルグアニジン (Flexsys社からのPerkacit DPG)。
【0042】
3‐[(シクロヘキシルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジンを含むゴム組成物4は、組成物3と同一であり、CBSを等モル量の3‐[(シクロヘキシルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジンと置換えていることを理解されたい。
【0043】
150℃における流動度測定特性を下記の表5に示している。

表5

【0044】
3‐[(シクロヘキシルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジンを含有する組成物4において得られた流動度特性は、CBSを含む組成物1において得られる流動度測定特性と等価である。さらに、遅延段階(誘導時間t0)は、3‐[(シクロヘキシルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジンを含む組成物4の場合においてより長く、有利であることに注目されたい。
【0045】
III‐2. 3‐[(t‐ブチルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐l,2,4‐トリアジン
下記の式を有する3‐[(t‐ブチルアミノ)チオ]‐5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジン (化合物C)の調製方法を、以下で説明する:
【化9】

【0046】
このスルフェンアミドの調製は、5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジン‐3‐チオールとtert‐ブチルアミン間の、下記の合成スキームに従う酸化カップリングに基づく:
【化10】

【0047】
NaOCl水溶液(136ml、17.4%の活性塩素を測定)を、−10℃と−5℃の間(浴温度)に維持した350mlのtert‐ブチルアミンに、滴下により45分に亘って添加する。添加する間の全体に亘って、浴の温度を−10℃と−5℃の間に維持する。水 (350ml)中の5‐フェニル‐1,2,4‐トリアジン‐3‐チオール(40.30g、0.213モル;純度:およそ98モル%、NMRによって測定)、水酸化ナトリウム (16.96g、0.424モル)およびtert‐ブチルアミン(50ml)の溶液を、0℃に維持したこの溶液に90分に亘って滴下により添加する。反応媒の温度は、依然として0℃と+6℃の間に維持されたままである。その後、反応媒を+5℃と+10℃の間の温度で1時間、その後、周囲温度で2時間撹拌する。
【0048】
その後、この媒質を、0.7 Lの冷水(約4℃)で希釈する。この懸濁液をさらに10分間撹拌し、その後、得られた生成物の沈降物を濾別し、フィルター上で水洗し(500mlで10回)、その後、空気下に48時間乾燥させる。73℃の融点を有する黄色固形物(49.5g、0.190モル、収率89%)を得る。1H NMRにより測定したモル純度は、95%である。
【0049】
反応を、薄層クロマトグラフィーによってモニターする:
Rf生成物 = 0.52、Rfジスルフィド不純物 = 0.61 (上記TLCの特徴:SiO2;EtOAc:ヘプタン = 1:1;UVおよびI2による可視化)。
【0050】
生成物を、NMRによって完全に特性決定する。d6 DMSO中での1Hおよび13C NMRによって得られる化学シフトを下記の表に示している。較正をDMSO (1Hにおいて2.44ppm、13Cにおいて39.5ppm)に対して実施する。
【化11】

結果は、下記の表6に示している。
【0051】
表6


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)の1,2,4‐トリアジン:
【化1】

(式中、R1およびR2は、個々に、H、或いは線状、枝分れまたは環状のアルキル基およびアリール基から選ばれ、必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断されたC1〜C25炭化水素基を示し、R1およびR2は、一緒になって環を形成し得;
R3は、
・必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断され、且つ必要に応じて1個以上の環状C3〜C10アルキルまたはC6〜C12アリール基によって置換されている線状または枝分れのC1〜C25アルキル基;または、
・必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断され、且つ1個以上の線状、枝分れまたは環状のC1〜C25アルキルまたはC6〜C12アリール基であって、必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断されている基によって必要に応じて置換されている環状のC3〜C10アルキル基;
を示す)。
【請求項2】
R1およびR2が、個々に、H、メチル基またはフェニル基を示す、請求項1記載の1,2,4‐トリアジン。
【請求項3】
R1又はR2が、フェニル基を示す、請求項2記載の1,2,4‐トリアジン。
【請求項4】
R1が水素を示し、R2がフェニル基である、請求項3記載の1,2,4‐トリアジン。
【請求項5】
R3が、シクロヘキシル基またはtert‐ブチル基を示す、請求項1〜4のいずれか1項記載の1,2,4‐トリアジン。
【請求項6】
R3が、tert‐ブチル基を示す、請求項1〜5のいずれか1項記載の1,2,4‐トリアジン。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載において定義したとおりの1,2,4‐トリアジンの加硫促進剤としての使用。
【請求項8】
下記の化合物間の酸化カップリングによる、請求項1〜6のいずれか1項記載において定義したとおりの1,2,4‐トリアジンの調製方法であって、前記酸化カップリングを、塩基性組成物および酸化性化合物を使用することによって実施する前記調製方法:
・下記の式(A)の1,2,4‐トリアジン‐3‐チオール化合物:
【化2】

(式中、R1およびR2は、請求項1〜4のいずれか1項において定義したとおりである);
・式R3NH2の第一級アミン(式中、R3は、請求項1、5または6において定義したとおりである)。
【請求項9】
下記の工程、
・前記化合物(A)を、前記塩基性組成物と反応させる工程、次いで
・前記式R3NH2の第一級アミンを反応媒体に添加する工程、次いで
・前記酸化カップリング剤を前記酸化性化合物の添加によって実施する工程、
を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
下記の工程、
a) 前記式R3NH2の第一級アミンを前記酸化性化合物と反応させる工程、次いで、
b) 前記塩基性組成物を含む組成物、前記式(A)の化合物および前記式R3NH2の第一級アミンを、工程a)において得られた反応媒体に添加する工程、
を含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
R3が、tert‐ブチル基である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記塩基性組成物が、有機または無機塩基の水溶液である、請求項8〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記無機塩基が、水酸化ナトリウムである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記酸化性化合物が、ハロゲン化合物、好ましくは、塩素、臭素、ヨウ素および次亜ハロゲン酸並びにそれらのアルカリ金属塩から選ばれる、請求項8〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記酸化化合物が、次亜塩素酸ナトリウムである、請求項14記載の方法。

【公表番号】特表2013−507342(P2013−507342A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532606(P2012−532606)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065067
【国際公開番号】WO2011/042521
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)