説明

加速挙動の決定

所定の道路区画での自動車の燃料効率の良い加速挙動を決定するための改良された方法および制御ユニットが開示される。加速挙動の決定は、道路区画の第1の位置における自動車の決定された初速度、および道路区画の決定された第2の位置における自動車の決定された目標速度に基づいたものであり、第2の位置は、前記第1の位置から加速距離だけ離れている。本発明によれば、第1の位置は、加速距離が、最大加速距離Sacc以下であるように決定され、最大加速距離Saccは、道路区画の少なくとも1つの第1の道路条件および自動車の少なくとも1つの特性に基づいて動的に決定される。本発明によれば、燃料効率が非常に良いと同時に、直観的に受け入れ可能な加速挙動が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に規定された燃料効率の良い加速挙動を決定する方法に関する。
【0002】
本発明はまた、請求項12の前文に規定された自動速度制御方法に関する。
【0003】
本発明はまた、請求項13および14の前文のそれぞれに規定されたコンピュータプログラムおよび本発明の方法を実装するコンピュータプログラム製品に関する。
【0004】
本発明はまた、請求項16に規定された燃料効率の良い加速挙動を決定する制御ユニットに関する。
【0005】
本発明はまた、請求項22の前文に規定された自動速度制御システムに関する。
【背景技術】
【0006】
車、トラック、バス、トラクタなどの自動車の速度を正確に制御するために、適切な加速および減速の決定および適用が必要とされる。環境やコスト面の理由から、これらの加速および減速は、燃料効率の良い方法で実行されるべきである。
【0007】
ある状況または位置にある自動車の適切な速度は、特定の交通状況や道路条件などの数多くのパラメータに依存しうる。このような道路条件にはさまざまなパラメータがあり、特に、速度制限への依存など、自動車が走る道路の一部に望ましい速度、周知のように、雨や凍結により滑りやすくなった路面条件、または上り坂や下り坂の存在がある。
【0008】
今日、自動車の適切な速度決定に使用されるこのようなパラメータの決定に利用可能な電子補助器具には多くのものがある。現在公的に利用可能なこのような電子補助器具は、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)などの電子測位システムや他の対応する測位システムと、電子マップとを含む。このような測位システムは、三次元測位情報、すなわち、緯度、経度、および高度に関する情報を提供しうる。また、電子マップは、地形情報に加えて、道路のさまざまな区画に設定されている速度制限も含みうる。また、自動車に搭載したセンサによって、または1つ以上の外部源から自動車に送信される情報によって、気温、雨および/または降雪などの気象条件が自動車に提供される。
【0009】
米国特許出願公開第2005/0085974号に示す先行技術のシステムは、燃費を最低限に抑えるために、このような電子補助器具をある程度使用する。この先行技術のシステムでは、即時情報の決定にGPS情報が使用され、予想位置の決定に電子マップ情報が使用される。さらに、特定の位置の道路傾斜は、自動車の電子センサを使用して決定され、このような道路傾斜決定値からの補外法によって、自動車の周囲地形が推定されうる。これらのパラメータは、例えば、スロットル開度の調節時に重力が考慮されるように、スロットル開度を決定するために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、先行技術のように、燃費を最低限に抑えるこのようなパラメータを考慮するだけで、エンジンに噴射される燃料量の制御やスロットル開度の調節(すなわち、自動車の速度調節動作)を行うと、運転挙動が他の道路利用者を苛立たせる事態を引き起こしかねない。このように、自動車に後続する車両の運転者は、自動車の運転挙動が、確立された運転規範に従わないため、迷惑に感じることもある。
【0011】
さらに、このような十分に確立された運転規範に従わない速度制御システムを、自動車の運転者が非直観的かつ許容できないものと感じてしまうことで、運転者が速度制御システムを解除し、または無効にしてしまうこともありうる。このように速度制御システムを解除または無効にすると、運転者は、速度制御システムの提案に従わないため、燃料効率が損なわれ、燃費が嵩むことになりかねない
【0012】
このように、先行技術において、加速挙動が、自動車の運転者自身および周囲の自動車の運転者によって、理解できる許容可能な運転挙動として見なされると同時に、燃料効率の良いものとなるように、自動車に加速挙動を提供する解決策が必要とされている。
【0013】
本発明の目的は、上述した問題を解決する燃料効率の良い加速挙動決定を提供することである。
【0014】
本発明は、自動車の運転者が直観的に感じられる制御式加速挙動を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、請求項1の特徴部分に記載の燃料効率の良い加速挙動を決定するための方法によって達成される。
【0016】
この目的はまた、請求項12の特徴部分に記載の自動車の自動速度制御方法によって達成される。
【0017】
この目的はまた、請求項13および14の特徴部分のそれぞれに記載された、コンピュータプログラムおよび本発明の方法を実装するコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品によって達成される。
【0018】
この目的はまた、請求項16の特徴部分に記載の燃料効率の良い加速挙動を決定する制御ユニットによって達成される。
【0019】
この目的はまた、請求項22の特徴部分に記載の自動車の自動速度制御システムによって達成される。
【0020】
本発明による燃料効率の良い加速挙動決定方法および制御ユニットは、加速が実行されている間の距離、すなわち、加速距離が、ある一定の長さ、すなわち、最大加速距離Saccに制限されることを特徴とする。この最大加速距離Saccは、少なくとも1つの道路条件および少なくとも1つの自動車特性に基づいて動的に決定される。
【0021】
本発明により加速距離を制限することによって、自動車の運転者が使用している加速が、平坦な道路での加速からのように感じられる加速挙動が達成される。このように、少なくとも1つの道路条件および少なくとも1つの自動車特性に基づいて、最大加速距離Saccを決定すると、自動車の運転者が直観的かつ標準的であると感じられる加速が達成される。
【0022】
本発明は、燃費を低下するためのさまざまな状況において、大型車両用に対して一般的に認識されているものを利用する。例えば、最大加速距離Saccは、本発明によれば、上り坂の場合や急カーブが多い道路区画の一部に対して、より長くなることが受け入れられえ、これは、一般に、周囲車両の運転者によって受け入れられるためである。一方で、本発明によれば、下り坂の場合、最大加速距離Saccは、このような状況での長い加速距離に対して、他の道路利用者による認識度が低いため短くなる。
【0023】
このようにして、加速挙動は、運転者自身と周囲車両の両方から受け入れられることになる。したがって、運転者や周囲車両にとって加速が非直観的なものであった場合に比べ、自動車が道路を走行している間に自動加速制御が作動される時間が長くなるため、燃費全体が削減される。
【0024】
また、加速挙動は、少なくとも1つの道路条件および/または自動車特性のそれぞれの変化に従って動的に調節されることで、燃費が非常に効率的に削減される。
【0025】
本発明の1つの実施形態によれば、エンジンの毎分回転数およびモーメントなどの自動車の特性が、最大加速距離Saccを決定する際に考慮される。これらの特性を考慮に入れることによって、自動車は、加速実行時に、運転者がこのような自動車の運転に慣れているものに従って応答するように感じられる。
【0026】
本発明の1つの実施形態によれば、自動車の運転者による少なくとも1つの入力も、最大加速距離Saccの決定に際し考慮される。これには、加速挙動が、燃料効率が良い状態のままシステムによって制御されると同時に、運転者が、自分が自動車を制御し、加速挙動を担っていると感じられる生理学的利点がある。
【0027】
以下、いくつかの好ましい実施形態を例示した添付の図面を参照しながら、本発明により決定された加速挙動の詳細な例示的な実施形態および利点について記載する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の方法を例示したフローチャートを示す。
【図2】自動車に及ぼす影響を有する力を示す。
【図3】本発明のシステムの一般化した図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
一般に、自動車の加速は、自動車が初速度を有する第1の位置から始まり、自動車が目標速度に達するまで続く。目標速度は、加速距離に対応する長さだけ第1の位置から離れた第2の位置で到達される。本発明によれば、適切な加速挙動は、第1および第2の位置が位置する所定の道路区画に対して決定される。
【0030】
適切な加速挙動の決定に際し、燃費の点から可能な限り効率良く加速挙動を達成するために考慮されうるパラメータが多数ある。特に、道路区画の道路条件は、この目的に合わせて使用されうる。
【0031】
例えば、このような道路条件の1つは、道路区画の少なくとも1つの部分の地形である。道路区画の平坦な部分の後に、道路区画の部分にある下り坂に近付く状況で、その間に加速が望まれる場合、平坦な部分の間は加速せず、加速実行時、下り坂で重力を利用すれば燃料効率が良くなりうる。このようにして、加速挙動の決定に際して所定の道路区画の地形を考慮に入れることで、燃料効率を高めることができる。また、同様に、他の道路条件も考慮されうる。
【0032】
しかしながら、この目的での道路条件の使用は、賢明に用いられる必要がある。一般に、車両の運転者は、許容可能な運転挙動であるとみなせるものと、そうでないものに対して、確固たる考えを持っている。また、運転者は、自分の運転挙動に対して、他の道路利用者からの反応、例えば、ライトの点滅などの反応を受ける。したがって、運転者の許容可能な加速挙動を達成することは重要である。
【0033】
図1は、本発明の方法を示す。本発明による方法の第1のステップにおいて、第2の位置および目標速度が決定される。第2の位置は、遅くとも目標速度に到達すべきである所定の道路区画内の場所である。第2の位置および目標速度は、本発明の1つの実施形態によれば、デジタルマップ情報によって提供される情報と組み合わせて、GPS測位に基づいて決定される。デジタルマップ情報は、速度制限の本質的に正確な場所、道路のカーブに関する情報などを含む。本発明の別の実施形態によれば、目標速度および第2の位置はまた、ある場所に到達するように運転者が望むある速度に依存して決定されうる。
【0034】
この方法の第2のステップにおいて、道路区画の第1の位置および初速度が決定され、初速度は、自動車が第1の位置にあるときの速度である。第1の位置は、本発明によれば、最大加速距離Saccに基づいて決定され、最大加速距離Saccは、道路区画の1つ以上の道路条件および自動車の1つ以上の特性に基づいて動的に決定される。このようにして、最大加速距離Saccは、道路条件および/または自動車特性の変化に伴い、経時的に変化する。自動車が第1の位置にあるときの速度である初速度は、本発明の1つの実施形態によれば、第2の位置の決定と同様に、多数の方法で決定されえ、例えば、GPS測位、地形、カーブ、速度制限などの情報に基づいて決定されうる。初速度はまた、ある位置にある自動車の実速度に基づいて決定されてもよく、実速度は、例えば、自動車搭載の速度計で測定される。これは、決定された第1の位置が、自動車が存在するある位置に近いか、または一致すれば、特に有益である。
【0035】
本発明による方法の第3のステップにおいて、道路区画に対して自動車によって使用される加速挙動が決定される。本発明によれば、加速挙動は、第1の位置および第1の位置で始動する初速度、第2の位置および第2の位置で遅くとも到達される目標速度に基づいて決定され、第1の位置と第2の位置との間の距離、すなわち、加速距離は、この方法の第2のステップにおいて決定される最大加速距離以下に制限され、さらに、加速挙動は、道路区画の少なくとも1つの道路条件に基づいて決定される。
【0036】
このようにして、本発明の方法によれば、加速が実行される間の距離、すなわち、加速距離は、ある長さ、すなわち、最大加速距離Saccに制限され、この最大加速距離Saccは、少なくとも1つの道路条件および少なくとも1つの自動車特性に基づいて、動的に決定される。これによって、最大加速距離Saccは、加速挙動が、直観的に許容可能であると運転者が感じられ、平坦な道路での加速に似たものとなるように適切に選択されうる。
【0037】
加速距離を適切な最大加速距離Saccに制限することによって、自動加速制御が存在しなければ、自動車の運転者が自分で実行していたであろう加速のように感じる加速挙動が達成される。このようにして、最大加速距離Saccが賢明に選択されると、本発明の方法から得られる加速は、自動車の運転者および他の道路利用者の両者が、標準的な運転挙動として受け止められ、したがって、自動車の運転者が、自動速度制御システムを解除し、または無効にしてしまう危険性が非常に低くなる。
【0038】
本発明によれば、加速距離内、すなわち、第1の位置と第2の位置との間で実行される加速の性質は、少なくとも1つの道路条件に基づいたものである。このようにして、この加速の属性、例えば、加速距離の間、どの程度積極的に加速すべきかなどの属性を決定する際に、道路区画の1つ以上の道路条件が考慮に入れられる。このようにして、加速距離のいくつかの部分において、加速距離の他の部分より、多くの燃料がエンジンに噴射されるように決定されうる。加速距離内での加速の性質の決定に際して地形などの道路条件を考慮に入れることによって、加速全体にわたって良好な燃料効率が達成される。加速の性質は、この燃料効率を達成するために、加速距離の異なる部分において異なるように決定されてもよい。
【0039】
このようにして、最大加速距離Saccを決定するため、および加速距離内で実際に実行される加速の属性/性質を決定するために、道路区画の1つ以上の道路条件が、加速挙動を決定する際に考慮に入れられる。このような道路条件に関する情報は、例えば、GPS、電子マップ、および/または、自動車に搭載のセンサなどによって提供されうる。本発明の1つの実施形態によれば、上述したように、このような道路条件は、道路区画の少なくとも1つの部分の地形に基づいた情報を含む。これにより、所定の道路区画の地形が、加速挙動の決定に際して考慮に入れられる場合、燃料効率を上げるために、加速の実行時に下り坂における重力を利用することが可能になる。
【0040】
本発明の1つの実施形態によれば、このような道路条件はまた、道路区画の少なくとも1つの部分に対して少なくとも1つの望ましい速度を含みうる。電子マップと組み合わせて、例えば、GPS、カメラシステム、交通標識認識システム、または速度標識からの情報によって、速度制限標識の場所や速度制御標識間の距離に関する非常に正確な情報が得られる。自動車が向かう先にある所定の道路区画を分析する場合、自動車の全体的な加速挙動の選択に際して、このような多数の異なる速度制限が考慮に入れられてもよい。これによって、全体的な燃料効率が高められうる。
【0041】
また、本発明の1つの実施形態によれば、加速挙動の決定に際し、前記道路区画の少なくとも1つの部分の直線性が考慮に入れられうる。例えば、周知のように、安全面の理由から、自動車が急カーブを通過するまで加速を遅延させることが有益な場合もある。道路区画の直線性に関する情報が、例えば、電子マップ、自動車に搭載のセンサなどによって提供されてもよい。
【0042】
本発明の実施形態による、加速挙動の決定に際して考慮に入れられてもよいさらなる道路条件は、道路区画の少なくとも1つの部分の交通状況、および道路区画の少なくとも1つの部分に存在する多数の他の車両である。これらの道路条件に関する情報は、自動車のすぐ前方やさらに離れた前方、および自動車の左右にいる車や他の車両などのターゲット情報を検出可能なレーダシステムによって提供されうる。また、道路条件に関する情報は、物体識別方法を利用したカメラシステムによって提供されえ、またはラジオデータシステム交通メッセージチャンネル(RDS−TMC:Radio Data System Traffic Message Channel)によって情報が提供されうる。
【0043】
上述したように、図1に記載の本発明の方法の第2のステップに関連して、最大加速距離Saccは、道路区画の少なくとも1つの道路条件および自動車の少なくとも1つの特性に基づいて決定される。少なくとも1つの道路条件は、加速挙動を決定するために使用されるものとして上述した道路条件群のうちの1つ以上の条件でありうる。このようにして、本発明の異なる実施形態によれば、道路区画の少なくとも1つの地形、道路区画の少なくとも1つの部分の少なくとも1つの所望の速度、道路区画の少なくとも1つの部分の直線性、道路区画の少なくとも1つの部分の交通状況、および道路区画の少なくとも1つの部分に存在する多数の他の車両に関する情報を含む道路条件群のうちの少なくとも1つの条件が、最大加速距離Saccの決定に際し使用される。この少なくとも1つの道路条件は、加速距離内で実行される加速の性質を決定する際に使用される少なくとも1つの道路条件と同一でありうるが、異なる道路条件であってもよい。このように、最大加速距離Saccおよび加速の性質の両方が、道路条件の同じ群から選択された少なくとも1つの道路条件に基づいて決定され、選択された1つ以上の道路条件は、同一または異なるもののいずれかでありうる。
【0044】
上述したように、最大加速距離Saccは、本発明によれば、自動車の少なくとも1つの特性に基づいて決定されてもよい。本発明の1つの実施形態によれば、自動車の特性は、運転中のエンジンのパラメータに関する情報を含む。これらのパラメータは、自動車のエンジンの毎分回転数(rpm)およびモーメントのいずれか一方または両方である。このようにして、自動車のエンジンの実際の作動状態が、最大加速距離の決定に際して考慮に入れられる。
【0045】
地形、所望の速度、直線性、交通状況、および存在する多数の他の車両などの道路条件だけでなく、エンジンのrpmおよびモーメントなどの自動車特性の両方に最大加速距離Saccを基づかせると、運転挙動は、他の道路利用者および運転者自身に十分に許容される。例えば、他の道路利用者は、一般に、重量のある大型自動車が、例えば、上り坂などでより長い加速距離が必要になることや、特定の道路区画にカーブが多数あれば、重量のある大型自動車があまり速く加速しないということを受け入れ理解している。本発明は、このような許容や理解を利用してその後、比較的長い距離に設定されるように最大加速距離Saccを動的に拡大する。
【0046】
一方で、例えば、下り坂や道路の直線部分があれば、他の道路利用者は、非常に長い加速距離に我慢できないであろう。したがって、例えば、下り坂および/または道路の直線部分では、最大加速距離Saccは、比較的短い距離に設定されることが好ましい。
【0047】
また、最大加速距離Saccの決定に際してエンジンのrpmおよびモーメントが考慮に入れられるため、自動車は、加速実行時、このような自動車の運転から運転者が慣れたものに従って応答するようにされうる。
【0048】
本発明の1つの実施形態によれば、少なくとも1つの自動車特性は、自動車に特有の1つ以上のパラメータを含む。これらのパラメータは、自動車の重量、エンジンがディーゼルかガソリンエンジンかなどのエンジン特性、自動車の空気抵抗、異なるトランスミッションが異なる特性を有する場合のモータエンジンによって使用されるトランスミッション、自動車に使用されるブレーキシステム、自動車の回転抵抗、自動車の全ギア比、自動車に作用する慣性力、および自動車に影響を及ぼすさまざまな摩擦力である。
【0049】
さらに詳細には、本発明の1つの実施形態によれば、図2に示すように、最大加速距離は、最適効率ηmax(G,δ)の状態、すなわち、エンジンが最大効率になる状態にエンジンの運転を保ちながら決定される。最適効率ηmax(G,δ)のこの状態は、電子制御ユニットにおいて決定され、最小燃費δおよび正確に選択されたギアGに基づいたものであり、ここで、燃費は、自動車の特定のエンジンと、運転中のエンジンのパラメータ、すなわち、エンジンの使用されるrpmおよびモーメントに依存し、選択されたギアGは、rpmに依存する。
【0050】
最適効率ηmax(G,δ)の状態で運転中のエンジンの場合、以下の式が、図2に示す一般的な状態にある自動車の力を表す。


式中、


は、ギア比i、i、効率η、η、ホイール半径r、およびエンジントルク測定値Meng(ηmax)に依存する正味エンジン力である。
brakeは、ブレーキシステムによって生じる力である。


は、車両速度v、一定の空気抵抗係数c、車両フロント部分A、および空気密度ρに依存する自動車の空気抵抗によって生じる力である。
roll(α)=Cmg cos(α)は、自動車の質量mによる回転抵抗cによって生じる力であり、ここで、αは、道路の傾斜である。
gravity(α)=mg sin(α)は、重力であり、ここで、αは、道路の傾斜である。
は、全動的車両質量であり、ここで、


であり、JおよびJは、それぞれ、エンジンおよびホイールの慣性を表す。
vは、自動車の速度である。
【0051】
式1に連鎖律が適用されれば、以下の式が導き出される。


式中、速度は、(時間に対してではなく)距離に対して表される。したがって、式2をさらに積分すれば、道路特性(傾斜αの形での地形)および自動車特性を考慮に入れながら、燃料効率の良い加速挙動を規定する加速距離の式が得られる。このようにして、最大加速距離Saccは、本発明の1つの実施形態によれば、以下の式により求められる。


式中、vinitialおよびvtargetは、それぞれ、道路区画の第1の位置および第2の位置のそれぞれにある自動車の初速度および目標速度である。
【0052】
式3により最大加速距離Saccを決定すると、燃料効率の良い運転挙動が得られる最大加速距離Saccが非常に正確に求められる。
【0053】
また、本発明の1つの実施形態によれば、自動車の運転者による少なくとも1つの入力が、最大加速距離Saccを決定する際に考慮される。本発明の1つの実施形態によれば、任意の最大加速距離Saccに対応し、運転者によって入力された値が考慮される。ここで、運転者は、道路区画の少なくとも一部分の最大加速距離Saccを自分自身の選択によって入力しうるが、これには、運転者が、自分が加速挙動を担っていると感じられるという利点がある。
【0054】
1つの実施形態によれば、予め規定された調節係数のセットにある1つの調節係数kに対応する値が、運転者によって選択されうる。この実施形態によれば、最大加速距離は、上述した方法により決定され、予備最大加速距離


であると見なされる。次に、最大加速距離を求めるために、選択された所定の調節係数kと、予備最大加速距離


とを掛け合わせる。このようにして、


に従って、最大加速距離Saccが求められる。
【0055】
典型的に、調節係数kのセットは、異なる運転タイプに対応する値を含むように選択されうる。例えば、このセットは、k=1(「通常の状態」または「エコノミー」に相当)、k=0.75(「セミスポーツ」または「ミディアム」に相当)、およびk=0.5(「スポーツ」に対応)である3つの値を含みうる。調節係数kの予め規定されたセットのうちの1つを選択することによって、運転者が最大加速距離を調節することができるようになると、システムの観点から、調節係数kのセットがシステムによって設定されているため、運転者の影響が制御可能であると同時に、運転者が加速挙動を制御可能であるという気持ちを持てるという利点がある。このようにして、運転者は、調整された制限内において加速挙動を調節するだけでよく、これにより、燃料効率が確実に高レベルに保たれる。
【0056】
本発明の1つの実施形態によれば、運転者は、速度変化に依存する最大加速距離Saccに対応する値を入力しうる。この場合、比較的大きな速度変化が実行されれば、例えば、自動車が幹線道路の加速レーンに入るときに、運転者は、このことをシステムに入力でき、この入力は、最大加速距離Saccを比較的短い距離に調節する。一方で、速度の変化が比較的小さければ、例えば、自動車が、速度制限が遅い村を出て、速度制限がわずかに速い田舎道に入るとき、最大加速距離Saccは、比較的長くなるようにされうる。村を出る場合、例えば、毎時50キロメートルから、例えば、毎時70キロメートルへの加速が、加速レーンでの、例えば、毎時50キロメートルから、例えば、毎時110キロメートルへの加速より比較的長い距離に及ぶことに他の道路利用者が耐えうることが示されているため、最大加速距離Saccがこのように調節されることは有益である。また、本発明の1つの実施形態によれば、速度変化に依存する最大加速距離Saccは、加速が起こる実際の場所に基づいて決定される。典型的には、GPS情報および電子マップからの情報は、より短いおよびより長い最大加速距離Saccが受け入れられうる場合を決定するために使用されうる。例えば、この情報は、自動車が幹線道路の加速レーンに入るか否かを決定するために使用されうる。
【0057】
運転者による入力が考慮されることを含むすべての実施形態において、最大加速距離Saccは、システムによって設定された制限内での調節しか許容されていないため、加速挙動は、交通安全の要求を満たし、運転者が自分ですべて加速挙動を決定しているときに比べて、燃料効率が著しく高まる。
【0058】
本発明によれば、適切な加速挙動は、ある長さを有する所定の道路区画に対して決定される。本発明の1つの実施形態によれば、この長さもまた調節されうる。この長さは、システムの性能、すなわち、システムの実際の燃料効率の程度に基づいて調節されうる。この長さはまた、本発明の方法によれば、計算および推算を行うのに利用可能なメモリおよび処理力に基づいて調節されうる。
【0059】
さらに、本発明の方法は、コンピュータでの実行時に本方法のステップをコンピュータに実行させるコード手段を有するコンピュータプログラムによって実装されうる。コンピュータプログラムは、コンピュータプログラム製品のコンピュータ可読媒体に含まれる。コンピュータ可読媒体は、本質的に任意のメモリからなるものであってもよく、例えば、ROM(読み出し専用メモリ)、PROM(プログラマブル読み出し専用メモリ)、EPROM(消去可能PROM)、フラッシュメモリ、EEPROM(電気的に消去可能なPROM)、またはハードディスクドライブなどであってもよい。
【0060】
図3は、所定の道路区画での自動車の燃料効率の良い加速挙動を決定する制御ユニット301を含む、自動車の自動速度制御用システム300を開示する。制御ユニット301は、測位システムユニット321から受信した測位情報と、マップ情報ユニット322から受信した電子マップ情報と、道路条件ユニット323から受信した少なくとも1つの道路条件に関する情報と、自動車特性ユニット324から受信した自動車の少なくとも1つの特性に関する情報と、自動車の運転者による入力を受信する入力ユニット325から受信した少なくとも1つの入力に関する情報とをそれぞれ受信する少なくとも受信手段311〜315を含む。
【0061】
制御ユニット301は、少なくとも、加速が始動する第1の位置を決定し、1つ以上の道路条件および少なくとも1つの自動車特性に基づいて、加速が実行される間の最大加速距離Saccを動的に決定し、および加速距離内での加速性質を決定する決定手段331をさらに含む。
【0062】
システム300の異なる構成も可能である。例えば、図3において、決定手段331が1つのユニットとして示されている。しかしながら、決定手段331は、少なくとも2つの別々の共働ユニットによって構成されてもよい。また、制御ユニット301は、電子制御ユニット(ECU)として実装されうる。受信手段311〜315に情報を提供するユニット321〜325だけでなく、受信手段311〜315も、制御ユニット301内または制御ユニット301に隣接して設置されてもよく、自動車の異なる場所に分散配置されてもよい。これらのユニット321〜325および受信手段311〜315の1つ以上が、自動車に分散配置される場合、コントローラ・エリア・ネットワークバス(CANバス)、または任意の他のタイプのバス、または無線接続など、制御ユニット301へ必要な情報を提供可能な任意の他の種類の接続を介して制御ユニット301に接続されてもよい。
【0063】
本発明の1つの実施形態によれば、決定手段331はまた、加速挙動に関する決定を、入力ユニット325から受信手段315を介して決定手段331によって受信される自動車の運転者による入力に基づかせる。入力ユニット325は、任意の入力値、すなわち、任意の最大加速距離Saccに対応する入力値が、運転者によって入力可能なようにされうる。入力ユニットはまた、運転者が、利用可能な入力値セットのうちの1つ、すなわち、所定の調節係数のセットにある1つの調節係数に対応する値であって、最大加速距離Saccを調節するために、最大加速距離Saccに乗じる値を選択できるようにされうる。
【0064】
加速挙動が、制御ユニット301によって決定されると、制御ユニット301は、自動車の速度変更デバイス302を制御することによって自動車の速度を制御する。速度変更デバイス302は、例えば、スロットル変更デバイス、または自動車の速度を変更可能な任意の他のデバイスでありうる。
【0065】
本発明による自動車の自動速度制御システム300は、上述した例示的な実施形態と比較して、当業者によって修正されてもよい。本質的に、システム300は、本発明の方法の実施形態のすべてを実装するために修正されてもよい。
【0066】
当業者に明らかなように、多数の他の実施、修正、変更および/または追加が、上述した例示的な実施形態になされうる。本発明は、特許請求の範囲内にあるこのようなすべての他の実施、修正、変更、および/または追加を含むことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−道路区画の第1の位置における自動車の決定された初速度と、
−前記第1の位置とは加速距離だけ離れた位置にある、前記道路区画の決定された第2の位置における前記自動車の決定された目標速度と、
に基づいて、前記所定の道路区画での前記自動車の燃料効率の良い加速挙動を決定するための方法であって、
前記加速距離が最大加速距離Sacc以下であるように前記第1の位置が決定され、前記最大加速距離Saccが、前記道路区画の少なくとも1つの第1の道路条件と、前記自動車の少なくとも1つの特性とに基づいて動的に決定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記加速距離内で実行される加速の性質が、前記道路区画の少なくとも1つの第2の道路条件に基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1の道路条件および前記少なくとも第2の道路条件の各々が、前記道路区画の少なくとも1つの部分の地形、前記道路区画の少なくとも1つの部分の少なくとも1つの所望の速度、前記道路区画の少なくとも1つの部分の直線性、前記道路区画の少なくとも1つの部分の交通事情、前記道路区画の少なくとも1つの部分に存在する前記自動車以外の車両数を含む群のうちの少なくとも1つの道路条件に関係する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記自動車の前記少なくとも1つの特性が、前記自動車のエンジンの毎分回転数(rpm)および/またはモーメントに関係する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記自動車の前記少なくとも1つの特性が、重量、エンジン特性、空気抵抗、トランスミッション、ブレーキシステム、回転抵抗、全ギア比、慣性力、さまざまな摩擦力を含む群のうちの自動車特有のパラメータまたは特徴の少なくとも1つに関係する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記最大加速距離Saccが、


により求められ、式中、
sum=Fengine(ηmax)−Fbrake−Fairdrag(v)−Froll(α)−Fgravigty(α)
であり、式中、
−Fengin(ηmax)は正味エンジン力であり、
−Fairdrag(v)は自動車の空気抵抗により生じた力であり、
−Froll(α)は回転抵抗により生じた力であり、
−Fgravity(α)は重力であり、
−αは、道路の傾斜であり、
−vinitialは、第1の位置にある自動車の初速度であり、
−vtargetは、第2の位置にある自動車の目標速度であり、
−mは全動的車両質量であり、
−vは自動車の速度である、
請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記最大加速距離Saccが、さらに、前記自動車の運転者による少なくとも1つの入力に基づいて決定される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記入力が、任意の最大加速距離Saccに対応する値、前記最大加速距離Saccに乗じる予め規定された調節係数のセットのうちの1つの調節係数に対応する値、速度変化に依存する最大加速距離Saccに対応する値を含む群のうちの任意の値に従って選択可能である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記速度変化に依存する最大加速距離Saccが、加速が実行される実際の場所に依存する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記所定の道路区画の長さが調節可能である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記自動車の運転者による前記加速挙動が平坦な道路での加速に似たものとして感じられるように、前記最大加速距離Saccが決定される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
自動車の自動速度制御方法であって、
初速度から目標速度への加速が実行されるとき、請求項1から11のいずれか一項に記載のように決定された加速挙動に基づいて、前記自動車の速度変更デバイスによって前記加速が実行されることを特徴とする方法。
【請求項13】
制御ユニットで実行されると請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を前記制御ユニットに実行させるコード手段を特徴とする、コンピュータプログラム。
【請求項14】
コンピュータ可読媒体と、請求項13に記載のコンピュータプログラムとを含み、前記コンピュータプログラムが前記コンピュータ可読媒体に含まれている、コンピュータプログラム製品。
【請求項15】
前記コンピュータ可読媒体が、ROM(読み出し専用メモリ)、PROM(プログラマブル読み出し専用メモリ)、EPROM(消去可能PROM)、フラッシュメモリ、EEPROM(電気的に消去可能なPROM)を含む群のうちの1つ以上からなることを特徴とする、請求項14に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項16】
所定の道路区画での自動車の燃料効率の良い加速挙動を決定する制御ユニットであって、
−前記道路区画の第1の位置における前記自動車の決定された初速度と、
−前記第1の位置とは加速距離だけ離れた位置にある、前記道路区画の決定された第2の位置における前記自動車の決定された目標速度と
に基づいて前記加速挙動を決定する決定手段を含んでおり、前記制御ユニットが、
−前記加速距離が最大加速距離Sacc以下であるように、前記第1の位置を決定する手段と、
−前記道路区画の少なくとも1つの第1の道路条件と、前記自動車の少なくとも1つの特性とに基づいて、前記最大加速距離Saccを動的に決定する手段と
を含むことを特徴とする、制御ユニット。
【請求項17】
前記制御ユニットが、前記道路区画の少なくとも1つの第2の道路条件に基づいて前記加速距離内において実行される加速の性質を決定する手段を含む、請求項16に記載の制御ユニット。
【請求項18】
前記最大加速距離Saccを動的に決定する前記手段が、
−測位情報と、
−電子マップ情報と、
−前記少なくとも1つの道路条件に関する情報と、
−前記自動車の前記少なくとも1つの特性に関する情報と
を受信する受信手段に少なくとも接続されている、請求項16または17に記載の制御ユニット。
【請求項19】
前記最大加速距離Saccを動的に決定する前記決定手段が、前記自動車の運転者から少なくとも1つの入力を受信する受信手段に接続されている、請求項16から18のいずれか一項に記載の制御ユニット。
【請求項20】
運転者から少なくとも1つの入力を受信する前記受信手段が、任意の最大加速距離Saccに対応する値、および前記最大加速距離Saccに乗じる予め規定された調節係数セットのうちの1つの調節係数に対応する値を含む群のうちの1種類の入力を受信する、請求項19に記載の制御ユニット。
【請求項21】
前記所定の道路区画の長さを調節する調節手段を含む、請求項16から20のいずれか一項に記載の制御ユニット。
【請求項22】
自動車の自動速度制御システムであって、
−請求項16から21のいずれか一項に記載の制御ユニットと、
−前記制御ユニットによって制御された前記自動車の速度変更デバイスと
を含むことを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−509804(P2012−509804A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537396(P2011−537396)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【国際出願番号】PCT/SE2009/051299
【国際公開番号】WO2010/062242
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(500190915)スカニア シーブイ アクチボラグ(パブル) (64)
【Fターム(参考)】