説明

加飾シート

【課題】薄型であってかつ三次元的な意匠を呈することができる加飾シートを提供する。
【解決手段】加飾シート11は、不透明反射シート2の上に透明樹脂シート3と印刷加飾層4とを備える。印刷加飾層4は、不透明反射シートと透明樹脂シートとの界面2a上に、認識容易な影を形成可能な第1影形成部21と認識困難な影を形成可能な第2影形成部22とを有し、両影形成部と不透明反射シートとは同系色であり、両影形成部は、透明樹脂層内で不透明反射シートと透明樹脂シートとの界面と平行な1つの平面上に配置され、交差する部分において、第1影形成部に対して第2影形成部が途切れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機器(各種携帯機器、パーソナルコンピュータ、家電製品など)又は設備又は自動車の内装品などの表面に配置され、薄肉であるにもかかわらず、厚さ以上の奥行き感を感じさせることができる加飾シートに関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器などにおいて、高機能化の開発競争が激しさを増す一方で、その外面の意匠についても差別化を図るべく開発が行なわれるようになってきており、従来に無い画期的な意匠が求められるようになってきている。
【0003】
そこで、三次元的な意匠を考えた場合、従来は、多数の加飾層を厚み方向の位置を異ならせて、三次元的な意匠を形成するようにしている。
【0004】
例えば、図9に示す化粧板シートのように、背景色となる着色された樹脂層80の上に、手前側から底部側に向けて、第1加飾層81と、第1加飾層81の内側に第2加飾層82と、第2加飾層82の内側に第3加飾層83と、第3加飾層83の内側に第4加飾層84とを配置したのち、樹脂層80上に、第1加飾層81と第2加飾層82と第3加飾層83と第4加飾層84とを覆うように透明樹脂層85を形成したものが考えられる。このようなものでは、透明樹脂層85内の最も底部の樹脂層80の上に、第1加飾層81と第2加飾層82と第3加飾層83と第4加飾層84とが手前側から底部側に向けて順に配置されているように見える。
【0005】
また、図10に示すように、成形樹脂層91の表面に第1加飾層92が配置され、裏面に第2加飾層93が配置された射出成形同時加飾品90がある。この射出成形同時加飾品90でも、成形樹脂層91内で手前側と底部側とに加飾層の位置を異ならせて配置して、立体的に見せるようにしたものがある(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−103993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記構造のものでは、樹脂層80上での、第1加飾層81と第2加飾層82と第3加飾層83と第4加飾層84とのそれぞれの厚さ方向の位置を異ならせるものであり、樹脂層80の厚さTと、第1加飾層81の厚さTと、第2加飾層82の厚さTと、第3加飾層83の厚さTと、第4加飾層84の厚さTとの合計の厚さ寸法T(=T+T+T+T+T)とを必ず必要とするものである。さらに、見た目上、それぞれの加飾層間で奥行き感が感じられる程度まで位置を調節する必要があり、各加飾層の厚さが薄い場合には、厚さ以上に距離を離す必要が生じ、必然的に、全体として厚肉なものとなり、薄型化の要請に全く応えられないものであった。
【0008】
従って、本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、薄型であってかつ三次元的な意匠を呈することができる加飾シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0010】
本発明の第1態様によれば、ベースシートと、
前記ベースシート上に配置されかつ印刷加飾層を有する接着層と、
前記接着層上に配置された透明樹脂シートと、
前記透明樹脂シート上に配置された不透明反射シートとを備え、
前記印刷加飾層は、光遮蔽材料で構成されて前記接着層に部分的に配置され、認識容易な影を前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの界面上に形成可能な第1影形成部とを有するとともに、
前記第1影形成部と前記不透明反射シートとは同系色であり、
前記第1影形成部は、前記透明樹脂シート上の上記接着層内でかつ前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面と平行な1つの平面上に配置される、加飾シートを提供する。
【0011】
本発明の第2態様によれば、前記印刷加飾層は、さらに、
光透過材料で構成されて前記透明樹脂シート上に部分的に配置され、前記透明樹脂シートを透過する光により前記第1影形成部で形成される影よりも認識困難な影を前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に形成可能な第2影形成部を有するとともに、
前記第1影形成部と前記第2影形成部と前記不透明反射シートとは同系色であり、
前記第1影形成部と前記第2影形成部とは、前記透明樹脂シート内で前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面と平行な1つの平面上に配置されるとともに、
前記第1影形成部と前記第2影形成部とが交差する部分において、前記第1影形成部に対して前記第2影形成部が途切れるように配置している、第1の態様に記載の加飾シートを提供する。
【0012】
本発明の第3態様によれば、前記第1影形成部と前記第2影形成部と前記不透明反射シートとは同系色であり、
前記第1影形成部と前記第2影形成部とは、前記透明樹脂シート内で前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面と平行な1つの平面上に配置されるとともに、
前記第1影形成部と前記第2影形成部とが交差する部分において、前記第1影形成部に対して前記第2影形成部が途切れるように配置している構成により、前記第1影形成部が前記第2影形成部よりも前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面に対して、前記第1影形成部が前記第2影形成部が浮き出て見える、第2の態様に記載の加飾シートを提供する。
【0013】
本発明の第4態様によれば、前記第1影形成部と前記第2影形成部と前記不透明反射シートとは白色の同系色であり、前記不透明反射シートは白色の不透明反射シートである、第2又は3の態様に記載の加飾シートを提供する。
【0014】
本発明の第5態様によれば、前記透明樹脂シートは、前記不透明反射シートの意匠部形成領域の全面に配置され、
前記透明樹脂シート内で前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面と平行な前記透明樹脂シートの外面上に、前記印刷加飾層の前記第1影形成部と前記第2影形成部とが配置されている第2〜4のいずれか1つの態様に記載の加飾シートを提供する。
【0015】
本発明の第6態様によれば、前記第1影形成部は、白色加飾層と、グレー色加飾層とを有するとともに、前記第2影形成部は、乳白色加飾層とを有し、
前記白色加飾層は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、白色インキにより構成して光遮蔽機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に認識容易な影を形成して、最も手前側に位置するように見える層であり、
前記グレー色加飾層は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、グレー色のインキにより構成して光遮蔽機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上にやや認識容易な影を形成して、二番目に手前側に位置するように見える層であり、
前記乳白色加飾層は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、光透過材料で構成された乳白色の層であり、光透過機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に最も認識しにくい影を形成して、最も奥側に位置するように見える層である、第2〜5のいずれか1つの態様に記載の加飾シートを提供する。
【0016】
本発明の第7態様によれば、前記第1影形成部は、白色隠蔽層付きのパール加飾層と、グレー色加飾層とを有するとともに、前記第2影形成部は、薄パール加飾層とを有し、
前記白色隠蔽層付きのパール加飾層は、パール層の底部に白色隠蔽層を有し、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に最も認識容易な影を形成して、最も手前側に位置するように見え、
前記グレー色加飾層は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、グレー色のインキにより構成して光遮蔽機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上にやや認識容易な影を形成して、二番目に手前側に位置するように見える層であり、
前記薄パール加飾層は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、光透過材料で構成された薄いパール色の層であり、光透過機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に認識しにくい影を形成して、最も奥側に位置するように見える層である、第2〜5のいずれか1つの態様に記載の加飾シートを提供する。
【0017】
本発明の第8態様によれば、前記第1影形成部は、白色隠蔽層付きのパール加飾層と、白色加飾層と、グレー色加飾層とを有するとともに、前記第2影形成部は、薄パール加飾層と、乳白色加飾層とを有し、
前記白色隠蔽層付きのパール加飾層は、パール層の底部に白色隠蔽層を有し、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に最も認識容易な影を形成して、最も手前側に位置するように見え、
前記白色加飾層は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、白色インキにより構成して光遮蔽機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に認識容易な影を形成して、二番目に手前側に位置するように見える層であり、
前記グレー色加飾層は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、グレー色のインキにより構成して光遮蔽機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上にやや認識容易な影を形成して、三番目に手前側に位置するように見える層であり、
前記薄パール加飾層は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、光透過材料で構成された薄いパール色の層であり、光透過機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に認識しにくい影を形成して、より奥側に位置するように見える層であり、
前記乳白色加飾層は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、光透過材料で構成された乳白色の層であり、光透過機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に最も認識しにくい影を形成して、最も奥側に位置するように見える層である、第2〜5のいずれか1つの態様に記載の加飾シートを提供する。
【0018】
本発明の第9態様によれば、第1〜8のいずれか1つの態様に記載の加飾シートが樹脂部の表面に固定された加飾品を提供する。
【0019】
本発明の第10態様によれば、前記樹脂部の前記表面は凸形状をなすように湾曲して、前記加飾シートも凸形状をなすように湾曲している、第9の態様に記載の加飾品を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、前記第1影形成部と前記不透明反射シートとを同系色とするように配置している。この結果、第1影形成部が前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面に対して浮き出て見えるため、前記界面と第1影形成部との間の距離はあまり無いにもかかわらず、人の目に錯覚が生じて、前記界面に対して前記距離以上に第1影形成部が前記界面から大きく浮き出て見えて、第1影形成部の厚さ又は透明樹脂シートの厚さ以上に奥行き感が感じられて、薄型であってかつ三次元的な意匠を呈することができる。
【0021】
また、本発明によれば、前記第1影形成部と前記第2影形成部と前記不透明反射シートとを同系色とすることにより、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上にそれぞれ形成される前記第1影形成部の影と前記第2影形成部の影とを同様な色とした上で、第1影形成部で形成される影よりも認識困難な影を第2影形成部で形成し、かつ、前記第1影形成部に対して前記第2影形成部が途切れるように配置している。この結果、第2影形成部の影よりも認識容易な影を形成する第1影形成部が第2影形成部よりも不透明反射シートに対して浮き出て見え、かつ、前記第1影形成部に対して前記第2影形成部が途切れるように配置しているため、あたかも前記第1影形成部の下側を前記第2影形成部がくぐっているかのように見える。よって、全体として、前記第1影形成部と前記第2影形成部とを同一面上に配置しているにもかかわらず、前記第1影形成部が前記第2影形成部よりも前記不透明反射シートに対して浮き出て見え、奥行き感のある意匠を醸し出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる加飾シートが成形樹脂部に貼り合わされた加飾品の平面図である。
【図2A】貼り合わせ前の図1の前記加飾シート自体の断面図である。
【図2B】図2Aの前記加飾シートが前記成形樹脂部に貼り合わされた加飾品のA−A線の断面図である。
【図2C】図1の前記加飾シートが前記成形樹脂部に貼り合わされた加飾品において、目の錯覚で、実際に見た人が感じる、A−A線の仮想断面構造の図である。
【図3A】本発明の第2実施形態にかかる加飾シートが成形樹脂部に貼り合わされた加飾品の平面図である。
【図3B】図3Aの前記加飾シートが前記成形樹脂部に貼り合わされた加飾品のA−A線の断面図である。
【図3C】貼り合わせ前の前記加飾シート自体の断面図である。
【図3D】図3Aの前記加飾シートが前記成形樹脂部に貼り合わされた加飾品において、目の錯覚で、実際に見た人が感じる、A−A線の仮想断面構造の図である。
【図4】本発明の第3実施形態にかかる加飾シートが成形樹脂部に貼り合わされた加飾品の平面図である。
【図5A】図4の前記加飾シートが前記成形樹脂部に貼り合わされた加飾品のA−A線の断面図である。
【図5B】図4の前記加飾シートが前記成形樹脂部に貼り合わされた加飾品のB−B線の断面図である。
【図6】図4の前記加飾シートが前記成形樹脂部に貼り合わされた加飾品において、目の錯覚で、実際に見た人が感じる、A−A線の仮想断面構造の図である。
【図7】貼り合わせ前の前記加飾シート自体の断面図である。
【図8A】前記加飾シートを使用して加飾品を形成する工程説明する図である。
【図8B】前記加飾シートを使用して加飾品を形成する工程説明する図である。
【図8C】前記加飾シートを使用して加飾品を形成する工程説明する図である。
【図8D】前記加飾シートを使用して加飾品を形成する工程説明する図である。
【図8E】前記加飾シートを使用して加飾品を形成する工程説明する図である。
【図8F】前記加飾シートを使用して加飾品を形成する工程説明する図である。
【図8G】湾曲した成形樹脂部に前記加飾シート貼り合わした後の加飾品の断面図である。
【図9】従来の化粧板シートの断面図である。
【図10】従来の射出成形同時加飾品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
【0024】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態にかかる加飾シート11は、図2Aに示すように、ベースシート(表面保護層)6上に印刷などにより積層配置された印刷加飾層4を有しかつ光透過材料で構成された接着層5と、ベースシート(表面保護層)6と接着層5を介して接着される透明樹脂シート3と、透明樹脂シート3上に積層配置された不透明反射シート2とを積層して構成されている。
【0025】
このような加飾シート11は、公知の貼り合わせ工程により、不透明反射シート2が成形樹脂部7の表面に一体的に接着固定されることにより貼り合わされ、図2Bに示すように、ベースシート6が最外層となって加飾シート11が成形樹脂部7の表面に固定された加飾品1を形成することができる。
【0026】
このようにして形成される加飾品1は、図1及び図2Bに示すように、最外面としてのベースシート6と、ベースシート6上に配置された印刷加飾層4と、ベースシート6上に配置されかつ印刷加飾層4を囲むように配置された接着層5と、接着層5上に配置された透明樹脂シート3と、透明樹脂シート3上に配置された不透明反射シート2と、不透明反射シート2と接着層又は射出成形時の溶着により固定された成形樹脂部7とを少なくとも備えて構成されている。
【0027】
加飾品1の最外面にベースシート6が配置されるので、ベースシート6は表面保護層としての機能を有しているが、場合によってはハードコート層としての機能も備えてもよく、その場合にはハードコート層6と称することもできる。ベースシート6は、透明樹脂シート3及び印刷加飾層4を保護するためのものであり、アクリルフィルムなどで構成される。ベースシート6の他の材料としては、アクリル、ポリカーボネート、ABS、ポリスチレン、ポリウレタン、ナイロン、エチレンビニルアルコールなどの単層、若しくは2層以上からなるフィルムが好ましい。
【0028】
ベースシート6の厚さとしては、50μm〜300μmが好ましい。ベースシート6の厚さが50μm未満であると、アクリルなどの材料では薄すぎて、製造が困難になる。ベースシート6の厚さが300μmを越えると、予備成形時に金型の内面に良好に沿わせることが困難になるため、好ましくない。
【0029】
接着層5は、ベースシート6と透明樹脂シート3とを接着しかつ印刷加飾層4を有するものであって、光透過材料の塩酢ビ系(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂系)などで構成される。接着層5の他の材料としては、光透過性を有し、かつ、ウレタン樹脂、アクリルケトン樹脂、アクリルビニル樹脂、アクリル樹脂、若しくは、これらの材料のうちの2種以上からなる混合物が好ましい。
【0030】
透明樹脂シート3は、不透明反射シート2の表面2a上に接着などにより固定されている。接着層5内で、かつ、不透明反射シート2の表面2aと平行な、ある1つの平面(例えば、接着層5の外面5b又はベースシート6の内面)沿いに形成された印刷加飾層4の各加飾層が、透明樹脂シート3を透過して、不透明反射シート2の表面2a(不透明反射シート2と透明樹脂シート3との界面)上にそれぞれの影が形成できるようにしている。透明樹脂シート3は、不透明反射シート2の意匠部形成領域の全面に配置されるのが好ましい。この意匠部形成領域に、印刷加飾層4が形成される。透明樹脂シート3の一例としての透明樹脂としては、ABS、MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、又は、ポリカーボネート(PC)などが挙げられる。透明樹脂シート3は一枚のシートで構成してもよいし、複数枚のシートで構成してもよい。複数枚のシートで構成する場合には、その間に空気層が介在して界面が目立つことがないようにするため、互いに熱溶着などで密着させるとともに同じ材料とする必要がある。
【0031】
透明樹脂シート3の厚さとしては、0.1mm〜5mmが好ましい。透明樹脂シート3の厚さが0.1mm未満であると、影が明確に形成しにくくなり、立体感(奥行き感)を出しにくい。透明樹脂シート3の厚さが5mmを越えると、予備成形時に金型の内面に良好に沿わせることが困難になるため、好ましくない。透明樹脂シート3の透過率としては、後述するように不透明反射シート2と透明樹脂シート3との界面2a上の印刷加飾層4の影が明瞭に見えるように、80%以上であることが好ましい。
【0032】
不透明反射シート2は、光を透過せず反射することにより、不透明反射シート2及び透明樹脂シート3よりも外側に配置される接着層5内の各印刷加飾層4の各加飾層の影を、不透明反射シート2の表面2a(不透明反射シート2と透明樹脂シート3との界面)上に確実に形成可能とするものである。また、不透明反射シート2の色は各加飾層の色と同化しないようにすることにより、立体感を損なわないようにするのが好ましい。不透明反射シート2は、熱可塑性樹脂より構成して、成形樹脂部7と接着可能であることが好ましい。不透明反射シート2の一例としての樹脂としては、不透明な、ABS、又は、PC−ABS樹脂などが挙げられる。
【0033】
前記印刷加飾層4は、第1影形成部21を少なくとも有しており、第1影形成部21が複数存在する場合には、不透明反射シート2の表面2aに対して複数の第1影形成部21が互いに同一の距離に位置するように、不透明反射シート2の表面2aに平行な接着層5内の同一面上(例えば、ベースシート6の内面上)に第1影形成部21が形成されている。
【0034】
第1影形成部21は、光遮蔽材料で構成され、前記接着層5の外面5b上に部分的に配置され、認識容易な影21sを前記不透明反射シート2の表面2a上に形成可能な層である。すなわち、第1影形成部21が光遮蔽材料で構成されているため、光が第1影形成部21を透過せず、光により第1影形成部21の影21sを前記不透明反射シート2の表面2a上に、はっきりと、濃い影として形成することができる。
【0035】
簡単に言えば、第1影形成部21は、不透明反射シート2の表面2aに濃い影21sを形成するものであり、第1影形成部21は濃い影形成部として機能する。
【0036】
濃い影21sを形成するためには、加飾層での隠蔽性を高くすればよい。この第1実施形態では、加飾層と加飾層で形成する影との同化を防ぐため、加飾層の明度としては、ある程度高くすることが好ましい。つまり、明度が高くかつ隠蔽のできるインキを加飾層に使用する場合、その加飾層の影を、よりはっきりと認識することができて、立体感を感じさせることができ、好ましい。
【0037】
一例として、第1影形成部21の透過率は40%以下であるのが好ましい。
【0038】
また、一例として、第1影形成部21としては、白度が高く、面積の大きな色柄が好ましい。ここで言う「白度が高く」とは、第1影形成部21を浮いたように見えるようにするため、第1影形成部21は、不透明反射シート2の白色と可能な限り近い白色でかつ明度が高い(明度がおおよそ85%〜90%以上である)という意味である。また、「面積の大きな色柄」とは、第1影形成部21の柄面積が小さすぎると、柄の周辺から漏れてくる光の影響で第1影形成部21の影が効果的に形成されなくなる。このため、第1影形成部21としては、少なくとも1mm以上の柄面積であることが好ましい。
【0039】
また、前記第1影形成部21と前記不透明反射シート2とは同系色であるのが好ましい。背景の樹脂(不透明反射シート2)の色と、前記第1影形成部21の色とが近しい色のほうが、立体感を感じやすいためである。例えば、前記第1影形成部21と不透明反射シート2とを白色系統(例えば、濃い白、乳白色、濃いグレー、薄いグレー、パール色、薄いパール色など)とするのが好ましい。一例として、第1影形成部21と不透明反射シート2とを白色系統とする場合、前記不透明反射シート2と第1影形成部21とはそれぞれ白色の加飾層とグレーの加飾層とするか、パール色の層と薄いパール色の層とすることができる。もちろん、本発明は白色系統に限定されるものではなく、例えば、白に近い色、黄色、薄いピンク色、水色などの系統でも可能であるし、漆黒ほど黒くは無くかつ影を認識できる程度の黒色でも可能である。
【0040】
特に、不透明反射シート2と第1影形成部21とは、可能な限り近い色でかつ明度が高いほうが望ましい。その理由は、第1影形成部21により不透明反射シート2上に影を形成するとき、よりはっきりと、影を認識できるためである。
【0041】
前記した加飾シート11を製造する場合、例えば、透明樹脂シート3の上面に蒸着又は印刷又は転写などにより印刷加飾層4を部分的に形成したのち、透明樹脂シート3の上面の例えば全面に接着層5及びベースシート6をそれぞれ順次形成する一方、透明樹脂シート3の下面の例えば全面に不透明反射シート2を加熱圧着などにより積層形成すればよい。又は、このような方法に代えて、ベースシート6の上面に蒸着又は印刷又は転写などにより印刷加飾層4を部分的に形成したのち、ベースシート6の上面の例えば全面に接着層5を介して透明樹脂シート3に接着する一方、透明樹脂シート3の他方の面の例えば全面に不透明反射シート2を加熱圧着などにより積層形成すればよい。又は、印刷加飾層4と接着層5とベースシート6とを転写層として基体シート上に予め印刷形成したのち、前記転写層を透明樹脂シート3に転写し、基体シートを剥がすことにより、前記した加飾シート11を製造することもできる。この場合、ベースシート6をハードコートとすると、表面の耐擦傷性を向上させることができる。
【0042】
このように製造された加飾シート11を、以下の射出成形金型などを使用する射出成形工程で加飾品1に一体的に固定される。
【0043】
まず、プレフォーミング用金型71の凹部71a上の所定位置に加飾シート11を配置して仮固定し、ヒーター70で加飾シート11を加熱して軟化させる(図8A参照)。
【0044】
次いで、真空成形又は圧空成形により、加飾シート11を、所望の立体的な製品形状すなわちプレフォーミング用金型71の凹部71aの形状に沿うようにプレフォーミングする(図8B参照)。
【0045】
次いで、加飾シート11Xの不要部分をトリミングして除去する(図8C参照)。
【0046】
次いで、プレフォーミングしかつトリミング済みの加飾シート11Xを保持部材73で保持して、キャビティ72aを有する射出成形金型72へ挿入する(図8D参照)。
【0047】
次いで、射出成形金型72の型閉じ後、樹脂74をキャビティ72aに充填して、樹脂74により成形される成形樹脂部7と加飾シート11Xの不透明反射シート2とが一体的な接着されるようにして、加飾品1を形成する(図8E参照)。
【0048】
次いで、取り出しロボット又は保持部材73で射出成形金型72のキャビティ72aから加飾品1を取り出す(図8F参照)。
【0049】
本第1実施形態によれば、前記したような加飾シート1の構成とすることにより、第1影形成部21と不透明反射シート2とが同系色であるため、全体として落ち着いた感じが感じられ、色の差よりも、同系色間での濃淡の差、言い換えれば、立体感に注意が注がれやすくなり(影の差違が目立ちやすくなり)、立体感をより感じやすくなる。よって、実際には、前記不透明反射シート2の表面2aに対する前記第1影形成部21の厚さ方向の位置の寸法差はあまり無いにもかかわらず、人の目に錯覚が生じて、前記不透明反射シート2の表面2aに対して、前記寸法差以上に第1影形成部21が大きく浮き出て見える。この結果、全体として薄肉であるにもかかわらず、立体的な意匠を醸し出すことが可能となる。
【0050】
加飾シート1の全体の厚みとしては、一例として、0.2mm〜5mmが好ましい。加飾シート1の全体の厚みが0.2mmより薄い場合には、薄すぎて加飾シート1を取り扱いにくくなる一方、加飾シート1の全体の厚みが5mmより大きい場合には、射出成形前にプレフォーミングしにくくなり、好ましくないためである。より好ましくは、0.4mm〜0.8mmが好ましい。加飾シート1の全体の厚みが0.4mmより大きければ、加飾シート1が取り扱いやすいとともに、加飾シート1の全体の厚みが0.8mmより小さい場合には、射出成形前にプレフォーミングしやすいためである。
【0051】
なお、図2Cは、実際の構造である図2Bとは異なり、人の目で見た感覚を基に、人が認識する断面構造を仮想的に記載したものである。この図2Cのように、第1影形成部21と不透明反射シート2とが同系色であることにより、前記不透明反射シート2の表面2aに対する前記第1影形成部21の厚さ方向の位置の寸法差(不透明反射シート2の表面2aと前記第1影形成部21との間の距離)はあまり無いにもかかわらず、人の目に錯覚が生じて、前記不透明反射シート2の表面2aに対して、前記寸法差以上に第1影形成部21が大きく浮き出て見えて、第1影形成部21の厚さ又は透明樹脂シート3の厚さ以上に奥行き感が感じられて、薄型であってかつ三次元的な意匠を呈することができる。
【0052】
特に、従来のように、前記不透明反射シート2の表面2aに対する第1影形成部21の厚さ方向の位置を大きくして立体感を醸し出そうとする場合と比較して、全体の厚さを大幅に小さくすることができ、薄肉でかつ立体感あふれる意匠を形成することができる。
【0053】
また、従来のように、エンボス加工又はその他の三次元的な加工をすることなく、薄肉でかつ立体感あふれる意匠を形成することができ、工数削減及びコスト低減に寄与することができる。また、エンボス加工又はその他の三次元的な加工を行っても、射出成形前のプレフォーミング段階での真空成形時などにおける加熱延伸時に、立体感を消失することがあったが、本発明においては、加熱延伸しても立体感を消失することが少なく、柚子肌などの外観表面に問題が発生することもなく、加工性に優れた加飾シート11を得ることができる。
【0054】
1つの具体例としては、ベースシート(表面保護層)6は厚さ50μm〜300μmのアクリルフィルム、このアクリルフィルムに印刷形成された第1影形成部21は厚さ1μmのアクリル系インク層、接着層は厚さ3μm〜30μmの塩酢ビ系(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂系)、透明樹脂シート3は厚さ0.1mm〜5mmのABSフィルム又はMBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)フィルム、不透明反射シート2は厚さ0.1mm〜5mmである。さらに、加飾シート11の全体の厚さは約0.2mm〜5mmの範囲内に収まるようにする。
【0055】
このように前記第1実施形態においては、影の濃淡と同系色との組み合わせに関して、第1影形成部21の加飾層と加飾層で形成される影との同化を防ぐため、加飾層としては、なるべく明度が高い(明度がおおよそ85%〜90%以上の)色で形成するのがよい。
【0056】
さらに、加飾層が複数存在し、かつ同色の加飾層以外にも、互いに色が異なる加飾層が存在するように構成する場合には、加飾層同士において、同色の柄がなるべく1箇所に固まらず、他の色の柄と複雑に重なり合っているほうが好ましい。このように配置することにより、それらの加飾層同士において、立体感をより明確に感じやすくすることができる。
【0057】
また、従来、風景画では、遠近感を出すため、手前の対象物の彩度を高く描き、奥の対象物の彩度を下げ、明度を高く描くという手法があった。これに対して、前記第1実施形態では、そのような手法によるのではなく、加飾層自体の明度と、加飾層により不透明反射シート2に形成される影とを有機的に利用し、視覚的に立体感を感じやすくして、加飾層の厚さ以上の立体感を感じやすくしたものである。
【0058】
また、前記第1実施形態によれば、前記第1影形成部21と前記不透明反射シート2とは同系色とすることにより、前記第1影形成部21と前記不透明反射シート2との濃淡の差に注目しやすくした状態で、目の錯覚を利用して、不透明反射シート2の表面2a上に前記第1影形成部21により、認識しやすい濃い影21sを形成して不透明反射シート2の表面2aから浮き出た位置に配置されているように見せることができる。
【0059】
よって、前記不透明反射シート2の表面2aに対する前記第1影形成部21の厚さ方向の位置の寸法差はあまり無いにもかかわらず、人の目に錯覚が生じて、前記不透明反射シート2の表面2aに対して、前記寸法差以上に第1影形成部21が大きく浮き出て見えて、第1影形成部21の厚さ以上に奥行き感が感じられて、薄型であってかつ三次元的な意匠を呈することができる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態にかかる加飾シートとして、前記第1実施形態の構成とは異なり、図3A〜図3Cに示すように、前記印刷加飾層4は、第1影形成部21と第2影形成部22とを少なくとも有しており、不透明反射シート2の表面2a(不透明反射シート2と透明樹脂シート3との界面)に対して同一の距離に位置するように、不透明反射シート2の表面2aに平行な接着層5内の同一面5b上に第1影形成部21と第2影形成部22とが形成されていてもよい。
【0061】
第1影形成部21は、光遮蔽材料で構成され、前記接着層5の外面5b上に部分的に配置され、認識容易な影21sを前記不透明反射シート2の表面2a上に形成可能な層である。すなわち、第1影形成部21が光遮蔽材料で構成されているため、光が第1影形成部21を透過せず、光により第1影形成部21の影21sを前記不透明反射シート2の表面2a上に、はっきりと、濃い影として形成することができる。
【0062】
第2影形成部22は、光透過材料で構成され、前記接着層5の外面5b上に部分的に配置され、前記透明樹脂シート3を透過する光により前記第1影形成部21で形成される影21sよりも認識困難な影22sを前記不透明反射シート2の表面2a上に形成可能な層である。すなわち、第2影形成部22が光透過材料で構成されているため、光が第2影形成部22を透過し、光により第2影形成部22の影22sを前記不透明反射シート2の表面2a上に、ぼんやりとした、明瞭でない、薄い影として形成することができる。
【0063】
簡単に言えば、第1影形成部21は、不透明反射シート2の表面2aに濃い影21sを形成する一方、第2影形成部22は、不透明反射シート2の表面2aに薄い影22sを形成するものであるため、第1影形成部21は濃い影形成部として機能し、第2影形成部22は薄い影形成部として機能する。
【0064】
濃い影21sを形成するためには、加飾層での隠蔽性を高くすればよい一方、逆に、薄い影22sを形成するためには、隠蔽性を低くすればよい。この第2実施形態では、加飾層と加飾層で形成する影との同化を防ぐため、加飾層の明度としては、ある程度高くすることが好ましい。つまり、明度が高くかつ隠蔽のできるインキを加飾層に使用する場合、その加飾層の影を、よりはっきりと認識することができる。また、濃い影と薄い影はなるべく接近させるか、若しくは、接していたほうが、両者の差異を明確に認識できて、立体感を感じさせることができて、好ましい。
【0065】
また、一例として、第1影形成部21の透過率が40%以下であるとき、第2影形成部22の透過率が50%以上であるのが好ましい。言い換えれば、第1影形成部21と第2影形成部22との光透過率の差としては、少なくとも10%以上あれば、第1影形成部21と第2影形成部22との差を明確に認識することができて、好ましい。
【0066】
また、印刷加飾層4と不透明反射シート2とは同系色とし、かつ、印刷加飾層4の前記第1影形成部21と前記第2影形成部22と同士も同系色である。すなわち、前記第1影形成部21と前記第2影形成部22と前記不透明反射シート2とは同系色である。背景の樹脂(不透明反射シート2)の色と、印刷加飾層4の色とが近しい色のほうが、立体感を感じやすいためである。例えば、印刷加飾層4と不透明反射シート2とを白色系統(例えば、濃い白、乳白色、濃いグレー、薄いグレー、パール色、薄いパール色など)とするのが好ましい。一例として、印刷加飾層4と不透明反射シート2とを白色系統とする場合、前記第1影形成部21と前記第2影形成部22とはそれぞれ白色の加飾層とグレーの加飾層とするか、パール色の層と薄いパール色の層とすることができる。もちろん、本発明は白色系統に限定されるものではなく、例えば、白に近い色、黄色、薄いピンク色、水色などの系統でも可能であるし、漆黒ほど黒くは無くかつ影を認識できる程度の黒色でも可能である。
【0067】
不透明反射シート2と第1影形成部21とは、可能な限り近い色でかつ明度が高いほうが望ましい。その理由は、第1影形成部21により不透明反射シート2上に影を形成するとき、よりはっきりと、影を認識できるためである。
【0068】
さらに、前記第1影形成部21と前記第2影形成部22とが意匠的に重なる部分(例えば、第1影形成部21の線状部分と前記第2影形成部22の線状部分とが交差する部分)(以下、単に「交差する部分」と称する。)29において、前記第1影形成部21の線状部分に対して前記第2影形成部22の線状部分が途切れるように配置して、あたかも、前記第1影形成部21の線状部分の下側に前記第2影形成部22の線状部分が配置されてる(前記第1影形成部21の線状部分の下側を前記第2影形成部22の線状部分がくぐっている)かのように見せるように構成している(図3Dの29a参照)。
【0069】
前記したような構成とすることにより、印刷加飾層4と不透明反射シート2とが同系色であり、かつ、印刷加飾層4の前記第1影形成部21と前記第2影形成部22と同士も同系色であるため、全体として落ち着いた感じが感じられ、色の差よりも、同系色間での濃淡の差、言い換えれば、立体感に注意が注がれやすくなり(影の差違が目立ちやすくなり)、立体感をより感じやすくなる。
【0070】
さらに、前記第1影形成部21の影21sが前記第2影形成部22の影22sよりも濃く、不透明反射シート2の表面2a上に形成されているため、図3Dに仮想的に示すように、第1影形成部21が第2影形成部22よりも浮き出ているかのように錯覚して見える。
【0071】
さらに、前記交差する部分29が存在することにより、不透明反射シート2の表面2a上に対する前記第1影形成部21と前記第2影形成部22との厚さ方向の配置関係が明確に認識可能となり、前記第2影形成部22よりも前記第1影形成部21が手前側に(表面側に)位置しているように見える効果がある。
【0072】
これらの3つの効果が相乗的に作用して、実際には、前記不透明反射シート2の表面2aに対する前記第1影形成部21と前記第2影形成部22との厚さ方向の位置の差は無いにもかかわらず、人の目に錯覚が生じて、前記不透明反射シート2の表面2aに対して、前記第1影形成部21が前記第2影形成部22よりも浮き出て見える。この結果、全体として薄肉であるにもかかわらず、立体的な意匠を醸し出すことが可能となる。
【0073】
なお、図3Dは、実際の構造である図3Cとは異なり、人の目で見た感覚を基に、人が認識する断面構造を仮想的に記載したものである。この図3Dのように、印刷加飾層4と不透明反射シート2とが同系色であること、異なる影形成部21,22間で影21s,22sに明確な濃淡の差があることと、2つの影形成部21,22間で交差部分29があることの3つの相乗的な効果により、第1影形成部21と前記第2影形成部22とが同一面上に形成されているにもかかわらず、第1影形成部21又は前記第2影形成部22の厚さ以上に奥行き感が感じられて、薄型であってかつ三次元的な意匠を呈することができる。
【0074】
特に、従来のように、第1影形成部21の厚さと前記第2影形成部22の厚さとの差、又は、第1影形成部21の厚さ方向の位置と前記第2影形成部22の厚さ方向の位置との差に基づいて立体感を醸し出そうとする場合と比較して、全体の厚さを大幅に小さくすることができ、薄肉でかつ立体感あふれる意匠を形成することができる。
【0075】
1つの具体例としては、ベースシート(表面保護層)6は厚さ50μm〜300μmのアクリルフィルム、このアクリルフィルムに印刷形成された第1影形成部21及び前記第2影形成部22のそれぞれは厚さ1μmのアクリル系インク層、接着層は厚さ2μm〜29μmの塩酢ビ系(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂系)、透明樹脂シート3は厚さ0.1mm〜5mmのABSフィルム又はMBS((メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)フィルム、不透明反射シート2は厚さ0.1mm〜5mmである。
【0076】
このように前記第2実施形態においては、影の濃淡と同系色との組み合わせに関して、印刷加飾層4の加飾層と加飾層で形成される影との同化を防ぐため、加飾層としては、なるべく明度が高い(明度がおおよそ85%〜90%以上の)色で形成するのがよい。
【0077】
また、濃い影と薄い影とはなるべく接近させるか、若しくは、接するように、第1影形成部21と第2影形成部22とを配置して、濃い影と薄い影との濃淡の差を、より明確に認識できるようにするのが好ましい。このように配置することにより、第1影形成部21と第2影形成部22との間での立体感をより明確に感じやすくすることができる。
【0078】
さらに、加飾層同士において、同色の柄がなるべく1箇所に固まらず、他の色の柄と複雑に重なり合っているほうが好ましい。このように配置することにより、それらの加飾層同士において、立体感をより明確に感じやすくすることができる。
【0079】
また、従来、風景画では、遠近感を出すため、手前の対象物の彩度を高く描き、奥の対象物の彩度を下げ、明度を高く描くという手法があった。これに対して、前記第2実施形態では、そのような手法によるのではなく、加飾層自体の明度と、加飾層により不透明反射シート2に形成される影とを有機的に利用し、視覚的に立体感を感じやすくして、加飾層の厚さ以上の立体感を感じやすくしたものである。
【0080】
また、前記第2実実施形態によれば、前記第1影形成部21と前記第2影形成部22と前記不透明反射シート2とは同系色とすることにより、前記第1影形成部21と前記第2影形成部22との濃淡の差に注目しやすくした状態で、目の錯覚を利用して、不透明反射シート2の表面2a上に前記第1影形成部21により、認識しやすい濃い影21sを形成して不透明反射シート2の表面2aから浮き出た位置に配置されているように見せる一方、不透明反射シート2の表面2a上に前記第2影形成部22により、認識しにくい薄い影22sを形成して不透明反射シート2の表面2aに対して沈んだ位置に配置されているように見せることができる。さらに、前記第1影形成部21の線状部分と前記第2影形成部22の線状部分との交差部分29で、前記第1影形成部21の線状部分に対して前記第2影形成部22の線状部分が途切れるように配置している。
【0081】
この結果、第2影形成部22の影22sよりも認識容易な影21sを形成する第1影形成部21が第2影形成部22よりも不透明反射シート2の表面2aに対して浮き出て見え、かつ、前記第1影形成部21の線状部分に対して前記第2影形成部22の線状部分が途切れるように配置しているため、あたかも前記第1影形成部21の線状部分の下側を前記第2影形成部22の線状部分がくぐっているかのように見える。
【0082】
よって、前記第1影形成部21と前記第2影形成部22とを同一面上に接着層5内に配置しているにもかかわらず、図3Dに示すように、前記第1影形成部21が前記第2影形成部22よりも前記不透明反射シート2に対して浮き出て見え、奥行き感のある意匠を醸し出すことができる。
【0083】
(第3実施形態)
次に、本発明の第2実施形態にかかる加飾シート11をより具体化した第3実施形態にかかる加飾シート11Bについて、図4〜図7に基づいて、以下説明する。
【0084】
加飾シート11Bは、図7に示すように、ベースシート6と、ベースシート6上に印刷などにより積層配置された印刷加飾層4を有する接着層5と、ベースシート(表面保護層)6と接着層5を介して接着される透明樹脂シート3と、透明樹脂シート3上に積層配置された不透明反射シート2とを備えて構成されている。
【0085】
このような加飾シート11Bは、公知の貼り合わせ工程により、不透明反射シート2が成形樹脂部7の表面に一体的に接着固定されることにより貼り合わされ、図5Aに示すように、ベースシート6が最外層となって加飾シート11Bが成形樹脂部7の表面に固定された加飾品1を形成することができる。
【0086】
このようにして形成される加飾品1Bは、成形樹脂部7と、成形樹脂部7上に接着層又は射出成形時の溶着により固定された不透明反射シート2と、前記不透明反射シート2上に配置された透明樹脂シート3と、前記透明樹脂シート3上に配置された接着層5と、接着層5内の不透明反射シート2の表面2a(不透明反射シート2と透明樹脂シート3との界面)と平行な、ある1つの平面(例えば、接着層5の外面5b)上に配置された印刷加飾層4Bと、接着層5の外側に配置されたベースシート6とを少なくとも備えて構成されている。
【0087】
加飾品1Bの最外面にベースシート6が配置されるので、ベースシート6は表面保護層としての機能を有しているが、場合によってはハードコート層としての機能も備えてもよく、その場合にはハードコート層6と称することもできる。ベースシート6は、透明樹脂シート3及び印刷加飾層4Bを保護するためのものである。
【0088】
前記印刷加飾層4Bは、接着層5の外面5b上にそれぞれ配置された、白色隠蔽層付きのパール加飾層31と、白色加飾層32と、グレー色加飾層33と、薄パール加飾層34と、乳白色加飾層35とで構成されており、全て、白色の同系色で構成されている。不透明反射シート2は白色である。不透明反射シート2の白色は各加飾層の色と同化しないようにすることにより、立体感を損なわないようにするのが好ましい。
【0089】
白色隠蔽層付きのパール加飾層31又はその他の加飾層と不透明反射シート2との白色は、同化した方が影を認識しやすいので、白色隠蔽層付きのパール加飾層31又はその他の加飾層と不透明反射シート2との間での明度差は、無いほうが好ましい。ただし、白色隠蔽層付きのパール加飾層31の場合、パールの光沢が白よりも目に入りやすいため、より手前に見える効果を生み出す。
【0090】
白色隠蔽層付きのパール加飾層31は、パール層の底部に白色隠蔽層を有するものであり、接着層5の外面5b上に部分的に配置され、不透明反射シート2の表面2a上に影が最も認識容易に形成されて、最も手前側に位置するように見える層である。白色隠蔽層付きのパール加飾層31は、パール層の底部に白色隠蔽層を有することにより、光遮蔽機能を発揮することが可能となり、不透明反射シート2の表面2a上に影31sが認識容易に形成されて、一番手前側に位置するように見える層である。よって、白色隠蔽層付きのパール加飾層31は、光遮蔽材料で構成された第1影形成部21の一例として機能することができる。
【0091】
パール加飾層31の構成材料の一例としては、薄片状雲母粒子に酸化チタン又は酸化鉄などの金属酸化物をコートしたものが挙げられる。
【0092】
白色加飾層32は、不透明反射シート2の表面2aと平行な、ある1つの平面(例えば、接着層5の外面5b)沿いに部分的に配置され、白色インキにより構成するため、光遮蔽機能を発揮することが可能となり、不透明反射シート2の表面2a上に影32sが認識容易に形成されて、二番目に手前側に位置するように見える層である。よって、白色加飾層32も、光遮蔽材料で構成された第1影形成部21の別の例として機能することができる。
【0093】
グレー色加飾層33は、接着層5の外面5b上に部分的に配置され、グレー色のインキにより構成するため、光遮蔽機能を発揮することが可能となり、不透明反射シート2の表面2a上に影33sがやや認識容易に形成されているが、影33sの色とグレー色加飾層33自体の色とが同じであるため、さほど浮いて見えず、三番目に手前側に位置するように見える層である。よって、グレー色加飾層33も、光遮蔽材料で構成された第1影形成部21のさらに別の例として機能することができる。
【0094】
ここで、パール加飾層31の影と白色加飾層32の影とグレー色加飾層33の影については、実質的に同等の濃さである。又は、グレー色加飾層33の影が最も濃く、パール加飾層31の影と白色加飾層32の影とは同じ濃さ程度である。グレー色加飾層33は白色よりも隠蔽性が高く、影も濃く形成されやすいからである。一方、明度としては、パール加飾層31が最も高く、次いで、白色加飾層32で、次にグレー色加飾層33の順に高い。このことから、加飾層自体の明度と影の濃さとが相乗的に組み合わさって、視覚的には、パール加飾層31の影が最も認識容易となり、パール加飾層31が最も手前に配置されているように見える。次いで、白色加飾層32の影が認識容易となり、白色加飾層32がパール加飾層31に次いで手前に配置されているように見える。よって、グレー色加飾層33が最も奥側に配置されているように見える。
【0095】
薄パール加飾層34は、接着層5の外面5b上に部分的に配置され、隠蔽層は無く、光透過材料で構成された薄いパール色の層であるため、光透過機能を発揮することが可能となり、不透明反射シート2の表面2a上に影34sが認識しにくく(薄く)形成されて、より奥側に位置するように見える層である。よって、薄パール加飾層34は、光透過材料で構成された第2影形成部22の一例として機能することができる。
【0096】
薄パール加飾層34の構成材料の一例としては、薄片状雲母粒子に酸化チタン又は酸化鉄などの金属酸化物をコートしたものが挙げられ、パール加飾層31よりも、希釈剤の量が多く、含有量が少ない。
【0097】
乳白色加飾層35は、接着層5の外面5b上に部分的に配置され、光透過材料で構成された乳白色の層であるため、光透過機能を発揮することが可能となり、不透明反射シート2の表面2a上に影35sが最も認識しにくく(薄く)形成されて、最も奥側に位置するように見える層である。よって、乳白色加飾層35も、光透過材料で構成された第2影形成部22の別の例として機能することができる。
乳白色加飾層35の構成材料としては、白い顔料インキを希釈剤で薄めたものが挙げられる。
【0098】
ここで、薄パール加飾層34の影と乳白色加飾層35の影とは、濃淡の差はあまりなく、明度としては、薄パール加飾層34が、乳白色加飾層35よりも高い。よって、視覚的に、薄パール加飾層34が、乳白色加飾層35よりも手間側に見えることになる。
【0099】
簡単に言えば、白色隠蔽層付きのパール加飾層31で形成される影31sが最も認識容易に形成され、白色加飾層32で形成される影32sが次に認識容易に形成され、グレー色加飾層33で形成される影33sがその次に認識容易に形成され、薄パール加飾層34で形成される影34sが認識やや困難に形成され、乳白色加飾層35で形成される影35sが最も認識困難に形成されている。この結果、これらの5層が立体的に配置されているように視覚的に見える。
【0100】
透過率の一例としては、白色隠蔽層付きのパール加飾層31の透過率は35%、白色加飾層32の透過率は41%、グレー色加飾層33の透過率は36%、薄パール加飾層34の透過率は74%、乳白色加飾層35の透過率は59%である。
【0101】
さらに、各加飾層同士が意匠的に重なる部分(各加飾層の線状部分同士が交差する部分)では、白色隠蔽層付きのパール加飾層31と、白色加飾層32と、グレー色加飾層33と、薄パール加飾層34と、乳白色加飾層35との順に、優先的に配置されるように構成している。すなわち、例えば、白色隠蔽層付きのパール加飾層31と白色加飾層32との交差部分29では、図4及び図5Bに示すように、白色隠蔽層付きのパール加飾層31に対して白色加飾層32が途切れるように配置して、あたかも、白色隠蔽層付きのパール加飾層31の線状部分の下側に白色加飾層32の線状部分が配置されてる(白色隠蔽層付きのパール加飾層31の下側を白色加飾層32がくぐっている)かのように見せるように構成している。同様に、白色加飾層32とグレー色加飾層33との交差部分29では、白色加飾層32に対してグレー色加飾層33が途切れるように配置して、あたかも白色加飾層32の下側をグレー色加飾層33がくぐっているかのように見せるように構成している。同様に、グレー色加飾層33と薄パール加飾層34との交差部分29では、グレー色加飾層33に対して薄パール加飾層34が途切れるように配置して、あたかもグレー色加飾層33の下側を薄パール加飾層34がくぐっているかのように見せるように構成している。同様に、薄パール加飾層34と乳白色加飾層35との交差部分29では、薄パール加飾層34に対して乳白色加飾層35が途切れるように配置して、あたかも薄パール加飾層34の下側を乳白色加飾層35がくぐっているかのように見せるように構成している。よって、各加飾層同士が交差する部分29では、白色隠蔽層付きのパール加飾層31と、白色加飾層32と、グレー色加飾層33と、薄パール加飾層34と、乳白色加飾層35との順において、上位の加飾層と下位の加飾層とが交差する部分では、上位の加飾層に対して下位の加飾層が途切れるように配置して、あたかも上位の加飾層の下側を下位の加飾層がくぐっているかのように見せるように構成している。
【0102】
特に、手前側から奥側に向けて、白色隠蔽層付きのパール加飾層31と、白色加飾層32と、グレー色加飾層33と、薄パール加飾層34と、乳白色加飾層35との順において、順位付けで配置されるとき、上位の加飾層とその上位の加飾層のすぐ下位の加飾層とが交差する部分をそれぞれ必ず形成することにより、上位の加飾層と下位の加飾層との順位付けを明確に視覚的に認識可能なようにするのが好ましい。例えば、一位の加飾層(白色隠蔽層付きのパール加飾層31)と二位の加飾層(白色加飾層32)との交差部分と、三位の加飾層(グレー色加飾層33)と四位の加飾層(薄パール加飾層34)との交差部分とが配置されているのみでは、二位の加飾層(白色加飾層32)と三位の加飾層(グレー色加飾層33)との交差部分が無いため、一位の加飾層(白色隠蔽層付きのパール加飾層31)と三位の加飾層(グレー色加飾層33)との厚さ方向の配置関係、及び、一位の加飾層(白色隠蔽層付きのパール加飾層31)と四位の加飾層(薄パール加飾層34)との厚さ方向の配置関係が不明となり、立体感が損なわれる可能性がある。よって、立体感を確実に醸し出すためには、一位の加飾層(白色隠蔽層付きのパール加飾層31)と二位の加飾層(白色加飾層32)との交差部分と、二位の加飾層(白色加飾層32)と三位の加飾層(グレー色加飾層33)との交差部分と、三位の加飾層(グレー色加飾層33)と四位の加飾層(薄パール加飾層34)との交差部分と、と四位の加飾層(薄パール加飾層34)と五位の加飾層(乳白色加飾層35)との交差部分とを設けて、一位の加飾層(白色隠蔽層付きのパール加飾層31)、二位の加飾層(白色加飾層32)、三位の加飾層(グレー色加飾層33)、四位の加飾層(薄パール加飾層34)、五位の加飾層(乳白色加飾層35)の順位付けを視覚的に明確に認識できるようにするのが好ましい。
【0103】
前記第3実施形態の前記構成によれば、それぞれの加飾層31〜35は、実際には、接着層5内では厚さ方向に位置は異なっていないにもかかわらず、目の錯覚として、厚さ方向にそれぞれの位置が大きく異なっているように、立体感を感じることができる。よって、実際の全体の厚みは非常に薄いものであるにもかかわらず、その厚さ以上に奥行き感を感じて、立体感を感じることができる。これは、加飾層の配色を単なる遠近法的な手法で異ならせただけで得られる立体感とは、全く異質の次元の立体感が得られるものであり、特に、濃い影を形成することができる白色隠蔽層付きのパール加飾層31と白色加飾層32とは、薄パール加飾層34と乳白色加飾層35と比較して、かなり、浮きで出て見えるものである。
【0104】
この理由は、第3実施形態でも述べたように、3つの観点が相乗的に作用しているためである。
【0105】
すなわち、前記印刷加飾層4Bを構成する、白色隠蔽層付きのパール加飾層31と、白色加飾層32と、グレー色加飾層33と、薄パール加飾層34と、乳白色加飾層35と、前記白色の不透明反射シート2とは、それぞれ同系色とすることにより、不透明反射シート2の表面2a上にそれぞれ形成されている。このため、全体として落ち着いた感じが感じられ、色の差よりも、同系色間での濃淡の差、言い換えれば、立体感に注意が注がれやすくなり、立体感をより感じやすくなる。
【0106】
次に、さらに、白色隠蔽層付きのパール加飾層31の影31sが最も認識容易に形成され、次に、白色加飾層32の影32sが認識容易に形成され、次に、グレー色加飾層33の影33sが認識容易に形成され、次に、薄パール加飾層34の影34sが認識やや困難に形成され、最後に、乳白色加飾層35の影35sが最も認識困難に形成されている。このため、図6に仮想的に示すように、目の錯覚により、白色隠蔽層付きのパール加飾層31が最も大きく浮き出て見え、次に、白色加飾層32が大きく浮き出て見え、次に、グレー色加飾層33が浮き出て見え、次に、薄パール加飾層34がやや沈んで見え、最後に、乳白色加飾層35が最も沈んで見える。
【0107】
さらに、前記交差する部分29が存在することにより、不透明反射シート2の表面2a上に対する、白色隠蔽層付きのパール加飾層31と、白色加飾層32と、グレー色加飾層33と、薄パール加飾層34と、乳白色加飾層35との厚さ方向の配置関係がそれぞれ明確に認識可能となり、手前側から奥側に向けて、白色隠蔽層付きのパール加飾層31と、白色加飾層32と、グレー色加飾層33と、薄パール加飾層34と、乳白色加飾層35との順に見える効果がある。
【0108】
これらの3つの効果が相乗的に作用して、実際には、前記不透明反射シート2の表面2aに対する5つの加飾層31〜35の厚さ方向の位置の差は無いにもかかわらず、人の目に錯覚が生じて、前記不透明反射シート2の表面2aに対して、5つの加飾層31〜35がそれぞれ厚さ方向の位置が異なって浮き出て見える。この結果、全体として薄肉であるにもかかわらず、立体的な意匠を醸し出すことが可能となる。
【0109】
(変形例)
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。
【0110】
前記第1又は第2実施形態にかかる加飾シート11を湾曲した樹脂成形部7Gに固定された加飾品1Gの場合について、図8Gに示す。この変形例は、第3実施形態についても適用可能である。図8Gに示すように、不透明反射シート2と透明樹脂シート3と接着層5とベースシート6とが凸形状をなすように湾曲して、第1影形成部21の認識容易な影が不透明反射シートと透明樹脂シート3との界面2a上に、湾曲せずに平面状態の場合(図2Bの場合)よりも大きく形成されている。これは、加飾品1の表面に固定された加飾シート11が湾曲しているため、人が加飾品1を見るとき、加飾シート11の表面から前記界面2a上の影までの距離が、ベースシート6と接着層5と透明樹脂シート3との合計厚さよりも大きくなり、第1影形成部21よりも影が前記界面2a上に大きく形成されることになる。この結果、第1影形成部21自体の大きさよりも影が大きくなり、第1影形成部21が界面2aから、より浮き出たように見え、立体感が大きくなる。また、湾曲した曲面を有する加飾品1の場合、人の見る方向が少し変われば、人の見る方向と加飾品1の表面とのなす角度が容易に変化することになる。すなわち、第1影形成部21の影を考慮しない状態でも、加飾品1の表面が湾曲面であると、平面の場合と比較して、人の見る角度により、平面のように、見栄えが均一にかつ規則的に変化するのではなく、湾曲面により、見栄えが不均一にかつ不規則的に変化することになる。このように見栄えが大きく変化する上に、湾曲面のために、第1影形成部21により形成される影の大きさも容易に変化することになり、第1影形成部21が界面2aから、より浮き出たり、又は、少し沈んだりするように見える効果が発揮できるとともに、前記したように第1影形成部21により形成された影による立体感を醸し出す効果との相乗的な効果で、人は立体感を感じやすくなる。
【0111】
また、第3実施形態においては、前記第1影形成部21として、白色隠蔽層付きのパール加飾層31と、白色加飾層32と、グレー色加飾層33とを有するとともに、前記第2影形成部22は、薄パール加飾層34と、乳白色加飾層35とを有するものとして説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、白色隠蔽層付きのパール加飾層31と薄パール加飾層34とを省略して、前記第1影形成部21は、白色加飾層32と、グレー色加飾層33とを有するとともに、前記第2影形成部22は、乳白色加飾層35とを有するように構成してもよい。又は、白色加飾層32と乳白色加飾層35とを省略して、前記第1影形成部21は、白色隠蔽層付きのパール加飾層31と、グレー色加飾層33とを有するとともに、前記第2影形成部22は、薄パール加飾層34とを有するように構成してもよい。
【0112】
例えば、各加飾層の形状として、線状のパターン形状の方が、影がはっきりと出やすく、より立体感を醸し出しやすくなる。しかしながら、本発明は、線状のパターンに限定されるものではなく、ドット形状など他の形状でも適用可能である。
【0113】
特に、各加飾層のパターンの輪郭としては、明確でシャープな輪郭であれば、ぼやけた輪郭を有する場合と比較して、影が明確に形成しやすいため、立体感を醸し出しやすくなる。
【0114】
影を薄く形成する場合には、透過性のあるメタリックの加飾層を形成したり、明度の低いインキで加飾層を形成すればよい。これに対して、影を刻形成する場合には、透過性の無いインキの加飾層、又は、透過性のある加飾層の裏面に隠蔽層を形成したり、明度の他高いインキで加飾層を形成すればよい。
【0115】
印刷加飾層4又は4Bにおいて、例えば、印刷加飾層4又は4Bを形成可能な意匠面の中心部分には薄い柄、周囲部分にははっきりとした柄を配置することにより、より遠近感を出しやすくして、立体感を醸し出しやすくすることもできる。
【0116】
また、各加飾層の絵柄として、線状部分を細くして影をより明確に形成しやすくするほか、凹凸部分を多数形成して、影をより多く発生させて、より立体感を出しやすくするようにしてもよい。
【0117】
また、各加飾層の絵柄として、一個一個の加飾層の面積が小さいか又は細い絵柄パターンであると、影の見える面積が大きくなり、より一層、立体感が生じさせることができる。
【0118】
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明にかかる加飾シートは、薄型であってかつ三次元的な意匠を呈することができ、各種機器(各種携帯機器、パーソナルコンピュータ、家電製品など)又は設備又は自動車の内装品などの表面に配置可能な加飾シート等として有用である。
【符号の説明】
【0120】
1,1A,1B,1G…加飾品、
2…不透明反射シート、
2a…表面、
3…透明樹脂シート、
4,4B…印刷加飾層、
5…接着層、
5b…外面、
6…ベースシート、
7,7G…成形樹脂部
11,11A,11B…加飾シート、
21…第1影形成部、
21s…第1影形成部の影、
22…第2影形成部、
22s…第2影形成部の影、
29…第1影形成部と前記第2影形成部とが交差する部分、
29a…第1影形成部21の下側を前記第2影形成部22がくぐっているかのように見える部分、
31…白色隠蔽層付きのパール加飾層、
32…白色加飾層、
33…グレー色加飾層、
34…薄パール加飾層、
35…乳白色加飾層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースシート(6)と、
前記ベースシート上に配置されかつ印刷加飾層(4)を有する接着層(5)と、
前記接着層上に配置された透明樹脂シート(3)と、
前記透明樹脂シート上に配置された不透明反射シート(2)とを備え、
前記印刷加飾層(4)は、光遮蔽材料で構成されて前記接着層に部分的に配置され、認識容易な影を前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの界面(2a)上に形成可能な第1影形成部(21)とを有するとともに、
前記第1影形成部と前記不透明反射シートとは同系色であり、
前記第1影形成部は、前記透明樹脂シート上の上記接着層内でかつ前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面と平行な1つの平面上に配置される、加飾シート。
【請求項2】
前記印刷加飾層(4)は、さらに、
光透過材料で構成されて前記透明樹脂シート上に部分的に配置され、前記透明樹脂シートを透過する光により前記第1影形成部で形成される影よりも認識困難な影を前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に形成可能な第2影形成部(22)を有するとともに、
前記第1影形成部と前記第2影形成部と前記不透明反射シートとは同系色であり、
前記第1影形成部と前記第2影形成部とは、前記透明樹脂シート内で前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面と平行な1つの平面上に配置されるとともに、
前記第1影形成部と前記第2影形成部とが交差する部分において、前記第1影形成部に対して前記第2影形成部が途切れるように配置している、請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記第1影形成部と前記第2影形成部と前記不透明反射シートとは同系色であり、
前記第1影形成部と前記第2影形成部とは、前記透明樹脂シート内で前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面と平行な1つの平面上に配置されるとともに、
前記第1影形成部と前記第2影形成部とが交差する部分において、前記第1影形成部に対して前記第2影形成部が途切れるように配置している構成により、前記第1影形成部が前記第2影形成部よりも前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面に対して、前記第1影形成部が前記第2影形成部が浮き出て見える、請求項2に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記第1影形成部と前記第2影形成部と前記不透明反射シートとは白色の同系色であり、前記不透明反射シート(2)は白色の不透明反射シートである、請求項2又は3に記載の加飾シート。
【請求項5】
前記透明樹脂シート(3)は、前記不透明反射シート(2)の意匠部形成領域の全面に配置され、
前記透明樹脂シート内で前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面と平行な前記透明樹脂シートの外面上に、前記印刷加飾層(4)の前記第1影形成部(21)と前記第2影形成部(22)とが配置されている請求項2〜4のいずれか1つに記載の加飾シート。
【請求項6】
前記第1影形成部は、白色加飾層(32)と、グレー色加飾層(33)とを有するとともに、前記第2影形成部は、乳白色加飾層(35)とを有し、
前記白色加飾層(32)は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、白色インキにより構成して光遮蔽機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に認識容易な影(32s)を形成して、最も手前側に位置するように見える層であり、
前記グレー色加飾層(33)は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、グレー色のインキにより構成して光遮蔽機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上にやや認識容易な影(33s)を形成して、二番目に手前側に位置するように見える層であり、
前記乳白色加飾層(35)は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、光透過材料で構成された乳白色の層であり、光透過機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に最も認識しにくい影(35s)を形成して、最も奥側に位置するように見える層である、請求項2〜5のいずれか1つに記載の加飾シート。
【請求項7】
前記第1影形成部は、白色隠蔽層付きのパール加飾層(31)と、グレー色加飾層(33)とを有するとともに、前記第2影形成部は、薄パール加飾層(34)とを有し、
前記白色隠蔽層付きのパール加飾層(31)は、パール層(31a)の底部に白色隠蔽層(31b)を有し、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に最も認識容易な影(31s)を形成して、最も手前側に位置するように見え、
前記グレー色加飾層(33)は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、グレー色のインキにより構成して光遮蔽機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上にやや認識容易な影(33s)を形成して、二番目に手前側に位置するように見える層であり、
前記薄パール加飾層(34)は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、光透過材料で構成された薄いパール色の層であり、光透過機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に認識しにくい影(34s)を形成して、最も奥側に位置するように見える層である、請求項2〜5のいずれか1つに記載の加飾シート。
【請求項8】
前記第1影形成部は、白色隠蔽層付きのパール加飾層(31)と、白色加飾層(32)と、グレー色加飾層(33)とを有するとともに、前記第2影形成部は、薄パール加飾層(34)と、乳白色加飾層(35)とを有し、
前記白色隠蔽層付きのパール加飾層(31)は、パール層(31a)の底部に白色隠蔽層(31b)を有し、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に最も認識容易な影(31s)を形成して、最も手前側に位置するように見え、
前記白色加飾層(32)は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、白色インキにより構成して光遮蔽機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に認識容易な影(32s)を形成して、二番目に手前側に位置するように見える層であり、
前記グレー色加飾層(33)は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、グレー色のインキにより構成して光遮蔽機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上にやや認識容易な影(33s)を形成して、三番目に手前側に位置するように見える層であり、
前記薄パール加飾層(34)は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、光透過材料で構成された薄いパール色の層であり、光透過機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に認識しにくい影(34s)を形成して、より奥側に位置するように見える層であり、
前記乳白色加飾層(35)は、前記透明樹脂シートの前記1つの平面上に部分的に配置され、光透過材料で構成された乳白色の層であり、光透過機能を発揮し、前記不透明反射シートと前記透明樹脂シートとの前記界面上に最も認識しにくい影(35s)を形成して、最も奥側に位置するように見える層である、請求項2〜5のいずれか1つに記載の加飾シート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の加飾シート(11,11A,11B)が樹脂部(7)の表面に固定された加飾品。
【請求項10】
前記樹脂部の前記表面は凸形状をなすように湾曲して、前記加飾シートも凸形状をなすように湾曲している、請求項9に記載の加飾品。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図9】
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【図10】
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