説明

加飾紙製品

【課題】名刺等の印象度を容易に高めることができる加飾紙製品を提供すること。
【解決手段】台紙12a上に印刷層12bが形成された既成名刺12上に、誘電体材料からなる透明蒸着着色層14が形成されている名刺等の加飾紙製品P。透明蒸着着色層14を、高屈折率膜14aと低屈折率膜14bとを交互に備えて、色シフト性を有する干渉多層膜とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾紙製品に関する。ここでは、加飾紙製品として、名刺を例に採り説明する。
【背景技術】
【0002】
名刺は、自分を他人に覚えてもらうための情報媒体であり、ビジネスにおいて多用されている。自分を印象付けるために、カラー名刺や顔写真入り名刺が一部使用されつつある。
【0003】
昨今の各業界における競争激化に伴い、印象度のより高い名刺の出現が希求されている。
【0004】
なお、本発明の特許性に影響を与えるものではないが、名刺に関連する先行技術文献として特許文献1が、色シフト性を有する干渉多層膜に関連する先行技術文献として特許文献2等がそれぞれ存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−330512号
【特許文献2】特表2002−530712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記にかんがみて、名刺等の印象度を容易に高めることができる加飾紙製品およびその加飾方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題(問題点)を解決するために、鋭意開発に努力をした結果、下記構成の加飾紙製品に想到した。
【0008】
印刷層が形成された紙製基材上に、金属材料又は誘電体材料からなる透明蒸着着色層が形成されてなることを特徴とする。
【0009】
透明蒸着着色層を介して印刷層を視認することにより、従来にない斬新な意匠性を付与することができる。即ち、透明蒸着着色層を形成する金属材料又は誘電体材料(特に多様な発色が可能な遷移金属又は遷移金属酸化物)を蒸着材料として、1種又は複数種組み合わせて、単層単色の又は多層多色の透明蒸着着色層とすることにより、容易に紙製基材に斬新な着色(ミラー感や色シフト性を有する。)が可能となる。
【0010】
上記構成において、透明蒸着着色層が、高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に備えて、色シフト性を有する干渉多層膜であることが望ましい。
【0011】
当該構成とすることにより、紙製基材上には、干渉多層膜により色シフト(玉虫色)機能が付与されてより斬新な意匠性に富む着色(加飾)が可能となる。したがって、名刺等に適用した場合、印象度を格段に向上させることができる。
【0012】
上記構成の加飾紙製品において、干渉多層膜の光学薄膜設計は、通常、前記高屈折率膜および低屈折率膜の各光学膜厚をλ/4とし、繰り返し数2〜6の繰り返し多層膜(2種類(又はそれ以上)の薄膜を交互に規則正しく重ねる構成)とすることが望ましい。繰り返し多層膜とすることにより、多層膜設計および成膜が容易となる。繰り返し数が多いと、光学膜厚が相対的に厚くなり、光透過率が低下して、印刷層の明瞭度が不鮮明となり易い。
【0013】
また、最上層の光学膜厚は、2×λ/4(但し、m=1又は−1)とすることが望ましい。m=1としたときは、最上層での反射が抑制され印刷層の視認性が増大し、逆に、m=−1としたときは、最上層で選択波長の幅が広がり、よりカラフルになる。
【0014】
上記構成の加飾紙製品において、前記高屈折率膜をZrO、Al、TiO、Ta、Cr及びITO(Indium Tin oxide)のいずれか1種又は2種で形成し、前記低屈折率膜をSiO、SiO又はそれらの複合酸化物で形成することが望ましい。通常、高屈折率膜及び低屈折率膜の屈折率は、設計波長(中心波長)で前者:1.8〜3.0、後者:1.3〜1.6とする。そして、両者の屈折率の差は、0.3以上とする。
【0015】
本発明の加飾紙製品は、加飾名刺に適用することが望ましく、加飾名刺の加飾方法は下記の如く行なう。
【0016】
印刷層が形成された既成名刺を前記紙製基材として、前記透明蒸着着色層を、基板温度:30〜90℃で、真空蒸着により形成することを特徴とする。紙製基材の焼けや変質を発生させないためである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の加飾紙製品である名刺の斜視図である。
【図2】図1の2−2線部分拡大モデル断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
各構成について詳細に説明する。
【0020】
本実施形態の積層膜構成は、基本的には、紙製基材(例えば、既成名刺)12の上面に、透明蒸着着色層14を備えている構成である。
【0021】
透明蒸着着色層14は、前述の如く、誘電体材料又は金属材料からなる単色単層ないし多色多層でもよいが、本実施形態では、誘電体材料からなる干渉多層膜とする。
【0022】
透明蒸着着色層14の材料として好ましい誘電体材料・金属材料を、表1・2に、成膜真空度、溶融温度および屈折率とともに示す。また、金属材料についての屈折率は、可視光線の短波長側(400nm前後)から長波長側(650〜700nm)に向かって増大するため、幅をもって表示してある。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
(1)紙製基材12:
紙製基材(既成名刺)12は、台紙12aの上に印刷層12bが形成されたものである。
【0026】
台紙12aの材質は、特に限定されない。例えば、上質紙(光沢紙、ケント紙)、中質紙(マットコート紙、更紙)、色上質紙(ミラーコート紙、ノーカーボン紙)、アート紙(アートポスト、模造紙)等を使用できる。
【0027】
できれば、反射性の良好なもの、例えば光沢紙が望ましい。光沢紙は光の散乱が少なく反射感を得易い。
【0028】
(2)透明蒸着着色層(干渉多層膜)14:
干渉多層膜は、すくなくとも、高屈折率膜14aと低屈折率膜14bとを交互に備えて、色シフト機能を有するように光学膜厚設計されたものとする。通常、高屈折率膜14aを紙製基材12に接するように形成する。低屈折率膜14bを紙製基材12に接するように形成してもよい。
【0029】
膜構成は、増反射の見地から、高屈折率膜14aおよび低屈折率膜14bの各光学膜厚をλ/4の繰り返し多層膜とする。通常、繰り返し数2〜6、望ましくは3〜5(図例では繰り返し数:5)とする。繰り返し数が過剰となると、光透過率が低下して、印刷層の視認性が低下する。また、繰り返し数が過少であると、色シフト性を確保し難くなる。
【0030】
上記繰り返し多層膜は、2種類の組合わせ膜の繰り返しとしたが、3〜4種類の組合わせ膜の繰り返しでもよく、適宜、金属薄膜又は他の種類の誘電体膜を介在させてもよい。
【0031】
また、最上層の低屈折率膜14bの光学膜厚は、λ/4としてもよいが、λ/2(2×λ/4)としたり、λ/8(2−1×λ/4)としたりすることもできる。最上層をλ/2とした場合は、最上層をλ/4やλ/8とする場合に比して色カット性が強いものができる。最上層をλ/8とした場合は、最上層をλ/4やλ/2とする場合に比して反射感がより強いものができる。
【0032】
上記高・低屈折率膜を形成する誘電体材料としては、下記に示すものを好適に使用できる(表1参照)。
【0033】
1)高屈折率膜誘電体材料
アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)、五酸化二タンタル(Ta)、三酸化二クロム(Cr)、ITO(Indium Tin oxide)
【0034】
2)低屈折率膜誘電材料
二酸化ケイ素(SiO)、一酸化ケイ素(SiO)又はそれらの複合酸化物
なお、高屈折率膜誘電体材料の内で、高屈折率(例えばZrO)と低屈折率(Al)とを組合わせることも可能である。
【0035】
この干渉多層膜14は、通常、基材温度を80℃以下に維持して真空蒸着で形成する。
【0036】
真空蒸着の場合、例えば、成膜開始真空度:0.9mPa、電子ビーム蒸発、成膜中基材温度:60±30℃で行なう。
【0037】
以上、名刺に適用する場合を例に採り説明したが、本発明は、他の紙製の印刷基材、例えば、包装紙、光沢紙、画用紙、色紙などにも適用可能である。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例に基づいて、さらに具体的に説明する。
【0039】
印刷層が形成された既成名刺(紙製基材)の表面に、光学膜厚λ/4の繰り返し多層膜(繰返し数q=5)において、最上層(10層目)の光学膜厚をλ/2又はλ/8とするとともに、表3に示す各膜厚となるように真空蒸着(基板温度:60℃)を行なった。
【0040】
【表3】

【0041】
こうして製造した加飾名刺は、色シフト性を有する各色系の色調が付与されたとともに、既成名刺の印刷層が明瞭に認識できる印象度の高いカラフルな名刺Pが得られた。
【符号の説明】
【0042】
12 紙製基材(既成名刺)
12a 印刷層
14 透明蒸着着色層(干渉多層膜)
14a 高屈折率膜
14b 低屈折率膜
P 加飾紙製品(加飾名刺)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷層が形成された紙製基材上に、金属材料又は誘電体材料からなる透明蒸着着色層が形成されてなることを特徴とする加飾紙製品。
【請求項2】
前記透明蒸着着色層が、高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に備えて、色シフト性を有する干渉多層膜であることを特徴とする請求項1記載の加飾紙製品。
【請求項3】
前記干渉多層膜が、高屈折率膜および低屈折率膜の各光学膜厚をλ/4とし、繰り返し数2〜6の繰り返し多層膜であることを特徴とする請求項2記載の加飾紙製品。
【請求項4】
最上層の前記光学膜厚が2×λ/4(但し、m=1又は−1)とされていることを特徴とする請求項3記載の加飾紙製品。
【請求項5】
前記高屈折率膜がZrO、Al、TiO、Ta、Cr及びITO(Indium Tin oxide)いずれか1種又は2種で形成され、前記低屈折率膜がSiO、SiO又はそれらの複合酸化物で形成されていることを特徴とする請求項2、3又は4記載の加飾紙製品。
【請求項6】
前記紙製基材が印刷層を備えた名刺であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一記載の加飾紙製品。
【請求項7】
請求項6に記載の加飾紙製品である加飾名刺を製造するに際して、既成名刺を前記紙製基材として、前記透明蒸着着色層を、基板温度90℃以下の条件で真空蒸着により形成することを特徴とする既成名刺の加飾方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−189519(P2011−189519A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55026(P2010−55026)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(596167055)株式会社エツミ光学 (5)
【Fターム(参考)】