説明

動作条件および選択されたユーザ入力に基づく熱音響装置の最適化

【課題】熱音響冷凍機、熱音響熱機関の動作効率を最適化する。
【解決手段】熱音響冷凍機では、熱音響冷凍機動作の効率を最適化するために、動作温度、周囲温度、湿度、および選択されたユーザ入力が、熱音響冷凍機の周波数および/または入力電力を制御するために利用される。熱音響熱機関では、熱音響熱機関動作の効率を最適化するために、動作温度、周囲温度、湿度、および選択されたユーザ入力が、熱音響熱機関の負荷のインピーダンスを制御するために利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱音響デバイスに関し、より具体的には、熱音響冷凍機または熱音響熱機関などの熱音響デバイスの動作を最適化する電気制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
パルス管冷凍機は、進行波型熱音響冷凍機の典型である。こうしたデバイスでは、音響波は、ガス中を進行する。ガスの圧力および速度振動は、デバイスのある領域においてほぼ同位相である。そのため、これらのデバイスは、一般に、進行波デバイスと呼ばれる。
【0003】
音響源、たとえば可動ピストンを有する電気機械変換器は、圧縮ガスを含むシールされた格納装置内で振動する音響エネルギーを発生する。音響エネルギーは、第1の熱交換器、たとえば熱交換流体を介して周囲温度の熱リザーバに一般に接続される「高温(hot)」熱交換器、蓄熱式熱交換器または「蓄熱器(regenerator)」、および、別の熱交換器、たとえば熱交換流体を介して、冷凍機によって冷却される熱負荷に接続される「低温(cold)」熱交換器を通過する。通常、低温熱交換器には、「パルス管(pulse tube)」と呼ぶ別の管、および、最後の周囲温度熱交換器、「周囲(ambient)」熱交換器が続き、「周囲」熱交換器は、低温熱交換器を隔離し、それにより、冷凍機の寄生熱負荷を減少させるのに役立つ。「高温」熱交換器および「周囲」熱交換器は、同じ温度にあることが多い。「周囲」熱交換器の後には、音響負荷、しばしば、音響エネルギーを消散させるイナータンスおよびコンプライアンスと組合せたオリフィスが存在する。本明細書で、「熱交換器(heat exchanger)」は、熱音響デバイスの内部のガスと、空気のストリームなどの外側流体との間で熱を交換するデバイスを意味すると考えられる。
【0004】
定常状態では、高温熱交換器から低温熱交換器の方向に、蓄熱器内で温度勾配が確立される(ベクトルとして考える場合、勾配は逆方向であることになる)。熱は、理想的には、ガスと蓄熱材(しばしば、金属またはセラミックの多孔質材料またはメッシュ)との間でほぼ等温的に伝達される。進行波音響位相合わせによって、蓄熱器内のガスは、ほぼスターリングサイクルを受ける。こうして、消費される音響エネギーについて、低温熱交換器から高温熱交換器へ最大の熱が移動し得る。
【0005】
当技術分野で知られているタイプのループ式進行波型熱音響冷凍機デバイスでは、音響負荷は、普通なら負荷内で消散されることになる音響エネルギーの一部を、電気機械変換器の背面に送出する音響セクションによって置換えられ、それにより、所与の冷却電力について必要とされる入力電力を低減し、したがって、デバイスの効率を増加させる。別の構成では、「過剰の(excess)」音響電力は、第2の熱音響冷凍機の電気機械変換器の背面に送出され、その負荷は、第1の電気機械ドライバの背面に「過剰の」音響電力を閉ループで送出する音響セクションに同様に置換えられる。同様に、3つ以上の熱音響冷凍機ユニットが、閉ループ内で、出力から入力へ接続され得る。当技術分野で知られている別のデバイスでは、「過剰の」音響電力は、電気機械変換器の前面に送出される。
【0006】
同様に、進行波型熱音響熱機関は、熱を仕事に変換するデバイスである。このデバイスでは、熱は、高温に維持される「高温」熱交換器において加えられる。「低温」熱交換器および「周囲」熱交換器は、周囲温度または低温に維持される。格納装置内の振動する音響エネルギーは、電力変換器、たとえば電磁変換器によって電気エネルギーに変換される。
【0007】
熱音響クーラおよび熱機関内の温度は、めったに一定でないが、周囲条件、熱可用性、ユーザ設定などの関数である。所与の電力および周波数で動作するとき、熱音響冷凍機の効率は、高温、低温、および周囲熱交換器の温度と共に変動する。同様に、所与の電力で、また、所与の負荷によって動作するとき、熱音響熱機関の効率は、熱交換器の温度と共に変動する。この作用は、ループ式冷凍機または機関の場合に特に著しい。その理由は、こうしたシステムが共振系であり、共振周波数が、蓄熱器の内部の音響利得、機関の場合には負荷に影響を及ぼす、デバイスが動作する周囲環境の温度、いくつかの熱交換器の温度などのような動作温度に部分的に依存するからである。温度が変化するにつれて、共振周波数が変化し、したがって、最適動作周波数が変化する。パルス管冷凍機および同様なデバイスの場合、温度が変化するにつれて、蓄熱器の領域内での音響電力の位相合わせが変化し、おそらく、蓄熱の有効性、それにより、デバイスの効率を減少させる。したがって、温度、湿度などのような動作条件の関数として、その効率を最適化するように、熱音響デバイスの動作の局面を制御する装置および方法が、当技術分野で必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本開示は、動作温度、周囲温度、湿度、および選択されたユーザ入力の関数としてその効率を最適化するために、熱音響冷凍機の周波数および/または入力電力の電気制御を提供するシステムおよび方法を対象とする。本開示はまた、動作温度、周囲温度、湿度、および選択されたユーザ入力の関数としてその効率を最適化するために、熱音響熱機関の負荷のインピーダンスの電気制御を提供するシステムおよび方法を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
熱音響冷凍機は、作動ガスを含むほぼ中空でシールされた本体を含む。前記本体内には、蓄熱器と第1の熱交換器と第2の熱交換器とが配設される。電気機械ドライバからの音響エネルギーは本体内に送られる。各熱交換器は、熱音響装置の動作中に、本体の内部で熱交換器に近接する、かつ/または、本体の外部の、かつ/または、もし存在すれば熱交換流体の温度を測定する温度センサを備えてもよい。周囲温度センサがまた、熱が排除されるデバイスの周囲領域内の温度を測定するために設けられてもよい。さらなる温度センサが、冷却される空間の温度を測定するために設けられてもよい。湿度センサがまた、熱が排除される周囲領域および/または冷却される空間内の相対湿度または絶対湿度を測定するために設けられてもよい。コントローラは、複数の時刻に通常測定される、種々のセンサからのデータを受信し、これらの信号およびユーザ入力に基づいて制御信号を提供する。制御信号は、可変周波数ドライバに提供され、可変周波数ドライバは、制御信号に従って電気機械ドライバを駆動する。こうして、熱音響装置の動作は、熱交換器温度、周囲温度、および周囲湿度の関数として少なくとも部分的に制御される。熱音響装置の動作は、その後、使用中に最適化される(たとえば、駆動電力要件が最少になる)可能性がある。
【0010】
さらに、本体内の音響電力は、電気エネルギーに変換されてもよく、この変換の状態はまた、因数分解されて制御信号にされてもよい。さらに、音響圧およびガス流速度を測定する変換器は、本体の内部に配設されてもよく、これらのセンサの出力は、因数分解されて制御信号にされてもよい。一部の実施形態では、システムの過去の状態が、制御アルゴリズムに組み込まれてもよい。たとえば、ある温度信号が、増加するかまたは減少するかは、因数分解されてさらなる入力としての制御信号にされてもよい。
【0011】
コントローラは、いくつかの実施形態では、ルックアップテーブルを含むメモリであってよく、ルックアップテーブルにおいて、周囲温度および湿度などの独立変数ならびに低温設定点および他の動作パラメータなどのユーザ定義動作パラメータが、周波数およびドライブ電流に対して照合され、それにより、制御信号がルックアップテーブルから確定される。他の実施形態では、熱交換器温度、内部圧力、および内部ガス流量などの従属変数、ならびに/または、任意の独立または従属変数の過去の状態がまた、制御信号を確定するために、ルックアップテーブルにおいて参照されてもよい。なお他の実施形態では、ロジックまたはデジタルまたはアナログ回路要素は、ドライブ周波数および電力を含む動作パラメータを確定するために使用されてもよい。このロジックは、現在のデバイスの状態および過去のデバイスの状態に応じて、入力変数の異なる組合せを有するいくつかのルックアップテーブルを切換えるような機能を含んでもよい。
【0012】
複数の音響変換器を有する実施形態では、コントローラは、各変換器について、独立したドライブ電力および電気的位相を確定してもよい。
【0013】
熱音響熱機関の動作は、電気機械ドライバがない状態であるが、本質的に上述したものである。むしろ、音響エネルギーコンバータが本体内に設けられる。音響エネルギーコンバータに接続される負荷のインピーダンスは、熱音響熱機関の動作状態を部分的に制御する。(種々の動作温度から少なくとも部分的に確定される)制御信号は、負荷のインピーダンスを確定し、それにより、熱音響熱機関の動作の効率を制御する。
【0014】
上記は、本開示のいくつかの独特な態様、特徴、利点の要約である。しかし、この要約は、網羅的ではない。そのため、本開示のこれらのまた他の態様、特徴、および利点は、本明細書で提供される特許請求の範囲に照らして考えられると、以下の詳細な説明および添付図面からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本開示の第1の実施形態による、動作温度、周囲温度および湿度、ならびに選択されたユーザ入力の関数として効率を最適化する制御回路要素を含む熱音響冷凍機の破断図である。
【図2】本開示の第2の実施形態による、動作温度、周囲温度および湿度、ならびに選択されたユーザ入力の関数として効率を最適化する制御回路要素を含む熱音響冷凍機の破断図である。
【図3】本開示の第3の実施形態による、動作温度、周囲温度および湿度、ならびに選択されたユーザ入力の関数として効率を最適化する制御回路要素を含む熱音響冷凍機の破断図である。
【図4】本開示の第1の実施形態による、動作温度、周囲温度および湿度、ならびに選択されたユーザ入力の関数として効率を最適化する制御回路要素を含む熱音響熱機関の破断図である。
【図5】図4に示すタイプの熱音響熱機関内に配備されてもよいタイプの負荷制御回路の略図である。
【図6】本開示の第2の実施形態による、動作温度、周囲温度および湿度、ならびに選択されたユーザ入力の関数として効率を最適化する制御回路要素を含む熱音響熱機関の破断図である。
【図7】図4に示すタイプの熱音響熱機関内に配備されてもよいタイプの電力コンバイナ回路の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、動作温度、周囲温度および湿度、ならびに選択されたユーザ入力の関数として効率を最適化する制御回路要素を含む熱音響冷凍機70の破断図である。図1および図1に関連する説明は冷凍機に的を絞るが、本明細書の説明は、特に本明細書でさらに述べるように、ヒートポンプ、熱機関、および他の形態の熱音響デバイスに同様に当てはまることが理解されるであろう。
【0017】
熱音響冷凍機70は、ほぼ管状の本体72を備える。本体72がそれから構築される材料は、本発明の用途に応じて変わってもよい。しかし、本体72(実際には、本明細書で述べる全ての本体)は、一般に、熱的にかつ音響的に絶縁性があり、少なくともいくつかの雰囲気に対する加圧に耐えることが可能であるべきである。本体72についての例示的な材料は、ステンレス鋼または鉄ニッケルクロム合金を含む。
【0018】
本体72内には、蓄熱器74が配設される。蓄熱器74(実際には、本明細書で述べる全ての蓄熱器)は、比較的高い熱質量およびガスとの相互作用の大きな表面積を提供するが、低い音響減衰を提供する、いろいろな材料および構造的配置構成のうちの任意のものから構築されてもよい。当業者によって理解される、ワイヤメッシュまたはスクリーン、オープンセル材料、ランダムファイバメッシュまたはスクリーン、あるいは、他の材料および配置構成が採用されてもよい。蓄熱器74を構成する材料の密度は、一定であってよく、または、ガスと壁との間の相互作用の面積および音響インピーダンスが、蓄熱器74の長手方向寸法にわたって、最適効率のために調節されるように、長手方向軸に沿って変わってもよい。蓄熱器設計の詳細は、普通なら当技術分野で知られており、したがって、本明細書ではさらに説明されない。
【0019】
蓄熱器74の各横方向端部に隣接して、第1および第2の熱交換器76、78がそれぞれ存在する。熱交換器76、78(実際には、本明細書で述べる全ての熱交換器)は、本体72から伝達媒体へ比較的高い熱伝達効率を提供する、いろいろな材料および構造的配置構成のうちの任意のものから構築されてもよい。一実施形態では、熱交換器76、78は、加熱されるかまたは冷却される流体を内部に保持する1つまたは複数の管であってよい。熱交換器76、78は、ある材料から形成され、冷凍機の動作中に、熱交換器76、78内の流体と本体72内のガスとの間で(加熱用または冷却用の)熱エネルギーを効率的に伝達するようなサイズに作られ配置される。熱伝達を増大させるために、熱交換器76、78の表面積は、当技術分野でよく知られているフィンまたは他の構造を用いて増加されてもよい。熱交換器76、78にそれぞれ接続される管77、79は、蓄熱器74の外部の熱リザーバまたは負荷から/へ、熱交換器76、78へ/から流体の搬送を可能にする。熱交換器の詳細は、普通なら当技術分野で知られており、したがって、本明細書ではさらに説明されない。
【0020】
任意選択で、第3の熱交換器80は、本体72の一方の端部内に、たとえば、熱交換器78が熱交換器80と蓄熱器74との間に位置するように配設されてもよい。第3の熱交換器80は、ある材料から形成され、冷凍機の動作中に、熱交換器内の流体と本体72内のガスとの間で(加熱用または冷却用の)熱エネルギーを効率的に伝達するようなサイズに作られ配置される1つまたは複数の管などの、第1および第2の熱交換器76、78と同様の構成であってよい。管81は、蓄熱器74の外部の熱リザーバまたは負荷から/へ、第3の熱交換器80へ/から流体の搬送を可能にする。
【0021】
電気機械ドライバ82(たとえば、音響波源)は、第1の熱交換器76に近接して、本体72内に配設される。多くの異なるタイプのデバイスは、よく知られている可動コイル型、圧電型、静電型、リボン型、または他の形態のラウドスピーカなどの電気機械ドライバ82の機能を果たしてもよい。冷凍機の冷却効率が最大にされるように、非常に効率的で、周波数同調可能で、周波数安定性があるスピーカ設計が好ましい。
【0022】
可変周波数ドライバ(variable frequency driver)(VFD)84は、電気機械ドライバ82に接続される。VFD84は、非常に高い変換効率を持って、所望の周波数および振幅で電気機械ドライバ82を駆動することが可能である。オリフィスなどの音響負荷73は、第2または第3の熱交換器78、80に近接して、本体72の一部を形成し、音響エネルギーを消散する。
【0023】
最初に、ヘリウムなどのガスが、ハウジング72内にシールされる。VFD84からの振動する電力は、ガス中で音響振動を発生する電気機械ドライバ82に提供される。寸法の適切な選択ならびにハウジング72および蓄熱器74についての適切な材料選択ならびに適切なガスの使用によって、適切なスターリングサイクルが、蓄熱器74の領域で始動され、システムが定常状態に達すると、第1の熱交換器76、「高温」熱交換器が、第2の熱交換器78、「低温」熱交換器より比較的高い温度になるように、蓄熱器74内で温度勾配が確立される。
【0024】
スターリングサイクルは、高温熱交換器から低温熱交換器の方向にガスが移動するときの、蓄熱器への熱を排除するガスの定容冷却、ガスの等温膨張、低温熱交換器から高温熱交換器の方向にガスが移動するときの、蓄熱器からの熱を受容するガスの定容加熱、およびその後のガスの等温圧縮からなり、等温圧縮時点で、ガスは、初期状態になり、プロセスが、それ自体を繰返す。こうして、熱は、低温熱交換器から高温熱交換器に移動する。蓄熱器74は、熱エネルギーを貯蔵するのに役立ち、エネルギー変換効率を著しく改善する。
【0025】
VFD84が電気機械ドライバ82を駆動する周波数および/または振幅を確定するときに、種々のシステムおよび周囲温度を考慮するために、いくつかのセンサが採用される。これらのセンサは、一般に、2つのタイプに分割され得る。2つのタイプとは、周囲温度および湿度などのデバイスの動作状態とほぼ無関係な量を検知するタイプ、および、内部圧力振幅、ガス流量、ガス温度、熱交換器温度、および冷却される空間の温度などの、デバイスの動作状態にある程度またはほぼ依存する量を検知するタイプである。
【0026】
図1に示す実施形態によれば、これらのセンサは、熱交換器76に近接した本体72の内部の温度を測定する熱電対89、熱交換器76内の熱交換流体の温度を測定する熱電対88、熱交換器78に近接した本体72の内部の温度を測定する熱電対91、熱交換器78内の熱交換流体の温度を測定する熱電対90、熱交換器80に近接した本体72の内部の温度を測定する熱電対93、および熱交換器80内の熱交換流体の温度を測定する熱電対92などの熱電対の形態をとる。温度センサとしての熱電対の使用は、例証に過ぎず、任意のタイプの温度センサが利用されてもよい。さらに、熱電対、温度計などのような周囲温度センサ94は、たとえば、冷凍機によってそこへ熱が排除される空間内の周囲温度、装置の取込み口に近接する空間内の周囲温度、外部温度などを測定するために、本体72に近接して配設される。すなわち、この空間は、熱音響冷凍機70に物理的に近接してもよく、または、冷却される建物の外側または隣接する部屋内(熱音響冷凍機70が部屋クーラである場合)など、熱音響冷凍機70から物理的に離れていてもよい。そのため、一実施形態では、温度センサ94は、熱音響冷凍機70に近接し、別の実施形態では、温度センサ94は、冷却される部屋内にあるが、必ずしも熱音響冷凍機70に近接せず、なお別の実施形態では、温度センサ94は、熱音響冷凍機70の近くのどこかにある必要はない。本発明者等は、ここで、周囲温度と冷却される空間の内部の温度とを区別する。冷却される空間の内部の温度は、デバイスの動作に依存し(すなわち、デバイスはその温度を冷やす)、一方、周囲温度はデバイスの動作に依存しない。したがって、概念上、熱音響冷凍機70の動作は、冷却される部屋の温度だけの関数ではなく、部分的に「外部(outside)」温度の関数であり得る。
【0027】
さらに、湿度計(湿度センサ)96は、冷凍機によってそこへ熱が排除される空間内の周囲湿度を測定するために本体72に近接して配設されてもよい。湿度計96またはさらなる湿度計はまた、温度センサ94に関して上述したように、絶対または相対周囲湿度を測定するように配置されてもよい。種々の熱電対、温度計、および湿度計が、図1で開示され示されたが、これらの要素の多くはオプションであることが留意されるべきであり、本発明者等は、最小の実施形態が、単一の温度計、熱電対、または同様なセンサ89を備えることを提案する。その単一の温度計、熱電対、または同様なセンサは、熱音響デバイスの外部の、本体72の領域の温度、および、熱交換器のうちの1つにおける、前記熱音響装置が動作するエリアの温度などを測定し得る。さらに、さらなる熱電対、温度計、湿度センサ、ならびに、圧力センサおよび流量センサなどのような他のセンサが、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の組合せで設けられてもよい。
【0028】
熱電対86、88、90、および92、温度計94、ならびに湿度計96(ならびに他のセンサデバイス)はそれぞれ、コントローラ98にデータ信号を提供するために接続される。コントローラ98は、種々の温度、湿度、および他の測定値を使用して、VFD84を制御するための制御信号を生成し、VFD84は、効率または冷却用電力を最適化するために、電気機械ドライバ82の周波数および入力電力、電流、および/または電圧を制御する(変える)。コントローラ98は、熱音響冷凍機70の動作中に定期的に種々の変数をサンプリングしてもよく、また、動作条件および周囲条件の変化を補償するために、VFD84に更新された定期的な制御信号を提供してもよく、それにより、最適なまたは選択された効率を維持する。そのため、コントローラ98は、複数の温度データ信号から少なくとも部分的に制御信号を生成することができ、制御信号に基づく電気機械ドライバ82の動作が、前記熱音響冷凍機70のための最適化された動作効率を提供するように、信号が、熱音響冷凍機70の動作中に種々の時刻に取得される。あるいは、熱電対86、88、90、および92、温度計94、ならびに湿度計96(ならびに他のセンサデバイス)からの温度が、熱音響冷凍機70の動作中に所定の間隔でコントローラ98に提供されるように、他の機構が設けられてもよい。
【0029】
コントローラ98へのさらなる入力は、調整可能なユーザパラメータ99であってよい。こうしたユーザ入力パラメータは、熱音響冷凍機70用の、所望の冷却用電力、最大電力消費、所望の冷却温度などを含んでもよい。
【0030】
一実施形態によれば、コントローラ98は、周囲温度から周波数および電力へのマッピングを含むルックアップテーブルに従って、電気機械ドライバ82の周波数および/または電力を変えるようにプログラムされているロジックを備える。たとえば、周囲温度が増加するにつれて、電力は一定のままにされ、周波数は増加させられ得る。モデル化された1つの特定の例では、(熱電対90によって測定された)低温熱交換器78の温度が299.8Kであり、(熱電対88、92によってそれぞれ測定された)高温および周囲熱交換器76、80の温度が共に308.2Kであるとき、12.9ワットの入力電力についての最適周波数は、60Hzであることがわかった。しかし、高温および周囲熱交換器76、80の温度が318.2Kまで増加すると、12.9ワットの入力電力についての最適周波数は、61.2Hzまで増加する。電力を維持することは、VFD84からの入力電流を、1.14アンペアから1.18アンペアまで増加させることを必要とする。このマップに相当するルックアップテーブルの要素は、表1に示される。
【表1】



【0031】
一実施形態では、コントローラは、埋め込み式マイクロプロセッサならびにアナログ−デジタル変換器およびデジタル−アナログ変換器によって実施され得る。別の実施形態では、VFDおよびトランジスタ増幅器と電子コンポーネントの組合せからなる完全アナログ解決策が使用され得る。なお別の実施形態では、アナログロジックとデジタルロジックの組合せが使用され得る。制御システム設計の専門家によく知られているように、フィードバック制御システム、すなわちデバイスの動作状態に依存する入力変数を使用する制御システムおよびシステムの過去の状態のメモリを有する制御システムは、ある条件下でだけ定常状態動作を達成してもよい。他の条件下では、制御システムは、異なる状態の間で振動する、すなわち、所望の状態に「捕捉される(capture)」かまたは「ロックされる(lock)」ことに失敗する可能性がある。したがって、本明細書で述べるシステムのコントローラが、入力として、従属変数または履歴変数を使用する実施形態では、ルックアップテーブルより深く関与するロジックおよび制御が、定常状態動作を保証するために必要とされる可能性がある。たとえば、システムの初期状態がデバイスの捕捉範囲を超える場合、システムがそのユーザ定義設定点に近づくにつれて、制御システムは、独立変数のみを利用することから、独立変数と従属変数の組合せを利用することに切換るように設計されてもよい。
【0032】
さらなる例として、圧力振幅などのある変数は、比較的迅速に、動作パラメータの変化に応答するが、冷却される空間の温度などの他の変数は、比較的長い時間遅れ(lag)を持って動作パラメータの変化に応答する。振動を防止するために、コントローラは、圧力振幅の変化に対するよりもゆっくりと、冷却される空間の温度の変化に応答すべきである。
【0033】
なおさらなる例として、表1のルックアップテーブルを有するデバイスを考える。このルックアップテーブルは、熱交換器温度の全ての組合せについての入力を持たない可能性がある。こうした場合、コントローラは、あるデフォルト周波数および電力で冷凍機をターンオンし、ついには、ルックアップテーブル内のあるセットに温度が達し、その時点で、デバイスが、「ロックされる(locked)」ように設定され、コントローラが、動作パラメータを規定するためにルックアップテーブルを使用し始めることになるロジックを有してもよい。
【0034】
一般に、こうしたコントローラを設計する技法は、フィードバック制御システム設計の専門家によく知られている。
【0035】
最適周波数および電力は、熱音響デバイスごとに異なるであろう。それらはまた、冷却用電力などのユーザ選好に応じて異なるであろう。一実施形態では、コントローラ98は、特定の熱音響デバイス(たとえば、特定の寸法、材料など)のために設計される。別の実施形態では、コントローラ98は、複数のデバイストと共に使用するように構成可能である。たとえば、ルックアップテーブルは、フラッシュメモリなどの書換え可能なメモリに記憶され、各デバイスについて再プログラムされ得る。ルックアップテーブルは、所与のユニットについて固定される必要があるのではなく、異なる部屋、異なる条件などにユニットが移動する場合に変更され得る。種々の他の実施形態では、コントローラは、同じタイプ(たとえば、同じ冷却用電力)のデバイスの間で交換可能であり得る、コントローラは、異なるタイプのデバイス(たとえば、1kWユニットおよび10kWユニット)の間で交換可能であり得る、かつ/または、既存のデバイスが、センサおよびコントローラを持つように改良され得る。
【0036】
別の実施形態では、コントローラ98は、効率および電力を最適化するために、フィードバックループを使用する。外部温度および湿度ならびに温度設定点を含むユーザ設定などの一部の検知されるパラメータは、コントローラ出力に無関係である。熱交換器76、78、80の内部温度、内部圧力、および流れ速度などの他のパラメータは、VFD84の周波数および電力が変化するにつれて変わるであろう。そのため、フィードバックの実施形態では、本体72内に位置する圧力および流れ速度センサ(図示せず)などのさらなるセンサならびにVFD84の状態の尺度(VFD84とコントローラ98を接続する点線によって示される)が採用される。「フィードバック(feedback)」システムは、これらの後者の値を利用する。「フィードフォワード(feedforward)」システムだけが、前者を利用する。
【0037】
フィードフォワードシステムは、普遍的に安定であり、一方、フィードバックシステムは、普遍的に安定でない可能性がある。したがって、フィードバックを有する制御システムは、より複雑なプロセスを示唆する可能性がある。たとえば、一実施形態では、システムは、フィードフォワードタイプ(すなわち、独立)入力だけを使用して始動する。システムは、定常状態に達すると、フィードバックシステムを実施する。
【0038】
図2は、動作温度、周囲温度および湿度、ならびに選択されたユーザ入力の関数として効率を最適化する制御回路要素を含む熱音響冷凍機100の第2の実施形態の破断図である。熱音響冷凍機100は、ほぼ管状の本体102を備える。本体102内には、冷凍機104が配設される。
【0039】
冷凍機104の各横方向端部に隣接して、第1および第2の熱交換器106、108がそれぞれ存在する。熱交換器106、108は、本体102内から伝達媒体へ比較的高い熱伝達効率を提供する、いろいろな材料および構造配置構成のうちの任意のものから構築されてもよい。一実施形態では、熱交換器106、108は、加熱されるかまたは冷却される流体を内部に保持する1つまたは複数の管であってよい。熱交換器106、108は、ある材料から形成され、冷凍機の動作中に、熱交換器106、108内の流体と本体102内のガスとの間で(加熱用または冷却用の)熱エネルギーを効率的に伝達するようなサイズに作られ配置される。熱伝達を増大させるために、熱交換器106、108の表面積は、当技術分野でよく知られているフィンまたは他の構造を用いて増加されてもよい。管110、112は、蓄熱器110の外部の熱リザーバまたは負荷から/へ、熱交換器106、108へ/から流体の搬送を可能にする。
【0040】
任意選択で、第3の熱交換器114は、本体102の一方の端部内に、たとえば、熱交換器108が熱交換器114と蓄熱器104との間に位置するように配設されてもよい。第3の熱交換器114は、ある材料から形成され、冷凍機の動作中に、熱交換器内の流体と本体102内のガスとの間で(加熱用または冷却用の)熱エネルギーを効率的に伝達するようなサイズに作られ配置される1つまたは複数の管などの、第1および第2の熱交換器106、108と同様の構成であってよい。管116は、蓄熱器100の外部の熱リザーバまたは負荷から/へ、第3の熱交換器114へ/から流体の搬送を可能にする。
【0041】
電気機械ドライバ120(たとえば、音響波源)は、本体102の第1の長手方向端部に配設され、音響コンバータ122は、前記蓄熱器104を中心に前記電気機械ドライバ120に対向して本体102の第2の長方向端部に配設される。多くの異なるタイプのデバイスは、よく知られている可動コイル型、圧電型、静電型、リボン型、または他の形態のラウドスピーカなどの電気機械ドライバ82の機能を果たしてもよい。冷凍機の冷却効率が最大にされるように、非常に効率的で、コンパクトで、周波数同調可能で、周波数安定性があるスピーカ設計が好ましい。
【0042】
同様に、多くの異なるタイプのデバイスは、音響コンバータ122の機能を果たしてもよい。よく知られている静電型、電磁型、圧電型、または他の形態のマイクロフォンまたは圧力変換器が音響コンバータ122を形成する。さらに、ガススプリング、コンプライアンス要素、イナータンス要素、または他の音響要素が、コンバータ122の機能を増大するために採用されてもよい。やはり、効率は、蓄熱器の冷却効率が最大にされるような音響コンバータ122の好ましい属性である。
【0043】
可変周波数ドライバ(VFD)126は、(当技術分野で知られているタイプの)コンバイナ128への入力として接続される。VFD126は、非常に高い変換効率を持って、所望の周波数および振幅で電気機械ドライバ120を駆動することが可能である。コンバイナ128の出力は、インピーダンス回路Zへの入力を形成する。インピーダンス回路Zの出力は、音響源120への入力を形成する。第2のインピーダンス回路Zの出力は、コンバイナ128への入力として接続される。音響コンバータ122からの出力は、インピーダンス回路Zへの入力として提供される。インピーダンス回路Z、Zの役割は、所望の周波数および位相で効率的に電気機械ドライバ120を駆動するように、システムインピーダンスを整合させることである。位相遅延回路φ(W)はまた、当技術分野でよく知られているように、所望の位相合わせを達成するために採用されてもよい。
【0044】
動作時、VFD126からの振動する電力は、ハウジング102内にシールされたヘリウムなどのガス中で音響振動を発生する電気機械ドライバ82に提供される。寸法の適切な選択ならびにハウジング102および蓄熱器104についての適切な材料選択ならびに適切なガスの使用によって、適切なスターリングサイクルが、蓄熱器74の領域で始動され、システムが定常状態に達すると、第1の熱交換器106、「高温」熱交換器が、第2の熱交換器108、「低温」熱交換器より比較的高い温度になるように、蓄熱器104内で温度勾配が確立される。蓄熱器104は、熱エネルギーを貯蔵し、エネルギー変換効率を著しく改善するのに役立つ。
【0045】
VFD126が電気機械ドライバ120を駆動する周波数および/または振幅を確定するときに、種々のシステムおよび周囲温度を考慮するために、いくつかの検知デバイス(やはり、周囲温度および湿度などのデバイスの動作状態とほぼ無関係な量を検知する検知デバイス、および、内部圧力振幅、ガス流量、熱交換器温度、および冷却される空間の温度などの、デバイスの動作状態にある程度またはほぼ依存する量を検知する検知デバイス)が採用される。図2の実施形態では、センサは、熱交換器106に近接した本体102の内部の温度を測定する熱電対140、熱交換器106内の熱交換流体の温度を測定する熱電対142、熱交換器108内の熱交換流体の温度を測定する熱電対144、熱交換器108に近接した本体102の内部の温度を測定する熱電対145、熱交換器114内の熱交換流体の温度を測定する熱電対146、および熱交換器114に近接した本体102の内部の温度を測定する熱電対147などの熱電対である。やはり、温度センサとしての熱電対の使用は、例証に過ぎず、任意のタイプの温度センサが利用されてもよい。
【0046】
温度計または熱電対などのような温度センサ148は、冷凍機によってそこへ熱が排除される空間内の周囲温度を測定するために配設される。さらに、湿度計(湿度センサ)150は、冷凍機によってそこへ熱が排除される空間内の周囲湿度を測定するために配設されてもよい。種々の熱電対、温度計、および湿度計が、図1で開示され示されたが、これらの要素の多くはオプションであることが留意されるべきであり、最小の実施形態は、単一の熱電対、温度計、または他のセンサを備える。さらに、さらなる熱電対、温度計、および内部圧力センサなどのような他の温度関連センサが、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の組合せで設けられてもよい。
【0047】
熱電対104、142、144、および146、温度計148、ならびに湿度計150(ならびに他のセンサデバイス)はそれぞれ、コントローラ152にデータ信号を提供するために接続される。コントローラ152は、種々の温度、湿度、および他の測定値を使用して、VFD126を制御するための制御信号を生成し、VFD126は、効率または冷却用電力を最適化するために、電気機械ドライバ120の周波数および入力電力、電流、および/または電圧を制御する(変える)。コントローラ152はまた、位相(φ(W))およびインピーダンス(zおよびz)を制御してもよい。
【0048】
コントローラ152へのさらなる入力は、調整可能なユーザパラメータ154であってよい。こうしたユーザ入力パラメータは、熱音響冷凍機100用の、所望の冷却用電力、最大電力消費、所望の冷却温度などを含んでもよい。
【0049】
一実施形態によれば、コントローラ152は、周囲温度から周波数および電力へのマッピングを含むルックアップテーブルに従って、電気機械ドライバ120の周波数および/または電力を変えるようにプログラムされているロジックを備える。たとえば、周囲温度が増加するにつれて、電力は一定のままにされ、周波数は増加させられ得る。一実施形態では、ルックアップテーブルは、埋め込み式マイクロプロセッサならびにアナログ−デジタル変換器およびデジタル−アナログ変換器によって実施され得る。別の実施形態では、VFDおよびトランジスタ増幅器と電子コンポーネントの組合せからなる完全アナログ解決策が使用され得る。なお別の実施形態では、アナログロジックとデジタルロジックの組合せが使用され得る。
【0050】
最適周波数および電力は、熱音響デバイスごとに異なるであろう。それらはまた、冷却用電力などのユーザ選好に応じて異なるであろう。そのため、ユーザは、たとえば、ソフトウェアインタフェース(図示せず)を介して、コントローラ152への種々の入力154に対する制御を備えてもよい。
【0051】
フィードバックの実施形態では、本体102内に位置する圧力および流れ速度センサ(図示せず)などのさらなるセンサ、VFD126の状態の尺度、および/またはコンバータ122の出力の尺度が採用される。
【0052】
上述した配置構成は、熱音響冷凍機の他の構成に拡張され得ることが理解されるであろう。図3は、こうした代替物の一例を示す。図3に示す熱音響冷凍機200は、直列接続された冷却ステージを有する閉ループ装置である。簡潔に言えば、こうしたシステムは、2つ以上の冷却ステージ202a、202bを備え、冷却ステージ202a、202bはそれぞれ、本質的に上述したように配列された、電気機械ドライバ204a、204b、第1の熱交換器206a、206b、蓄熱器208a、208b、第2の熱交換器210a、210b、およびオプションの第3の熱交換器212a、212bを含む。各ステージ202a、202bはさらに、次のステージの電気機械ドライバの後ろ側に直列に接続された音響伝送ライン214a、214b(一実施形態では、音響波がそこを通って進行する可能性があるチャネルである)を備える。
【0053】
図3に示す実施形態によれば、熱電対222a、224a、および226aは、熱交換器206a、210a、および212a内の熱交換流体の温度をそれぞれ測定するために設けられる。熱電対221a、223a、および225aは、熱交換器206a、210a、および212aに近接した温度をそれぞれ測定するために設けられる。同様に、熱電対222b、224b、および226bは、熱交換器206b、210b、および212b内の熱交換流体の温度をそれぞれ測定するために設けられる。そして、熱電対221b、223b、および225bは、熱交換器206b、210b、および212bに近接した温度をそれぞれ測定するために設けられる。
【0054】
さらに、温度計228は、冷凍機によってそこへ熱が排除される空間内の周囲温度を測定するために設けられる。湿度計(湿度センサ)230は、冷凍機によってそこへ熱が排除される空間内の周囲湿度を測定するために設けられる。もう一度、種々の場所における温度および湿度のチェックが、ここで提案されたが、多くのチェックはオプションであり、多くの異なる組合せおよびさらなる尺度が、本明細書で可能であり想定される。
【0055】
熱電対、温度計228、および湿度計230(ならびに他のセンサデバイス)はそれぞれ、コントローラ232にデータを提供する。コントローラ232は、種々の温度、湿度、および他の測定値を使用して、VFD234a、234bを制御するための制御信号を生成し、VFD234a、234bは、効率または冷却用電力を最適化するために、電気機械ドライバ204a、204bに提供される周波数、相対位相、および入力電力、電流、および/または電圧、ならびに/または、ドライバの電流および/または電圧の相対位相を制御する(変える)。コントローラ232は、VFD234a、234bを独立に制御することが可能であり、それにより、ステージ202aと202bとの間の、材料、寸法、場所、および他の変数の差が補償されることが留意されるべきである。
【0056】
コントローラ232へのさらなる入力は、調整可能なユーザ入力パラメータ236であってよい。こうしたユーザ入力パラメータは、熱音響冷凍機200用の、所望の冷却用電力、最大電力消費、所望の冷却温度などを含んでもよい。
【0057】
上述したように、一実施形態では、コントローラ232は、各ステージについて、温度から周波数、電力、および位相へのマッピングを含むルックアップテーブルに従って、電気機械ドライバ204a、204bの周波数および/または電力および/または電流位相を変えるようにプログラムされている(また任意選択で、再プログラム可能な)ロジックを備える。別の実施形態では、各ステージ202a、202bについて、VFDおよびトランジスタ増幅器と電子コンポーネントの組合せからなる完全アナログ解決策が使用され得る。なお別の実施形態では、アナログロジックとデジタルロジックの組合せが使用され得る。
【0058】
さらに、コントローラ232へのオプションの入力は、VDF234a、234bからのフィードバックならびに本体201内に位置する圧力および流れ速度センサ(図示せず)などのさらなるセンサからのデータである。フィードバックループが使用されて、先に説明したように、さらに、熱音響冷凍機200の効率および/または電力使用が最適化され、動作上の安定性が提供されてもよい。
【0059】
上記説明は、熱音響冷凍機の最適化制御の観点からであったが、本明細書に開示される一般的な原理は、熱音響熱機関に同様に適用されてもよい。図4は、これらの一般的な原理を組み込む熱音響熱機関300の一実施形態の断面図である。熱音響熱機関300の多くの要素は、よく知られているが、簡潔に言えば、内部に蓄熱器304が配置されている中空でループ式でシールされた本体構造302を備える。蓄熱器は、蓄熱器の第1の端部の第1の熱交換機306(一般に、「低温」交換器)および蓄熱器の対向する端部の第2の熱交換機308(一般に、「高温」交換器)に近接する。ほぼ周囲温度の第3の熱交換器310は、任意選択で存在してもよい。中空本体構造302の延長部の形態の共振器312が設けられる。本体構造302は、加圧ガスで充填される。蓄熱器304の前後に、すなわち、低温熱交換器306と高温熱交換機308との間に温度差が生じ、ガスを局所的な熱伝達にさらす。蓄熱器の領域内の圧力波の形態の音響エネルギーは、ガスを局所的で周期的な圧縮および膨張にさらす。有利な音響条件下で、ガスは、蓄熱器304内で適切なスターリングサイクルを効果的に受ける。
【0060】
流体抵抗損失を低減するために、蓄熱器304において大きな音響インピーダンスを有することが望ましい。したがって、知られている熱音響熱機関の1つのファミリは、この大きなインピーダンスを達成するために、音響共振器および/または音響フィードバックネットワーク314を使用する。しかし、こうしたネットワークは、使用中に調整可能でなく、動作を最適化するために熱機関の動作条件を考慮しない。
【0061】
したがって、図4に示す実施形態は、電気機械変換器316などの可変音響インピーダンスを備え、電気機械変換器316は、たとえばデバイスの共振周波数を修正することによって、熱音響熱機関300の効率および動作を最適化するためのインピーダンス調節(負荷)を提供してもよい。本質的に、本体302内の圧力波のエネルギーの制御可能な部分は、種々のシステムおよび周囲温度および動作条件に応じて、電気機械変換器316によって電気エネルギーに変換されてもよい。
【0062】
周波数およびインピーダンス調節のための電気機械変換器316の動作を確定するときに、種々のシステムおよび周囲温度を考慮するために、いくつかの温度センサが採用される。図4に示す実施形態によれば、これらのセンサは、熱交換器306、308、および310内の熱交換流体の温度を測定する熱電対322、324、および326などの熱電対の形態をとる。さらに、熱電対321、323、および325は、熱交換器306、308、および310に近接する本体302内の温度を測定するために設けられる。
【0063】
さらに、温度計328は、冷凍機によってそこへ熱が排除される空間内の周囲温度を測定するために設けられる。さらに、湿度計(湿度センサ)330は、冷凍機によってそこへ熱が排除される空間内の周囲湿度を測定するために設けられる。もう一度、種々の場所における温度および湿度のチェックが、ここで提案されたが、多くのチェックはオプションであり、多くの異なる組合せおよび追加が、本明細書で可能であり想定される。
【0064】
熱電対、温度計328、および湿度計330(ならびに他のセンサデバイス)は、コントローラ332にデータを提供するために接続される。コントローラ332は、種々の温度、湿度、および他の測定値を使用して、電気機械変換器316に接続される、以下でさらに詳細に述べる負荷制御回路324を制御するための制御信号を生成する。負荷制御回路324は、電気機械変換器316によって提示される負荷を制御し(変え)、したがって、加熱効率を最適化するように熱音響熱機関300内のインピーダンスを調節する。
【0065】
コントローラ332へのさらなる入力は、調整可能なユーザ入力パラメータ336であってよい。こうしたユーザ入力パラメータは、熱音響熱機関300用の、所望の加熱、効率指数などを含んでもよい。
【0066】
上述したように、一実施形態では、コントローラ332は、温度から負荷へのマッピングを含むルックアップテーブルに従って、負荷制御回路334を制御するようにプログラムされている(また任意選択で、再プログラム可能な)ロジックを備える。別の実施形態では、負荷制御回路334およびトランジスタ増幅器と電子コンポーネントの組合せからなるアナログ解決策が使用され得る。なお別の実施形態では、アナログロジックとデジタルロジックの組合せが使用され得る。
【0067】
図5は、図4の熱音響熱機関300内で使用されてもよいタイプの負荷制御回路334の一例を示す。図5に示す実施形態では、コントローラ332の制御下の、可変タップ変圧器回路が示される。バラクタ回路などのような多くの他の回路デバイスが、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、採用されてもよい。電気機械変換器316は、負荷制御回路334にs、tにおいて接続される。電気機械変換器316によって減衰される電力の少なくとも一部分は、u、vの負荷制御回路334の出力で使用するために利用可能であり、u、vが接続されるシステム350は、電気機械変換器316のインピーダンスに部分的に影響することになる。そのため、一実施形態では、コントローラ332が、最適化された制御信号を負荷制御回路334に提供するように、フィードバック信号が、システム350からコントローラ332に戻るように提供される。
【0068】
上述した配置構成は、熱音響熱機関の他の構成に拡張され得ることが理解されるであろう。図6は、こうした代替物の一例、この場合、2ステージループ式熱機関500を示す。簡潔に言えば、こうしたシステムは、ほぼ2つの加熱ステージ504a、504bに分割されたハウジング502を備える(しかし、3つ以上のステージが、本開示の範囲内にある)。各ステージ504a、504bには、先の説明と一貫性を持って配置され動作する、第1の熱交換器506a、506b、蓄熱器508a、508b、第2の熱交換器510a、510b、およびオプションの第3の熱交換器512a、512bが配設される。同様に、各ステージ内には、電気機械変換器514a、514bが配設される。各ステージ504a、504bはさらに、次のステージの電気機械変換器の後ろ側に直列に接続された音響伝送ライン516a、516b(一実施形態では、音響波がそこを通って進行する可能性があるチャネルである)を備える。
【0069】
図6に示す実施形態によれば、熱電対520a、520bは、熱交換器506a、506b内の熱交換流体の温度をそれぞれ測定するために設けられ、熱電対522a、522bは、熱交換器510a、510b内の熱交換流体の温度をそれぞれ測定するために設けられ、任意選択で、熱電対524a、524bは、熱交換器512a、512b内の熱交換流体の温度をそれぞれ測定するために設けられる。さらに、熱電対519a、521a、および523aは、熱交換器506a、510a、および512aに近接した本体501の内部の温度をそれぞれ測定するために設けられる。なおさらに、熱電対519b、521b、および523bは、熱交換器506b、510b、および512bに近接した本体501の内部の温度をそれぞれ測定するために設けられる。
【0070】
温度計528は、熱機関によってそこへ熱が排除される空間内の周囲温度を測定するために熱音響熱機関500に近接して設けられる。さらに、湿度計(湿度センサ)530は、熱機関によってそこへ熱が排除される空間内の周囲湿度を測定するために熱音響熱機関500に近接して設けられてもよい。もう一度、種々の場所における温度および湿度のチェックが、ここで提案されたが、多くのチェックはオプションであり、多くの異なる組合せが、本明細書で可能であり想定される。本発明者等は、最小の実施形態が、熱電対518a、518bを備えることを提案する。さらなる熱電対、温度計、湿度センサ、ならびに、圧力センサなどのような他の温度関連センサが、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の組合せで設けられてもよい。
【0071】
熱電対、温度計528、および湿度計230(ならびに他のセンサデバイス)はそれぞれ、コントローラ532にデータを提供するために接続される。コントローラ532は、種々の温度、湿度、および他の測定値を使用して、電気機械変換器514a、514bのタップs、tにそれぞれ接続される負荷制御回路(図示せず)を制御するための制御信号を生成する。コントローラ532は、電気機械変換器514a、514bの独立した負荷調整のために各負荷制御回路を独立に制御することが可能であり、それにより、ステージ504aと504bとの間の、材料、寸法、場所、および他の変数の差が補償されることが留意されるべきである。
【0072】
コントローラ532へのさらなる入力は、調整可能なユーザ入力パラメータ534であってよい。こうしたユーザ入力パラメータは、熱音響熱機関500用の、所望の熱消費、出力電力などを含んでもよい。
【0073】
上述したように、一実施形態では、コントローラ532は、各ステージについて、温度から負荷へのマッピングを含むルックアップテーブルに従って、電気機械変換器514a、514b用の負荷制御回路を制御するようにプログラムされている(また任意選択で、再プログラム可能な)ロジックを備える。別の実施形態では、負荷制御回路およびトランジスタ増幅器と電子コンポーネントの組合せからなるアナログ解決策が使用され得る。なお別の実施形態では、アナログロジックとデジタルロジックの組合せが使用され得る。
【0074】
やはり、電気機械変換器514a、514bによって減衰される少なくとも一部の電力は、有用な仕事を実施するために使用されてもよい。nステージ熱音響熱機関の場合、この電力を提供するn個ほどの電気機械変換器が存在してもよい。これらの電気機械変換器からの出力は、図7に示すコンバイナ回路352で結合されて、仕事を実施するシステム(図示せず)に接続するために、単一出力対x、yを提供する。同様に先に説明したように、xおよびyが接続されるシステムは、nステージ熱機関内の電気機械変換器の周波数およびインピーダンスに部分的に影響することになる。そのため、一実施形態では、最適化された制御信号が種々の負荷制御回路(図5の負荷制御回路334など)に提供されるように、フィードバック信号が、そのシステムからコントローラ(図6のコントローラ532など)に戻るように提供される。
【0075】
特許請求の範囲の制限は、これらの制限を含みかつ制限までの、本開示の境界を規定することを意図される。これをさらに強調するために、用語「実質的に(substantially)」は、請求項の制限に関連して本明細書で時々使用されてもよい(しかし、変形および不完全さについての考慮事項は、その用語と共に使用される制限だけに限定されない)。本開示自体の制限をできる限り厳密に規定することは難しいが、本発明者等は、この用語が、「かなりの程度まで(to a large extent)」、「実用的であるのと同程度に(as nearly as practicable)」、「技術的制限内で(within technical limitations)」などとして解釈されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱音響装置であって、
作動ガスを含むほぼ中空でシールされた本体と、
前記本体内に配設された蓄熱器と、
前記本体内に配設され、前記蓄熱器の第1の長手方向端部で前記蓄熱器に近接する第1の熱交換器と、
前記本体内に配設され、前記蓄熱器の第2の長手方向端部で前記蓄熱器に近接する第2の熱交換器と、
電気機械ドライバであって、電気機械ドライバからの音響エネルギーが前記本体内に送られるように、前記第1の熱交換器に近接して前記本体内に配設された、電気機械ドライバと、
熱音響装置の局所温度を測定し、温度データ信号を提供する温度センサと、
前記温度データ信号に基づいて制御信号を確定し提供するための、前記温度センサに通信可能に接続されたコントローラと、
前記コントローラから制御信号を受信し、少なくとも部分的に前記制御信号の関数として、可変ドライブ信号を前記電気機械ドライバに提供するための、前記電気機械ドライバおよび前記コントローラに通信可能に接続された可変周波数ドライバとを備える熱音響装置。
【請求項2】
前記温度センサは、熱音響装置の外側でかつ熱音響装置が動作するエリア内の温度を測定し、前記温度に相当する周囲温度データ信号を提供し、
前記コントローラは、少なくとも部分的に複数の前記周囲温度データ信号から前記制御信号を生成し、前記複数の周囲温度データ信号はそれぞれ、熱音響装置の動作中に種々の時刻に取得され、それにより、前記電気機械ドライバの動作は、熱音響装置について、選択され最適化された効率の動作を提供し、
前記第1または第2の熱交換器の少なくとも一方に近接する前記本体内の温度を測定し、本体温度データ信号を提供する本体温度センサをさらに備え、前記コントローラは、少なくとも部分的に複数の前記周囲温度データ信号および前記本体温度データ信号から前記制御信号を生成し、前記複数の周囲温度データ信号および本体温度データ信号はそれぞれ、熱音響装置の動作中に種々の時刻に取得され、それにより、前記電気機械ドライバの動作は、熱音響装置について、選択され最適化された効率の動作を提供し、
熱音響装置の動作中に前記第1の熱交換器内に配設された流体の温度を測定し、第1の熱交換器温度データ信号を提供する第1の熱交換器温度センサと、
熱音響装置の動作中に前記第2の熱交換器内に配設された流体の温度を測定し、第2の熱交換器温度データ信号を提供する第2の熱交換器温度センサとをさらに備え、
前記コントローラは、前記第1の熱交換器温度センサおよび前記第2の熱交換器温度センサにさらに通信可能に接続され、前記制御信号は、前記第1および第2の熱交換器温度データ信号に基づいてさらに確定される請求項1に記載の熱音響装置。
【請求項3】
前記蓄熱器を中心に前記電気機械ドライバに対向して前記本体内に配設された音響エネルギーコンバータであって、それにより、前記本体内の音響エネルギーの少なくとも一部分が、コンバータに送られ、それにより、電気エネルギーに変換される、音響エネルギーコンバータをさらに備え、
前記コンバータは、前記コントローラに通信可能に結合され、前記制御信号は、フィードバックループにおいて前記音響エネルギーコンバータからのデータに基づいてさらに確定される請求項1に記載の熱音響装置。
【請求項4】
熱音響熱機関であって、
作動ガスを含むほぼ中空でシールされた本体と、
前記本体内に配設された蓄熱器と、
前記本体内に配設され、前記蓄熱器の第1の長手方向端部で前記蓄熱器に近接する第1の熱交換器と、
前記本体内に配設され、前記蓄熱器の第2の長手方向端部で前記蓄熱器に近接する第2の熱交換器と、
前記本体内に配設された音響エネルギーコンバータであって、それにより、前記本体内の音響エネルギーの少なくとも一部分が、コンバータに送られ、それにより、電気エネルギーに変換される、音響エネルギーコンバータと、
熱音響熱機関の動作中に前記本体の周囲領域内の温度を測定する周囲温度センサと、
前記周囲温度センサからのデータに基づいて制御信号を確定し提供するための、前記周囲温度センサに通信可能に接続されたコントローラと、
前記コントローラから制御信号を受信し、少なくとも部分的に前記制御信号の関数として、可変周波数および可変インピーダンス負荷を前記電気機械ドライバに提供するための、前記音響エネルギーコンバータおよび前記コントローラに通信可能に結合した可変インピーダンス負荷と、
前記可変インピーダンス負荷に電気的に結合された出力端子であって、それにより、熱機関の外部で利用するために、前記音響エネルギーコンバータによって生成された電気エネルギーの少なくとも一部分が、出力端子に提供される、出力端子とを備える熱音響熱機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−237165(P2011−237165A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90188(P2011−90188)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated