説明

動作訓練機構

【課題】訓練者の特徴や事情、生活空間等に沿って日常動作の訓練を行える。
【解決手段】動作訓練機構1は、便座6を設けた支持壁3と、支持壁3の一端部に取り付けた移動壁4とを設けた。移動壁4の表面と裏面には支持板16上に水平手摺り18と縦手摺り20をそれぞれ設けた。支持板16はガイドレール14に沿ってガススプリング17によってワンタッチで昇降可能であり、縦手摺り20は貫通孔に水平手摺り18を挿通させて、水平手摺り18に沿ってワンタッチで移動可能である。移動壁4の上梁27の端部に設けた連結部材29には上部ガイド部材11に嵌合する第二凹部を形成し、移動壁4の下梁28の端部に下部ガイド部材12に嵌合する係合部を設けた。移動壁4は支持壁3の上部ガイド部材11と下部ガイド部材12に沿って移動し、移動壁4の停止位置は便座6のいずれかの側に設置できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば疾患やケガ等のために身体の一部が麻痺したり不自由になった患者や身体障害者等が日常生活を送ったり社会復帰したりするために、ADL(日常動作訓練)設備による訓練を行うことで自立したり社会復帰したりするための身体機能を回復できるようにする動作訓練機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、患者や身体障害者等(以下、身体障害者等という)が病院やリハビリテーション施設等でADL装置で訓練を行う場合、訓練に使用する機器は1人ずつ使用するものが多く、その間、他の身体障害者等は使用できないので順番を待たねばならなかった。
従来のADL装置では、在宅環境に合わせて、扉を開けてからトイレ室内に入って用を足すまでの一連の動作が出来る訓練機器はなく、手摺の高さ調節もノブネジ等による高さ調節が面倒であった。
【0003】
特許文献1に記載されたADL装置によれば、便座の高さや左右の壁に調節可能な手摺に目盛がついており手摺の高さや位置が数値化できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−312148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来型のADL装置や実際のトイレでの日常の動作訓練では、複数の訓練者が同時に訓練することはできなかった。また、従来のADL装置では、トイレの便座に着座する等の単一の動作だけで訓練が終了することが多く、扉を開けてトイレ内で歩行して便座に着座して退去する等の一連の連続した訓練動作ができなかった。
また、従来のADL装置のこれらの設備は狭い場所にあり、しかも右利きや左利き等の患者や片麻痺の身体障害者の個々の事情を考慮した設備になっていないために、上述したADL装置は日常動作訓練を行うための訓練器具としては不十分であり、十分な社会復帰用の訓練は行えなかった。しかも、従来型のADL装置では手摺の高さ調節はノブネジで調節と固定を行うことが多く、手摺の位置調節が面倒であった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みて、身体障害者等の特徴や事情を考慮して、そして実際の生活空間に近い状況下で日常動作の訓練を行うことのできる動作訓練機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による動作訓練機構は、日常動作器具を設けた第一壁と、第一壁の日常動作器具に対して少なくともいずれか一方側に取り付けた第二壁とが設けられ、第一壁に設けられた日常動作器具を着脱又は跳ね上げて第二壁を第一壁に沿って任意の位置に移動可能であり、第二壁の表裏両面または日常動作器具側を向く面に手摺りが設けられていることを特徴とする。
本発明による動作訓練機構によれば、第二壁に表裏面に手摺りを設けたために、訓練者が動作訓練を行う場合、第一壁に設けた日常動作器具に対して第二壁の手摺りを伝わって日常動作器具に移動して動作訓練を行うことができる。しかも、日常動作器具に対して第二壁と反対側に介助スペースを確保できて訓練と介助を同時に行うことができる。また、第二壁の表裏両面に手摺りを設けたことで、第二壁の両側で個別に別個または同一のリハビリ等の訓練を行える。
このように、日常動作器具を取り付けた第一壁と手摺りを設けた第二壁を互いに接続することで、仮設的にしかも擬似的に室内等の構造を形成することができて、日常生活に即して各種動作や作業のリハビリテーション等を含む各種訓練を行うことができる。
【0008】
また、第二壁は第一壁に設けた水平方向のガイド部材に沿って移動可能であり、第二壁の第一壁に対する停止位置を日常動作器具のいずれかの側に設定可能とすることができる。
第二壁の表裏両面に手摺りが設けられているため、第一壁に設けた日常動作器具と第二壁に設けた手摺りとの位置関係を右利き用と左利き用とで使い分けて適宜設定できる。日常動作器具に対して第二壁の手摺りと反対側のスペースを手摺り等のない介助スペースとして設定することができるから、訓練と介助のスペースを容易に確保できる。
【0009】
また、第一壁または第二壁の自由端部側に扉を装着してもよく、このような構成を採用すれば、扉の開閉動作を含めて訓練者が日常動作訓練を行うことができる。
ここで、自由端部側とは第一壁と第二壁とが互いに接続されていない側の第一壁または第二壁の端部をいう。
【0010】
また、扉は、扉を設けた第一壁または第二壁に対して少なくとも略90°の角度位置、略180°の角度位置、略270°の角度位置、略360°の角度位置のいずれかに選択的に設置可能としてもよい。
第一壁や第二壁に対して任意の角度で設けた扉を固定できるため、在宅環境に近い扉の位置を設定でき、日常動作訓練のバリエーションが多くなる。なお、扉を設けた第一壁または第二壁に対して略360°の角度位置に折り曲げると扉が邪魔にならないように格納できて、訓練できる。
【0011】
また、手摺りは第二壁に設けた支持部材に支持されていて、支持部材を昇降可能としてもよく、支持部材を昇降させることで手摺りを一体に昇降できるため、訓練者の背の高さ等各種の状況に応じて訓練を行うことができる。
【0012】
また、日常動作器具は便座であり、便座は第一壁への取り付け高さを調整可能または格納可能としてもよく、これによって便座を利用する身体障害者等の背丈等に応じて調整できるため、訓練に便利である。
【発明の効果】
【0013】
本発明による動作訓練機構によれば、第二壁に手摺りを設けたために、訓練者が動作訓練を行う場合、第一壁に設けた日常動作器具に対して第二壁の手摺りを伝わって日常動作器具に移動して動作訓練を行うことができる。しかも、日常動作器具に対して第二壁と反対側に介助スペースを確保できて訓練と介助を同時に行うことができる。
また、第二壁の両面に手摺りを設けた場合には、第二壁の両側で個別に同一または別個のリハビリ等の訓練を行える。
本発明によれば、日常動作器具を取り付けた第一壁と手摺りを設けた第二壁を互いに接続することで、仮設的にしかも擬似的に室内等の構造を形成することができて、疑似的に日常生活での各種動作や作業のリハビリテーション等を含む各種訓練を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一実施形態による動作訓練機構を示す斜視図である。
【図2】図1に示す動作訓練機構の移動壁側から見た正面図である。
【図3】支持壁に設置した便座を示す要部斜視図である。
【図4】図3に示す便座のロック解除ボタンを示す斜視図である。
【図5】図4に示す便座の係止板内に設けたロック機構を示す要部断面図である。
【図6】図1に示す動作訓練機構に対して移動壁を支持壁の反対側に設置した状態の斜視図である。
【図7】本発明の第二実施形態による動作訓練機構の斜視図である。
【図8】図7に示す第二実施形態による動作訓練機構の平面図である。
【図9】図7に示す動作訓練機構の扉部分の断面図である。
【図10】図8に示す扉部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1乃至図6は本発明の第一実施形態による動作訓練機構1を示すものである。
動作訓練機構1は、例えば基部シート2の上に支持壁3が起立状態で支持され、支持壁3の一方の端部側に移動壁4が略直角に連結されている。そして、支持壁3には日常動作器具として例えば便座6が取り付けられ、便座6の上面には弁蓋7が開閉可能に支持されている。これにより、動作訓練機構1は訓練者として患者または身体障害者等(以下、単に身体障害者等という)が便座6に着座して排便するための動作訓練に用いられるものである。
なお、便座6は支持壁3の上側に回動(格納)可能に構成する。
【0016】
以下、動作訓練機構1について詳述する。
図1及び図2に示す動作訓練機構1において、支持壁3は両側端部に支柱3a、3bが設けられ、各支柱3a、3bの下端には固定脚9aを設けた脚部9が支柱3に直交して固定されている。また、各支柱3a、3bには支持壁3の起立状態を補強する補強アーム10が設けられて下端が脚部9に連結されている。
そして、支持壁3において上側と便座6の下側とにはそれぞれ水平方向に延びる上部ガイド部材11と下部ガイド部材12が固定されている。
【0017】
また、移動壁4には、図1及び図2に示すように、その水平方向の両側に一対のガイドレール14、14が上下方向に固定され、このガイドレール14には、裏面に摺動可能に設けられた摺動素子(図示せず)を嵌合させることによって昇降可能な支持板16(支持部材)が設けられている。支持板16には水平方向に延びる水平手摺り18がその両端で固定されており、水平手摺り18は上下方向に延びる縦手摺り20に設けた貫通孔20aに挿通されている。縦手摺り20は貫通孔20aによって水平手摺り18に沿って水平移動可能とされている。
【0018】
この縦手摺り20はその長手方向途中部分に設けた摺動連結部22によって支持板16の上端縁に沿って水平方向に摺動可能とされている。そして、支持板16はその裏面または表裏面の両方に上下方向に取り付けたガススプリング17によって昇降可能とされ、任意の高さで停止するようになっている。また、図2に示すように、水平手摺り18の端部と縦手摺り20の摺動連結部22にはそれぞれ指針18a、22aが設けられており、移動壁4の支柱23及び支持板16にそれぞれ設けた高さ目盛り24,水平目盛り25との関係でその高さ位置と水平方向の位置を表示できるようになっている。
これら、ガイドレール14、支持板16,水平手摺り18及び縦手摺り20は手摺り機構21を構成しており、手摺り機構21は移動壁4の表面と裏面とにそれぞれ設けられている。なお、手摺り機構21は支持板16の片面にのみ設けてもよい。
【0019】
また、支持板16には、便座6に対応する適宜の高さ位置にペーパーホルダー26が例えばマグネットで装着されている。
また、移動壁4において、その上端部と下端部に水平方向に延びる上梁27と下梁28が設けられている。図2に示すように、上梁27の一端部には連結部29が下向きの第一凹部29aを嵌合させて固定されており、更に連結部29には支持壁3の上部ガイド部材11に係合可能な下向きの第二凹部29bが設けられている。連結部材29には第二凹部29bを上部ガイド部材11に嵌合させた状態で固定するための固定ネジ30が設けられている。
そして、図3に示すように、移動壁4の下梁28の一端部には、支持壁3の下部ガイド部材12に係合して摺動可能な断面略コの字形状の係合部32が設けられている。
【0020】
そのため、連結部材29の固定ネジ30を緩めた状態で、支持壁3の便座6を支持板16の上側に跳ね上げることで、移動壁4の第二凹部29bと係合部32を支持壁3の上部ガイド部材11、下部ガイド部材12に沿って摺動させて、支持壁3の便座6に対して移動壁4を図1に示す右方位置または図6に示す左方位置に移動可能である。その際、図1及び図2において、移動壁4の支柱23の下端には車輪31が取り付けられ、移動壁4の移動を容易にしている。
また、図1に示すように支柱23の下部には、移動壁4の倒れを防止するための略L字形状の倒れ防止バー33が支柱23に設けた支軸回りに回動可能に設けられている。
【0021】
次に支持壁3に設けた便座6の高さ調整機構について図3及び図4により説明する。
図3及び図4において、支持壁3の便座6を係止する部位に、略瓢箪形の一対の係合穴34が上下方向に複数対、例えば3対設けられている。便座6の基部には略垂直に係止板36が設けられており、図5に示す係止板36の裏面に設けた一対のフック36aをいずれかの一対の係合穴34を選択して係合することで、異なる高さ位置に便座6を固定できるようになっている。
【0022】
なお、図5に示すロック手段では、便座6のロック時には、フック36aを瓢箪形の係合穴34の大径部から小径部へ落下させることで、係止板36内に設けた略U字状のロック機構39が支持壁3に設けた便座固定用のロック軸38にコマが嵌合してロックされるように構成した。また、ロック解除時には、便座6の係止板36の側部に設けたロック解除ボタン37を押すことでロック機構39のコマが回動してロック軸38から外れて、ロックが解除される。この状態で、手動で便座6を持ち上げれば、フック36aは係合穴34から外れるため、別の段の一対の係合穴34にフック36aを係合させることで、便座6の高さを調整できる。
なお、ロック軸38とロック機構39を設けずに、フック36aと瓢箪形の係合穴34だけで便座6の高さ調整手段とロック手段を構成してもよい。
【0023】
本第一実施形態による動作訓練機構1は上述の構成を備えているから、患者や身体障害者等が日常生活復帰のためのリハビリ等の際に、例えばトイレ動作訓練を行うものとする。
図1及び図2に示すように、例えば便座6に向かう身体障害者等の左側に不自由がある場合、便座6を取り付けた支持壁3に対して右側に移動壁4を取り付けるものとする。そして、便座6に向かう身体障害者等の右側に水平手摺り18と縦手摺り20とペーパーホルダー26が設けられており、身体障害者等は水平手摺り18や縦手摺り20に捕まりながら歩行して便座6に着座する訓練を行う。
また、便座6に着座する身体障害者等に対して移動壁4と反対側には空間があり、この介助スペースPに介助者が立って介助作業を行うことができる。
【0024】
また、動作訓練機構1において、例えば便座6に向かう身体障害者等の右側部分に不自由がある場合、支持壁3に対する移動壁4の取付位置を反対側の端部に取り付けることが好ましい。そのため、まず便座6を支持壁3の上側に跳ね上げて、支持壁3の上部ガイド部材11に第二凹部29bが嵌合した状態で、移動壁4の上梁27に固定した連結部材29の固定ネジ30を緩める。
【0025】
また、下部ガイド部材12に下梁28の係合部32を係合させる。この状態で、移動壁4を支持壁3の一端側から他端側に移動させる。そして、移動壁4が便座6を越えた適宜位置で停止させ、連結部材29の固定ネジ30をねじ込んで移動壁4を支持壁3の上部ガイド部材11に固定することで、図6に示す状態になる。
この状態で、移動壁4の両面に手摺り機構21を設けているため、便座6に向かって左側に移動壁4と水平手摺り18及び縦手摺り20が位置することになる。すると、手摺り機構21は、図1における移動壁4の便座6側に向く手摺り機構21と反対側の手摺り機構21が便座6に対向する位置にあり、トイレ訓練用に用いられる。
【0026】
図6に示す動作訓練機構1では、身体障害者等は支持壁3の便座6に向かった状態で、例えば左手で水平手摺り18等につかまりながら便座6まで移動することで動作訓練ができる。そして、便座6に対して移動壁4とは反対側に介助スペースPが形成されることになり、介助者が介助作業を行える。
【0027】
上述のように本実施形態による動作訓練機構1によれば、移動壁4の両面に手摺り機構21を設けたために、支持壁3の便座6に対して左右いずれの側に移動壁4を取り付けたとしても、トイレ訓練を行う際に便座6に対して一方に移動壁4の各手摺り18、20を設け、他方に介助スペースPを確保できて訓練と介助を行い易い。
しかも、移動壁4の両面に手摺り機構21を設けたから、移動壁4の両側で個別に同一または別個のリハビリ等の訓練を行える。また、支持壁3に設けた便座6に対して移動壁4をその両側に移動可能としたことで、訓練者の障害の状態や住宅等の構造に応じた左側と右側とで適切なトイレ訓練が行える。
更に、移動壁4を支持壁3の上下部ガイド部材11、12に沿って移動可能で位置調整可能としたから、便座6と移動壁4及び手摺り機構21との距離を調整することができ、自宅等の住宅の構造や環境に適合した空間設定を行えるため、実用性が高い。
【0028】
また、水平手摺り18の高さ調整はガススプリング17による支持板16の昇降動作によって行え、縦手摺り20の水平方向の位置調整は水平手摺り18をガイドにして移動可能であるから、各手摺り18,20の位置調整が容易である。
更に支持壁3に取り付けた便座6の高さも簡単に調整可能であり、ペーパーホルダー26もマグネットによって支持板16上で任意の位置に取り付けできる。
また、支持壁3に対して移動壁4の取り付け位置を変更する場合でも、便座6を上方に回動させるだけで支持壁3から移動壁4を取り外すことなく、左右方向に移動させて位置調整可能である。
【0029】
以上、本発明の第一の実施形態による動作訓練機構1について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更可能である。次に本発明の他の実施形態について説明するが、上述の実施形態と同一または同様な部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
次に本発明の第二の実施形態による動作訓練機構50について、図7乃至図10により説明する。
図7に示す第二の実施形態による動作訓練機構50において、第一の実施形態による動作訓練機構1との相違点は、移動壁4の支持壁3側とは反対側の端部に支持枠52を介して扉51を設けた点であり、その余の構成は第一の実施形態と同一である。
【0030】
図7及び図8に示す動作訓練機構50において、移動壁4の支柱23に支持枠52が着脱可能に連結されている。図9及び図10において、支持枠52には主回転軸53が上下方向に設けられ、主回転軸53の上部には同軸に円形プレート54が主回転軸53周囲のカバー部材55に連結されている。カバー部材55と円形プレート54は回転しないで静止保持される。そして、円形プレート54には、表面に所定間隔、例えば90°間隔で係止凹部56が周方向に3つまたは4つ形成されている(図10参照)。
そして、円形プレート54の上部には主回転軸53と一体に回転可能なフレーム58が形成されている。このフレーム58には主回転軸53の中心から外れた位置に係止凹部56に嵌合可能なピンを進退可能に設けたプランジャー60が設置されている。フレーム58は一方向に延びるアーム部58aを介して扉51の支軸63に回転可能に連結されている。
【0031】
そのため、扉51は支軸63を中心に開閉回転可能とされている。フレーム58に設けたプランジャー60を引き上げてピンを係止凹部56から離脱することで、扉51及びフレーム58が主回転軸53と一体に回転可能であり、プランジャー60を離してピンを任意の係止凹部56に係合させることでフレーム58は係止可能とされている。そのため、図8に示すように、扉51及びフレーム58は扉51が移動壁4と直角をなす支持壁3に対向する位置(角度90°)、移動壁4の延長線上の位置(角度180°)、そして支持壁3とは反対側で移動壁4に直角をなす位置(角度270°)、移動壁4の裏面に平行に折り曲げられた位置(角度360°)とを選択的にとることができる。扉51には両面に取っ手62が取り付けられている。
【0032】
そして、本第二実施形態による動作訓練機構50では、図7及び図8に示すように、支持壁3と移動壁4と扉51及び支持枠52等によって平面視略コの字形状に形成されている。この状態で、身体障害者等がトイレの扉51を開いて中に入って、移動壁4に設けた水平手摺り18及び縦手摺り20につかまりながら便座6まで移動する。そして、便座6から水平手摺り18及び縦手摺り20につかまって扉51を開いて外へ出るという、連続したトイレ動作訓練を行うことができる。
【0033】
また、自宅等における、便座6と扉51の位置関係によっては、扉51を移動壁4の延長面上に保持して訓練してもよい。この場合、図8において、移動壁4に扉51が直交する90°の位置から、プランジャー60を引き上げてピンを係合凹部56から外し、主回転軸53回りに扉51及びフレーム58を一体に回動させ、移動壁4に延長線上の180°の位置まで回動させてプランジャー60のピンを係合凹部56に係止させて固定してもよい。
また、訓練において、扉51が便座6から離間している場合や扉51を使用しない場合等には、扉51とフレーム58を、移動壁4に扉51が直交する90°の位置から、180°反対側の位置や、270°で移動壁4の反対側に折れ曲がった位置まで回動させて停止させるとよい。
【0034】
上述のように、本第二実施形態による動作訓練機構50によれば、支持壁3または移動壁4の自由端部側に扉51を取り付けたことで、扉51の開閉動作を含めて身体障害者等が日常動作訓練を行うことができる。しかも、扉51は、移動壁4に対して少なくとも90°の角度位置、180°の角度位置、270°の角度位置、360°の角度位置のいずれかに選択的に設置可能としたから、支持壁3や移動壁4に対して適宜の角度で設けた扉51を設定できるため、日常動作訓練のバリエーションが多くなる。
【0035】
なお、上述した各実施形態では、支持壁3のいずれか一方に移動壁4を設けて動作訓練機構1,50を構成したが、本発明はこれに限定されることなく支持壁3の両側に移動壁4を設けてもよい。また、移動壁4は1枚である必要はなく複数枚を連結して設けてもよい。
また、上述の説明では、各実施形態による動作訓練機構1,50において、日常動作器具として便座6を使用したトイレ使用の日常動作訓練について説明したが、本発明はこれに限定されることなく各種の日常動作器具を用いた日常動作訓練に使用できる。例えば日常動作器具として、椅子やベッドや浴槽等を用いた着座及び起立訓練や就寝及び起床訓練や入浴訓練等、各種の日常動作器具について使用できる。
【0036】
このように、本発明では、便座6等の日常動作器具を取り付けた支持壁3を第一壁とし、移動壁4を第二壁として互いに接続することで、擬似的に室内等の構造を形成して日常生活での各種動作や作業のリハビリテーション等を含む各種訓練を行うことができる。
なお、上述した本発明の実施形態では、支持壁3と移動壁4とを組み立てて支持壁3に便座6等の日常生活の各種動作を行うための日常動作器具を設けることとしたが、支持壁と移動壁とはその意味に基本的に差異がなく両者は互いの機能を交換して持たせることも可能である。例えば、移動壁4に便座6等の日常動作器具を設けてもよく、この場合には移動壁4が第一壁であり、支持壁3が第二壁を構成する。このような発明も本発明に含まれる
【符号の説明】
【0037】
1、50 動作訓練機構
3 支持壁
4 移動壁
6 便座
11 上部ガイド部材
12 下部ガイド部材
14 ガイドライン
16 支持板
17 ガススプリング
18 水平手摺り
20 縦手摺り
21 手摺り機構
23 支柱
26 ペーパー
27 上梁
28 下梁
29 連結部材
32 係合凹部
34 係合穴
36 係止板
60 プランジャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日常動作器具を設けた第一壁と、該第一壁の日常動作器具に対して少なくともいずれか一方側に取り付けた第二壁とが設けられ、前記第一壁に設けられた日常動作器具を着脱又は跳ね上げて前記第二壁を第一壁に沿って任意の位置に移動可能であり、該第二壁の表裏両面または日常動作器具側を向く面に手摺りが設けられていることを特徴とする動作訓練機構。
【請求項2】
前記第二壁は前記第一壁に設けた水平方向のガイド部材に沿って移動可能であり、前記第二壁の前記第一壁に対する停止位置を前記日常動作器具のいずれかの側に設定可能とした請求項1に記載された動作訓練機構。
【請求項3】
前記第一壁または第二壁の自由端部側に扉を取り付けた請求項1または2に記載された動作訓練機構。
【請求項4】
前記扉は、該扉を取り付けた前記第一壁または第二壁に対して少なくとも略90°の角度位置、略180°の角度位置、略270°の角度位置、略360°の角度位置のいずれかに選択的に設置可能とした請求項3に記載された動作訓練機構。
【請求項5】
前記手摺りは前記第二壁に設けた支持部材に支持されていて、該支持部材を昇降可能とした請求項1乃至4のいずれか1項に記載された動作訓練機構。
【請求項6】
前記日常動作器具は便座であり、該便座は第一壁への取り付け高さを調整可能または格納可能とした請求項1乃至5のいずれか1項に記載された動作訓練機構。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−254108(P2012−254108A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127294(P2011−127294)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000182373)酒井医療株式会社 (46)