説明

動力伝達装置

【課題】回転トルク伝達において摩擦を一切利用しない、回転トルク伝達のオンオフ制御が実用的に実現された動力伝達装置を提供する。
【解決手段】直流電源24を備え、駆動側磁石7は、コイル9が巻かれてスプライン軸18に対して周方向に配置された複数の鉄心7により形成された電磁石であり、従動側磁石8は、駆動側磁石7に対面するようにスプライン軸18に対して周方向に、駆動側磁石7と同じ個数が配置された永久磁石であり、駆動側回転体1の周方向には、駆動側磁石7と同じ個数のセグメントから構成された整流子11が配置されており、スプライン軸18の周方向には、整流子11と接触し、かつ直流電源24と電気的に接続する2つのブラシ12が配置されており、コイル9の一端は、1つのセグメントと電気的に接続されており、コイル9の他端は、1つのセグメントの周方向に隣接した別のセグメントと電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に配置された駆動源(内燃機関や車両走行モータ等)から車載回転機器に動力を伝達する動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源からカーエアコン用圧縮機等の車載回転機器に動力を伝達する動力伝達装置は、オンオフ自在の摩擦板を介して回転トルク(回転駆動力)を伝達する。しかしながら、この摩擦板は経年劣化や(例えば圧縮機のロック時に)瞬間的に過度の回転トルクが掛かると焼き付きを生じる等の不具合がある。そこで、摩擦板を無くして永久磁石を配置した特許文献1のような動力伝達装置が提案されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の動力伝達装置は、第1、第2実施形態では回転トルク伝達のオンオフ制御装置の記載が無く、第3、第4実施形態では回転トルク伝達のオンオフ制御装置は摩擦を利用したものであり、従来技術の課題を解決したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−121676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転トルク伝達において摩擦を一切利用しない動力伝達装置であって回転トルク伝達のオンオフ制御が実用的に実現された動力伝達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載の動力伝達装置を提供する。
請求項1に記載の発明によれば、本発明の動力伝達装置(100)は、
直流電源(24)を更に備え、
前記駆動側回転伝達磁石(7)は、コイル(9)が巻かれて前記スプライン軸(18)に対して周方向に配置された複数の鉄心(7)により形成された電磁石であり、
前記従動側回転伝達磁石(8)は、前記駆動側回転伝達磁石(7)に対面するように前記スプライン軸(18)に対して周方向に、前記駆動側回転伝達磁石(7)と同じ個数が配置された永久磁石であり、
前記駆動側回転体(1)の周方向には、前記駆動側回転伝達磁石(7)と同じ個数のセグメントから構成された整流子(11)が配置されており、
前記スプライン軸(18)の周方向には、前記整流子(11)と接触し、かつ前記直流電源(24)と電気的に接続する2つのブラシ(12)が配置されており、
前記コイル(9)の一端は、1つの前記セグメントと電気的に接続されており、前記コイル(9)の他端は、前記1つのセグメントの周方向に隣接した別のセグメントと電気的に接続されていることを特徴とする。
【0007】
永久磁石(8)と電磁石(7)と整流子(11)の組み合わせにより、回転トルク伝達のオンオフ制御装置が構成される。この単純な構成により、摩擦を一切利用しない動力伝達装置を提供することが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、本発明の動力伝達装置(100)は、
1つの前記ブラシ(12)の一端は、リング状の第1電極(13a)を介して電源(24)と電気的に接続されており、他の前記ブラシ(12)の一端は、リング状の第2電極(13b)を介して電源(24)と電気的に接続されていることを特徴とする。
この構成により、配線が切断されたり損傷を受けたりすることの無い、コンパクトで信頼性の高いブラシ(12)と電源(24)の電気的接続手段を提供することが可能となる。
【0009】
請求項3に記載の発明によれば、本発明の動力伝達装置(200)は、
直流電源(24)を更に備え、
前記駆動側回転伝達磁石(7)は、コイル(9)が巻かれて前記スプライン軸(118)に対して周方向に配置された複数の鉄心(7)により形成された電磁石であり、
前記従動側回転伝達磁石(8)は、前記駆動側回転伝達磁石(7)に対面するように前記スプライン軸(118)に対して周方向に、前記駆動側回転伝達磁石(7)と同じ個数が配置された永久磁石であり、
前記直流電源(24)と前記コイル(9)に電気的に接続し、かつ前記駆動側回転体(1)の回転角度と前記従動側回転体(4)の回転角度に基づいて、前記コイル(9)へ供給する電流のオン・オフ及び電流の向きを制御するコイル電流制御手段(25)と、を更に備えることを特徴とする。
【0010】
永久磁石(8)と電磁石(7)と駆動側回転角度検出手段(27a)と従動側回転角度検出手段(27b)とコイル電流制御手段(25)の組み合わせにより、回転トルク伝達のオンオフ制御装置が構成される。この単純な構成により、摩擦を一切利用しない動力伝達装置を提供することが可能となる。
【0011】
請求項4に記載の発明によれば、本発明の動力伝達装置(300)は、
直流電源(24)を更に備え、
前記駆動側回転伝達磁石(7)は、コイル(9)が巻かれて前記スプライン軸(118)に対して周方向に配置された複数の鉄心(7)により形成された電磁石であり、
前記従動側回転伝達磁石(8)は、前記駆動側回転伝達磁石(7)に対面するように前記スプライン軸(118)に対して周方向に、前記駆動側回転伝達磁石(7)と同じ個数が配置された永久磁石であり、
前記直流電源(24)と前記コイル(9)に電気的に接続し、かつ1つの前記コイル(9)を用いて1つの前記コイル(9)に生じる前記駆動側回転伝達磁石(7)と前記従動側回転伝達磁石(8)との間の誘導起電力を計測することにより演算される前記駆動側回転体(1)と前記従動側回転体(4)との間の相対的回転角度に基づいて、他の前記コイル(9)へ供給する電流のオン・オフ及び電流の向きを制御するコイル電流制御手段(125)を更に備えることを特徴とする。
【0012】
永久磁石(8)と電磁石(7)(1つの誘導起電力計測用電磁石を含む)とコイル電流制御手段の組み合わせにより、回転トルク伝達のオンオフ制御装置が構成される。このとき、コイル電流制御手段は、1つの前記コイル(9)を用いて1つの前記コイル(9)に生じる前記駆動側回転伝達磁石(7)と前記従動側回転伝達磁石(8)との間の誘導起電力を計測することにより演算される前記駆動側回転体(1)と前記従動側回転体(4)との間の相対的回転角度に基づいて、他の前記コイル(9)へ供給する電流のオン・オフ及び電流の向きを制御する。この単純な構成と制御方法により、摩擦を一切利用しない動力伝達装置を提供することが可能となる。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、本発明の動力伝達装置(100、200、300)は、前記駆動側回転体(1)に配置された反発用駆動側永久磁石(5b)と、前記従動側回転体(4)に前記反発用駆動側永久磁石(5b)と反対の磁極で対面するように配置された反発用従動側永久磁石(5a)により形成されて、反発磁力によって前記従動側回転体(4)を前記駆動側回転体(1)から軸方向に離間させる回転体離間手段、を更に備えたことを特徴とする。
この構成により信頼性の高い単純な回転体離間手段を提供することが可能となる。
【0014】
請求項6に記載の発明によれば、本発明の動力伝達装置(200、300)は、
前記コイル(9)の一端は、リング状の第1電極(13a)を介してコイル電流制御手段(25、125)の一端と電気的に接続されており、前記コイル(9)の他の一端は、リング状の第2電極(13b)を介してコイル電流制御手段(25、125)の他の一端と電気的に接続されていることを特徴とする。
この構成により、配線が切断されたり損傷を受けたりすることの無い、コンパクトで信頼性の高いコイル(9)と電源(24)の電気的接続手段を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置の接続オフ状態の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置の接続オン状態の断面図である。
【図3】第1実施形態における鉄心及びコイルとブラシ及び整流子の位置関係を表した図である。
【図4】図1においてX方向から視た従動側回転伝達磁石の配列を表した図である。また、本図は第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態に共通するものである。
【図5】第1実施形態におけるDC電源からコイルまでの回路図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置の接続オフ状態の断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置の接続オン状態の断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る動力伝達装置の接続オフ状態の断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る動力伝達装置の接続オン状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
まず、図1、図2を用いて第1実施形態の構成を説明する。図1は第1実施形態における動力伝達装置100の接続オフ状態の断面図である。以下において図1、図2、図6〜9における紙面左側を動力伝達装置のフロント側、紙面右側を動力伝達装置のリア側と称する。本実施形態における動力伝達装置100は、内燃機関や車両走行モータ等の車載駆動源(図示せず)から車両用空調装置の冷凍サイクルを構成する圧縮機2にベルト(図示せず)を介して駆動力を伝達するものである。
【0017】
動力伝達装置100は、車載駆動源とベルトによって機械的に連結されたプーリ1aと、プーリ1aに一体的に結合されたヨーク1bと、プーリ1aと同軸に配置され、圧縮機2の駆動軸3に機械的に接続されたスプライン軸18と、スプライン軸18にボール10a及びスプラインスリーブ10を介して接続されたハブ4と、を備えている。スプラインスリーブ10はハブ4に固定されている。一般にスプラインスリーブとボールとスプライン軸を組み合わせたものを「ボールスプライン」と呼ぶことがある。スプラインスリーブ10の内周側に形成されたスプライン溝と、スプライン軸18の外周側に形成されたスプライン溝との間には複数のボール10aが配置されており、このボールを介して回転力がスプラインスリーブ10からスプライン軸18へ伝達される。スプラインスリーブ10とボール10aは、ハブ4を軸方向に変位可能としつつスプライン軸18とハブ4を同期回転させる。
【0018】
プーリ1aは、外周に複数のV字溝が設けられ、ラジアルベアリング20を介して圧縮機2のハウジングのボス部2aに軸支されるステータ19により支持されている。つまり、プーリ1aは、圧縮機2のハウジングの軸方向端部からフロント側に立設したステータ19に、単列の転がり型のラジアルベアリング20を介して回転可能に支持されている。
【0019】
プーリ1aとヨーク1bは一体で回転する駆動側回転体1を形成し、ハブ4は従動側回転体を形成する。そして、動力伝達装置100は、ヨーク1bに配置された駆動側回転伝達磁石7とハブ4に配置された従動側回転伝達磁石8により形成されて、ヨーク1bとハブ4との間に所定間隙を保った状態で磁力によって駆動側回転体から従動側回転体に回転駆動力を伝える磁気継ぎ手を備えている。
【0020】
図3に示すように、駆動側回転伝達磁石7は、コイル9が巻かれて、スプライン軸18に対して周方向に配置された偶数個(例えば8個)の鉄心により形成された電磁石である。従動側回転伝達磁石8は、図1、図4に示すように、永久磁石から形成されており、駆動側回転伝達磁石7に対面するようにスプライン軸18に対して周方向に等間隔で偶数個が同心円状に配列されている。周方向に隣り合った永久磁石8は、N極とS極が交互に並んで、対面する駆動側回転伝達磁石7と向かい合うように配置されている。駆動側回転伝達磁石7と従動側回転伝達磁石8は、共に円弧状をなしており、その各々の形状及び個数は同一である。
【0021】
ここで、従動側永久磁石8は、温度変化に対する磁気力変化が少なく、150℃以上でも消磁しないものが望ましい。これは動力伝達装置が配置される車両のエンジンルーム内が150℃以上の高温に達する可能性があるからである。本実施形態では、従動側永久磁石8としてネオジム磁石又はサマリウム−コバルト磁石を用いている。
【0022】
本実施形態では、従動側永久磁石8及び駆動側磁石7は、それぞれ8個配置されている。また、向かい合う従動側永久磁石8及び駆動側磁石(鉄心)7の軸方向隙間は0.2mm〜1.5mm(接続オン時)である。また、周方向に隣り合う従動側永久磁石8(又は駆動側磁石7)の間隔は約4mmである。なお、本実施形態におけるプーリ1aの有効直径は約100mmである。
【0023】
ヨーク1bとハブ4には各々、反発用永久磁石5が各1個設置されている。反発用永久磁石5は回転伝達磁石7、8の内周側に配置されている。反発用駆動側永久磁石5bはヨーク1bに配置され、反発用従動側永久磁石5aは反発用駆動側永久磁石5bと同じ磁極で対面するようにハブ4に配置されている。この反発用永久磁石5は、同じ磁極同士の反発磁力によって従動側回転体を駆動側回転体から軸方向に離間させる回転体離間手段となる。
【0024】
次に、コイル9からDC(直流)電源24までの回路を、図1、図5を用いて説明する。プーリ1aに一体的に結合されたヨーク1bには更に円筒状のステー1cが一体的に結合されている。ステー1cの外周面の周方向には、駆動側回転伝達磁石7と同じ個数(例えば8個)のセグメント11a〜11gから構成された整流子11が配置されている。スプライン軸18にはブラシケース15を保持するリテーナ23が一体的に結合されている。リテーナ23は小径円筒部と大径円筒部を備え、ブラシケース15内には2つの整流子ブラシ12が収容されて保持されている。すなわち、2つの整流子ブラシ12a、12bは、スプライン軸18から視るとスプライン軸18の周方向に配置されて、リング状電極13a、13bとリング状電極ブラシ14a、14bを介して直流電源24と電気的に接続されている。リング状電極ブラシ14a、14bは、リング状電極13a、13bと接触しながら回転摺動する。
【0025】
図5に示すように、1つのコイル9の一端9aは、1つのセグメント11aと電気的に接続されており、コイル9の他端9bは、1つのセグメント11aの周方向に隣接した別のセグメント11bと電気的に接続されている。セグメント11aは、周方向に隣接した別のセグメント11bの周方向に隣接した更に別のセグメント11cと、同様にセグメント11eと、セグメント11gとに電気的に接続されている。そして同様に、セグメント11bは、セグメント11dと、セグメント11fと、セグメント11hとに電気的に接続されている。すなわち、各セグメントは、周方向に1つのセグメント置きに飛び越えた別のセグメントに相互に電気的に接続されている。
【0026】
上述のような結線構成により、整流子11とブラシ12との間の相対的回転によりブラシ12a(又は12b)と接触するセグメント11が周方向に隣接した別のセグメント11に切り替わると、コイル9に流れる電流の向きが逆になり、これによりコイル9が巻かれている駆動側磁石(鉄心)7の磁極(N極、S極)が反転する。動力伝達装置100が接続オン状態(図2)のときには、駆動側回転体1の回転による連続した磁極の交番反転により、従動側永久磁石8が相手側の駆動側磁石7に周方向に吸引されて従動側永久磁石8が固定されたハブ4が従動回転することとなる。これは、既知の直流モーターの原理と共通する。そして、ハブ4の従動回転は、スプラインスリーブ10、ボール10a、スプライン軸18を介して圧縮機2の駆動軸3に伝達される。
【0027】
以上述べたように、プーリ1aとヨーク1bとステー1cとは一体となっており、一体に回転する駆動側回転体1を形成する。そして、ハブ4とスプライン軸18と圧縮機2の駆動軸3は、その回転に関しては一体品のように回転する。但し、ハブ4はスプライン軸18に対してスプラインスリーブ10及びボール10aを介して接続されているので、ハブ4はスプライン軸18上を軸方向に左右に摺動自在に移動することができる。そして、位置決め輪21はボールスプライン10のフロント方向への移動を制限する。
【0028】
(第1実施形態の作動)
次に、図1、2を用いて第1実施形態の作動を説明する。動力伝達装置100の作動は、(i)オフ状態、(ii)オフ状態からオン状態への切り替え(過渡状態)、(iii)オン状態、(iv)オン状態からオフ状態への切り替え(過渡状態)、の4つの状態がある。
【0029】
(i)オフ状態
車載駆動源(図示せず)の動力がベルトを介してプーリ1aへ伝達され、プーリ1a、ヨーク1b、鉄心7、コイル9、および整流子11は一体で回転する。ハブ4はヨーク1bと一定の距離を保ち静止している。鉄心7と磁石8との間で生じる吸引力よりも磁石5aと磁石5bとの間で生じる反発力が大きくなるようにハブ4とヨーク1bとの距離を設定している。コイル9への給電は必要が無く、無給電でオフ状態を保持することができる。
【0030】
(ii)オフ状態からオン状態への切り替え
DC電源24よりコイル9へ給電し、鉄心7と磁石8との間に吸引力を発生させ、ハブ4をプーリ1a側へ軸方向に引き寄せる。ハブ4はスプライン軸18の段部18aに当たるまでプーリ1aに接近する。磁石8は大きな回転トルク伝達を可能にするためにハブ4の周方向にN極とS極が交互に並ぶように配置される。磁石8と対向する鉄心7はプーリ1aと一体で回転するため、コイル9への電流を常に一方向に流すと鉄心7と磁石8との間に吸引力と反発力が交互に発生し、ハブ4をプーリ1a側に引き寄せることができない。そのため、N極の磁石8に対しては鉄心7がS極になる向きにコイル9に電流を流し、S極の磁石に対しては鉄心7がN極になる向きにコイル9に電流を流す。
【0031】
電流の向きの切り替えについては、図3、4、5を用いて説明する。整流子11はセグメント11a〜gが周方向に等間隔で並んだ構成になっており、整流子11のセグメントと鉄心7は同じ個数で同じ周方向位置に配置される。図4に示すように、磁石8は鉄心7と同じ個数から構成されN極とS極が周方向に交互に等間隔に配置される。図5より、2つの整流子用ブラシ12は整流子11の2つのセグメントにそれぞれ摺動接触するように配置され、コイル9へ給電する電流の向きの切替えが可能になっている。つまり、整流子用ブラシ12が整流子11に対して相対的に回転している時は45°回転するごとに電流の向きが切り替わり常に吸引力または反発力を発生することができる。
【0032】
(iii)オン状態
ハブ4に結合されたスプラインスリーブ10がスプライン軸18の段部18aに当たるまでプーリ1a側に移動すると、コイル9への給電を止め、鉄心7と磁石8との吸引力のみで回転トルクを伝達する。コイル9への給電は必要が無く、無給電でオン状態を保持することができる。回転トルクの伝達は非接触で行うため、圧縮機2がロックした場合においても動力伝達装置が損傷を受けることが無い。また圧縮機2で発生した振動を車載駆動源(図示せず)へ伝達することが無く、静粛性に優れた動力伝達装置となる。
【0033】
(iv)オンからオフの切り替え
DC電源24よりコイル9へ給電し、鉄心7と磁石8との間に反発力を発生させ、ハブ4をプーリ1aと反対側へ軸方向に移動させる。ハブ4は位置決め輪21に当たるまで移動する。鉄心7はプーリ1aと一体で回転するため、磁石8との間で常に反発力を発生させるためにはコイル9に給電する電流を(ii)と逆向きに切替える。
【0034】
(第2実施形態)
次に、図6、図7を用いて第2実施形態の構成を説明する。第2実施形態は第1実施形態と類似しているので、その相違点を最初に説明する。
第2実施形態の動力伝達装置200は、第1実施形態の整流子11は具備しておらず、直流電源24とコイル9に電気的に接続し、かつ駆動側回転体1の回転角度と従動側回転体4の回転角度に基づいて、コイル9へ供給する電流のオン・オフ及び電流の向きを制御するコイル電流制御手段(制御器)25と、を備えている。また、動力伝達装置200は、駆動側回転体1の回転角度と従動側回転体4の回転角度を検出するために、プーリ1aとヨーク1bおよび鉄心7と一体で回転する回転角度検出用プレート26a、プレート26aの回転角度を検出する回転角度検出器27a、ハブ4と磁石8と一体で回転する回転角度検出用プレート26b、プレート26bの回転角度を検出する回転角度検出器27bを備えている。
【0035】
電磁石7を構成するコイル9は、リング状電極13a、13bとリング状電極ブラシ14a、14bを介してコイル電流制御手段25と電気的に接続されている。リング状電極ブラシ14a、14bは、リング状電極13a、13bと接触しながら回転摺動する。そして、コイル9の一端は、リング状の第1電極13aを介してコイル電流制御手段25の一端と電気的に接続されており、コイル9の他の一端は、リング状の第2電極13bを介してコイル電流制御手段25の他の一端と電気的に接続されている。
【0036】
以下の説明は、第1実施形態とほぼ同じである。
動力伝達装置200は、車載駆動源とベルトによって機械的に連結されたプーリ1aと、プーリ1aに一体的に結合されたヨーク1bと、プーリ1aと同軸に配置され、圧縮機2の駆動軸3に機械的に接続されたスプライン軸118と、スプライン軸118にボール10a及びスプラインスリーブ10を介して接続されたハブ4と、を備えている。スプラインスリーブ10はハブ4に固定されている。一般にスプラインスリーブとボールとスプライン軸を組み合わせたものを「ボールスプライン」と呼ぶことがある。スプラインスリーブ10の内周側に形成されたスプライン溝と、スプライン軸118の外周側に形成されたスプライン溝との間には複数のボール10aが配置されており、このボールを介して回転力がスプラインスリーブ10からスプライン軸118へ伝達される。スプラインスリーブ10とボール10aは、ハブ4を軸方向に変位可能としつつスプライン軸118とハブ4を同期回転させる。
【0037】
プーリ1aは、外周に複数のV字溝が設けられ、ラジアルベアリング20を介して圧縮機2のハウジングのボス部2aに軸支されるステータ19により支持されている。つまり、プーリ1aは、圧縮機2のハウジングの軸方向端部からフロント側に立設したステータ19に、単列の転がり型のラジアルベアリング20を介して回転可能に支持されている。
【0038】
プーリ1aとヨーク1bは一体で回転する駆動側回転体1を形成し、ハブ4は従動側回転体を形成する。そして、動力伝達装置200は、ヨーク1bに配置された駆動側回転伝達磁石7とハブ4に配置された従動側回転伝達磁石8により形成されて、ヨーク1bとハブ4との間に所定間隙を保った状態で磁力によって駆動側回転体から従動側回転体に回転駆動力を伝える磁気継ぎ手を備えている。
【0039】
図3に示すように、駆動側回転伝達磁石7は、コイル9が巻かれて、スプライン軸118に対して周方向に配置された偶数個(例えば8個)の鉄心により形成された電磁石である。従動側回転伝達磁石8は、図1、図4に示すように、永久磁石から形成されており、駆動側回転伝達磁石7に対面するようにスプライン軸118に対して周方向に等間隔で偶数個が同心円状に配列されている。周方向に隣り合った永久磁石8は、N極とS極が交互に並んで、対面する駆動側回転伝達磁石7と向かい合うように配置されている。駆動側回転伝達磁石7と従動側回転伝達磁石8は、共に円弧状をなしており、その各々の形状及び個数は同一である。
【0040】
ここで、従動側永久磁石8は、温度変化に対する磁気力変化が少なく、150℃以上でも消磁しないものが望ましい。これは動力伝達装置が配置される車両のエンジンルーム内が150℃以上の高温に達する可能性があるからである。本実施形態では、従動側永久磁石8としてネオジム磁石又はサマリウム−コバルト磁石を用いている。
【0041】
本実施形態では、従動側永久磁石8及び駆動側磁石7は、それぞれ8個配置されている。また、向かい合う従動側永久磁石8及び駆動側磁石(鉄心)7の軸方向隙間は0.2mm〜1.5mm(接続オン時)である。また、周方向に隣り合う従動側永久磁石8(又は駆動側磁石7)の間隔は約4mmである。なお、本実施形態におけるプーリ1aの有効直径は約100mmである。
【0042】
ヨーク1bとハブ4には各々、反発用永久磁石5が各1個設置されている。反発用永久磁石5は回転伝達磁石7、8の内周側に配置されている。反発用駆動側永久磁石5bはヨーク1bに配置され、反発用従動側永久磁石5aは反発用駆動側永久磁石5bと同じ磁極で対面するようにハブ4に配置されている。この反発用永久磁石5は、同じ磁極同士の反発磁力によって従動側回転体を駆動側回転体から軸方向に離間させる回転体離間手段となる。
【0043】
(第2実施形態の作動)
次に、図6、7を用いて第2実施形態の作動を説明する。動力伝達装置の作動は、(i)オフ状態、(ii)オフ状態からオン状態への切り替え(過渡状態)、(iii)オン状態、(iv)オン状態からオフ状態への切り替え(過渡状態)、の4つの状態がある。
【0044】
(i)オフ状態
車載駆動源(図示せず)の動力がベルトを介してプーリ1aへ伝達され、プーリ1a、ヨーク1b、鉄心7、コイル9、磁石5bおよび回転角度検出用プレート26aは一体で回転する。ハブ4はヨーク1bと一定の距離を保ち静止している。鉄心7と磁石8との間で生じる吸引力よりも磁石5aと磁石5bとの間で生じる反発力が大きくなるようにハブ4とヨーク1bとの距離を設定している。コイル9への給電は必要が無く、無給電でオフ状態を保持することができる。
【0045】
(ii)オフからオンへの切り替え
DC電源24よりコイル9へ給電することで鉄心7を電磁石にして磁石8との間に吸引力を発生させ、ハブ4をプーリ1a側へ軸方向に引き寄せる。磁石8はハブ4の周方向にN極とS極が交互に並ぶように配置されている。鉄心7に巻いたコイル9に流す電流の向きを変えることで電磁石の磁極が反対磁極に(N極とS極の間で)切り替わる(電磁誘導の法則)。静止している磁石8と回転する鉄心7との間で常に吸引力を発生させるためには、鉄心7に巻いたコイル9に流す電流の向きを磁石8の磁極に合わせて切り替えて常にS極とN極が対向し吸引力が働くように電流を流す。制御器(演算回路)25はその電流を切り替え制御するものであり、回転角度検出器27aと回転角度検出器27bの回転位置情報からコイルに流す電流の向きを適切に切り替える。以上の操作によりハブ4は、ハブ4に結合されたスプラインスリーブ10がスプライン軸118の段部118aに当たるまでプーリ1a側に移動する。
【0046】
(iii)オン状態
ハブ4に結合されたスプラインスリーブ10がスプライン軸118の段部118aに当たるまでプーリ1aに接近すると、コイル9への給電を止め、鉄心7と磁石8との吸引力のみで回転トルク(回転駆動力)を伝達する。コイル9への給電は必要が無く、無給電でオン状態を保持することができる。回転トルクの伝達は非接触で行われる。
【0047】
(iv)オンからオフへの切り替え
DC電源24よりコイル9へ給電し、鉄心7と磁石8との間に反発力を発生させ、ハブ4をプーリ1aと反対側へ(左へ)軸方向に移動させる。ハブ4は、ハブ4に結合されたスプラインスリーブ10が位置決め輪21に当たるまで軸方向に左へ移動する。鉄心7はプーリ1aと一体で回転するため、磁石8との間で常に反発力を発生させるためにはコイル9に給電する電流を(ii)と逆向きに切替える。
【0048】
(第3実施形態)
次に、図8、図9を用いて第3実施形態の構成を説明する。第3実施形態は第2実施形態と類似しているので、その相違点を最初に説明する。
第3実施形態の動力伝達装置300は、第2実施形態の駆動側回転角度検出手段27a、従動側回転角度検出手段27bは具備していない。この代替え手段として、直流電源24とコイル9に電気的に接続し、かつ1つのコイル9を用いて1つのコイル9に生じる駆動側回転伝達磁石7と従動側回転伝達磁石8との間の誘導起電力を計測することにより演算される駆動側回転体1と従動側回転体4との間の相対的回転角度に基づいて、他のコイル9へ供給する電流のオン・オフ及び電流の向きを制御するコイル電流制御手段125を備えている。
【0049】
以下の説明は、第2実施形態と同じである。
電磁石7を構成するコイル9は、リング状電極13a、13bとリング状電極ブラシ14a、14bを介してコイル電流制御手段125と電気的に接続されている。リング状電極ブラシ14a、14bは、リング状電極13a、13bと接触しながら回転摺動する。そして、コイル9の一端は、リング状の第1電極13aを介してコイル電流制御手段125の一端と電気的に接続されており、コイル9の他の一端は、リング状の第2電極13bを介してコイル電流制御手段125の他の一端と電気的に接続されている。
【0050】
以下の説明は、第1実施形態、第2実施形態とほぼ同じである。
動力伝達装置300は、車載駆動源とベルトによって機械的に連結されたプーリ1aと、プーリ1aに一体的に結合されたヨーク1bと、プーリ1aと同軸に配置され、圧縮機2の駆動軸3に機械的に接続されたスプライン軸118と、スプライン軸118にボール10a及びスプラインスリーブ10を介して接続されたハブ4と、を備えている。スプラインスリーブ10はハブ4に固定されている。一般にスプラインスリーブとボールとスプライン軸を組み合わせたものを「ボールスプライン」と呼ぶことがある。スプラインスリーブ10の内周側に形成されたスプライン溝と、スプライン軸118の外周側に形成されたスプライン溝との間には複数のボール10aが配置されており、このボールを介して回転力がスプラインスリーブ10からスプライン軸118へ伝達される。スプラインスリーブ10とボール10aは、ハブ4を軸方向に変位可能としつつスプライン軸118とハブ4を同期回転させる。
【0051】
プーリ1aは、外周に複数のV字溝が設けられ、ラジアルベアリング20を介して圧縮機2のハウジングのボス部2aに軸支されるステータ19により支持されている。つまり、プーリ1aは、圧縮機2のハウジングの軸方向端部からフロント側に立設したステータ19に、単列の転がり型のラジアルベアリング20を介して回転可能に支持されている。
【0052】
プーリ1aとヨーク1bは一体で回転する駆動側回転体1を形成し、ハブ4は従動側回転体を形成する。そして、動力伝達装置300は、ヨーク1bに配置された駆動側回転伝達磁石7とハブ4に配置された従動側回転伝達磁石8により形成されて、ヨーク1bとハブ4との間に所定間隙を保った状態で磁力によって駆動側回転体から従動側回転体に回転駆動力を伝える磁気継ぎ手を備えている。
【0053】
図3に示すように、駆動側回転伝達磁石7は、コイル9が巻かれて、スプライン軸118に対して周方向に配置された偶数個(例えば8個)の鉄心により形成された電磁石である。従動側回転伝達磁石8は、図1、図4に示すように、永久磁石から形成されており、駆動側回転伝達磁石7に対面するようにスプライン軸118に対して周方向に等間隔で偶数個が同心円状に配列されている。周方向に隣り合った永久磁石8は、N極とS極が交互に並んで、対面する駆動側回転伝達磁石7と向かい合うように配置されている。駆動側回転伝達磁石7と従動側回転伝達磁石8は、共に円弧状をなしており、その各々の形状及び個数は同一である。
【0054】
ここで、従動側永久磁石8は、温度変化に対する磁気力変化が少なく、150℃以上でも消磁しないものが望ましい。これは動力伝達装置が配置される車両のエンジンルーム内が150℃以上の高温に達する可能性があるからである。本実施形態では、従動側永久磁石8としてネオジム磁石又はサマリウム−コバルト磁石を用いている。
【0055】
本実施形態では、従動側永久磁石8及び駆動側磁石7は、それぞれ8個配置されている。また、向かい合う従動側永久磁石8及び駆動側磁石(鉄心)7の軸方向隙間は0.2mm〜1.5mm(接続オン時)である。また、周方向に隣り合う従動側永久磁石8(又は駆動側磁石7)の間隔は約4mmである。なお、本実施形態におけるプーリ1aの有効直径は約100mmである。
【0056】
ヨーク1bとハブ4には各々、反発用永久磁石5が各1個設置されている。反発用永久磁石5は回転伝達磁石7、8の内周側に配置されている。反発用駆動側永久磁石5bはヨーク1bに配置され、反発用従動側永久磁石5aは反発用駆動側永久磁石5bと同じ磁極で対面するようにハブ4に配置されている。この反発用永久磁石5は、同じ磁極同士の反発磁力によって従動側回転体を駆動側回転体から軸方向に離間させる回転体離間手段となる。
【0057】
(第3実施形態の作動)
次に、図8、図9を用いて第3実施形態の作動を説明する。動力伝達装置の作動は、(i)オフ状態、(ii)オフからオンへの切り替え(過渡状態)、(iii)オン状態、(iv)オンからオフへの切り替え(過渡状態)、の4つの状態がある。
【0058】
(i)オフ状態
車載駆動源(図示せず)の動力がベルトを介してプーリ1aへ伝達され、プーリ1a、ヨーク1b、鉄心7、コイル9、磁石5bは一体で回転する。ハブ4はヨーク1bと一定の距離を保ち静止している。鉄心7と磁石8との間で生じる吸引力よりも磁石5aと磁石5bとの間で生じる反発力が大きくなるようにハブ4とヨーク1bとの距離を設定している。コイル9への給電は必要が無く、無給電でオフ状態を保持することができる。
【0059】
(ii)オフ状態からオン状態への切り替え
DC電源24よりコイル9へ給電することで鉄心7を電磁石にして磁石8との間に吸引力を発生させ、ハブ4をプーリ1a側へ軸方向に引き寄せる。磁石8はハブ4の周方向にN極とS極が交互に並ぶように配置されている。鉄心7に巻いたコイル9に流す電流の向きを変えることで電磁石の磁極がN極とS極で切り替わる。静止している磁石8と回転する鉄心7との間で常に吸引力を発生させるためには、鉄心7に巻いたコイル9に流す電流の向きを磁石8の磁極に合わせて切り替えて常にS極とN極が対向し吸引力が働くように電流を流す。電流の切り替えには磁石8と鉄心7の回転位置情報が必要であり、回転位置の検出をコイル9が巻かれた鉄心7の1つを用いて行う。この検出原理はコイル9の巻かれた鉄心7と磁石8間で働く誘導起電力(電磁誘導の法則)を用いたもので、鉄心7と磁石8の距離が近づいたり離れたりすることでコイル9に生じる誘導起電力が変化し、その電力を計測することで回転位置検出を行う。制御器(演算回路)125は電流を切り替える制御をするものであり、誘導起電力から回転位置情報を割り出しコイル9に流す電流の向きを適切に切り替える。ハブ4は、ハブ4に結合されたスプラインスリーブ10がスプライン軸118の段部118aに当たるまで軸方向にプーリ1a側へ移動する。
【0060】
(iii)オン状態
ハブ4に結合されたスプラインスリーブ10がスプライン軸118の段部118aに当たるまでプーリ1a側に移動すると、コイル9への給電を止め、鉄心7と磁石8との吸引力のみで回転トルクを伝達する。コイル9への給電は必要が無く、無給電でオン状態を保持することができる。回転トルクの伝達は非接触で行われる。
【0061】
(iv)オン状態からオフ状態への切り替え
DC電源24よりコイル9へ給電し、鉄心7と磁石8との間に反発力を発生させ、ハブ4をプーリ1aと反対側へ軸方向に移動させる。ハブ4は位置決め輪21に当たるまで移動する。鉄心7はプーリ1aと一体で回転するため、磁石8との間で常に反発力を発生させるためにはコイル9に給電する電流を(ii)と逆向きに切替える。
【0062】
以上のように、回転トルク伝達において摩擦を一切利用しない動力伝達装置であって回転トルク伝達のオンオフ制御が実用的に実現された動力伝達装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
100 第1実施形態の動力伝達装置
200 第2実施形態の動力伝達装置
300 第3実施形態の動力伝達装置
1 駆動側回転体
2 圧縮機
3 圧縮機の駆動軸
4 従動側回転体
5 反発用永久磁石
7 電磁石
8 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載駆動源から車両用空調装置用圧縮機(2)に駆動力を伝達する動力伝達装置(100)であり、
前記車載駆動源と接続された駆動側回転体(1)と、
前記駆動側回転体(1)と同軸に配置され、前記圧縮機(2)の駆動軸(3)に結合されたスプライン軸(18)に、ボール(10a)及びスプラインスリーブ(10)を介して接続された従動側回転体(4)と、
前記駆動側回転体(1)に配置された駆動側回転伝達磁石(7)と前記従動側回転体(4)に配置された従動側回転伝達磁石(8)により形成されて、前記駆動側回転体(1)と前記従動側回転体(4)との間に所定間隙を保った状態で磁力によって前記駆動側回転体(1)から前記従動側回転体(4)に回転駆動力を伝える磁気継ぎ手と、を備えた動力伝達装置(100)において、
該動力伝達装置(100)は直流電源(24)を更に備え、
前記駆動側回転伝達磁石(7)は、コイル(9)が巻かれて前記スプライン軸(18)に対して周方向に配置された複数の鉄心(7)により形成された電磁石であり、
前記従動側回転伝達磁石(8)は、前記駆動側回転伝達磁石(7)に対面するように前記スプライン軸(18)に対して周方向に、前記駆動側回転伝達磁石(7)と同じ個数が配置された永久磁石であり、
前記駆動側回転体(1)の周方向には、前記駆動側回転伝達磁石(7)と同じ個数のセグメントから構成された整流子(11)が配置されており、
前記スプライン軸(18)の周方向には、前記整流子(11)と接触し、かつ前記直流電源(24)と電気的に接続する2つのブラシ(12)が配置されており、
前記コイル(9)の一端は、1つの前記セグメントと電気的に接続されており、前記コイル(9)の他端は、前記1つのセグメントの周方向に隣接した別のセグメントと電気的に接続されていることを特徴とする動力伝達装置(100)。
【請求項2】
1つの前記ブラシ(12)の一端は、リング状の第1電極(13a)を介して前記直流電源(24)と電気的に接続されており、他の前記ブラシ(12)の一端は、リング状の第2電極(13b)を介して前記直流電源(24)と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置(100)。
【請求項3】
車載駆動源から車両用空調装置用圧縮機(2)に駆動力を伝達する動力伝達装置(200)であり、
前記車載駆動源と接続された駆動側回転体(1)と、
前記駆動側回転体(1)と同軸に配置され、前記圧縮機(2)の駆動軸(3)に結合されたスプライン軸(118)に、ボール(10a)及びスプラインスリーブ(10)を介して接続された従動側回転体(4)と、
前記駆動側回転体(1)に配置された駆動側回転伝達磁石(7)と前記従動側回転体(4)に配置された従動側回転伝達磁石(8)により形成されて、前記駆動側回転体(1)と前記従動側回転体(4)との間に所定間隙を保った状態で磁力によって前記駆動側回転体(1)から前記従動側回転体(4)に回転駆動力を伝える磁気継ぎ手と、を備えた動力伝達装置(200)において、
該動力伝達装置(200)は直流電源(24)を更に備え、
前記駆動側回転伝達磁石(7)は、コイル(9)が巻かれて前記スプライン軸(118)に対して周方向に配置された複数の鉄心(7)により形成された電磁石であり、
前記従動側回転伝達磁石(8)は、前記駆動側回転伝達磁石(7)に対面するように前記スプライン軸(118)に対して周方向に、前記駆動側回転伝達磁石(7)と同じ個数が配置された永久磁石であり、
前記直流電源(24)と前記コイル(9)に電気的に接続し、かつ前記駆動側回転体(1)の回転角度と前記従動側回転体(4)の回転角度に基づいて、前記コイル(9)へ供給する電流のオン・オフ及び電流の向きを制御するコイル電流制御手段(25)と、を更に備えることを特徴とする動力伝達装置(200)。
【請求項4】
車載駆動源から車両用空調装置用圧縮機(2)に駆動力を伝達する動力伝達装置(300)であり、
前記車載駆動源と接続された駆動側回転体(1)と、
前記駆動側回転体(1)と同軸に配置され、前記圧縮機(2)の駆動軸(3)に結合されたスプライン軸(118)に、ボール(10a)及びスプラインスリーブ(10)を介して接続された従動側回転体(4)と、
前記駆動側回転体(1)に配置された駆動側回転伝達磁石(7)と前記従動側回転体(4)に配置された従動側回転伝達磁石(8)により形成されて、前記駆動側回転体(1)と前記従動側回転体(4)との間に所定間隙を保った状態で磁力によって前記駆動側回転体(1)から前記従動側回転体(4)に回転駆動力を伝える磁気継ぎ手と、を備えた動力伝達装置(300)において、
該動力伝達装置(300)は直流電源(24)を更に備え、
前記駆動側回転伝達磁石(7)は、コイル(9)が巻かれて前記スプライン軸(118)に対して周方向に配置された複数の鉄心(7)により形成された電磁石であり、
前記従動側回転伝達磁石(8)は、前記駆動側回転伝達磁石(7)に対面するように前記スプライン軸(118)に対して周方向に、前記駆動側回転伝達磁石(7)と同じ個数が配置された永久磁石であり、
前記直流電源(24)と前記コイル(9)に電気的に接続し、かつ1つの前記コイル(9)を用いて1つの前記コイル(9)に生じる前記駆動側回転伝達磁石(7)と前記従動側回転伝達磁石(8)との間の誘導起電力を計測することにより演算される前記駆動側回転体(1)と前記従動側回転体(4)との間の相対的回転角度に基づいて、他の前記コイル(9)へ供給する電流のオン・オフ及び電流の向きを制御するコイル電流制御手段(125)を更に備えることを特徴とする動力伝達装置(300)。
【請求項5】
前記駆動側回転体(1)に配置された反発用駆動側永久磁石(5b)と、前記従動側回転体(4)に前記反発用駆動側永久磁石(5b)と反対の磁極で対面するように配置された反発用従動側永久磁石(5a)により形成されて、反発磁力によって前記従動側回転体(4)を前記駆動側回転体(1)から軸方向に離間させる回転体離間手段(5)、を更に備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の動力伝達装置(100、200、300)。
【請求項6】
前記コイル(9)の一端は、リング状の第1電極(13a)を介してコイル電流制御手段(25、125)の一端と電気的に接続されており、前記コイル(9)の他の一端は、リング状の第2電極(13b)を介してコイル電流制御手段(25、125)の他の一端と電気的に接続されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の動力伝達装置(200、300)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−2588(P2013−2588A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136141(P2011−136141)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)