動植物育成診断システム
【課題】
動植物の飼育に関して初心者であっても、様々な環境要因と飼育目標の動植物のデータを入力し、育成の可否及び最適な環境を容易に判断できる動植物育成診断システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
動植物を飼育・育成するための環境に関するデータである育成データを、種々の動植物ごとに、記憶したデータベースを備え、ユーザが入力した混在飼育の対象である複数の動植物名に対して、その育成データを読み出してそれらの動植物の混在飼育の可否を診断する。データベースの育成データは、動植物同士で一方が食べ他方が食べられる関係にあることを示す食性データや、動植物同士で混在飼育することが不可能な事例を示す事例データを含むようにしてもよい。また、混在飼育可能の場合は、混在飼育するにあたって維持すべき環境を表示し、混在飼育が不可能の場合は、不可能と診断した理由を表示する。
動植物の飼育に関して初心者であっても、様々な環境要因と飼育目標の動植物のデータを入力し、育成の可否及び最適な環境を容易に判断できる動植物育成診断システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
動植物を飼育・育成するための環境に関するデータである育成データを、種々の動植物ごとに、記憶したデータベースを備え、ユーザが入力した混在飼育の対象である複数の動植物名に対して、その育成データを読み出してそれらの動植物の混在飼育の可否を診断する。データベースの育成データは、動植物同士で一方が食べ他方が食べられる関係にあることを示す食性データや、動植物同士で混在飼育することが不可能な事例を示す事例データを含むようにしてもよい。また、混在飼育可能の場合は、混在飼育するにあたって維持すべき環境を表示し、混在飼育が不可能の場合は、不可能と診断した理由を表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の種類の動植物を混在して育成する際に必要な育成環境などに関する情報を診断し提示する動植物育成診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動植物育成に関する技術として、例えば、下記特許文献1に記載の技術が知られている。この技術は、例えば動植物の育成室にセンサ(水温計や溶存酸素計)を設置して育成室内の状態を監視し、目標とする数値に自動的に調整する、あるいは、目標とする数値を設定し、コンピュータ上で仮想的に動植物の状態の変化をシミュレーションするものである。
【特許文献1】特開2003−61469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、目標値を設定した後に飼育状態を機械的に観察し、シミュレーションを行って擬似的な育成状況を表示装置に表示したり、あるいは、目標値に基づいて飼育環境を調整する技術である。ところが、目標値に関しては、インターネットを介してデータベースサーバから水温目標値、下限水温値、上限水温値及び下限溶存酸素量しか取得していないため、水温と酸素量以外の要素を管理することができない。例えば、酸性の環境でしか生きられない動植物をアルカリ性の環境に入れて、水温と酸素量だけ合わせても動植物を健康な状態に保つことはできない。また、成長すると大型になる動植物を小さな飼育環境で飼うことはできないし、多くの光を必要とするものを蛍光灯の環境で育てることは不可能なのである。上記従来技術では、このようなケースに対処することができない。
【0004】
本発明の目的は、上記の様々な環境要因と飼育目標の動植物のデータを入力し、育成の可否及び最適な環境を容易に判断できる動植物育成診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、動植物を飼育・育成するための環境に関するデータである育成データを、種々の動植物ごとに、記憶したデータベースを備え、ユーザが入力した混在飼育の対象である複数の動植物名に対して、その育成データを読み出してそれらの動植物の混在飼育の可否を診断することを特徴とする。
【0006】
データベースの育成データは、動植物同士で一方が食べ他方が食べられる関係にあることを示す食性データ、および、動植物同士で混在飼育することが不可能な事例を示す事例データを含むようにしてもよい。また、混在飼育可能の場合は、混在飼育するにあたって維持すべき環境を表示し、混在飼育が不可能の場合は、不可能と診断した理由を表示するようにしてもよい。
【0007】
また本発明は、育成データを格納した育成データベースに加え、各種の設備に関する設備データ(その設備によって維持できる飼育・育成環境などを含む)を備え、飼育対象の動植物を指定された設備で飼育可能かどうか、および飼育不可能な場合はその理由を診断することを特徴とする。例えば、育成データベースは、動植物の体長と該体長の何倍の範囲で活動するかを示す係数とを含み、診断する手段は、飼育対象の動植物について、前記体長と前記係数を乗算した結果と、前記指定された設備の大きさとから、前記飼育対象の動植物を前記指定された設備で飼育可能かどうかを診断するものである。飼育を行う地域の水温のデータを考慮して、飼育可能かどうかを診断するようにしてもよい。
【0008】
さらに本発明は、飼育の対象である動植物の名称を入力すると、その動植物を飼育・育成するのに必要な設備一覧を取得して表示することを特徴とする。また、現状の飼育・育成環境を入力すると、現時点で必要なメンテナンスを診断・表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、飼育しようとしている動植物の名前を入力すると飼育環境に関するデータを読み出し、維持すべき環境や、複数の種類を同時に飼育する場合は混在して飼育が可能かどうかなどを表示することができる。また、動植物の飼育環境のデータから、飼育するのに必要な設備を表示することができる。さらに、現状の飼育環境に対して必要なメンテナンスについても表示することができる。動植物の飼育環境データを必要に応じて、インターネットから読み込むので、常に最新のデータを用いて飼育育成診断ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施する場合の一形態を図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の動植物育成診断システムの概略構成を示したものである。ユーザの側には、ユーザコンピュータ102と、動植物を飼育するための水槽などの設備103がある。動植物の育成データ集などを格納したデータベースサーバ101は、インターネット104を介してユーザコンピュータ102と接続されている。
【0012】
図2は、本実施形態の動植物育成診断システムのブロック図を示したものである。ユーザコンピュータ102は、メモリ202と、画面表示を行うディスプレイ203と、入力装置としてのキーボード204と、ディジタル回線終端装置205と、これらの動作を制御するCPU201とを備える。ディジタル回線終端装置205は、一方をインターネット104に接続する通信回線に接続し、他方はCPU201と接続された状態になっている。これにより、ユーザコンピュータ102のユーザは、インターネット104を介してデータベースサーバ101から最新の飼育環境データなどを入手することができる。
【0013】
図3は、図1および図2に示した本実施形態のシステムにより混在飼育の可否を診断する例を示す。ユーザは、観賞魚a、観賞魚b、水草α、および水草βを混在して飼育できないかと考え、キーボード204を用いて、ユーザコンピュータ102にこれらの飼育対象生物の名称を入力する。ユーザコンピュータ102は、入力された飼育対象生物の名称をデータベースサーバ101に送信する。
【0014】
データベースサーバ101は、育成データ集301を備えている。育成データ集301は、例えば、魚類に関する種別データ、水生植物に関する種別データ、および飼育事例データなどを含む。魚類に関する種別データは、魚類の種別ごとの最適な水温、飼育するための許容範囲の水温、最適なPH値、および食性など、その魚類を飼育するための各種の環境に関する情報である。水生植物に関する種別データは、水生植物の種類ごとの最適な水温、育成するための許容範囲の水温、CO2の添加の要否、および食性など、その水生植物を育成する際の各種の環境に関する情報である。飼育事例データは、複数の飼育対象生物の組み合わせに対する混在飼育の可否の事例に関する情報である。データベースサーバ101は、ユーザコンピュータ102から送信された飼育対象生物名称に対応する育成データを育成データ集301から検索してユーザコンピュータ102に返信する。
【0015】
ユーザコンピュータ102は、返信された育成データを解析することにより、上記飼育対象生物の混在飼育の可否を診断し、その診断結果を例えば画面302のように表示する。この表示では、目標とする混在飼育の環境または混在飼育不可能な場合の理由あるいは混在飼育時の注意事項などについても同様にして表示するものとする。これにより、ユーザは、各種の飼育対象生物の混在飼育に関する情報を取得できる。
【0016】
図4は、図3で説明した混在飼育の可否を診断する場合のユーザコンピュータ102における処理手順を示すフローチャートである。ユーザは、ステップ401にて、飼育目標の動植物の名称をキーボード204から入力する。混在飼育を診断するため複数の動植物名称の入力が可能であり、飼育目標の全てを入力し終わるまで入力作業を繰り返す(ステップ402)。ステップ403では、インターネット104経由でデータベースサーバ101にアクセスし、ステップ401,402にて入力した動植物名称のそれぞれに対応する育成データを取得する。
【0017】
ステップ404では、取得した育成データを用いて、各飼育対象生物の適正水温のマッチングを行う。これは、混在飼育の目標とする全ての飼育対象生物に関して、適正水温が許容範囲内でマッチする場合は混在可能とし、マッチしない場合は混在不可能と判断する処理である。次にステップ405で水質診断を行う。これは、各飼育対象生物の適正水質(PH値やCO2の添加など)のマッチングを行い、全ての飼育対象生物に関する適正水質が許容範囲内でマッチする場合は混在可能とし、マッチしない場合は混在不可能と判断する処理である。次にステップ406で食性診断を行う。これは、飼育対象生物のサイズや食性についてマッチングを行うものである。例えば、大型の肉食魚と小型魚の混在はできない、あるいは草食魚と水草の混在はできない、などの診断を行う。
【0018】
ステップ407で、上記ステップ404〜406の各診断で全て混在可能と診断されているかどうか判定する。1つでも混在不可能との診断結果がある場合は、ステップ410に進む。全ての診断で混在可能と診断された場合は、ステップ408で、データベースサーバ101にアクセスし、過去に同じ組み合わせでの飼育事例があるか否か検索し、ある場合は、その飼育事例データをダウンロードする。飼育事例データには、混在できそうなのに実際にやってみるとうまくいかないような特別な事例が格納されている。ステップ409で、取得した事例データに基づいて混在飼育の可否を判定する。混在不可能な場合はステップ410に進み、混在可能な場合はステップ411に進む。ステップ410では、混在飼育が不可能であるという診断結果とその理由を表示する。ステップ411では、混在飼育が可能であるという診断結果と付加情報(例えばより良い環境とするための目標とする情報など)を表示する。
【0019】
図5は、図4で説明した混在飼育の可否診断の方式の例を示す。図5(a)は、水温/水質診断の方式例である。生物は、水生生物に限らず生育可能な環境の範囲が決まっており、飼育目標の生物間で水温や水質の許容範囲に重複する領域がある場合、混在飼育可能と判定する。501は、水温診断により混在可能なケースと判定する例である。熱帯魚aは、飼育する水温の許容範囲が22〜26℃、適温が24〜25℃である。熱帯魚bは、飼育する水温の許容範囲が24〜28℃、適温が25〜26℃である。これらを混在飼育する場合、24〜26℃が重複する範囲であるので、本システムはこの範囲で混在飼育可能と診断する。502は、水温診断により混在不可能と判断する例である。熱帯魚cは、飼育する水温の許容範囲が26〜29℃、適温が27〜28℃である。水草aは、生育可能な水温の許容範囲が21〜24℃、適温が22〜23℃である。これらの水温の範囲から重複する範囲がないので、本システムは熱帯魚cと水草aは混在飼育は不可能と診断する。
【0020】
図5(b)は、本システムにおける食性/事例診断の例である。この診断では、環境の数値範囲による診断(水温やPH値など)が不可能な場合に、食性や事例に基づいて判断を行う。例えば、肉食大型魚と雑食の小型魚とは混在が不可能である。小型魚が食べられるためである。また、草食魚と水草とは、水草が食害されるため混在不可能である。さらに、事例で同じ水槽で飼育すると争うことが確認されているなど混在が不可能な場合の診断も行う。
【0021】
図6は、現在所有している、あるいは準備した飼育設備と、これから飼育しようとしている飼育目標生物の名称を入力し、飼育するために必要な設備が揃っているかどうかを診断する例を示す。これは、使用する設備が決まっていて、それに合わせて、飼育する生物を決めていく方法である。
【0022】
ユーザは、ユーザコンピュータ102において、現在用意してある各種の設備601に関する情報と飼育目標である熱帯魚aの名称をキーボード204から入力する。入力された設備情報と飼育目標生物名称はデータベースサーバ101に送信される。データベースサーバ101は、育成データ集301から飼育目標の生物の育成に関する各種のデータを読み出し、また設備データ集602から上記設備情報が示す設備によって維持できる各種の環境に関する情報を読み出し、これらの読み出したデータをユーザコンピュータ102に返信する。設備データ集602は、例えば、ヒーターやクーラーの容量に応じた水温調節可能範囲などの情報である。ユーザコンピュータ102は、返信された環境データに基づいて当該飼育設備および飼育目標で飼育が可能か否かの判定を行い、その結果を画面603のように表示する。
【0023】
図7は、図6のような飼育設備と飼育目標の診断を行うときのユーザコンピュータ102における処理の手順を示す。ステップ701で、ユーザが所有している(あるいは準備しようとしている)設備の情報を入力する。例えば、水槽のサイズ、ヒーターの有無(容量も含む)、クーラーの有無(容量も含む)、ライト(ワット数を含む)、ポンプの有無(リットル/minなどの処理能力を含む)などに関する情報である。ステップ702で、飼育目標とする生物の名称を入力する。ステップ703で、入力した設備情報と飼育目標をインターネット104経由でデータベースサーバ101に問い合わせる。データベースサーバ101は、当該設備情報および飼育目標に対応する育成データや設備データを返信する。ステップ704で、データベースサーバ101から送信された育成データや設備データを受信する。これらのデータは、例えば、水槽サイズが60cmであれば体長10cmの魚2匹まで飼育可能である、ヒーターが100wの場合は60cmの水槽を30℃に保温することができる、飼育目標が鮎ならば体長が20cm程度になるので必要な水槽は60cm以上でクーラーが必要となるなど、入力した項目に関する限界性能などのデータである。次にステップ705で、受信した育成データおよび設備データを評価し、当該設備で当該飼育目標の生物を飼育可能か否か判定する。飼育不可能なときはステップ706で、飼育可能なときはステップ707で、その旨を診断結果として表示する。診断結果には理由その他の付加情報を同時に表示してもよい。
【0024】
図8は、本システムにおける図7で説明したような設備情報および飼育目標に応じた診断を行う際の評価の方式の例を示す。図8(a)は、飼育容器のサイズに基づく診断例である。飼育目標とする生物に必要な容器のサイズは、「容器のサイズ=生物の体長」ではない。生物は、活動に幅があり、活発に活動する種もあれば、ほとんど動かずにいる種もある。このため、本実施形態のシステムでは、生物の活性を「体長の何倍の活動をする」という係数で表現し、飼育に必要な容器サイズを算出する。例えば、魚aが飼育目標である場合、データベースサーバ101から、魚aに関する「体長=10cm」および「係数=5」というデータをダウンロードする。所有設備として60cm水槽が用意されている場合、魚aの評価として「10cm(体長)×5(係数)=50cm」と計算されるので、所有している水槽で収容可能と判断する。
【0025】
図8(b)は、冷暖房の要否/容量に基づく診断例である。飼育を行う地域によって、冷暖房しない場合の水温は異なるため、まず冷暖房の要否を判定する必要がある。その上で、必要と判断された場合は、水容量に対して出力が十分かどうかを判定して、飼育するのに妥当な設備かどうか結果を出す。例えば、まずステップ801で飼育を行う地域の水温が飼育対象の許容範囲の水温か否か評価し、そうである場合は、ステップ803で飼育可能と判定する。ステップ801でNOの場合は、ステップ802で飼育容器の容量に対して、冷暖房器具の出力は十分か否か判定し、十分であればステップ803で飼育可能と判定する。十分でない場合は、ステップ804で飼育不可能と判定する。なお、この例のように飼育を行う地域に基づく診断を行う場合は、ユーザに飼育を行う地域を指定させるものとし、データベースには各地域ごとの水温のデータを備えておくものとする。
【0026】
図9は、本実施形態のシステムを用いて、これから飼育しようとしている生物を飼育するために必要な設備が揃っているかどうかを確認する例を示す。これは、飼育する生物が決まっていて、それに合わせて設備を用意していく方法の例である。ユーザは、ユーザコンピュータ102において、キーボード204から飼育目標の生物の名称を入力する。入力された飼育目標の生物名称はデータベースサーバ101に送信される。データベースサーバ101は、育成データ集301や設備データ集602を参照して、当該飼育目標の生物を飼育するために必要な設備一覧の環境データを返信する。ユーザコンピュータ102は、返信された環境データに基づいて、画面901に示すように当該生物の飼育に必要な設備一覧を表示する。これにより、ユーザは飼育目標の生物の飼育に必要な設備が何かを知ることができる。
【0027】
図10は、本実施形態のシステムを用いて、飼育している生物と設備および水質から水槽の状態を診断し、必要なメンテナンスを指示する例を示す。ユーザは、ユーザコンピュータ102において、キーボード204から現在飼育している生物に関する情報、および水槽の設備や現在の水質に関する情報を入力する。例えば、気温/水温、水であればPH、アンモニア濃度などの情報である。これらのデータはデータベースサーバ101に送信される。
【0028】
メンテナンスデータ集1002には、例えば飼育上の種々の不具合に対応して、想定される原因、それに対する必要なメンテナンス方法等が対応づけられて蓄積されている。例えば、「飼育環境の気温/水温が異常に低い値または高い値になっている」という不具合に対しては、「ヒーターが故障している」「サーモスタットが故障している」等の想定原因、及び「ヒーターを修理する」「サーモスタットを再点検する」等の必要なメンテナンス方法が対応づけられている。一つの不具合に対する想定原因、一つの想定原因に対するメンテナンス方法は、それぞれ複数あってもよい。また、ユーザがメンテナンスデータ集1002に蓄積されている不具合データを適切に指示できるように、キーボード204からキーワードを入力したときに、データベースサーバ101は、メンテナンスデータ集1002に蓄積されている不具合データのうちキーワードに関連した不具合データをユーザコンピュータ102に返信して、その中からユーザに選択させるようにしてもよい。
【0029】
データベースサーバ101は、育成データ集301やメンテナンスデータ集1002を参照して、当該飼育生物に対して現在必要なメンテナンスに関するメンテナンスデータを返信する。上記の例で説明すると、気温/水温が異常に低い値となっていれば、ヒーター、サーモスタット関連の異常が疑われ、これらの機器を再点検する必要がある旨を返信する。ユーザコンピュータ102は、返信されたメンテナンスデータに基づいて、画面1001に示すように、必要なメンテナンスを指示するメッセージを表示する。これにより、動植物の育成経験の乏しいユーザでも、客観的なデータにより最適のメンテナンスを施すことができるようになる。
【0030】
図11は、本実施形態のシステムにおいて、ユーザが最新のデータを取得することができることを示す概要図である。データベースサーバ101において、育成データ集301や設備データ集602、およびメンテナンスデータ集1002は、最新のデータをデータセンターから入力しておく。例えば、熱帯魚などの飼育方法は最新の研究成果などにより日々変化する。ユーザは、インターネットを介して常に最新のデータを取得することができるので、最新の研究結果に応じた判断を行うことができる。なお、ユーザコンピュータ102は、上述したような方式でデータベースサーバ101から各種のデータをダウンロードした場合、それらのデータをハードディスクなどに格納しておき、後でそれらのデータを用いて評価や判断を行うことができる。ダウンロードされているデータについては、ダウンロードしてから所定期間が経過したとき、最新のデータをデータベースサーバ101から自動的にダウンロードし、変更があったデータについては常に最新のデータをユーザコンピュータ102に格納しておくようにしてもよい。例えば、図3の「飼育事例データ」で、従来は「鑑賞魚bと鑑賞魚cは混在可能」とされていたものが、最新の研究結果により、「水槽内の鑑賞魚aの飼育密度が一定数以上になると、鑑賞魚aが集団行動を取るようになり、鑑賞魚bと争うようになる」(狭い水槽に鑑賞魚aを多数飼えば争うようになる)または「水温が一定温度以上になると鑑賞魚aの活動が活発化して争うようになる」等のことが判明した場合、この最新データがデータベースサーバ101から自動的にダウンロードされる。自動的ダウンロードを行う所定期間は、例えば1週間毎や1ヶ月毎等、ユーザにより設定可能とする。これにより、常に最新のデータに基づいて評価や診断を行うことができる。
【0031】
上記実施形態では主として水槽内で飼育する熱帯魚や水生植物についての例を挙げたが、これに限ることなく、例えば農業分野などへ応用することもできる。例えば、1つの畑の中で混在することができる作物の診断、ある作物を育成するのに必要な各種の設備についての診断、ある作物を育成するのに必要な地域的な環境の診断(例えば平均気温や降雨量など)などを行うのに、本発明を適用することもできる。特に、専門的な飼育・生育環境に関する情報は、それを配信すること自体をビジネスにすることも考えられるので、本発明により各種の診断のための情報を配信することに対して所定の課金をユーザに対して課するようにしてもよい。
【0032】
上記実施形態のシステムでは、ユーザコンピュータ102が、データベースサーバ101からダウンロードした各種のデータを用いて評価や診断を行っているが、これらの処理を全てデータベースサーバ101側で実行し、ユーザコンピュータ102は、その結果をブラウザなどで受け取って表示するだけとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態の概略構成を示すブロック図
【図2】本実施形態の動植物育成診断システムの詳細なブロック図
【図3】本実施形態のシステムにより混在飼育の可否を診断する例を示す図
【図4】混在飼育の可否を診断する場合のユーザコンピュータにおける処理手順を示すフローチャート
【図5】混在飼育の可否診断の方式の例を示す図
【図6】使用する飼育設備が決まっていてそれに合わせて飼育する生物を決めていく例を示す図
【図7】飼育設備と飼育目標の診断を行うときのユーザコンピュータにおける処理の手順を示すフローチャート
【図8】設備情報および飼育目標に応じた診断を行う際の評価の方式例を示す図
【図9】飼育する生物が決まっていてそれに合わせて設備を用意していく例を示す図
【図10】飼育している生物と設備や水質の状態から必要なメンテナンスを指示する例を示す図
【図11】本実施形態のシステムにおいてユーザが最新のデータを取得する概要を示す図
【符号の説明】
【0034】
101…データベースサーバ、102…ユーザコンピュータ、103…動植物を飼育するための水槽などの設備、104…インターネット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の種類の動植物を混在して育成する際に必要な育成環境などに関する情報を診断し提示する動植物育成診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動植物育成に関する技術として、例えば、下記特許文献1に記載の技術が知られている。この技術は、例えば動植物の育成室にセンサ(水温計や溶存酸素計)を設置して育成室内の状態を監視し、目標とする数値に自動的に調整する、あるいは、目標とする数値を設定し、コンピュータ上で仮想的に動植物の状態の変化をシミュレーションするものである。
【特許文献1】特開2003−61469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、目標値を設定した後に飼育状態を機械的に観察し、シミュレーションを行って擬似的な育成状況を表示装置に表示したり、あるいは、目標値に基づいて飼育環境を調整する技術である。ところが、目標値に関しては、インターネットを介してデータベースサーバから水温目標値、下限水温値、上限水温値及び下限溶存酸素量しか取得していないため、水温と酸素量以外の要素を管理することができない。例えば、酸性の環境でしか生きられない動植物をアルカリ性の環境に入れて、水温と酸素量だけ合わせても動植物を健康な状態に保つことはできない。また、成長すると大型になる動植物を小さな飼育環境で飼うことはできないし、多くの光を必要とするものを蛍光灯の環境で育てることは不可能なのである。上記従来技術では、このようなケースに対処することができない。
【0004】
本発明の目的は、上記の様々な環境要因と飼育目標の動植物のデータを入力し、育成の可否及び最適な環境を容易に判断できる動植物育成診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、動植物を飼育・育成するための環境に関するデータである育成データを、種々の動植物ごとに、記憶したデータベースを備え、ユーザが入力した混在飼育の対象である複数の動植物名に対して、その育成データを読み出してそれらの動植物の混在飼育の可否を診断することを特徴とする。
【0006】
データベースの育成データは、動植物同士で一方が食べ他方が食べられる関係にあることを示す食性データ、および、動植物同士で混在飼育することが不可能な事例を示す事例データを含むようにしてもよい。また、混在飼育可能の場合は、混在飼育するにあたって維持すべき環境を表示し、混在飼育が不可能の場合は、不可能と診断した理由を表示するようにしてもよい。
【0007】
また本発明は、育成データを格納した育成データベースに加え、各種の設備に関する設備データ(その設備によって維持できる飼育・育成環境などを含む)を備え、飼育対象の動植物を指定された設備で飼育可能かどうか、および飼育不可能な場合はその理由を診断することを特徴とする。例えば、育成データベースは、動植物の体長と該体長の何倍の範囲で活動するかを示す係数とを含み、診断する手段は、飼育対象の動植物について、前記体長と前記係数を乗算した結果と、前記指定された設備の大きさとから、前記飼育対象の動植物を前記指定された設備で飼育可能かどうかを診断するものである。飼育を行う地域の水温のデータを考慮して、飼育可能かどうかを診断するようにしてもよい。
【0008】
さらに本発明は、飼育の対象である動植物の名称を入力すると、その動植物を飼育・育成するのに必要な設備一覧を取得して表示することを特徴とする。また、現状の飼育・育成環境を入力すると、現時点で必要なメンテナンスを診断・表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、飼育しようとしている動植物の名前を入力すると飼育環境に関するデータを読み出し、維持すべき環境や、複数の種類を同時に飼育する場合は混在して飼育が可能かどうかなどを表示することができる。また、動植物の飼育環境のデータから、飼育するのに必要な設備を表示することができる。さらに、現状の飼育環境に対して必要なメンテナンスについても表示することができる。動植物の飼育環境データを必要に応じて、インターネットから読み込むので、常に最新のデータを用いて飼育育成診断ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施する場合の一形態を図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の動植物育成診断システムの概略構成を示したものである。ユーザの側には、ユーザコンピュータ102と、動植物を飼育するための水槽などの設備103がある。動植物の育成データ集などを格納したデータベースサーバ101は、インターネット104を介してユーザコンピュータ102と接続されている。
【0012】
図2は、本実施形態の動植物育成診断システムのブロック図を示したものである。ユーザコンピュータ102は、メモリ202と、画面表示を行うディスプレイ203と、入力装置としてのキーボード204と、ディジタル回線終端装置205と、これらの動作を制御するCPU201とを備える。ディジタル回線終端装置205は、一方をインターネット104に接続する通信回線に接続し、他方はCPU201と接続された状態になっている。これにより、ユーザコンピュータ102のユーザは、インターネット104を介してデータベースサーバ101から最新の飼育環境データなどを入手することができる。
【0013】
図3は、図1および図2に示した本実施形態のシステムにより混在飼育の可否を診断する例を示す。ユーザは、観賞魚a、観賞魚b、水草α、および水草βを混在して飼育できないかと考え、キーボード204を用いて、ユーザコンピュータ102にこれらの飼育対象生物の名称を入力する。ユーザコンピュータ102は、入力された飼育対象生物の名称をデータベースサーバ101に送信する。
【0014】
データベースサーバ101は、育成データ集301を備えている。育成データ集301は、例えば、魚類に関する種別データ、水生植物に関する種別データ、および飼育事例データなどを含む。魚類に関する種別データは、魚類の種別ごとの最適な水温、飼育するための許容範囲の水温、最適なPH値、および食性など、その魚類を飼育するための各種の環境に関する情報である。水生植物に関する種別データは、水生植物の種類ごとの最適な水温、育成するための許容範囲の水温、CO2の添加の要否、および食性など、その水生植物を育成する際の各種の環境に関する情報である。飼育事例データは、複数の飼育対象生物の組み合わせに対する混在飼育の可否の事例に関する情報である。データベースサーバ101は、ユーザコンピュータ102から送信された飼育対象生物名称に対応する育成データを育成データ集301から検索してユーザコンピュータ102に返信する。
【0015】
ユーザコンピュータ102は、返信された育成データを解析することにより、上記飼育対象生物の混在飼育の可否を診断し、その診断結果を例えば画面302のように表示する。この表示では、目標とする混在飼育の環境または混在飼育不可能な場合の理由あるいは混在飼育時の注意事項などについても同様にして表示するものとする。これにより、ユーザは、各種の飼育対象生物の混在飼育に関する情報を取得できる。
【0016】
図4は、図3で説明した混在飼育の可否を診断する場合のユーザコンピュータ102における処理手順を示すフローチャートである。ユーザは、ステップ401にて、飼育目標の動植物の名称をキーボード204から入力する。混在飼育を診断するため複数の動植物名称の入力が可能であり、飼育目標の全てを入力し終わるまで入力作業を繰り返す(ステップ402)。ステップ403では、インターネット104経由でデータベースサーバ101にアクセスし、ステップ401,402にて入力した動植物名称のそれぞれに対応する育成データを取得する。
【0017】
ステップ404では、取得した育成データを用いて、各飼育対象生物の適正水温のマッチングを行う。これは、混在飼育の目標とする全ての飼育対象生物に関して、適正水温が許容範囲内でマッチする場合は混在可能とし、マッチしない場合は混在不可能と判断する処理である。次にステップ405で水質診断を行う。これは、各飼育対象生物の適正水質(PH値やCO2の添加など)のマッチングを行い、全ての飼育対象生物に関する適正水質が許容範囲内でマッチする場合は混在可能とし、マッチしない場合は混在不可能と判断する処理である。次にステップ406で食性診断を行う。これは、飼育対象生物のサイズや食性についてマッチングを行うものである。例えば、大型の肉食魚と小型魚の混在はできない、あるいは草食魚と水草の混在はできない、などの診断を行う。
【0018】
ステップ407で、上記ステップ404〜406の各診断で全て混在可能と診断されているかどうか判定する。1つでも混在不可能との診断結果がある場合は、ステップ410に進む。全ての診断で混在可能と診断された場合は、ステップ408で、データベースサーバ101にアクセスし、過去に同じ組み合わせでの飼育事例があるか否か検索し、ある場合は、その飼育事例データをダウンロードする。飼育事例データには、混在できそうなのに実際にやってみるとうまくいかないような特別な事例が格納されている。ステップ409で、取得した事例データに基づいて混在飼育の可否を判定する。混在不可能な場合はステップ410に進み、混在可能な場合はステップ411に進む。ステップ410では、混在飼育が不可能であるという診断結果とその理由を表示する。ステップ411では、混在飼育が可能であるという診断結果と付加情報(例えばより良い環境とするための目標とする情報など)を表示する。
【0019】
図5は、図4で説明した混在飼育の可否診断の方式の例を示す。図5(a)は、水温/水質診断の方式例である。生物は、水生生物に限らず生育可能な環境の範囲が決まっており、飼育目標の生物間で水温や水質の許容範囲に重複する領域がある場合、混在飼育可能と判定する。501は、水温診断により混在可能なケースと判定する例である。熱帯魚aは、飼育する水温の許容範囲が22〜26℃、適温が24〜25℃である。熱帯魚bは、飼育する水温の許容範囲が24〜28℃、適温が25〜26℃である。これらを混在飼育する場合、24〜26℃が重複する範囲であるので、本システムはこの範囲で混在飼育可能と診断する。502は、水温診断により混在不可能と判断する例である。熱帯魚cは、飼育する水温の許容範囲が26〜29℃、適温が27〜28℃である。水草aは、生育可能な水温の許容範囲が21〜24℃、適温が22〜23℃である。これらの水温の範囲から重複する範囲がないので、本システムは熱帯魚cと水草aは混在飼育は不可能と診断する。
【0020】
図5(b)は、本システムにおける食性/事例診断の例である。この診断では、環境の数値範囲による診断(水温やPH値など)が不可能な場合に、食性や事例に基づいて判断を行う。例えば、肉食大型魚と雑食の小型魚とは混在が不可能である。小型魚が食べられるためである。また、草食魚と水草とは、水草が食害されるため混在不可能である。さらに、事例で同じ水槽で飼育すると争うことが確認されているなど混在が不可能な場合の診断も行う。
【0021】
図6は、現在所有している、あるいは準備した飼育設備と、これから飼育しようとしている飼育目標生物の名称を入力し、飼育するために必要な設備が揃っているかどうかを診断する例を示す。これは、使用する設備が決まっていて、それに合わせて、飼育する生物を決めていく方法である。
【0022】
ユーザは、ユーザコンピュータ102において、現在用意してある各種の設備601に関する情報と飼育目標である熱帯魚aの名称をキーボード204から入力する。入力された設備情報と飼育目標生物名称はデータベースサーバ101に送信される。データベースサーバ101は、育成データ集301から飼育目標の生物の育成に関する各種のデータを読み出し、また設備データ集602から上記設備情報が示す設備によって維持できる各種の環境に関する情報を読み出し、これらの読み出したデータをユーザコンピュータ102に返信する。設備データ集602は、例えば、ヒーターやクーラーの容量に応じた水温調節可能範囲などの情報である。ユーザコンピュータ102は、返信された環境データに基づいて当該飼育設備および飼育目標で飼育が可能か否かの判定を行い、その結果を画面603のように表示する。
【0023】
図7は、図6のような飼育設備と飼育目標の診断を行うときのユーザコンピュータ102における処理の手順を示す。ステップ701で、ユーザが所有している(あるいは準備しようとしている)設備の情報を入力する。例えば、水槽のサイズ、ヒーターの有無(容量も含む)、クーラーの有無(容量も含む)、ライト(ワット数を含む)、ポンプの有無(リットル/minなどの処理能力を含む)などに関する情報である。ステップ702で、飼育目標とする生物の名称を入力する。ステップ703で、入力した設備情報と飼育目標をインターネット104経由でデータベースサーバ101に問い合わせる。データベースサーバ101は、当該設備情報および飼育目標に対応する育成データや設備データを返信する。ステップ704で、データベースサーバ101から送信された育成データや設備データを受信する。これらのデータは、例えば、水槽サイズが60cmであれば体長10cmの魚2匹まで飼育可能である、ヒーターが100wの場合は60cmの水槽を30℃に保温することができる、飼育目標が鮎ならば体長が20cm程度になるので必要な水槽は60cm以上でクーラーが必要となるなど、入力した項目に関する限界性能などのデータである。次にステップ705で、受信した育成データおよび設備データを評価し、当該設備で当該飼育目標の生物を飼育可能か否か判定する。飼育不可能なときはステップ706で、飼育可能なときはステップ707で、その旨を診断結果として表示する。診断結果には理由その他の付加情報を同時に表示してもよい。
【0024】
図8は、本システムにおける図7で説明したような設備情報および飼育目標に応じた診断を行う際の評価の方式の例を示す。図8(a)は、飼育容器のサイズに基づく診断例である。飼育目標とする生物に必要な容器のサイズは、「容器のサイズ=生物の体長」ではない。生物は、活動に幅があり、活発に活動する種もあれば、ほとんど動かずにいる種もある。このため、本実施形態のシステムでは、生物の活性を「体長の何倍の活動をする」という係数で表現し、飼育に必要な容器サイズを算出する。例えば、魚aが飼育目標である場合、データベースサーバ101から、魚aに関する「体長=10cm」および「係数=5」というデータをダウンロードする。所有設備として60cm水槽が用意されている場合、魚aの評価として「10cm(体長)×5(係数)=50cm」と計算されるので、所有している水槽で収容可能と判断する。
【0025】
図8(b)は、冷暖房の要否/容量に基づく診断例である。飼育を行う地域によって、冷暖房しない場合の水温は異なるため、まず冷暖房の要否を判定する必要がある。その上で、必要と判断された場合は、水容量に対して出力が十分かどうかを判定して、飼育するのに妥当な設備かどうか結果を出す。例えば、まずステップ801で飼育を行う地域の水温が飼育対象の許容範囲の水温か否か評価し、そうである場合は、ステップ803で飼育可能と判定する。ステップ801でNOの場合は、ステップ802で飼育容器の容量に対して、冷暖房器具の出力は十分か否か判定し、十分であればステップ803で飼育可能と判定する。十分でない場合は、ステップ804で飼育不可能と判定する。なお、この例のように飼育を行う地域に基づく診断を行う場合は、ユーザに飼育を行う地域を指定させるものとし、データベースには各地域ごとの水温のデータを備えておくものとする。
【0026】
図9は、本実施形態のシステムを用いて、これから飼育しようとしている生物を飼育するために必要な設備が揃っているかどうかを確認する例を示す。これは、飼育する生物が決まっていて、それに合わせて設備を用意していく方法の例である。ユーザは、ユーザコンピュータ102において、キーボード204から飼育目標の生物の名称を入力する。入力された飼育目標の生物名称はデータベースサーバ101に送信される。データベースサーバ101は、育成データ集301や設備データ集602を参照して、当該飼育目標の生物を飼育するために必要な設備一覧の環境データを返信する。ユーザコンピュータ102は、返信された環境データに基づいて、画面901に示すように当該生物の飼育に必要な設備一覧を表示する。これにより、ユーザは飼育目標の生物の飼育に必要な設備が何かを知ることができる。
【0027】
図10は、本実施形態のシステムを用いて、飼育している生物と設備および水質から水槽の状態を診断し、必要なメンテナンスを指示する例を示す。ユーザは、ユーザコンピュータ102において、キーボード204から現在飼育している生物に関する情報、および水槽の設備や現在の水質に関する情報を入力する。例えば、気温/水温、水であればPH、アンモニア濃度などの情報である。これらのデータはデータベースサーバ101に送信される。
【0028】
メンテナンスデータ集1002には、例えば飼育上の種々の不具合に対応して、想定される原因、それに対する必要なメンテナンス方法等が対応づけられて蓄積されている。例えば、「飼育環境の気温/水温が異常に低い値または高い値になっている」という不具合に対しては、「ヒーターが故障している」「サーモスタットが故障している」等の想定原因、及び「ヒーターを修理する」「サーモスタットを再点検する」等の必要なメンテナンス方法が対応づけられている。一つの不具合に対する想定原因、一つの想定原因に対するメンテナンス方法は、それぞれ複数あってもよい。また、ユーザがメンテナンスデータ集1002に蓄積されている不具合データを適切に指示できるように、キーボード204からキーワードを入力したときに、データベースサーバ101は、メンテナンスデータ集1002に蓄積されている不具合データのうちキーワードに関連した不具合データをユーザコンピュータ102に返信して、その中からユーザに選択させるようにしてもよい。
【0029】
データベースサーバ101は、育成データ集301やメンテナンスデータ集1002を参照して、当該飼育生物に対して現在必要なメンテナンスに関するメンテナンスデータを返信する。上記の例で説明すると、気温/水温が異常に低い値となっていれば、ヒーター、サーモスタット関連の異常が疑われ、これらの機器を再点検する必要がある旨を返信する。ユーザコンピュータ102は、返信されたメンテナンスデータに基づいて、画面1001に示すように、必要なメンテナンスを指示するメッセージを表示する。これにより、動植物の育成経験の乏しいユーザでも、客観的なデータにより最適のメンテナンスを施すことができるようになる。
【0030】
図11は、本実施形態のシステムにおいて、ユーザが最新のデータを取得することができることを示す概要図である。データベースサーバ101において、育成データ集301や設備データ集602、およびメンテナンスデータ集1002は、最新のデータをデータセンターから入力しておく。例えば、熱帯魚などの飼育方法は最新の研究成果などにより日々変化する。ユーザは、インターネットを介して常に最新のデータを取得することができるので、最新の研究結果に応じた判断を行うことができる。なお、ユーザコンピュータ102は、上述したような方式でデータベースサーバ101から各種のデータをダウンロードした場合、それらのデータをハードディスクなどに格納しておき、後でそれらのデータを用いて評価や判断を行うことができる。ダウンロードされているデータについては、ダウンロードしてから所定期間が経過したとき、最新のデータをデータベースサーバ101から自動的にダウンロードし、変更があったデータについては常に最新のデータをユーザコンピュータ102に格納しておくようにしてもよい。例えば、図3の「飼育事例データ」で、従来は「鑑賞魚bと鑑賞魚cは混在可能」とされていたものが、最新の研究結果により、「水槽内の鑑賞魚aの飼育密度が一定数以上になると、鑑賞魚aが集団行動を取るようになり、鑑賞魚bと争うようになる」(狭い水槽に鑑賞魚aを多数飼えば争うようになる)または「水温が一定温度以上になると鑑賞魚aの活動が活発化して争うようになる」等のことが判明した場合、この最新データがデータベースサーバ101から自動的にダウンロードされる。自動的ダウンロードを行う所定期間は、例えば1週間毎や1ヶ月毎等、ユーザにより設定可能とする。これにより、常に最新のデータに基づいて評価や診断を行うことができる。
【0031】
上記実施形態では主として水槽内で飼育する熱帯魚や水生植物についての例を挙げたが、これに限ることなく、例えば農業分野などへ応用することもできる。例えば、1つの畑の中で混在することができる作物の診断、ある作物を育成するのに必要な各種の設備についての診断、ある作物を育成するのに必要な地域的な環境の診断(例えば平均気温や降雨量など)などを行うのに、本発明を適用することもできる。特に、専門的な飼育・生育環境に関する情報は、それを配信すること自体をビジネスにすることも考えられるので、本発明により各種の診断のための情報を配信することに対して所定の課金をユーザに対して課するようにしてもよい。
【0032】
上記実施形態のシステムでは、ユーザコンピュータ102が、データベースサーバ101からダウンロードした各種のデータを用いて評価や診断を行っているが、これらの処理を全てデータベースサーバ101側で実行し、ユーザコンピュータ102は、その結果をブラウザなどで受け取って表示するだけとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態の概略構成を示すブロック図
【図2】本実施形態の動植物育成診断システムの詳細なブロック図
【図3】本実施形態のシステムにより混在飼育の可否を診断する例を示す図
【図4】混在飼育の可否を診断する場合のユーザコンピュータにおける処理手順を示すフローチャート
【図5】混在飼育の可否診断の方式の例を示す図
【図6】使用する飼育設備が決まっていてそれに合わせて飼育する生物を決めていく例を示す図
【図7】飼育設備と飼育目標の診断を行うときのユーザコンピュータにおける処理の手順を示すフローチャート
【図8】設備情報および飼育目標に応じた診断を行う際の評価の方式例を示す図
【図9】飼育する生物が決まっていてそれに合わせて設備を用意していく例を示す図
【図10】飼育している生物と設備や水質の状態から必要なメンテナンスを指示する例を示す図
【図11】本実施形態のシステムにおいてユーザが最新のデータを取得する概要を示す図
【符号の説明】
【0034】
101…データベースサーバ、102…ユーザコンピュータ、103…動植物を飼育するための水槽などの設備、104…インターネット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動植物の混在飼育の可否を診断する動植物育成診断システムであって、
動植物を飼育・育成するための環境に関するデータである育成データを、種々の動植物ごとに、記憶したデータベースと、
混在飼育の対象である複数の動植物の名称を入力する手段と、
入力された各動植物の育成データを前記データベースから読み出す手段と、
読み出した各動植物の育成データに基づいて、それらの動植物の混在飼育の可否を診断する手段と、
前記診断の結果を表示する手段と
を備えることを特徴とする動植物育成診断システム。
【請求項2】
請求項1に記載の動植物育成診断システムにおいて、
前記データベースの育成データは、動植物同士で一方が食べ他方が食べられる関係にあることを示す食性データ、および、動植物同士で混在飼育することが不可能な事例を示す事例データを含むことを特徴とする動植物育成診断システム。
【請求項3】
請求項1に記載の動植物育成診断システムにおいて、
前記診断する手段は、混在飼育が可能と診断した場合は、前記育成データから混在飼育するにあたって維持すべき環境を求め、混在飼育が不可能と診断した場合は、前記育成データから不可能と診断した理由を求めるものであり、
前記表示する手段は、前記混在飼育の可否とともに、前記診断する手段が求めた混在飼育が可能な際に維持すべき環境または混在飼育が不可能と診断した理由を表示するものである
ことを特徴とする動植物育成診断システム。
【請求項4】
動植物を飼育・育成する際の環境を診断する動植物育成診断システムであって、
動植物を飼育・育成するための環境に関するデータである育成データを、種々の動植物ごとに、記憶した育成データベースと、
動植物を飼育・育成するための種々の設備によって維持できる飼育・育成環境を示す設備データを、各設備ごとに、記憶した設備データベースと、
任意の数の設備を指定する設備情報を入力する手段と、
飼育の対象である動植物の名称を入力する手段と、
入力された動植物の育成データを前記育成データベースから読み出す手段と、
入力された設備情報で指定された設備の設備データを前記設備データベースから読み出す手段と、
読み出した育成データおよび設備データに基づいて、前記飼育対象の動植物を前記指定された設備で飼育可能かどうか、および飼育不可能な場合はその理由を診断する手段と、
前記診断の結果を表示する手段と
を備えることを特徴とする動植物育成診断システム。
【請求項5】
請求項4に記載の動植物育成診断システムにおいて、
前記育成データベースは、動植物の体長と該体長の何倍の範囲で活動するかを示す係数とを含み、
前記診断する手段は、前記飼育対象の動植物について、前記体長と前記係数を乗算した結果と、前記指定された設備の大きさとから、前記飼育対象の動植物を前記指定された設備で飼育可能かどうかを診断するものである
ことを特徴とする動植物育成診断システム。
【請求項6】
請求項4に記載の動植物育成診断システムにおいて、
ユーザによる飼育を行う地域の入力を受け付ける手段をさらに備え、
前記育成データベースは、各地域の水温のデータを含み、
前記診断する手段は、前記育成データベースから前記飼育を行う地域の水温を求め、前記育成データおよび設備データに加えて前記飼育を行う地域の水温に基づいて、前記飼育対象の動植物を前記指定された設備で飼育可能かどうかを診断するものである
ことを特徴とする動植物育成診断システム。
【請求項7】
動植物を飼育・育成する際の環境を診断する動植物育成診断システムであって、
動植物を飼育・育成するための環境に関するデータである育成データを、種々の動植物ごとに、記憶した育成データベースと、
動植物を飼育・育成するための種々の設備によって維持できる飼育・育成環境を示す設備データを、各設備ごとに、記憶した設備データベースと、
飼育の対象である動植物の名称を入力する手段と、
入力された動植物の育成データを前記育成データベースから読み出す手段と、
前記設備データベースを参照して、前記読み出した育成データの飼育・育成環境を実現する設備一覧を取得する手段と、
該設備一覧を表示する手段と
を備えることを特徴とする動植物育成診断システム。
【請求項8】
動植物を飼育・育成する際の環境を診断する動植物育成診断システムであって、
動植物を飼育・育成するための環境に関するデータである育成データを、種々の動植物ごとに、記憶した育成データベースと、
動植物を飼育・育成するための種々の設備によって維持できる飼育・育成環境を示す設備データを、各設備ごとに、記憶した設備データベースと、
飼育・育成環境の現在の状態に対し、どのようなメンテナンスが必要かを示すメンテナンスデータを記憶したメンテナンスデータベースと、
現在使用している設備を指定する設備情報を入力する手段と、
飼育の対象である動植物の名称を入力する手段と、
現在使用している設備による動植物の飼育・育成環境の現在の状態を入力する手段と、 入力された動植物の育成データを前記育成データベースから読み出す手段と、
入力された設備情報で指定された設備の設備データを前記設備データベースから読み出す手段と、
読み出した育成データおよび設備データに基づき、前記メンテナンスデータベースを参照して、現在の飼育・育成環境の状態が前記飼育対象動植物を飼育・育成するための理想とする環境から外れていた場合、当該理想とする環境に近づけるために行うべきメンテナンスを診断する手段と、
前記診断の結果を表示する手段と
を備えることを特徴とする動植物育成診断システム。
【請求項1】
動植物の混在飼育の可否を診断する動植物育成診断システムであって、
動植物を飼育・育成するための環境に関するデータである育成データを、種々の動植物ごとに、記憶したデータベースと、
混在飼育の対象である複数の動植物の名称を入力する手段と、
入力された各動植物の育成データを前記データベースから読み出す手段と、
読み出した各動植物の育成データに基づいて、それらの動植物の混在飼育の可否を診断する手段と、
前記診断の結果を表示する手段と
を備えることを特徴とする動植物育成診断システム。
【請求項2】
請求項1に記載の動植物育成診断システムにおいて、
前記データベースの育成データは、動植物同士で一方が食べ他方が食べられる関係にあることを示す食性データ、および、動植物同士で混在飼育することが不可能な事例を示す事例データを含むことを特徴とする動植物育成診断システム。
【請求項3】
請求項1に記載の動植物育成診断システムにおいて、
前記診断する手段は、混在飼育が可能と診断した場合は、前記育成データから混在飼育するにあたって維持すべき環境を求め、混在飼育が不可能と診断した場合は、前記育成データから不可能と診断した理由を求めるものであり、
前記表示する手段は、前記混在飼育の可否とともに、前記診断する手段が求めた混在飼育が可能な際に維持すべき環境または混在飼育が不可能と診断した理由を表示するものである
ことを特徴とする動植物育成診断システム。
【請求項4】
動植物を飼育・育成する際の環境を診断する動植物育成診断システムであって、
動植物を飼育・育成するための環境に関するデータである育成データを、種々の動植物ごとに、記憶した育成データベースと、
動植物を飼育・育成するための種々の設備によって維持できる飼育・育成環境を示す設備データを、各設備ごとに、記憶した設備データベースと、
任意の数の設備を指定する設備情報を入力する手段と、
飼育の対象である動植物の名称を入力する手段と、
入力された動植物の育成データを前記育成データベースから読み出す手段と、
入力された設備情報で指定された設備の設備データを前記設備データベースから読み出す手段と、
読み出した育成データおよび設備データに基づいて、前記飼育対象の動植物を前記指定された設備で飼育可能かどうか、および飼育不可能な場合はその理由を診断する手段と、
前記診断の結果を表示する手段と
を備えることを特徴とする動植物育成診断システム。
【請求項5】
請求項4に記載の動植物育成診断システムにおいて、
前記育成データベースは、動植物の体長と該体長の何倍の範囲で活動するかを示す係数とを含み、
前記診断する手段は、前記飼育対象の動植物について、前記体長と前記係数を乗算した結果と、前記指定された設備の大きさとから、前記飼育対象の動植物を前記指定された設備で飼育可能かどうかを診断するものである
ことを特徴とする動植物育成診断システム。
【請求項6】
請求項4に記載の動植物育成診断システムにおいて、
ユーザによる飼育を行う地域の入力を受け付ける手段をさらに備え、
前記育成データベースは、各地域の水温のデータを含み、
前記診断する手段は、前記育成データベースから前記飼育を行う地域の水温を求め、前記育成データおよび設備データに加えて前記飼育を行う地域の水温に基づいて、前記飼育対象の動植物を前記指定された設備で飼育可能かどうかを診断するものである
ことを特徴とする動植物育成診断システム。
【請求項7】
動植物を飼育・育成する際の環境を診断する動植物育成診断システムであって、
動植物を飼育・育成するための環境に関するデータである育成データを、種々の動植物ごとに、記憶した育成データベースと、
動植物を飼育・育成するための種々の設備によって維持できる飼育・育成環境を示す設備データを、各設備ごとに、記憶した設備データベースと、
飼育の対象である動植物の名称を入力する手段と、
入力された動植物の育成データを前記育成データベースから読み出す手段と、
前記設備データベースを参照して、前記読み出した育成データの飼育・育成環境を実現する設備一覧を取得する手段と、
該設備一覧を表示する手段と
を備えることを特徴とする動植物育成診断システム。
【請求項8】
動植物を飼育・育成する際の環境を診断する動植物育成診断システムであって、
動植物を飼育・育成するための環境に関するデータである育成データを、種々の動植物ごとに、記憶した育成データベースと、
動植物を飼育・育成するための種々の設備によって維持できる飼育・育成環境を示す設備データを、各設備ごとに、記憶した設備データベースと、
飼育・育成環境の現在の状態に対し、どのようなメンテナンスが必要かを示すメンテナンスデータを記憶したメンテナンスデータベースと、
現在使用している設備を指定する設備情報を入力する手段と、
飼育の対象である動植物の名称を入力する手段と、
現在使用している設備による動植物の飼育・育成環境の現在の状態を入力する手段と、 入力された動植物の育成データを前記育成データベースから読み出す手段と、
入力された設備情報で指定された設備の設備データを前記設備データベースから読み出す手段と、
読み出した育成データおよび設備データに基づき、前記メンテナンスデータベースを参照して、現在の飼育・育成環境の状態が前記飼育対象動植物を飼育・育成するための理想とする環境から外れていた場合、当該理想とする環境に近づけるために行うべきメンテナンスを診断する手段と、
前記診断の結果を表示する手段と
を備えることを特徴とする動植物育成診断システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−67957(P2006−67957A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257869(P2004−257869)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】
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