説明

動物忌避具

【課題】硫黄を加熱することなく高濃度の硫黄昇華ガスを放出し、また、継続的な動物忌避作用を実現することができる動物忌避具を提供することにある。。
【解決手段】請求項1の発明に係る動物忌避具10は、硫黄又は硫黄混合物からなり硫黄昇華ガスを発生する忌避剤11と、忌避剤11を収容するとともに少なくとも底部に硫黄昇華ガスが通過可能なガス通過孔12aを有する有底筒状の忌避剤収容かご12と、ガス通過孔12aを通過した硫黄昇華ガスを貯留するとともに側部の少なくとも上下方向略中央よりも上方に硫黄昇華ガスが通過可能なガス流出孔13aを有する有底筒状のガス貯留筒13とを備えた構造となっている。これにより、忌避剤収容かご12内で発生した硫黄昇華ガスがガス貯留筒13の底部側に流れ、高濃度の硫黄昇華ガスとなって貯留するため、高濃度の硫黄昇華ガスにより鳥獣等を確実に忌避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硫黄昇華ガスによりムクドリなどの鳥獣を忌避させる動物忌避具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の動物忌避具として特許文献1に開示されたものが知られている。 この動物忌避具は、忌避剤である硫黄を収容した忌避剤収容部と、忌避剤収容部を加熱する加熱器とから構成されている。鳥獣を忌避するときは、鳥獣が出没する場所に動物忌避具を配置し、加熱器の熱により硫黄を液化する。これにより、鳥獣の出没場所で硫黄が蒸発してガスを発生するため、硫黄のガス臭により出没場所に鳥獣が近づくことがなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−16528号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の動物忌避具においは、前述の如く、硫黄のガス量及び濃度を上げるため、硫黄を加熱し液化する工程を有している。しかしながら、硫黄のガス量及び濃度が高くなるものの、これと同時に、ガスの温度も高くなるため、引火し易く危険なものとなっていた。また、動物忌避具が設置される場所(動物の出没場所)が屋外となっているため、大量のガスを一時的に大量に放出したとしても風などの影響でガスが出没場所に留まることがなく、従って、従来の動物忌避具では継続的に動物を忌避することができなかった。
【0005】
本発明の目的は、前記従来の問題点に鑑み、硫黄を加熱することなく高濃度の硫黄昇華ガスを放出し、また、継続的な動物忌避作用を実現することができる動物忌避具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記課題を解決するため、請求項1の発明に係る動物忌避具は、硫黄又は硫黄混合物からなり硫黄昇華ガスを発生する忌避剤と、忌避剤を収容するとともに少なくとも底部に硫黄昇華ガスが通過可能なガス通過孔を有する有底筒状の忌避剤収容部と、ガス通過孔を通過した硫黄昇華ガスを貯留するとともに側部の少なくとも上下方向略中央よりも上方に硫黄昇華ガスが通過可能なガス流出孔を有する有底筒状のガス貯留部とを備えた構造となっている。
【0007】
請求項1の発明によれば、忌避剤収納部に収容された忌避剤が昇華して硫黄昇華ガスが発生する。ここで、硫黄昇華ガスの分子量と空気の平均分子量を比較するとき、硫黄昇華ガスの方が高く、硫黄昇華ガスの方が空気より重くなっている。よって、硫黄昇華ガスは忌避剤収容部の下方に向かって流れ、更に、忌避剤収容部の底部に有するガス通過孔を通ってガス貯留部に流入する。ガス貯留部に流入した硫黄昇華ガスはガス貯留部の底側で滞留し、硫黄昇華ガスの流入量が多くなるに従ってガス濃度が高くなる一方、硫黄昇華ガスの貯留高さも次第に高くなる。硫黄昇華ガスの貯留高さがガス流出孔の高さに至ったとき、或いは、動物忌避具が風などで揺れて動物忌避具が傾いてガス流出孔の高さ位置が低くなったとき、ガス流出孔から高濃度の硫黄昇華ガスが流出する。これにより、動物忌避具の周囲に硫黄昇華ガスの臭いが広がり鳥獣が寄ってくることがない。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の動物忌避具において、忌避剤収容部をガス貯留部の上部内側に配置するとともに、忌避剤収容部の上面開口を閉塞し、かつ、少なくともガス流出孔が位置する部位を外側から間隔をおいて覆うカバー部を有する。
【0009】
請求項2の発明によれば、カバー体が忌避剤収容部の蓋機能を有し、忌避剤収容部内への雨水の浸入を防止している。また、ガス流出孔を通じて雨水がガス貯留部に浸入することがないため、ガス貯留部に雨水が溜まることがなく、これにより、ガス貯留部のガス貯留容積が小さくなることがない。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2記載の動物忌避具において、カバー部は忌避剤収容部又はガス貯留部の少なくとも一方に着脱自在に設けた構造となっている。
【0011】
請求項3の発明によれば、忌避剤収容部に忌避剤を収容するときは、カバー部を外し、更に忌避剤収容部の上部から忌避剤を入れ、元のようにカバー部を忌避剤収容部に取り付ければよい。また、カバー部の開閉操作により忌避剤を簡単に交換できる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3の動物忌避具において、カバー部には吊り下げ用の紐を有するので、この紐を街路樹等に結び付ければよく、動物忌避具を簡単に設置することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、忌避剤から昇華した硫黄昇華ガスが高濃度になって貯留され、この高濃度の硫黄昇華ガスが周囲に流出するため、鳥獣を確実に忌避できる。また、忌避剤が自然昇華して硫黄昇華ガスが発生するため、継続的に鳥獣を忌避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る動物忌避具の斜視図
【図2】第1実施形態に係る動物忌避具の縦断面図
【図3】第1実施形態に係る動物忌避具の分解斜視図
【図4】第1実施形態に係る動物忌避具の使用方法を示す正面図
【図5】第2実施形態に係る動物忌避具の一部省略縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至図4は本発明の第1実施形態に係る動物忌避具を示すものである。 本実施形態に係る動物忌避具10は、鳥獣が忌避するガス臭を発生する忌避剤11と、忌避剤11を収容する忌避剤収容かご12と、忌避剤11から昇華した硫黄昇華ガスを貯留するガス貯留筒13と、忌避剤収容かご12及びガス貯留筒13への雨水の浸入を防止するカバー体14とを有している。
【0016】
忌避剤11は固形の硫黄又は硫黄混合物からなるものである。なお、自然昇華により硫黄昇華ガスを発生するものであれば何れのものでも良い。
【0017】
忌避剤収容かご12は合成樹脂からなり、図2に示すように、上面が開口した有底円筒状に形成し、その内側には忌避剤11を収納している。また、忌避剤収容かご12の側板は底板から上方に向かうに従って外側に広がっており、忌避剤収容かご12への忌避剤投入作業や忌避剤収容かご12からの忌避剤取出作業が簡単にできるようになっている。更に、忌避剤収容かご12の側板及び底板には複数のガス通過孔12aが形成されている。各ガス通過孔12aの径は忌避剤11が通過しない程度の大きさに設計され、また、各ガス通過孔12aの個数は硫黄昇華ガスが忌避剤収容かご12内に滞留することがないよう多数個となっている。忌避剤収容かご12の上端には外側に向かって屈曲した環状のフランジ部12bを有している。フランジ部12bの下面はガス貯留筒13の上端に係止し、他方、フランジ部12bの上面はカバー体14の内面に当たるよう形成されている。これにより、フランジ部12bが、忌避剤収容かご12、ガス貯留筒13及びカバー体14の結合箇所となっている。
【0018】
ガス貯留筒13は合成樹脂からなり、図2及び図3に示すように、合成樹脂にて上面が開口した有底円筒状に形成し、その内側には硫黄昇華ガスの貯留空間を形成している。ガス貯留筒13の径寸法は忌避剤収容かご12の上端径寸法より大きく形成し、ガス貯留筒13の上部内側に忌避剤収容かご12を配置している。また、ガス貯留筒13の上端とフランジ部12bを接着剤15aで接着或いは熱接着により、忌避剤収容かご12とガス貯留筒13を一体に結合している。ガス貯留筒13の高さ寸法はその径寸法より大きく形成され、硫黄昇華ガスの貯留空間が高さ方向に延びている。また、ガス貯留筒13の側板には上下方向略中央から上部に亘って多数のガス流出孔13aが形成され、ガス貯留筒13内に流入した硫黄昇華ガスを上下方向中央から下部に亘る空間に貯留するようになっている。
【0019】
カバー体14は、図2及び図3に示すように、合成樹脂にて逆さカップ形状に形成されたものである。カバー体14の上面は忌避剤収容かご12の上面開口を覆っている。カバー体14の側板は下方に向かって外側に拡径し、ガス貯留筒13のうちガス流出孔13aと対向する部分を外側から間隔をおいて覆っている。これにより、カバー体14は忌避剤収容かご12及びガス貯留筒13のガス流出孔13aが覆われ、雨水が忌避剤収容かご12及びガス貯留筒13内に浸入しないようになっている。また、カバー体14の上板の中央には樹脂製の紐16の下端が接着剤15bにより固着され、この紐16の上端を鳥獣出没箇所に吊すようになっている。
【0020】
このように構成されたカバー体14は忌避剤収容かご12及びガス貯留筒13にネジ17により着脱自在となっている。即ち、忌避剤収容かご12、ガス貯留筒13及びカバー体14の上部に互いに対向するネジ孔12c,13b,14aを複数に設け、各ネジ孔12c,13b,14aにネジ17を螺合している。
【0021】
本実施形態に係る動物忌避具10を用いて街路樹18のムクドリを忌避する際は以下のように行う。
【0022】
まず、図3に示すように、各ネジ17をネジ孔12c,13b,14aから抜き取り、カバー体14を忌避剤収容かご12及びガス貯留筒13から外す。これにより、忌避剤収容かご12の上面が開口する。次いで、この上面開口から忌避剤11を忌避剤収容かご12内に投入する。しかる後、カバー体14が忌避剤収容かご12の上面開口を覆うよう、再度、忌避剤収容かご12及びガス貯留筒13に組み付け、各ネジ17でカバー体14を忌避剤収容かご12及びガス貯留筒13に取り付ける。
【0023】
このように動物忌避具10を用意したときは、図4に示すように、動物忌避具10をムクドリが留まる街路樹18に取り付ける。なお、動物忌避具10の取り付け位置は硫黄昇華ガスが街路樹18の全体に行き渡らせるため、街路樹18の上部に設定すべきである。また、動物忌避具10の取り付け個数は街路樹18の大きさ等に合わせて決めればよい。
【0024】
以上のように街路樹18に取り付けられた動物忌避具10において、忌避剤収容かご12内に収容された忌避剤11が自然昇華し、硫黄昇華ガスとなって忌避剤収容かご12内に流出する。ここで、空気の平均分子量と硫黄の分子量を比較すると、
空気の平均分子量;28.966g/mol
硫黄の分子量;32.066g/mol
であり、硫黄昇華ガスが空気より重くなっているため、忌避剤収容かご12内の硫黄昇華ガスは下降し、ガス通過孔12を通じてガス貯留筒13に流入する。また、ガス貯留筒13内の硫黄昇華ガスはガス貯留筒13の底部に向かって流れ、ガス貯留筒13の底部に硫黄昇華ガスが滞留する。これにより、硫黄昇華ガスがガス貯留筒13の底部で徐々に高濃度となっていく。そして、ガス貯留筒13内への硫黄昇華ガスの流入が継続し、これにより、高濃度の硫黄昇華ガスの範囲が徐々に上昇してガス流出孔13aの設置箇所に達したときは、高濃度の硫黄昇華ガスがガス流出孔13aから外部に流出する。
【0025】
本実施形態に係る動物忌避具10によれば、前述の如く、ムクドリが集まる街路樹18に高濃度の硫黄昇華ガスが放出され、街路樹18が硫黄昇華ガスによって覆われるため、硫黄昇華ガスの臭いを嫌うムクドリは街路樹18に寄ってこない。また、忌避剤11を加熱等することなく高濃度の硫黄昇華ガスを放出できるため、安全であり、また、忌避効果を継続的に実行できる。
【0026】
また、街路樹18に風が流れて動物忌避具10が揺れるときは、ガス貯留筒13が傾き、ガス流出孔13aの高さ位置が低くなるため、ガス貯留部13内の硫黄昇華ガスが多量に外部に流出する。これにより、街路樹18の周囲の硫黄昇華ガス濃度が非常に高くなるため、ムクドリの忌避効果が更に向上する。
【0027】
更に、カバー体14がガス流出孔13aを覆い雨水がガス貯留筒13に入らないようにしているため、ガス貯留部13に雨水が溜まることがなく、これにより、ガス貯留部13のガス貯留容積が小さくなることがない。
【0028】
なお、カバー体14は忌避剤収容かご12の上面開口を覆い、忌避剤収容かご12内への雨水の浸入を防止しているが、カバー体14、紐16及び接着剤15bの水密性に不具合があるときは、雨水が忌避剤収容かご12内に浸入する場合も想定される。このような場合は、雨水が忌避剤11の硫黄成分に接触して街路樹18には不適な酸性水となるが、この酸性水はガス通過孔12aを通じてガス貯留部13に貯留されるため、街路樹18に滴下することがない。
【0029】
更に、カバー体14がネジ17の取り付け及び取り外しにより忌避剤収容かご12及びガス貯留筒13に着脱自在となっているため、忌避剤11を簡単に交換できる。
【0030】
図5は本発明の第2実施形態に係る動物忌避具を示すものである。なお、前記第1実施形態と同様の構成部分は同一符号を用い、その説明を省略する。
【0031】
第2実施形態に係る動物忌避具10はガス貯留筒13とカバー体14との着脱構造を改良したものである。即ち、前記第1実施形態で説明したネジ17及びネジ孔12c,13b,14aに代えて、ガス貯留筒13の上部外面には雄ねじ13cを設け、カバー体14の上部内面には雄ねじ13cに対応するよう雌ねじ14bを設けている。
【0032】
本実施形態によれば、雄ねじ13cと雌ねじ14bとの螺合操作及び螺合解除操作によってカバー体14とガス貯留筒13が着脱自在となっているため、前記第1実施形態の如くネジ部品が不要となり、ネジ17の紛失による組み付け不良を起こすことがない。なお、忌避剤収容かご12とガス貯留筒13は熱接着され一体になっている。
【0033】
前記各実施形態ではムクドリを例として説明したが、各実施形態に係る動物忌避具10はカラスなど鳥類全般に適用できるし、また、猿、カモシカ、熊等、動物は凡そ硫黄臭を嫌うため、動物であれば凡そ適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
10…動物忌避具、11…忌避剤、12…忌避剤収容かご、12a…ガス通過孔、13…ガス貯留筒、13a…ガス流出孔、14…カバー体、16…紐。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄又は硫黄混合物からなり硫黄昇華ガスを発生する忌避剤と、
前記忌避剤を収容するとともに少なくとも底部に硫黄昇華ガスが通過可能なガス通過孔を有する有底筒状の忌避剤収容部と、
前記ガス通過孔を通過した硫黄昇華ガスを貯留するとともに側部の少なくとも上下方向略中央よりも上方に硫黄昇華ガスが通過可能なガス流出孔を有する有底筒状のガス貯留部とを備えた
動物忌避器。
【請求項2】
前記忌避剤収容部を前記ガス貯留部の上部内側に配置するとともに、該忌避剤収容部の上面開口を閉塞し、かつ、少なくとも前記ガス流出孔が位置する部位を外側から間隔をおいて覆うカバー部を有する
ことを特徴とする請求項1記載の動物忌避具。
【請求項3】
前記カバー部は前記忌避剤収容部又は前記ガス貯留部の少なくとも一方に着脱自在に設けた
ことを特徴とする請求項2記載の動物忌避具。
【請求項4】
前記カバー部には吊り下げ用の紐を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項記載の動物忌避具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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