説明

動物栄養物中のリンの消化性の減少

本発明はランタニド化合物を含有する新規な動物飼料、ならびに動物飼料中に含まれるリンの消化性を下げるためのランタニド化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランタニド化合物を含有する新規動物飼料、ならびに動物飼料中に含まれるリンの消化性(digestibility)を下げるためのランタニド化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
食餌のリン酸塩の制限は、哺乳動物種、特にネコおよびイヌのような肉食動物において腎臓機能の未熟な悪化を防ぐために、または既存の慢性腎不全の進行を遅らせるために薦められている方法である。リン酸塩含量が少ない多くの特別なペット食が市販されている。しかし例えば肉食動物用の飼料中のリン酸塩の制限は、肉タンパク質がレシチンおよびホスファチジルコラミン(colamine)、ホスファチジルセリンまたはホスファチジルイノシトールのようなグリセロールホスファチドに、およびまたDNAおよび(m)RNAを含めリン酸イノシトール中のモノ−およびポリヌクレオチドに、および他の内因性分子に有機的に結合した大量のリン酸塩を自然に豊富に含有するという事実から技術的に問題がある。この膨大なリン酸塩の過剰供給は、部分的には肉をミルクタンパク質に置き換えることにより減少させることができるが、目的とする種による嗜好性および結果的には飼料の受容(acceptance)という犠牲を払うばかりである。
【0003】
基本的には腸のリン酸塩結合体(phosphate binder)が食餌のタンパク質/リン酸塩制限の限界を越えるリン酸塩の消化性をさらに下げるために役立つことができる。しかしカルシウムまたはアルミニウム化合物のような古典的なリン酸塩結合体は、危険/利益比または嗜好性という意味において失望することが示された。それらは後期の慢性腎不全に罹患している患者の場合に、微細に調節された循環している血清リン酸塩レベルを制御するために役立つかもしれないが、高リン酸塩血症の発症前の軽度から中程度の慢性腎不全の管理のためのそれらの使用は、一般的なプラクティスではない。さらに多くの熟練した獣医腎臓病学者は、それらがすでにタンパク質/リン酸塩が制限された飼料と一緒に動物に与えられなければそれらの利点に疑問を呈する。
【0004】
したがって基本的に任意の動物飼料中のリン酸塩の消化性を低下させると同時に、関係する飼料の嗜好性を維持する飼料添加物として使用することができる非毒性の作用物質に関する必要性が存在する。
【0005】
最近、希土類金属イオンの有力なリン酸塩結合能が、特に哺乳動物の経口摂取後に関連する量で吸収されず、したがってHodge−Sterner分類系(非特許文献1)に従い大変低い経口毒性のためにヒトの腎臓病学者の注目引くようになった。血液のような体液中のリン酸塩イオンを固定化するためのそれらの潜在的使用が、特許文献1に開示された。血液透析は血液からリン酸塩イオンを十分に除去できず、レベルが一貫して上昇するので、ランタン塩、特に炭酸ランタンおよびオキシ炭酸ランタンは、進行した慢性腎不全の患者における高リン酸塩血症の製薬学的処置としてさらに提案されてきた(特許文献2、特許文献3)。さらにランタン塩を含む希土類金属化合物の治療的使用は、最近、それらの蓚酸塩の吸着により腎臓結石の防止に(特許文献4)、あるいは高カルシウム血症の処置または防止に(特許文献5)、および骨の疾患の処置に(特許文献6)有用になると主張された。
【0006】
末期腎臓疾患のヒト患者における既往の高リン酸塩血症のランタン化合物の製薬学的組成物の治療的投与による制御が当該技術分野の現在の最新の方法であるが、過剰なリン酸塩の生物学的利用性の脅威から動物を保護するための栄養学的方法にそのような化合物を
食餌に使用することが取り扱われたことはなかった。両方法ともインビトロでの化合物のリン酸塩結合特性に依存するが、それらは極めて重要な点で異なっている:製薬学的処置が高リン酸塩血症のような病理学的状態を逆転させることを目的とする一方、栄養学的取り組みの基本的目標は健康状態が良い個体の腎臓の生理学的機能を支持することである。実際に、リン酸塩の微細に調整される止血の治療的修飾は、インビボで胃腸管からのリン酸塩の吸収におけるわずかな変化ですでに達成することができるが、これはリン酸塩の消化性に検出可能な変化を導かず、したがって長期の栄養学的利益を導かない。従来のリン酸塩結合体(特にカルシウムおよびアルミニウム化合物)が、使用者である生物の生理学的要求を大きく越える豊富な食餌のリン酸塩により、飼料のリン酸塩消化性において重要な減少をもたらすことができるということは重大な疑問である。
【参考文献】
【0007】
【特許文献1】日本国特許公開第62−145024号公報
【特許文献2】国際公開第96/30029号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/016553号パンフレット
【特許文献4】国際公開第02/085348号パンフレット
【特許文献5】国際公開第03/094933号パンフレット
【特許文献6】国際公開第02/002277号パンフレット
【非特許文献1】Am.Ind.Hyg.Assoc.Quart.10:93,1943
【発明の開示】
【0008】
我々は今、ランタニド化合物の特定の形態がたとえ豊富な量のリンを含有する市販の飼料に加えられた時でも、驚くことに動物飼料のリン酸塩の消化性に有力かつ生理学的に有意な減少を安全に生じることができ、同時にこれらの食餌の嗜好性に悪い影響を与えないことを見いだした。
【0009】
したがって本発明は動物飼料中のリンの消化性を下げるために動物栄養物中の飼料添加物としてランタニド化合物の使用に関する。
【0010】
さらなる観点にしたがい、本発明はランタニド化合物を含有する動物飼料に関する。
【0011】
ランタニドは希土類金属とも呼ばれるが:ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスポロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)である。本発明に従い好適なランタニドはランタンである。
【0012】
本発明のランタニド化合物は通常、ランタニドカチオンが典型的には三価の塩である。他の酸化状態でも存在することができるランタニド化合物は当該技術分野で周知である[例えばCe(IV)]。本発明の内容において、三価のランタニドカチオンを含有する化合物が好ましい。
【0013】
本発明に従い使用することができる塩の例は:炭酸塩、オキシ炭酸塩、ハロゲン化物、好ましくはクロライド、オキシハロゲン化物、好ましくはオキシクロライド、および有機酸の塩、好ましくはギ酸塩および酢酸塩である。
【0014】
ランタニド塩は水和物および/またはオキシ塩(上記に例示するような)を形成することが多いことは周知である。適切な水和物および/またはオキシ塩も本発明に従い使用す
ることができる。
【0015】
一般に本発明はリンの消化性の減少が望まれるすべての動物に使用することができる。上に挙げた理由により、本発明は特に肉食動物のような食餌が高いリンの量(通常は肉由来)を含んでなる動物に有用である。肉食動物の好適な例はイヌ、そして特にネコである。
【0016】
本発明の内容において、用語「リン」とは自然に存在し、そして主に有機的に結合した状態または無機リン酸塩で胃腸管から吸収される食餌のリンを指す。血液、骨、尿および糞便で、リン酸塩はリンが存在する優勢な形態である。しかしリン酸塩は飼料および糞便中で定量することができず、したがってこれは通常、灰化され、そして生じた無機リン酸化物が最新式の技術により乾燥物質で定量される。摂取したリンと糞便に排出された算出量との間の差異が胃腸管から吸収された量になると考えられる。したがってリンの消化性は式
【0017】
【数1】

【0018】
により算出される。
【0019】
食餌のリンの消化性の減少は哺乳動物、そして特に肉食動物のような肉を消費する種に有益であり、それは哺乳動物飼料が一般にそれらの生理学的機能を維持するために実際に必要なリン酸塩よりも多くを含むからである。生理学的に必要な量よりも過剰に吸収されるリン酸塩の量は、主に腎臓を介して排出されなければならない。そうでなければ柔軟組織の鉱化、カルシウム代謝の障害、二次的な副甲状腺機能亢進および多くの他の高リン酸塩血症の結果が長期における生物体の健康を損ねる。リン酸塩を排除する器官、すなわち腎臓は特にリン酸塩の過剰供給による損傷の危機にあり、すなわちリン酸塩排除のさらなる障害を導き、そして最終的には致死的な悪循環を生じる。
【0020】
腎臓の機能が正常であり、そして血液からすべての過剰なリン酸塩を除去するために十分である限り、リン酸塩の血液レベルは狭い限界内に維持される。腎臓に及ぼす不必要な負荷を避け、そしてそれにより良好な健康状態および長い寿命のための腎臓の機能性を保護するために、リン(リン酸塩)の消化性のいかなる減少も歓迎される。
【0021】
通常、食餌中10〜80%の消化性リンが減少すれば全身的なリン酸塩の供給において生理学的に有意な減少を達成することができる。この目的を達成するために飼料に加えられるべきランタニドの量は、もちろんそれらの中に含まれる消化性リン酸塩の量に依存する。一般的法則として、0.1〜100gのランタニド元素(好ましくは0.5〜50g)に相当するランタニド化合物の量が1kgあたりの乾燥飼料質量に対して加えられるべきであり、より低い範囲は好ましくはすでに最新式の技術によりリンが制限されている食餌に使用され、そしてより高い範囲はリンが豊富な食餌に使用される。
【0022】
予期せずに、たとえ高い量のランタニド化合物を動物飼料に加えても動物飼料の嗜好性を有意に下げないことが見いだされた。これはネコがそれらの食物の変化(匂い、味、食感またはその他であろうとなかろうと)に大変敏感であるので特に驚くことである。
【0023】
ランタニド化合物は製造中に動物飼料に加えることができ、そしてこれは動物飼料の一体化部分となる。しかしランタニド化合物それ自体またはそれを含有する適切な組成物を
、食物を動物に与える前に動物の世話をする人が動物飼料に加えることも可能である。
【0024】
食餌に含まれるリンとこのリンの消化性を下げる目的のランタニド化合物との間の化学量論的関係が明らかに好ましいが、動物への給餌とは別個に、しかし給餌とほぼ同時に、例えば給餌直後に投与される食餌補助物の調製に、ランタニド化合物またはその適切な製剤の使用が可能である。食餌補助物に投与されるランタニド化合物の総用量は、上に示した範囲の乾燥飼料に対するランタニドの比率を提供するべきである。
【0025】
ランタニド化合物はそれ自体がさらなる成分(賦形剤等のような)を加えなくても飼料添加物として、例えば飼料の商業的生産に使用することができ、この場合、化合物は好ましくは粉末の状態で加えられる。ランタニド化合物ならびにさらなる成分(例えば製剤補助物)を含有するプレ−ミックスの調製も可能であり、そして通常、飼料中の均一な分散を達成するために大いに役立つ。
【0026】
また飼料添加物はさらなる製剤補助物を含有する組成物として配合することもできる。そのような飼料添加組成物は、粉末または粒状生成物の状態を取ることができる。また本発明による飼料添加物という用語は、食事とは別個に動物に与えられるが、動物飼料中に含まれるリンの消化性を下げる同じ目的を持つ食餌の補助物質も含んでなる。そのような食餌の補助物質は典型的には固体製剤、例えば錠剤、チュワブル等である。懸濁液のような流体生成物も使用することができ、これはそれらの粘度に依存して液体、ゲルまたはペースト状態でよい。ランタニド塩の溶液は例えば飼料の工業的調製、例えばプレ−ミックスもしくは食餌の補助物質の調製中に使用することができる。しかし例えばネコまたはイヌの所有者により即使用可能な飼料に加えられるべき飼料添加物として溶解したランタニドを含有する液体の使用は、溶解した化合物が通常、より溶解性が低いランタニド塩の懸濁または固体製剤よりも胃を介する吸収が効果的となり得るという事実から薦められない。
【0027】
乾燥粒状または粉末製剤中のさらに適切な成分は、澱粉(例えばトウモロコシ澱粉)またはセルロース(例えば微結晶セルロース)のような不活性成分であることができる。シリカゲルのようなさらに他の補助物質を加えてもよい。種々の成分の混合物も使用することができる。そのような乾燥製剤は通常、1〜90(重量/重量)%、好ましくは5〜80(重量/重量)%、特に好ましくは5〜70(重量/重量)%の量のランタニド化合物を含有する。
【0028】
流体生成物は好ましくは水性懸濁液である。
【0029】
そのような流体生成物は典型的には、1〜90(重量/重量)%、好ましくは5〜80(重量/重量)%、特に好ましくは5〜60(重量/重量)%のランタニド化合物を含有する。
【0030】
懸濁液は好ましくは増粘剤のようなキサンタンガム、セルロースおよび/またはセルロース誘導体、例えば微結晶セルロースおよびカルボキシメチルセルロースの混合物、または他のセルロースエーテル(例えばメチルセルロース)を含む。種々の増粘剤の混合物も使用することができる。使用する増粘剤に依存して、典型的な濃度は0.1〜5.0(重量/重量)%、好ましくは0.1〜3.0(重量/重量)%の範囲である。
【0031】
さらに懸濁液は好ましくは最高5個の炭素原子を持つ脂肪族二−または三価アルコール、例えばプロピレングリコールもしくはグリセロール、またはその混合物を含む。懸濁液は一般に5〜30(重量/重量)%、好ましくは8〜20(重量/重量)%の濃度で脂肪族二−または三価アルコールを含む。
【0032】
懸濁液は好ましくは表面活性剤、たとえばポリソルベートまたはモノ−もしくはジグリセリドである可溶化剤を含むことができる。濃度は典型的には0.1〜10(重量/重量)%、好ましくは0.5〜5(重量/重量)%の範囲である。
【0033】
水に十分溶解性ではない成分を含む製剤の場合、例えば油、例えば魚油を含む製剤の場合、可溶化剤は均一な溶液または乳液を形成するために役立つことができる。
【0034】
懸濁液はさらに通常の製薬学的補助剤、例えば保存剤、例えばメチルパラベンもしくはソルビン酸を含んでよい。
【0035】
ビタミンEまたはビタミンE源のような酢酸α−トコフェロールを、ランタニド化合物と一緒に、好ましくは各調製物中のさらなる成分として投与することができる。
【0036】
上の記載に基づき、当業者は本発明をその完全な程度までさらに詳細な検討を必要とせずに利用することができると考える。したがって以下の実施例は単なる具体的説明であり、限定を意味するものではないと考えられる。
【実施例】
【0037】
A.ペット用の完全な食料の調製例
完全な食料は、目的とする動物種の少なくともすべての基本的な栄養要求を網羅するために適切な量の成分を使用して最新の技術に従い調製する。ランタニド化合物のプレ−ミックスは、例えば飼料中の均一な分布を促進するために担体としてトウモロコシ澱粉を使用して有利に調製される。1キログラムの完全な食料(乾燥質量)あたり例えば1、5もしくは10gの炭酸ランタン8水和物を含有する得られた完全な食料は、適切な体裁の市販もしくは実験用の完全な食料になるようにさらに処理することができる。
【0038】
B.食餌補助物質の製剤例
製剤例1
0.1gのソルビン酸を10gのプロピレングリコールに溶解し、そして0.5gのキサンタンガムを混合物に分散する。第2容器に、10gの炭酸ランタン8水和物を50gの水中に分散する。キサンタンガム懸濁液を激しく撹拌しながら炭酸ランタンの懸濁液に加える。水を加えて100mlの最終用量を得る。生じた懸濁液を適切なアプリケーターに充填して、十分に正確な食事補助物質の投与を提供する。
【0039】
製剤例2
0.1gのメチルパラベンおよび2.0gの微結晶セルロース/カルボキシメチルセルロースナトリウム(Avicel CL611)の混合物を10gのグリセロールに分散してプレ−ミックスを形成する。第2容器に、50gの炭酸ランタン8水和物を50gの水中に分散する。0.5gの酢酸α−トコフェロールおよび1.0gのポリソルベート80の混合物をこの懸濁液に加える。次いで上記プレ−ミックスも激しく撹拌しながら加える。懸濁液は適切な技術デバイス(例えばローター−ステーター)を使用して均一化し、そして水を加えて100mlの最終容量を得る。最終懸濁液は1.0mlのアリコートに分配し、そして適切な使い捨て容器、例えば小袋に包装することができる。
【0040】
製剤例3
3.0gの(クエン酸/乳酸/リノール酸/オレイン酸)グリセリル(Imwitor375)を80℃に加熱しながら6.5gの魚油に溶解する。この溶液を強力に撹拌しながら80℃に加熱した40gの水に加え、そして混合物を周囲温度に冷却する。次いで50gの炭酸ランタン8水和物をこの乳液に懸濁する。水を加えて100mlの最終容量を得る。生じた懸濁液を適切なアプリケーターに充填して、十分に正確な食事補助物質の投与を提供する。
【0041】
製剤例4
予め計測した50g量の炭酸ランタン8水和物を、48gのトウモロコシ澱粉および2gの高度に分散したシリカ(例えばAerosil200)と徹底的に混合する。生じた均一な粉末混合物を1.0mlのアリコートに分配し、そして適切な使い捨て容器、例えば小袋に包装するか、または適切な投与補助用具を備えた、より大きな容器に充填する。
【0042】
製剤例5
500gの炭酸ランタン8水和物、300gのトウモロコシ澱粉および185gの微結晶セルロースを徹底的に混合し、そして100mlの5(m/v)%のメチルピドロキシプロピルセルロース3cSt(Pharmacoat603)と造粒する。ふるい分けした後、浸潤粒子を50℃で最新式の方法により乾燥させ、そし10gのコロイド状無水シリカ(Aerosil200)と混合する。最終製剤は3.0gの多回または単回投与用に適切な容器に包装する。
【0043】
製剤例6
0.2kg量のメチルパラベンを25kgの精製水に80℃で溶解する。54.41kgの冷水、10.0kgの炭酸ランタン8水和物および0.194kgのCovitol700WD(酢酸d−α−トコフェリル、ビタミンE源)をこの溶液に分散する。第2容器で、0.7kgのキサンタンガムを20.0kgのグリセロール中に分散する。キサンタン懸濁液を炭酸ランタンの懸濁液に激しく撹拌しながら加えて、100リットルの懸濁液を得る。
【0044】
製剤例7
0.2kg量のメチルパラベンを25kgの精製水に80℃で溶解する。50.41kgの冷水、20.0kgの炭酸ランタン8水和物および0.388kgのCovitol700WD(酢酸d−α−トコフェリル、ビタミンE源)をこの溶液に分散する。第2容器で、0.6kgのキサンタンガムを20.0kgのグリセロール中に分散する。キサンタン懸濁液を炭酸ランタンの懸濁液に激しく撹拌しながら加えて、100リットルの懸濁液を得る。
【0045】
C.生物学的実施例
生物学的例1
より大きな実験の内容では、市販の標準缶詰食(乾燥質量中1,13%のリンに相当する0,19%のリンを含有するPetleyのGourmet Supreme Beef Casserole’、プロミール社(PROMEAL)(PTY)社)を個別に給餌した24匹の健康な成体(雌雄両方)の家ネコを、1群8匹の均等な3群に無作為に分け、これらに2週間、1kgの飼料あたり0、0.3および3.0グラムの炭酸ランタン8水和物に対応する容量レベルを毎日の飼料食で給餌する。
【0046】
実験中、消費した食料の量を毎日記録し、そして動物は可能な悪影響(adverce
event)の発生について毎日観察された。実験の終わりに3日間にわたるサンプリング期間で集めた糞便中のリンのレベルを測定した。食餌でのリンの摂取を糞便中に排出されたリンと比べて、見かけ上のリンの消化性は以下の式:
【0047】
【数2】

【0048】
により算出された。
【0049】
炭酸ランタンの用量依存的な添加は糞便中のリン含量を上げ(図1.1)、すなわち炭酸ランタンが豊富な食餌を給餌されたネコでは、より少ないリンが胃腸管を介して吸収されたことを示す。飼料で摂取したリンの量を考慮する見かけ上のリンの消化性は、ランタン化合物の添加の結果と対応する減少を示した(図1.2)。この結果はこの実験で使用した食餌にリンが大変豊富であったという事実の観点から極めて注目され得る。
【0050】
ランタニド化合物を食餌に加えることは、実験動物における飼料の受容および耐容(tolerance)に負の効果が無かった。
【0051】
生物学的例2
全部で12匹の健康な成体のメスノビーグル犬に、市販されている標準的な缶詰飼料(“ラムが多いEukanuba Adult”、IAMsペットフード社(IAMs Pet Food Ltd)、乾燥質量中1,09%のリンに対応する0,25%のリンを含有する)を個別に給餌した。1週間の間隔で、それらの食餌に炭酸ランタン8水和物の量を上げながら補充し、これにより1kgの飼料あたり0、1.75、5.0および17.5gの最終濃度の炭酸ランタン8水和物の飼料添加物を生じた。
【0052】
実験中、消費した食料の量を毎日記録し、そして動物は可能な悪影響の発生について毎日観察された。実験の終わりに2日間にわたるサンプリング期間で集めた糞便中のリンのレベルを測定した。食餌でのリンの摂取を糞便中に排出されたリンと比べて、見かけ上のリンの消化性は以下の式:
【0053】
【数3】

【0054】
により算出された。
【0055】
炭酸ランタンの用量依存的な添加は糞便中のリン含量を上げ(図2.1)、すなわち炭酸ランタンが豊富な食餌を給餌したイヌでは、より少ないリンが胃腸管を介して吸収されたことを示す。飼料で摂取したリンの量を考慮する見かけ上のリンの消化性は、ランタン化合物の添加の結果に対応する減少を示した(図2.2)。この結果はこの実験で使用した飼料にはリンが大変豊富であったという事実の観点から極めて注目され得る。
【0056】
ランタニド化合物を食餌に加えることは、実験動物における飼料の受容および耐容に負の効果は無かった。
【0057】
生物学的例3
雌雄両方の15匹の健康な成体の家ネコに、市販の標準缶詰食(乾燥質量中1.13%のリンに対応する0.26%のリンを含有するラムが豊富なPremium Pate、IAMSペットフード社(IAMs Pet Food GmbH&Co)を個別に給餌した。この実験の目的は特に高用量の炭酸ランタン8水和物の嗜好性および安全性を評価
することであった。したがって10匹のネコに炭酸ランタン8水和物を毎日の飼料食で用量を上げて給餌した。実験は1kgの飼料(乾燥質量)あたり約12〜15g用量レベルで始めた。用量は1kgの飼料(乾燥質量)あたり約96〜120g用量レベルまで、2週間毎に2倍とした。5匹のネコには炭酸ランタン8水和物を含まない飼料を与え、そして対照として役立てた。
【0058】
嗜好性は毎日、飼料の一般的受容を観察することにより評価した。耐容および安全性は血清のリン酸塩レベルおよび体重を規則的に間隔で測定し、ならびに健康状態および可能な悪影響の発生に関して毎日観察することにより評価した。
【0059】
1g/kg体重(=1kgの乾燥飼料あたり約108mg)の用量レベルまで、血清リン酸塩レベルに変化は無く、体重に変化は無く、そして限定する悪影響は無かった。
【0060】
150gの飼料あたり4gの炭酸ランタン8水和物であっても食餌の受容は100%であり、これは大量の粉末で極めて明らかである。対照のネコと比較して、飼料の嗜好性または受容、またはその安全性について差異を観察することはできなかった。
【0061】
飼料にランタニド化合物を添加することは、たとえ大変高い用量でも実験動物の飼料の受容および耐容に負の効果は無かった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1.1】ネコの糞便中の平均リン含量を示すグラフである。
【図1.2】ネコのリンの平均摂取率を示すグラフである。
【図2.1】イヌの糞便中の平均リン含量を示すグラフである。
【図2.2】イヌのリンの平均摂取率を示すグラフである。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物飼料に含まれるリンの消化性を下げるための動物栄養物中の飼料添加物としてのランタニド化合物の使用。
【請求項2】
ランタニド化合物がランタン化合物である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ランタン化合物が炭酸ランタンまたはその水和物である請求項2に記載の使用。
【請求項4】
ランタニド化合物を含有する動物飼料。
【請求項5】
ランタニド化合物がランタン化合物である請求項4に記載の動物飼料。
【請求項6】
ランタン化合物が炭酸ランタンまたはその水和物である請求項5に記載の動物飼料。
【請求項7】
動物に有効量のランタニド化合物を投与することによる動物飼料中のリンの消化性を下げる方法。
【請求項8】
ランタニド化合物が飼料と共に投与される請求項7に記載の方法。.
【請求項9】
ランタニド化合物が飼料とは別に投与される請求項7に記載の方法。
【請求項10】
水性担体中に懸濁されたランタニド化合物を含有する飼料添加物。
【請求項11】
水性担体が水および増粘剤を含んでなる請求項10に記載の飼料添加物。
【請求項12】
増粘剤がキサンタンガムである請求項10または11に記載の飼料添加物。
【請求項13】
さらに最高5個の炭素原子を有する脂肪族の一価または多価アルコールを含んでなる請求項10または11に記載の飼料添加物。

【図2.1】
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【図2.2】
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【公表番号】特表2008−531027(P2008−531027A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557365(P2007−557365)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001521
【国際公開番号】WO2006/092214
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】