説明

動物用トイレ

【課題】排尿等による悪臭を確実に防止することができ、手軽かつ早期に動物の健康状態の変化を発見することが可能となる動物用トイレを提供する。
【解決手段】上部開口部を有するとともに、内部空間が第1処理体等収納部11と第2処理体収納部12とに区画されている排尿容器10と、第1処理体等収納部に複数個の第1粒状処理体と第3粒状処理体が、第2処理体収納部に複数個の第2粒状処理体がそれぞれ設けられており、前記第1粒状処理体は、吸着剤と排泄物検査用指示薬を含み、粒状に成型されており、前記第2粒状処理体は、粒状の芯部と前記芯部を被覆する被覆層部とを有する複層構造であり、前記被覆層部は接着材料を含み、排尿を吸収することにより、塊状となるように形成されている動物用トイレTとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、愛玩動物等の動物用トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、室内での愛玩動物等の飼育が非常に盛んになってきており、排泄物の処理を効果的に行うための動物用トイレが提案されている。例えば、図4に示すように、トレー10’内に、すのこ13’及び汚液吸収体22’を敷設し、すのこ13’上に敷砂21’を敷設して構成されている動物用トイレT’が存在している(参考文献1)。
また、人間同様に、愛玩動物の健康状態を留意する飼主も多い。愛玩動物の健康状態の変化を調べることは外形的状態を観察することでは限界があるため、手軽かつ早期にかかる状態の変化を発見するために、pH指示薬を含み粒状に形成された排泄物処理体が使用されている(参考文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−121264号公報
【特許文献2】特開2000−333547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の動物用トイレT’では、すのこ13’上に敷砂21’が敷設されているが、当該敷砂21’は排尿を下方に透過させる役割を果たすにすぎず、汚液吸収体22’のみで排尿を吸収するにすぎないものであり、排尿等による悪臭を防止することができないという問題が存在していた。また、上記動物用トイレT’においてpH指示薬を含む排泄物処理体を使用するなどの考えはなく、上記問題点を防止しつつ、手軽かつ早期に動物の健康状態の変化を発見するための動物用トイレの開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、排尿等による悪臭を確実に防止することができ、手軽かつ早期に動物の健康状態の変化を発見することが可能となる動物用トイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の動物用トイレは、上部開口部を有するとともに、有底かつ周壁を有し、内部空間が高さ方向に上部空間と下部空間とに区画されている排尿容器と、上記上部空間に複数個の第1粒状処理体が、上記下部空間に複数個の第2粒状処理体がそれぞれ設けられている動物用トイレであって、上記上部開口部と上記上部空間が連通するとともに、上記上部空間と上記下部空間とが連通しており、上記第1粒状処理体は、排泄物検査用指示薬(以下「検査用指示薬」という。)と吸水性の吸着材料とを含み、粒状に成型されており、上記第2粒状処理体は、粒状の芯部と上記芯部を被覆する被覆層部とを有する複層構造であり、上記被覆層部は接着材料を含み、排尿を吸収することにより、塊状となるように形成されていることを特徴としている。
【0007】
ここで、非吸水性とは、水分を完全に吸水しないことを意味するのではなく、ほとんど吸水せず、また、ほとんど膨張することがなく、極く微量の水分を吸水した場合であっても乾燥状態に戻る性質を有する性質をいう。
【0008】
また、上記検査用指示薬は、尿等の排泄物と反応して変色することで、健康状態等の変化を認識できる各種の試薬であり、尿のpH値を検出する尿pH値の検出用指示薬(以下「尿pH値検査用指示薬」という。)、尿ブドウ糖検出用指示薬、尿蛋白検出用指示薬、尿潜血検出用指示薬又は尿ウロビリノーゲン検出用指示薬等の公知の指示薬を含んでいるものである。
【0009】
本発明の動物用トイレによれば、検査用指示薬を含む第1粒状処理体により、その性状に応じた動物の健康状態を調べることができる。そして、第1粒状処理体は、排尿をほとんど吸収せず、透過させるだけであるため、一度の使用で崩壊することがなく、また、乾燥することにより再使用が可能であることから、複数回にわたって、繰り返して使用することができる。
【0010】
また、第2粒状処理体は、粒状の芯部と上記芯部を被覆する被覆層部とを有する複層構造であり、当該被覆層部は接着材料を含み、排尿を吸収することにより塊状となるように形成されているため、第1粒状処理体により処理された排尿を吸収し、塊状にしてその内部に閉じこめることにより、悪臭を効果的に防止することができる。
さらに、第2粒状処理体と第1粒状処理体の二層構造としているため、第2粒状処理体から臭いが発せられた場合であっても、第1粒状処理体の吸着効果等により臭いをシャットアウトすることができる。
【0011】
また、上記動物用トイレにおいて、上記検査用指示薬は、吸着率25重量%以上であり、微細孔を有する多孔質吸着剤の上記微細孔に吸着されていることが好適である。
【0012】
ここで、上記検査用指示薬は、多孔質吸着剤に吸着させる必要があり、吸着させる方法は問わないものであるが、当該検査用指示薬を溶媒に溶解させた状態で定着させることが好適である。
【0013】
本発明の動物用トイレによれば、第1粒状処理体において、構成材料に検査用指示薬を直接に添加するのではなく、当該検査用指示薬を多孔質吸着剤に吸着させたものを添加しているが、当該多孔質吸着剤は間隙部に検査用指示薬を吸着させているため、粒状芯部等から滲出する水分をある程度遮断することができるとともに、間隙部に空隙が存在する場合には、当該間隙部に水分を保持することができる。そのため、使用前において反応性が高い検査用指示薬が反応して発色することを防止することができるとともに、検査用指示薬が速やかに変色することから、短時間で容易に、検査結果を判別することができる。
【0014】
また、上記動物用トイレにおいて、上記検査用指示薬は、インク組成物に定着させられていることが検査用指示薬を安定化させるために好適である。
【0015】
また、上記上部空間には、上記第1粒状処理体に加えて、上記検査用指示薬を含まない、非吸水性の吸着材料を含む第3粒状処理体が設けられている構成としてもよい。
【0016】
本発明によれば、検査用指示薬を含む高価な第1粒状処理体の他に、当該検査用指示薬を含まない、非吸水性の吸着材料を含む安価な第3粒状処理体を使用しており、排泄物の検査を行うために必要最小限の量の第1粒状処理体を使用するため、動物用トイレの製造費用を削減することができる。
【0017】
さらに、上記動物用トイレにおいて、上記第2粒状処理体は収納部材に収納されるとともに、上記下部空間は開閉可能に形成され、第2粒状処理体の収納部材が移動自在に設けられており、上記第2粒状処理体が取替可能となるように構成されていることが好適である。
【0018】
ここで、収納部材は、第2粒状処理体が下部空間に充填されるという要件を満たす形態であればトレイ状、箱形等どのような形状でもよい。
【0019】
本発明によれば、下部空間は開閉可能に形成され、第2粒状処理体の収納部材が移動自在に設けられているため、収納部材に収容されている第2粒状処理体を容易に取り替ることができるため、利便性に優れたものとすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数回、繰り返し使用が可能であるとともに、排泄物等による悪臭を確実に防止することができ、手軽かつ早期に動物の健康状態の変化を発見することが可能となる動物用トイレを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の動物用トイレの排尿容器を示す斜視図である。
【図2】本発明の動物用トイレを示す斜視図である。
【図3】本発明の動物用トイレの使用方法を示す斜視図である。
【図4】従来の動物用トイレを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための一形態(以下、「実施形態」という。)について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1及び図2に示すように、本発明の動物用トイレTは、排尿容器10と、当該排尿容器10に敷設されている複数個の第1粒状処理体21と、第2粒状処理体22と、第3粒状処理体23と、から構成されている。
【0024】
(1)排尿容器10
排尿容器10は、合成樹脂を原材料として直方体状の箱形に形成されている。この排尿容器10は、底部10a及び周壁部10bを有する中空状であり、上面が解放されている(特許請求の範囲の上部開口部に相当する)。
【0025】
排尿容器10の内部には、高さ方向の中間位置に仕切部材13がその全面にわたって横設されている。この仕切部材13により、排尿容器10は、高さ方向で二つの空間に画設されており、解放されている上面と接続している第1処理体等収納部11(上部空間)と、その下部の第2処理体収納部12(下部空間)が形成されている。この仕切部材13には、第1粒状処理体21の間隙等を通過した排尿を第2処理体収納部12に滴下させるための小孔状の排尿滴下孔13aが多数形成されている。
【0026】
排尿容器10の第2処理体収納部12に相当する位置の短手方向の一側面には、後記収納トレイ15を引き出し及び挿入するための側面開口部10cが形成されている。この側面開口部10cには、端部が当該側面開口部10cを塞ぐ形状であり、第2処理体収納部12に嵌装されるよう、所定の高さ寸法を有し、上部が開口した直方体である収納トレイ15が取出自在(移動自在)となるように設けられている。なお、符合16は、収納トレイ15を外部に取り出したり、第2処理体収納部12に挿入するときに把持するための取手である。
上記構成により、収納トレイ15を第2処理体収納部12に嵌装した状態において、側面開口部10cが閉塞され、底部10a及び周壁部10bと一体となり、所定の水密性と気密性が保たれるようになっている。
【0027】
図2に示すように、仕切部材13の上には、その全面に渡って、所定の厚さとなるように、多量の第1粒状処理体21及び第3粒状処理体23の混合物が複数層に敷設されている。これにより、排尿滴下孔13aが直接的に外気と接しないように閉塞されており、第2処理体収納部12から伝わる臭気が排尿容器10から発せられないようになっている。
また、収納トレイ15の内部には、載置部15aの全面に渡って、所定の厚さとなるように、多量の第2粒状処理体22が複数層に敷設されている。
なお、第1粒状処理体21と第3粒状処理体23の混合割合は、排尿の検査を行うために必要最少量以上の第1粒状処理体21の量が確保されていれば制限はないものである。
【0028】
(2)第1粒状処理体21
第1粒状処理体21は、紙粉と、接着剤と、目的に応じた排泄物検査用材料(以下「検査用材料」という。)を主な構成材料とし、それらの構成材料が混練されている。この第1粒状処理体21は、ほぼ水分を吸水しない非吸水型の粒状処理体である。その形状は、小塊の形状に形成されていればよく、完全な球形等である必要はないものであり、柱状体(細長形)、扁平形等、その形状は問わないものである。
なお、この第1粒状処理体21は、押出造粒等の公知の造粒方法で製造することができるが、吸水性を有しないように、一般的な粒状体と比較して高硬度に形成される必要がある。
【0029】
紙粉は粒径1mm以上6mm以下の破砕材料であり、所定の間隙率を有し、上記高硬度に形成されることにより、吸着性能を有している。また、後記検査用指示薬の作用を阻害しない性状を有する必要がある。例えば、このような紙粉としては、バージンパルプ、トイレットペーパー用紙、トイレットペーパー廃材、ティッシュペーパー用紙、ティッシュペーパー廃材、ちり紙用紙、ちり紙廃材、紙綿、紙綿廃材、紙タオル、紙タオル廃材、綿状パルプ、綿状パルプ廃材、不織布製造時に発生する紙粉又はこれら二以上の粉砕物の混合物である。
【0030】
接着剤は、第1粒状処理体21を粒状に成形するために用いるものであり、公知の材料を用いることができる。但し、第1粒状処理体21は非吸水性能を有するため、接着剤は、吸水性を有さない性質であることが好適である。
【0031】
なお、検査用指示薬の作用を阻害しない物質であれば、脱臭材料、消臭材料、殺菌作用を有する物質、着色物質などの材料を添加するものであってもよい。また、所望の色の水溶性の着色剤を、排尿を着色可能となるように添加してもよい。
【0032】
<検査用材料>
検査用材料は、検査用指示薬を含有したインク組成物(以下「検査用指示薬含有インク組成物」という)を多孔質吸着剤に吸着させたものである。
【0033】
(検査用指示薬含有インク組成物)
検査用指示薬含有インク組成物は、検査用指示薬をインク組成物に定着させたものである。
【0034】
◎検査用指示薬
検査用指示薬は、排尿に関する所定の検査を行うための種々の試薬である。
例えば、排尿のpHを検査するためには、当該排尿のpH値を検出して、持続性の酸性尿又はアルカリ性尿の検出を行い、結石症やその他疾病の必要性を判断することが必要となる。犬や猫などの肉食動物の尿のpH値は、健康時で、4.3乃至7.0であるところから、通常時(健康時)のpH値4.3乃至7.0と、疾病時のpH値4.3未満又は疾病時のpH値7.0を超えたpH値を変色により判別することが可能となる、すなわち、pH値4.3又は7.0を閾値として変色する尿pH値検査用指示薬を使用することにより、その判別を行うことができる。
【0035】
このようなpH値、即ち、4.1乃至7.7のpH域に変色域を有する尿pH値検査用指示薬としては、チモールブルー、フェノールフタレイン、トロペオリンOOO、クレゾールレッド、フェノールレッド、ニュートラルレッド、ブロモチモールブルー、ブロモクレゾールパープル、ブロモフェノールレッド、p−ニトロフェノール、メチルレッド、ブロモクレゾールグリーン、テトラブロモフェノールブルー、クロロフェノールレッド、メチルオレンジ、エチルオレンジ、ブロモフェノールブルー、ブリリアントイエロー、コンゴーレッド又はブロモクレゾールブルー等が存在するため、検出の目的に応じて、上記の指示薬を単体で、あるいは、2種類以上の指示薬を組み合わせて使用することができる。
特に、変色時のpH値の閾値が4.3である場合には、ブロムフェノールブルー又はメチルオレンジとブロモクレゾールグリーンをエタノールに溶解させたものを使用すること、変色時のpH値の閾値が7.0である場合には、ブロムチモールブルーを使用することが好適である。
【0036】
◎インク組成物
上記検査用指示薬含有インク組成物は、検査用指示薬及び結合剤を公知のインク組成物に定着させたものであり、本実施形態では、上記尿pH値検査用指示薬を、例えば、セルロース及び該セルロースの誘導体の少なくとも一種類(以下、「セルロース等」という。)を有機溶媒中で分散、または、溶解させることにより作成することができる。具体的には、セルロース等の一種であるワニス、ヒドロキシプロピルセルロース等を加え、メタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸プロピル等のエステルなどの有機溶媒中で分散、又は、溶解して検査用指示薬含有インク組成物を形成するものである。
セルロース等については、セロール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が、濡れ性及び目視による判定がし易いなどの点から好ましい。またこの場合、溶剤としては、上記検査用指示薬及び結合剤としての樹脂を安定して溶解できる、又は分散できる溶剤を選ぶことが好ましい。
【0037】
結合剤は、排尿の検査に影響を及ぼすことなく、検査用指示薬の発色を妨げず、また発色した色を安定化させる水溶性高分子化合物(天然親水性高分子化合物、半合成親水性高分子化合物)、並びに、排尿の検査に影響を及ぼすことなく、また、検査用指示薬の発色を妨げることがないもので、被膜形成機能を有する水不溶性高分子化合物があるが、これら両者を組み合わせて形成するのが好ましい。
【0038】
上記天然親水性高分子化合物としては、甘薯澱粉、馬鈴薯澱粉、蒟蒻粉、布海苔、アルギン酸ナトリウム、トロロアオイ、トンガロゴム、アラビアゴム、デキストラン、レバン、ニカワ、ゼラチン、カゼイン及びコラーゲン等を使用することができる。
上記半合成親水性高分子化合物としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、並びにジアルデヒド澱粉誘導体等を使用することができる。
【0039】
また、上記被膜形成機能を有する水不溶性高分子化合物としては、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、酢酪酸セルロース等のセルロース樹脂を使用することができ、また、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体樹脂、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニルエマルション、酢酸ビニルコポリマー(酢酸ビニル−アクリル酸エステル等)エマルション、アクリル酸エステル共重合体エマルション、エポキシ樹脂エマルション及び合成ゴムラテックス等を使用することができる。
【0040】
さらに、上記検査用指示薬含有インク組成物には、結合剤、安定剤或いは均一な試薬層を形成できるように界面活性剤など(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤又はポリエチレングリコールなど)の公知の添加剤を加えることができる。
【0041】
一般に、検査用指示薬含有インク組成物の構成物質及びその配合割合は、検査用指示薬1重量%乃至3重量%、セルロース等1重量%乃至5重量%、糊剤10重量%以下であり、残余は溶剤から構成されている。
【0042】
(多孔質吸着剤)
多孔質吸着剤は、微細孔(微細空隙)を多く含み、表面積が大きく、吸着率が25重量%以上である吸着剤を用いることが必要であり、シリカゲル(いわゆる、A型シリカゲル及びB型シリカゲル)(二酸化珪素)、ゼオライト(アルミノ珪酸塩)等の公知の物質を用いることができる。特に、B型シリカゲルは、平均吸着表面積約450(m/g)、平均微細孔径約60Å、微細孔容積約0.75(ml/g))と、A型シリカゲル(A型シリカゲルは平均吸着表面積約700(m/g)、平均微細孔径約24Å、微細孔容積約0.46(ml/g))と比較して、微細孔径及び微細孔容積が大きいため、検査用指示薬含有インク組成物を吸着させる場合には高い吸着性能を発揮することになり、非常に好適である。
【0043】
(2)第3粒状処理体23
第3粒状処理体23は、コーヒー抽出残渣又は各種の茶殻(以下、両者を合わせて「コーヒー抽出残渣等」という。)と、接着剤とを主な構成材料としており、それらの構成材料が混練されている。この第3粒状処理体23は、ほぼ水分を吸水しない非吸水型の粒状処理体である。その形状は、小塊の形状に形成されていればよく、完全な球形等である必要はないものであり、柱状体(細長形)、扁平形等、その形状は問わないものである。
なお、この第3粒状処理体23は、上記第1粒状処理体21と同様の造粒方法で製造することができる。
【0044】
コーヒー抽出残渣は、焙煎コーヒー豆から、缶コーヒー、インスタントコーヒー等のコーヒー飲料の製造時に、コーヒー抽出液を焙煎コーヒー豆から抽出した際に排出される抽出残渣であり、所謂コーヒー粕である。このコーヒー抽出残渣は、コーヒー抽出液が抽出されたものであるが、コーヒー成分が残留しているため、香気が発せられるとともに、外部からの水分が与えられると、褐色のコーヒー抽出液が生じることとなっている。
【0045】
茶殻は、日本茶、紅茶、烏龍茶等の様々な種類があり、成分を抽出した後の抽出残渣である。当該茶殻は、コーヒー抽出残渣と同様に、茶成分が残留しているため、香気が発せられるとともに、外部からの水分が与えられると、緑色、黄色、褐色等の抽出液が生じることとなっている。
なお、茶殻は、タンニン等による抗菌効果を奏するため、衛生上特に好適である。
【0046】
このコーヒー抽出残渣等は、吸着作用により吸臭効果及び香気効果等を奏するものであるが、粒状処理体の全重量に対して、80重量%乃至99重量%であることが、それらの作用を効果的に奏させるためには好適である。
【0047】
また、接着剤は、第3粒状処理体23を粒状に成形するために用いるものであり、公知の材料を用いることができる。但し、第3粒状処理体23は非吸水性であるため、接着剤は、吸水性を有さない性質であることが好適である。なお、接着剤を多量に使用しない場合には、微粉砕した(微粉砕することにより、吸水性能が低下する)吸水性の接着剤を使用することもできる。
【0048】
(3)第2粒状処理体22
第2粒状処理体22は、芯部と、この芯部の表面を被覆する被覆層部とから形成される複層構造を有しており、水分を吸収する吸収型の粒状処理体であり、公知の方法で製造することができる。
【0049】
[芯部]
芯部は、吸水性能を有していれば特に制限はなく、ベントナイト、ゼオライト等の無機質材料や、製紙用パルプ、木粉、ケナフ、パルプスラッジ、コーヒー抽出残渣、茶殻等の有機質廃材の単体又は複数の混合物を素材とし、これらの素材に吸水性樹脂を配合したものを基材として、それらの構成材料を混練して製造することができる。
【0050】
特に第2粒状処理体22と第3粒状処理体23の共通の構成材料として、コーヒー抽出残渣等を用いた場合には、香気効果を相乗的に奏することになり、好適である。
【0051】
[被覆層部]
被覆層部は、使用時に尿等で濡れた第2粒状処理体22同士を付着させて塊状とさせ、排尿をその周囲から包み込む等の作用を奏させること主な目的としている。このような被覆層部の構成材料の例としては、吸水性樹脂又は接着性を有する材料又は両材料の混合物と、紙粉の混合物を用いて、それらを混練して製造することが好適である。
【0052】
接着剤としては、例えば、糊料やポリアクリル酸ナトリウム等の高吸水性樹脂がある。このような接着剤として機能する糊料としては、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、デキストリン、各アルファ(α)化した澱粉などの澱粉類、アクリルアミド、PVA、カルボキシメチルセルロース又はアルギン酸ナトリウムを使用することができ、又はこれら二以上を組み合わせて使用することができる。また、その他の接着剤としては、高吸水性樹脂、ビニルエステル、ベントナイト、プルラン、カゼイン又はゼラチンなどがあり、これらは、単独で使用されるか、又はこれら2種以上を混合して使用される。また、アルコール溶解性の接着剤としては、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)又はポリビニルピロリドン(PVP)などがあり、この場合も同様に、単独で使用されるか、又はこれら2種以上を混合して使用することができる。
【0053】
[作用効果等]
続いて、本発明の動物用トイレTの使用方法を説明する。
まず、所定量の第1粒状処理体21及び第3粒状処理体23を仕切部材13の上面に敷設するとともに、収納トレイ15に所定量の第2粒状処理体22を敷設して、第2処理体収納部12にセットする。このとき、第3粒状処理体23から発せられるコーヒー抽出残渣等の香気が解放されている上面から室内空間に向けて発せられている。
【0054】
続いて、第1粒状処理体21及び第3粒状処理体23の上部から愛玩動物に排尿させる。すると、排尿は個々の第1粒状処理体21及び第3粒状処理体23の内部や周囲を通過して下方に滴下する。その過程において、第1粒状処理体21に含まれる検査用指示薬が適度に変色して、その変色度合いにより動物の健康状態を判別することができる。また、その過程で、コーヒー抽出残渣等の吸着作用により、アンモニア臭等の悪臭が吸臭される。
そして、仕切部材13の排尿滴下孔13aを通過して、第2処理体収納部12に敷設されている第2粒状処理体22に達する。第2粒状処理体22では、芯部が排尿を吸収するとともに、隣接する第2粒状処理体22の被覆層部が排尿により付着して塊30となり、排泄物をその周囲から包み込む等の作用を奏することになる。そのため、排尿部分を容易に確認することができる。
【0055】
第2粒状処理体22の塊30が増加した場合には、収納トレイ15を引き出し、当該30となった第2粒状処理体22のみを取り出して廃棄する(図3参照)。そして新しい第2粒状処理体22を補充して、収納トレイ15を第2処理体収納部12に嵌装することになる。
【0056】
このように、本発明の動物用トイレTによれば、検査用材料を含む第1粒状処理体21により、その性状に応じた動物の健康状態を調べることができる。また、第1粒状処理体21及び第3粒状処理体23は、尿をほとんど吸収せず、透過させるだけであるため、一度の使用で崩壊することがなく、また、乾燥することにより、再使用が可能であることから、複数回にわたって、繰り返して使用することができる。
【0057】
また、検査用材料を含む高価な第1粒状処理体21の他に、当該検査用材料を含まない、非吸水性の吸着材料を含む安価な第3粒状処理体23を使用しているため、動物用トイレTの製造費用を削減することができる。
なお、第1粒状処理体21と第3粒状処理体23はともに吸着等による脱臭効果を奏する(構成材料の違いにより、第3粒状処理体23のほうが脱臭効果は強い)。第1粒状処理体21と第3粒状処理体23は、繰返して使用することにより、徐々に崩壊していくことになるが、崩壊して粒状になるほど、排尿との接触面積が増えるため、優れた脱臭効果が発揮されることになる。
【0058】
また、コーヒー抽出残渣等を含む第31粒状処理体21が消臭性能を有するため、排尿の有する悪臭を防止できるとともに、コーヒー抽出残渣等が発するコーヒー等の香気による香気作用を奏させるため、特段の配慮なく芳香剤としての効果を発揮させることができる。
【0059】
また、第2粒状処理体22は、粒状の芯部と上記芯部を被覆する被覆層部とを有する複層構造であり、当該被覆層部は、接着材料を含み、排尿を吸収することにより塊状となるように形成されているため、第1粒状処理体21及び第3粒状処理体23により処理された排尿を吸収し、塊状にしてその内部に閉じこめることにより、悪臭を効果的に防止することができる。
さらに、第1粒状処理体21及び第3粒状処理体23と、第2粒状処理体22の二層構造としているため、第2粒状処理体22から臭いが発せられた場合であっても、第1粒状処理体21の吸着効果等により臭いをシャットアウトすることができる。
【0060】
また、外部から流入し、第2処理体収納部12に敷設されている第2粒状処理体22に達した排尿は、その芯部に吸収されるとともに塊30となるため、当該塊30となった部分だけを容易に除去することができる。
【0061】
さらに、本発明の動物用トイレTにおいて、収納トレイ15を引き出すだけで、第2処理体収納部12が開閉できるため、当該収納トレイ15に収納されている第2粒状処理体22を容易に取り替ることができる。
【0062】
以上、本発明について、好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
特に排尿容器の形状、材質等に制限はなく、有底、周壁を有し、所定の水密性等が保たれていればよい。そして、上部開口部は、動物が排尿可能となるように開口していれば、その位置及び形状等にも制限はない。
【0063】
また、第1処理体等収納部と、第2処理体収納部の仕切部材の形態にも制限はなく、排尿を第1粒状処理体に透過させた後に第2処理体収納部に導くことができる構造であればどのような構造でもよく、メッシュ状の網状体に第1粒状処理体及び第3粒状処理体を保持させる等の構造であってもよい。
さらに、上記仕切部材は、容易に取り外すことができるように形成されていればなお好適である。
【0064】
また、排尿容器は、透明材料で形成されていれば、その内部の状況が認識可能となるため特に好適である。
さらに、第1処理体等収納部には、第1粒状処理体のみを敷設するものであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
T 動物用トイレ
10 排尿容器
10a 底部
10b 周壁部
10c 側面開口部
11 第1処理体等収納部
12 第2処理体収納部
13 仕切部材
13a 排尿滴下孔
15 収納トレイ
21 第1粒状処理体
22 第2粒状処理体
23 第3粒状処理体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口部を有するとともに、有底かつ周壁を有し、内部空間が高さ方向に上部空間と下部空間とに区画されている排尿容器と、
前記上部空間に複数個の第1粒状処理体が、
前記下部空間に複数個の第2粒状処理体がそれぞれ設けられている動物用トイレであって、
前記上部開口部と前記上部空間が連通するとともに、前記上部空間と前記下部空間とが連通しており、
前記第1粒状処理体は、排泄物検査用指示薬と非吸水性の吸着材料とを含み、粒状に成型されており、
前記第2粒状処理体は、粒状の芯部と前記芯部を被覆する被覆層部とを有する複層構造であり、
前記被覆層部は接着材料を含み、排尿を吸収することにより、塊状となるように形成されていることを特徴とする動物用トイレ。
【請求項2】
前記排泄物検査用指示薬は、吸着率25重量%以上であり、微細孔を有する多孔質吸着剤の前記微細孔に吸着されていることを特徴とする請求項1に記載の動物用トイレ。
【請求項3】
前記排泄物検査用指示薬は、インク組成物に定着させられていることを特徴とする請求項2に記載の動物用トイレ。
【請求項4】
前記上部空間には、前記排泄物検査用指示薬を含まない、非吸水性の吸着材料を含む第3粒状処理体が設けられている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の動物用トイレ。
【請求項5】
前記第2粒状処理体は収納部材に収納されるとともに、
前記下部空間は開閉可能に形成され、第2粒状処理体の収納部材が移動自在に設けられており、
前記第2粒状処理体が取替可能となるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の動物用トイレ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−217638(P2011−217638A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88183(P2010−88183)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000148977)株式会社大貴 (43)
【Fターム(参考)】