説明

動物用便器

【課題】動物の排泄物の落下距離をできるだけ短くすることができる動物用便器を提供する。
【解決手段】上部容器と下部容器30との間に配置し、下部容器30とともに、外部との通液性を確保する態様で開口を閉塞して収容空間を画定する通液部材とを備えている。下部容器30は、収容空間の内部において通液部材の下方に配置される収容位置と、収容空間の外部に配置される取り出し位置とに縦方向Yへ進退可能に設けられ、吸収体50を載置するトレイ40を有するとともに、収容空間をトレイ40が進退するための透孔を有している。トレイ40は、吸収体50を載置する平面視が矩形状の底壁部41と、底壁部41の四辺の周縁にそれぞれ設け、吸収体50の周縁のフラップ54b〜54cが接する側壁部42a,42bとを有している。互いに対向する一対の側壁部42a,42bは、上方に向かって互いに離間するように傾斜する態様でそれぞれ設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば猫等の動物に使用する動物用便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、猫等の動物に使用する動物用便器は公知である。
【0003】
例えば、特許文献1には、縦方向と、横方向と、上下方向とを有し、下方に配置する下部容器と、下部容器の上端に載置する上部容器と、上部容器の上方に載置するカバーとの3つの部品を備える動物用便器が開示されている。
【0004】
上部容器は、下部容器とともに、外部との通液性を確保する態様で収容空間を画定する液通過性の底面部を下方に有している。
【0005】
下部容器は、収容空間の内部において底面部の下方に配置される収容位置と、前記収容空間の外部に配置される取り出し位置とに縦方向へ進退可能に設けられたトレイを有している。このトレイは、平面視が矩形状の底壁部と、底壁部の四辺の周縁にそれぞれ設け、底壁部の周縁から上方に向けて立ち上がる側壁部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−11181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
動物用便器は、図14に示すように、上部容器80を下部容器81の上に載置した状態において、下部容器81からトレイ90の縦方向への進退をスムーズにするため、上下方向Zにおいて、トレイ90の側壁部90aの上端部90cと、上部容器80の底面部82の下端部82aとの間にクリアランス91を設けてある。
【0008】
動物の尿等の排泄物の落下距離(La)は、トレイ90の内部の上下方向Zにおける高さ(Ha)と、クリアランス91の上下方向Zの高さ(Hb)との和から吸収体92の上下方向Zの厚さ(Hc)を引いた長さである。
【0009】
排泄物が底面部82の下端部82aから落下して吸収体92に当たったときに飛沫が撥ねる。この飛沫が下部容器81の内壁に付着し、それが内壁に沿って移動することによってトレイ90の外部に排泄物が漏れる問題、およびトレイ90に載せた吸収体92の裏側に回り込むことによって悪臭の原因となる問題があった。
【0010】
これらの問題を解決するには、排泄物の飛沫の量を減少させればよい。飛沫の量を減少させるには、位置エネルギーを減少させるために落下距離(La)が短い方が好ましい。
【0011】
ところで、便器に使用する吸収体92は、図15(a)に示すように、透液性の表面シート93と、不透液性の裏面シート94と、これらのシート93,94の間に介在させた吸収性コア95とで構成してある。吸収性コア95は、例えばフラッフパルプと超吸水性ポリマー粒子を混合し、図15(b)に示すように、平面視が矩形を成すように形成してある。
【0012】
吸収体92は、図15(b)に示すように、その製造過程において、裏面シート94を機械方向MDに搬送しながら、裏面シート94の上部に吸収性コア95を載置し、吸収性コア95を覆うように、裏面シート94の上部に表面シート93を接着し、機械方向MDにおいて、吸収性コア95が存在しない非存在領域96で切断することにより形成する。
【0013】
機械方向MDにおいて隣接する一方の吸収性コア95の存在領域97の端部97aと、別のもう一方の吸収性コア95の存在領域97の端部97aとの中間位置(図15(b)中、二点鎖線で示す)99で切断することが好ましい。しかし、この切断が機械方向MDにずれることを考慮して、機械方向MDにおいて、吸収体92の周縁に、吸収性コア95が存在しない前フラップ98aおよび後フラップ98bがそれぞれ形成してある。この前後フラップ98a,98bの機械方向MDの長さ寸法Lcは、フラッフパルプや超吸水性ポリマー粒子がこぼれることを防止するため15mmである。
【0014】
また、機械方向MDに直交する交差方向CDにおいて、表面シート93および裏面シート94のいずれか一方からフラッフパルプや超吸水性ポリマー粒子がこぼれることを防止するため、交差方向CDにおいて、吸収性コア95の周縁に、吸収性コア95が存在しない左フラップ98cおよび右フラップ98dがそれぞれ形成してある。この左右フラップ98c,98dの交差方向CDの長さ寸法Lcは、同様の理由で15mmである。
【0015】
このような便器において、下部容器80の収容空間83の内部からトレイ90を外部に配置して汚れた吸収体92を新たな吸収体92に交換した後、後方にトレイ90を移動させることによって、収容空間83にトレイ90を移動させる際、フラップ98a〜98dが上部容器80の底面部82に接触してめくれることを防止するため、図14に示す側壁部90aの長さLbは、フラップ98a〜98dの長さLcよりも大きくしなければならない。
【0016】
このようなフラップ98a〜98dの存在によって、側壁部90aの上下方向Zの長さ寸法を短くすることができず、排泄物の落下距離(La)を短くすることができない課題が存在した。
【0017】
そこで、この発明では、排泄物の落下距離をできるだけ短くすることができる動物用便器の提供を課題にしている。
【0018】
なお、特許文献1には、図16に示すように、横方向Xにおいて、互いに対向する一対の側壁部90a1は、トレイ90を熱可塑性合成樹脂で形成する際、型枠からトレイ90を取り出すため、水平面84に対して側壁部がわずかに傾斜するように設けることが開示されている。一般的には、型枠からの取り出しを考慮して付与される傾斜角度は、水平面84に対する角度θ3が約88.5〜89.0度である。しかし、このような側壁部90aは、排泄物の落下距離をできるだけ短くすることについて考慮したものではない。これは、縦方向において、互いに対向する一対の側壁部90a2は、水平面に対して直交するように設けてあり、これら縦方向において互いに対向する一対の側壁部90a2の上端90cと、横方向Xにおいて互いに対向する一対の側壁部90a1の上端90eとにおいて段差85が形成されていることからも明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するために、この発明に係る動物用便器は、横方向と、縦方向と、上下方向とを有し、上端に開口を有して下方に配置する下部容器と、下部容器の上方に配置する上部容器と、上部容器と下部容器との間に配置し、下部容器とともに、外部との通液性を確保する態様で開口を閉塞して収容空間を画定する通液部材とを備えている。下部容器は、収容空間の内部において通液部材の下方に配置される収容位置と、収容空間の外部に配置される取り出し位置とに縦方向へ進退可能に設けられ、平面視が矩形状の吸収体を載置するトレイを有するとともに、収容空間をトレイが進退するための透孔を有している。トレイは、吸収体を載置する平面視が矩形状の底壁部と、底壁部の四辺の周縁にそれぞれ設け、吸収体の周縁のフラップが接する側壁部とを有し、互いに対向する一対の側壁部は、上方に向かって互いに離間するように傾斜する態様でそれぞれ設けてある。
【0020】
この発明の好ましい実施態様の一つにおいて、底壁部の端部と側壁部の上端部とを通過する仮想線が、水平面と成す角をθとした場合、θが20度以上であって且つ80度以下であり、且つ水平面と成す角が80度である第1仮想直線と、水平面と成す角が20度である第2仮想直線とによって画定される仮想領域の内部を延びるように側壁部が形成してある。
【0021】
この発明の好ましい実施態様の一つにおいて、通液部材は、収容空間と外部とを連通する穴を複数有し、平面視が矩形状の通液領域と、通液領域の周縁に位置して穴を形成していない非通液領域とを有し、通液領域の面積よりも、底壁部および側壁部の平面視の面積が大きく、トレイを収容位置に配置した状態では、底壁部および側壁部の上方領域に通液領域が含まれる。
【0022】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、トレイの底壁部の面積は、通液領域の面積より大きく、トレイを収容位置に配置した状態では、底壁部の上方領域に通液領域が含まれる。
【0023】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、通液領域の面積は、トレイの底壁部の面積よりも大きく、トレイを収容位置に配置した状態では、通液領域の下方領域に底壁部が含まれる。
【0024】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、トレイは、収容位置と取り出し位置とに進退させる際に操作者が指を挿入するための指挿入部を、縦方向において側壁部に隣接する態様で設け、指挿入部は、側壁部の上端部から水平方向に延びる水平部と、水平部の端部から側壁部に対向するように下方へ向けて突出する突出部とを有し、突出部の上下方向の長さが側壁部の上下方向の長さよりも短く、側壁部と突出部との間に凹部を有している。
【0025】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、突出部の外周面が、下部容器の外周面に沿うようにトレイを形成してある。
【0026】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、側壁部の傾斜面に沿った長さは、15mm以上であって且つ50mm以下である。
【0027】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、側壁部の上下方向の見掛け上の長さ寸法は、5.1mm以上であって且つ49.3mm以下である。
【発明の効果】
【0028】
この発明の実施の形態に係る動物用便器によれば、互いに対向する一対の側壁部が、上方に向かって互いに離間するように傾斜する態様でそれぞれ設けてあるため、側壁部の長さおよび吸収体のフラップの長さを維持しつつ、側壁部の上下方向における見掛けの長さ寸法を小さくすることができる。よって、排泄物の落下距離をできるだけ短くすることができる便器を提供することができる。しかも、互いに離間するように傾斜する態様で一対の側壁部を設けてあるため、側壁部の上端部によって形成される開口の面積を大きくすることができる。よって、排泄物がトレイから漏れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態における動物用便器の斜視図。
【図2】図1における仮想横中心線QにおけるII−II線断面図。
【図3】図1における仮想縦中心線PにおけるIII−III線断面図。
【図4】便器の平面図。
【図5】トレイを取り出し位置に配置した状態の下部容器の斜視図。
【図6】図3の部分VIの拡大断面図。
【図7】便器の正面図。
【図8】便器の側面図。
【図9】トレイの底面図。
【図10】吸収体の斜視図。
【図11】(a)〜(e)は、トレイの側壁部の傾斜の説明図。
【図12】変形例の便器の仮想横中心線における断面図。
【図13】変形例の便器の仮想縦中心線における断面図。
【図14】従来の便器の要部断面図。
【図15】(a)は吸収体の断面図であり、(b)は吸収体の製造工程の一部を示す平面図。
【図16】従来のトレイの要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
添付の図面を参照して、この発明に係る動物用便器の実施形態を説明すると、以下のとおりである。
【0031】
図1は、動物用便器1の全体斜視図である。図1中、Xは横方向を示し、Yは横方向Xと直交する縦方向を示し、Zは横方向X及び縦方向Yにそれぞれ直交する上下方向を示している。Pは、便器1の横方向Xの長さ寸法を二等分する仮想縦中心線であり、Qは、便器1の縦方向Yの長さ寸法を二等分する仮想横中心線である。
【0032】
便器1は、上端に後述する第1開口31を有し、下方に配置する下部容器30と、下部容器30の上方に配置する上部容器10と、上部容器10と下部容器30の間に配置し、下部容器30とともに、外部との通液性を確保する態様で上記開口31を閉塞して後述する収容空間2を画定する通液部材20とを備えている。
【0033】
上部容器10は、第1枠部11と、第1枠部11の上端から上方に向けて延びる壁部12とを有し、筒状に形成してある。第1枠部11および壁部12は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−テレフタレート等のポリオレフィン系の熱可塑性合成樹脂によって一体的に形成してある。
【0034】
壁部12は、横方向Xにおいて互いに対向する第1壁部12aおよび第2壁部12bと、第1壁部12aおよび第2壁部12bの縦方向Yにおける後端部を連結する第3壁部12cとで構成され、第1壁部12aおよび第2壁部12bの縦方向Yの前端部12eには壁部12を形成せず、壁部12a,12b,12cの上端部12d、第1,第2壁部12a,12bの前端部12eおよび第1枠部11の前方側の上端部11aにわたる部位に、出入口14が形成してある。
【0035】
通液部材20は、図2〜図4に示すように、収容空間2と外部とを連通する穴21を複数有し、平面視が矩形状の通液領域22と、通液領域22の周縁に位置する非通液領域23と、非通液領域23の上端に設けた第2枠部27とを有するように板状に形成してある。穴21は、縦方向Yの長さよりも横方向Xの長さが短く、且つ横方向Xの長さが、通液部材20の上部に撒く粒状物(不図示)の平均粒径よりも小さい。このような穴21のため、通液部材20の上部に撒いた粒状物(いわゆる猫砂等)が収容空間2に落下することを防止することができる。また、この穴21を通じて、通液部材20の上部の排泄物が、収容空間2に落下する。
【0036】
非通液領域23には、上述した穴21を形成していない。この非通液領域23は、水平面3と成す角が緩やかであり、通液領域22に隣接するように配置してある第1傾斜部24と、水平面3と成す角が急であり、第2枠部27に隣接するように配置してある第2傾斜部25と、第1傾斜部24と第2傾斜部25とを連結する連結部26とを有している。
【0037】
第2傾斜部25は、通液領域22の横方向Xの両側において、通液領域22に近接する部分から離間する方向へ向けて、接線の傾きが徐々に増加する放物線を含む曲面状を成すように形成してある。
【0038】
連結部26は、図2に示すように、通液領域22の横方向Xの両側に存在する一方、図3に示すように、通液領域22の縦方向Yの両側には存在しない。
【0039】
通液部材20および上部容器10によって、通液部材20の上方かつ上部容器10の壁部12の内側には、例えばシリカゲルを主成分として形成した粒状物(不図示)を載置する載置空間4が画定される。この載置空間4には、出入口14を通じて猫等の動物が出入りする。
【0040】
通液部材20は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−テレフタレート等のポリオレフィン系の熱可塑性合成樹脂によって通液領域22、非通液領域23および第2枠部27を一体的に形成してある。
【0041】
下部容器30は、図5に示すように、上端に第1開口31(開口)を有し、底に第2開口32を有しているとともに、縦方向Yの前方側には、トレイ40を収容空間2に進退させるための透孔33を有している。第1開口31の面積は、第2開口32の面積よりも大きい。下部容器30は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−テレフタレート等のポリオレフィン系の熱可塑性合成樹脂によって一体的に形成してある。
【0042】
下部容器30は、図2および図3に示すように、収容空間2の内部において、通液部材20の下方に配置される収容位置と、図5に示すように、収容空間2の外部に配置される取り出し位置とに縦方向Yへ進退可能に設けられ、例えば図10に示すように、横方向Xよりも縦方向Yの方が長くて平面視が矩形状の吸収体50を載置するトレイ40を有している。
【0043】
トレイ40は、図5に示すように、平面視が矩形状の底壁部41と、底壁部41の四辺の周縁にそれぞれ設け、上方に向けて立ち上がる側壁部42と、縦方向Yの両端に設けた指挿入部43とを備えている。トレイ40は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−テレフタレート等のポリオレフィン系の熱可塑性合成樹脂によって底壁部41、側壁部42および指挿入部43を一体的に形成してある。
【0044】
底壁部41の面積S1は、図2および図3に示すように、下部容器30の第2開口32の面積よりも大きく、トレイ40を収容空間2に配置した状態では、第2開口32は底壁部41によって閉塞される。これら下部容器30、トレイ40および通液部材20によって収容空間2が画定される。また、底壁部41の面積S1は、通液領域22の面積S3よりも大きく、トレイ40を収容位置に配置した状態では、底壁部41の上方領域に通液領域22が含まれている。
【0045】
側壁部42は、図3に示すように、縦方向Yにおいて互いに対向する一対の縦側壁部42aと、図2に示すように、横方向Xにおいて互いに対向する一対の横側壁部42bとによって構成してある。
【0046】
互いに対向する一対の側壁部42a,42bは、図2,3,5,6に示すように、上方に向かって互いに離間するように傾斜する態様でそれぞれ設けてある。
【0047】
底壁部41および側壁部42の平面視の面積S2は、図2および図3に示すように、通液領域22の面積S3よりも大きく、トレイ40を収容位置に配置した状態では、底壁部41および側壁部42の上方領域に通液領域22が含まれる。
【0048】
指挿入部43は、図6に示すように、トレイ40を収容位置と取り出し位置とに進退させる際に操作者が指を挿入するための部分であって、縦方向Yにおいて、縦側壁部42aに隣接する態様で設けてある。
【0049】
指挿入部43は、縦側壁部42aの上端部42zから水平方向へ向けて延びる水平部43aと、水平部43aの端部42yから側壁部42に対向するように下方へ向けて突出する突出部43bとを有している。
【0050】
突出部43bの上下方向Zの長さA1は、縦側壁部42aの上下方向Zの長さA2よりも短く、上下方向Zにおいて、突出部43bと下部容器30の底壁34との間には間隙43dが形成されている。この間隙43dは、突出部43bと底壁34とに沿って縦方向Yに延びている。また、指挿入部43には、縦方向Yにおける突出部43bと縦側壁部42aとの間であって、水平部43aの下方には凹部43cを形成してある。よって、上記間隙43dは、縦方向Yに延びた後、後方側の端部から上方に向かって延びている。このような指挿入部43によって、トレイ40を操作する際には、トレイ40と下部容器30との間の間隙43dに沿って指を挿入し、且つ指先を凹部43cに入れて突出部43bに引っ掛ければ、容易にトレイ40を操作することができる。しかも、図7に示すように、突出部43bは、仮想縦中心線Pにおいて、下部容器30の底壁34の上端34aと、トレイ40の突出部43bの下端43eとの間隙43dが最も大きく、仮想縦中心線Pから横方向Xに離間するに従って、底壁34の上端34aと、突出部43bの下端43eとの間隙43dが徐々に小さくなるように形成してある。このように、指挿入部43の突出部43bを形成してあるため、トレイ40の横方向Xの中央において指が挿入しやすい。よって、指挿入部43は、このような突出部43bにより横方向Xにおいて、最も操作しやすい位置に指を挿入する位置決め機能を有している。
【0051】
トレイ40の突出部43bの外周面は、図8に示すように、下部容器30の外周面から突出する部分がないように、下部容器30の外周面に沿う態様で形成してある。具体的には、トレイ40の突出部43bの外周面は、上下方向Zにおいて、その上端部43xが仮想横中心線Qに対して最も離間し、下方に行くに従って仮想横中心線Qに対する離間距離が徐々に小さくなり、透孔33を形成する周壁の上端33aと、底壁34の上端34aであって透孔33を形成する周壁の下端とを連続し、且つ上端部43xから仮想横中心線Qへ向けて、接線の傾きが徐々に減少する放物線を含む曲面状を成すように形成してある。
【0052】
トレイ40において、突出部43bと縦側壁部42aとの間には、図6に示すように、突出部43bと縦側壁部42aとを連結するように板状のリブ44を設けてある。リブ44は、図9に示すように、トレイ40における横方向Xの端部近傍に設けてある。より、具体的には、仮想縦中心線Pおよび仮想横中心線Qにそれぞれ対称となるようにトレイ40の四隅にリブ44を配置してある。このリブ44は、水平部43aの剛性を向上させる機能を有している。なお、図示例のトレイ40は、仮想横中心線Qに対称となるように、縦方向Yの両端部に指挿入部43を設けてあるが、縦方向Yのいずれか一方にのみ指挿入部43を設けてもよい。
【0053】
吸収体50は、図10に示すように、透液性の表面シート51と、不透液性の裏面シート52と、これらのシート51,52の間に介在させた吸収性コア53とで構成してあり、平面視が矩形を成すように形成してある。吸収性コア53は、フラッフパルプと超吸収性ポリマー粒子とを混合して平面視が矩形を成すように形成してある。吸収体50の周縁には、吸収性コア53が存在せず、表面シート51および裏面シート52のみで構成されるフラップ54を配置してある。フラップ54は、縦方向Yの両端に配置される前フラップ54aおよび後フラップ54bと、横方向Xの両端に配置される左フラップ54cおよび右フラップ54dとで構成してある。吸収性コア53は、穴21を通じて収容空間2に落下した排泄物を吸収・保持する機能を有している。
【0054】
吸収体50をトレイ40に載置した状態では、図6に示すように、吸収性コア53が底壁部41の上方に配置され、前後フラップ54a,54bが、縦側壁部42aに当接し、左右フラップ54c,54dが、横側壁部42bに当接する。
【0055】
この便器1によれば、互いに対向する一対の側壁部42a,42bが、上方に向かって互いに離間するように傾斜する態様でそれぞれ設けてあるため、側壁部42a,42bの長さおよび吸収体50のフラップ54a〜54dの長さを維持しても、側壁部42の上下方向Zの見掛け上の長さ寸法A2を短くすることができる。よって排泄物の落下距離をできるだけ短くすることができる便器1を提供することができる。しかも、互いに離間するように傾斜する態様で一対の側壁部42a,42bを設けてあるため、側壁部42a,42bの上端部42zによって形成される開口の面積を大きくすることができる。よって、排泄物がトレイ40から漏れることを防止することができる。
【0056】
この便器1によれば、通液領域22の面積S3よりも、底壁部41および側壁部42の平面視の面積S2が大きく、トレイ40を収納位置に配置した状態では、底壁部41および側壁部42の上方領域に通液領域22が含まれるため、通液部材20の穴21を通じて落下した排泄物がトレイ40の外部に漏れることを防止することができる。しかも、トレイ40の底壁部41の面積S1は、通液領域22の面積S3よりも大きく、トレイ40を収容位置に配置した状態では、底壁部41の上方領域に通液領域22が含まれるため、排泄物がトレイ40から漏れることを確実に防止することができる。
【0057】
なお、上述した実施形態において、動物として愛玩用動物の猫を例示したが、この発明に係る便器1に適用する動物は、これに限られることなく、愛玩用の犬、ウサギ、ハムスター等の哺乳類や、トラ、ライオンの赤ちゃん等の哺乳類の赤ちゃんが含まれる。もちろん、これらの哺乳類に限られず、ヘビ等の爬虫類や鶏等の鳥類に使用してもよい。
【0058】
また、上述した実施の形態のトレイ40において、互いに対向する一対の側壁部42は、上方に向かって互いに離間するように傾斜する態様でそれぞれ設けるもので説明した。この発明では、図11(a)に示すように、底壁部41の端部41zと側壁部42の上端部42zとを通過する直線状の側壁部42が、水平面3と成す角をθとした場合、θが80度(図11において、このときのθをθ1とする)である第1仮想直線L1と、θが20度(図11において、このときのθをθ2とする)である第2仮想直線L2との間に位置していればよい。換言すれば、底壁部41の端部41zと側壁部42の上端部42zとを通過する直線状の側壁部42が、第1仮想直線L1と第2仮想直線L2とによって画定される仮想領域49の内部を延びるように形成されていればよい。
【0059】
θが20度より小さい場合には、図6に示す側壁部42の上下方向Zにおける見掛けの長さ寸法A2が小さいため、大量の排泄物をトレイ40に収容することができず、トレイ40から排泄物が溢れるおそれがある。一方、θが80度より大きい場合には、側壁部42の上下方向Zにおける見掛けの長さ寸法A2を小さくする実質的な機能を発揮することができない。従って、本願発明において、「互いに対向する一対の側壁部42を、上方に向かって互いに離間するように傾斜する態様それぞれで設けてあること」の概念には、特許文献1に開示され、図16に示すように、水平面84に対する角度θ3が約88.5〜89.0度の側壁部90a1は含まれない。
【0060】
側壁部42の傾斜面に沿った長さLdは、吸収体50のフラップ54の長さを考慮して、約15mm以上であって且つ約50mm以下である。
【0061】
側壁部42の上下方向Zの見掛け上の長さ寸法A2は、約5.1mm以上であって且つ約49.3mm以下である。側壁部42の上下方向Zの見掛け上の長さ寸法A2は、側壁部42の傾斜面に沿った長さLdと、sinθとの積によって求めることができる。A2が最も小さいのは、Ldが約15mmであって、θが20度のときである。一方、A2が最も大きいのは、Ldが約50mmであって、θが80度のときである。
【0062】
なお、上述した実施の形態において、1本の直線状に形成した側壁部42を説明したが、本発明の便器1の側壁部42は、1本の直線状に形成したものに限られず、2本以上の直線状に形成しもよい。
【0063】
例えば、図11(b)に示すように、先ず、傾斜が急な1本の直線状を成し、その後、傾斜が緩やかな別の1本の直線状を成すように側壁部42を形成してもよい。もちろん、図示省略するが、先ず、傾斜が緩やかな1本の直線状を成し、その後、傾斜が急な1本の直線状を成すように傾斜してもよい。もちろん、直線の数は、1本および2本に限られず、3本以上の複数でもよい。なお、直線の数を問わず、仮想領域49の内部を延びるように側壁部42を形成しなければならない。
【0064】
また、上述した実施の形態において、直線状に形成した側壁部42を説明したが、本発明の便器1の側壁部42は、直線状に限られず、曲線状に形成してもよい。ただし、側壁部42を曲線状に形成する場合であっても、仮想領域49の内部を延びるように側壁部42を形成する必要がある。
【0065】
例えば、図11(c)に示すように、上方に向けて凸となる態様で緩やかに曲がる曲線状に側壁部42を形成してもよい。また、図11(d)に示すように、下方に向けて凸となる態様で緩やかに曲がる曲線状に側壁部42を形成してもよい。さらに、図11(e)に示すように、先ず、上方に向けて凸となる態様で緩やかに曲がる曲線状を成し、その後、下方に向けて凸となる態様で緩やかに曲がる曲線状を成すように側壁部42を形成してもよい。もちろん、図示省略するが、先ず、下方に向けて凸となる態様で緩やかに曲がる曲線状を成し、その後、上方に向けて凸となる態様で緩やかに曲がる曲線状を成すように側壁部42を形成してもよい。もちろん、曲線の数は、1本および2本に限られず、3本以上の複数でもよい。なお、曲線の数、および曲線形状に限られず、仮想領域49の内部を延びるように形成しなければならない。
【0066】
また、上述した実施形態の変形例に係る便器100を以下に説明する。上述した便器1における説明と重複する説明を省略するため、同一の構成を有する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
便器100は、図12および図13に示すように、上記通液部材20の通液領域22の面積S2よりも大きな面積S4を有する通液部材200を有している点が便器1と異なる。
【0068】
通液部材200は、穴21を複数有し、平面視が矩形状の通液領域220と、通液領域220の周縁に位置する非通液領域230と、非通液領域230の上端に設けた第2枠部27とを有するように板状に形成してある。非通液領域230には穴21を形成していない。
【0069】
通液部材200は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−テレフタレート等のポリオレフィン系の熱可塑性合成樹脂によって通液領域220と非通液領域230と第2枠部27とを一体的に形成してある。
【0070】
便器100は、通液領域220の面積S4よりも、底壁部41および側壁部42の平面視の面積S2が大きく、トレイ40を収容位置に配置した状態では、底壁部41および側壁部42の上方領域に通液領域220が含まれる。また、通液領域220の面積S4は、トレイ40の底壁部41の面積S1よりも大きく、トレイ40を収容位置に配置した状態では、通液領域220の下方に底壁部41が含まれる。
【0071】
この便器100によれば、通液領域220の面積S4よりも、底壁部41および側壁部42の平面視の面積S2が大きく、トレイ40を収納位置に配置した状態では、底壁部41および側壁部42の上方領域に通液領域220が含まれるため、通液部材200の穴21を通じて落下した排泄物がトレイ40の外部に漏れることを防止することができる。
【0072】
また、通液領域220の面積は、トレイ40の底壁部41の面積よりも大きいため、通液部材200において、非通液領域230の面積を小さくすることができる。非通液領域230には排泄物が付着する場合があるが、上記構成によって、排泄物が付着する面積を小さくして汚れを目立たなくすることができる。
【0073】
なお、上述した実施の形態には、上部容器10と、下部容器30と、通液部材20,200とを個別に設ける便器1,100を説明した。しかし、この発明は、それに限られず、上部容器10と通液部材20,200とを一体として形成してもよいし、下部容器30と通液部材20,200とを一体として形成してもよい。
【0074】
また、下部容器30の第2開口32は必ずしも設ける必要はなく、第2開口32を閉塞するように下部容器30を形成してもよい。このように下部容器30を形成すれば、便器1,100を載置した床に排泄物が落下することを防止することができる。この場合、下部容器30および通液部材20によって収容空間2が画定される。
【符号の説明】
【0075】
1 動物用便器
2 収容空間
10 上部容器
14 出入口
20 通液部材
21 穴
22 通液領域
23 非通液領域
30 下部容器
31 第1開口(開口)
33 透孔
40 トレイ
41 底壁部
41z 端部
42a 縦側壁部(側壁部)
42b 横側壁部(側壁部)
42z 上端部
43 指挿入部
49 仮想領域
50 吸収体
51 表面シート
52 裏面シート
53 吸収性コア
54(54a) 前フラップ(フラップ)
54(54b) 後フラップ(フラップ)
54(54c) 右フラップ(フラップ)
54(54d) 左フラップ(フラップ)
100 動物用便器
200 通液部材
220 通液領域
230 非通液領域
A2 側壁部の上下方向の見掛け上の長さ寸法
L1 第1仮想直線
L2 第2仮想直線
Ld 側壁部の傾斜面に沿った長さ
X 横方向
Y 縦方向
Z 上下方向
θ 底壁部の端部と側壁部の上端部とを通過する仮想線が水平面と成す角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向と、縦方向と、上下方向とを有し、上端に開口を有して下方に配置する下部容器と、前記下部容器の上方に配置する上部容器と、前記上部容器と前記下部容器との間に配置し、前記下部容器とともに、外部との通液性を確保する態様で前記開口を閉塞して収容空間を画定する通液部材とを備え、
前記下部容器は、前記収容空間の内部において前記通液部材の下方に配置される収容位置と、前記収容空間の外部に配置される取り出し位置とに前記縦方向へ進退可能に設けられ、平面視が矩形状の吸収体を載置するトレイを有するとともに、前記収容空間を前記トレイが進退するための透孔を有し、
前記トレイは、前記吸収体を載置する平面視が矩形状の底壁部と、前記底壁部の四辺の周縁にそれぞれ設け、前記吸収体の周縁のフラップが接する側壁部とを有し、
互いに対向する一対の側壁部は、上方に向かって互いに離間するように傾斜する態様でそれぞれ設けてある動物用便器。
【請求項2】
前記底壁部の端部と前記側壁部の上端部とを通過する仮想線が、水平面と成す角をθとした場合、θが20度以上であって且つ80度以下であり、且つ水平面と成す角が80度である第1仮想直線と、水平面と成す角が20度である第2仮想直線とによって画定される仮想領域の内部を延びるように前記側壁部が形成してある請求項1に記載の動物用便器。
【請求項3】
前記通液部材は、前記収容空間と前記外部とを連通する穴を複数有し、平面視が矩形状の通液領域と、前記通液領域の周縁に位置して前記穴を形成していない非通液領域とを有し、
前記通液領域の面積よりも、前記底壁部および前記側壁部の平面視の面積が大きく、前記トレイを前記収容位置に配置した状態では、前記底壁部および前記側壁部の上方領域に前記通液領域が含まれる請求項1に記載の動物用便器。
【請求項4】
前記トレイの前記底壁部の面積は、前記通液領域の面積より大きく、前記トレイを前記収容位置に配置した状態では、前記底壁部の上方領域に前記通液領域が含まれる請求項3に記載の動物用便器。
【請求項5】
前記通液領域の面積は、前記トレイの前記底壁部の面積よりも大きく、前記トレイを前記収容位置に配置した状態では、前記通液領域の下方領域に前記底壁部が含まれる請求項3に記載の動物用便器。
【請求項6】
前記トレイは、前記収容位置と前記取り出し位置とに進退させる際に操作者が指を挿入するための指挿入部を、前記縦方向において前記側壁部に隣接する態様で設け、
前記指挿入部は、前記側壁部の上端部から水平方向に延びる水平部と、水平部の端部から前記側壁部に対向するように下方へ向けて突出する突出部とを有し、前記突出部の前記上下方向の長さが前記側壁部の前記上下方向の長さよりも短く、前記側壁部と前記突出部との間に凹部を有している請求項1に記載の動物用便器。
【請求項7】
前記突出部の外周面が、前記下部容器の外周面に沿うように前記トレイを形成してある請求項6に記載の動物用便器。
【請求項8】
前記側壁部の傾斜面に沿った長さは、15mm以上であって且つ50mm以下である請求項1に記載の動物用便器。
【請求項9】
前記側壁部の前記上下方向の見掛け上の長さ寸法は、5.1mm以上であって且つ49.3mm以下である請求項1に記載の動物用便器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2013−17446(P2013−17446A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155206(P2011−155206)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)