説明

動物用創傷保護衣料

【課題】本発明の目的は、着脱が容易で動物の身体の各部位に対応する創傷保護衣服を提供することにある。
【解決手段】下記要件を満足する伸縮性布帛からなるフルボディースーツ又は該フルボディースーツから一部をカット除去されてなる動物用創傷保護衣料とする。
1)縦方向、横方向のうち、少なくとも一方の伸長率が40%以上。
2)縦方向、横方向のうち、少なくとも一方の伸長弾性率が80%以上。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、獣医師や飼主が動物の患部を治療後、治療処置部を動物がなめたり、かんだり、引っ掻いたりできないように患部を覆って保護するための動物用創傷保護衣料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、犬、猫を主とし、その他多種のペットが極めて多数飼育されており、それに従って、ペットの治療を行う動物病院(獣医師による)があり、また多種多様な治療薬品及び治療用品がペットショップ、通常の薬局、スーパー等で販売されている。そして、従来は、ペットの胴部の病気、傷等の患部の治療を行った場合、適当な形状及び大きさに切ったガーゼ、タオル等を治療箇所に当て、それをテープで止めたり、包帯を巻いたりして処置をしているのが普通であった。
【0003】
ところが、上記従来の処置では、ペットが痛がったり、痒がったりして、舐めたり噛んだり足で引っ掻いたりして、テープや包帯を外してしまうことが多々あって、獣医師や飼主等はその対策に苦慮していた。
【0004】
上記の対策とし、例えば特開平10−309291号公報には、治療後にペットの胴体を覆うメディカルウェアー(医療用衣服)を着せ付けることが提案されている。しかしながら胴体部はカバーできるものの足、首、頭部はカバーできないという問題があった。又伸縮性が少ないため皮膚がこすれるとか紐通しが煩わしいという問題もあった。
【0005】
又特開平11−71号公報には伸縮性のある布地を用いて主として胴体を覆うカバーバンドが提案されているが、前記文献と同様胴体部分を主としてカバーするものであるため、動物の身体の様々な部分に対応できるものではなかった。
そのため着脱性が良く且つフィット性が良く又身体の各部位に対応できる創傷保護衣服が望まれていた。又伸縮性は十分なものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特開平10−309291号公報
【特許文献2】特開平11−71号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、着脱が容易で、動物にとって違和感が少なく 着用フィット性の良い創傷保護衣料及び動物の創傷を保護する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
下記要件を満足する伸縮性布帛からなるフルボディースーツ又は該フルボディースーツから一部をカット除去されてなる動物用創傷保護衣料とする。
1)縦方向、横方向のうち、少なくとも一方の伸長率が40%以上。
2)縦方向、横方向のうち、少なくとも一方の伸長弾性率が80%以上。
【発明の効果】
【0009】
適切な伸縮性のあるフルボディースーツ又は該フルボディースーツから一部を必要に応じカット除去された動物用創傷保護衣料とすることにより、着脱が容易で、適度な緊縛性を有し(痛がらない)、一着のフルボディースーツから動物の身体の様々な部分の患部に対応できることになり、獣医師、飼い主にとって動物治療の煩雑な手間が省くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する布帛の特性としては、動物用創傷保護衣料の着脱性、緊縛性から、縦方向、横方向のうち、少なくとも一方の伸長率が40%以上が必要である。少なくとも一方の伸長率が40%未満であれば伸びが不足し着脱性が低下し、緊縛性も強くなり、着用中に皮膚が傷つく場合がある。好ましくは布帛の少なくとも一方の伸長率が70〜500%である。より好ましくは100〜450%である。
【0011】
更に布帛の縦方向、横方向のうち、少なくとも一方の伸長弾性率が80%以上が必要である。少なくとも一方の伸長弾性率が80%未満であると着脱を繰り返すうちに伸び、弛みが発生し、患部の保護カバーができなくなる。好ましくは85〜95%である。
【0012】
上記布帛を構成する繊維糸としては、天然繊維、合成繊維いずれも使用することができるが、弾性糸を含むことが好ましい。好ましい繊維種としてはポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが挙げられ、弾性糸としてはポリウレタン系弾性糸、ポリエステル系弾性糸、ポリアミド系弾性糸が好ましく用いられる。中でもポリウレタン系弾性糸が好ましい。
【0013】
動物の着用時の不快感、嫌悪感を軽減し快適性を高め且つ保護衣のズレを防止する上で、当該保護衣で覆われる各身体部位での衣服圧を適正化することが好ましい。本創傷保護衣料の衣服圧としては10hPa以下が好ましい。10hPaを超える場合は締め付けが高くなり血流が妨げられむくみが生じる場合がある。好ましくは6hPa以下、より好ましくは4hPa以下である。
【0014】
次に、本発明で言うフルボディースーツ及びフルボディースーツから一部をカット除去した創傷保護衣料とは、図1で示されるようなものである。フルボディースーツから必要に応じ、挟み或いはナイフ等を用いて不要部分をカット除去すれことができるし、上半身或いは下半身のボディースーツを作成しそれを必要に応じカットすることも好ましく行うことができる。
【0015】
更にフルボディースーツ又はボディースーツから患部を覆う以外の部分を適度にカット除去することにより、動物創傷保護衣料の着脱を容易に行うことができるだけでなく、緊縛性を緩めて着用快適性を高め、又衣料を着脱しなくとも近くのカット部位を押し広げて患部の治療が行える、など動物の創傷保護治療に有利な方法を提供できる。
【0016】
又ボディースーツ或いはフルボディースーツは無縫製とすることが好ましい。裁断縫製であれば縫い代が厚くなり皮膚とのコスレが生じ易く傷つく場合があり、又コストが上がり、好ましくない。
【0017】
布帛としては編地とするのが無縫製とする上で好ましい。好ましい製編方法としては、カットすることによりホツレが出ないようにタテ編み、ラッセル編み、ダブルラッセル編み、丸編みいずれも好ましく用いることができる。ダブルラッセルジャガード編みは尚好ましい。
【0018】
又摩擦帯電圧は4000V以下であることが好ましい。4000Vを超えるようであれば静電気が発生し易く不快感や、安全面でも好ましくない。より好ましくは2000V以下である。このような摩擦帯電圧とするには制電性繊維、制電剤等を用いて制電防止処理することにより達成できる。又半減期は60秒以下であることが好ましい。60秒を超える場合は静電気が貯まりやすく不快感や、安全面でも好ましくない。
【実施例】
【0019】
以下本発明を実施例により更に詳細に説明する。尚、実施例中の各物性は下記の方法により測定した。
(1)編地伸長率
JIS L 1018法 カットストリップ法にて測定した。
(2)編地伸長弾性率
JIS L 1018B法 カットストリップ法にて測定した。
(3)摩擦帯電圧、半減期
JIS L 1094−1997 摩擦帯電圧測定法にて行った。
(4)衣服圧
衣服圧(着圧)は日本化学繊維検査協会、カケン法で測定し、エアーパック式の測定器を用い、モデルは犬の各部位の断面形状とサイズに似た人間の足のマネキンやアクリル棒を利用した。これに試作ウエアーの各部位を環状に切り取って着用、測定した。単位はhPaで示す。
【0020】
[実施例1]
小型犬用SSサイズ(チワワや小振りなヨークシャーテリアなど)の作成
ポリウレタン弾性繊維フィラメント糸(22dtex/1フィラメント)と、該ポリウレタン弾性繊維フィラメント糸を芯糸とし被覆糸としてナイロン繊維フィラメントマルチヤーン(55dtex/40フィラメント)からなるカバーリング糸とを交編してダブルラッセルのジャカード編み機で小型犬用SSサイズ(チワワや小振りなトイプードルなど首の周囲が18〜24cmの小型犬用)フルボディースーツを無縫製で作成した。24ゲージで平編み地を主に肩部分をメッシュ調、頭部の先のみリブ状にした。編地のタテ方向、横方向の伸長率、伸長弾性率、及び衣服圧、摩擦帯電圧、半減期はそれぞれ表1に示す通りであった。
【0021】
このフルボディースーツの頭部、四肢(前後足)、尻尾の部分をカットし、胴体部分を保護するボディースーツとしトイプードルに着用させた。カットした部分がホツレが生じることもなく又適度な伸縮性を有するため着脱が容易で且つ着用時の不快感、嫌悪感を見せることなく動物用創傷保護衣料として有用であった。
【0022】
[比較例1]
ポリエステル弾性糸(84dtex/36フィラメント)と実施例1で使用したナイロン糸からなる丸編みの2Wayストレッチ、メッシュ素材のフルボディースーツを裁断縫製で作成した。編地のフルボディースーツのタテ方向、横方向の伸長率、伸長弾性率、及び衣服圧、摩擦帯電圧、半減期はそれぞれ表1に示す通りであった。
このフルボディースーツを実施例1と同じトイプードルに着用させた。端の縫代が肌に当たらないようにカットしたが、着用1日経過後にホツレてきた。伸縮性が少ないため着脱が難しく且つ着用時の不快感、嫌悪感を見せ動物用創傷保護衣料として問題であった。
【0023】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0024】
犬、猫等の多種のペットの病気、傷等の患部の治療を効果的に行うことができ、獣医師や飼主の手間を省くことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ボディースーツの概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件を満足する伸縮性布帛から構成される動物用創傷保護衣料。
1)縦方向、横方向のうち、少なくとも一方の伸長率が40%以上。
2)縦方向、横方向のうち、少なくとも一方の伸長弾性率が80%以上。
【請求項2】
創傷保護衣料が、全身を覆うフルボディースーツ型の創傷保護衣料である請求項1記載の動物用創傷保護衣料。
【請求項3】
創傷保護衣料が、全身を覆うフルボディースーツ型の創傷保護衣料の一部が切断除去された創傷保護衣料である請求項1記載の動物用創傷保護衣料。
【請求項4】
布帛の摩擦帯電圧が4000V以下、半減期が60秒以下である請求項1〜3いずれか記載の動物用創傷保護衣料。
【請求項5】
布帛に弾性糸を含む請求項1〜4いずれか記載の動物用創傷保護衣料。
【請求項6】
布帛が編地である請求項1〜5いずれか記載の動物用創傷保護衣料。
【請求項7】
編地がタテ編みである請求項6記載の動物用創傷保護衣料。
【請求項8】
編地がラッセル編みである請求項6記載の動物用創傷保護衣料。
【請求項9】
編地が丸編みである請求項6記載の動物用創傷保護衣料。
【請求項10】
編地がダブルラッセル編みである請求項6記載の動物用創傷保護衣料。
【請求項11】
編地がダブルラッセルジャカード編みである請求項6記載の動物用創傷保護衣料。
【請求項12】
編地が無縫製編地からなる請求項6〜11いずれか記載の動物用創傷保護衣料。
【請求項13】
衣服圧が10hPa以下である請求項1〜12いずれか記載の動物用創傷保護衣料。
【請求項14】
動物用創傷保護衣料を用いて動物の創傷を保護する方法において、伸縮性布帛から構成された、全身を覆うフルボディースーツ型の創傷保護衣料の一部を切断除去した動物創傷保護衣料を用いることを特徴とする動物の創傷を保護する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−50299(P2009−50299A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217113(P2007−217113)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)