説明

動物用連結具

【課題】通常の形態、構造のままで、簡単な付帯具を利用するだけの安価な手法で連結外れを確実に防止できる連結具を提供する。
【解決手段】基端環2に連結された基部3から延びたフック部4を備えた本体10と、基部3内で付勢されて突出しフック部4の先端4aに圧接し開放部4bを閉じる閉じ習性を持ち、基部3の側方に後退操作部5aが突出する係止ピン5とを備え、これに、弾性部材よりなり基部3にその側方から弾性的に着脱できるよう過半円弧断面部を有して着脱口6aが側方に開放し、基部3への装着状態では、後退操作部5aとこれより後退操作側にある基部3上の引っ掛かり部3aの間で、突っ張って後退操作部5aを介し係止ピン5の後退を阻止するストッパ6を組み合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として犬や猫などの動物の首輪、胴輪、係留具などに引き紐や係留紐を連結するのに用いられる動物用連結具に関し、主として首輪、胴輪、係留具に設けられたリングに着脱自在に連結して用いられる。
【背景技術】
【0002】
このような連結具は用途を問わず一般にナス環と呼ばれるものに属するが、動物用連結具は、特に、図5〜図7に示すように、基端環aに連結された基部b1およびこの基部b1から延びたフック部b2を備えた本体bと、基部b1内でばね付勢されて突出しフック部b2の先端b3に圧接してフック部b2の開放部b4を閉じる閉じ習性を持ち、基部b1の側方に後退操作部c1が突出している係止ピンcとを備えた基本構成を有している。
【0003】
このような動物用連結具kは、基端環aを引き紐の先端や図7に示す係留紐jの両端に連結して用いられる。係留紐jなどに連結された動物用連結具kは、係止ピンcを後退操作して開放部b4を開いた状態で、図7に示す動物に装着した首輪dや地中にアンカー部を打ち込むなどした係留具fに設けられている連結環g、hに引っ掛けた後、係止ピンcを後退操作から解放することで開放部b4を閉じ連結される。
【0004】
基端環aは通常本体bの基部b1に回転自在に連結されて、連結部に自由度を与えている。しかし、図5に示すように、フック部b2と連結環g、hとの連結部との間にそのような回転自在な自由度はなく、連結環g、h、特に首輪dに設けられた連結環gも首輪dに対し回転自在な自由度はない。これらの連結不自由や、動物の急な動きの変化などが原因して、動物用連結具kと連結環gなどとの連結部に拗れが発生し、この拗れ状態で動物用連結具kの係止ピンdの後退操作部c1に後退操作側への引っ掛かり力、押動力が不用意に働いて、図6に示すようにフック部b2の開放部b4が開かれフック部b2と連結環gなどとの連結が外れてしまうことがときとして生じる。ここで、図6は連結環gがフック部b2と首輪dのバックルd1との間で拗れて自由を失った状態で、張力が加わっているフック部b2の係止ピンcの後退操作部c1を後退操作側に押動力を及ぼしフック部d2の開放部d4を開いてしまった状態を示している。
【0005】
このような事態に対応するのに本出願人は、連結環gとフック部d2との間に中間リングを連結して連結自由度を高める提案を既にしている(特許文献1参照。)。また、動物用連結具自体の構造を改良する技術も既に知られている(例えば、特許文献2、3参照。)。特許文献2、2に開示の技術は、連結環gが拗れても動物用連結具kの係止ピンdの後退操作部c1に後退操作方向に引っ掛かったり、押動力を及ぼさないようにフック部d2および係止ピンcの形状や設置位置を改良している。
【特許文献1】特開2006−141205号公報
【特許文献2】特開2008−99630号公報
【特許文献3】特開2008−99631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1が開示する技術では、連結が外れる確率は少なくなるが、回避しきれない問題がある。また、特許文献2、3が開示する技術では、成形や組み立てが困難な特殊製品となってコスト上昇の原因にある。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、通常の形態、構造のままで、簡単な付帯具を利用するだけの安価な手法で連結外れを確実に防止できる動物用連結具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、本発明の動物用連結具は、基端環に連結された基部およびこの基部から延びたフック部を備えた本体と、基部内でばね付勢されて突出しフック部の先端に圧接してフック部の開放部を閉じる閉じ習性を持ち、基部の側方に後退操作部が突出している係止ピンとを備えた動物用の連結具において、弾性部材よりなり基部にその側方から弾性的に着脱できるよう過半円弧断面部を有して着脱口が側方に開放し、基部への装着状態では後退操作部とこれより後退操作側にある基部上の引っ掛かり部の間で突っ張って後退操作部を介し係止ピンの後退を阻止するストッパを組み合わせ備えたことを特徴としている。
【0009】
このような構成では、通常の形態、構造の動物用連結具に組み合わせ備えたストッパを、その弾性を有した下半円弧断面部を利用して本体の基部に側方より弾性的に嵌め付けるだけで、ストッパが基部のまわりで基端側引っ掛かり部と係止ピンの後退操作部との間で突っ張るため、不用意な外力によって係止ピンが後退操作部を伴い後退され、あるいは後退操作部によって後退されるのを阻止する作用が得られる。また、ストッパは基部から側方へ弾性を利用して簡単に取り外すことができ、取り外し状態では前記突っ張りが解除されるので係止ピンを後退操作して連結したり連結を解除したりすることができる。
【0010】
上記において、さらに、ストッパは、後退操作部との当接端に、後退操作部で基部周方向に係合して基部まわりでのまわり止めをする切り欠き形状部が設けられていることを特徴とすることができる。
【0011】
このような構成では、上記に加え、さらに、ストッパを本体の基部に装着して、基部のまわりで基端側引っ掛かり部と係止ピンの後退操作部との間で突っ張らせ、係止ピンの後退を阻止するのに、その切り欠き形状部を係止ピンの後退操作部に基部周方向に係合させることで、ストッパは基部まわりに回り止めされて、外力を受けることがあっても周方向に位置ずれしない。
【0012】
上記において、さらに、係止ピンの後退操作部は、ストッパの当接端と基部との間に挟み込むように係合する切り欠き部を有していることを特徴とすることができる。
このような構成では、上記に加え、さらに、ストッパを本体の基部に装着して、基部のまわりで基端側引っ掛かり部と係止ピンの後退操作部との間で突っ張り、係止ピンの後退を阻止するのに、ストッパは、係止ピンの後退操作部との係合によって本体の基部への装着位置から浮くのを防止される。
【0013】
上記において、さらに、ストッパは、動物用連結具の一部と索条で連結されていることを特徴とすることができる。
【0014】
このような構成では、上記に加え、さらに、ストッパが動物用連結具の一部に連結されていることで不用意に単独部品となるのを防止されるし、連結が索条によるので、ストッパを本体の基部に着脱するのを邪魔されない。
【0015】
上記において、さらに、ストッパは、着脱口の開放縁の一方の一部からの張り出し部にて索条と連結されていることを特徴とすることができる。
【0016】
このような構成では、上記に加え、さらに、ストッパが本体の基部への着脱域から外れて動物用連結具に連結されるので、動物用連結具との連結部がストッパの本体の基部への着脱によって特別な外力を受けないし、ストッパの索条との連結部が着脱口の開放縁の一方の一部からの張り出し部であることにより、索条との連結部がストッパの本体の基部への着脱を邪魔することはない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の動物用連結具によれば、動物用連結具に組み合わせたストッパを本体の基部に装着するだけで、係止ピンの後退操作部への不用意な外力による後退を阻止して連結が外れるのを防止し、動物の引き連れ状態、係留状態を維持できる。また、ストッパを本体から取り外せば係止ピンを後退操作して連結を解除できる。また、ストッパは本体の基部に対し側方から弾性的に簡単に着脱できるので使用しやすく、かつ通常の形態、構造の動物用連結具に簡単なストッパを組み合わせるだけで安価に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態につき図面に基づいて説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載を限定するものではない。
【0019】
図1〜図3に本発明の実施の形態に係る動物用連結具1の一例が示されている。この動物用連結具1は、基端環2に連結された基部3およびこの基部3から延びたフック部4を備えた本体10と、基部3内で図示しないばねで付勢されて突出しフック部4の先端4aに圧接してフック部4の開放部4bを閉じる閉じ習性を持ち、基部3の側方に後退操作部5aが突出している係止ピン5とを備えている。これに併せ、弾性部材よりなり基部3にその側方から弾性的に着脱できるよう過半円弧断面部を有して着脱口6aが側方に開放し、基部3への図2、図3で示す装着状態では後退操作部5aとこれより後退操作側にある基部3上の引っ掛かり部3aの間で突っ張って後退操作部5aを介し係止ピン5の後退を阻止するストッパ6をも組み合わせ備えている。
【0020】
このように、通常の形態、構造の動物用連結具1は、これに組み合わせ備えたストッパ6を、その弾性を有した下半円弧断面部を利用して本体10の基部3に図1に示す側方より、図2、図3に示すように弾性的に嵌め付けるだけで、ストッパ6が基部3のまわりで基端側引っ掛かり部3aと係止ピン5の後退操作部5aとの間で突っ張るため、不用意な外力によって係止ピン5が後退操作部5aを伴い後退され、あるいは後退操作部5aによって後退されるのを阻止する作用が得られる。また、ストッパ6は基部3から側方へ弾性を利用して簡単に取り外すことができ、取り外し状態では前記突っ張りが解除されるので係止ピン5を後退操作部5aにて後退操作してフック部4の開放部4bを開き、フック部4を図4に示すように首輪21のD環などの連結部22や図示しない係留具に連結したり、それらの連結状態を解除したりすることができる。
【0021】
この結果、動物用連結具1に組み合わせ備えたストッパ6本体10の基部3に装着するだけで、係止ピン5の後退操作部5aなどへの不用意な外力による後退を阻止して連結が外れるのを防止し、動物の引き連れ状態、係留状態を維持できる。また、ストッパ6を本体10から取り外せば係止ピン5を後退操作して連結を解除できる。また、ストッパ6は本体10の基部3に対し図1に矢印で示すように側方から弾性的に簡単に着脱できるので使用しやすく、かつ通常の形態、構造の動物用連結具1に簡単なストッパ6を組み合わせ備えるだけで安価に実現できる。
【0022】
ここで、フック部4に繋がる基部3は円柱形であることに対応して、ストッパ6はその外径にほぼ同等の内径を持った下半円弧断面に形成して基部3の直径よりも小さな幅の着脱口6aを有したものとしてある。これにより、ストッパ6は、基部3に対しその側方から基部3の側周部で着脱口6aを弾性的に拡幅しながら装着することができ、着脱口6aが基部3の直径部を越えた時点からストッパ6は着脱口6aの初期幅までの弾性的な復帰を伴い装着状態に嵌り込み基部3を包み持つ状態となって装着状態に安定し、不用意に脱落しないようになる。また、逆にストッパ6は、基部3の側方へ着脱口6aの弾性的な基部3の直径部を取り外し側に越えるまでの一時的拡幅を伴い取り外せるようにしている。
【0023】
この着脱に必要なストッパ6の弾性は、弾性を有する樹脂や金属板でストッパ6を形成すれば簡単に得られるが、場合によっては、ヒンジまわりのばね付勢により閉じ習性を付与したヒンジ連結物とすることもできる。本実施の形態では樹脂成形品として軽量、安全、安価なものとしてあり、ソフトアクリル樹脂などとすれば環境にやさしいものともなる。着脱口6aの開口幅は基部3の直径に対し小さいほど脱落が防止しやすい半面着脱がし難くなる関係にあるが、ストッパ6の弾性復元力との兼ね合いで適正設計ができる。
【0024】
また、基部3上の引っ掛かり部3aは、どのようにも設けられるが、図示例では、基部3の基端環2が連結される基端に通常形成されるフランジ部を利用したものとしてある。従って、特別な改良の必要はない。
【0025】
さらに、ストッパ6には、図1〜図3に示すように、後退操作部5aとの当接端6bに、後退操作部5aで基部3周方向に係合して基部3まわりでのまわり止めをする切り欠き形状部6cが設けられている。これにより、ストッパ6を本体10の基部3に装着して、基部3のまわりで基端側引っ掛かり部3aと係止ピン5の後退操作部5aとの間で突っ張らせ、係止ピン5の後退を阻止するのに、その切り欠き形状部6cを係止ピン5の構体操作部5aに基部3周方向に係合させることで、ストッパ6は基部3まわりに回り止めされて、外力を受けることがあっても周方向に位置ずれしたり、ストッパ機能が不良となったり、脱落するようなことはない。
【0026】
また、係止ピン5の後退操作部5aは、図1〜図3に示すようにストッパ6の当接端6bと基部3との間に挟み込むように係合する切り欠き部5bを有したものとしている。これにより、ストッパ6本体10の基部3に装着して、基部3のまわりで基端側引っ掛かり部3aと係止ピン5の後退操作部5aとの間で突っ張り、係止ピン5の後退を阻止するのに、ストッパ6は、係止ピン5の後退操作部5aとの係合によって本体10の基部3への装着位置から浮くのを防止される。この結果、ストッパ6に取り外し方向の外力が働いても後退操作部5aに押さえ力にてそれによく抗し脱落するのを防止することができる。
【0027】
図示する例では、切り欠き形状部6cおよび切り欠き部5bを併用しているので、ストッパ6の装着状態への安定性がより高まるし、それらがストッパ6の当接端6bの周方向一か所で働かせていることも装着保持力が分散することによる不安定性を回避して、ストッパ6の装着の安定性をさらに高めている。
【0028】
また、ストッパ6は、図1〜図3に示すように、動物用連結具1の一部と索条23で連結されたものとしている。このように、ストッパ6が動物用連結具1の一部に連結されていることで不用意に単独部品となるのを防止されるので紛失しにくくなるし、連結が索条23によるので、屈曲性を利用してストッパ6を本体10の基部3に着脱するのを邪魔されないので使用しやすいものとなる。このような索条は図示する例ではボールチェンとしているが、引っ張りに強い既に知られる樹脂や紐条などその他のものでもよい。さらに、この索条23との連結は、ストッパ6の着脱口6aの開放縁の一方の一部からの張り出し部6dにて連結穴6fを利用してなされている。これにより、ストッパ6が本体10の基部3への着脱域から外れて動物用連結具1に連結されるので、動物用連結具1との連結部がストッパ6の本体10の基部3への着脱によって特別な外力を受けないし、ストッパ6の索条23との連結部が着脱口6aの開放縁の一方の一部からの張り出し部6cであることにより、索条23との連結部がストッパ6の本体10の基部3への着脱を邪魔することはない。
【0029】
しかも、張り出し部6cは、着脱口6aの一方の開放縁の途中位置にあることによって、ストッパ6の基端側引っ掛かり部3aおよび後退操作部5aへのツッパリ位置双方から離れて位置し、前記突っ張りないしは突っ張りの解除を伴うストッパ6の基部3への着脱操作の邪魔になることはない。さらに、ストッパ6の着脱口6aは基部3の半径部を装着側に越える位置から基部3の側周面から離れていく状態で開放されることで、ストッパ6が反着脱口6a側から着脱口6aに至るまで基部3の側周に密着する場合よりも、同等の開放幅にて着脱抵抗が小さくなり、脱落防止機能が同じで着脱がより容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る動物用連結具の1つの例を示す斜視図である。
【図2】図1の動物用連結具のストッパ装着状態を示す正面図である。
【図3】図1の動物用連結具のストッパ装着状態を示す背面面図である。
【図4】図1の動物用連結具の首輪との連結状態を示す正面図である。
【図5】従来の動物用連結具の首輪との連結状態を示す斜視図である。
【図6】図5の従来の動物用連結具の不用意な外力によるフック部の日かき状態を示す斜視図である。
【図7】図5の従来の動物用連結具を利用した犬の係留状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 動物用連結具
2 基端環
3 基部
3a 引っ掛かり部
4 フック部
4a 先端部
4b 開放部
5 係止ピン
5a 後退操作部
5b 切り欠き部
6 ストッパ
6a 着脱口
6b 当接端
6c 切り欠き形状部
6d 張出し部
10 本体
21 首輪
22 連結部
23 索条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端環に連結された基部およびこの基部から延びたフック部を備えた本体と、基部内でばね付勢されて突出しフック部の先端に圧接してフック部の開放部を閉じる閉じ習性を持ち、基部の側方に後退操作部が突出している係止ピンとを備えた動物用の連結具において、
弾性部材よりなり基部にその側方から弾性的に着脱できるよう過半円弧断面部を有して着脱口が側方に開放し、基部への装着状態では後退操作部とこれより後退操作側にある基部上の引っ掛かり部の間で突っ張って後退操作部を介し係止ピンの後退を阻止するストッパを組み合わせ備えたことを特徴とする動物用連結具。
【請求項2】
ストッパは、後退操作部との当接端に、後退操作部で基部周方向に係合して基部まわりでのまわり止めをする切り欠き形状部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の動物用連結具。
【請求項3】
係止ピンの後退操作部は、ストッパの当接端と基部との間に挟み込むように係合する切り欠き部を有している請求項1、2のいずれか1項に記載の動物用連結具。
【請求項4】
ストッパは、動物用連結具の一部と索条で連結されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の動物用連結具。
【請求項5】
ストッパは、着脱口の開放縁の一方の一部からの張り出し部にて索条と連結されていることを特徴とする請求項1または2記載の動物用連結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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