説明

動物用連結具

【課題】部品の追加無しに、あるいは簡単に装着できる1つの部品の追加を伴って連結が不用意に外れるのを防止できる低コストなものとする。
【解決手段】基端環1に連結された基部2、基部2から延びたフック部3を備えた本体4と、基部2内でばね付勢されて突出しフック部3の先端に圧接してフック部3の開放部6を閉じる閉じ習性を持ち、ばね5に抗し基部2まわりにて後退操作する操作部7を有している係止ピン8と、を備え、操作部7は、基部2周壁のフック部3の開放部6側に設けられたスライド溝11を通じ係止ピン8外周から基部2外まわりに立ち上がった立ち上がり部8aから基部2外周に沿って周方向の一方または両方に延びるように形成したことにより、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として犬や猫などの動物の首輪、胴輪、係留具などに引き紐や係留紐を連結するのに用いられる動物用連結具に関し、主として首輪、胴輪、係留具に設けられたリングに着脱自在に連結して用いられる。
【背景技術】
【0002】
このような連結具は用途を問わず一般にナス環と呼ばれるものに属するが、動物用連結具は、特に、図7〜図9に示すように、基端環aに連結された基部b1およびこの基部b1から延びたフック部b2を備えた本体bと、基部b1内でばね付勢されて突出しフック部b2の先端b3に圧接してフック部b2の開放部b4を閉じる閉じ習性を持ち、基部b1の側方に後退操作部c1が突出している係止ピンcとを備えた基本構成を有している。このような動物用連結具kは、基端環aを引き紐の先端や図9に示す係留紐jの両端に連結して用いられる。係留紐jなどに連結された動物用連結具kは、係止ピンcを後退操作して開放部b4を開いた状態で、図9に示す動物に装着した首輪dや地中にアンカー部を打ち込むなどした係留具fに設けられている連結環g、hに引っ掛けた後、係止ピンcを後退操作から解放することで開放部b4を閉じ連結される。
【0003】
基端環aは通常本体bの基部b1に回転自在に連結されて、連結部に自由度を与えている。しかし、図7に示すように、フック部b2と連結環g、hとの連結部との間にそのような回転自在な自由度はなく、連結環g、h、特に首輪dに設けられた連結環gも首輪dに対し回転自在な自由度はない。これらの連結不自由や、動物の急な動きの変化などが原因して、動物用連結具kと連結環gなどとの連結部に拗れが発生し、この拗れ状態で動物用連結具kの係止ピンdの後退操作部c1に後退操作側への引っ掛かり力、押動力が不用意に働いて、図8に示すようにフック部b2の開放部b4が開かれフック部b2と連結環gなどとの連結が外れてしまうことがときとして生じる。ここで、図8は連結環gがフック部b2と首輪dのバックルd1との間で拗れて自由を失った状態で、張力が加わっているフック部b2の係止ピンcの後退操作部c1を後退操作側に押動力を及ぼしフック部d2の開放部d4を開いてしまった状態を示している。
【0004】
このような事態に対応するのに本出願人は、連結環gとフック部d2との間に中間リングを連結して連結自由度を高める提案を既にしている(特許文献1参照。)。また、動物用連結具自体の構造を改良する技術も既に知られている(例えば、特許文献2、3参照。)。特許文献2、3に開示の技術は、連結環gが拗れても動物用連結具kの係止ピンdの後退操作部c1に後退操作方向に引っ掛かったり、押動力を及ぼさないようにフック部d2および係止ピンcの形状や設置位置を改良している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−141205号公報
【特許文献2】特開2008−99630号公報
【特許文献3】特開2008−99631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1が開示する技術では、追加部品が連結リング1つであるが、それを両側の連結部と連結する2つの作業が必要なために、コスト上昇の原因になる。また、特許文献2、3が開示する技術では、成形や組み立てが困難な特殊製品となって高コストになる。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、部品の追加無しに、あるいは簡単に装着できる1つの部品の追加を伴って連結が不用意に外れるのを防止できる低コストな動物用連結具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
基端環に連結された基部およびこの基部から延びたフック部を備えた本体と、基部内でばね付勢されて突出しフック部の先端に圧接してフック部の開放部を閉じる閉じ習性を持ち、ばねに抗し基部まわりにて後退操作する操作部を有している係止ピンと、を備えた動物用の連結具において、操作部は、基部周壁の、フック部の開放部側に設けられたスライド溝を通じ係止ピン外周から基部外まわりに立ち上がった立ち上がり部から基部外周に沿って周方向の一方または両方に延びるように形成したことを1つの特徴としている。
【0009】
このような構成では、本体と、係止ピンとを備えた通常の形態の動物用連結具において、係止ピンに備える操作部を、本体の基部周壁の、フック部の開放部側に設けられたスライド溝を通じ係止ピン外周から基部外まわりに立ち上がった立ち上がり部から基部外周に沿って周方向の一方または両方に延びる形態に改良して、操作部が基部まわりで嵩張らなくなり、その分、連結相手との間の拗れによっても連結相手と引っ掛かり合いにくくなる。しかも、操作部は基部まわりで、嵩張りを増すことなく広い背面域、側縁域、フック側先端厚み域を得て後退操作されやすくなるし、基部周壁のスライド溝によってフック部の開放部側に位置する立ち上がり部から、基部周方向の一方または両側に延びて、親指と人差し指の谷間にフック部の開放部側またはこれと反対の背部側を向けて基端環側連結部を握った手の親指およびまたは人差し指によって、フック側先端厚み域、背面域、側縁域のいずれかをフック部の開放部側または背部側からのアクセスにて後退操作して、そのまま反アクセス側への手首の内振り挙動または外振り挙動によりフック部の連結相手への連結、連結解除が行える。
【0010】
上記において、さらに、操作部は、基部外周の窪み部に嵌り込んでいるものとすることができる。このような構成では、操作部が基部外周の窪み部への嵌り込みによって基部外周に突出しなくなる度合いに応じて連結相手との間の拗れによっても連結相手とより引っ掛かりにくくなる上、操作部の背面域が基部の窪み部両側の外周と面一として引っ掛かり回避に有利にしても厚み域が基部のフック側端部への開放、基部のフック側端部に至っての開放により手指を引っ掛けての後退操作が難なく行える。これには、基部外周のフック部の開放部側ほぼ半周域に沿う程度に操作部を延ばしているのが好適である。もっとも、操作部の背面域に滑り止めの形状や面状態を持たせて後退操作させることもできる。
【0011】
上記において、さらに、基部の操作部が後退操作される側の外回りに周方向に移動できるように嵌め合わせたストッパ部材を備え、ストッパ部材は、周方向のロック位置で基部端鍔部と操作部との間で突っ張り操作部を介して係止ピンを閉じ位置にロックして後退を阻止するストッパ部を有し、ロック位置から周方向に非ロック位置への移動により係止ピンのロックを解除するものとすることができる。このような構成では、上記に加え、さらに、ストッパ部材は基部まわりの移動位置によって着脱の必要なく、操作部を介し係止ピンを閉じ位置にロックして後退操作を阻止し、またロックを解除するので、ストッパ部材は不用意に脱落しない装着構造を採用することができる。
【0012】
上記において、さらに、基端環は、連結端の中心の連結穴で基部の連結軸と軸線まわりに回転できるように連結され、連結端は、特定の回転位置で操作部の後退側端部と対向して操作部の後退を許容し、それ以外の回転位置では操作部と当接して係止ピンを閉じ位置にロックして後退を阻止する大きさ及び形状を有したものとすることができる。このような構成では、上記に加え、さらに、基端環が、人為的には容易になされ、引っ掛かり難い操作部に万一にも不用意な後退操作力が働き、かつ非人為的にはそうなる確率が極めて低い、基部との特定の相対回転位置にあるときに、操作部の後退操作を許容し、それ以外の回転位置では係止ピンを閉じ位置にロックして後退操作を阻止するので、付帯部材なしに操作部の不用意な後退操作を高い確率で阻止することができる。
【0013】
本発明の動物用連結具は、また、基端環に連結された基部およびこの基部から延びたフック部を備えた本体と、基部内でばね付勢されて突出しフック部の先端に圧接してフック部の開放部を閉じる閉じ習性を持ち、ばねに抗して後退操作する操作部が基部のまわりに臨出している係止ピンとを備えた動物用の連結具において、基端環は、連結端の中心の連結穴で基部の連結軸と軸線まわりに回転できるように連結され、連結端は、特定の回転位置で操作部の後退側端部と対向して操作部の後退を許容し、それ以外の回転位置では操作部と当接して係止ピンを閉じ位置にロックして後退を阻止する大きさ及び形状を有したことを別の特徴としている。
【0014】
このような構成では、本体と、係止ピンとを備えた通常の形態の動物用連結具において、基端環の基部との回転自在な連結端を、特定の回転位置で操作部の後退側端部と対向して操作部の後退を許容し、それ以外の回転位置では操作部と当接して係止ピンを閉じ位置にロックして後退を阻止する大きさ及び形状を有した形態に改良して、基端環が、人為的には容易になされ、操作部に連結相手が万一にも引っ掛かって不用意な後退操作力が働き、かつ非人為的にはそうなる確率が極めて低い、基部との特定の相対回転位置にあるときに、操作部の後退を許容し、それ以外の回転位置では閉じ位置にロックして後退を阻止するので、付帯部材なしに操作部の不用意な後退を高い確率で阻止することができる。
【発明の効果】
【0015】
係止ピンに備える操作部を、係止ピン外周からの立ち上がり部から基部外周に沿って周方向の一方または両方に延びる形態に改良するだけの簡単かつ安価な構造にて、操作部が基部まわりで嵩張らなくなり、その分、連結相手との間の拗れによっても連結相手と引っ掛かり合いにくくなる。しかも、操作部は基部まわりで、嵩張りを増すことなく広い背面域、厚み域を得て後退操作されやすくなるし、基部周壁のスライド溝によってフック部の開放部側に位置する立ち上がり部から、基部周方向の一方または両側に延びて、親指と人差し指の谷間にフック部の開放部側またはこれと反対の背部側を向けて基端環側連結部を握った手の親指およびまたは人差し指によって、フック側先端厚み域、背面域、側縁域のいずれかをフック部の開放部側または背部側からのアクセスにて後退操作し、そのまま、つまり後退操作力を働かせているアクセス側から反アクセス側への手首の内振り挙動または外振り挙動によりフック部の連結相手への連結、連結解除が容易かつ迅速に行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態にかかる動物用連結具の第1の具体例を、開放部の閉じ状態(a)と開き状態(b)とで示す斜視図、正面図、側面図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる動物用連結具の第3の具体例を、開放部の閉じ状態(a)で示す斜視図、正面図、側面図、(b)は開放部の少し開いた状態を示す部分斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる動物用連結具の第4の具体例を、開放部の閉じ状態で示す斜視図、正面図、側面図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる動物用連結具の第2の具体例を、開放部の閉じ状態(a)と開き状態(b)とで示す斜視図、正面図、側面図、(c)はストッパの斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる動物用連結具の第5の具体例を、開放部の閉じ状態(a)と開き状態(b)とで示す正面図、側面図、(c)は基端環とストッパとのロック解除状態の関係を示す平面図、(d)は基端環とストッパとのロック状態の関係を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかる動物用連結具の第6の具体例を、開放部の閉じ状態(a)で示す斜視図、正面図、側面図、開放部の開き状態(b)で示す正面図、側面図である。
【図7】従来の動物用連結具によりリードと首輪との連結例を示す斜視図である。
【図8】図7の例の連結状態での連結具が連結部の拗れにより開き状態になった状態を示す斜視図である。
【図9】従来の動物用連結具を係留に用いた連結例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態につき図面に基づいて説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載を限定するものではない。
【0018】
図1に示す第1の例の連結具100、図2に示す第2の例の連結具200、図3に示す例の連結具300、図4に示す例の連結具400、図5に示す例の連結具500、図6に示す例の連結具600は、いずれも、金属製の基端環1に連結された基部2およびこの基部2から延びたフック部3を備えた金属製の本体4と、基部2内で図1(a)で代表して示すばね5で付勢されて突出しフック部3の先端3aに圧接してフック部3の開放部6を閉じる閉じ習性を持ち、ばね5に抗し基部2まわりにて後退操作する操作部7を有している金属製の係止ピン8と、を備えている。これにより、連結具100、200、300、400、500、600のそれぞれは、操作部7によって係止ピン8を図1(a)、図2(a)、図3、図4(a)、図5(a)、図6(a)に示す閉じ位置から後退操作させることで、フック部3の開放部6を図1(b)、図2(b)、図4(b)、図5(b)、図6(b)に示すように開くことができ、連結相手に対して着脱できる状態にすることができる。操作部7を後退操作から解放すると係止ピン8はばね5によって閉じ位置に復帰させられて、フック部3の先端3aに当接するので、フック部3の解放部を閉じ、連結時には連結状態を維持する状態になる。
【0019】
しかし、連結具100、200、300、400、500、600を用いた犬など動物の引き連れや係留において、動物が驚いた場合の異常動作などで連結部に拗れが生じると、操作部7に不用意な後退操作力が働き、フック部3の開放部6が開いて連結が外れてしまうことが稀にある。
【0020】
これに対応するのに、図1に示す連結具100は、操作部7を、基部2周壁の、フック部3の開放部6側に設けられたスライド溝11を通じ係止ピン8外周から基部2外まわりに立ち上がった図1(a)で代表して示す立ち上がり部8aから基部2外周に沿って周方向の一方または両方に延びるように形成している。このように、本体4と、係止ピン8とを備えた通常の形態の動物用連結具100において、係止ピン8に備える操作部7を、本体4の基部2周壁の、フック部3の開放部6側に設けられたスライド溝11を通じ係止ピン8外周から基部2外まわりに立ち上がった立ち上がり部8aから基部2外周に沿って周方向の一方または両方に延びる形態に改良して、操作部7が基部2まわりで嵩張らなくなり、その分、首輪のD環や係留具の連結リングなど連結相手との間の拗れによっても連結相手と引っ掛かり合いにくくなる。
【0021】
しかも、操作部7は基部2まわりで、嵩張りを増すことなく広い背面域7a、側縁域7b、フック側先端厚み域7cを得て後退操作されやすくなるし、基部2周壁のスライド溝11によってフック部3の開放部6側に位置する立ち上がり部8aから、基部2周方向の一方または両側に延びて、親指と人差し指の谷間にフック部3の開放部6側またはこれと反対の背部側を向けて基端環1側連結部を握った手の親指およびまたは人差し指によって、フック側先端厚み域7c、背面域7a、側縁域7bのいずれかをフック部3の開放部6側または背部側からのアクセスにて後退操作して、そのまま反アクセス側への手首の内振り(手の平側)挙動または外振り(手の甲側)挙動によりフック部3の連結相手への連結、連結解除が行える。
【0022】
この結果、係止ピン8に備える操作部7を、係止ピン8外周からの立ち上がり部8aから基部2外周に沿って周方向の一方または両方に延びる形態に改良するだけの簡単かつ安価な構造にて、操作部7が基部2まわりで嵩張らなくなり、その分、連結相手との間の拗れによっても連結相手と引っ掛かり合いにくくなり、不用意に開かれるのを防止しやすい。しかも、操作部7は基部2まわりで、嵩張りを増すことなく広い背面域7a、側縁域7b、厚み域7cを得て後退操作されやすくなるし、基部2周壁のスライド溝1によってフック部3の開放部6側に位置する立ち上がり部8aから、基部2周方向の一方または両側に延びて、親指と人差し指の谷間にフック部3の開放部6側またはこれと反対の背部側を向けて基端環1側連結部を握った手の親指およびまたは人差し指によって、フック側先端厚み域7c、背面域7a、側縁域7bのいずれかをフック部3の開放部6側または背部側からのアクセスにて後退操作し、そのまま、つまり後退操作力を働かせているアクセス側から反アクセス側への手首の内振り挙動または外振り挙動によりフック部3の連結相手への連結、連結解除が容易かつ迅速に行える。
【0023】
操作具合についてさらに詳述すると、操作部7が立ち上がり部8aから基部2の周方向一方側に延びている場合、基端環1側連結部を握った手の親指および人差し指のうち、対応する側の指を、操作部7の背面域7a、側縁域7b、フック側端部厚み域7cのいずれかを操作して後退操作することになる。この場合、背面域7aに図示するような幅方向に延びる滑り止め溝12や凸条、凹凸、ローレットなどを施しておけば、背面域7aに指を押し当てるだけで、比較的強いばね5に負けずに容易かつ確実に後退操作させられる。また、溝12などによる滑り止め効果は、それが側縁域7bに及んでいることを条件に側縁域7bに手を掛けて後退操作する場合にも有効となる。フック側端部厚み域7cはそれ単独でも指の引っ掛かりが十分で後退操作しやすいが、滑り止めの効いた背面域7aと共用することでさらに操作しやすくなる。側縁域7bの操作においても背面域7aとの共用が図れる。また、操作部7が立ち上がり部8aから基部2の周方向両側に延びている場合、基端環1側連結部を握った手の親指および人差し指の双方で、操作部7の背面域7aおよび側縁域7bを左右両側からつまむようにして後退操作することができるし、フック側端部厚み域7cに左右両側からつまむような状態で掛けて後退操作することができる。
【0024】
特に、これら、親指および人差し指による両側からのつまみ挙動は、操作部7に左右バランスよく操作力を働かせて後退操作させられるだけでなく、手で握った基端環1側連結部を中心とした本体4の向きを左右方向で安定させる働きをし、しかも、後退操作で開放部6が開いたフック部3を連結相手に対して連結し、また連結を解除させる力の作用点にもなるので、基端環1側連結部を握って後の後退操作から連結または連結解除に至る動作を円滑かつ迅速に達成することができる。
【0025】
図2に示す第2の例の連結具200は、第1の例の場合に加え、さらに、操作部7は、基部2外周の窪み部13に嵌り込んだものとしている。これにより操作部7が基部2外周の窪み部13への嵌り込みによって基部2外周に突出しなくなる度合いに応じて連結相手との間の拗れによっても連結相手とより引っ掛かりにくくなる上、操作部7の背面域7aが基部2の窪み部13両側の外周と図3(a)に示すように面一として引っ掛かり回避に有利にしてもフック側先端厚み域7cが基部2のフック側端部2aへの開放、特に、基部2のフック側端部2aに至っての開放により、手指を引っ掛けての後退操作が難なく行える。これには、図示例のように基部2のフック部3の開放部6側ほぼ半周域に沿う程度に操作部7を延ばしているのが好適である。もっとも、操作部7の背面域7aに滑り止めの溝12など持たせて後退操作させることもできる。なお、図示例では、係止ピン8およびフック部3の当接端面間に内側から外側に向け途中に段差を持つZ型の割線14を持つようにして、連結相手が開放部6をすり抜けにくくしている。
【0026】
図3に示す第3の例の連結具300は、第2の連結具200の窪み部13が、基部2のフック側端部2a上記に開放しているのに代えて、フック側端部2aの手前まで窪ませた窪み部15を形成している。これにより、操作部7はそのフック側先端厚み域7cもフック部3側に開放されなくなることと、フック部3から遠ざかることとで、連結相手との間の拗れによっても後退操作力を一層受け難くなり、単純構造のままで不用意に開かれるのを一層回避しやすいものとなる。操作部7のフック部3からの遠ざかりによる連結相手の引っ掛かり防止効果は、他の例の場合にも有効である。
【0027】
図4に示す第4の連結具400は、第1の例の連結具100の場合に加え、基部2の操作部7が後退操作される側の外回りに周方向に移動できるように嵌め合わせた図4(c)に示すようなストッパ部材21を備えている。このストッパ部材21は、図aに示す周方向のロック位置で基部端鍔部2bと操作部7との間で突っ張り、操作部7を介して係止ピン8を閉じ位置にロックして後退を阻止するストッパ部21aを有し、ロック位置から周方向に図4(b)に示す、ストッパ部21aが操作部7の後退路から退避する非ロック位置への移動により係止ピン8のロックを解除するようにしている。これにより、ストッパ部材21は基部2まわりの移動位置によって着脱の必要なく、操作部7を介し係止ピン8を閉じ位置にロックして後退操作を阻止し、またロックを解除するので、ストッパ部材21は不用意に脱落しない装着構造を採用することができる。
【0028】
ストッパ部材21は、金属や樹脂よりなり、基部2の基部端鍔部2bに当接して基部2からの抜けを防止されるリング部21bの周方向一部からフック部2側にストッパ部21aが延出するように一体形成してある。リング部21bは周方向一部に開放部21cを形成し、この開放部21cを弾性的に開くことにより基部2に軸直角方向から嵌め合わせた後、開き操作から解放するとリング部21bが弾性復帰するので、基部2に後付けでき、開放部21cが周方向の1/4以下として不用意な脱落を防止することができる。開放部21cは幅が小さいほど外れにくく、大きいほど装着が楽になる。
【0029】
図5に示す例の連結具500は、係止ピン8の操作部7を従来からの左右に広がりのない縦長なもので、係止ピン8の閉じ位置で後退側端部7dが、基端環1の連結端1aに当接又は近接して位置するようにしてあり、連結端1aは、図5(c)(d)に示す中心の連結穴1bで基部2の連結軸2cと軸線まわりに回転できるように連結され、連結端1aは、図5(b)、図5(c)に示す特定の回転位置で、操作部7の後退側端部7dと対向して、図5(c)に示すように操作部7の、図5(a)に示す閉じ位置からの後退を許容し、それ以外の回転位置では図5(a)、図5(d)に示すように操作部7と当接して係止ピン8を閉じ位置にロックして後退を阻止する大きさ及び形状を有したものとしている。これにより、操作部7を従来の場合よりも長くし、連結端1aの形態を改良するだけの簡単かつ安価な構造にて、基端環1が、人為的には容易になされ、操作部7に万一にも不用意な後退操作力が働き、かつ非人為的にはそうなる確率が極めて低い、基部2との特定の相対回転位置にあるときにだけ、操作部7の後退操作を許容し、それ以外の回転位置では係止ピン4を閉じ位置にロックして後退操作を阻止するので、付帯部材なしに操作部7の不用意な後退操作を阻止しやすい。
【0030】
このための連結端1aの形態は自由に設定できるが、図示例では、基端環1の連結端1aは、外周部が操作部7の後退側端部7dと軸線方向に対向して当接し合える外形を持った盤状部に形成して、その外周の特定位置、具体的には直径線上2箇所、さらに詳しくは基端環1の扁平な方向に直交する直径線上2箇所に、操作部7の後退側端部7dとの当接を図5(b)に示すように避けて操作部7の後退操作を許容する切り欠き部31を形成してある。直交に特段の意味はないが、連結端1aの周方向で切り欠き部31が基端環1との繋がり部を避けた嵩低いもので、かつ繋がり部は邪魔しない単純形態とし、繋がり部に切り欠き部31が及んでこれを避けるための複雑な迂回形態になるのを防止している。
【0031】
図6に示す例の連結具600は、第1〜第4に示す例の連結具100、200、300、400が採用している操作部7、つまり係止ピン8からの立ち上がり部8aから基部2の外周に沿って周方向の一方または両側に延びる操作部7を有したものにおいて、第5の例の連結具500におけるロック技術を採用している。さらに、連結具500の実施例レベルの操作部7と切り欠き部31の関係は実質的に変わらない。しかし、操作部7は、立ち上がり部8aに対し左右のほか上下、特に下側への広がりが大きい図1、図4、図5の例の連結具100、400、500の例の場合と同様な形態のものを採用しているが、基部2の基端鍔2bに当接させて係止ピン8の閉じ位置へのロックを図るには、さらに下方に長くする必要がある。
【0032】
そこで、本例では、操作部7の閉じ位置を、基部2のフック側端部2aから、図3に示す例の連結具300の場合よりもさらに下げて、基端鍔2bと当接するようにしてある。これにより、操作部7が上下に徒に長くならないし、基部2のフック側端部2aから大きく遠ざかった分だけ、連結相手と拗れた場合でも後退操作力をさらに受けにくくなり、ロック機能と併せ、不用意な外れを防止する機能が一層高まる。
【0033】
また、操作部7を上下方向中途部から下端の後退側端部7dに掛けて先細り形状とし、これに適合する形状の切り欠き部31との周方向の小さな範囲での嵌り合いによって特定の位置での操作部7の後退操作を許容できるようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、一般にナス環と称される動物用の連結具に実用して、連結相手との間に拗れが生じても、係止ピンの操作部に後退操作力が及び難くするか、及んでも係止ピンが後退しないようにして、不用意に連結が外れないようにできる。
【符号の説明】
【0035】
1 基端環状
1a 連結端部
1b 連結穴
2 基部
2a フック側端部
2b 基部端鍔部
3 フック部
4 本体
5 ばね
6 開放部
7 操作部
7a 背面域
7b 側縁域
7c フック側端部厚み域
7d 後退側端部
8 係止ピン
8a 立ち上がり部
11 スライド溝
12 滑り止め溝
13、15 窪み部
14 割線
21 ストッパ部材
21a ストッパ部
21b リング部
31 切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端環に連結された基部およびこの基部から延びたフック部を備えた本体と、基部内でばね付勢されて突出しフック部の先端に圧接してフック部の開放部を閉じる閉じ習性を持ち、ばねに抗し基部まわりにて後退操作する操作部を有している係止ピンと、を備えた動物用の連結具において、操作部は、基部周壁の、フック部の開放部側に設けられたスライド溝を通じ係止ピン外周から基部外まわりに立ち上がった立ち上がり部から基部外周に沿って周方向の一方または両方に延びるように形成したことを特徴とする動物用連結具。
【請求項2】
操作部は、基部外周の窪み部に嵌り込んでいる請求項1に記載の動物用連結具。
【請求項3】
基端環は、連結端の中心の連結穴で基部の連結軸と軸線まわりに回転できるように連結され、連結端は、特定の回転位置で操作部の後退側端部と対向して操作部の後退を許容し、それ以外の回転位置では操作部と当接して係止ピンを閉じ位置にロックして後退を阻止する大きさ及び形状を有した請求項1、2のいずれか1項に記載の動物用連結具。
【請求項4】
基端環に連結された基部およびこの基部から延びたフック部を備えた本体と、基部内でばね付勢されて突出しフック部の先端に圧接してフック部の開放部を閉じる閉じ習性を持ち、ばねに抗して後退操作する操作部が基部のまわりに臨出している係止ピンとを備えた動物用の連結具において、
基端環は、連結端の中心の連結穴で基部の連結軸と軸線まわりに回転できるように連結され、連結端は、特定の回転位置で操作部の後退側端部と対向して操作部の後退を許容し、それ以外の回転位置では操作部と当接して係止ピンを閉じ位置にロックして後退を阻止する大きさ及び形状を有したことを特徴とする動物用連結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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