説明

動物用飼料

【課題】茶滓を利用して、安価に製造でき、家畜の整腸および肥育に寄与する動物用飼料を得る。
【解決手段】水分を含んだ茶滓を破砕してペースト状にした茶滓ペーストと、液体飼料とを混合して液状の動物用飼料とする。液体飼料としては、でんぷん等を乳酸菌により乳酸発酵させたものを用いることが好ましい。液状の動物用飼料は家畜に吸収されやすく、茶滓ペーストに含まれる茶カテキン類が家畜に摂取されることにより、家畜の腸内環境を改善し糞尿の臭気低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛、豚、および鶏等の動物用飼料に関し、特に茶滓を利用した動物用飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、牛、豚、および鶏等の家畜に与える動物用飼料として、茶滓を含有する飼料が知られている。茶滓は、茶葉から茶飲料を抽出した後に生じる抽出残渣であり、茶カテキンを含むため、茶滓を飼料に含ませることにより、家畜の整腸作用を促進する効果や糞尿臭の低減効果を有する飼料を得ることができる。
【0003】
このような茶滓を含有する飼料として、例えば、茶滓を乾燥させた乾燥粉砕物を飼料原体とする発明が開示されている(特許文献1)。特許文献1によれば、茶滓を乾燥させて粉砕した乾燥物であって2〜5mg/100mgのカテキンを含む乾燥茶滓を飼料原体とすることで、苦味や渋味を抑え、家畜が抵抗なく食する飼料を得ることができる。
【0004】
しかし、特許文献1では茶滓を乾燥させて粉砕するため、含水率の高い茶滓を脱水および乾燥させる必要がある。また、乾燥茶滓を家畜に吸収されやすくするためには、乾燥させた茶滓を粒径500μm程度となるように細かく粉砕する必要もある。このため特許文献1の発明では、飼料の製造コストの増大を招く。
【特許文献1】特開2002−360185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来技術に対し、安価に製造できる動物用の飼料を提供することを目的とする。本発明はまた、家畜の腸内環境を改善して糞尿臭の低減を図ることができる飼料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、茶滓を脱水せずに湿潤状態のまま破砕して流動性のあるペースト状とし、このペースト状の茶滓を液体飼料と混合して液状の動物用飼料を得る。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0007】
(1) 水分を含む茶滓を破砕して得られる茶滓ペーストと、液体飼料と、を含む動物用飼料。
【0008】
(2) 前記茶滓ペーストの固形分濃度が5〜12重量%である(1)に記載の動物用飼料。
【0009】
(3) 前記液体飼料10〜30容量部に対して、前記茶滓ペーストが1容量部含まれる(1)または(2)に記載の動物用飼料。
【0010】
茶滓は、水分を含んだ状態で破砕した茶滓ペーストとして液体飼料と混合し、液状の動物用飼料とする(上記(1))。液状の動物用飼料は流動性が高く、茶滓ペーストの分散性がよく、茶滓が家畜に吸収されやすい。茶滓ペーストには茶葉に由来する茶カテキン類が含まれていることから、茶滓ペーストを含む液状の動物用飼料は家畜の腸内で容易に吸収され、家畜の腸内環境を良好に維持して糞尿臭を抑制し、また家畜の肥育を促進する。
【0011】
液体飼料としては、廃牛乳、果実滓、豆腐滓、でんぷん、および米糠等を乳酸発酵させて安定化させた乳酸系の液体飼料を用いることが好ましい。乳酸系の液体飼料には乳酸菌や乳酸が含まれるため、本発明に係る飼料を与えた家畜の腸内で乳酸菌を優占させて糞尿の悪臭を低減する効果を高めることができる。
【0012】
茶滓ペーストは、水分を含んだ状態の茶滓をカッターポンプや湿式ミル等で破砕することで得られる。茶滓は、茶滓ペーストに含まれる固形物の平均粒径が0.4〜200μm、特に25〜75μmとなるように破砕することが好ましい。茶滓の破砕は、茶飲料等の茶葉の抽出液と茶滓とが分離された直後に行う方が好ましいが、茶滓をある程度の期間、貯留した後に行なってもよい。
【0013】
茶葉から茶飲料等を抽出して得られる排出された直後の状態の茶滓は、75〜85重量%程度の水分を含むが、この茶滓をそのまま破砕することは困難である。また、茶滓ペーストの流動性を高め、液体飼料との混合性を高めるために、茶滓ペーストの固形物濃度は5〜12重量%、特に6〜8重量%であることが好ましい(上記(2))。そこで、茶滓の破砕に先立ち、茶滓の含水率が88〜95重量%となるように液体を添加して、茶滓を液体に浸漬した状態で破砕することが好ましい。
【0014】
茶滓ペーストは、液体飼料10〜30容量部に対し、1容量部の割合で混合することが好ましく、特に液体飼料11〜24容量部に対し、1容量部の割合とすることが好ましい(上記(3))。茶滓ペーストの割合が少ないと、家畜の整腸作用や飼料保存性向上等の作用が奏されない一方、茶滓ペーストの割合が多すぎると家畜等の嗜好性を阻害する。
【0015】
ここで、本明細書において「茶滓」とは、生茶葉または乾燥茶葉を原料とし、これらの茶葉を熱水または溶媒で処理し、飲料の製造や茶葉含有成分の抽出を行った後に生じる抽出残渣を意味する。茶滓は、茶カテキン類やテアフラビンなどの茶ポリフェノール類を1〜3重量%含み、かつ、カフェイン含有量が0.5重量%以下であることが好ましい。
【0016】
生茶葉を加工した乾燥茶葉の茶滓を用いる場合、乾燥茶葉としては、「緑茶」と総称される不発酵茶を用いてもよく、または発酵茶を用いてもよい。不発酵茶は、生茶葉を蒸した後、揉み加工を行なって乾燥させた「蒸製茶」と、生茶葉を高温の釜で炒って加工した「釜炒り製茶」とに大別される。蒸製茶には、煎茶、玉露、番茶などがある。また発酵茶には、ウーロン茶に代表される半発酵茶、紅茶に代表される強発酵茶、中国黒茶のような後発酵茶に大別される。これらの乾燥茶葉の中で、発酵茶には、テアフラビンなどのポリフェノール類が多く含まれるため、特に好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、液体飼料と茶滓ペーストとを混合することにより、茶滓に含まれる茶カテキン類の作用により、家畜の肥育および糞尿臭の低減に寄与する動物用飼料を安価に製造できる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態について詳細に説明する。
[実施例]
実施例として、緑茶(煎茶)を80℃の温水に浸漬して緑茶飲料を製造することにより生じた茶滓(含水率80重量%)を破砕した茶滓ペーストと液体飼料とを混合して液状の動物用飼料を得た。茶滓ペーストは、カッターポンプを備えた容器に前記茶滓を入れ、井水を添加することにより含水率を93重量%にした後、カッターポンプで破砕し、さらに湿式ミルで破砕して調製した。得られた茶滓ペーストは、固形物濃度が7重量%で固形物の平均粒径は50μmであった。前記茶滓ペースト5容量部を、液体飼料95容量部と混合して動物用飼料とした。液体飼料としては、パンくず、牛乳、果汁、および乳酸菌を混合したものを乳酸発酵させた乳酸系の液体飼料を用いた。
【0019】
前記の方法により得た動物用飼料を、生後3ヶ月のLW雑種豚(ランドレース種と大ヨークシャー種との交配による雑種)3頭に1日20kg給餌した。試験期間中、食餌状況を1日1回、目視観察し、体重を測定した。体重の測定は、試験開始前と試験開始から2週間後に行なった。また試験開始から2週間後に糞便1gを採取し、一般細菌、腸内細菌、および乳酸菌の菌数を測定した。さらに三点比較式臭袋法で糞便の臭気測定を行なった。
【0020】
[比較例1]
比較例1として、実施例に用いた液体飼料のみを与え、LW雑種豚を飼育して実施例と同じ測定を行なった。
【0021】
[比較例2]
比較例2として、茶滓を破砕した茶滓ペーストに代えて実施例の茶飲料製造前の緑茶に含水率を93重量%となるように井水を添加して破砕した緑茶ペーストを液体飼料に混合した動物用飼料を用い、実施例と同様の実験を行なった。比較例2については、糞便の菌数および臭気測定は行なわず、食餌状況の観察と体重の測定のみを行なった。
【0022】
[比較例3]
比較例3として、茶滓を破砕せずにそのまま液体飼料に添加した以外は実施例と同様の実験を行なった。比較例3については、糞便の菌数測定は行なわず、糞便の臭気測定と、食餌状況の観察、および体重測定を行なった。実施例と比較例1〜3について、表1に豚3頭の平均体重の変化を示す。
【0023】
【表1】

【0024】
実施例と比較例1については飼料の食べ残しは観察されず、表1に示すように体重の減少もなかった。しかし、茶滓に代えて緑茶の茶葉を用いた比較例2については飼料の食べ残しが観察され、表1に示すように体重が減少した。茶滓をペーストしなかった比較例3については、体重の減少はなかったが、茶滓の食べ残しが観察された。
【0025】
また、実施例と比較例1について、表2に3頭平均における一般細菌数、腸内細菌数、および乳酸菌数を示す。なお、菌数の測定は、採取した糞便サンプルを酸素吸収機能つきのサンプル保存用試験管に入れて冷蔵保存し、採取後24時間以内に生理食塩水で希釈し、以下に示す方法および培地で培養(36℃、48時間)して行なった。菌数は培地に出現したコロニーを測定することにより、CFU(Colony Forming Unit)として計数した。CFUは糞便1gあたりの個数として示す。なお、乳酸菌については、嫌気条件下で培養し、乳褐色のコロニーを形成したもののうち、グラム染色陽性かつカタラーゼ反応陰性を示す桿菌のみを計数対象とした。
【0026】
〔一般細菌〕標準寒天培地を用いた混釈平板培養法
〔腸内細菌〕マッコンキー寒天培地を用いた塗抹平板法
〔乳酸菌〕 BL培地を用いた塗抹平板法
【0027】
【表2】

【0028】
表2に示すように、実施例では一般細菌および腸内細菌の菌数が比較例1より低かった。一方で乳酸菌の菌数については実施例と比較例1とは同等であり、実施例について乳酸菌の優占度が高まったことが示唆された。この結果、糞便の臭気は実施例のものが比較例1および比較例3のものより低減されたことが確認された。なお、比較例1と比較例3とでは、糞便臭気は同等であった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、従来、廃棄物されていた茶滓の処理に利用でき、特に家畜の肥育および糞便の臭気低減効果がある動物用飼料の調製に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含む茶滓を破砕して得られる茶滓ペーストと、液体飼料と、を含む動物用飼料。
【請求項2】
前記茶滓ペーストの固形分濃度が5〜12重量%である請求項1に記載の動物用飼料。
【請求項3】
前記液体飼料10〜30容量部に対して、前記茶滓ペーストが1容量部含まれる請求項1または2に記載の動物用飼料。

【公開番号】特開2006−121942(P2006−121942A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312707(P2004−312707)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】