説明

動物飼育装置及び動物飼育ケージ

【課題】飼育室内への臭気の拡散防止を図るとともに動物の温熱感に悪影響を与えない良好な飼育環境を作り出し、かつ、動物飼育ケージの保守作業を簡略化し得る動物飼育装置及び動物飼育ケージを提供する。
【解決手段】この動物飼育装置10は、飼育される動物が載るように通気性部材から構成された平面底部Mを有する動物飼育ケージG1が設置される棚板を兼ねるチャンバ11と、チャンバに設けられた給気口12及び排気口13と、チャンバの上面15に設けられた開口17と、給気口から供給された空気が排気口から排出されるようにチャンバ内に空気流を形成する空気流形成手段と、を備え、動物飼育ケージがチャンバの開口に設置された状態で空気流が平面底部の通気性部材の下部に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物飼育ケージを棚板に設置するようにした動物飼育装置及び動物飼育ケージに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ等の小型の実験動物を飼育するための上面開放型の動物飼育ケージラックを設置する部屋においては、部屋に空気を供給し、ケージラックの後方から排気する方式がとられている。各動物飼育ケージの換気方式として、ケージの上部または側面から給気し、ケージの上部から排気する方式が一般的である。また、特許文献1のように、ケージの下部から給気し上部から排気する方式や、特許文献2のように、ケージの上部から給気しケージから空気を溢れ出させる方式がある。
【0003】
また、実験動物の飼育管理に関するガイドラインが非特許文献1に示されており、実験動物生産施設(飼育室)における環境条件の目標値の1つとして、気流速度が13−18cm/秒とされている。また、部屋の気流及び風速については次のような説明がある。「エ、気流および風速 動物室の気流方向は粉塵や空中細菌の移行に関係し、風速は動物の体熱放散に大きく影響する。また気流および風速は動物施設の静圧とも関係し、特に気流は室内を清浄に維持するための必須条件である。しかし気流速度は飼育される動物種、性、体重、生育度、活動状態等によって適正条件が異なると考えられ、基準値の設定には多くの基礎的研究が必要である。当面の対応としては動物の体感温度によって生理的影響が大きいので、室で一律に規制するだけでなく、日頃からケージの形態や空調吹き出し口との位置関係などに気を配り、動物にストレスを与えない配慮が必要である。」
【特許文献1】実開平7−39397号公報
【特許文献2】特開2000−116265号公報
【非特許文献1】「実験動物飼育管理ガイドライン」(社)日本実験動物協会(URL[http://jsla.lin.go.jp/guideline.html]平成20年11月25日検索)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケージの上部または側面から給気しケージの上部から排気する一般的方式の場合、ケージ内の空気をケージの上部から排気させると、ケージに流入した空気は、臭気発生源である床敷き表面を通過するだけとなって、床敷き下部の排泄物等の臭気発生源の臭気抑制には効率的ではなく、また、床敷きが尿等により湿潤すると、臭いの発生が助長されてしまうが、飼育室内への臭気の拡散を抑えるべく、さらに多くの空気をケージ内に流入させる必要が生じてしまう。このため、ケージ内の動物に大量の空気が当たってしまい、動物の温熱感に悪影響を及ぼし、かかる温熱感の悪影響に起因するストレスが動物に生じてしまう。
【0005】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、飼育室内への臭気の拡散防止を図るとともに動物の温熱感に悪影響を与えない良好な飼育環境を作り出すとともに、動物飼育ケージの保守作業を簡略化し得る動物飼育装置及び動物飼育ケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本実施形態による動物飼育装置は、飼育される動物が載るように通気性部材から構成された平面底部を有する動物飼育ケージが設置される棚板を兼ねるチャンバと、前記チャンバに設けられた給気口及び排気口と、前記チャンバの上面に設けられた開口と、前記給気口から供給された空気が前記排気口から排出されるように前記チャンバ内に空気流を形成する空気流形成手段と、を備え、前記動物飼育ケージが前記チャンバの開口に設置された状態で前記空気流が前記平面底部の通気性部材の下部に形成されることを特徴とする。
【0007】
この動物飼育装置によれば、動物飼育ケージが棚板としてのチャンバの開口に設置され空気流形成手段により空気流がチャンバ内に形成され、この空気流が動物飼育ケージの平面底部の通気性部材の下部にあるので、通気性部材に溜まる排泄物等の臭気発生源からの臭気を効率的に除去できるとともに、通気性部材から平面底部の上方に流れる空気は少なくなって、平面底部に載っている動物に対し空気流がさほど当たらないので、動物の温熱感に悪影響を与えない。これにより、温熱感の悪影響に起因する動物に対するストレスを未然に防止できる。また、空気流の通路を内部に形成するチャンバは、動物飼育ケージを設置するための棚板を兼ねるので、動物飼育ケージの保守作業を簡略化することができる。
【0008】
なお、空気流形成手段は、チャンバの排気口に連通した排気ダクトと、排気ダクトに連結された排気ファン等の排気手段と、を備え、排気手段の作動により給気口から供給された空気が排気口から排出されるようにしてチャンバ内に空気流を形成することができる。また、給気口に連通した給気ダクトを備えてもよく、給気ダクトには送風ファン等の給気手段が連結される。
【0009】
また、棚板としての複数のチャンバを横方向及び/又は縦方向に並べることでラック形式に構成することで、多数の動物飼育ケージを並べて設置することができる。
【0010】
上記動物飼育装置において、前記動物飼育ケージが前記開口を通して前記チャンバに設置されて前記通気性部材が前記チャンバ内に前記チャンバの下面から離れて位置する構成が好ましい。
【0011】
上記構成によれば、動物飼育ケージをチャンバの開口内に設置し、通気性部材がチャンバ内にありかつチャンバの下面から離れているので、平面底部の通気性部材の下部に空気流が形成されるようにできる。動物飼育ケージをチャンバの開口に入れ込むだけでよいので、動物飼育ケージの保守作業が簡略化し、また、動物飼育ケージの棚板における位置決め調整が不要となる。
【0012】
また、前記動物飼育ケージは、前記平面底部の下方に底部を有し、前記底部が前記開口を通して前記チャンバの下面に載るように位置し、前記給気口及び排気口にそれぞれ対向する前記動物飼育ケージの各側面部にそれぞれ開口が設けられていることが好ましい。なお、底部は、平面底部に対向するような底面部であってよいが、ケージがチャンバの下面で支持されればよいので、底面部において面状の底面を省略した形状であってもよい。
【0013】
上述の場合、動物飼育ケージの各側面部に設ける開口は横方向に延びたスリット状が好ましく、チャンバの給気口及び排気口は、ケージ側面部のスリット状開口の幅及び高さと比べて同等または大きい幅及び高さを有することが好ましく、ケージ側面部の横方向に複数のスリット状開口を設けた場合は、各幅の合計と同等または大きい幅を有することが好ましい。
【0014】
また、ケージ側面部のスリット状開口は、ケージの全体高さ(Y)の略半分の高さ(Y/2)以下の位置(底部から高さY/2以下の位置)に設けることが好ましい。また、各ケージ側面部の各スリット状開口の上端位置は動物飼育ケージの平面底部とほぼ同じ高さであることが好ましい。
【0015】
また、上記動物飼育装置において前記動物飼育ケージは前記平面底部が前記開口を覆うように前記チャンバの上面に設置される構成が好ましい。
【0016】
上記構成によれば、動物飼育ケージをチャンバの開口のある上面に設置することで、平面底部の通気性部材の下部に空気流が形成されるようにできる。動物飼育ケージをチャンバの上面に載せるだけでよいので、動物飼育ケージの保守作業が簡略化する。
【0017】
なお、上記構成における動物飼育ケージはケージ底面が通気性部材から構成されるものが好ましい。また、この動物飼育ケージをチャンバの開口のある上面に単に載せるのではなく、開口に嵌め込むようにして設置する構造としてもよい。すなわち、チャンバの開口の寸法を調整し、ケージ底面が通気性部材から構成された動物飼育ケージがチャンバの上面の開口に嵌り込んで開口の周囲で支持されるように構成することで、その通気性部材がチャンバ内にチャンバの下面から離れて位置するようにできる。
【0018】
本実施形態の動物飼育ケージは、上述の動物飼育装置に使用可能なものであり、上述の動物飼育装置に適用することで、飼育室内への臭気の拡散防止を図ることができるとともに動物の温熱感に悪影響を与えない良好な飼育環境を作り出し、かつ、動物飼育ケージの保守作業を簡略化できるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の動物飼育装置によれば、飼育室内への臭気の拡散防止を図ることができるとともに動物の温熱感に悪影響を与えない良好な飼育環境を作り出し、動物飼育ケージの保守作業を簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0021】
〈第1の実施形態〉
図1は第1の実施形態による動物飼育装置が設置された飼育室の全体を概略的に示す図である。図2は図1の動物飼育装置の要部断面図である。
【0022】
図1のように、複数の動物飼育ケージ(以下、単に「ケージ」という。)G1がラック棚式に積み重ねられて構成された動物飼育装置10が飼育室R内に設置されている。
【0023】
ケージG1は、図2のように、金網等の通気性部材から構成された蓋部Cと、飼育動物が載るように金網やメッシュ等の通気性部材から構成されて下側に設けられた平面底部Mと、平面底部Mの下方の底面部Tと、を有し、全体が矩形状のトレイ構造となっている。ケージG1の平面底部Mと蓋部Cとの間の空間が飼育動物の居住空間Eである。ケージG1は、さらに、前面側の側面部S1の下部に設けられたスリット状の開口K1と、背面側の側面部S2の下部に設けられたスリット状の開口K2と、を有する。
【0024】
なお、ケージG1は、ステンレス鋼等の金属材料や樹脂材料からつくることができる。金網やメッシュ等の通気性部材はステンレス鋼や樹脂の線材からつくることができる。また、通気性部材は、ステンレス鋼等の金属材料や樹脂材料等からなる板材に多数の孔を形成したものを用いてもよい。
【0025】
また、ケージG1での動物の飼育に当たっては、平面底部Mの金網等には床敷きWが敷かれる。床敷きWの材料としては、金網等の通気性部材から落下しない大きさ以上の粗いおがくずや木屑や細切りした紙などが用いられるが、これらに限定されるものではない。また、床敷きWには飼育中の動物の排泄物(尿、糞等)がしみ込んだり溜まるので、床敷きWは定期的に交換される。
【0026】
動物飼育装置10は、図1,図2のように、ケージG1が設置される棚板を兼ねる扁平形のチャンバ11を備える。チャンバ11は、前面側に設けられた給気口12と、背面側に設けられた排気口13と、ケージG1が嵌り込むように上面15に矩形状に形成された矩形開口17と、給気口12と排気口13との間で空気流が形成されるとともにケージG1の下側部分が位置する通路部14と、を備える。
【0027】
なお、チャンバ11には、給気口12と通路部14との間にスリット状の中間開口18が設けられ、通路部14と排気口13との間にスリット状の中間開口19が設けられている。
【0028】
チャンバ11の通路部14に位置するケージG1の平面底部Mの下部に通風し空気流を形成するための空気流形成手段として、各チャンバ11の排気口13に中間部20を介して連通する排気ダクトDと、飼育室Rの外部に設けられ排気ダクトDからの空気を吸引し外部に排出する吸引ファンF1と、吸引ファンF1から排出された空気から臭い成分を除去する脱臭装置FIと、を備える。さらに、飼育室Rに新鮮な空気を外部から供給するために、外部に設けられた送風ファンF2と、送風ファンF2からの空気を飼育室Rに吹き出すように天井Uに設けられた吹出口Pと、を備える。
【0029】
なお、脱臭装置FIは、紫外線ランプを組み合わせた光触媒方式やオゾン発生器を用いたオゾン方式や活性炭やゼオライト等のフィルタを用いた吸着方式や消臭剤噴霧方式やプラズマ放電方式等の各種の消臭装置から選択することができる。
【0030】
図1のように、送風ファンF2の作動により吹出口Pから矢印方向P1に吹き出した空気は、床Bに当ったり、または直接に、矢印方向P2に流れる一方、吸引ファンF1が作動することで、矢印方向P2からの空気が矢印方向P5に各チャンバ11の給気口12へ吸引され、通路部14を通り、矢印方向P6(図3)に排気口13から排出され、中間部20を通して矢印方向P7に排気ダクトDへ流れ、排気ダクトDを通して外部に排出される。また、床Bに当たったり、または直接に、矢印方向P3に流れた空気は、飼育室R内のラック構造の動物飼育装置10の設置壁面と反対側の壁面底部のコーナ部に設けられた排気孔Qから矢印方向P4のように流れて外部に排気される。
【0031】
次に、図1,図2のチャンバ及び動物飼育装置について図3,図4を参照してさらに説明する。図3は複数のケージを横方向に並べて設置できるように図1,図2のチャンバを横方向に長く構成した例を示す斜視図である。図4は図3の棚板としてのチャンバを縦方向に複数段に積み重ねたラック構造とした動物飼育装置を示す斜視図である。
【0032】
図3,図4のように、チャンバ11は、複数のケージG1を横方向Hに並べることができるように横方向Hに長く延びた棚板形状になっており、箱形のトレイ状に構成され横方向Hに長く延びたトレイ状部材21と、トレイ状部材21を覆うように配置された蓋部材22とから構成されている。
【0033】
蓋部材22がチャンバ11の上面15を構成し、上面15にはケージG1が嵌り込む矩形開口17(図5参照)が横方向Hに所定間隔で設けられている。各矩形開口17に対応して、横方向に延びたスリット状の給気口12がトレイ状部材21の前面に設けられ、横方向に延びたスリット状の排気口13がトレイ状部材21の背面に設けられている。
【0034】
図4のように、図3のようなチャンバ11を棚板として縦方向に積み重ねることでラック構造の動物飼育装置10を構成することができ、多数のケージG1を収容できる。
【0035】
次に、図3,図4のチャンバ11の構成例について図5を参照して説明する。図5は図3,図4のチャンバの構成例を示す部分斜視図である。
【0036】
図5のように、チャンバ11のトレイ状部材21は箱形のトレー状に構成され、蓋部材22は前面側及び背面側に折り曲げ部22a、22bを有し断面コ字状に構成されている。蓋部材22は、トレイ状部材21の上部に被せられると、折り曲げ部22a、22bがトレイ状部材21の前面、背面の上部に位置する。
【0037】
また、蓋部材22の折り曲げ部22aとトレイ状部材21の前面上部との間及び折り曲げ部22bとトレイ状部材21の背面上部との間に、それぞれゴム等からなるパッキン23a、23bが配置されている。パッキン23a、23bの配置により、蓋部材22とトレイ状部材21との間の隙間における空気の出入りが防止されることで、図2のように、給気口12から導入されて通路部14を通って排気口13から排出される空気流が乱されない。また、トレイ状部材21から蓋部材22を簡単に取り外すことができるので、チャンバ11内の清掃も簡単に行うことができる。
【0038】
また、図5のように、蓋部材22には図1〜図4のようにケージG1が嵌め込まれる矩形開口17が設けられ、ケージG1を設置しない場合は、平板矩形状の蓋24が被せられることで、無使用の矩形開口17における空気の出入りがないようになっている。なお、チャンバ11のトレイ状部材21と蓋部材22はステンレス鋼等の金属材料の板材からつくることができる。
【0039】
次に、図1〜図4のチャンバ前面のスリット状給気口12及びケージの側面部S1のスリット状開口K1について図6,図7を参照して説明する。図6は、図2のケージの側面部を示す図である。図7は、図1〜図4のチャンバ前面のスリット状給気口とケージ側面部のスリット状開口とを示す要部正面図である。
【0040】
図6のように、図2のケージG1の側面部S1に設けられた開口K1は横方向に細長いスリット状になっている。スリット状開口K1は、ケージG1の全体高さをYとすると、その略半分の高さ(Y/2)以下の位置(底面部Tから高さY/2以下の位置)に設けられている。
【0041】
スリット状開口K1は、図6のように、その上端kがケージG1の平面底部Mとほぼ同じ高さになるように設けられている。また、図2のケージG1の側面部S2に設けられた開口K2は、横方向に細長いスリット状になっており、図6のスリット状開口K1と同様の位置に設けられる。これにより、給気口12からの空気がスリット状開口K1から通路部14で流れスリット状開口K2から排出されるとき、通路部14において平面底部Mの下部に空気流が形成され、一部の空気が平面底部Mの上方に流れる。
【0042】
図2,図3のように、チャンバ11の前面には横方向に細長いスリット状の給気口12が設けられ、図6のようにケージG1の側面部S1には横方向に細長いスリット状開口K1が設けられているが、図7のように、給気口12の平面寸法は、開口K1よりも大きくなっている。
【0043】
すなわち、チャンバ11の給気口12の幅x1と高さy1は、ケージG1の開口K1の幅x2と高さy2に対して次の関係式(1)、(2)を満足することが好ましい。
x1≧x2 ・・・(1)
y1≧y2 ・・・(2)
【0044】
関係式(1)、(2)を満足することで、給気口12から導入された空気がケージG1の開口K1でやや絞られることで、通路部14における空気の乱れが抑えられる。
【0045】
なお、ケージG1の側面部に複数のスリット状開口を設けた場合は、給気口12の幅x1は、各幅の合計と同等または大きいことが好ましい。また、図7のように、チャンバ11の給気口12とケージG1の開口K1との相対位置に関し、給気口12の対角線の交点と、開口K1の対角線の交点とは、ほぼ同一であることが好ましい。
【0046】
また、チャンバ11の背面のスリット状の排気口13の幅及び高さについても、関係式(1)、(2)を同様に満足し、それぞれケージG1の開口K2の幅及び高さと同等または大きいことが好ましい。
【0047】
また、図2のように、チャンバ11内の中間開口18,19を設けた場合、各寸法は、給気口12,排気口13の幅及び高以下でケージG1の開口K1,K2の幅及び高さ以下であることが好ましい。
【0048】
図1〜図7の動物飼育装置10によれば、図1のように飼育室Rに設置されることで、天井Uの吹出口Pから方向P1に吹き出した空気が方向P2に流れ、吸引ファンF1の作動で空気が方向P5に各チャンバ11の給気口12に吸引されて導入されてから、ケージG1の開口K1を通して通路部14に流れ込み、開口K2を通して方向P6に流れ、排気口13から方向P7に排気ダクトDへと流れ、さらに配管へ方向P8に流れて脱臭装置FIを通過して方向P9へと外部に排出される。このとき、図2のように、空気が給気口12、開口K1,K2,排気口13を通過することで、通路部14に安定した空気流が形成される。これにより、通路部14に位置するケージG1の平面底部Mの下部で空気が安定して流れることで、平面底部Mの床敷きWにしみ込んだり溜まった飼育動物の排泄物を臭気源とする臭気をケージG1から効率的に除去することができる。
【0049】
また、ケージG1の平面底部Mと底面部Tとの間の空間で空気が安定して流れることで、空気の一部が平面底部Mの金網等の通気性部材を通過して平面底部Mの上方の居住空間Eに流れたとしても、その空気の量は少なく、また、平面底部Mの床敷きWで平面底部Mの上方への空気の流入が妨げられ、居住空間Eで飼育中の動物に空気流がほとんど当たらないから、動物の温熱感に悪影響を与えない。これにより、温熱感の悪影響に起因する動物に対するストレスを未然に防止できる。
【0050】
また、空気流の通路を内部に形成するチャンバ11は、ケージG1を設置するための棚板を兼用し、清掃や保守管理等のケージG1の保守作業を簡略化することができる。また、ケージG1はチャンバ11の矩形開口17に入れ込むだけで設置できるので、棚板としてのチャンバ11におけるケージG1の位置決め調整は不要である。
【0051】
以上のように、本実施形態の動物飼育装置10によれば、ケージG1で飼育中の動物が載る平面底部Mの下部に安定した空気流を形成することで、飼育中の動物の排泄物を臭気源とする臭気を除去でき、飼育室R内への臭気の拡散防止を図ることができるとともに、良好な飼育環境をつくりだすことができ、かつ、ケージG1を載せる棚板を給気・排気の通路と兼用することで、ケージの保守作業を簡略化することができる。
【0052】
〈第2の実施形態〉
図8は第2の実施形態による動物飼育装置の要部断面図であり、図2と対応する図である。
【0053】
本実施の形態による動物飼育装置は、使用するケージ構造及びチャンバ構成が異なる以外は、第1の実施形態のものと同一であるので、同一部分には同一の符号を付し、異なる部分を主として説明する。
【0054】
図8のように、ケージG2は、飼育される動物が載る金網等の通気性部材から構成される平面底部M1が底面となっており、図2のような底面部Tを有しておらず、さらに、各側面部S1,S2には図2のような開口K1,K2が形成されていない。
【0055】
チャンバ11の上面15に設けられる矩形開口17は、そのサイズがケージG2の平面底部M1よりも小さく形成され、このため、ケージG2は、チャンバ11の矩形開口17に入り込まず、平面底部M1で矩形開口17を覆うように設置される。平面底部M1には図2と同様に床敷きが敷かれる。チャンバ11の給気口12、排気口13は、図2,図7と同様にスリット状に設けられている。
【0056】
図8の構成によれば、図1と同様にして、空気が方向P5に各チャンバ11の給気口12に吸引されて導入されてから、通路部14に流れ込み、方向P6に排気口13から排気ダクトDへと流れ、脱臭装置FIを通過して外部に排出される。このとき、空気が給気口12,排気口13を通過することで、通路部14に安定した空気流が形成される。これにより、平面底部M1の下方の通路部14で空気が安定して流れることで、平面底部M1の床敷きにしみ込んだり溜まった飼育動物の排泄物を臭気源とする臭気をケージG2から効率的に除去することができる。
【0057】
また、チャンバ11内の通路部14で空気が安定して流れることで、空気の一部が平面底部Mの金網等の通気性部材を通過して平面底部Mの上方の居住空間Eに流れたとしても、その空気の量は少なく、また、平面底部M1の床敷きで平面底部M1の上方への空気の流入が妨げられ、居住空間Eで飼育中の動物に空気流がほとんど当たらないから、動物の温熱感に悪影響を与えない。これにより、温熱感の悪影響に起因する動物に対するストレスを未然に防止できる。
【0058】
また、空気流の通路を内部に形成するチャンバ11は、ケージG2を設置するための棚板を兼用し、清掃や保守管理等のケージG2の保守作業を簡略化することができる。
【0059】
従来までは、ケージの上部または側面から給気しケージの上部から排気する一般的方式の場合や特許文献2のケージの上部から給気しケージから空気を溢れ出させる方式の場合、ケージ内の空気をケージの上部から排気させると、ケージに流入した空気は、臭気発生源である床敷き表面を通過するだけとなって、床敷きにしみ込んだり溜まった尿や糞等の臭気発生源の臭気抑制には効率的ではなく、かかる臭気を抑えるべく、さらに多くの空気をケージ内に流入させる必要が生じてしまうため、ケージ内の動物の温熱感に悪影響を及ぼすおそれがあり、また、特許文献1のようにケージの下部から給気し上部から排気する方式の場合も、多くの空気がケージ内に流入して、ケージ内の動物の温熱感に悪影響を及ぼしてしまうおそれがあったのに対し、上述の第1及び第2の実施形態によれば、飼育中の動物の排泄物を臭気源とする臭気を飼育室に拡散しないように効率的に除去するとともに、ケージで飼育中の動物に空気流がほとんど当たらないようにして動物の温熱感に悪影響を与えず、温熱感の悪影響に起因する動物に対するストレスを未然に防止できる。
【0060】
また、ケージG1,G2内の居住空間Eで飼育中の動物に空気流がほとんど当たらないことから、平面底部M,M1の下部での空気流の風速を排気ファンF1の排気量等の調整により大きくすることが可能となり、脱臭効率を向上できる。
【実施例】
【0061】
本実施例は、図2とほぼ同様のチャンバを用いてチャンバ内に空気を流したとき、図9(a)、(b)のようにケージG1の金網からなる平面底部Mの下方に形成される空気流の風速分布及び平面底部Mの上方の風速を測定したものである。図におけるケージG1のa,b,cの各寸法は、a=300mm、b=200mm、c=20mmである。また、給気口12,排気口13の各寸法は、幅220mm×20mmであり、ケージの開口K1,K2の各寸法は幅200mm×20mmである。また、風速の測定には、熱式微風速計(日本カノマックス(株)製 MODEL 6511)を用いた。
【0062】
図9(a)のように空気の流れ方向のほぼ中央を風速測定点とし、図9(b)のように幅方向に略等間隔の5箇所について風速を測定したところ、0.25〜0.28m/秒の風速であり、図9(b)の幅方向における風速の差はほとんどなかった。このとき、図9(a)の平面底部M(床敷きを敷かない状態で)の上方の一点鎖線で示す領域内での風速は、0.05〜0.15m/秒であり、平面底部Mの下方における風速よりもかなり小さくなっていることが分かった。
【0063】
以上のように本発明を実施するための最良の形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図8において、チャンバ11の矩形開口17の寸法を調整し、ケージG2を矩形開口17に嵌め込むようにしてもよい。すなわち、ケージG2がチャンバ11の上面15の矩形開口17に嵌り込んで矩形開口17の周囲で支持されるようにし、平面底部Mの通気性部材がチャンバ11内にチャンバ11の下面16から離れて位置するように構成する。これにより、ケージG2をチャンバの開口のある上面に単に載せるのではなく、嵌め込むことで、ケージG2の位置調整が不要となる。
【0064】
また、図1,図2,図8において、空気流形成手段としてチャンバ11の各給気口12に連通するように給気ダクトを設け、この給気ダクトに送風ファンを接続するようにしてもよい。
【0065】
また、図2のケージG1は、チャンバ11の下面16で支持されればよいので、平面底部Mの下側の底面部Tの底面を省略し、ケージG1の平面底部Mの下側から周囲の側面が延びている形状等であってもよい。
【0066】
また、本発明による動物飼育装置で飼育可能な動物は、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギの小型動物であってよいが、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】第1の実施形態による動物飼育装置が設置された飼育室の全体を概略的に示す図である。
【図2】図1の動物飼育装置の要部断面図である。
【図3】複数のケージを横方向に並べて設置できるように図1,図2のチャンバを横方向に長く構成した例を示す斜視図である。
【図4】図3の棚板としてのチャンバを縦方向に複数段に積み重ねたラック構造とした動物飼育装置を示す斜視図である。
【図5】図3,図4のチャンバの構成例を示す部分斜視図である。
【図6】図2のケージの側面部を示す図である。
【図7】図1〜図4のチャンバ前面のスリット状給気口とケージ側面部のスリット状開口とを示す要部正面図である。
【図8】第2の実施形態による動物飼育装置の要部断面図である。
【図9】本実施例の動物飼育装置の要部断面図(a)及びチャンバの通路部に位置するケージの底面部を示す平面図(b)である。
【符号の説明】
【0068】
10 動物飼育装置
11 チャンバ
12 給気口
13 排気口
14 通路部
15 上面
16 下面
17 矩形開口、開口
21 トレイ状部材
22 蓋部材
23a,23b パッキン
R 飼育室
D 排気ダクト
F1 吸引ファン
F2 送風ファン
FI 脱臭装置
G1,G2 動物飼育ケージ、ケージ
C 蓋部
K1,K2 開口
M 平面底部
M1 平面底部
S1,S2 側面部
T 底面部
E 居住空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼育される動物が載るように通気性部材から構成された平面底部を有する動物飼育ケージが設置される棚板を兼ねるチャンバと、
前記チャンバに設けられた給気口及び排気口と、
前記チャンバの上面に設けられた開口と、
前記給気口から供給された空気が前記排気口から排出されるように前記チャンバ内に空気流を形成する空気流形成手段と、を備え、
前記動物飼育ケージが前記チャンバの開口に設置された状態で前記空気流が前記平面底部の通気性部材の下部に形成されることを特徴とする動物飼育装置。
【請求項2】
前記動物飼育ケージが前記開口を通して前記チャンバに設置されて前記通気性部材が前記チャンバ内に前記チャンバの下面から離れて位置する請求項1に記載の動物飼育装置。
【請求項3】
前記動物飼育ケージは、前記平面底部の下方に底部を有し、前記底部が前記開口を通して前記チャンバの下面に載るように位置し、
前記給気口及び排気口にそれぞれ対向する前記動物飼育ケージの各側面部にそれぞれ開口が設けられている請求項1または2に記載の動物飼育装置。
【請求項4】
前記動物飼育ケージは前記平面底部が前記開口を覆うように前記チャンバの上面に設置される請求項1または2に記載の動物飼育装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の動物飼育装置に使用可能な動物飼育ケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−124712(P2010−124712A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300343(P2008−300343)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(508350432)有限会社バイオナノクリーン (1)
【Fターム(参考)】