説明

動画像予測符号化方法、動画像予測符号化装置、動画像予測符号化プログラム、動画像予測復号方法、動画像予測復号装置および動画像予測復号プログラム

【課題】参照画像の格納及び解放を明示的に指示することなく、高品質の参照画像をより長い間バッファに格納して当該参照画像をより多くの対象画像の符号化に用いることで、高い圧縮率で予測符号化を行うこと。
【解決手段】符号化装置は、参照画像を用いて予測符号化された対象画像の出力順序を示す出力順序情報と、他の画像を予測符号化する際の当該対象画像に対する当該他の画像の依存度を示す依存度情報とを当該対象画像に付加することで圧縮画像データを生成する符号化手段と、圧縮画像データを復号して得られた再生画像を参照画像として格納するフレームメモリと、バッファを制御するバッファ管理器とを備える。バッファ管理器は、フレームメモリ内の複数の参照画像の出力順序情報及び依存度情報の少なくとも一つに基づいて、削除する参照画像を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一形態は、動画像予測符号化の方法、装置およびプログラム、並びに、動画像予測復号の方法、装置およびプログラムに関するものであり、とりわけ、画面間の予測符号化に用いられるバッファ内にある参照画像の管理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動画像データの伝送や蓄積を効率よく行うために圧縮符号化技術が用いられる。具体的には、MPEG1〜4やH.261〜H.264の方式が広く用いられている。これらの符号化方式では、符号化の対象となる画像を複数のブロックに分割した上で符号化及び復号処理を行う。符号化効率を高めるために画面内予測符号化あるいは画面間予測符号化が用いられる。
【0003】
画面内予測符号化では、対象ブロックと同じ画面内にある隣接する既再生の画像信号(過去に圧縮された画像データを復元することで得られる画像信号)を用いて予測信号を生成する。そして、その予測信号を対象ブロックの信号から減算して差分信号を生成し、この差分信号を符号化する。画面間予測符号化では、対象ブロックと異なる画面内にある既再生の画像信号を参照して信号の変位を検索し、その変位(動き)を補償して予測信号を生成する。そして、その予測信号を対象ブロックの信号から減算して差分信号を生成し、この差分信号を符号化する。動きの検索及び補償を行うために参照される既再生の画像を参照画像という。
【0004】
H.264の画面間予測符号化では、過去に符号化され再生された複数の参照画像が参照され、動き検索により、誤差の最も少ない画像信号が対象ブロックに対する最適な予測信号として選択される。続いて、対象ブロックの画素信号とその最適な予測信号との差分が計算される。そして、その差分信号に対して離散コサイン変換及び量子化が行われ、量子化された信号がエントロピー符号化される。このような処理と同時に、対象ブロックに対する最適な予測信号をどの参照画像から取得するかに関する情報(「参照インデックス」という)、および当該最適な予測信号を参照画像のどの領域から取得するかに関する情報(「動きベクトル」という)も符号化される。H.264では、再生された4乃至5枚の画像が参照画像としてフレームメモリまたは再生画像バッファ(decoded picture buffer(DPB))に格納される。
【0005】
複数枚の参照画像の管理方法として、適応メモリ管理方法及び移動窓メモリ管理方法がある。適応メモリ管理方法は、参照画像の格納及び解放に関する管理を明示的に指示する方法である。これに対して移動窓メモリ管理方法は、複数の参照画像の中で最も古い参照画像(すなわち、いちばん長い時間バッファ内に存在する参照画像)をバッファから削除した上で、復号した再生画像を参照画像として格納する非明示的な方法である。参照画像に関するこれら二種類の管理方法は下記非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】大久保榮 監修,角野慎也,菊池義浩,鈴木輝彦 共編、インプレス標準教科書シリーズ H.264/AVC教科書、株式会社インプレスネットビジネスカンパニー、2004年、p.171−172
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、適応メモリ管理方法では、メモリの管理情報を明示的に復号装置に送る必要があるので、その分だけ符号量が増えてしまう。一方で、移動窓メモリ管理方法では、明示的に管理情報を送る必要がない代わりに、品質の優れた参照画像を柔軟に指定することができないため、画像間の予測性能に限界がある。高画質の参照画像(一般に細かく量子化され、優れた画質を持つ参照画像)を用いて予測符号化することで圧縮率を高めることができるのであるが、移動窓メモリ管理方法では、このような高画質の参照画像が先にバッファから削除されるので、後続の画像を高い効率で予測符号化することが難しくなる。
【0008】
そのため、参照画像の格納及び解放を明示的に指示することなく、高品質の参照画像をより長い間バッファに格納して当該参照画像をより多くの対象画像の符号化に用いることで、より高い圧縮率で予測符号化を行うことが要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る動画像予測符号化装置は、動画像を構成する複数の対象画像を受け付ける入力手段と、過去に符号化された後に復号および再生された少なくとも一つの画像を参照画像として用いて各対象画像を予測符号化し、予測符号化された対象画像の出力順序を示す出力順序情報と、他の画像を予測符号化する際の当該対象画像に対する当該他の画像の依存度を示す依存度情報とを当該対象画像に付加することで圧縮画像データを生成する符号化手段と、圧縮画像データを復号して再生画像を生成する復号手段と、再生画像を、後続の画像を符号化するために用いる参照画像として格納するバッファと、バッファを制御するバッファ管理手段とを備え、バッファ管理手段が、バッファに格納されている複数の参照画像の出力順序情報及び依存度情報の少なくとも一つに基づいて、当該複数の参照画像の中から削除する参照画像を決定する。
【0010】
本発明の一形態に係る動画像予測符号化方法は、動画像予測符号化装置により実行される動画像予測符号化方法であって、動画像を構成する複数の対象画像を受け付ける入力ステップと、過去に符号化された後に復号および再生された少なくとも一つの画像を参照画像として用いて各対象画像を予測符号化し、予測符号化された対象画像の出力順序を示す出力順序情報と、他の画像を予測符号化する際の当該他の画像の当該対象画像への依存度を示す依存度情報とを当該対象画像に付加することで圧縮画像データを生成する符号化ステップと、圧縮画像データを復号して再生画像を生成する復号ステップと、再生画像を、後続の画像を符号化するために用いる参照画像としてバッファに格納する格納ステップと、バッファを制御するバッファ管理ステップとを含み、バッファ管理ステップでは、バッファに格納されている複数の参照画像の出力順序情報及び依存度情報の少なくとも一つに基づいて、当該複数の参照画像の中から削除する参照画像を決定する。
【0011】
本発明の一形態に係る動画像予測符号化プログラムは、動画像を構成する複数の対象画像を受け付ける入力手段と、過去に符号化された後に復号および再生された少なくとも一つの画像を参照画像として用いて各対象画像を予測符号化し、予測符号化された対象画像の出力順序を示す出力順序情報と、他の画像を予測符号化する際の当該対象画像に対する当該他の画像の依存度を示す依存度情報とを当該対象画像に付加することで圧縮画像データを生成する符号化手段と、圧縮画像データを復号して再生画像を生成する復号手段と、再生画像を、後続の画像を符号化するために用いる参照画像として格納するバッファと、バッファを制御するバッファ管理手段とをコンピュータに実行させ、バッファ管理手段が、バッファに格納されている複数の参照画像の出力順序情報及び依存度情報の少なくとも一つに基づいて、当該複数の参照画像の中から削除する参照画像を決定する。
【0012】
本発明の一形態に係る動画像予測復号装置は、動画像を構成する複数の対象画像のそれぞれについての圧縮画像データを受け付ける入力手段であって、該圧縮画像データが、過去に復号および再生された少なくとも一つの画像を参照画像として用いて予測符号化されたデータと、対象画像の出力順序を示す出力順序情報と、他の対象画像を予測符号化する際の対象画像に対する当該他の画像の依存度を示す依存度情報とを含む、該入力手段と、圧縮画像データを復号して再生画像を生成する復号手段と、再生画像を、後続の画像を復号するために用いられる参照画像として格納するバッファと、バッファを制御するバッファ管理手段とを備え、バッファ管理手段が、バッファに格納されている複数の参照画像の出力順序情報及び依存度情報の少なくとも一つに基づいて、当該複数の参照画像の中から削除する参照画像を決定する。
【0013】
本発明の一形態に係る動画像予測復号方法は、動画像予測復号装置により実行される動画像予測復号方法であって、動画像を構成する複数の対象画像のそれぞれについての圧縮画像データを受け付ける入力ステップであって、該圧縮画像データが、過去に復号および再生された少なくとも一つの画像を参照画像として用いて予測符号化されたデータと、対象画像の出力順序を示す出力順序情報と、他の対象画像を予測符号化する際の対象画像に対する当該他の画像の依存度を示す依存度情報とを含む、該入力ステップと、圧縮画像データを復号して再生画像を生成する復号ステップと、再生画像を、後続の画像を復号するために用いられる参照画像としてバッファに格納する格納ステップと、バッファを制御するバッファ管理ステップとを含み、バッファ管理ステップでは、バッファに格納されている複数の参照画像の出力順序情報及び依存度情報の少なくとも一つに基づいて、当該複数の参照画像の中から削除する参照画像を決定する。
【0014】
本発明の一形態に係る動画像予測復号プログラムは、動画像を構成する複数の対象画像のそれぞれについての圧縮画像データを受け付ける入力手段であって、該圧縮画像データが、過去に復号および再生された少なくとも一つの画像を参照画像として用いて予測符号化されたデータと、対象画像の出力順序を示す出力順序情報と、他の対象画像を予測符号化する際の対象画像に対する当該他の画像の依存度を示す依存度情報とを含む、該入力手段と、圧縮画像データを復号して再生画像を生成する復号手段と、再生画像を、後続の画像を復号するために用いられる参照画像として格納するバッファと、バッファを制御するバッファ管理手段とをコンピュータに実行させ、バッファ管理手段が、バッファに格納されている複数の参照画像の出力順序情報及び依存度情報の少なくとも一つに基づいて、当該複数の参照画像の中から削除する参照画像を決定する。
【0015】
このような形態によれば、バッファに格納されている参照画像の出力順序情報および依存度情報の少なくとも一つに基づいて、削除しようとする参照画像が決定される。そのため、明示的に管理情報を送ることなく、品質の優れた参照画像をより長い間バッファに格納して、当該参照画像をより多くの対象画像の符号化または復号に用いることができる。その結果、高い圧縮率で予測符号化を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、参照画像の格納及び解放を明示的に指示することなく、高品質の参照画像をより長い間バッファに格納して当該参照画像をより多くの対象画像の符号化に用いることで、高い圧縮率で予測符号化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る動画像予測符号化装置を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る動画像予測復号装置を示すブロック図である。
【図3】符号化処理及び復号処理の概要を示すフローチャートである。
【図4】図3に示す参照画像の管理の詳細を示すフローチャートである。
【図5】実施形態における参照画像の管理方法の第1例を示す図ある。
【図6】実施形態における参照画像の管理方法の第2例を示す図ある。
【図7】実施形態に係る動画像予測符号化プログラムを示すブロック図である。
【図8】実施形態に係る動画像予測復号プログラムを示すブロック図である。
【図9】プログラムが実行されるコンピュータのハードウェア構成を示す図である。
【図10】図9に示すコンピュータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
まず、図1を用いて、実施形態に係る動画像予測符号化装置(以下では単に「符号化装置」という)100について説明する。図1は符号化装置100を示すブロック図である。符号化装置100は第1入力端子(入力手段)101、ブロック分割器102、予測信号生成器103、フレームメモリ(バッファまたはDPBともいう)104、減算器105、変換器106、量子化器107、逆量子化器108、逆変換器109、加算器110、エントロピー符号化器111、出力端子112、第2入力端子113、およびバッファ管理器(バッファ管理手段)114を備えている。減算器105、変換器106、および量子化器107は符号化手段に対応する。逆量子化器108、逆変換器109、および加算器110は復号手段に対応する。
【0020】
第1入力端子101は、複数枚の画像からなる動画像の信号を受け付けてブロック分割器102に出力する手段である。
【0021】
ブロック分割器102は、第1入力端子101から入力された信号で表される、符号化の対象となる画像(対象画像)を、複数の領域に分割する手段である。この分割により生成される領域を「対象ブロック」という。本実施形態では、ブロック分割器102はその画像を8x8の画素からなるブロックに分割するが、それ以外のブロックの大きさまたは形に画像を分割してもよい。ブロック分割器102は、対象ブロックの信号を予測信号生成器103および減算器105に出力する。
【0022】
予測信号生成器103は、符号化処理の対象となる対象ブロックに対して予測信号を生成する手段である。本実施形態では、予測信号生成器103は画面間予測および画面内予測という2種類の予測方法を用いて予測信号を生成する。
【0023】
画面間予測では、予測信号生成器103は、過去に符号化された後に復元された再生画像を参照画像として、この参照画像から、対象ブロックに対する誤差の最も小さい予測信号を与える動き情報を求める。場合に応じて、予測信号生成器103は対象ブロックを再分割し、再分割された小領域に対して画面間予測方法を決定してもよい。この場合には、予測信号生成器103は、各種の分割方法の中から対象ブロック全体に対して最も効率の良い分割方法を決定し、各小領域の動き情報を決定する。
【0024】
予測信号生成器103は、ブロック分割器102から入力された対象ブロックと、フレームメモリ104から読み出した参照画像とを用いる。予測信号生成器103は、過去に符号化され復元された1枚以上の画像を参照画像として用いる。動き情報の決定方法や小領域の分割方法についての詳細は、従来技術であるH.264の方法と同じである。予測信号生成器103は、小領域の分割方法および各小領域に対応する参照画像及び動き情報に基づいてフレームメモリ104から参照画像を取得し、予測信号を生成する。
【0025】
一方、画面内予測では、予測信号生成器103は、対象ブロックに空間的に隣接する既再生の画素値を用いて画面内予測信号を生成する。具体的には、予測信号生成器103は同じ画面内にある既再生の画素信号をフレームメモリ104から取得し、これらの信号を外挿することによって画面内予測信号を生成する。画面内予測信号の生成方法は、従来の技術であるH.264の方法と同じである。
【0026】
予測信号生成器103は、画面間予測及び画面内予測により生成した予測信号のうち誤差が最小の予測信号を減算器105に出力する。
【0027】
画面間予測により生成した予測信号を出力する場合には、予測信号生成器103は決定した動き情報および小領域の分割方法の情報をエントロピー符号化器111に出力する。これらの情報はエントロピー符号化器111により符号化された上で出力端子112から送出される。また、予測信号生成器103は、複数の参照画像のうちどの参照画像から予測信号を取得するかを示す情報(参照インデックス)もエントロピー符号化器111に出力する。
【0028】
画面内予測により生成した予測信号を出力する場合には、予測信号生成器103は外挿の方法に関する情報をエントロピー符号化器111に出力する。この情報はエントロピー符号化器111により符号化された上で出力端子112から送出される。
【0029】
減算器105は、ブロック分割器102から入力された対象ブロックの信号から、予測信号生成器103から入力された予測信号を減算することで、残差信号を生成する手段である。減算器105はその残差信号を変換器106に出力する。
【0030】
変換器106は、減算器105から入力された残差信号を離散コサイン変換する手段である。量子化器107は、その離散コサイン変換により得られた変換係数を量子化する手段である。
【0031】
エントロピー符号化器111は、量子化器107から入力された変換係数を符号化し、符号化された変換係数を予測方法に関する情報とともに出力端子112に出力する手段である。出力端子112は、これらの情報を外部に出力する手段である。
【0032】
後続の対象ブロックに対する画面内予測もしくは画面間予測を行うために、圧縮された対象ブロックの信号は逆処理により復元される。このために、逆量子化器108、逆変換器109、および加算器110が用いられる。
【0033】
逆量子化器108は、量子化された変換係数を逆量子化する手段である。逆変換器109は、逆離散コサイン変換により残差信号を復元する手段である。加算器110は、復元された残差信号に、予測信号生成器103から入力された予測信号を加算して、対象ブロックの信号を再生する手段である。加算器110は再生された信号(再生画像)を参照画像としてフレームメモリ104に格納する。
【0034】
なお、本実施形態では変換器106および逆変換器109を用いているが、これらの変換器に代わる他の変換処理を用いてもよい。場合によっては、変換器106および逆変換器109を省略してもよい。
【0035】
フレームメモリ104は有限であり、すべての再生画像を参照画像として格納することは不可能である。そのため、フレームメモリ104は後続の画像の符号化および復号に用いられる再生画像のみを格納する。本実施形態では、フレームメモリ104は最大で4または5枚の再生画像を参照画像として格納する。
【0036】
バッファ管理器114はこのフレームメモリ104を制御する手段である。具体的には、バッファ管理器114は第2入力端子113により受け付けられた各画像のPOC(Picture Output Count)番号および依存度情報(D_ID(dependency ID)番号)を用いて、所定のルールに従って参照画像のリストを管理する。
【0037】
POC番号は画像の出力順序を示す情報であり、出力順序情報ともいう。依存度情報は、当該情報を有する画像が他の画像からどのくらい多く参照されるかを示す情報である。言い換えれば、依存度情報は、当該情報を有する画像に対する他の画像の依存度を示す情報である。本実施形態では、他の画像からより多く参照される重要な参照画像に小さなD_ID番号が割り当てられる。すなわち、D_ID番号が小さい参照画像ほど、他の画像から多く参照される。POC番号および依存度情報は各画像に設定される。なお、D_ID番号は、dependency IDの他に、temporal ID、priority ID、prediction ID、reference ID、hierarchy ID、level ID、persistence ID、あるいはlong-term IDと呼んでもよい。
【0038】
上述したように、D_ID番号の値の大きさによって、当該D_ID番号を有する画像がどのくらい多く他の画像に参照されるかが表される。二つの画像の間でD_ID番号の値が異なる場合には、D_ID番号が小さい方の画像は、D_ID番号が大きい方の画像の再生に必要とされる。しかし、D_ID番号が大きい方の画像は、D_ID番号が小さい方の画像の再生には用いられない。二つの画像のD_ID番号が等しい場合には、これら二つの画像は相互に相手を参照可能である。
【0039】
例えば、D_ID番号の値がDaである参照画像Paと、D_ID番号の値がDbである参照画像Pbとがあるとする。この場合に、Da<Dbであれば、参照画像Paは参照画像Pbの再生に必要とされるが、参照画像Pbは参照画像Paの再生に用いられない。Da=Dbの場合には、参照画像Pa,Pbは互いに相手を参照してもよい。もしDa>Dbであれば、参照画像Paは参照画像Pbの再生に用いられないが、参照画像Pbは参照画像Paの再生に必要とされる。
【0040】
本実施形態では、D_ID番号の値として0,1,2,3の4つの値を用いる。D_ID番号が3である画像は参照画像として用いられない。各画像のD_ID番号は符号化装置100により決定される。本実施形態では、細かく量子化される画像のD_ID番号には小さい値が設定される。あるいは、時間階層(スケーラブル)符号化においては、ベースとなる階層の画像のD_ID番号に0を設定し、第q階層の画像のD_ID番号にqを設定してもよい。
【0041】
各画像のPOC番号およびD_ID番号は、画像の符号化方法(画面内予測符号化または画面間予測符号化)を示す符号化タイプと共にバッファ管理器114からエントロピー符号化器111に送られる。そして、これら3種類の情報はエントロピー符号化器111により符号化されて、圧縮された画像データとともに出力端子112から送出される。
【0042】
バッファ管理器114は、フレームメモリ104に格納されている各参照画像が持つPOC番号およびD_ID番号に基づいて、対象画像の符号化および復号に用いられる参照画像のリストを管理する。したがって、参照画像に関する情報を明示的に符号化して復号装置に伝送する必要がない。バッファ管理器114の詳細については後述する。
【0043】
次に、図2を用いて、実施形態に係る動画像予測復号装置(以下では単に「復号装置」という)200について説明する。図2は復号装置200を示すブロック図である。復号装置200は、入力端子(入力手段)201、データ解析器202、逆量子化器203、逆変換器204、加算器205、出力端子206、フレームメモリ(バッファ)207、予測信号生成器208、およびバッファ管理器(バッファ管理手段)209を備えている。逆量子化器203、逆変換器204、及び加算器205は復号手段に対応する。なお、復号手段としてこれらの構成要素以外のものを用いてもよいし、逆変換器204を省略してもよい。
【0044】
入力端子201は、上記の符号化装置100により圧縮(符号化)され送出されたデータ(圧縮画像データ)を取得する手段である。圧縮画像データは、画像を複数のブロックに分割することで生成された対象ブロックを予測し符号化された残差信号と、予測信号の生成に関連する情報とを含む。各画像にはPOC番号および依存度情報(D_ID番号)が付加されている。画面間予測の場合には、圧縮画像データはブロック分割に関する情報(ブロックのサイズ)や動き情報を予測信号の生成に関連する情報として含んでいる。画面内予測の場合には、圧縮画像データは外挿方法に関する情報を予測信号の生成に関連する情報として含んでいる。
【0045】
データ解析器202は、各画像のPOC番号および依存度情報D_ID番号と、当該画像を分割して得られた対象ブロックの残差信号と、予測信号の生成に関連する情報と、量子化パラメータとを圧縮画像データから抽出する手段である。
【0046】
逆量子化器203は対象ブロックの残差信号を量子化パラメータに基づいて逆量子化する手段である。逆変換器204は、逆量子化された残差信号を逆離散コサイン変換する手段である。
【0047】
予測信号生成器208は、予測信号の生成に関連する情報に対応する参照画像をフレームメモリ207から取得し、その参照画像から予測信号を生成する手段である。予測信号生成器208は生成した予測信号を加算器205に出力する。加算器205は、逆変換器204から入力された残差信号にその予測信号を加算することで対象ブロック信号を再生する手段である。加算器205はその対象ブロック信号を出力端子206に出力するととともにフレームメモリ207に格納する。
【0048】
フレームメモリ207は、後続の画像の復号および再生に用いられる再生画像を参照画像として格納する手段である。
【0049】
バッファ管理器209はフレームメモリ207を制御する手段である。具体的には、バッファ管理器209は、データ解析器202から入力された各画像のPOC番号およびD_ID番号を用いて、所定のルールに従って参照画像のリストを管理する。バッファ管理器209の詳細については後述する。
【0050】
次に、図3〜6を用いて、符号化装置100のバッファ管理器114および復号装置200のバッファ管理器209によるフレームメモリ104,207の制御方法を説明する。図3は動画像予測符号化方法及び動画像予測復号方法の概要を示すフローチャートであり、図4は図3に示す参照画像の管理の詳細を示すフローチャートである。図5は実施形態における参照画像の管理方法の第1例を示す図であり、図6は当該管理方法の第2例を示す図である。
【0051】
バッファ管理器は再生画像をフレームメモリ内の参照画像として管理する。まず、バッファ管理器はフレームメモリを符号化(または復号)処理を開始する前の初期状態とするために、フレームメモリを参照画像の無い「空」の状態に初期化する。
【0052】
符号化(または復号)処理が始まると、フレームメモリ内の参照画像の管理(更新)が行われ(ステップ320)、その参照画像を用いて対象画像(k)に対する符号化または復号の処理が実行される(ステップ340)。再生された画像は後続の画像の参照画像として用いられるため、フレームメモリ内に格納される。この一連の処理は最後の画像まで繰り返される(ステップ350参照)。なお、図3においてステップ320の処理はステップ340の前に行われているが、ステップ320の処理をステップ340の後に行ってもよい。
【0053】
参照画像の管理の詳細を説明する。ここで、次に処理(符号化または復号)される対象画像を画像(k)とし、この画像(k)の前に再生された画像を再生画像(k−1)とする。まず、バッファ管理器は再生画像(k−1)を参照画像として用いるかどうかを判定する(ステップ420)。本実施形態では、再生画像(k−1)のD_ID番号が3である場合は(ステップS420;NO)、バッファ管理器はその再生画像を参照画像として用いない。
【0054】
再生画像(k−1)のD_ID番号が3以外である場合は(ステップS420;YES)、バッファ管理器は後続の処理に必要となる情報を取得する(ステップ430)。具体的にはバッファ管理器は画像(k)のPOC番号をPOCに、フレームメモリの最大値(格納可能な画像数の最大値)をbuffer_sizeに、既にフレームメモリに参照画像として登録されている画像の枚数をNに代入する(ステップ430)。次に、バッファ管理器は画像の枚数Nがフレームメモリの最大値未満であるか否かを判定する(ステップ440)。もしN<buffer_sizeである場合、すなわちフレームメモリにまだ空きがある場合には(ステップ440;YES)、バッファ管理器はNを増分し(ステップ470)、再生画像(k−1)を参照画像としてフレームメモリに登録する(ステップ480)。この際に、バッファ管理器は再生画像(k−1)に「used for reference」というラベルを付ける。
【0055】
一方、フレームメモリが満杯になっている場合には(ステップ440;NO)、バッファ管理器はフレームメモリから削除する参照画像を特定する(ステップ450)。バッファ管理器は、まず、フレームメモリに登録されている参照画像のうち最大のD_ID番号を持つ参照画像の中から、POC番号がPOCよりも小さい参照画像を特定する。続いて、バッファ管理器は特定した参照画像のうちPOC番号が最小である参照画像を最終的に「不要参照画像(unused for reference)」として特定する。もし、このような条件を満たす参照画像が存在しない場合には、バッファ管理器は2番目に大きいD_ID番号を持つ参照画像の中から、POC番号がPOCよりも小さい参照画像を特定し、特定した参照画像のうちPOC番号が最小である参照画像を不要参照画像とする。不要参照画像が見つかるまで、バッファ管理器は処理の基準となるD_ID番号の値を一つずつ下げながら同様の処理を繰り返す。続いて、バッファ管理器は不要参照画像をフレームメモリから消去し(ステップ460)、その後に再生画像(k−1)を参照画像としてフレームメモリに登録する(ステップ480)。
【0056】
図5,6を用いて、このような参照画像の管理の具体例を示す。図5の例は対象画像の並べ替えが無い場合の処理である。符号501は対象画像を再生(復号)する順番(または時間)を示す。領域502内の正方形(505,520,540,560,580,581,…)は再生される対象画像を示している。領域503内の長方形(500,510,530,550,570,590,…)は対象画像の再生処理の前後におけるフレームメモリ内の状態(すなわち、参照画像リスト)を示している。本例では、フレームメモリは最大で4枚の画像を格納できることとする。図5内の凡例で示されるように、画像を示す正方形の中央に書かれている数値はPOC番号であり、上付きの数値はD_ID番号である。本実施形態では、D_ID番号=mである画像を参照して符号化及び復号される画像のD_ID番号には(m+1)という値を割り当てるが、他の規則によりD_ID番号の値を決定してもよい。
【0057】
POC番号=0の対象画像505を再生した時点では、フレームメモリは空である。すなわち、参照画像のリストには何も登録されていない。対象画像505が再生されると、その再生画像が参照画像としてフレームメモリに格納されるとともに、その再生画像のPOC番号およびD_ID番号がフレームメモリに登録される(状態510)。その後、対象画像520,540,560が再生されてフレームメモリに格納される(状態530,550,570)。対象画像560が再生されてフレームメモリに格納されると、フレームメモリが満杯になる(状態570)。
【0058】
画像580が再生された時点ではフレームメモリが満杯なので、フレームメモリ内の参照画像を削除して当該フレームメモリ内に空き領域を確保する必要がある。本実施形態では、図4におけるステップ450において、フレームメモリ内で最大のD_ID番号を有し、且つ次に再生される対象画像のPOC番号(=POC)よりも小さいPOC番号を有する参照画像のうち、POC番号が最小である参照画像が不要参照画像として特定される。画像580を再生する時点では、参照画像リスト570の中で最大のD_ID番号「2」を有するものは参照画像571,572であり、これら二つの画像のPOC番号は次に再生される対象画像581のPOC番号「5」よりも小さい。したがって、これら二つの画像の中でPOC番号が最小(POC番号=1)である参照画像571が不要参照画像として特定される。したがって、この参照画像571がフレームメモリから削除された上で、対象画像580が再生されて参照画像としてフレームメモリに格納される(状態590)。
【0059】
これ以降も同様の処理が実行されて、フレームメモリ内の状態は符号591,592,593,594,…で示されるように移り変わる。このように、品質が悪いためにあまり参照されない参照画像(D_ID番号が大きい参照画像)のうち、対象画像から最も離れた位置にある参照画像を削除することにより、品質が良く且つ対象画像により近い再生画像を参照画像としてフレームメモリに格納することができる。その結果、予測符号化を効率よく行うことができる。図5の例では画像を出力順(表示順)に処理するので、次に再生される対象画像のPOC番号(=POC)は常に、フレームメモリ内のどの参照画像のPOC番号よりも大きい。したがって、図4のステップ450において「参照画像のPOC番号がPOCよりも小さい」という条件を省略してもよい。
【0060】
図6の例は対象画像を並べ替えた場合の処理である。符号621は対象画像を復号する順番(または時間)を示す。領域622内の正方形(601,602,604,606,608,620,640,660,661,670,680,…)は再生される対象画像を示している。領域623内の長方形(600,610,612,614,616,618,630,650,651,690,695,…)は対象画像の復号処理の前後におけるフレームメモリ内の参照画像の状態(参照画像リスト)を示している。図6の例では、フレームメモリは最大で5枚の画像を格納できることとする。各画像のPOC番号及びD_ID番号の表し方は図5と同様である。
【0061】
図6の例では、対象画像の復号順はその出力順(表示順)と異なる。例えばPOC番号=0の対象画像601を再生した後に、POC番号=8の対象画像602を再生し、その次にPOC番号=4の対象画像604を再生する。このように出力順(表示順)と異なる順序で画像を符号化及び復号することで「双方向予測」ができるため、高い圧縮効率で動画像を符号化することができる。
【0062】
処理はフレームメモリが空の状態(状態600)から開始する。まず、対象画像601,602,604,606,608が順に再生されてフレームメモリに格納される。対象画像608がフレームメモリに格納されると、フレームメモリが満杯になる(状態618)。
【0063】
続いて、これらの参照画像を用いて4個の対象画像620を順に再生する。対象画像620は「非参照画像」(他の画像を復号する際には参照されない画像)であるため、再生された対象画像620はフレームメモリに格納されることなく出力端子から送出される。したがって、フレームメモリの状態630は状態618から変わらない。
【0064】
次にPOC番号=16の画像640が再生される。画像640は参照画像になり得るので、フレームメモリ内の参照画像を削除して当該フレームメモリに空き領域を確保する必要がある。本実施形態では、図4におけるステップ450において、フレームメモリ内で最大のD_ID番号を有し、且つ次に再生される対象画像のPOC番号(POC)よりも小さいPOC番号を有する参照画像のうち、POC番号が最小である参照画像が不要参照画像として特定される。画像640を再生する時点では、参照画像リスト630の中で最大のD_ID番号「2」を有するものは参照画像631,632であり、これら二つの画像のPOC番号は次に再生される対象画像660のPOC番号「12」よりも小さい。したがって、これら二つの画像の中でPOC番号が最小(POC番号=2)である参照画像631が不要参照画像として特定される。その結果、この参照画像631がフレームメモリから削除された上で、対象画像640が再生されて参照画像としてフレームメモリに格納される(状態650)。
【0065】
次に、POC番号=14の対象画像670を再生する場合について説明する。対象画像670は参照画像になり得るので、フレームメモリ内の参照画像を削除して当該フレームメモリに空き領域を確保する必要がある。
【0066】
この際のステップ450の処理では、まず、最大のD_ID番号「2」を持ち、且つ次に処理される対象画像680のPOC番号「9」よりも小さいPOC番号を持つ参照画像が検索されるが、この条件を満たす参照画像はリスト690に存在しない。そこで次に、2番目に大きいD_ID番号「1」を持ち、且つ次に処理される対象画像680のPOC番号「9」よりも小さいPOC番号を持つ参照画像が検索されるが、この条件を満たす参照画像もリスト690に存在しない。
【0067】
そこで次に、D_ID番号「0」を持ち、且つ次に処理される対象画像680のPOC番号「9」よりも小さいPOC番号を持つ参照画像が検索され、参照画像691,692が特定される。したがって、これら二つの画像の中でPOC番号が最小(POC番号=0)である参照画像691が不要参照画像として特定される。これにより、参照画像691がフレームメモリから削除された上で、対象画像670が再生されて参照画像としてフレームメモリに格納される(状態695)。
【0068】
このように、「POC番号が次に処理される対象画像680のPOC番号よりも小さい」との条件があるために、参照画像リスト695にはPOC番号=10の参照画像696が残される。POC番号=9の対象画像は、POC番号=0の参照画像よりもPOC番号=10の参照画像に近い位置にあるので、上記のように参照画像を管理することで、参照画像との間で時間軸上での相関が高い対象画像を効率よく予測符号化することができる。
【0069】
図5,6に示すように、図4のステップ450における条件を予測符号化の構造に応じて下記a〜cのいずれかとすることが可能である。
【0070】
(a)所定のD_ID番号(例えば最大のD_ID番号)を持つ参照画像のうち最小のPOC番号を持つ参照画像を不要参照画像とする。この手法は、図5に示すように対象画像の並べ替えがない場合に適用可能である。
(b)所定のD_ID番号(例えば最大のD_ID番号)を持ち、且つ次に処理される対象画像のものよりも小さいPOC番号を持つ参照画像のうち、POC番号が最小である参照画像を不要参照画像とする。この手法は、画像の並べ替えがある場合に適用可能である。
(c)次に処理される対象画像のものよりも小さいPOC番号を持つ参照画像のうち、POC番号が最小である参照画像を不要参照画像とする。この手法は、全ての画像のD_ID番号が同じ場合に適用可能である。
【0071】
なお、図4〜6の説明は符号化処理における復号および再生処理についても同様である。
【0072】
上述した図6の例は「双方向予測」の符号化構造に該当する場合である。双方向予測を行うために、二つの予測信号を取得し、これらの信号を平均(または重み付き平均)化して最終の予測信号を生成する。二つの予測信号を取得するには、フレームメモリに格納されている参照画像を論理的に二つの参照画像リスト、すなわちList0とList1とに分けて、第1の予測信号はList0に含まれている複数の参照画像から、第2の予測信号はList1に含まれている複数の参照画像から、それぞれ取得する。各対象ブロックについて、どのリストから予測信号を取得するかについての指示は、符号化装置にて誤差最小法に基づいて決定した上で復号装置に伝送される。
【0073】
本実施形態では、フレームメモリ内の参照画像のPOC番号及びD_ID番号を用いて論理的参照画像リストList0およびList1を以下の手順で用意する。
【0074】
(1)フレームメモリにある複数の参照画像をセットA(Set A)とセットB(Set B)とに分ける。セットAには対象画像のPOC番号より小さいPOC番号を持つ参照画像を含ませ、セットBには対象画像のPOC番号より大きいPOC番号を持つ参照画像を含ませる。
(2)セットA及びセットBの各参照画像の順番をソートする。具体的には、D_ID番号の小さい参照画像(すなわち重要な参照画像)がリストの先に並ぶように、ソートを行う。同じD_ID番号の参照画像については、対象画像のPOC番号に近いものがリストの先に並ぶように、ソートを行う。
(3)(2)でソートされたセットAをList0とする。セットAのサイズ(セットAに登録されている参照画像の数)がList0のサイズ(List0に登録可能な参照画像の最大数)より小さい場合は、上記ソートされたセットBをList0に加える。ただし、セットAと重複する参照画像は取り除く。本実施形態では、List0のサイズはフレームメモリの大きさと同じである。
(4)(2)でソートされたセットBをList1とする。セットBのサイズ(セットBに登録されている参照画像の数)がList1のサイズ(List1に登録可能な参照画像の最大数)より小さい場合は、上記ソートされたセットAをList1に加える。ただし、セットBと重複する参照画像は取り除く。本実施形態では、List1のサイズはフレームメモリの大きさと同じである。
【0075】
このようにPOC番号とD_ID番号とに基づいて、品質が良くかつより対象画像に近い再生画像を参照画像リストの先に配置して、当該再生画像がより参照され易くすることにより、対象画像との相関が高い良質な参照画像による予測信号を生成することができる。そしてこれにより、符号化効率を向上させる効果を得ることができる。
【0076】
上記の処理に関する擬似コードは下記のように書ける。
cIdx = 0
offsetB = min(size(List1), size(Set B));
for( i=0; i < size(Set A) &&cIdx < size(List0); cIdx++,i++ )
List0[ cIdx ] = Set A[ i ]
for( i=0; i < size(Set B) &&cIdx < size(List0); cIdx++,i++ )
List0[ cIdx ] = Set B[ (i +offsetB) % size(Set B) ]

cIdx = 0
offsetA = min(size(List0), size(Set A));
for( i=0; i < size(Set B) &&cIdx < size(List1); cIdx++,i++ )
List1[ cIdx ] = Set B[ i ]
for( i=0; i < size(Set A) &&cIdx < size(List1); cIdx++,i++ )
List1[ cIdx ] = Set A[ (i +offsetA) % size(Set A) ]
【0077】
本実施形態では、より多く参照される重要な参照画像に小さいD_ID番号を割り当てたが、そのような重要な参照画像に大きなD_ID番号を割り当ててもよい。この場合には、図4のステップ450において、D_ID番号が最小である参照画像から順に不要参照画像の有無を判定すればよい(必要に応じて、不要参照画像が見つかるまでD_ID番号を一つずつ増やしながら探索処理を繰り返す)。
【0078】
本実施形態ではPOCが「次に処理される画像のPOC番号」を示したが、その代わりに既にバッファにある参照画像のPOC番号を用いた条件を設定してもよい。すなわち、POCを「最小のD_ID番号を持つ参照画像のPOC番号のうち2番目に大きいPOC番号」としてもよい。
【0079】
本実施形態ではPOC番号を用いたが、表示時刻、復号順あるいは復号時刻、フレーム番号などを画像の順番を示す情報として用いてもよい。
【0080】
次に、図7〜10を用いて、本実施形態に係るプログラムについて説明する。図7は実施形態に係る動画像予測符号化プログラムを示すブロック図である。図8は実施形態に係る動画像予測復号プログラムを示すブロック図である。図9はコンピュータ30のハードウェア構成を示す図であり、図10はコンピュータ30の斜視図である。
【0081】
動画像予測符号化プログラムP100は、ブロック分割モジュールP102、予測信号生成モジュールP103、記憶モジュールP104、減算モジュールP105、変換モジュールP106、量子化モジュールP107、逆量子化モジュールP108、逆変換モジュールP109、加算モジュールP110、エントロピー符号化モジュールP111、及びバッファ管理モジュールP114を備えている。各モジュールの機能は、ブロック分割器102、予測信号生成器103、フレームメモリ104、減算器105、変換器106、量子化器107、逆量子化器108、逆変換器109、加算器110、エントロピー符号化器111、及びバッファ管理器114の機能と同様である。
【0082】
動画像予測復号プログラムP200は、データ解析モジュールP202、逆量子化モジュールP203、逆変換モジュールP204、加算モジュールP205、記憶モジュールP207、予測信号生成モジュールP208、及びバッファ管理モジュールP209を備えている。各モジュールの機能は、データ解析器202、逆量子化器203、逆変換器204、加算器205、フレームメモリ207、予測信号生成器208、及びバッファ管理器209の機能と同様である。
【0083】
動画像予測符号化プログラムP100及び動画像予測復号プログラムP200は、図9,10に示す記録媒体10により提供される。コンピュータ30は、動画像予測符号化プログラムP100を読み込んで実行した場合には符号化装置100として機能し、動画像予測復号プログラムP200を読み込んで実行した場合には復号装置200として機能する。なお、プログラムP100,P200を実行する機器はコンピュータ30に限定されず、CPUを具備しソフトウエアによる処理や制御を行なうDVDプレーヤ、セットトップボックス、携帯電話機などでもよい。
【0084】
図9に示すように、コンピュータ30は、フレキシブルディスクドライブ装置やCD−ROMドライブ装置、DVDドライブ装置等の読取装置12と、オペレーティングシステムを常駐させた作業用メモリ(RAM)14と、記録媒体10に記憶されたプログラムを記憶するメモリ16と、ディスプレイ(表示装置)18と、入力装置であるマウス20及びキーボード22と、データの送受信を行うための通信装置24と、プログラムの実行を制御するCPU26とを備えている。記録媒体10が読取装置12に挿入されると、コンピュータ30は記録媒体10に格納された動画像予測符号化プログラムあるいは動画像予測復号プログラムにアクセス可能になり、このプログラムを読み込んで実行することで、符号化装置100または復号装置200として動作する。
【0085】
図10に示すように、動画像予測符号化プログラム及び動画像復号プログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号40としてネットワークを介して提供されてもよい。この場合、コンピュータ30は、通信装置24によって受信した動画像予測符号化プログラムもしくは動画像復号プログラムをメモリ16に格納し、そのプログラムを実行することで、符号化装置100または復号装置200として動作する。
【0086】
以上説明したように、本実施形態によれば、バッファ(フレームメモリ104,207)に格納されている参照画像の出力順序情報(POC番号)および依存度情報(D_ID番号)の少なくとも一つに基づいて、削除しようとする参照画像が決定される。そのため、明示的に管理情報を送ることなく、品質の優れた参照画像をより長い間バッファに格納して、当該参照画像をより多くの対象画像の符号化または復号に用いることができる。その結果、画像の圧縮率を高めることができる。具体的には、品質の優れない参照画像に大きいD_ID番号を割り当て、これらの参照画像の中から、対象画像から最も離れている参照画像を順番に削除することにより、品質が良く且つより対象画像に近い再生画像を参照画像としてバッファに格納することができる。その結果、対象画像との相関が高い参照画像を確保して、効率よく予測符号化を行うことができる。
【0087】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0088】
上記実施形態ではバッファ管理器がフレームメモリ内の参照画像を直接的に制御したが、「参照画像リスト」という論理手段を介してフレームメモリ内の画像を参照画像にマッピングする場合にも、本発明の手法を適用できる。
【符号の説明】
【0089】
100…動画像予測符号化装置、101…第1入力端子、102…ブロック分割器、103…予測信号生成器、104…フレームメモリ、105…減算器、106…変換器、107…量子化器、108…逆量子化器、109…逆変換器、110…加算器、111…エントロピー符号化器、112…出力端子、113…第2入力端子、114…バッファ管理器、200…動画像予測復号装置、201…入力端子、202…データ解析器、203…逆量子化器、204…逆変換器、205…加算器、206…出力端子、207…フレームメモリ、208…予測信号生成器、209…バッファ管理器、P100…動画像予測符号化プログラム、P102…ブロック分割モジュール、P103…予測信号生成モジュール、P104…記憶モジュール、P105…減算モジュール、P106…変換モジュール、P107…量子化モジュール、P108…逆量子化モジュール、P109…逆変換モジュール、P110…加算モジュール、P111…エントロピー符号化モジュール、P114…バッファ管理モジュール、P200…動画像予測復号プログラム、P202…データ解析モジュール、P203…逆量子化モジュール、P204…逆変換モジュール、P205…加算モジュール、P207…記憶モジュール、P208…予測信号生成モジュール、P209…バッファ管理モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像を構成する複数の対象画像を受け付ける入力手段と、
過去に符号化された後に復号および再生された少なくとも一つの画像を参照画像として用いて各対象画像を予測符号化し、予測符号化された対象画像の出力順序を示す出力順序情報と、他の画像を予測符号化する際の当該対象画像に対する当該他の画像の依存度を示す依存度情報とを当該対象画像に付加することで圧縮画像データを生成する符号化手段と、
前記圧縮画像データを復号して再生画像を生成する復号手段と、
前記再生画像を、後続の画像を符号化するために用いる参照画像として格納するバッファと、
前記バッファを制御するバッファ管理手段と
を備え、
前記バッファ管理手段が、前記バッファに格納されている複数の参照画像の前記出力順序情報及び前記依存度情報の少なくとも一つに基づいて、当該複数の参照画像の中から削除する参照画像を決定する、
動画像予測符号化装置。
【請求項2】
動画像予測符号化装置により実行される動画像予測符号化方法であって、
動画像を構成する複数の対象画像を受け付ける入力ステップと、
過去に符号化された後に復号および再生された少なくとも一つの画像を参照画像として用いて各対象画像を予測符号化し、予測符号化された対象画像の出力順序を示す出力順序情報と、他の画像を予測符号化する際の当該他の画像の当該対象画像への依存度を示す依存度情報とを当該対象画像に付加することで圧縮画像データを生成する符号化ステップと、
前記圧縮画像データを復号して再生画像を生成する復号ステップと、
前記再生画像を、後続の画像を符号化するために用いる参照画像としてバッファに格納する格納ステップと、
前記バッファを制御するバッファ管理ステップと
を含み、
前記バッファ管理ステップでは、前記バッファに格納されている複数の参照画像の前記出力順序情報及び前記依存度情報の少なくとも一つに基づいて、当該複数の参照画像の中から削除する参照画像を決定する、
動画像予測符号化方法。
【請求項3】
動画像を構成する複数の対象画像のそれぞれについての圧縮画像データを受け付ける入力手段であって、該圧縮画像データが、過去に復号および再生された少なくとも一つの画像を参照画像として用いて予測符号化されたデータと、前記対象画像の出力順序を示す出力順序情報と、他の対象画像を予測符号化する際の前記対象画像に対する当該他の画像の依存度を示す依存度情報とを含む、該入力手段と、
前記圧縮画像データを復号して再生画像を生成する復号手段と、
前記再生画像を、後続の画像を復号するために用いられる参照画像として格納するバッファと、
前記バッファを制御するバッファ管理手段と
を備え、
前記バッファ管理手段が、前記バッファに格納されている複数の参照画像の前記出力順序情報及び前記依存度情報の少なくとも一つに基づいて、当該複数の参照画像の中から削除する参照画像を決定する、
動画像予測復号装置。
【請求項4】
動画像予測復号装置により実行される動画像予測復号方法であって、
動画像を構成する複数の対象画像のそれぞれについての圧縮画像データを受け付ける入力ステップであって、該圧縮画像データが、過去に復号および再生された少なくとも一つの画像を参照画像として用いて予測符号化されたデータと、前記対象画像の出力順序を示す出力順序情報と、他の対象画像を予測符号化する際の前記対象画像に対する当該他の画像の依存度を示す依存度情報とを含む、該入力ステップと、
前記圧縮画像データを復号して再生画像を生成する復号ステップと、
前記再生画像を、後続の画像を復号するために用いられる参照画像としてバッファに格納する格納ステップと、
前記バッファを制御するバッファ管理ステップと
を含み、
前記バッファ管理ステップでは、前記バッファに格納されている複数の参照画像の前記出力順序情報及び前記依存度情報の少なくとも一つに基づいて、当該複数の参照画像の中から削除する参照画像を決定する、
動画像予測復号方法。
【請求項5】
動画像を構成する複数の対象画像を受け付ける入力手段と、
過去に符号化された後に復号および再生された少なくとも一つの画像を参照画像として用いて各対象画像を予測符号化し、予測符号化された対象画像の出力順序を示す出力順序情報と、他の画像を予測符号化する際の当該対象画像に対する当該他の画像の依存度を示す依存度情報とを当該対象画像に付加することで圧縮画像データを生成する符号化手段と、
前記圧縮画像データを復号して再生画像を生成する復号手段と、
前記再生画像を、後続の画像を符号化するために用いる参照画像として格納するバッファと、
前記バッファを制御するバッファ管理手段と
をコンピュータに実行させ、
前記バッファ管理手段が、前記バッファに格納されている複数の参照画像の前記出力順序情報及び前記依存度情報の少なくとも一つに基づいて、当該複数の参照画像の中から削除する参照画像を決定する、
動画像予測符号化プログラム。
【請求項6】
動画像を構成する複数の対象画像のそれぞれについての圧縮画像データを受け付ける入力手段であって、該圧縮画像データが、過去に復号および再生された少なくとも一つの画像を参照画像として用いて予測符号化されたデータと、前記対象画像の出力順序を示す出力順序情報と、他の対象画像を予測符号化する際の前記対象画像に対する当該他の画像の依存度を示す依存度情報とを含む、該入力手段と、
前記圧縮画像データを復号して再生画像を生成する復号手段と、
前記再生画像を、後続の画像を復号するために用いられる参照画像として格納するバッファと、
前記バッファを制御するバッファ管理手段と
をコンピュータに実行させ、
前記バッファ管理手段が、前記バッファに格納されている複数の参照画像の前記出力順序情報及び前記依存度情報の少なくとも一つに基づいて、当該複数の参照画像の中から削除する参照画像を決定する、
動画像予測復号プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−106090(P2013−106090A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246776(P2011−246776)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】