説明

動画像符号化装置、動画像符号化方法及び動画像符号化プログラム

【課題】一意に左の隣接ブロックの量子化パラメータを選択して符号化対象ブロックの量子化パラメータを予測符号化すると、符号量が増加することがある。
【解決手段】量子化パラメータ算出部110は、画像の複雑度合いを表すアクティビティに基づき符号化対象ブロックの量子化パラメータを算出する。予測量子化パラメータ算出部114は、量子化パラメータを含む符号化情報を記憶する符号化情報格納メモリ113から符号化対象ブロックの周囲に隣接する複数の符号化済みの隣接ブロックの量子化パラメータを読み出し、複数の隣接ブロックの量子化パラメータから符号化対象ブロックの予測量子化パラメータを算出する。差分量子化パラメータ生成部111は、符号化対象ブロックの量子化パラメータと予測量子化パラメータとの差分により差分量子化パラメータを生成する。第1の符号化ビット列生成部112は、差分量子化パラメータを符号化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像の符号化技術に関し、特に量子化パラメータの予測符号化を利用した動画像の符号化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MPEG−2 Part2(以下MPEG−2と呼ぶ)やMPEG−4 Part10/H.264(以下AVCと呼ぶ)等のデジタル動画像符号化では、画像を所定の大きさのブロックに分割して符号化を行い、予測誤差信号(又は単に画像信号)に対する量子化の粗さを示す量子化パラメータを伝送する。符号化側でこの量子化パラメータを所定ブロック単位で可変制御することにより、符号量を制御することや主観画質を向上させることが可能である。
【0003】
主観画質を向上させる量子化パラメータの制御としては、Adaptive Quantization(適応量子化)が度々用いられる。適応量子化では、視覚的に劣化の目立ちやすい平坦部ではより細かく量子化され、劣化の比較的目立ちにくい絵柄の複雑な部分でより粗く量子化されるように、各マクロブロックのアクティビティによって変化させる。即ち、符号化されたときの割り当てビット量が大きくなりやすいアクティビティの高いマクロブロックにおいては、大きい量子化スケールが設定されるように、量子化パラメータを変化させ、その結果、符号化された画像のデータにおいてビット数が出来るだけ少なくなるように制御しながら、主観画質を向上させることになる。
【0004】
MPEG−2では符号化/復号する順序で1つ前のブロックの量子化パラメータと符号化対象ブロックの量子化パラメータが同一であるかどうかを判断し、同一でない場合には量子化パラメータを伝送する。AVCでは符号化/復号する順序で1つ前のブロックの量子化パラメータを予測値として、符号化対象ブロックの量子化パラメータを差分符号化する。これは、一般的に符号量制御は符号化順に行うため、符号化順で1つ前のブロックの量子化パラメータが最も符号化ブロックの量子化パラメータに近いということに基いており、伝送する量子化パラメータの情報量を抑制することを狙っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−91772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の量子化パラメータの制御では、符号化済みの左側のブロックの量子化パラメータを予測量子化パラメータとして、符号化対象のブロックの量子化パラメータとの差分を算出し、算出された差分量子化パラメータを符号化することで、量子化パラメータの符号量を削減した。しかしながら、画面内のコンテンツによっては、例えば図3に示されるように、符号化対象のブロック内の画像と符号化済みの左側のブロック内の画像の特徴が異なる場合、適応量子化にて算出される量子化パラメータは差が大きくなるので、一意に左側のブロックとの量子化パラメータ予測を実行しても差分量子化パラメータが大きくなり、符号量が増加する課題があった。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、量子化パラメータの符号量を削減して、符号化効率を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の動画像符号化装置は、動画像の各ピクチャを分割したブロック単位で前記動画像を符号化する動画像符号化装置であって、ブロック単位で画像の複雑度合いを表すアクティビティを算出するアクティビティ算出部(109)と、前記アクティビティに基づき符号化対象ブロックの量子化パラメータを算出する量子化パラメータ算出部(110)と、前記量子化パラメータを含む符号化情報を記憶する符号化情報格納メモリから前記符号化対象ブロックの周囲に隣接する複数の符号化済みの隣接ブロックの量子化パラメータを読み出し、複数の前記隣接ブロックの量子化パラメータから前記符号化対象ブロックの予測量子化パラメータを算出する予測量子化パラメータ算出部(114)と、前記符号化対象ブロックの量子化パラメータと前記予測量子化パラメータとの差分により前記符号化対象ブロックの差分量子化パラメータを生成する差分量子化パラメータ生成部(111)と、前記符号化対象ブロックの差分量子化パラメータを符号化する符号化部(112)とを備える。
【0009】
本発明の別の態様は、動画像符号化方法である。この方法は、動画像の各ピクチャを分割したブロック単位で前記動画像を符号化する動画像符号化方法であって、ブロック単位で画像の複雑度合いを表すアクティビティを算出するアクティビティ算出ステップと、前記アクティビティに基づき符号化対象ブロックの量子化パラメータを算出する量子化パラメータ算出ステップと、前記量子化パラメータを含む符号化情報を記憶する符号化情報格納メモリから前記符号化対象ブロックの周囲に隣接する複数の符号化済みの隣接ブロックの量子化パラメータを読み出し、複数の前記隣接ブロックの量子化パラメータから前記符号化対象ブロックの予測量子化パラメータを算出する予測量子化パラメータ算出ステップと、前記符号化対象ブロックの量子化パラメータと前記予測量子化パラメータとの差分により前記符号化対象ブロックの差分量子化パラメータを生成する差分量子化パラメータ生成ステップと、前記符号化対象ブロックの差分量子化パラメータを符号化する符号化ステップとを備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、量子化パラメータの符号量を削減して、符号化効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る予測量子化パラメータの算出方法を具備した動画像符号化装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態に係る予測量子化パラメータの算出方法を具備した動画像復号装置の構成を示すブロック図である。
【図3】符号化対象ブロックと隣接する既符号化済みの周囲のブロックに対して、絵柄が左及び左上のブロックに含まれる一例を表す図である。
【図4】隣接する既符号化済みの周囲のブロックの量子化パラメータを、符号化対象ブロックの予測量子化パラメータとして参照先として示す一例を表す図である。
【図5】第1の実施例において、符号化対象ブロックの予測量子化パラメータを算出する為の判定条件として、隣接ブロックの量子化パラメータ間の比較を表す図である。
【図6】第1の実施例の予測量子化パラメータ算出部の動作を説明する為のフローチャートである。
【図7】差分量子化パラメータの符号付き指数符号付ゴロム符号化テーブルの一例を表す図である。
【図8】第1の実施例の予測量子化パラメータの判定において、簡易的な判定に置き換えた場合を説明する為のフローチャートである。
【図9】第1の実施例において、符号化対象ブロックの予測量子化パラメータを算出する為の判定条件として、隣接ブロックの量子化パラメータ間の比較を表す図である。
【図10】上と左上の隣接ブロックの間の量子化パラメータの差が大きい場合に上の隣接ブロックの量子化パラメータを選択する一例を表す図である。
【図11】第1の実施例の予測量子化パラメータの判定において、簡易的な判定に置き換えた場合を説明する為の別のフローチャートである。
【図12】第2の実施例の予測量子化パラメータ算出部の動作を説明する為のフローチャートである。
【図13】第2の実施例の予測量子化パラメータ算出部において、状態判定フラグSA及びSLに基づいて予測量子化パラメータを算出する為の判定に用いる2次元配置を表す図である。
【図14】第3の実施例の予測量子化パラメータ算出部の動作を説明する為のフローチャートである。
【図15】第3の実施例の予測量子化パラメータの判定において、簡易的な判定に置き換えた場合を説明する為のフローチャートである。
【図16】第3の実施例の予測量子化パラメータの判定を、第2の実施例の予測量子化パラメータ算出部の2次元配置に適用した場合を説明する為の図である。
【図17】第4の実施例の予測量子化パラメータ算出部の動作を説明する為のフローチャートである。
【図18】左と左上の隣接ブロックの量子化パラメータの差分絶対値と上と左上の隣接ブロックの量子化パラメータの差分絶対値の差分を量子化した値δを説明する図である。
【図19】上限及び下限を設定した場合の図18の量子化値δの一例を説明する図である。
【図20】重み付け係数の設定テーブルを説明する図である。
【図21】左と左上の隣接ブロックの量子化パラメータの差分絶対値と上と左上の隣接ブロックの量子化パラメータの差分絶対値の差分を量子化した値δの別の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態は、ピクチャを矩形ブロックに分割し、ブロック単位に量子化・符号化を行う動画像符号化において、処理対象のブロックの量子化パラメータの符号量を削減するために、既符号化済みの周囲のブロックの符号化情報から最適な予測量子化パラメータを導出し、予測量子化パラメータとの差分を算出して、符号化する符号量制御技術を提供する。
【0014】
本発明を実施する好適な動画像符号化装置100及び動画像復号装置200について説明する。図1は本発明を実施する動画像符号化装置100の構成を示すブロック図であり、画像メモリ101、残差信号生成部102、直交変換・量子化部103、第2の符号化ビット列生成部104、逆量子化・逆直交変換部105、復号画像信号重畳部106、復号画像メモリ107、予測画像生成部108、アクティビティ算出部109、量子化パラメータ算出部110、差分量子化パラメータ生成部111、第1の符号化ビット列生成部112、符号化情報格納メモリ113、予測量子化パラメータ算出部114及び符号化ビット列多重化部115から構成される。尚、各ブロック間を結ぶ太実線の矢印はピクチャの画像信号、細実線の矢印は符号化を制御するパラメータ信号の流れを表すものである。
画像メモリ101は、撮影/表示時間順に供給された符号化対象の画像信号を一時格納する。画像メモリ101は、格納された符号化対象の画像信号を、所定の画素ブロック単位で、残差信号生成部102、予測画像生成部108及びアクティビティ算出部109に供給する。その際、撮影/表示時間順に格納された画像は、符号化順序に並べ替えられて、画素ブロック単位で、画像メモリ101から出力される。
【0015】
残差信号生成部102は、符号化する画像信号と予測画像生成部108にて生成された予測信号との引き算を行い残差信号を生成し、直交変換・量子化部103に供給する。
直交変換・量子化部103は、残差信号に対して直交変換及び量子化を行い、直交変換・量子化された残差信号を生成し、第2の符号化ビット列生成部104と逆量子化・逆直交変換部10に供給する。
【0016】
第2の符号化ビット列生成部104は、直交変換及び量子化された残差信号を規定のシンタックス規則に従ってエントロピー符号化して第2の符号化ビット列を生成し、符号化ビット列多重化部115に供給する。
【0017】
逆量子化・逆直交変換部105は、直交変換・量子化部103から供給された直交変換・量子化された残差信号を逆量子化及び逆直交変換して残差信号を算出し、復号画像信号重畳部106に供給する。
【0018】
復号画像信号重畳部106は、予測画像生成部108により生成された予測画像信号と逆量子化・逆直交変換部105で逆量子化及び逆直交変換された残差信号を重畳して復号画像を生成し、復号画像メモリ107に格納する。尚、復号画像に対して符号化によるブロック歪等の歪を減少させるフィルタリング処理を施して、復号画像メモリ107に格納されることもあり、その場合、必要に応じてデブロッキングフィルタ等のポストフィルタの情報を識別するフラグ等の予測された符号化情報を符号化情報格納メモリ113に格納する。
【0019】
予測画像生成部108は、画像メモリ101から供給される画像信号と復号画像メモリ107から供給される復号画像信号から、予測モードを基にフレーム内予測或いはフレーム間予測を行い、予測画像信号を生成する。フレーム内予測は、画像メモリ101から供給される画像信号を所定のブロック単位で分割された符号化対象ブロックと、復号画像メモリ107から供給される符号化対象ブロックと同じフレーム内に存在する符号化対象ブロックに隣接する周囲の符号化済みブロックの画素信号を用いて予測画像信号を生成する。フレーム間予測は、画像メモリ101から供給される画像信号を所定のブロック単位で分割された符号化対象ブロックのフレーム(符号化フレーム)の時系列で前または後ろに数フレーム離れた復号画像メモリ107に格納されている符号化済みフレームを参照フレームとし、符号化フレームと参照フレームとの間でブロックマッチングを行い、動きベクトルと呼ばれる動き量を求め、この動き量を基に参照フレームから動き補償を行い、予測画像信号を生成する。こうして生成された予測画像信号を残差信号生成部102に供給する。予測画像生成部108にて得られた動きベクトル等の符号化情報は、必要に応じて符号化情報格納メモリ113に格納する。尚、予測画像生成部108で、複数の予測モードの選択が可能である場合、生成された予測画像信号と元の画像信号との間の歪量等を評価することにより、最適な予測モードを決定し、決定された予測モードによる予測により生成された予測画像信号を選択し、残差信号生成部102に供給することも可能である。
【0020】
アクティビティ算出部109は、画像メモリ101から供給される符号化対象ブロックの画像の複雑さや滑らかさを示す係数であるアクティビティが計算され、量子化パラメータ算出部110に供給する。アクティビティ算出部109の詳細な構成と動作は、後述する実施例にて説明する。
【0021】
量子化パラメータ算出部110は、アクティビティ算出部109にて算出されたアクティビティによって、符号化対象ブロックの量子化パラメータを算出し、差分量子化パラメータ生成部111及び符号化情報格納メモリ113に供給する。量子化パラメータ算出部110の詳細な構成と動作は、後述する実施例にて説明する。
【0022】
差分量子化パラメータ生成部111は、量子化パラメータ算出部110にて算出された量子化パラメータに対して、予測量子化パラメータ算出部114にて算出された予測量子化パラメータと引き算を行い、差分量子化パラメータを算出し、第1の符号化ビット列生成部112に供給する。
【0023】
第1の符号化ビット列生成部112は、差分量子化パラメータ生成部111によって算出された差分量子化パラメータを規定のシンタックス規則に従って符号化して第1の符号化ビット列を生成し、符号化ビット列多重化部115に供給する。
【0024】
符号化情報格納メモリ113は、符号化が終了したブロックの量子化パラメータを格納する。また、図1に結線を図示していないが、予測画像生成部108にて生成される予測モードや動きベクトル等の符号化情報も、次の符号化対象ブロックを符号化に必要な情報として格納する。更に、ピクチャやスライス単位で生成される符号化情報も必要に応じて格納する。
【0025】
予測量子化パラメータ算出部114は、符号化対象ブロックの周囲に隣接する既符号化済みのブロックの量子化パラメータや符号化情報を用いて、予測量子化パラメータを算出し、差分量子化パラメータ生成部111に供給する。予測量子化パラメータ算出部114の詳細な構成と動作は、後述する実施例にて説明する。
【0026】
符号化ビット列多重化部115は、第1の符号化ビット列と第2の符号化ビット列を規定のシンタックス規則に従って多重化し、ビットストリームを出力する。
【0027】
図2は図1の動画像符号化装置100に対応した実施の形態に係る動画像復号装置200の構成を示すブロック図である。実施の形態の動画像復号装置200は、ビット列分離部201、第1符号化ビット列復号部202、量子化パラメータ生成部203、符号化情報格納メモリ204、予測量子化パラメータ算出部205、第2符号化ビット列復号部206、逆量子化・逆直交変換部207、復号画像信号重畳部208、予測画像生成部209及び復号画像メモリ210を備える。尚、図1の動画像符号化装置100と同様に、各ブロック間を結ぶ太実線の矢印はピクチャの画像信号、細実線の矢印は符号化を制御するパラメータ信号の流れを表すものである。
【0028】
図2の動画像復号装置200の復号処理は、図1の動画像符号化装置100の内部に設けられている復号処理に対応するものであるから、図2の逆量子化・逆直交変換部207、復号画像信号重畳部208、予測画像生成部209、復号画像メモリ210及び符号化情報格納メモリ204の各構成は、図1の動画像符号化装置100の逆量子化・逆直交変換部105、復号画像信号重畳部106、予測画像生成部108、復号画像メモリ107及び符号化情報格納メモリ113の各構成とそれぞれ対応する機能を有する。
【0029】
ビット列分離部201に供給されるビットストリームは規定のシンタックスの規則に従って分離し、分離された符号化ビット列が第1符号化ビット列復号部202、第2符号化ビット列復号部206に供給される。
【0030】
第1符号化ビット列復号部202は、供給された符号化ビット列を復号して予測モード、動きベクトル、差分量子化パラメータ等に関する符号化情報を出力し、差分量子化パラメータを量子化パラメータ生成部203に与えるとともに、符号化情報を符号化情報格納メモリ204に格納する。
【0031】
量子化パラメータ生成部203は、第1符号化ビット列復号部202から供給される差分量子化パラメータと予測量子化パラメータ算出部205にて算出される量子化パラメータとを加算して量子化パラメータを算出し、逆量子化・逆直交変換部207及び符号化情報格納メモリ204に供給する。
【0032】
符号化情報格納メモリ113は、復号が終了したブロックの量子化パラメータを格納する。更に、第1符号化ビット列復号部202にて復号されたブロック単位の符号化情報だけでなく、ピクチャやスライス単位で生成される符号化情報も必要に応じて格納する。また、図2に結線を図示していないが、復号された予測モードや動きベクトル等の符号化情報を予測画像生成部209に供給する。
【0033】
予測量子化パラメータ算出部205は、復号対象ブロックの周囲に隣接する既復号済みのブロックの量子化パラメータや符号化情報を用いて、予測量子化パラメータを算出し、量子化パラメータ生成部203に供給する。予測量子化パラメータ算出部205は動画像符号化装置100の予測量子化パラメータ算出部114と同等の機能を有しており、詳細な構成と動作は後述する実施例にて説明する。
【0034】
第2符号化ビット列復号部206は、供給された符号化ビット列を復号して直交変換・量子化された残差信号を算出し、直交変換・量子化された残差信号を逆量子化・逆直交変換部207に与える。
【0035】
逆量子化・逆直交変換部207は、第2符号化ビット列復号部206で復号された直交変換・量子化された残差信号に対して、量子化パラメータ生成部203にて生成された量子化パラメータを用いて、逆直交変換及び逆量子化を行い、逆直交変換・逆量子化された残差信号を得る。
【0036】
復号画像信号重畳部208は、予測画像生成部209で生成された予測画像信号と、逆量子化・逆直交変換部207により逆直交変換・逆量子化された残差信号とを重畳することにより、復号画像信号を生成し、出力するとともに復号画像メモリ210に格納する。復号画像メモリ210に格納する際には、復号画像に対して符号化によるブロック歪等を減少させるフィルタリング処理を施して、復号画像メモリ210に格納されることもある。
【0037】
予測画像生成部209は、第2符号化ビット列復号部206で復号される予測モードや動きベクトル等の符号化情報、更に符号化情報格納メモリ204から符号化情報を基にして、復号画像メモリ210から供給される復号画像信号から予測画像信号を生成し、復号画像信号重畳部208に供給する。
【0038】
以下の実施例では、動画像符号化装置100の中で太点線に囲まれた諸部120、特に予測量子化パラメータ算出部114と、動画像復号装置200の中で太点線に囲まれた諸部220、特に予測量子化パラメータ算出部205とで共通に実施される予測量子化パラメータを算出する方法の詳細について説明する。
【0039】
[実施例1]
まず、本発明の動画像符号化装置100の中で太点線で囲まれた諸部120の各部の動作について説明する。諸部120では、最初に画像メモリ101から所定画素サイズ単位の画素ブロックを符号化対象ブロックとして、アクティビティ算出部109に供給される。
アクティビティ算出部109では、一般に人間の視覚特性はエッジの少ない低周波成分に敏感である為、視覚的に劣化の目立ちやすい平坦部ではより細かく量子化し、劣化の比較的目立ちにくい絵柄の複雑な部分でより粗く量子化するように、所定ブロック単位に画像の複雑さや滑らかさを表現するアクティビティを算出する。
【0040】
アクティビティの一例として、MPEG−2 TestModel5(TM5)に記載される符号化対象ブロック内の画素の分散値による算出が挙げられる。分散値はブロック内の画像を構成する画素の平均からの散らばりの度合いを示す値であり、ブロック内に画像が平坦である(輝度変化が小さい)程小さく、複雑な絵柄である(輝度変化が大きい)もの程値が大きくなるので、ブロックのアクティビティとして利用する。ブロック内の画素値をp(x,y)で表すと、ブロックのアクティビティactは次式で算出される。
【0041】
【数1】

【0042】
ここで、BLKは符号化対象ブロックの画素総数であり、p_meanはブロック内の画素の平均値である。
【0043】
また、以上のような分散に限らず、符号化対象ブロック内の画素に対して、水平方向及び垂直方向で隣接する画素との差分絶対値をとり、ブロック内で総和をとっても良い。この場合でも、画像が平坦である場合は小さく、エッジが多い複雑な絵柄部分では大きい値となり、アクティビティとして利用可能である。次式により算出される。
【0044】
【数2】

【0045】
こうして算出されたアクティビティactは量子化パラメータ算出部110に供給される。
【0046】
量子化パラメータ算出部110は、アクティビティ算出部109で算出されたアクティビティactを基にして、符号化対象ブロックの最適な量子化パラメータQPを算出する。
【0047】
量子化パラメータ算出部110は、直前に符号化したフレーム内の平均アクティビティをavg_actとして記録しておき、符号化対象ブロックの正規化アクティビティNactを次式により算出する。
【0048】
【数3】

【0049】
ここで、上式の係数2は量子化パラメータのダイナミックレンジを表す値であり、0.5〜2.0の範囲をとる正規化アクティビティNactが算出される。
【0050】
尚、avg_actは、符号化過程の前に、予めフレーム内の全てのブロックに対してアクティビティを算出し、その平均値をavg_actとしてもよい。更に、avc_actは符号化情報格納メモリ113に格納しておいてもよく、必要に応じて量子化パラメータ算出部110が符号化情報格納メモリ113からavg_actを取得してもよい。
【0051】
算出された正規化アクティビティNactを基準となる量子化パラメータbaseQPと次式の如く乗算を行い、符号化対象ブロックの量子化パラメータQPを得る。
【0052】
【数4】

【0053】
ここで、baseQPは符号化対象ブロックを含むフレーム或いはスライスを代表する量子化パラメータであってもよい。また、MPEG−2 TM5に記載されているレート制御方法により、ピクチャ数フレーム分を1つのグループ(以下、GOP(Group Of Picture)と称す)とし、そのGOPの中でピクチャタイプ別に符号量を配分し、配分された符号量を仮想バッファ制御を用いたレート制御で算出されるブロック単位の量子化パラメータとしてもよい。更に、直前に符号化したフレームや符号化済みの同じ符号化タイプ(画像内符号化或いは画像間符号化)のフレームの平均量子化パラメータであってもよく、本発明では特に算出方法について限定しない。
【0054】
尚、baseQPは符号化時に算出或いは供給され、量子化パラメータ算出部110の内部或いは符号化情報格納メモリ113に格納し、随時取得してもよい。
【0055】
こうして算出された符号化対象ブロックの量子化パラメータは、符号化情報格納メモリ113及び差分量子化パラメータ生成部111に供給される。
【0056】
符号化情報格納メモリ113は、量子化パラメータ算出部110にて算出された量子化パラメータや既に符号化が終了した過去の符号化対象ブロックの量子化パラメータが格納されるだけでなく、符号化対象ブロックの符号化となる動きベクトルや予測モード等の符号化情報も格納され、必要に応じて各部が符号化情報を取得する。
【0057】
予測量子化パラメータ算出部114は、符号化情報格納メモリ113から符号化対象ブロックの周囲の既符号化済みの隣接ブロックの量子化パラメータやその他符号化情報を用いて、符号化対象ブロックの量子化パラメータを効率良く符号化、伝送する為の予測量子化パラメータを算出する。
【0058】
量子化パラメータを効率良く符号化、伝送する為には、量子化パラメータのまま符号化するよりも、周囲の既符号化済みのブロックの量子化パラメータとの差分(差分量子化パラメータ)をとって、その差分量子化パラメータを符号化、伝送する方が効率が良い。符号化対象ブロックと周囲の隣接ブロックとは、隣接している為、同じ或いは似た絵柄となることが多いので、各ブロックで比較的近い量子化パラメータが算出される傾向がある。その為、H.264では、ラスタスキャン順に符号化対象ブロックの直前に符号化をした左隣に隣接するブロックの量子化パラメータを予測量子化パラメータとし、符号化対象ブロックの量子化パラメータと予測量子化パラメータとの差分をとり、差分量子化パラメータを符号化、伝送する方法を採用した。
【0059】
しかしながら、図3が示される事例では、一意に左隣のブロックの量子化パラメータを予測量子化パラメータとすると、符号化対象ブロックと左の隣接ブロックとの画像の絵柄が異なるので、それぞれの量子化パラメータに影響を及ぼし、差分量子化パラメータも大きな値となり、発生符号量も大きくなり、効率的な符号化、伝送が出来ない恐れが生じる。
そこで、本発明に係る予測量子化パラメータ算出部114は、左隣のブロックから予測量子化パラメータを一意に選択せず、周囲の既符号化済みのブロックから最適な予測量子化パラメータを選択或いは算出して、差分量子化パラメータの発生符号量の効率を向上させる。
【0060】
図4は符号化対象ブロックと周囲に隣接する既符号化済みのブロックとの配置の定義を示す。本発明では説明の都合上、各ブロックのサイズを同じものとして表記しているが、例えば動き予測等でブロックサイズを変えて、最適な動き予測を行う場合にでも、符号化対象ブロックの左上の点を基準として、その周囲に隣接するブロックを選抜することで実現可能である。
【0061】
図5の記載の記号QPx(x=L,A,AL)は、図4で定義された周囲の既符号化済みの隣接ブロックの量子化パラメータを表す。予測量子化パラメータ算出部114は、図5に示される左と左上、上と左上との比較により、予測量子化パラメータを判定する。
【0062】
予測量子化パラメータ算出部114の動作について説明する。図6は実施例1における予測量子化パラメータ算出部114の動作を示すフローチャートである。
【0063】
まず、符号化情報格納メモリ113から符号化対象ブロックに隣接する周囲の既符号化済みのブロックの量子化パラメータを取得する(S100)。符号化対象ブロックの左上の基準位置情報から、符号化情報格納メモリ113に格納された記憶領域をアクセスして、該当するブロックの量子化パラメータを予測量子化パラメータ算出部114に供給する。
【0064】
画像の左端或いは上端に符号化対象ブロックが位置している場合、左或いは上及び左上の隣接ブロックは存在しない。ここで、量子化パラメータは常に正値をとることに着目して、隣接ブロックが存在しない場合、隣接ブロックの量子化パラメータQPx(x=L,A,AL)を0に設定して、予測量子化パラメータ算出部114に供給する。
【0065】
次に左と上の隣接ブロックが存在するか否かを判定する(S101)。左及び上の隣接ブロックの量子化パラメータがともに正の場合、両方が存在するので、S105に進む。そうでない場合、即ち一方が存在しない場合はS102に進む。
【0066】
次に左及び上の隣接ブロックがともに存在しないか否かを判定する(S102)。即ち、左及び上の隣接ブロックの量子化パラメータがともに0の場合、両方ともに存在しないので、予測量子化パラメータとして左及び上の隣接ブロックの量子化パラメータを参照出来ない。そこで、直前に符号化を終了したブロックの量子化パラメータを予測量子化パラメータとする。
【0067】
尚、画像の左上端のブロックが符号化対象ブロックである場合は、左と上の隣接ブロック、更に直前に符号化したブロックが存在しないので、ピクチャ或いはスライスの量子化パラメータを予測量子化パラメータとする(S103)。
【0068】
左或いは上の隣接ブロックのどちらか一方が存在する場合、正である一方の量子化パラメータを予測量子化パラメータとする(S104)。
【0069】
左及び上の隣接ブロックの両方が存在する場合、最初に左の隣接ブロックの量子化パラメータQPLと左上の隣接ブロックの量子化パラメータQPALとの一致判定を行う(S105)。QPLとQPALが一致する場合、上の隣接ブロックの量子化パラメータQPAを予測量子化パラメータとする(S106)。この場合、一例として図3で示される量子化パラメータの配置が考えられるので、OPAを選択することは適当と言える。また、QPAもQPL及びQPALと一致する場合は、全ての隣接ブロックの量子化パラメータが同じとなり、QPAの選択は問題ない。
【0070】
QPLとQPALが一致しない場合、S107に進む。次に、QPAとQPALとの一致判定を行う(S107)。QPAとQPALが一致する場合、左の隣接ブロックの量子化パラメータQPLを予測量子化パラメータとする(S108)。前述したQPLとQPALの一致の場合と同様の判定を考慮すれば、QPLが選択される。QPAとQPALが一致しない場合、QPLとQPAの平均値を予測量子化パラメータとする(S109)。この場合、左、上及び左上の隣接ブロックの量子化パラメータが全て異なるので、QPL或いはQPAのどちらか一方を選択するには十分な条件判定が出来ない。そこで、QPLとQPAの平均を予測量子化パラメータとして、均等な判定値とする。こうして算出された予測量子化パラメータは差分量子化パラメータ生成部111に供給される。
【0071】
差分量子化パラメータ生成部111は、量子化パラメータ算出部110にて算出された符号化対象ブロックの量子化パラメータに対して、予測量子化パラメータ算出部114にて算出された予測量子化パラメータと引き算を行い、差分量子化パラメータを算出する。予測量子化パラメータは復号時にも復号済みの周囲の隣接ブロックから符号化時と同様に算出されるので、差分符号化パラメータを符号化対象とすることで、符号化と復号で矛盾が生じず、量子化パラメータの符号量を削減することが可能となる。算出された差分量子化パラメータは第1の符号化ビット列生成部112に供給される。
【0072】
第1の符号化ビット列生成部112は、差分量子化パラメータ生成部111によって算出された差分量子化パラメータを規定のシンタックス規則に従ってエントロピー符号化して第1の符号化ビット列を生成する。
【0073】
図7に差分量子化パラメータのエントロピー符号化に使用される符号化変換テーブルの一例を示す。これは符号付き指数ゴロム符号化と呼ばれるテーブルであり、差分量子化パラメータの絶対値が小さい程短い符号長が与えられる。
【0074】
一般に画像をブロックで分割した場合、隣接したブロックでは似たような画像となるので、アクティビティが近い値となり、算出されるブロックの量子化パラメータも近い値になる。その為、差分量子化パラメータの発生頻度は、0が最も高く、絶対値が大きくなるにつれて低くなる傾向となり、図7のテーブルもその特徴を反映して、発生頻度が高い値に対して短い符号長を割り当てられている。予測量子化パラメータが符号化対象ブロックの量子化パラメータに近い値で予測されれば、0に近い差分量子化パラメータが算出され、発生符号量を抑制することが可能となる。
【0075】
第1の符号化ビット列生成部112は、差分量子化パラメータに対応する符号ビット列を図7のテーブルから抽出し、その符号ビット列を符号化ビット列多重化部115に供給する。
【0076】
上述した本実施例の動画像符号化装置100に対応する動画像復号装置200の中で太点線で囲まれた諸部220の各部の動作について説明する。
【0077】
諸部220では、最初に第1符号化ビット列復号部202にて復号された差分量子化パラメータが量子化パラメータ生成部203に供給される。また、差分量子化パラメータ以外の符号化情報が必要に応じて符号化情報格納メモリ204に格納される。
【0078】
量子化パラメータ生成部203では、第1符号化ビット列復号部202から供給される差分量子化パラメータと予測量子化パラメータ算出部205にて算出される量子化パラメータとを加算して、復号対象ブロックの量子化パラメータを算出し、逆量子化・逆直交変換部207及び符号化情報格納メモリ204に供給する。
【0079】
符号化情報格納メモリ204は、復号が終了したブロックの量子化パラメータが格納される。更に、第1符号化ビット列復号部202にて復号されたブロック単位の符号化情報だけでなく、ピクチャやスライス単位で生成される符号化情報も必要に応じて格納される。
【0080】
予測量子化パラメータ算出部205は、復号対象ブロックの周囲に隣接する既復号済みのブロックの量子化パラメータや符号化情報を用いて、予測量子化パラメータを算出し、量子化パラメータ生成部203に供給する。量子化パラメータ生成部203で算出された量子化パラメータは符号化情報格納メモリ204に格納され、次の復号対象ブロックの予測量子化パラメータの算出時に、復号対象ブロックの周囲に位置する復号済みの隣接ブロックを判定し、隣接ブロックの量子化パラメータを符号化情報格納メモリ204から取得する。こうして得られる復号済みの隣接ブロックの量子化パラメータは、動画像符号化装置100の予測量子化パラメータ算出部114が符号化情報格納メモリ113から取得する量子化パラメータと同一である。予測量子化パラメータ算出部205は動画像符号化装置100の予測量子化パラメータ算出部114と同等の機能を有しているので、符号化情報格納メモリ204から供給される隣接ブロックの量子化パラメータが同じであれば、符号化時と同一の予測量子化パラメータが算出される。
【0081】
予測量子化パラメータ算出部205では、符号化済みの隣接ブロックを復号済みの隣接ブロックと変更する以外同様の処理を行うので、量子化パラメータ予測の説明は割愛する。
こうして符号化側で算出された予測量子化パラメータが、復号側でも矛盾無く算出されることになる。
【0082】
また、予測量子化パラメータ算出部114及び205の予測量子化パラメータの判定処理において、S105で一致と判定された場合にのみ、上の隣接ブロックの量子化パラメータを選択し、それ以外は左の隣接ブロックの量子化パラメータ選択するこようにして、負荷の軽い判定とすることも可能である。この手法は、符号化及び復号がラスタースキャン順(画面の左上から右下への順次走査)に行われることから、左の符号化済み或いは復号済みの隣接ブロックを優先することとして、簡易的な判定を行うものである。
【0083】
上述の予測量子化パラメータの判定処理において、図6のS101の左と上の隣接ブロックの量子化パラメータがともに正である、即ち左と上の隣接ブロックがともに存在すると判定された場合から説明する。
【0084】
図8は、左と上の隣接ブロックがともに存在すると判定された後の簡易判定処理の動作を表すフローチャートである。左及び上の隣接ブロックの両方が存在する場合、QPLとQPALとの一致判定を行う(S110)。QPLとQPALが一致する場合、上の隣接ブロックの量子化パラメータQPAを予測量子化パラメータとする(S111)。QPLとQPALが一致しない場合、左の隣接ブロックの量子化パラメータQPLを予測量子化パラメータとする(S112)。こうして算出された予測量子化パラメータは差分量子化パラメータ生成部111に供給される。
【0085】
更に、左と左上の隣接ブロックの量子化パラメータの差分絶対値をΔL、上と左上の隣接ブロックの量子化パラメータの差分絶対値をΔAとして、ΔLとΔAの比較に基づいて、左或いは上の量子化パラメータを予測量子化パラメータとして選択することも可能である。
【0086】
符号化対象ブロックとその周囲の既符号化済みの隣接ブロックにおいて、図9で示すようにΔL及びΔAは左と左上、上と左上の隣接ブロックの量子化パラメータの差分絶対値を表し、それぞれ次式で表される。
【0087】
【数5】

【0088】
【数6】

【0089】
ΔAがΔLよりも大きくなる場合は、QPAとQPALとの差が大きい場合であり、上と左上の隣接ブロックの間で画像の滑らかさ或いは複雑さが左と左上の隣接ブロック間よりも異なっている(変化が大きい)と推察される。その為、図10の太点線で示されるように、符号化対象ブロックとその周囲の既符号化済みの隣接ブロックにおいて、左2つのブロック(左と左上の隣接ブロック)と右2つのブロック(符号化対象ブロックと上の隣接ブロック)とで量子化パラメータの差が生じると考えられるので、符号化対象ブロックの量子化パラメータは左の隣接ブロックの量子化パラメータよりも上の隣接ブロックの量子化パラメータに近いと判定する。
【0090】
以上の判定をフローチャートにしたものが図11である。図11を用いて、図6のS101の左と上の隣接ブロックの量子化パラメータがともに正である、即ち左と上の隣接ブロックがともに存在すると判定された場合から説明する。
【0091】
左及び上の隣接ブロックの両方が存在する場合、ΔLとΔAとの比較判定を行う(S113)。ΔAがΔLよりも大きい場合、上の隣接ブロックの量子化パラメータQPAを予測量子化パラメータとする(S114)。そうでない場合、左の隣接ブロックの量子化パラメータQPLを予測量子化パラメータとする(S115)。こうして算出された予測量子化パラメータは差分量子化パラメータ生成部111に供給される。
【0092】
[実施例2]
本実施例において、予測量子化パラメータの算出を行う場合に、動画像符号化装置100の予測量子化パラメータ算出部114で参照する隣接ブロックは符号化済みのブロックであり、動画像復号装置200の予測量子化パラメータ算出部205で参照する隣接ブロックは復号済みのブロックである。符号化側で参照される符号化済みのブロックは、符号化内部で次の符号化の為に局部復号されたブロックであり、復号側で参照される復号済みブロックと同じである。その為、予測量子化パラメータ算出部114及び205の機能も共通であり、それぞれで算出される予測量子化パラメータも同じある。以降の実施例では、予測量子化パラメータの算出について、符号化と復号で切り分けず、共通の機能として符号化側で説明する。
【0093】
実施例2における予測量子化パラメータ算出部114の動作について説明する。図12は実施例2における予測量子化パラメータ算出部114の動作を示すフローチャートである。
【0094】
最初に、符号化情報格納メモリ113から符号化対象ブロックに隣接する周囲の既符号化済みのブロックの量子化パラメータを取得する(S200)。符号化対象ブロックの左上の基準位置情報から、符号化情報格納メモリ113に格納された記憶領域をアクセスして、該当するブロックの量子化パラメータを予測量子化パラメータ算出部114に供給する。画像の左端或いは上端に符号化対象ブロックが位置している場合、左或いは上及び左上の隣接ブロックは存在しない。ここで、量子化パラメータは常に正値をとることに着目して、隣接ブロックが存在しない場合、隣接ブロックの量子化パラメータQPx(x=L,A,AL)を0に設定して、予測量子化パラメータ算出部114に供給する。次に左と上の隣接ブロックが存在するか否かを判定する(S201)。左及び上の隣接ブロックの量子化パラメータがともに正の場合、両方が存在するので、S205に進む。そうでない場合、即ち一方が存在しない場合はS202に進む。S202からS204の処理過程について実施例1と同様なので割愛する。
【0095】
左及び上の隣接ブロックの両方が存在する場合、左の隣接ブロックの量子化パラメータQPLと左上の隣接ブロックの量子化パラメータQPALとの差分絶対値ΔLが閾値THL未満か否かを判定する(S205)。差分絶対値ΔLは次式で算出される。
【0096】
【数7】

【0097】
ΔLがTHL未満となる場合、状態判定フラグSLを”1”に設定する(S206)。一方、ΔLがTHL未満でない場合、状態判定フラグSLを”0”に設定する(S207)。実施例2では、QPLとQPALとが閾値THL未満で収まる場合、左と左上の各隣接ブロックは量子化パラメータが一致していると判断することとし、実施例1におけるQPLとQPALの一致と同様の判定を行う。その為、状態判定フラグSLが”1”となる場合はQPAを予測量子化パラメータとすることを表す。次に、上の隣接ブロックの量子化パラメータQPAとQPALとの差分絶対値ΔAが閾値THA未満か否かを判定する(S208)。差分絶対値ΔAは次式で算出される。
【0098】
【数8】

【0099】
ΔAがTHA未満となる場合、状態判定フラグSAを”1”に設定する(S209)。一方、ΔAがTHA未満でない場合、状態判定フラグSAを”0”に設定する(S210)。実施例2では、QPAとQPALとが閾値THA未満で収まる場合、上と左上の各隣接ブロックは量子化パラメータが一致していると判断することとし、実施例1におけるQPAとQPALの一致と同様の判定を行う。その為、状態判定フラグSAが”1”となる場合はQPLを予測量子化パラメータとすることを表す。状態判定フラグSL及びSAに基づいて、予測量子化パラメータを算出する(S211)。図13は差分絶対値ΔL及びΔAと閾値THL及びTHAとの比較を状態判定フラグSL及びSAと関連付けを行った2次元配置図である。左下の原点0を基準に、横軸をΔLの大きさ、縦軸をΔAの大きさをとり、閾値THL及びTHAによって4つに領域に区分され、それぞれの領域で選択する予測量子化パラメータを示す(図13中に領域1〜4で示される)。
【0100】
領域1
状態判定フラグSLが”1”、SAが”0”の場合であり、左と左上の隣接ブロックの量子化パラメータの差が小さく、上と左上の量子化パラメータの差が大きくなり、図3に示される事例のように縦方向のブロックで量子化パラメータが近似していると考えられる。その為、符号化対象ブロックの量子化パラメータは上の隣接ブロックの量子化パラメータQPAに近い値になると判断し、予測量子化パラメータをQPAとする。
【0101】
領域2
状態判定フラグSLが”0”、SAが”1”の場合であり、領域1と同様の判断を行うと、横方向のブロックで量子化パラメータが近似していると考えられ、符号化対象ブロックの量子化パラメータは左の隣接ブロックの量子化パラメータQPLに近い値になると判断し、予測量子化パラメータをQPLとする。
【0102】
領域3
状態判定フラグSL及びSAがともに”0”の場合である。即ち、QPL及びQPAがともにQPALとの差分絶対値が大きい場合であり、左、上及び左上の隣接ブロックの量子化パラメータが全て異なるので、QPL或いはQPAのどちらか一方を選択するには十分な条件判定が出来ない。そこで、QPLとQPAの平均を予測量子化パラメータとして、均等な判定値とする。
【0103】
領域4
状態判定フラグSL及びSAがともに”1”の場合である。即ち、QPL及びQPAがともにQPALとの差分絶対値が小さい場合であり、どちらか一方を選択せず、QPLとQPAの平均値を予測量子化パラメータとする。
【0104】
こうして判定、算出された予測量子化パラメータは差分量子化パラメータ生成部111に供給される。
【0105】
閾値THL及びTHAを1とすると、量子化パラメータは正整数であるので、実施例1と同等の判定となる。但し、上述した領域4は、左、上及び左上の全ての値が同じとなるので、平均値処理を必要としない。また、判定として各隣接ブロックの量子化パラメータの一致を調べるだけで済み、差分絶対値を演算で算出する必要が無い為、処理負荷を低減した実施例2のスペシャルケースとなり、高い実効性を備えるものである。
【0106】
閾値THL及びTHAはあまり大きな値に設定すると、平均値の発生確率が高くなり、予測量子化パラメータの参照先に偏りがある場合には有効性が弱くなるので、2前後に設定することが望ましい。
【0107】
また、図13の領域3及び4において、予測量子化パラメータとしてQPLとQPAの平均値をとることとしたが、ΔL及びΔAの比較を行い、予測量子化パラメータとして参照する隣接ブロックの量子化パラメータを判定してもよい。図12のフローチャートのS211の中で、或いはS211の後に、ΔLとΔAを比較する。ΔLが大きい場合はQPA、ΔAが大きい場合はQPL、同じ大きさの場合はQPLとQPAの平均値を予測量子化パラメータとする。
【0108】
[実施例3]
実施例3における予測量子化パラメータ算出部114の動作について説明する。実施例1との相違は、左或いは上の隣接ブロックの量子化パラメータを予測量子化パラメータとして参照していたのを、予測量子化パラメータの判定に基づいて、左及び上の隣接ブロックの量子化パラメータに重み付けを行い、算出される値を予測量子化パラメータとする点である。
【0109】
図14は実施例3における予測量子化パラメータ算出部114の動作を示すフローチャートである。図14のフローチャートのS300からS304までは実施例1の図6のS100からS104までと同じであるので、説明を割愛し、S301の左と上の隣接ブロックの量子化パラメータがともに正である、即ち左と上の隣接ブロックがともに存在すると判定された場合から説明する。
【0110】
左及び上の隣接ブロックの両方が存在する場合、QPLとQPALとの一致判定を行う(S305)。QPLとQPALが一致する場合、上の隣接ブロックの量子化パラメータの重み付け係数FAを5、左の隣接ブロックの量子化パラメータの重み付け係数FLを3とし、上の隣接ブロックの量子化パラメータに対して重み付けを大きくする(S306)。QPLとQPALが一致しない場合、S307に進み、QPAとQPALとの一致判定を行う(S307)。QPAとQPALが一致する場合、FAを3、FLを5として、左の隣接ブロックの量子化パラメータに対して重み付けを大きくする(S308)。QPAとQPALが一致しない場合、FAとFLをともに4とし、左と上の隣接ブロックの量子化パラメータに対する重み付けを均等化する(S309)。これはQPLとQPAの平均値を算出することと等価であり、実施例1と同等となる。決定した重み付け係数からと各量子化パラメータから次式にて予測量子化パラメータpredQPを算出する(S310)。
【0111】
【数9】

【0112】
ここで、上式の分母はFA+FLであり、分子の2は四捨五入の為に加算される(FA+FL)/2の値である。
【0113】
こうして算出された予測量子化パラメータは差分量子化パラメータ生成部111に供給される。
【0114】
また、予測量子化パラメータの判定処理において、S305で一致と判定された場合にのみ、上の隣接ブロックの量子化パラメータの重み付け係数を大きくして、それ以外は左の隣接ブロックの量子化パラメータの重み付け係数を大きくするこようにして、負荷の軽い判定とすることも可能である。この手法は、符号化及び復号がラスタースキャン順(画面の左上から右下への順次走査)に行われることから、左の隣接ブロックの量子化パラメータの重み付け係数への重み付けを優先することとして、簡易的な判定を行うものである。
【0115】
上述の予測量子化パラメータの判定処理において、図14のS301の左と上の隣接ブロックの量子化パラメータがともに正である、即ち左と上の隣接ブロックがともに存在すると判定された場合から説明する。
【0116】
図15は、左と上の隣接ブロックがともに存在すると判定された後の簡易判定処理の動作を表すフローチャートである。左及び上の隣接ブロックの両方が存在する場合、QPLとQPALとの一致判定を行う(S311)。QPLとQPALが一致する場合、上の隣接ブロックの量子化パラメータの重み付け係数FAを5、左の隣接ブロックの量子化パラメータの重み付け係数FLを3とし、上の隣接ブロックの量子化パラメータに対して重み付けを大きくする(S312)。QPLとQPALが一致しない場合、FAを3、FAを5として、左の隣接ブロックの量子化パラメータに対して重み付けを大きくする(S313)。決定した重み付け係数に基づいて、上述したS310にて予測量子化パラメータpredQPを算出する。
【0117】
更に、実施例2の判定処理とも組合せは可能である。この場合、図13で示される差分絶対値ΔL及びΔAと閾値THL及びTHAとの比較を状態判定フラグSL及びSAと関連付けを行った2次元配置図に対して、各領域に重み付け係数を設定しておくことで可能となる。図16に重み付け係数を設定した2次元配置の一例を示す。領域1はFAを5、FLを3とし、領域2はFAを3、FLを5とし、残りの領域3及び4ではFA、FLともに4と設定する。状態判定フラグにより選択された領域の重み付け係数により、予測量子化パラメータを算出する。こうして算出された予測量子化パラメータは差分量子化パラメータ生成部111に供給される。
【0118】
尚、ここでは重み付け係数FA及びFLの係数の組合せとして、(FA,FL)=(5,3)、(4,4)、(3,5)としたが、これ以外の係数を設定してもよい。但し、計算の高速化を重視する場合、FA+FLが2の冪乗で表される変数を選択することが望ましい。
【0119】
[実施例4]
実施例4における予測量子化パラメータ算出部114の動作について説明する。図17は実施例4における予測量子化パラメータ算出部114の動作を示すフローチャートである。
【0120】
最初に、符号化情報格納メモリ113から符号化対象ブロックに隣接する周囲の既符号化済みのブロックの量子化パラメータを取得する(S400)。符号化対象ブロックの左上の基準位置情報から、符号化情報格納メモリ113に格納された記憶領域をアクセスして、該当するブロックの量子化パラメータを予測量子化パラメータ算出部114に供給する。画像の左端或いは上端に符号化対象ブロックが位置している場合、左或いは上及び左上の隣接ブロックは存在しない。ここで、量子化パラメータは常に正値をとることに着目して、隣接ブロックが存在しない場合、隣接ブロックの量子化パラメータQPx(x=L,A,AL)を0に設定して、予測量子化パラメータ算出部114に供給する。次に左と上の隣接ブロックが存在するか否かを判定する(S401)。左及び上の隣接ブロックの量子化パラメータがともに正の場合、両方が存在するので、S405に進む。そうでない場合、即ち一方が存在しない場合はS402に進む。S402からS404の処理過程について実施例1至乃3と同様なので割愛する。
【0121】
左及び上の隣接ブロックの両方が存在する場合、左の隣接ブロックの量子化パラメータQPLと左上の隣接ブロックの量子化パラメータQPALとの差分絶対値ΔL及び上の隣接ブロックの量子化パラメータQPAと左上の隣接ブロックの量子化パラメータQPALとの差分絶対値ΔAとを算出する。算出されたΔLとΔAとの差分をとり、その差分をパラメータDで除算を行い、得られる商を量子化ファクターδとすると、δは次式から算出される(S405)。
【0122】
【数10】

【0123】
ここで、パラメータDは、ΔLとΔAとの差分をD単位に量子化するステップであり、図18に示されるように、パラメータDによりΔLとΔAとの差分の量子化値としてδが算出される。
【0124】
本実施例では、上式で得られたδに応じて、左及び上の隣接ブロックの量子化パラメータに係る重み付け係数を変更して、予測量子化パラメータを算出する。ΔLとΔAとの差分が正で大きい場合は、左と左上の隣接ブロックの量子化パラメータとの差が大きい場合である。符号化対象ブロックとその周囲の既符号化済みの隣接ブロックは、上2つのブロック(上と左上の隣接ブロック)と下2つのブロック(左の隣接ブロックと符号化対象ブロック)との間で量子化パラメータの差が生じる傾向にある。この場合、符号化対象ブロックは左の隣接ブロックに近い量子化パラメータをとると判定し、左の隣接ブロックの量子化パラメータに対する重み付けを大きくする。
【0125】
逆に、ΔLとΔAとの差分が負で大きい場合は、上と左上の隣接ブロックの量子化パラメータとの差が大きい場合である。符号化対象ブロックとその周囲の既符号化済みの隣接ブロックは、左2つのブロック(左と左上の隣接ブロック)と右2つのブロック(上の隣接ブロックと符号化対象ブロック)との間で量子化パラメータの差が生じる傾向にある。この場合、符号化対象ブロックは上の隣接ブロックに近い量子化パラメータをとると判定し、上の隣接ブロックの量子化パラメータに対する重み付けを大きくする。
【0126】
ΔLとΔAとの差分が0に近い場合は、符号化対象の左及び上の隣接ブロックが近い量子化パラメータとなる場合である。この場合、左と上の隣接ブロックの量子化パラメータに対する重み付けを均等化する。
【0127】
このように、量子化ファクターδに応じて左と上の隣接ブロックの量子化パラメータの重み付け係数を可変させて、最適な予測量子化パラメータを算出する為に、以下ではδの正規化を行う。
【0128】
まず、δの上限MAX及び下限MINを設定し、δをMAX及びMINの範囲内に収まる値に制限する(S406)。ここで、MINは−MAXと等価であり、MAX及びMINは後工程のS408で設定されるテーブルの標本数に合わせるように設定する。次に、δにオフセット値offsetを加算してindexを算出する(S407)。indexは後工程のS408で設定されるテーブルのインデックスであり、0を含む整数として表される。その為、δにoffsetを加算して、正整数に変換する。offsetにはMAXが設定され、indexの最小数はδ+offset=−MIN+MAX=0として表すことが可能となる。算出されたindexから該当する重み付け係数の変換テーブルから読み出す(S408)。ここでは、MAX=2とした場合の例を用いて説明する。
【0129】
図19はMAXを2として場合に、ΔLとΔAとの差分からδを算出し、上限と下限を設けた場合の変換例である。δは−2≦δ≦2の範囲で5つの整数値をとるので、これら5つの値に合わせて、重み付け係数のテーブルが設定される。図20に重み付け係数のテーブルの一例を示す。重み付け係数のテーブルの中でMAXの値となるindex(この場合2となる)で左及び上の隣接ブロックの量子化パラメータに対する重み付けを均等とし、indexが小さくなるに従い、上の隣接ブロックの量子化パラメータに対する重み付け係数FAを大きくし、indexが大きくなるに従い、左の隣接ブロックの量子化パラメータに対する重み付け係数FLを大きくなるように設定する。続いて、indexで指定される重み付け係数の組(FA,FL)を選択して、予測量子化パラメータを算出する(S409)。決定した重み付け係数からと各量子化パラメータから次式にて予測量子化パラメータpredQPを算出する。
【0130】
【数11】

【0131】
ここで、上式の分母はFA+FLであり、分子の2は四捨五入の為に加算される(FA+FL)/2の値である。
【0132】
以上のようにして、予測量子化パラメータが算出される。上述した実施例では、パラメータDによる除算を行った為、図18で示されるように0近傍付近の発生頻度が高くなる傾向にあるので、図21で示されるように均等分割をして発生頻度を均等化しても構わない。この場合、S405の量子化ファクターδの演算方式を変更することで解決される。
【0133】
尚、ここでは重み付け係数FA及びFLの係数の組合せとして、(4,0)、(3,1)、(2,2)としたが、これ以外の係数を設定してもよい。但し、計算の高速化を重視する場合、FA+FLが2の冪乗で表される変数を選択することが望ましい。
【0134】
また、δを演算として除算を行っているが、パラメータDを2の冪乗の値とし、δの演算をシフト演算やビットマスクにより、処理を高速化することも可能である。
【0135】
実施の形態の動画像符号化装置によれば、符号化対象のブロック毎に符号化される量子化パラメータを、周囲の符号化済みのブロックの量子化パラメータ及び符号化情報を用いて、最適な予測量子化パラメータを予測して算出し、量子化パラメータと予測量子化パラメータとの差分をとり符号化することで、画質を変化させずに、量子化パラメータの符号量を削減して、符号化効率を向上させることが出来る。
【0136】
また、符号化側と復号側で、量子化パラメータ予測の共通の機能として実装出来るので、回路規模を縮小することが出来る。これは、符号化済みの隣接ブロックが符号化側では次の符号化対象ブロックの予測の為に局部復号したブロックとなり、復号済みブロックと同一である為、符号化側と復号側で矛盾を生じないように量子化パラメータ予測の判定を実現したことによる。
【0137】
以上述べた実施の形態の動画像符号化装置が出力する動画像の符号化ストリームは、実施の形態で用いられた符号化方法に応じて復号することができるように特定のデータフォーマットを有しており、動画像符号化装置に対応する動画像復号装置がこの特定のデータフォーマットの符号化ストリームを復号することができる。
【0138】
動画像符号化装置と動画像復号装置の間で符号化ストリームをやりとりするために、有線または無線のネットワークが用いられる場合、符号化ストリームを通信路の伝送形態に適したデータ形式に変換して伝送してもよい。その場合、動画像符号化装置が出力する符号化ストリームを通信路の伝送形態に適したデータ形式の符号化データに変換してネットワークに送信する動画像送信装置と、ネットワークから符号化データを受信して符号化ストリームに復元して動画像復号装置に供給する動画像受信装置とが設けられる。
【0139】
動画像送信装置は、動画像符号化装置が出力する符号化ストリームをバッファするメモリと、符号化ストリームをパケット化するパケット処理部と、パケット化された符号化データをネットワークを介して送信する送信部とを含む。動画像受信装置は、パケット化された符号化データをネットワークを介して受信する受信部と、受信された符号化データをバッファするメモリと、符号化データをパケット処理して符号化ストリームを生成し、動画像復号装置に提供するパケット処理部とを含む。
【0140】
以上の符号化及び復号に関する処理は、ハードウェアを用いた伝送、蓄積、受信装置として実現することができるのは勿論のこと、ROM(リード・オンリ・メモリ)やフラッシュメモリ等に記憶されているファームウェアや、コンピュータ等のソフトウェアによっても実現することができる。そのファームウェアプログラム、ソフトウェアプログラムをコンピュータ等で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することも、有線あるいは無線のネットワークを通してサーバから提供することも、地上波あるいは衛星ディジタル放送のデータ放送として提供することも可能である。
【0141】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0142】
100 動画像符号化装置、 101 画像メモリ、 102 残差信号生成部、 103 直交変換・量子化部、 104 第2の符号化ビット列生成部、 105 逆量子化・逆直交変換部、 106 復号画像信号重畳部、 107 復号画像メモリ、 108 予測画像生成部、 109 アクティビティ算出部、 110 量子化パラメータ算出部、 111 差分量子化パラメータ生成部、 112 第1の符号化ビット列生成部、 113 符号化情報格納メモリ、 114 予測量子化パラメータ算出部、 115 符号化ビット列多重化部、 200 動画像復号装置、 201 ビット列分離部、 202 第1符号化ビット列復号部、 203 量子化パラメータ生成部、 204 符号化情報格納メモリ、 205 予測量子化パラメータ算出部、 206 第2符号化ビット列復号部、 207 逆量子化・逆直交変換部、 208 復号画像信号重畳部、 209 予測画像生成部、 210 復号画像メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像の各ピクチャを分割したブロック単位で前記動画像を符号化する動画像符号化装置であって、
ブロック単位で画像の複雑度合いを表すアクティビティを算出するアクティビティ算出部と、
前記アクティビティに基づき符号化対象ブロックの量子化パラメータを算出する量子化パラメータ算出部と、
前記量子化パラメータを含む符号化情報を記憶する符号化情報格納メモリから前記符号化対象ブロックの周囲に隣接する複数の符号化済みの隣接ブロックの量子化パラメータを読み出し、複数の前記隣接ブロックの量子化パラメータから前記符号化対象ブロックの予測量子化パラメータを算出する予測量子化パラメータ算出部と、
前記符号化対象ブロックの量子化パラメータと前記予測量子化パラメータとの差分により前記符号化対象ブロックの差分量子化パラメータを生成する差分量子化パラメータ生成部と、
前記符号化対象ブロックの差分量子化パラメータを符号化する符号化部とを備えることを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項2】
前記予測量子化パラメータ算出部は、前記符号化情報格納メモリから前記符号化対象ブロックの左、左上及び上に隣接する3つの隣接ブロックの量子化パラメータを読み出し、左及び左上に隣接する隣接ブロックの量子化パラメータの差分に基づく条件、または、上及び左上に隣接する隣接ブロックの量子化パラメータの差分に基づく条件に従って、左及び上に隣接する隣接ブロックの少なくとも一方の隣接ブロックの量子化パラメータを用いて、前記符号化対象ブロックの予測量子化パラメータを算出することを特徴とする請求項1に記載の動画像符号化装置。
【請求項3】
前記予測量子化パラメータ算出部は、前記符号化対象ブロックの左及び左上に隣接する隣接ブロックの量子化パラメータが一致するという条件を満たす場合、前記符号化対象ブロックの上に隣接する隣接ブロックの量子化パラメータを前記符号化対象ブロックの予測量子化パラメータとして算出することを特徴とする請求項2に記載の動画像符号化装置。
【請求項4】
前記予測量子化パラメータ算出部は、前記符号化対象ブロックの上及び左上に隣接する隣接ブロックの量子化パラメータが一致するという条件を満たす場合、前記符号化対象ブロックの左に隣接する隣接ブロックの量子化パラメータを前記符号化対象ブロックの予測量子化パラメータとして算出することを特徴とする請求項3に記載の動画像符号化装置。
【請求項5】
前記2つの条件のいずれも満たさない場合、前記符号化対象ブロックの左及び上の隣接ブロックの量子化パラメータの平均値を前記符号化対象ブロックの予測量子化パラメータとして算出することを特徴とする請求項4に記載の動画像符号化装置。
【請求項6】
前記予測量子化パラメータ算出部は、前記符号化対象ブロックの左及び左上に隣接する隣接ブロックの量子化パラメータの差分絶対値と所定の閾値との大小比較に関する条件と前記符号化対象ブロックの上及び左上に隣接する隣接ブロックの量子化パラメータの差分絶対値と所定の閾値との大小比較に関する条件の成否に基づいて、前記符号化対象ブロックの上に隣接する隣接ブロックの量子化パラメータ、前記符号化対象ブロックの左に隣接する隣接ブロックの量子化パラメータ、及び前記符号化対象ブロックの左及び上の隣接ブロックの量子化パラメータの平均値のいずれかを、前記符号化対象ブロックの予測量子化パラメータとして算出することを特徴とする請求項2に記載の動画像符号化装置。
【請求項7】
前記予測量子化パラメータ算出部は、前記符号化対象ブロックの左及び左上に隣接する隣接ブロックの量子化パラメータが一致する場合、上の隣接ブロックの量子化パラメータの重み付け係数を左の隣接ブロックの量子化パラメータの重み付け係数よりも大きく設定し、前記符号化対象ブロックの上及び左上に隣接する隣接ブロックの量子化パラメータが一致するという条件を満たす場合、左の隣接ブロックの量子化パラメータの重み付け係数を上の隣接ブロックの量子化パラメータの重み付け係数よりも大きく設定し、左及び上の隣接ブロックの量子化パラメータの重み付け平均値を前記符号化対象ブロックの予測量子化パラメータとして算出することを特徴とする請求項2に記載の動画像符号化装置。
【請求項8】
前記予測量子化パラメータ算出部は、前記符号化対象ブロックの左及び左上に隣接する隣接ブロックの量子化パラメータの差分絶対値と前記符号化対象ブロックの上及び左上に隣接する隣接ブロックの量子化パラメータの差分絶対値との差分値を算出し、前記差分値を所定の値で除算した商に基づいて、左及び上の隣接ブロックの量子化パラメータの重み付け係数を変更し、左及び上の隣接ブロックの量子化パラメータの重み付け平均値を前記符号化対象ブロックの予測量子化パラメータとして算出することを特徴とする請求項2に記載の動画像符号化装置。
【請求項9】
動画像の各ピクチャを分割したブロック単位で前記動画像を符号化する動画像符号化方法であって、
ブロック単位で画像の複雑度合いを表すアクティビティを算出するアクティビティ算出ステップと、
前記アクティビティに基づき符号化対象ブロックの量子化パラメータを算出する量子化パラメータ算出ステップと、
前記量子化パラメータを含む符号化情報を記憶する符号化情報格納メモリから前記符号化対象ブロックの周囲に隣接する複数の符号化済みの隣接ブロックの量子化パラメータを読み出し、複数の前記隣接ブロックの量子化パラメータから前記符号化対象ブロックの予測量子化パラメータを算出する予測量子化パラメータ算出ステップと、
前記符号化対象ブロックの量子化パラメータと前記予測量子化パラメータとの差分により前記符号化対象ブロックの差分量子化パラメータを生成する差分量子化パラメータ生成ステップと、
前記符号化対象ブロックの差分量子化パラメータを符号化する符号化ステップとを備えることを特徴とする動画像符号化方法。
【請求項10】
動画像の各ピクチャを分割したブロック単位で前記動画像を符号化する動画像符号化プログラムであって、
ブロック単位で画像の複雑度合いを表すアクティビティを算出するアクティビティ算出ステップと、
前記アクティビティに基づき符号化対象ブロックの量子化パラメータを算出する量子化パラメータ算出ステップと、
前記量子化パラメータを含む符号化情報を記憶する符号化情報格納メモリから前記符号化対象ブロックの周囲に隣接する複数の符号化済みの隣接ブロックの量子化パラメータを読み出し、複数の前記隣接ブロックの量子化パラメータから前記符号化対象ブロックの予測量子化パラメータを算出する予測量子化パラメータ算出ステップと、
前記符号化対象ブロックの量子化パラメータと前記予測量子化パラメータとの差分により前記符号化対象ブロックの差分量子化パラメータを生成する差分量子化パラメータ生成ステップと、
前記符号化対象ブロックの差分量子化パラメータを符号化する符号化ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする動画像符号化プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2013−102277(P2013−102277A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243641(P2011−243641)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】