説明

動画像符号化装置、動画像符号化方法及び動画像符号化プログラム

【課題】隣接ブロックの動き情報を使用して符号化を行う場合に、処理負荷を抑え、動き情報の符号化効率を向上させる。
【解決手段】結合動き情報候補リスト生成部1000は、符号化対象ブロックに隣接する複数の符号化済みの隣接ブロックの動き情報を符号化対象ブロックの動き情報の候補として算出し、動き情報の候補リストを生成する。結合動き情報候補リスト削除部1001は、生成された候補リストに含まれる動き情報の中で、互いに予測方向および動きベクトル値が一致するものがある場合、いずれか一方の動き情報を候補リストから削除する。符号化部は、結合予測モードが選択された場合に、結合動き情報候補リスト削除部1001にて処理された候補リストから得た指定された参照ブロックの動き情報を用いて、符号化対象ブロックを符号化するとともに、指定された参照ブロックを示すインデックスを符号化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動き補償予測を用いた動画像符号化技術に関し、特に動き補償予測に利用する動画像符号化装置、動画像符号化方法及び動画像符号化プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
MPEG−4 AVC/H.264(以後、AVC)等に代表される動画像符号化では、ピクチャを矩形ブロックに分割し、ピクチャ間でブロック単位に動き推定、補償を行う動き補償予測が用いられる。動き補償予測において各ブロックで生成される動きベクトルは、その符号量を削減するために、予測処理が施される。
【0003】
AVCでは、隣接するブロックの動きベクトルの間に強い相関があることを利用して、隣接ブロックから予測値を算出し、その予測値との差分ベクトルを符号化することによって符号量を削減している。しかし、これらの予測方法では、参照する隣接ブロックの位置が限定されているために、予測が当たらないと、動きベクトルの差分が大きくなり、発生符号量が増加する課題があった。また、動きベクトルの符号量は削減されるものの、予測方向や参照画像インデックス等の他の動き情報は処理対象のブロック毎に符号化されるので、効率的な符号化に至っていないという課題もあった。
【0004】
これらの課題を解決するために、特許文献1のように、複数の隣接ブロックの中から参照する隣接ブロックを特定する付加情報を符号化することによって、処理対象のブロックの動き情報を符号化せずに、隣接ブロックの動き情報を使用して符号化を行い、符号量を削減するマージ符号化技術が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−276439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マージ符号化は、処理対象のブロックの動き情報を符号化せずに、空間及び時間的に隣接するブロックの動き情報を使用して符号化を行うことで、符号量を削減して符号化効率を向上させている。また、参照する隣接ブロックの候補を複数用意し、参照する隣接ブロックを特定する付加情報を符号化することによって、より符号化対象ブロックの動き情報に近い隣接ブロックを参照できるようにしている。
【0007】
しかしながら、参照隣接ブロック候補の数が多いと候補を特定する付加情報の符号量が多くなり、結果として符号化効率の向上に結びつかないという面もある。また、参照隣接ブロック候補の数を削減するために、参照隣接ブロック候補の動き情報を詳細に比較すると処理量の増加につながる。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、隣接ブロックの動き情報を使用して符号化を行う場合に、処理負荷が少なく、動き情報の符号化効率を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の動画像符号化装置は、動画像の各ピクチャを分割したブロック単位で動きベクトルを用いて前記動画像を符号化する動画像符号化装置であって、符号化対象ブロックに隣接する複数の符号化済みの隣接ブロックの動き情報を前記符号化対象ブロックの動き情報の候補として算出し、動き情報の候補リストを生成する候補リスト生成部(1000)と、生成された前記候補リストに含まれる動き情報の中で、互いに予測方向および動きベクトル値が一致するものがある場合、いずれか一方の動き情報を前記候補リストから削除する候補リスト削除部(1001)とを含む動き情報算出部(906)と、前記候補リスト削除部にて処理された前記候補リスト内の動き情報を備える前記隣接ブロックの中から一つの隣接ブロックを、動き情報を参照するための参照ブロックとして指定して、指定された参照ブロックの動き情報を前記符号化対象ブロックの動き情報として使用する結合予測モードが選択された場合に、前記候補リスト削除部にて処理された前記候補リストから得た前記指定された参照ブロックの動き情報を用いて、前記符号化対象ブロックを符号化するとともに、指定された参照ブロックを示すインデックスを符号化する符号化部(103、110)とを備える。
【0010】
本発明の別の態様は、動画像符号化方法である。この方法は、動画像の各ピクチャを分割したブロック単位で動きベクトルを用いて前記動画像を符号化する動画像符号化方法であって、符号化対象ブロックに隣接する複数の符号化済みの隣接ブロックの動き情報を前記符号化対象ブロックの動き情報の候補として算出し、動き情報の候補リストを生成する候補リスト生成ステップと、生成された前記候補リストに含まれる動き情報の中で、互いに予測方向および動きベクトル値が一致するものがある場合、いずれか一方の動き情報を前記候補リストから削除する候補リスト削除ステップとを含む動き情報算出ステップと、前記候補リスト削除ステップにて処理された前記候補リスト内の動き情報を備える前記隣接ブロックの中から一つの隣接ブロックを、動き情報を参照するための参照ブロックとして指定して、指定された参照ブロックの動き情報を前記符号化対象ブロックの動き情報として使用する結合予測モードが選択された場合に、前記候補リスト削除ステップにて処理された前記候補リストから得た前記指定された参照ブロックの動き情報を用いて、前記符号化対象ブロックを符号化するとともに、指定された参照ブロックを示すインデックスを符号化する符号化ステップとを備える。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、動き情報を処理する際の負荷を抑制しつつ、動き情報の符号化効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る動画像符号化装置の構成を示す図である。
【図2】符号化対象画像の一例を示す図である。
【図3】予測ブロックサイズの詳細な定義を示す図である。
【図4】図4(a)〜(d)は、動き補償予測の予測方向について説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る動画像符号化装置における符号化処理の動作の流れ示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態1に係る動画像復号装置の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る動画像復号装置における復号処理の動作の流れを示すフローチャートである。
【図8】図8(a)、(b)は、本発明の実施の形態1における動き補償予測において使用される動き情報を符号化するための2つの予測モードを説明するための図である。
【図9】実施の形態1の動画像符号化装置における予測モード判定部の詳細な構成を示す図である。
【図10】図9の結合動き情報算出部の構成を示す図である。
【図11】図5のステップS502の動き補償予測モード/予測信号生成処理の詳細動作を説明するためのフローチャートである。
【図12】図11の結合動き情報候補リスト生成の詳細動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】空間結合動き情報候補リスト生成に用いる空間候補ブロック群を示す図である。
【図14】空間結合動き情報候補リスト生成の詳細動作を説明するためのフローチャートである。
【図15】時間結合動き情報候補リスト生成に用いる時間候補ブロック群を示す図である。
【図16】時間結合動き情報候補リスト生成の詳細動作を説明するためのフローチャートである。
【図17】時間結合動き情報に対する基準動きベクトル値ColMvに対する、L0予測、L1予測に対して登録する動きベクトル値mvL0t、mvL1tの算出手法を説明するための図である。
【図18】結合動き情報候補削除の詳細動作を説明するためのフローチャートである。
【図19】図19(a)、(b)は、動きベクトルと参照画像インデックスの関係を説明する図である。
【図20】図20(a)、(b)は、結合動き情報候補削除処理を行う前後の結合動き情報候補リストの一例を示す図である。
【図21】図19の結合予測モード評価値生成処理の詳細動作を説明するためのフローチャートである。
【図22】図11の予測モード評価値生成処理の詳細動作を説明するためのフローチャートである。
【図23】結合動き情報候補数が5の場合のTruncated Unary符号列を示す図である。
【図24】実施の形態1の動画像復号装置における動き情報復号部の詳細な構成を示す図である。
【図25】図7の動き情報復号処理の詳細動作を説明するためのフローチャートである。
【図26】図25の結合予測動き情報復号処理の詳細動作を説明するためのフローチャートである。
【図27】図25の予測動き情報復号処理の詳細動作を説明するためのフローチャートである。
【図28】実施の形態2における結合予測候補削除処理の動作の流れを示すフロチャートである。
【図29】実施の形態3における結合動き情報算出部の構成を示す図である。
【図30】実施の形態3における結合動き情報算出部の処理の動作の流れを示すフローチャートである。
【図31】図30の結合動き情報候補追加処理の動作の流れを示すフローチャートである。
【図32】図32(a)〜(d)は、結合動き情報候補追加処理を行う前後の結合動き情報候補リストの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面とともに本発明の実施の形態に係る動画像符号化装置、動画像符号化方法、動画像符号化プログラム、並びに動画像復号装置、動画像復号方法、動画像復号プログラムの好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、図面の説明には同一要素には同一符号を付与して重複する説明を省略する。
【0015】
(実施の形態1)
[動画像符号化装置全体構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る動画像符号化装置の構成を示す図である。以下、各部の動作について説明する。実施の形態1に係る動画像符号化装置は、入力端子100、減算部101、直交変換・量子化部102、予測誤差符号化部103、逆量子化・逆変換部104、加算部105、復号画像メモリ106、動きベクトル検出部107、動き補償予測部108、予測モード判定部109、動き情報符号化部110、動き情報メモリ111、多重化部112、及び出力端子113を備える。
【0016】
入力端子100より入力される画像信号から符号化処理対象の予測ブロックの画像信号が、予測ブロックの位置情報と予測ブロックサイズに基づいて切り出され、予測ブロックの画像信号は、減算部101、動きベクトル検出部107及び予測モード判定部109に供給される。
【0017】
図2は、符号化対象画像の一例を示す図である。実施の形態1に係る予測ブロックサイズに関しては、図2に示すように符号化対象画像が64×64画素の符号化ブロック(CU)単位で符号化処理され、予測ブロックは符号化ブロックが更に分割された単位で構成される。最大予測ブロックサイズは符号化ブロックと同じ64×64画素で、最小予測ブロックサイズは4×4画素である。符号化ブロックの予測ブロックへの分割構成は、非分割(2N×2N)、水平・垂直への分割(N×N)、水平方向のみへの分割(2N×N)、垂直方向のみへの分割(N×2N)が可能である。水平・垂直への分割の場合のみ、更に分割された予測ブロックを符号化ブロックとして階層的に予測ブロックに分割でき、その階層をCU分割数で表現する。
【0018】
図3は、予測ブロックサイズの詳細な定義を示す図である。CU分割数が0であって最大の予測ブロックサイズである64画素×64画素から、CU分割数が3であって最小の予測ブロックサイズである4画素×4画素までの13の予測ブロックサイズが存在することになる。
【0019】
本発明の実施の形態1に係る予測ブロックの分割構成に関して、この組み合わせに限定されない。また、動画像符号化装置における予測ブロックサイズの選択は、符号化ブロック単位で符号化効率のより良い構造を適応的に選択することが可能であるが、実施の形態1は予測ブロック単位での画面間予測及び画面間動き情報の符号化に注目したものであるため、最適な予測ブロックサイズの選択に関する構成要素及び説明を省略する。以降の動画像符号化装置の動作に関しては、選択した予測ブロックサイズ単位で施される動作を説明する。
【0020】
図1に戻り、減算部101は、入力端子100より供給される画像信号と予測モード判定部109より供給される予測信号を減算して予測誤差信号を算出し、予測誤差信号を直交変換・量子化部102に供給する。
【0021】
直交変換・量子化部102は、減算部101より供給される予測誤差信号に直交変換及び量子化を施し、量子化された予測誤差信号を予測誤差符号化部103及び逆量子化・逆変換部104に供給する。
【0022】
予測誤差符号化部103は、直交変換・量子化部102より供給される量子化された予測誤差信号をエントロピー符号化して、予測誤差信号に対する符号列を生成して、多重化部112に供給する。
【0023】
逆量子化・逆変換部104は、直交変換・量子化部102より供給される量子化された予測誤差信号に対して、逆量子化や逆直交変換などの処理を行い、復号予測誤差信号を生成し加算部105に供給する。
【0024】
加算部105は、逆量子化・逆変換部104より供給される復号予測誤差信号と、予測モード判定部109より供給される予測信号を加算して、復号画像信号を生成し、復号画像信号を復号画像メモリ116に供給する。
【0025】
復号画像メモリ106は、加算部105より供給される復号画像信号を格納する。また、画像全体の復号が完了した復号画像については参照画像として1以上の所定画像数記憶し、参照画像信号を動きベクトル検出部107と動き補償予測部108に供給する。
【0026】
動きベクトル検出部107は、入力端子100より供給される予測ブロックの画像信号と、復号画像メモリ106に記憶された参照画像信号の入力を受けて、各参照画像に対する動きベクトルを検出し、動きベクトル値を予測モード判定部109に供給する。
【0027】
一般的な動きベクトルの検出方法は、画像信号と同一位置より所定の移動量だけ移動させた参照画像に相当する画像信号について誤差評価値を算出し、誤差評価値が最小となる移動量を動きベクトルとする。誤差評価値としては、画素毎の差分絶対値の総和SAD(Sum of Absolute Difference)や、画素毎の二乗誤差値の総和SSE(Sum of Square Error)等を利用する。さらに、動きベクトルの符号化に関わる符号量も誤差評価値に含めることも可能である。
【0028】
動き補償予測部108は、予測モード判定部109より指定される参照画像指定情報と、動きベクトル値に従って、復号画像メモリ106内の参照画像指定情報で示される参照画像を、動きベクトル値だけ予測ブロックの画像信号と同一位置より移動させた位置の画像信号を取得して予測信号を生成する。
【0029】
予測モード判定部109より指定される予測モードが片方向予測の場合には、1つの参照画像から取得した予測信号を動き補償予測信号とし、予測モードが双方向予測の場合には、2つの参照画像から取得した予測信号を重みづけ平均したものを動き補償予測信号とし、動き補償予測信号を予測モード判定部109に供給する。ここでは双方向予測の重みづけ平均の比率を1:1とする。
【0030】
図4(a)〜(d)は、動き補償予測の予測方向について説明するための図である。単一の参照画像からの予測を行う処理を片方向予測と定義し、片方向の場合はL0方向またはL1方向という2つの参照画像管理リストに登録された参照画像のいずれか一方を利用する。
【0031】
図4(a)は片方向であってL0方向の参照画像(RefL0Pic)が符号化対象画像(CurPic)より前の時刻にある場合を示している。図4(b)は片方向であってL0方向の参照画像が符号化対象画像より後の時刻にある場合を示している。同様に、図4(a)および図4(b)のL0方向の参照画像をL1方向の参照画像(RefL1Pic)に置き換えて片方向予測を行うこともできる。
【0032】
2つの参照画像からの予測を行う処理を双方向予測と定義し、双方向の場合はL0方向とL1方向の双方を利用してBI方向と表現する。図4(c)は双方向であってL0方向の参照画像が符号化対象画像より前の時刻にあって、L1方向の参照画像が符号化対象画像より後の時刻にある場合を示している。図4(d)は双方向であってL0方向の参照画像とL1方向の参照画像が符号化対象画像より前の時刻にある場合を示している。このように、L0/L1の予測方向と時間の関係は、L0が過去方向、L1が未来方向とは限定されずに用いることが可能である。
【0033】
図1に戻り、予測モード判定部109は、動きベクトル検出部107より入力される各参照画像に対して検出された動きベクトル値と、動き情報メモリ111に格納された動き情報(予測方向、動きベクトル値、及び参照画像指定情報)をもとに、実施の形態1において定義した動き補償予測モードのそれぞれに対して用いられる、参照画像指定情報と動きベクトル値を動き補償予測部108に設定する。設定した値によって、動き補償予測部108から供給される動き補償予測信号と、入力端子100より供給される予測ブロックの画像信号を用いて、最適な動き補償予測モードを決定する。
【0034】
予測モード判定部109は、決定した予測モード、及び予測モードに応じた予測方向、動きベクトル、及び参照画像指定情報を特定する情報を、動き情報符号化部110に供給し、決定した予測モード及びその予測モードに対する、予測方向、動きベクトル値、及び参照画像指定情報を動き情報メモリ111に供給すると共に、減算部101及び加算部105に決定した予測モードに対応する予測信号を供給する。
【0035】
動画像符号化装置において、基準とする参照画像を符号化するために同一画面内の符号化済画像を用いて予測を行う画面内予測が行われるが、実施の形態1は画面間予測に注目したものであるため、画面内予測に関連する構成要素は省略する。予測モード判定部109の詳細な構成については後述する。
【0036】
動き情報符号化部110は、予測モード判定部109より供給される予測モード、及び予測モードに応じた予測方向、動きベクトル、及び参照画像指定情報を特定する情報を所定のシンタックス構造に従って符号化することで、動き情報の符号列を生成し、多重化部112に供給する。
【0037】
動き情報メモリ111は、予測モード判定部109より供給される動き情報(予測方向、動きベクトル、及び参照画像インデックス)を、最小予測ブロックサイズ単位を基準として所定画像分記憶する。処理対象の予測ブロックの隣接ブロックの動き情報を空間候補ブロック群とし、処理対象の予測ブロックと同一位置にあるColPic上のブロックとその周辺ブロックの動き情報を時間候補ブロック群とする。
【0038】
ColPicとは、処理対象の予測ブロックとは別の復号済みの画像であって、復号画像メモリ106に参照画像として記憶されている。実施の形態1では、ColPicは直前に復号した参照画像とする。なお、実施の形態1では、ColPicは直前に復号した参照画像としたが、表示順で直前の参照画像や表示順で直後の参照画像でもよく、符号化ストリーム中に、ColPicに用いる参照画像を直接指定することも可能である。
【0039】
動き情報メモリ111は、空間候補ブロック群と時間候補ブロック群の動き情報を、候補ブロック群の動き情報として予測モード判定部109に供給する。多重化部112は、予測誤差符号化部103から供給される予測誤差の符号化列と、動き情報符号化部110から供給される動き情報の符号化列を多重化することで符号化ビットストリームを生成し、出力端子113経由で、記録媒体・伝送路等に当該符号化ビットストリームを出力する。
【0040】
図1に示した動画像符号化装置の構成は、CPU(Central Processing Unit)、フレームメモリ、ハードディスクなどを備える情報処理装置等のハードウェアによっても実現可能である。
【0041】
図5は、本発明の実施の形態1に係る動画像符号化装置における符号化処理の動作の流れ示すフローチャートである。予測ブロック単位毎に、入力端子100より処理対象の予測ブロック画像を取得する(S500)。動きベクトル検出部107は、処理対象の予測ブロック画像と復号画像メモリ106に格納された複数の参照画像より、参照画像毎の動きベクトル値を算出する(S501)。
【0042】
続いて、予測モード判定部109は、動きベクトル検出部107より供給される動きベクトルと、動き情報メモリ111に格納された動き情報を用いて、実施の形態1において定義した動き補償予測モードのそれぞれに対する予測信号を、動き補償予測部108を用いて取得し、最適な予測モードを選択し、予測信号を生成する(S502)。ステップS502の処理の詳細については後述する。
【0043】
続いて、減算部101は、処理対象の予測ブロック画像と予測モード判定部109より供給された予測信号との差分を予測誤差信号として算出する(S503)。動き情報符号化部110は、予測モード判定部109より供給される予測モード、及び予測モードに応じた予測方向、動きベクトル、及び参照画像指定情報を特定する情報を所定のシンタックス構造に従って符号化し、動き情報の符号化データを生成する(S504)。
【0044】
続いて、予測誤差符号化部103は、直交変換・量子化部102で生成された量子化された予測誤差信号をエントロピー符号化して、予測誤差の符号化データを生成する(S505)。多重化部112は、動き情報符号化部110から供給される動き情報の符号化データと、予測誤差符号化部103から供給される予測誤差の符号化データを多重化し、符号化ビットストリームを生成する(S506)。
【0045】
加算部105は、逆量子化・逆変換部104より供給される復号予測誤差信号と、予測モード判定部109より供給される予測信号を加算して、復号画像信号を生成する(S507)。加算部105によって、生成された復号画像信号が復号画像メモリ106に供給、格納され、以降に符号化する符号化画像の動き補償予測処理に用いられる(S508)。動き情報メモリ111は、動きベクトル検出部107より供給される動き情報(予測方向、動きベクトル、及び参照画像指定情報)を最小の予測ブロックサイズ単位で格納する(S509)。
【0046】
[動画像復号装置全体構成]
図6は、本発明の実施の形態1に係る動画像復号装置の構成を示す図である。以下、各部の動作について説明する。実施の形態1に係る動画像復号装置は、入力端子600、多重分離部601、予測差分情報復号部602、逆量子化・逆変換部603、加算部604、復号画像メモリ605、動き情報復号部606、動き情報メモリ607、動き補償予測部608、及び出力端子609を備える。
【0047】
入力端子600より符号化ビットストリームが多重分離部601に供給される。多重分離部601は、供給された符号化ビットストリームの符号列を予測誤差情報の符号化列と、予測モード、並びに予測モードに応じた予測方向、動きベクトル、及び参照画像指定情報を特定する情報で構成される動き情報の符号化列に分離する。当該予測誤差情報の符号化列を予測差分情報復号部602に供給し、当該動き情報の符号化列を動き情報復号部606に供給する。
【0048】
予測差分情報復号部602は、多重分離部601より供給された予測誤差情報の符号化列を復号し、量子化された予測誤差信号を生成する。予測差分情報復号部602は、生成した量子化された予測誤差信号を逆量子化・逆変換部603に供給する。
【0049】
逆量子化・逆変換部603は、予測差分情報復号部602より供給される量子化された予測誤差信号を逆量子化や逆直交変換などの処理を行って予測誤差信号を生成し、復号予測誤差信号を加算部604に供給する。
【0050】
加算部604は、逆量子化・逆変換部603より供給される復号予測誤差信号と、動き補償予測部608より供給される予測信号を加算して復号画像信号を生成し、復号画像信号を復号画像メモリ605に供給する。
【0051】
復号画像メモリ605は、図1の動画像符号化装置における復号画像メモリ106と同じ機能を有し、加算部604から供給された復号画像信号を格納し、参照画像信号を動き補償予測部608に供給する。また、復号画像メモリ605は、格納された復号画像信号を再生時刻に合わせて、画像の表示順序に従い出力端子609に供給する。
【0052】
動き情報復号部606は、多重分離部601より供給される動き情報の符号化列より、予測モード、並びに予測モードに応じた予測方向、動きベクトル、及び参照画像指定情報を特定する情報を動き情報として復号する。復号した動き情報と、動き情報メモリ607より供給される候補ブロック群の動き情報より、動き補償予測に用いる予測方向、動きベクトル及び参照画像指定情報を再生し、動き補償予測部608に供給する。また、動き情報復号部606は再生した動き情報を、動き情報メモリ607に供給する。動き情報復号部606の詳細な構成については後述する。
【0053】
動き情報メモリ607は、図1の動画像符号化装置における動き情報メモリ111と同じ機能を持ち、動き情報復号部606より供給される再生した動き情報を最小予測ブロックサイズ単位を基準として所定画像分記憶する。また、動き情報メモリ607は、空間候補ブロック群と時間候補ブロック群の動き情報を、候補ブロック群の動き情報として動き情報復号部606に供給する。
【0054】
動き補償予測部608は、図1の動画像符号化装置における動き補償予測部108と同じ機能を持ち、動き情報復号部606より供給される動き情報に基づいて、復号画像メモリ605内の参照画像指定情報が示す参照画像を、動きベクトル値だけ予測ブロックの画像信号と同一位置より移動させた位置の画像信号を取得して予測信号を生成する。動き補償予測の予測方向が双方向であれば、各予測方向の予測信号を平均したものを予測信号として生成し、予測信号を加算部604に供給する。
【0055】
出力端子609は、復号画像メモリ605より供給された復号画像信号を、ディスプレイなどの表示媒体に出力することで、復号画像信号が再生される。
【0056】
図6に示した動画像復号装置の構成も、図1に示した動画像符号化装置の構成と同様に、CPU、フレームメモリ、ハードディスクなどを備える情報処理装置等のハードウェアによっても実現可能である。
【0057】
図7は、本発明の実施の形態1に係る動画像復号装置における復号処理の動作の流れを示すフローチャートである。多重分離部601は、入力端子600より供給された符号化ビットストリームを予測誤差情報の符号化列と、動き情報の符号化列に分離する(S700)。分離された動き情報の符号化列は動き情報復号部606に供給され、動き情報メモリ607より供給される候補ブロック群の動き情報を用いて、復号対象ブロックの動き情報を復号する(S701)。ステップS701の処理の詳細については後述する。
【0058】
分離された予測誤差情報の符号化列は、予測差分情報復号部602に供給され、量子化された予測誤差信号として復号され、逆量子化・逆変換部603で逆量子化や逆直交変換などの処理を施されることで、復号予測誤差信号が生成される(S702)。
【0059】
動き情報復号部606より、復号対象ブロックの動き情報が動き補償予測部608に供給され、動き補償予測部608は動き情報にしたがって動き補償予測を行い予測信号を算出する(S703)。加算部604は、逆量子化・逆変換部603から供給された復号予測誤差信号と、動き補償予測部608から供給された予測信号とを加算し、復号画像信号を生成する(S704)。
【0060】
加算部604より供給された復号画像信号は、復号画像メモリ605に格納される(S705)と共に、動き情報復号部606より供給された復号対象ブロックの動き情報が動き情報メモリ607に格納される(S706)。これで、予測ブロック単位の復号処理が終了する。
【0061】
[実施の形態1の詳細機能説明]
本発明の実施の形態1に係る動画像符号化装置の予測モード判定部109の動作、図5のフローチャートにおけるステップS502の処理、並びに本発明の実施の形態1に係る動画像復号装置における動き情報復号部606の動作、図7のフローチャートにおけるステップS701の処理の詳細動作を、以下説明する。
【0062】
[実施の形態1における動き補償予測モードの定義]
図8(a)、(b)は、本発明の実施の形態1における動き補償予測において使用される動き情報を符号化するための2つの予測モードを説明するための図である。第一の予測モードは、予測対象ブロックと当該予測対象ブロックに隣接する符号化済ブロックにおける時間方向や空間方向の動きの連続性を用いて、当該予測対象ブロックは自身の動き情報を直接符号化せずに、空間及び時間的に隣接するブロックの動き情報を符号化に使用する手法であり、結合予測モード(マージモード)と呼ぶ。
【0063】
第一の予測モードは、予測対象ブロックと予測対象ブロックに隣接する符号化済ブロックにおける時間方向や空間方向の動きの連続性を用いて、予測処理対象ブロック自身の動き情報を直接符号化せずに、空間及び時間的に隣接するブロックの動き情報を符号化に使用する手法であり、結合予測モード(マージモード)と呼ぶ。
【0064】
結合予測モードの場合には、複数の隣接ブロック候補より選択的に結合する動き情報が定義でき、動き情報は使用する隣接ブロックを指定する情報(インデックス)を符号化することで、指定情報をもとに取得した動き情報をそのまま動き補償予測に用いる。更に、結合予測モードにおいては、予測差分情報を符号化伝送せずに、結合予測モードで予測された予測信号を復号ピクチャとするSkipモードを定義し、結合した動き情報のみの少ない情報で復号画像が再生できる構成を有する。Skipモードにおいて伝送する動き情報は、結合予測モードと同様に隣接ブロックを定義する指定情報となる。
【0065】
第二の予測モードは、動き情報の構成要素を個別にすべて符号化し、予測ブロックに対して予測誤差の少ない動き情報を伝送する手法であり、動き検出予測モードと呼ぶ。動き検出予測モードは、従来の動き補償予測の動き情報の符号化と同様に、参照画像を特定するための情報(参照画像インデックス)と、動きベクトルを特定するための情報が別々に符号化される。
【0066】
動き検出予測モードには、片方向予測と双方向予測のどちらを使用するか予測モードで指示し、片方向予測の場合には1つの参照画像に対する参照画像を特定する情報と、動きベクトルの予測ベクトルとの差分ベクトルを符号化する。双方向予測の場合には2つの参照画像に対する参照画像を特定する情報と、動きベクトルがそれぞれ個別に符号化される。動きベクトルに対する予測ベクトルは、AVCと同様に隣接ブロックの動き情報から生成されるが、結合予測モードと同様に、複数の隣接ブロック候補より予測ベクトルに用いる動きベクトルを選択でき、動きベクトルは予測ベクトルに使用する隣接ブロックを指定する情報(インデックス)と差分ベクトルの2つを符号化することで伝送される。
【0067】
[実施の形態1における動画像符号化装置における予測モード判定部の詳細動作説明]
図9は、実施の形態1の動画像符号化装置における予測モード判定部109の詳細な構成を示す図である。予測モード判定部109は、最適な動き補償予測モードを決定する機能を有する。
【0068】
予測モード判定部109は、動き補償予測生成部900、予測誤差算出部901、予測ベクトル算出部902、差分ベクトル算出部903、動き情報符号量算出部904、予測モード評価部905、結合動き情報算出部906、及び結合動き補償予測生成部907を含む。
【0069】
図1における予測モード判定部109に対して、動きベクトル検出部107より入力された動きベクトル値が、動き補償予測生成部900に供給され、動き情報メモリ111より入力された動き情報が、予測ベクトル算出部902、及び結合動き情報算出部906に供給される。
【0070】
また、動き補償予測部108に対して、動き補償予測生成部900、及び結合動き補償予測生成部907、から、動き補償予測に用いる参照画像指定情報と動きベクトルが出力され、動き補償予測部108より、生成された動き補償予測画像が予測誤差算出部901に供給される。予測誤差算出部901には更に、入力端子100より符号化対象となる予測ブロックの画像信号が供給される。
【0071】
また、予測モード評価部905から、動き情報符号化部110に対して符号化する動き情報と確定した予測モード情報を供給し、動き情報メモリ111に動き情報を供給し、動き補償予測信号を減算部101及び加算部105に供給する。
【0072】
動き補償予測生成部900は、予測に使用可能な各参照画像に対して算出された動きベクトル値を受信し、参照画像指定情報を予測ベクトル算出部902に供給し、参照画像指定情報と動きベクトルを出力する。
【0073】
予測誤差算出部901は、入力された動き補償予測画像と処理対象の予測ブロック画像より、予測誤差評価値を算出する。誤差評価値を算出するための演算としては、動きベクトル検出における誤差評価値と同様に、画素毎の差分絶対値の総和SADや、画素毎の二乗誤差値の総和SSE等を使用できる。更に、予測残差の符号化を行う際に施される、直交変換・量子化を行うことによって復号画像に生じる歪成分の量を加味することで、より正確な誤差評価値が算出可能である。この場合には、予測誤差算出部901内に、図1における減算部101、直交変換・量子化部102、逆量子化・逆変換部104、加算部105の機能を有することで実現できる。
【0074】
予測誤差算出部901は、各予測モードにおいて算出された予測誤差評価値と、動き補償予測信号を予測モード評価部905に供給する。
【0075】
予測ベクトル算出部902は、動き補償予測生成部900より参照画像指定情報を供給され、動き情報メモリ111から供給される隣接ブロックの動き情報における候補ブロック群より、指定された参照画像に対する動きベクトル値を入力し、複数の予測ベクトルを予測ベクトル候補リストと共に生成し、差分ベクトル算出部903に、参照画像指定情報と共に供給する。予測ベクトル算出部902は、予測ベクトルの候補を作成し、予測ベクトル候補として登録する。
【0076】
差分ベクトル算出部903は、予測ベクトル算出部902より供給された、予測ベクトル候補のそれぞれに対して、動き補償予測生成部900から供給される動きベクトル値との差分を計算し、差分ベクトル値を算出する。算出された差分ベクトル値と予測ベクトル候補に対する指定情報である予測ベクトルインデックスを符号化した際、符号量が最も少ない。差分ベクトル算出部903は、最も少ない情報量である予測ベクトルに対する予測ベクトルインデックスと差分ベクトル値を参照画像指定情報と共に、動き情報符号量算出部904に供給する。
【0077】
動き情報符号量算出部904は、差分ベクトル算出部903より供給される、差分ベクトル値、参照画像指定情報、予測ベクトルインデックス、および予測モードより、各予測モードにおける動き情報に要する符号量を算出する。また、動き情報符号量算出部904は、結合動き補償予測生成部907より、結合予測モードにおいて伝送する必要がある、結合動き情報インデックスと予測モードを示すための情報を受け取り、結合予測モードにおける動き情報に要する符号量を算出する。
【0078】
動き情報符号量算出部904は、各予測モードにおいて算出された動き情報及び動き情報に要する符号量を予測モード評価部905に供給する。
【0079】
予測モード評価部905は、予測誤差算出部901より供給された各予測モードの予測誤差評価値と、動き情報符号量算出部904から供給された各予測モードの動き情報符号量を用いて、各予測モードの総合動き補償予測誤差評価値を算出し、最も少ない評価値である予測モードを選択し、選択した予測モードと選択した予測モードに対する動き情報を、動き情報符号化部110、動き情報メモリ111に出力する。また、予測モード評価部905は同様に、予測誤差算出部901より供給された動き補償予測信号に対して、選択した予測モードにおける予測信号を選択して減算部101及び加算部105に出力する。
【0080】
結合動き情報算出部906は、動き情報メモリ111より供給される隣接ブロックの動き情報における候補ブロック群を用いて、片方向であるか双方向であるかを示す予測方向、参照画像指定情報、動きベクトル値で構成される動き情報として、複数の動き情報を結合動き情報候補リストと共に生成し、結合動き補償予測生成部907に供給する。
【0081】
図10は、結合動き情報算出部906の構成を示す図である。結合動き情報算出部906は、結合動き情報候補リスト生成部1000および結合動き情報候補リスト削除部1001を含む。結合動き情報算出部906は、候補ブロック群より所定の順番で動き情報の候補を作成し、その中から、動き情報の信頼度の低い候補を削除することで、有効な動き情報のみを結合動き情報候補として登録する。結合動き情報算出部906の詳細動作に関しては、後述する。
【0082】
図9に戻り、結合動き補償予測生成部907は、結合動き情報算出部906より供給された結合動き情報候補リストより、登録された結合動き情報候補のそれぞれに対して、動き情報より、予測方向に応じて1つの参照画像(片方向)もしくは2つの参照画像(双方向)の参照画像指定情報と動きベクトル値を動き補償予測部108に指定して、動き補償予測画像を生成すると共に、それぞれの結合動き情報インデックスを動き情報符号量算出部904に供給する。
【0083】
図9の構成では、それぞれの結合動き情報インデックスにおける予測モード評価は、予測モード評価部905で施されるが、予測誤差評価値及び動き情報符号量を予測誤差算出部901及び動き情報符号量算出部904より受け取り、結合動き補償予測生成部907内で、最適な結合動き補償予測の結合動きインデックスを確定させた後に、他の予測モードを含めた最適予測モードの評価を行う構成を取ることも可能である。
【0084】
図11は、図5のステップS502の動き補償予測モード/予測信号生成処理の詳細動作を説明するためのフローチャートである。この動作は、図9の予測モード判定部109における詳細動作を示している。
【0085】
最初に、結合動き情報候補リスト生成を行い(S1100)、結合予測モード評価値を生成する(S1101)。続いて、予測モード評価値を生成し(S1102)、生成した評価値を比較することで最適な予測モードを選択する(S1103)。ただし、ステップS1101及びS1102の評価値生成の順序はこれに限らない。
【0086】
選択された予測モードに従い予測信号を出力し(S1104)、選択された予測モードに従い動き情報を出力する(S1105)ことで、予測ブロック単位の動き補償予測モード/予測信号生成処理が終了する。ステップS1100、S1101、及びS1102の詳細動作に関しては後述する。
【0087】
図12は、図11のステップS1100の結合動き情報候補リスト生成の詳細動作を説明するためのフローチャートである。この動作は、図9の結合動き情報算出部906における構成の詳細動作を示している。
【0088】
図10の結合動き情報候補リスト生成部1000は、動き情報メモリ111より供給される空間候補ブロック群から領域外である候補ブロックや、イントラモードである候補ブロックを除いた候補ブロックから空間結合動き情報候補リストを生成する(S1200)。空間結合動き情報候補リスト生成の詳細な動作は後述する。
【0089】
結合動き情報候補リスト生成部1000は、続いて動き情報メモリ111より供給される時間候補ブロック群から領域外である候補ブロックや、イントラモードである候補ブロックを除いた候補ブロックから時間結合動き情報候補リストを生成する(S1201)。時間結合動き情報候補リスト生成の詳細な動作は後述する。
【0090】
続いて、結合動き情報候補リスト削除部1001において、生成された空間結合動き情報候補リストと時間結合動き情報候補リストを統合した結合動き情報候補リストより、信頼度の低い動き情報を持つ結合動き情報候補を削除して動き情報候補リストを更新する(S1202)。結合動き情報候補削除の詳細な動作は後述する。
【0091】
最後に、上記処理において隣接ブロックに有効な動き情報が存在せず、結合動き情報候補が存在しない場合(S1203:YES)には、固定の動き情報を結合動き上方候補リストに追加して(S1204)、処理を終了する。
【0092】
実施の形態1における固定の動き情報としては、予測方向が双方向で、参照画像指定情報(インデックス)が0、2つの動きベクトル値が共に(0,0)の値を設定する。実施の形態1における固定の動き情報としては、上記設定には限定されず、暗黙的に指定できる手法で設定されることにより、動画像復号装置においても同じ動き情報が再現できる。
【0093】
動き情報メモリ111より、結合動き情報算出部906に供給される動き情報の候補ブロック群には、空間候補ブロック群と時間候補ブロック群が含まれる。まず、空間結合動き情報候補リスト生成について説明する。
【0094】
図13は、空間結合動き情報候補リスト生成に用いる空間候補ブロック群を示す図である。空間候補ブロック群は、符号化対象画像の予測対象ブロックに隣接している同一画像のブロックを示す。ブロック群は、その管理が最小予測ブロックサイズ単位で行われ、図13に示すようなA1〜A4、B1〜B4、C、D、Eの位置のブロックが隣接するブロック群となる。候補ブロックの位置は、最小予測ブロックサイズの単位で管理されるが、隣接ブロックの予測ブロックサイズが最小予測ブロックサイズよりも大きな場合には、予測ブロックサイズ内の全ての候補ブロックに同一の動き情報が格納される。実施の形態1においては、これら隣接するブロック群の内、空間候補ブロック群をブロックA1、ブロックB1、ブロックC、ブロックD、ブロックEの5ブロックとする。
【0095】
図14は、空間結合動き情報候補リスト生成の詳細動作を説明するためのフローチャートである。空間候補ブロック群に含まれる5つの候補ブロックであるブロックA1、ブロックB1、ブロックC、ブロックD、ブロックEについて以下の処理を繰り返し行う(S1400〜S1403)。
【0096】
最初に候補ブロックの有効性を検査する(S1401)。候補ブロックが領域外でなくイントラモードでない場合(S1401:YES)、候補ブロックは有効となる。候補ブロックが有効であれば、候補ブロックの動き情報を空間結合動き情報候補リストに追加する(S1402)。
【0097】
ここでは、空間結合動き情報候補リストには5以下の候補ブロックの動き情報が含まれるとしたが、空間候補ブロック群は、処理対象の予測ブロックに隣接する少なくとも1以上の処理済みのブロックであり、候補ブロックの有効性によって空間結合動き情報候補リストの数が変動すればよく、これに限定されない。
【0098】
続いて、時間結合動き情報候補リスト生成について説明する。図15は、時間結合動き情報候補リスト生成に用いる時間候補ブロック群を示す図である。時間候補ブロック群は、予測対象ブロックとは別の復号済みの画像ColPicにおける予測対象ブロックと同位置及びその周辺にあるブロックを示す。図15におけるA1〜A4、B1〜B4、C、D、E、F1〜F4、G1〜G4、H、I1〜I16の位置のブロックが、時間的に隣接するブロック群となる。実施の形態1においては、これら時間的に隣接するブロック群の内、時間候補ブロック群をブロックHとブロックI6の2ブロックとする。
【0099】
図16は、時間結合動き情報候補リスト生成の詳細動作を説明するためのフローチャートである。時間候補ブロック群に含まれる2つの候補ブロックであるブロックHとブロックI6について(S1600、S1605)、ブロックH、ブロックI6の順序で候補ブロックの有効性を検査する(S1601)。候補ブロックが有効である場合(S1601:YES)、ステップS1602〜ステップS1604の処理が行われ、生成された動き情報が時間結合動き情報候補リストに登録され、処理が終了する。候補ブロックが画面領域外の位置を示す場合や、候補ブロックがイントラ予測ブロックである場合(S1601:NO)、候補ブロックが有効でなく、次の候補ブロックの有効/無効判定が行われる。
【0100】
候補ブロックが有効である場合(S1601:YES)、候補ブロックの動き情報をもとに結合動き情報候補に登録する参照画像選択候補を確定する(S1602)。実施の形態1ではL0方向の参照画像を、L0方向の参照画像のうち処理対象画像に最も近い距離にある参照画像とし、L1方向の参照画像を、L1方向の参照画像のうち処理対象画像に最も近い距離にある参照画像とする。
【0101】
ここでの参照画像選択候補の確定手法は、L0方向の参照画像とL1方向の参照画像が決定できればよく、これに限定されない。符号化処理と復号処理で同一の手法で参照画像を確定することで、符号化時に意図した参照画像を確定できる。他の確定手法としては、例えばL0方向の参照画像及びL1方向の参照画像の参照画像インデックスが0である参照画像を選択する手法や、空間隣接ブロックが使用しているL0参照画像及びL1参照画像で、最も多く使用されている参照画像を予測対象ブロックにおける参照画像として選択する手法や、符号化ストリーム中で各方向の参照画像を指定する手法を用いることが可能である。
【0102】
次に、候補ブロックの動き情報をもとに結合動き情報候補に登録する動きベクトル値を確定する(S1603)。実施の形態1における、時間結合動き情報は、候補ブロックの動き情報で有効な予測方向である動きベクトル値をもとに、双方向の動き情報を算出する。候補ブロックの予測方向がL0予測もしくはL1予測の片方向の場合には、予測に用いられている方向(L0方向或いはL1方向)の動き情報を選択し、その参照画像指定情報と動きベクトル値を双方向動き情報生成の基準値とする。
【0103】
候補ブロックの予測方向が双方向である場合には、L0予測或いはL1予測のどちらか一方の動き情報を基準値として選択する。基準値の選択方法は、例えばColPicと同じ予測方向に存在する動き情報を選択する、候補ブロックのL0予測、L1予測のそれぞれの参照画像でColPicとの画像間距離が近い方を選択する、或いは候補ブロックのL0予測、L1予測のそれぞれの動きベクトルが符号化処理対象画像と交差する方を選択する等が挙げられる。
【0104】
双方向動き情報生成の基準とする動きベクトル値が確定したら、結合動き情報候補に登録する動きベクトル値を算出する。
【0105】
図17は、時間結合動き情報に対する基準動きベクトル値ColMvに対する、L0予測、L1予測に対して登録する動きベクトル値mvL0t、mvL1tの算出手法を説明するための図である。
【0106】
基準動きベクトル値ColMvに対するColPicと候補ブロックの基準とする動きベクトルの対象となる参照画像との画像間距離をColDistとする。L0予測、L1予測の各参照画像と処理対象画像との画像間距離をCurrL0Dist、CurrL1Distとする。ColMvを、ColDistとCurrL0Dist、CurrL1Distの距離比率でスケーリングした動きベクトルを、それぞれに登録する動きベクトルとする。具体的には、登録する動きベクトル値mvL0t、mvL1tは、下記式1、2で算出される。
mvL0t=mvCol×CurrL0Dist/ColDist ・・・(式1)
mvL1t=mvCol×CurrL1Dist/ColDist ・・・(式2)
となる。
【0107】
図16に戻り、このようにして生成された、双方向の参照画像選択情報(インデックス)と、動きベクトル値を結合動き情報候補に追加し(S1604)、時間結合動き情報候補リスト作成処理が終了する。
【0108】
図18は、結合動き情報候補削除の詳細動作を説明するためのフローチャートである。空間結合動き情報候補リスト作成処理及び時間結合動き情報候補リスト作成処理により、生成された結合動き情報の候補の数をnum_candとすると、i=0からnum_cand−2までの結合動き情報候補(候補(i))に対して以下の処理を繰り返し行う(S1800〜S1813)。
【0109】
ii=i+1からnum_cand−1までの結合動き情報候補(候補(ii))に対して、候補(i)の予測方向(予測方向(i))と候補(ii)の予測方向(予測方向(ii))を比較する(S1802)。予測方向(i)と予測方向(ii)が異なる場合には(S1802のNO)、iiの値を更新し(ステップS1811)、ステップS1801からステップS1812までの処理を繰り返す。
【0110】
予測方向(i)と予測方向(ii)が同じ(S1802のYES)で、その予測方向が片方向予測である場合には(S1803:片方向予測)、候補(i)と候補(ii)のその予測方向における動きベクトル値を比較する(S1804)。すなわち、予測方向(i)と予測方向(ii)がL0予測の場合には、候補(i)のL0予測における動きベクトル(動きベクトル値(i))と、候補(ii)のL0予測における動きベクトル(動きベクトル値(ii))の水平成分と垂直成分をそれぞれ比較する。また、予測方向(i)と予測方向(ii)がL1予測の場合には、候補(i)のL1予測における動きベクトル(動きベクトル値(ii))と、候補(ii)のL1予測における動きベクトル(動きベクトル値(ii))の水平成分と垂直成分をそれぞれ比較する(S1804)。
【0111】
動きベクトル値(i)と動きベクトル値(ii)の水平成分と垂直成分が少なくとも1つ以上異なる場合には(S1804:NO)、iiの値を更新し(ステップS1811)、ステップS1801からステップS1812までの処理を繰り返す。そうでなければ(S1804:YES)、ステップS1806に進む。
【0112】
予測方向(i)と予測方向(ii)が同じ(S1802:YES)で、その予測方向が双方向予測である場合には(S1803:双方向予測)、各予測方向における動きベクトル値を比較する(S1804)。すなわち、候補(i)のL0予測における動きベクトル(L0動きベクトル値(i))と、候補(ii)のL0予測における動きベクトル(L0動きベクトル値(ii))の水平成分と垂直成分をそれぞれ比較し、さらに、候補(i)のL1予測における動きベクトル(L1動きベクトル値(ii))と、候補(ii)のL1予測における動きベクトル(L1動きベクトル値(ii))の水平成分と垂直成分をそれぞれ比較する(S1805)。
【0113】
L0動きベクトル値(i)とL0動きベクトル値(ii)の水平成分と垂直成分が少なくとも1つ以上異なるか、L1動きベクトル値(i)とL1動きベクトル値(ii)の水平成分と垂直成分が少なくとも1つ以上異なる場合には(S1805:NO)、iiの値を更新し(ステップS1811)、ステップS1801からステップS1812までの処理を繰り返す。そうでなければ(S1805:YES)、ステップS1806に進む。
【0114】
続いて、ステップS1806からステップS1808において、t=ii+1からnum_cand−1までの結合動き情報候補(候補(t))をそれぞれ候補(t−1)に代入する。すなわち、これは、ii+1からnum_cand−1までの候補をひとつずつ1小さいインデックスの位置にシフトすることになる。
【0115】
次に、num_candの値から1を減じ(S1809)、num_candの値が1となったか否かを判定し(S1810)、1でなければ(S1810:NO)、ステップS1802からの処理を繰り返す。1であれば(S1810:YES)、ステップS1800からステップS1813までの処理の繰り返しを終了する。
【0116】
なお、2つの動きベクトル値を比較する際、水平成分と垂直成分が完全に同一でなくても、ある閾値の範囲で近い値をもてば、実質的に2つの動きベクトルは一致するものとして扱う。たとえば、2つの動きベクトルの水平成分、垂直成分の差分の絶対値がそれぞれの所定の閾値未満である場合、2つの動きベクトルは実質的に一致するとみなす。
【0117】
図20(a)、(b)は、結合動き情報候補削除処理を行う前後の結合動き情報候補リストの一例を示す図である。図20(a)において、インデックス0の動き情報と、インデックス2の動き情報は、予測方向と各予測方向の動きベクトル値が同じであるから、結合動き情報候補削除の処理によってインデックス2の結合動き情報候補が削除され、それ以降のインデックスの候補がシフトされ、図20(b)のようになる。
【0118】
以上の処理を結合動き情報候補に対して行うことにより、結合動き情報候補のうちで、同じ予測方向と各予測方向のベクトル値が同じ候補を削除することができる。この点が本実施の形態において符号化効率を向上する特徴的な構成であり、結合動き情報候補を削除する処理において、予測方向、動きベクトル値、および参照画像インデックスを比較して、完全に同じ動き情報を持つ結合動き情報候補を削減するのではなく、参照画像インデックスを調べることなく、予測モードと動きベクトル値を比較することにより、信頼度の低い動き情報を持つ結合動き情報候補も削除することが可能である。
【0119】
図19(a)、(b)は、動きベクトルと参照画像インデックスの関係を説明する図である。動画像では被写体が等速度運動をしている動きが多く、等速度運動をしている被写体の動きを示す動きベクトルは、図19(a)に示すように参照画像の距離に応じてスケーリングした関係にある。すなわち、一つ前の時刻の参照画像(参照インデックスidx0)からの動きを示す動きベクトルと、二つ前の時刻の参照画像(参照インデックスidx1)からの動きを示す動きベクトルとは、予測方向が同じで動きベクトル値は時間差分だけスケーリングした関係にある。
【0120】
一方、図19(b)に示すように、予測方向と動きベクトル値が同じで、参照画像インデックスのみ異なる二つの動きベクトルは、被写体が等速度運動していることを否定する。すなわち、一つ前の時刻の参照画像(参照インデックスidx0)からの動きを示す動きベクトルと、二つ前の時刻の参照画像(参照インデックスidx1)からの動きを示す動きベクトルとは、予測方向が同じで動きベクトル値も同じである。これは、二つ前の時刻から一つ前の時刻にかけて被写体に動きがなく、一つ前の時刻から現時刻にかけて被写体が動いたことを意味しており、被写体の動きは等速度運動していないことになる。被写体が等速度運動をしていることを仮定すると、このような場合、これら二つの動きベクトルをともに結合動き情報候補として残しても、結合動き情報インデックスの符号量が増加することに見合わない。
【0121】
図19(b)に示したような、互いに予測方向と動きベクトル値が同じで参照画像インデックスが異なる動き情報の候補を、結合動き情報候補として残すには、当然のことながら、参照画像インデックスが同一であるか否かをチェックする必要がある。そのため、候補を削除する条件式が増加し、演算量が増加してしまう。そこで、本実施の形態では、2つの動き情報の候補について、互いに予測方向と動きベクトル値が同じ場合は、参照画像インデックスが同一であるかどうかをチェックすることなく(参照画像インデックスが同じであろうとなかろうと)、いずれか一方の動き情報の候補を結合動き情報候補から削除することで、演算量を削減しつつ、冗長な動き情報の候補の登録を抑制し符号化効率を向上させることができる。
【0122】
2つの動き情報の候補について、互いに予測方向と動きベクトル値が同じであって、参照画像インデックスも同じであれば、それらは冗長な候補であるから、両方の動き情報を残すことは結合動き情報インデックスの符号量を無駄に増加させる。一方、2つの動き情報の候補について、互いに予測方向と動きベクトル値が同じであって、参照画像インデックスが異なれば、それらは等速度運動を意味しないものであるから、信頼性が低く、両方の動き情報を登録することは結合動き情報インデックスの符号量の増加に見合わない。したがって、参照画像インデックスが同じであろうとなかろうと、2つの動き情報の候補について、互いに予測方向と動きベクトル値が同じであれば、いずれか一方の候補を削除することにメリットがある。
【0123】
後述するように、本実施の形態では、結合動き情報候補を特定するために符号化される結合動き情報インデックスは、Truncated Unary符号列を用いるので、結合動き情報候補数が少ないほど、割り当てられる符号ビットが小さくなる。すなわち、結合動き情報候補から冗長性の高い信頼度の低い動き情報を持つ候補を適切に削除することにより、結合動き情報インデックスに割り当てられる符号量を減らし、符号化効率を向上することが可能である。
【0124】
また、結合動き情報候補削除において、予測モード、動きベクトル値および参照画像インデックスをすべて比較するのではなく、参照画像インデックスを比較せずに予測モードと動きベクトル値を比較することで、比較処理を減らすことが可能となり、回路規模や処理時間を削減することが可能である。
【0125】
図21は、図11のステップS1101における結合予測モード評価値生成処理の詳細動作を説明するためのフローチャートである。この動作は、図9の結合動き補償予測生成部908を用いた構成の詳細動作を示している。
【0126】
最初に予測誤差評価値を最大値に設定し、予測誤差が最小となる結合動き情報インデックスを初期化(例えば、−1などのリスト外の値)する(S2100)。結合動き情報候補リスト生成処理により、生成された結合動き情報候補リストの数をnum_of_indexとすると、i=0からnum_of_index−1までの結合動き情報候補について以下の処理を繰り返し行う(S2101からS2109)。
【0127】
先ず、結合動き情報候補リストよりインデックスiに格納された動き情報を取得する(S2102)。続いて動き情報符号量を算出する(S2103)。結合予測モードにおいては、結合動き情報インデックスのみが符号化されるので、結合動き情報インデックスのみが動き情報符号量となる。
【0128】
結合動き情報インデックスの符号列としては、実施の形態1では、Truncated Unary符号列を用いる。図23は、結合動き情報候補数が5の場合のTruncated Unary符号列を示す図である。Truncated Unary符号列を用いて結合動き情報インデックスの値を符号化する場合には、結合動き情報候補数が少ないほど、結合動き情報インデックスに割り当てられる符号ビットが小さくなる。例えば、結合動き情報インデックスが1である場合、結合動き情報候補数が2個であれば‘1’の1ビットで表現されるが、結合動き情報候補数が3個であれば‘10’の2ビットで表現される。なお、ここでは上記のように結合動き情報インデックスの符号化にTruncated Unary符号列を利用しているが、他の符号列生成手法を用いることも可能であり、これに限定されない。
【0129】
続いて、動き情報の予測方向が片方向である場合(S2104:YES)、1つの参照画像に対する参照画像指定情報と動きベクトルを、図1における動き補償予測部108に設定して、片方向動き補償予測ブロックを生成する(S2105)。動き情報が片方向でない場合(S2104:NO)、2つの参照画像に対する参照画像指定情報と動きベクトルを動き補償予測部108に設定して、双方向動き補償予測ブロックを生成する(S2106)。
【0130】
続いて、動き補償予測ブロックと予測対象ブロックの予測誤差と動き情報符号量より、予測誤差評価値を算出し(S2107)、予測誤差評価値が最小値である場合には評価値を更新すると共に、予測誤差最小インデックスを更新する(S2108)。
【0131】
全ての結合動き情報候補についての予測誤差評価値が比較された結果、選択された予測誤差最小インデックスを、結合予測モードで用いる結合動き情報インデックスとして、予測誤差最小値、動き補償予測ブロックと共に出力し(S2110)、結合予測モード評価値生成処理を終了する。
【0132】
図22は、図11のステップS1102の予測モード評価値生成処理の詳細動作を説明するためのフローチャートである。
【0133】
最初に、予測モードが片方向予測であるか否かを判別する(S2200)。片方向予測であれば、処理対象とする参照画像リスト(LX)を予測に用いている参照画像リストに設定する(S2201)。片方向予測でなければ、双方向予測であるから、この場合はLXをL0とする(S2202)。
【0134】
次に、LX予測に対する参照画像指定情報(インデックス)と動きベクトル値を取得する(S2203)。続いて、予測ベクトル候補リストを生成し(S2204)、予測ベクトルの中から最適予測ベクトルを選択し、差分ベクトルを生成する(S2205)。最適予測ベクトルの選択手法は、予測ベクトルと伝送する動きベクトルの差分ベクトルを実際に符号化する際の符号量が最も少ないものを選択することが望ましいが、単純に差分ベクトルの水平・垂直成分の絶対値の総和が小さいものを選択するなどの手法で、簡易的に算出してもよい。
【0135】
続いて、再度予測モードが片方向予測である否かを判別し(S2206)、予測モードが片方向予測であればステップS2209に進む。片方向予測でない、すなわち、双方向予測であれば、処理対象の参照リストLXがL1か否かを判定する(S2207)。参照リストLXがL1であれば、ステップS2209に進み、L1でない、すなわち、L0であればLXをL1として(S2208)、ステップS2203からステップS2206までの処理と同じ処理が行われる。
【0136】
続いて、動き情報符号量を算出する(S2209)。片方向予測モードの場合に、符号化する動き情報としては、1つの参照画像に対する、参照画像指定情報、差分ベクトル値、及び予測ベクトルインデックスの3要素、双方向予測モードの場合には、L0とL1の2つの参照画像に対する、参照画像指定情報、差分ベクトル値、及び予測ベクトルインデックスの計6要素となり、各々符号化された符号量の総量が動き情報符号量として算出される。本実施の形態における予測ベクトルインデックスの符号列生成手法としては、結合動き情報インデックスの符号列と同様にTruncated Unary符号列を用いるものとする。
【0137】
続いて、参照画像に対する参照画像指定情報と動きベクトルを図1における動き補償予測部108に設定して、動き補償予測ブロックを生成する(S2210)。
【0138】
さらに、動き補償予測ブロックと予測対象ブロックの予測誤差と動き情報符号量より、予測誤差評価値を算出し(S2211)、予測誤差評価値と、参照画像に対する動き情報である、参照画像指定情報と差分ベクトル値と予測ベクトルインデックスを動き補償予測ブロックと共に出力し(S2212)、予測モード評価値生成処理を終了する。
【0139】
以上の処理が、実施の形態1における動画像符号化装置における予測モード判定部109の詳細動作となる。
【0140】
[実施の形態1における動画像復号装置における動き情報復号部の詳細動作説明]
図24は、図6に示した実施の形態1の動画像復号装置における動き情報復号部606の詳細な構成を示す図である。動き情報復号部606は、動き情報ビットストリーム復号部2400、予測ベクトル算出部2401、ベクトル加算部2402、動き補償予測復号部2403、結合動き情報算出部2404、及び結合動き補償予測復号部2405を含む。
【0141】
図6における動き情報復号部606に対して、多重分離部601より入力された動き情報ビットストリームが、動き情報ビットストリーム復号部2400に供給され、動き情報メモリ607より入力された動き情報が、予測ベクトル算出部2401、及び結合動き情報算出部2404に供給される。
【0142】
また、動き補償予測部608に対して、動き補償予測復号部2403、及び結合動き補償予測復号部2405から、動き補償予測に用いる参照画像指定情報と動きベクトルが出力され、予測方向を示す情報を含めた復号された動き情報が、動き情報メモリ607に格納される。
【0143】
動き情報ビットストリーム復号部2400は、多重分離部601より入力された動き情報ビットストリームを符号化シンタックスに従って復号していくことで、伝送された予測モードと、予測モードに応じた動き情報を生成する。生成した動き情報の中で、結合動き情報インデックスは、結合動き補償予測復号部2405に供給され、参照画像指定情報が予測ベクトル算出部2401に供給され、予測ベクトルインデックスがベクトル加算部2402に供給され、差分ベクトル値がベクトル加算部2402に供給される。
【0144】
予測ベクトル算出部2401は、動き情報メモリ607より供給された隣接ブロックの動き情報と、動き情報ビットストリーム復号部2400より供給された参照画像指定情報から、動き補償予測の対象となる参照画像に対する予測ベクトル候補リストを生成し、参照画像指定情報と共にベクトル加算部2402に供給する。予測ベクトル算出部2401の動作に関しては、動画像符号化装置における図9の予測ベクトル算出部902と同一の動作が行われ、符号化時の予測ベクトル候補リストと同一の候補リストが生成される。
【0145】
ベクトル加算部2402は、予測ベクトル算出部2401より供給された予測ベクトル候補リスト及び参照画像指定情報と、動き情報ビットストリーム復号部2400から供給された予測ベクトルインデックス及び差分ベクトルより、予測ベクトルインデックスで示された位置に登録された予測ベクトル値と差分ベクトル値を加算することで、動き補償予測対象となる参照画像に対しての動きベクトル値が再生される。再生された動きベクトル値は、参照画像指定情報と共に、動き補償予測復号部2403に供給される。
【0146】
動き補償予測復号部2403は、ベクトル加算部2402より参照画像に対する、再生された動きベクトル値と参照画像指定情報が供給され、動きベクトル値と参照画像指定情報を動き補償予測部608に設定することで、動き補償予測信号を生成する。
【0147】
結合動き情報算出部2404は、動き情報メモリ607から供給される隣接ブロックの動き情報より、結合動き情報候補リストを生成し、結合動き情報候補リストとリスト内の構成要素である結合動き情報候補の参照画像指定情報と動きベクトル値を、結合動き補償予測復号部2405に供給する。
【0148】
結合動き情報算出部2404の動作に関しては、動画像符号化装置における図9の結合動き情報算出部906と同一の動作が行われ、符号化時の結合動き情報候補リストと同一の候補リストが生成される。
【0149】
結合動き補償予測復号部2405は、結合動き情報算出部2404より供給される結合動き情報候補リストとリスト内の構成要素である結合動き情報候補の参照画像指定情報と動きベクトル値と、動き情報ビットストリーム復号部2400より供給される結合動き情報インデックスより、結合動き情報インデックスで示された結合動き情報候補リストにおける参照画像指定情報と動きベクトル値を再生し、動き補償予測部608に設定することで、動き補償予測信号を生成する。
【0150】
図25は、図7のステップS701の動き情報復号処理の詳細動作を説明するためのフローチャートである。動き情報ビットストリーム復号部2400と予測ベクトル算出部2401、及び結合動き情報算出部2404により、図7のステップS701の動き情報復号処理が行われる。
【0151】
動き情報復号処理は、特定のシンタックス構造で符号化された符号化ビットストリームより動き情報を復号する処理である。最初に符号化ブロックの所定単位でSkipフラグを復号する(S2500)。以降は予測ブロック単位の処理となる。
【0152】
SkipフラグがSkipモードを示している場合(S2501:YES)、結合予測動き情報復号を行う(S2502)。ステップS2502の詳細処理については、後述する。
【0153】
Skipモードでない場合(S2501:NO)、マージフラグを復号する(S2503)。マージフラグが1を示している場合(S2504:YES)には、ステップS2502の結合予測動き情報復号に進む。
【0154】
マージフラグが1でない場合(S2504:NO)、動き予測フラグを復号し(S2505)、予測動き情報復号を行う(S2506)。ステップS2506の詳細動作については、後述する。
【0155】
図26は、図25のステップS2502の結合予測動き情報復号処理の詳細動作を説明するためのフローチャートである。
【0156】
最初に予測モードに結合予測モードを設定し(S2600)、結合動き情報候補リストを生成する(S2601)。ステップS2601の処理は、動画像符号化装置における図11のステップS1100の結合動き情報候補リスト生成処理と同一の処理である。
【0157】
結合動き情報候補リストが1よりも大きい場合(S2602:YES)、即ち複数の結合動き情報候補がある場合には、結合動き情報インデックスを復号し(S2603)、結合動き情報候補リストが1つの場合(S2602:NO)、結合動き情報インデックスに0を設定する(S2604)。
【0158】
続いて、結合動き情報候補リストより、結合動き情報インデックスで示す位置に格納されている動き情報を取得する(S2605)。取得する動き情報としては、片方向/双方向を示す予測方向、参照画像指定情報、動きベクトル値となる。
【0159】
生成された動き情報は、結合予測モードの動き情報として格納され(S2606)、結合動き補償予測復号部2406に供給される。
【0160】
図27は、図25のステップS2506の予測動き情報復号処理の詳細動作を説明するためのフローチャートである。
【0161】
最初に、予測方向が片方向予測であるか否かを判別する(S2700)。片方向予測であれば、処理対象とする参照画像リスト(LX)を予測に用いている参照画像リストに設定する(S2701)。片方向予測でなければ、双方向予測であるから、この場合はLXをL0とする(S2702)。
【0162】
次に、参照画像指定情報を復号し(S2703)、差分ベクトル値を復号する(S2704)。次に、予測ベクトル候補リストを生成し(S2705)、予測ベクトル候補リストが1より大きな場合(S2706:YES)、予測ベクトルインデックスを復号し(S2707)、予測ベクトル候補リストが1の場合(S2706:NO)、予測ベクトルインデックスに0を設定する(S2708)。
【0163】
ここで、ステップS2705では、動画像符号化装置における図22のフローチャートのステップS2204と同様の処理が行われる。
【0164】
次に、予測ベクトル候補リストより、予測ベクトルインデックスで示す位置に格納されている動きベクトル値を取得する(S2709)。復号した差分ベクトル値と動きベクトル値を加算することで動きベクトルを再生する(S2710)。
【0165】
続いて、再度予測方向が片方向予測である否かを判別し(S2711)、予測方向が片方向予測であればステップS2714に進む。片方向予測でない、すなわち、双方向予測であれば、処理対象の参照リストLXがL1か否かを判定する(S2712)。参照リストLXがL1であれば、ステップS2714に進み、L1でない、すなわち、L0であればLXをL1として(S2713)、ステップS2703からステップS2711までの処理と同じ処理が行われる。
【0166】
続いて、生成された動き情報として、片方向予測方向の場合には、1つの参照画像に対する参照画像指定情報と動きベクトル値が、双方向予測方向の場合には、2つの参照画像に対する参照画像指定情報と動きベクトル値が、動き情報として格納され(S2714)、動き補償予測復号部2403に供給される。
【0167】
実施の形態1における、動画像符号化装置及び動画像復号装置においては、結合動き情報候補リスト削除部において、予測方向、参照画像インデックスおよび動きベクトル値を比較して、完全に同じ動き情報を持つ結合動き情報候補を削除するのではなく、参照画像インデックスを比較せずに予測方向と動きベクトル値を比較することにより、結合動き情報候補から冗長性の高い信頼度の低い動き情報を持つ候補を適切に削除することが可能となり、その結果、結合動き情報インデックスに割り当てられる符号量を減らし、符号化効率を向上させることができる。
【0168】
また、実施の形態1における、動画像符号化装置及び動画像復号装置においては、動き情報候補リスト削除部において、予測方向、参照画像インデックスおよび動きベクトル値をすべて比較するのではなく、参照画像インデックスを比較せずに予測方向と各予測方向の動きベクトル値を比較することで、比較処理を減らすことが可能となり、回路規模や処理時間の削減といった効果も有する。
【0169】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2を説明する。実施の形態2は、実施の形態1に対して、結合予測候補削除の動作が異なる。結合予測候補削除の動作以外の構成および処理は実施の形態1と同一であるので、ここでは図10の結合動き情報候補リスト削除部1001における結合動き情報リスト削除処理の実施の形態1との差異のみ説明する。
【0170】
図28は、実施の形態2における結合予測候補削除処理の動作の流れを示すフロチャートである。候補(i)の予測方向と候補(ii)の予測方向が同じで(S2802のYES)、その予測方向が片方向予測である場合(S2803:片方向予測)、ステップS2804において、動きベクトル値(i)と動きベクトル値(ii)のみを比較するのではなく、候補(i)の予測方向における参照インデックス(参照インデックス(i))と、候補(ii)の予測方向における参照インデックス(参照インデックス(ii))をも比較している点が実施の形態1と異なる点である。
【0171】
前述したように、動画像では等速度運動をしている動きが多いので、動きベクトル予測方向と各予測方向の動きベクトル値が同じで、参照画像インデックスのみが異なる候補は、図19(b)に示すように動きベクトルが等速度運動していることを否定するため信頼性が低いと考えることができる。しかしながら、すべての動きが等速度運動ではないため、動きベクトル予測方向と各予測方向の動きベクトル値が同じで、参照画像インデックスのみ異なる候補が、実際の動きと合致していることもあり得る。特に、片方向予測では動きベクトルの同一比較が一組であるため、双方向予測の同一比較が二組であるのに比べて、動きベクトルが同一であり参照インデックスのみが異なる確率が相対的に高い。また、双方向予測の場合には、動きベクトルの同一性を二組比較する必要があるのに比べて、片方向予測は動きベクトルの同一性を一組しか比較する必要がないため、演算量に余裕がある。
【0172】
そこで、実施の形態2では、片方向予測では動きベクトルの同一比較に加えて、参照画像インデックスの同一比較も行う。候補(i)の予測方向と候補(ii)の予測方向が片方向予測である場合には、予測方向、参照画像インデックス、および動きベクトル値を比較して、完全に同じ動き情報を持つ結合動き情報候補のみを削除し、候補(i)の予測方向と候補(ii)の予測方向が双方向予測である場合には、参照画像インデックスを比較せずに、予測モードと動きベクトル値のみを比較することにより、信頼度の低い動き情報を持つ結合動き情報候補を的確に削除することが可能である。
【0173】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3を説明する。実施の形態3は、実施の形態1に対して、結合動き情報算出部に結合動き情報候補リスト追加部を設ける構成であり、結合動き情報候補リスト生成の処理が異なる。それ以外の構成および処理は実施の形態1と同一であるので、ここでは図9の結合動き情報算出部906における結合動き情報リスト生成処理の実施の形態1との差異のみ説明する。
【0174】
図29は、実施の形態3における結合動き情報算出部の構成を示す図である。また、図30は、実施の形態3における結合動き情報算出部の処理の動作の流れを示すフローチャートである。この動作は、図11のステップS1100の結合動き情報候補リスト生成の詳細な動作を示している。
【0175】
実施の形態3において、結合動き情報算出部906は、結合動き情報候補リスト生成部2900、結合動き情報候補リスト削除部2901及び結合動き情報候補リスト追加部2902を含む。
【0176】
結合動き情報候補リスト生成部2900は、動き情報メモリ111より供給される空間候補ブロック群および時間候補ブロック群からそれぞれ空間結合動き情報候補リストおよび時間結合動き情報候補リストを生成する(S3000、S3001)。
【0177】
続いて、結合動き情報候補リスト削除部2901は、生成された結合動き情報候補リストより、信頼度の低い動き情報を持つ結合動き情報候補を削除して動き情報候補リストを更新する(S3002)。
【0178】
次に、結合動き情報候補が存在しない場合(S3003:YES)には、固定の動き情報を結合動き上方候補リストに追加する(S3004)。
【0179】
ここまでのステップS3000からステップS3004までの処理は、実施の形態1におけるステップS1200からステップS1204までの処理と同様であるので、詳細な動作の説明は割愛する。
【0180】
次に、生成された結合動き情報候補リストの結合動き情報候補の数に応じて、新たな結合動き情報候補を追加して(S3005)、処理を終了する。結合動き情報候補追加の詳細な動作は後述する。
【0181】
ここで、本実施の形態における結合予測モード(マージモード)は、予測処理対象ブロック自身の動き情報を直接符号化せずに、隣接するブロックの動き情報を符号化に使用する手法であり、複数の隣接ブロック候補のどのブロックを使用したかを特定する情報(インデックス)を符号化することで、復号側でも同じ情報を使用して復号することができる。
【0182】
前述したように、本実施の形態では、結合動き情報候補を特定するために符号化される結合動き情報インデックスは、Truncated Unary符号列を用いるので、結合動き情報候補数の数に応じて、割り当てられる符号ビット数が変化する。
【0183】
しかしながら、動画像を符号化して得られる符号化画像信号を復号装置で復号する場合、たとえば復号済みの動画像信号や動き情報の格納や読み出しの過程でエラーが混入することがあり、その結果、結合動き情報候補リストが正しく生成されないことが起こりうる。そのとき、得られた結合動き情報候補リストの結合動き情報候補の数が本来のものと異なっていると、インデックスに割り当てられる符号ビット数も間違ったものとなってしまい、その結果、これ以降のビットストリームの復号が不可能となる。
【0184】
そこで、本実施の形態では、生成した結合動き情報候補リストの候補の数が既定の数に満たない場合には、新たな候補を追加して常に候補の数を固定にすることにより、ロバストネスの強化を行う。
【0185】
図31は、図30のステップS3005の結合動き情報候補追加処理の動作の流れを示すフローチャートである。実施の形態3における結合動き情報候補リストの候補の既定の数は3としたが、これには限定されず、ビットストリーム内に値を記録して指定したり、予め定めた値を暗黙的に指定することにより、符号化装置側と復号装置側で結合動き情報候補リストの候補数を同一の値に設定して同じ処理が実現できる。
【0186】
まず、生成された結合動き情報候補の数(num_list)が既定の数(NLIST)より小さいか否かを判断する(S3100)。小さくなければ(S3100:NO)、何もせずに処理を終了する。小さければ、ステップS3101からステップS3104の処理を繰り返し行う。
【0187】
処理を行うインデックスをi=0、追加しなければならない候補数をn=NLIST−num_listとし、インデックスiの結合動き情報候補(候補(i))から順に、動き情報のうち、参照画像インデックス(ref_idx)の値のみ有効な範囲で変更して、結合動き情報候補リストに追加する(S3102)。たとえば、インデックス0の結合動き情報が、予測方向がL0予測、動きベクトルが(3,1)、参照画像インデックスが1で、参照画像インデックスの最大値が2であるとすると、予測方向と各予測方向の動きベクトルが同じで、参照画像インデックスが0、2の二つの結合動き情報候補をリストに追加する。
【0188】
前述したように、実施の形態3における結合動き情報候補削除部は、予測方向と各予測方向の動きベクトル値のみを比較して候補を削除するか否かを判定しており、参照画像インデックスの比較は行っていない。すなわち、予測方向と各予測方向の動きベクトル値が同じであれば、参照画像インデックスが異なっていても信頼度の低い動き情報と判断して削除するので、結合動き情報候補削除処理を行った後の結合動き情報候補リストには、予測方向と各予測方向の動きベクトル値が同じで、参照画像インデックスのみ異なるという候補は存在しない。よって、予測方向と各予測方向の動きベクトルが同じで、参照画像インデックスが異なる候補を追加しても、同じ動き情報が結合動き情報候補リストに存在しないので、候補の追加により、冗長になることはなく、再度、結合動き情報候補削除の処理を行う必要がないことに留意する。
【0189】
続いて、iに1を加算し、nから追加した候補の数を引いて更新する(S3103)。ステップS3101からステップS3104の処理をiがnum_listになるか、nが0になるまで繰り返し行う。
【0190】
次に、num_listの値を追加した候補も加えた数に更新し(S3105)、num_listが既定の数(NLIST)より小さいか否かを再び判定する(S3106)。小さくなければ処理を終了し、小さければ固定の動き情報を結合動き情報リストに追加して(S3107)、処理を終了する。
【0191】
実施の形態3における固定の動き情報としては、予測方向が双方向で、参照画像指定情報(インデックス)が0、2つの動きベクトル値が共に(0,0)の値を設定する。結合動き情報候補の数を既定の数にするために、2つ以上の候補を追加しなければならない場合は、ベクトル値は(0,1)、(1,0)、(1,1)、(2,1)、(1,2)・・・のように水平垂直の要素を順番に増加させていくものとする。本発明の実施の形態3における固定の動き情報としては、上記の設定値には限定されず、暗黙的に指定できる手法で設定することにより、復号装置においても同じ動き情報が再現できる。
【0192】
図32(a)〜(d)は、結合動き情報候補追加処理を行う前後の結合動き情報候補リストの一例を示す図である。
【0193】
図32(a)、(b)は、片方向予測の場合である。図32(a)は、結合動き情報候補追加処理を行う前の結合動き情報候補リストであり、L0予測、動きベクトル値(3,1)、参照画像インデックス1の動き情報が格納されている。結合動き情報候補追加処理により、図32(a)の結合動き情報候補リストの動き情報に対して、参照画像インデックスのみを変更した動き情報を2つ追加すると、図32(b)のようになる。図32(b)では、参照画像インデックスを0とした動き情報と、参照画像インデックスを2とした動き情報が追加され、動き情報の候補数が規定値の3となる。
【0194】
図32(c)、(d)は、双方向予測の場合である。図32(c)は、結合動き情報候補追加処理を行う前の結合動き情報候補リストであり、双方向予測、L0予測の動きベクトル値(3,1)、L1予測の動きベクトル値(1,0)、L0予測の参照画像インデックス1、L1予測の参照画像インデックス0の動き情報が格納されている。結合動き情報候補追加処理により、図32(c)の結合動き情報候補リストの動き情報に対して、参照画像インデックスのみを変更した動き情報を2つ追加すると、図32(d)のようになる。図32(d)では、L0予測の参照画像インデックス、L1予測の参照画像インデックスをともに0とした動き情報、L0予測の参照画像インデックス、L1予測の参照画像インデックスをともに1とした動き情報が追加され、動き情報の候補数が規定値の3となる。
【0195】
以上のように、実施の形態3の動画像符号化装置及び動画像復号装置では、動き情報候補リスト削除部において、参照画像インデックスを比較せずに予測方向と各予測方向の動きベクトル値を比較することにより、信頼度の低い動き情報を持つ候補を削除した上、動き情報候補リスト追加部において、既に結合動き情報候補リストに存在する動き情報の、参照画像インデックスのみを変更して追加して結合動き情報候補リストの候補数を規定数にする。これにより、結合動き情報候補リストに重複して同じ動き情報が追加されることがないので、新たに結合動き情報候補削除処理を行う必要がなく、より少ない処理でロバストネスを向上させることができる。
【0196】
以上述べた実施の形態の動画像符号化装置が出力する動画像の符号化ストリームは、実施の形態で用いられた符号化方法に応じて復号することができるように特定のデータフォーマットを有しており、動画像符号化装置に対応する動画像復号装置がこの特定のデータフォーマットの符号化ストリームを復号することができる。
【0197】
動画像符号化装置と動画像復号装置の間で符号化ストリームをやりとりするために、有線または無線のネットワークが用いられる場合、符号化ストリームを通信路の伝送形態に適したデータ形式に変換して伝送してもよい。その場合、動画像符号化装置が出力する符号化ストリームを通信路の伝送形態に適したデータ形式の符号化データに変換してネットワークに送信する動画像送信装置と、ネットワークから符号化データを受信して符号化ストリームに復元して動画像復号装置に供給する動画像受信装置とが設けられる。
【0198】
動画像送信装置は、動画像符号化装置が出力する符号化ストリームをバッファするメモリと、符号化ストリームをパケット化するパケット処理部と、パケット化された符号化データをネットワークを介して送信する送信部とを含む。動画像受信装置は、パケット化された符号化データをネットワークを介して受信する受信部と、受信された符号化データをバッファするメモリと、符号化データをパケット処理して符号化ストリームを生成し、動画像復号装置に提供するパケット処理部とを含む。
【0199】
また、以上の符号化及び復号に関する処理は、ハードウェアを用いた伝送、蓄積、受信装置として実現することができるのは勿論のこと、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等に記憶されているファームウェアや、コンピュータ等のソフトウェアによっても実現することができる。そのファームウェアプログラム、ソフトウェアプログラムをコンピュータ等で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することも、有線あるいは無線のネットワークを通してサーバから提供することも、地上波あるいは衛星ディジタル放送のデータ放送として提供することも可能である。
【0200】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0201】
100 入力端子、 101 減算部、 102 直交変換・量子化部、 103 予測誤差符号化部、 104 逆量子化・逆変換部、 105 加算部、 106 復号画像メモリ、 107 動きベクトル検出部、 108 動き補償予測部、 109 予測モード判定部、 110 動き情報符号化部、 111 動き情報メモリ、 112 多重化部、 113 出力端子、 600 入力端子、 601 多重分離部、 602 予測差分情報復号部、 603 逆量子化・逆変換部、 604 加算部、 605 復号画像メモリ、 606 動き情報復号部、 607 動き情報メモリ、 608 動き補償予測部、 609 出力端子、 900 動き補償予測生成部、 901 予測誤差算出部、 902 予測ベクトル算出部、 903 差分ベクトル算出部、 904 動き情報符号量算出部、 905 予測モード評価部、 906 結合動き情報算出部、 907 結合動き補償予測生成部、 1000 結合動き情報候補リスト生成部、 1001 結合動き情報候補リスト削除部、 2400 動き情報ビットストリーム復号部、 2401 予測ベクトル算出部、 2402 ベクトル加算部、 2403 動き補償予測復号部、 2404 結合動き情報算出部、 2405 結合動き補償予測復号部、 4700 動き修正参照画像動きベクトル検出部、 2900 結合動き情報候補リスト生成部、 2901 結合動き情報候補リスト削除部、 2902 結合動き情報候補リスト追加部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像の各ピクチャを分割したブロック単位で動きベクトルを用いて前記動画像を符号化する動画像符号化装置であって、
符号化対象ブロックに隣接する複数の符号化済みの隣接ブロックの動き情報を前記符号化対象ブロックの動き情報の候補として算出し、動き情報の候補リストを生成する候補リスト生成部と、生成された前記候補リストに含まれる動き情報の中で、互いに予測方向および動きベクトル値が一致するものがある場合、いずれか一方の動き情報を前記候補リストから削除する候補リスト削除部とを含む動き情報算出部と、
前記候補リスト削除部にて処理された前記候補リスト内の動き情報を備える前記隣接ブロックの中から一つの隣接ブロックを、動き情報を参照するための参照ブロックとして指定して、指定された参照ブロックの動き情報を前記符号化対象ブロックの動き情報として使用する結合予測モードが選択された場合に、前記候補リスト削除部にて処理された前記候補リストから得た前記指定された参照ブロックの動き情報を用いて、前記符号化対象ブロックを符号化するとともに、指定された参照ブロックを示すインデックスを符号化する符号化部とを備えることを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項2】
前記候補リスト削除部は、片方向予測の時は、前記候補リストに含まれる動き情報の内、互いに予測方向、動きベクトル値および参照先の画像を示す参照画像インデックスが一致する場合、いずれか一方の動き情報を前記候補リストから削除し、双方向予測の時は、互いに予測方向および動きベクトル値が一致する場合、いずれか一方の動き情報を前記候補リストから削除することを特徴とする請求項1に記載の動画像符号化装置。
【請求項3】
前記候補リスト削除部は、前記いずれか一方の動き情報を前記候補リストから削除する際、前記候補リストにおいてインデックスが大きい方の動き情報を削除することを特徴とする請求項1または2に記載の動画像符号化装置。
【請求項4】
動画像の各ピクチャを分割したブロック単位で動きベクトルを用いて前記動画像を符号化する動画像符号化方法であって、
符号化対象ブロックに隣接する複数の符号化済みの隣接ブロックの動き情報を前記符号化対象ブロックの動き情報の候補として算出し、動き情報の候補リストを生成する候補リスト生成ステップと、生成された前記候補リストに含まれる動き情報の中で、互いに予測方向および動きベクトル値が一致するものがある場合、いずれか一方の動き情報を前記候補リストから削除する候補リスト削除ステップとを含む動き情報算出ステップと、
前記候補リスト削除ステップにて処理された前記候補リスト内の動き情報を備える前記隣接ブロックの中から一つの隣接ブロックを、動き情報を参照するための参照ブロックとして指定して、指定された参照ブロックの動き情報を前記符号化対象ブロックの動き情報として使用する結合予測モードが選択された場合に、前記候補リスト削除ステップにて処理された前記候補リストから得た前記指定された参照ブロックの動き情報を用いて、前記符号化対象ブロックを符号化するとともに、指定された参照ブロックを示すインデックスを符号化する符号化ステップとを備えることを特徴とする動画像符号化方法。
【請求項5】
動画像の各ピクチャを分割したブロック単位で動きベクトルを用いて前記動画像を符号化する動画像符号化プログラムであって、
符号化対象ブロックに隣接する複数の符号化済みの隣接ブロックの動き情報を前記符号化対象ブロックの動き情報の候補として算出し、動き情報の候補リストを生成する候補リスト生成ステップと、生成された前記候補リストに含まれる動き情報の中で、互いに予測方向および動きベクトル値が一致するものがある場合、いずれか一方の動き情報を前記候補リストから削除する候補リスト削除ステップとを含む動き情報算出ステップと、
前記候補リスト削除ステップにて処理された前記候補リスト内の動き情報を備える前記隣接ブロックの中から一つの隣接ブロックを、動き情報を参照するための参照ブロックとして指定して、指定された参照ブロックの動き情報を前記符号化対象ブロックの動き情報として使用する結合予測モードが選択された場合に、前記候補リスト削除ステップにて処理された前記候補リストから得た前記指定された参照ブロックの動き情報を用いて、前記符号化対象ブロックを符号化するとともに、指定された参照ブロックを示すインデックスを符号化する符号化ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする動画像符号化プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate


【公開番号】特開2013−42235(P2013−42235A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176268(P2011−176268)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】