説明

動的細胞培養のマルチリアクタボックス

本発明は、マイクロシステム(150)及び前記マイクロシステムの少なくとも1つの組みのインタフェースコネクタを含むボックス(1)に関し、前記マイクロシステム(150)が、動的細胞培養の少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバ(15)の形状を持つ下部プレート(152)及び上部プレート(151)を含み、前記少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバ(15)が、前記上部プレート(151)の穴に脱着可能に挿入された前記少なくとも1つの組みのコネクタ(16)により、入口及び/又は出口で流体流通的に接続されることを特徴とする。本発明はまた、動的細胞培養システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はin−vitro細胞培養に関する。より具体的には本発明は、栄養培地での動的培養のためのマルチバイオリアクタボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
今日培養細胞は物質の毒性評価のためのツールとして使われている。
【0003】
また、細胞の増殖及び組織化のための、組織の環境又は動物や人の組織の環境に類似した好ましい環境を再現するバイオリアクタも存在する。このために、異物、化粧品、医薬又はより一般的に全ての活性物質などの物質に対する組織の反応が得られかつ適切なin−vitroモデルが開発され得る。
【0004】
これらのモデルは医薬研究においてますます頻繁に使用されるようになってきている。というのはそれらはin−vivoモデル(即ちこれに対しは、経済的にも倫理的にも国際レベルで圧力が高まっている)に対する1つ重要な代替方法を示すからである。
【0005】
培養細胞はまた、組織工学の問題として、損傷又は欠失した組織の代替物となり得る人工組織を生成する基礎を示す。
【0006】
バイオリアクタは、マイクロ構造化チャンバ(培養チャンバであって、マイクロ構造を持つ上部壁と下部壁を含む)の両方の端部に、流体の入口と流体の出口があり、細胞増殖のために必要な栄養物流の流通を可能とする。前記流体はそれにより、例えばポンプにより駆動されて循環されるが、これはいわゆる動的細胞培養として知られている。かかる装置は仏国特許第0954288号に記載されている。
【0007】
この従来のバイオリアクタは優れた結果を与え、かつ細胞増殖の最適化を可能とするものではあるが、工業的使用をいまだ満たすものではない。好ましくはできるだけ細胞培養表面を大きくすることが好ましい。
【0008】
このための1つの解決方法は、マルチバイオリアクタの使用である、即ち並列化バイオリアクタの使用である。これらの装置はまた全体として小さくされるべきである。統合化された細胞培養のための種々のシステムがこれまでこの目的にために提案されてきた。
【0009】
Hurel(R)システム(米国特許第5612188号及び7288405号に記載)は、ペリスタポンプに接続された、並列に配列された4つの2重バイオリアクタを含む。タンクがまた、前記回路に挿入され、栄養媒体のための保存容器として作用するが、またサンプルをサンプリングするための空間としても作用する。
【0010】
実際には、サンプリングは、適切な増殖をモニタするために細胞培地を通じて行われ、及び試験される物質に暴露されたあと毒性研究目的のために細胞を用いる際に、例えば規則的に一連のサンプリングがこの物質の細胞への代謝応答を決定し、安全性(即ち、所与の容積内の前記物質を除去するために前記組織の許容能力)を測定し、又は細胞の反応動力学を観測する。
【0011】
前記Hurel(R)システムのサンプリング手順(タンク内で)は長く複雑であり、従って前記タンク内の媒体のサンプルを取得することができるように流体灌流を止める必要がある。また、このサンプリングは前記バイオリアクタから離れた場所で行われ、このことは、サンプリングを介して検出されるべき代謝物マーカーの濃度が、前記バイオリアクタと前記タンクの間で、前記パイプの表面への吸着現象により低下してしまうという危険を有する。
【0012】
また、灌流回路への前記バイオリアクタを導入することは、増殖中の細胞を非常に害する恐れがある泡の生成を避けるために、殺菌条件での長い注意深い操作を必要とする。又、前記回路へ泡捕捉の追加が必要となる。
【0013】
さらに、これらのバイオリアクタは、コネクタの組を持たない数センチメートル厚さの2つのプレートの間に設けられる。前記コネクタは従って、前記プレートの穴に設けられる端片部を介して作られる。
【0014】
このシステムは密閉を保証するが、細胞播種の際に問題となる。実際に、人細胞株は非常に高価であり、用心して配置される必要がある。この装置の構造は2つの連続するバイオリアクタに前記同じ細胞で受精させることを伴い、冗長性の結果となる。
【0015】
さらに、並列化バイオリアクタついてそれぞれの1つが必要であることから、前記灌流ネットワークを複雑なものにすると同様に、全てのタンク及びトラップは前記回路を長くし、かつ同様に前記パイプの内部表面を増加させる。この表面は溶液中の化学物質の吸収表面となる。この吸収は毒性試験を歪めてしまう。というのは、回路に最初に注入された生体異物はその濃度が減少し、前記回路の端部での細胞培地中ではゼロにさえ低下してしまう恐れがあるからである。偽陰性のリスクは無視できない。
【0016】
米国特許出願公開第2007/0243523に記載される、BiofluxTM200及びBiofluxTM1000システムは、市販されているマルチウェルプレートを用いる密閉ボックスを提案する。マルチウェルプレートは標準プレートであり、小試験片の役割を持つ複数のウェルを含む。これは現在実験室で使用されているツールであり多くのモデルを利用可能である。この適合されたプレートで、2つのウェルを接続するマイクロチャンネルは細胞成長のための支持体として作用する。サンプリングは第2のウェルでなされ、これは従って前記培養ゾーンに近いin−situサンプリングである。しかし、前記サンプリングの複雑さの問題は、Hurel(R)システムではさらに悪いものである。というのは前記マルチウェルプレートは完全にカバーされておらず、従って並列化された全てのリアクターの操作は停止される必要があるからである。
【0017】
さらに、BiofluxTMシステムは、細胞培養には非常に好ましいものではない。これは、前記培養培地が過圧力を供することでなされることから動的培養細胞を再循環させることができないからである。マイクロ構造はないが、2つのウェルの間に1つのチャンネルがある。表面接着性能及び有効性が非常に弱く、収率が低下する。非常に多くの数の細胞をかかる装置に細胞播種するためにむやみに注入される必要がある。百万細胞オーダーが数百ユーロであることを考えると、1つのマイクロバイオリアクタに細胞播種するための投与量、細胞播種プロセスを改善し、それに基づき管理可能なツールが作られることが必須である。
【0018】
他の技術分野からのサンプリング方法がまた、提案されているが、いずれも満足できるものではない。
【0019】
最初の可能なシステムは、サンプルが取得され得る最端部で取り出し誘導路手段を用いるものである。しかしこの誘導路に存在する流体は滞留して、堆積物などで汚染され得る。信頼できる測定が必要な場合には、それぞれのサンプリングの前に洗浄する必要があり、これにより、完全な第2の回路(これには困難性と費用が伴うが)が洗浄を実施するために設けられない限りこの従来技術の問題(回路を停止して分解する)をもたらすこととなる。
【0020】
他の可能なシステムは、セプタム、即ち小さいゴム製ストッパを利用する。これはサンプリングされる前記回路にあるオリフィスを圧縮されて閉じる。セプタムは特に医薬品で使用される(例えばカテーテルの先端に)。サンプリングは、注射器の針でストッパを突き通すことで行われ、この結果針が引き抜かれると前記材料の変形により自然に穴を閉鎖する。しかしセプタムは、10回のサンプリング(前記回路を停止し、分解する必要がある)の後は交換される必要がある。注射器の使用はまた、少なくとも数ミリリットルのサンプル容量に適合され、これは、通常総容量が2−3mLである従来の培養細胞回路とは適合できないことが分かる。上で引用されたシステムはマイクロピペットを利用し、マイクロリットルの数十分の1をサンプリングすることを可能とする。
【0021】
具体的な欠点又は限界を伴う従来システムに関してこれまで説明されたが、これら知られたシステムのいずれもが、操作の間に培地中の細胞を容易に観察することができるものではないことが明らかである。実際、細胞の増殖を経時的に視覚的にモニタすることができることは興味あるであろう。これが本発明の主目的を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】仏国特許第0954288号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0243523号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
さらに有利には本発明の他の目的は、前記困難性を解消する装置を提供するものであり、前記装置は、簡単な構造で、動的細胞培養の並列化効果的バイオリアクタであり、次の1又はそれ以上の利点を与える装置である:
− タンク又は外部泡トラップを省ける、
− 必要な回路長さを低減できる、
− 操作中にin−situで培養培地のサンプリングを可能とする。
【0024】
本発明の他の目的は、容易に使用できる製品を得ることで達成されるものであり、この製品を用いることで、泡による細胞培地を破壊する恐れがなく、かつ最小の容量が最小の扱いで高い精度でサンプリングされ得る。
【0025】
さらに他の目的は、制御された、迅速かつより経済的な細胞播種を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の第1の側面は、動的細胞培養のマイクロ構造化チャンバを含むボックスに関する。3つの主な変形例がこの側面を示す。これらの変形例はお互いに独立して又は2つ(又は全ての数)の変形例の組合せで適用され得る。
【0027】
本発明の第1の側面の第1の変形例によれば、本発明は、マイクロシステムと前記マイクロシステムの少なくとも1つのインタフェースコネクタを含むボックスであり、前記マイクロシステムが、動的細胞培養の少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバの形状を持つ下部プレート及び上部プレートを含み、少なくとも1つの前記マイクロ構造化チャンバが、流体的に入口及び/又は出口で、前記上部プレートの穴に脱着可能に挿入されている前記コネクタの少なくとも1組みで接続されていることを特徴とする。
【0028】
この構造により、前記マイクロシステムはいつでも容易に脱着されて顕微鏡観察の下に置かれ、その後再配置される。
【0029】
この変形例の他の有利なかつ非限定的な特徴は:
− 前記ボックスはまた、少なくとも1つのウェルを含み、前記マイクロ構造化チャンバが前記コネクタの組みを介して接続され;
− 前記ウェルの底部が前記チャンバの全ての位置よりも高い位置であり;
− 前記コネクタの組みが、前記ウェルの底部で穴に固定されたコネクタであり;
− それぞれのマイクロ構造化チャンバが入口ウェル及び出口ウェルに接続され、入口及び出口のそれぞれのコネクタの組みが灌流され;
− 前記ボックスがグリップ手段により保持された密閉フードでカバーされた下部ケーシングを含み;
− 前記下部ケーシングが、前記マイクロシステム及びマルチウェルプレートを含み、前記ウェルが前記マルチウェルプレートの1つのウェルであり;
− 前記マルチウェルプレートがポリスチレンで作られた使い捨てプレートであり;
− 前記マルチウェルプレートが、ポリカーボネートで作られたオートクレーブ処理可能なプレートであり;
− 前記フードが、オスコネクタの組みを持ち、前記ウェルとメス入口コネクタを灌流し;
− 前記ボックスが、入口ウェル当たり1つのオスコネクタと1つのメスコネクタを含み、かつ出口ウェル当たり1つのオスコネクタと2つのメスコネクタを含み;
− 前記マイクロシステムがポリジメチルシロキサンを含み;
− 膜挿入が、前記ウェル内に少なくとも1つ設けられる、ことである。
【0030】
本発明の前記第1の側面の第2の変形例によると、本発明は、動的細胞培養の少なくとも1つのウェルと少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバを含み、それぞれのマイクロ構造化チャンバが出口でウェルと接続され、前記ボックスはまた、前記ウェルで終端する少なくとも1つのサンプリングポートであって前記ウェルの全ての位置よりも高い位置に設けられるサンプリングポートを含むことを特徴とする。
【0031】
この構造のために、サンプリングは非常に容易に実施できる。即ち、前記ポートを単純に開き、そこに例えばマイクロピペットを、サンプリングされる前記マイクロ構造化チャンバの出口ウェルに直接挿入すること(即ち細胞の直近)である。
【0032】
この変形例のその他の利点及び非限定的な特徴は:
− 前記サンプリングポートが除去可能なストッパが設けられている;
− 前記ボックスはグリップ手段により保持された密閉フードでカバーされた下部ケーシングを含み;
− 前記サンプリングポートは、入口で前記フード内に含まれたメスコネクタにより構成され;
− 前記フードはまた、前記ウェルを灌流し及び前記メスコネクタと整列される少なくとも1つのオスコネクタを含み;
− それぞれのマイクロ構造化チャンバは、入口ウェル及び出口ウェルに接続され、それぞれがオスコネクタにより灌流され;
− 前記フードは、入口ウェルによるメスコネクタ、及び出口ウェルにつき第2のメスコネクタを含み;
− ウェルの前記メスコネクタが前記ウェルを還流する同じオスコネクタへ接続され、前記コネクタが、前記オスコネクタと前記メスコネクタにより形成される前記配列に関して傾けられており;
− 前記下部ケーシングが、マルチウェルプレートを含み、前記ウェルが前記マルチウェルプレートの1つのウェルであり;
− 前記下部ケーシングがまた、マイクロシステムを含み、マイクロ構造化チャンバが接続される前記ウェルの底部に穴が設けられ、その穴内に前記マイクロシステムの少なくとも1つの組みのインタフェースコネクタが挿入され;
− 前記マイクロシステムが、少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバの形状を含む下部プレート、及び前記コネクタの組みを含む上部プレートを含み;
− 前記マイクロシステムが、前記少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバの形状を含む下部プレート及び上部プレートを含み、前記コネクタの組みが、前記穴に固定され前記上部プレートの穴を通じて前記チャンバを還流し;
− 前記マイクロシステムがポリジメチルシロキサンから形成され;
− 前記マルチウェルプレートがポリスチレン製の使い捨てプレートであり;
− 前記マルチウェルプレートがポリカーボネート製のオートクレーブ処理可能なプレートであり;
− プローブが前記サンプリングポートの少なくとも1つに置かれ;
− 前記プローブが前記ポートのストッパ内に一体化され;
− 挿入膜が前記ウェルの少なくとも1つ内に設けられる、ことである。
【0033】
本発明の第1の側面の第3の変形例はまた、動的細胞培養の少なくとも1つのウェルと少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバを含むボックスであり、それぞれのマイクロ構造化チャンバがウェルの入口で接続され、前記ウェルの底部が前記チャンバの全ての位置よりも高い位置である。
【0034】
この構成により、前記ウェルは泡トラップの機能を充足する。流体のカラムは前記マイクロ構造化チャンバよりも高い位置にあり、それぞれのウェルは上から灌流されることから、泡は選択的に浮力により上方へ逃げて除去される。空気は従って回路中に捕捉されることはない。
【0035】
前記ウェルはまた、タンクの機能を充足する。事実、それぞれのウェルの容量はミリリットルのオーダーである。それぞれのチャンバを理想的に2つのウェルに接続することで、回路中に2から3mLの容量を持たせることになり、それにより外部タンクは必要ではなくなる。
【0036】
さらに、この自動脱ガスは、培地を最初に充填する手順をより簡単にする。即ち、全回路を注意深くパージする必要がない。というのは流体の最初の循環の際に、泡はマイクロ構造化チャンバの上流で除去され、最初のウェルのレベルを調べるだけで十分となるからである。1時間以上の作業が節約される。さらに、この作業が細胞播種の前に完全に実施されない場合には培地は捨てられるという、さらなるリスクを回避できる。
【0037】
最後にこれらのウェルは、前記チャンバに、損失なく必要な1回のピペッティングだけで直接細胞播種することができる。操作は従って迅速、正確であり、幾つかのチャンバで連続的に実施され得る。従来技術のように注射器の使用は必要ではない。前記装置は、最小の費用で数分で操作可能である。
【0038】
この変形例の他の利点及び非限定的な特徴は:
− それぞれのマイクロ構造化チャンバが前記ウェルの底部で穴を介してウェルに直接接続される;
− 前記ボックスはマイクロシステムを含み、前記マイクロシステムのインタフェースコネクタの組みは前記穴に挿入され;
− 前記マイクロシステムは、前記少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバの形状を含む下部プレート及び上部プレートを含み;
− 前記コネクタの組みは、前記上部プレートの部分を形成する変形可能なチューブであり、上部プレートを介して前記細胞播種ピペットの先端が前記チャンバ内に挿入されることができ;
− 前記コネクタの組みが、前記チャンバを前記上部プレートの穴を通じて灌流する穴に固定された1つのコネクタであり;
− それぞれのマイクロ構造化チャンバが入口ウェル及び出口ウェルへ接続され、それぞれがコネクタの組みよりそれぞれ入口と出口で灌流され;
− 前記ボックスが、グリップ手段により保持された密閉フードによりカバーされた下部ケーシングを含み;
− 下部ケーシングが、マイクロシステム及びマルチウェルプレートを含み、前記ウェルが前記マルチウェルプレートのウェルであり;
− 前記フードが、オスコネクタの組みであり、前記ウェル及びメス入口コネクタの組みを還流し;
− 前記ボックスが、入口ウェル当たり1つのオスコネクタと1つのメスコネクタを含み、出口ウェル当たり1つのオスコネクタと2つのメスコネクタを含み;
− 前記マイクロシステムがポリジメチルシロキサンで構成され;
− 前記マルチウェルプレートがポリスチレン製の使い捨てプレートであり;
−前記マルチウェルプレートがポリカーボネート製のオートクレーブ処理可能なプレートであり;
− 挿入膜が、前記ウェルの少なくとも1つ内に設けられている、ことである。
【0039】
本発明の第2の側面によれば、本発明はまた、動的細胞培養システムを提供し、前記システムは:
− 本発明の第1の側面の変形例(又は変形例の組合せ)によるボックス、及び
− 循環手段に適合され、少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバに接続されたた循環パイプを含む少なくとも1つ流体回路を含むことを特徴とする。
【0040】
他の利点及び非限定的な特徴によれば、
− 前記循環手段はマルチチャンネルペリスタポンプである。
【0041】
泡トラップ及びタンクの省略により、前記灌流回路の長さを約半減できる。本発明の第2の側面により細胞培養システムでの毒性研究の結果は、これまで知られた装置により行われる類似の試験に比較してずっと信頼性の高いものとなる。
【0042】
第3の側面によれば、本発明は、本発明の第1の側面の変形例(またはその組合せ)によるボックスの細胞播種方法を提供し、前記方法は:
(a) 前記フードを開き;
(b) 細胞播種する細胞をピペットへ導入し;
(c) 前記ピペットの先端をコネクタの組みに挿入し;
(d) 細胞を前記ピペットから直接前記マイクロ構造化チャンバへ注入し;
(e) 前記フードをしっかり閉めてグリップ手段でロックする、ことを含む。
【0043】
この方法の他の利点及び非限定的な特徴は:
− 前記ピペットは標線付きミクロピペットであり、マイクロ構造化チャンバの最適化細胞播種に対応した既定の細胞量を含むように調整されており;
− ステップ(b)、(c)及び(d)を、前記マイクロ構造化チャンバの数に合わせて繰り返し、
− 前記ピペットが、前記マルチウェルプレートに適合されたマルチチャンネル標線付きピペットである、ことを含む。
【0044】
本発明のその他の特徴及び利点は以下の好ましい実施態様の記載からより明らかとなるであろう。この記載は添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本発明のボックスの分解斜視図である。
【図2A】図2A、2B、2C(2Cではカバーされていない)は、本発明によるボックスの3つの断面図であり、図2Aは、流体サンプリングを示す。
【図2B】図2A、2B、2C(2Cではカバーされていない)は、本発明によるボックスの3つの断面図であり、図2Bは、前記流体を前記ボックス内に閉じ込めるところを示す。
【図2C】図2A、2B、2C(2Cではカバーされていない)は、本発明によるボックスの3つの断面図であり、図2Cは、マイクロ構造チャンバへの細胞播種を示す。
【図3A】図3Aは、本発明による前記ボックスのフードの斜視図であり、前記サンプリングポートを閉じるための1つの可能なシステムを示す。
【図3B】図3Bは、本発明による前記ボックスのフードの分解斜視図である。
【図4】図4は、本発明による前記ボックスの下部ケーシングの分解斜視図である。
【図5】図5は、本発明による前記ボックスのマイクロシステムの分解斜視図である。
【図6】図6は、本発明による前記ボックスの下部ケーシングの他の可能な実施態様の断面図であり、前記マイクロシステムが脱着可能である。
【図7A】図7Aは、本発明による前記ボックスの種々の実施態様で使用可能なマルチウェルプレートの1つの可能なタイプを示す。
【図7B】図7Bは、本発明による前記ボックスの種々の実施態様で使用可能なマルチウェルプレートの1つの可能なタイプを示す。
【図7C】図7Cは、本発明による前記ボックスの種々の実施態様で使用可能なマルチウェルプレートの1つの可能なタイプを示す。
【図8A】図8Aは、本発明による前記ボックスの種々の実施態様での培地中の細胞の顕微鏡観察の例である。
【図8B】図8Bは、本発明による前記ボックスの種々の実施態様での培地中の細胞の顕微鏡観察の例である。
【図9】図9は、本発明の他の実施態様による動的細胞培養システムのダイヤグラムを示す。
【図10】図10は、異なるパイプ直径の操作ポンプ速度の関数として、実験で得られた流体通過量の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
一般的構造
本発明によるボックス1は好ましくは前記バイオリアクタが並列化されたものである。いくつかの実施態様では、本発明によるボックス1はマルチリアクタボックスである。しかし本発明はこの実施態様に限定されるものではなく、1つの構造化チャンバ15のみを含み得る。
【0047】
図示される好ましい実施態様では、ボックス1は下部ケーシング100を含み、これは密閉フード200でカバーされ、これはクランプシステム20で保持される。前記クランプシステムは、例えば図1に示されるように密閉フードを貫通する4つのネジである。
【0048】
このケーシング100は、図4に詳細により明確に示されており、マルチウェルプレート110を含み、これは前記ウェル10及びマイクロシステム150を含む。ネジ付きスペーサ21は、グリップ手段20を補助するために前記ウェル10の間に設けられ得る。これらのスペーサ21は、いくつかのマルチウェルプレート110との一体化部分であり得る。又は前記ケーシング内に開けられたオリフィス内に挿入されその中に接着されたチューブであり得る。
【0049】
前記マルチウェルプレート110は当業者に知られた部品であり、種々の形状があり、場合によりマイクロタイタープレートと呼ばれ、これは前記ウェルの小さい較正された容量を意味する。従来これらは2:3比のマトリックスにより配列され、6、12、24、96又は384ウェルのプレートとして市販されている。有利には、前記ウェルの容量に伴う考慮のために、本発明による前記マルチウェルプレート110は24ウェルプレートである。かかるボックスは、6列4行ウェル10を含みこれは図2a又は2bに示される。この構造において、前記中央ウェルは入口ウェル10aであり、2つの横のウェルは出口ウェル10bである。
【0050】
前記底部で、前記ウェル10は穴11が開けられ、これにより前記ウェル10と前記マイクロ構造チャンバ15間の流通を有効にする。それぞれの穴11は効果的に細胞を播種する、というのはこの穴へ注入される前記細胞株はそこに接続された前記マイクロ構造チャンバ15内に落ちるからである。従来技術のように、前記細胞が前記チャンバに達する前に堆積され得るデッドボリュームが存在しない。
【0051】
流体サンプリング
図2aは1つの変形例でのボックスを示し、これは流体サンプリング状況において単独で又は1又はそれ以上の変形例を組み合わせて使用され得るものである。サンプリングピペット3の先端はポート22内に挿入される。このポート22は、その下にある前記ウェル10よりも高い位置に設けられている。これは、前記ウェル10からの流体の液滴が、前記ポート22を通る液滴よりも小さい重力位置エネルギーを持つことを意味する。このことは、本発明による前記ボックス1を通常の操作位置に置く場合に、前記下部ケーシング100の底部が前記水平に近い表面上に置かれる。
【0052】
この構造は、これまでの方法と比べて、前記ウェル10からの流体サンプリングを灌流を停止する必要なく可能にする。
【0053】
実際、前記ポート22は通常の操作条件下で閉じられる。このために、前記ポート22はストッパ205を含むか、又は前記ポート22を容易に開閉し得る等価な装置を含む。図3aは一例を示す。前記ポート22と前記ウェル10の間の高さの違いにより、前記ストッパ205の直ぐ下には流体は存在せず、いくらかの空気が閉じ込められている。このことは、前記ポート22がサンプリングのために開かれる場合に、流体が溢れるリスクがなく、又は流体が停滞してポート22を汚染するリスクがない。
【0054】
サンプリングは、前記ポート22のストッパ205を開き、即座にサンプリングピペット3の先端部を前記ウェル10に導入し、必要な容量を取り出し、その後前記ピペット3を引き出してポート22を再度閉じることで実施される。前記ポート22を備えたウェル10は出口ウェル10bである。言い換えるとウェル10は、前記流体が前記ウェル10が接続される前記マイクロ構造化チャンバ15に入った直後に前記流体を受け取る。
【0055】
有利には、前記ポート22は前記密閉フード200を通過し、知られたシステムではしばしばそうであるように、前記ボックスをカバーを開けることなくサンプリングすることを可能とする。
【0056】
フードの構造
本発明においては、前記密閉フード200は種々の実施態様により選択される部品である。
【0057】
図3bで詳細に示される1つの有利なフード200は、好ましくは、10mm厚さのポリカーボネートのプレートを含み、そこに24のポリプロピレンのオスコネクタ204と36のポリプロピレンのメスコネクタ201がねじ込まれている(Φ4mm10−32UNF)。これらメスコネクタ201a及び201cは前記フード200の上部に位置され、前記オスコネクタ201と整列される。他の12の201bは前記フード200の側部に設けられる。そこで前記ボックスが、2mm厚さの平面PDMS203接続により確実に密閉されて閉じられると、ウェル10につき、1つのオスコネクタ204と1又は2つのメスコネクタ201が存在し:
− 前記入口ウェル10aについて、それぞれのタイプの単一のコネクタ(201a及び204)が存在する。前記流体の取り出しは前記フード200の上部からである。
− 前記出口ウェル10bのために、2つのメスコネクタ201b、cが存在する。横向きコネクタ201bのみが流体通路として作用する。メスコネクタ201cは前記ポート22の入口を構成する。
【0058】
図2a及び2bに示されるように、前記メスコネクタ201c及びそのオスコネクタ204は整列される。これにより、サンプリングピペット3の先端部をこれらのコネクタを同時に通し、それにより前記フード200全体を通して挿入することを可能とする。
【0059】
下部ケーシングでの流体の循環−一体化脱泡システム
図2bは、ボックス1の1つの好ましい実施態様による前記流体通路を示し、上で説明された前記フード200を含む。前記流体は前記メスコネクタ201aを通じて流れ込み、オスコネクタ204を介して前記入口ウェル10aへ移送される。前記入口ウェル10aに含まれる前記流体はその後、前記マイクロ構造化チャンバ15の一組の入口コネクタ16により灌流され、前記チャンバ15の一組の出口コネクタ16を介して前記出口ウェル10b内に集められる。前記出口ウェル10b内に含まれた過剰流体はその後オスコネクタ204により引き出され、前記フードのメスコネクタ201bへ移送される。使用される容量を考慮することで、前記培養チャンバを連続的に灌流することが可能である。前記ボックス1の組織を「灌流」することは、これらがウェル10かマイクロ構造化チャンバ15かどうかにかかわらず、これが流体が供給されるためか流体のオーバーフローを除去するためかに拘わらず、それを流体的に接続されることを意味する。前記流体循環速度は、実際には非常に遅く、適切な流体流通は、異なる組みのコネクタ及び前記ボックス1のコネクタを通じて1滴ずつ動かされ得る。
【0060】
留意すべきことは、前記流体通路は前記メスコネクタ201bの前で曲がり角を形成する。この非限定的構成は、1つのオスコネクタ204について2つの独立した出口201b及び201cを持つ。この構成により、前記流体回路を複雑にすることなく特定のサンプリングポート22が常に利用可能となり、マイクロピペット3を受け入れることを可能とする。
【0061】
この場合、前記フード200の内部に分岐が存在する。前記オスコネクタ204の垂直軸が前記ウェル10bを通って出る場合には、前記メスコネクタ201cは前記サンプリングポート22を介して前記出口を横切るようにされ、前記分岐は、前記出口が前記メスコネクタ201bを介して前記フードの横側になるようにされる。
【0062】
さらに、それぞれのウェル10はミリリットル単位の容量を持つことから、チャンバ15につき2つのウェル10a、bは従って3mLの外部タンクと等しいこととなる。また、図2bから分かるように、前記ウェル10aの位置は有利には前記チャンバの位置よりも高い位置に設けられる。ここでより高い位置とは、前記チャンバ15からの流体の液滴が前記10aからの液滴よりも位置重力エネルギーが小さいことを意味する。これは、本発明による前記ボックス1を通常の操作位置に置く場合にそうである。即ち前記下部ケーシング100の底部が水平に近い表面上に設定される場合である。
【0063】
この位置における違いにより、空気の泡が前記コネクタ204から出る場合でも、浮力によりその泡を前記ウェル10aの上部に導くこととなる。これが逆ならば、泡は前記ウェルの底に到達して前記チャンバ15に入ることとなる。上で説明したように、この構造により、前記ウェル10aにある容量の流体が採取されると、前記回路から自動的に泡が除かれることとなる。
【0064】
これはまた、前記回路の最初に流体を充填する場合にも当てはまる。従来技術の場合には充填の間パイプ中の全ての空気の泡をパージする必要があった。本発明による前記ボックスの他の有利な変形例では、単独で又は他の変形例との組合せで使用されるものであり、前記ウェル10及びチャンバ15の間の直接流通を一組の前記コネクタ16を介してなされるものである。前記コネクタ16がオペレータにより充填されると、それだけで十分それぞれのウェル10を培養液で充填し、単純に重力により前記下部ケーシング100の近くには確実に泡が存在しない。前記フード200は再び閉じられ、回路に存在する空気の泡は前記ウェル10aで捕捉される。試験が実施されると、オペレータは、細胞を播種した後に、マルチリアクターの全部、即ち12バイオリアクタを灌流を完了するためには数分のみ必要となる。従来はこの操作は1時間から1時間半必要であり、この操作の間オペレータは注意深く流体をそれぞれのバイオリアクタに注射器を用いて注入し、ゆっくりと回路を充填して灌流させ、泡を除去しなければならなかった。本発明ではこれは必要ない。
【0065】
サンプル取り出し
上で説明したサンプリング操作に加えて、前記チャンバ15の平行な上流、特に入口ウェル10aでサンプリングを実施することも可能であり、例えば前記出口ウェル10bと類似した他のポート22を設けることである。これらの新たなサンプリングの前記出口サンプリングとの比較において、特に前記出口強度から前記入口強度を差し引くことで、前記細胞反応の差測定が行われ得る。このことは、知られた方法、即ちタンクである単一の点でのみサンプリング可能である方法では可能ではない。
【0066】
より有利な実施態様では、ピペットを用いる手動サンプリングがプローブを介する自動モニタに置換され得る。実際に、細胞培養の全期間又は一部期間に前記サンプリングポート22内に導入され得る物理化学的微細化プローブが存在する。モニタは従って連続的となる。
【0067】
これらのプローブ部は、一般的にはピエゾ抵抗などのセンサが測定装置へ接続され、前記センサから伝送されるデータから物理的強度を差し引く。限定されるものではないが、センサの例としては、pHメータ、温度計、導電計、フローメーター、マノメーター、比濁計又は濁度計が挙げられる。センサ少なくとも1つのウェル10b内に設けられ、結線は前記ポート22から出て密閉を確保する材料により閉鎖される。前記センサはまた、1又はそれ以上の光ファイバの端部であり、分光光度計へ運ばれる流体の発光及び/又は吸収範囲を登録し、溶液中に存在する1つ又はそれ以上の物質の濃度が常時に計算され得る。
【0068】
有利には、前記プローブは前記ストッパ205に一体化されている。このために、前記プローブの操作を通じて密閉が直接確実にされ、前記プローブをサンプリングを行うために取り外すことが可能となる。
【0069】
本発明による前記ボックス内に1又はそれ以上のプローブを導入することが可能であることは、差測定を可能とする:即ち入口での自動測定が出口での自動測定と比較することができる。
【0070】
ただし、本発明はかかる実施態様に限定されるものではないことは明らかである。
【0071】
マイクロシステムの構造
上で示したマイクロシステム150は、場合によりハウジングに収容された前記マイクロ構造化チャンバ15であり、マルチウェルプレート110の下に置かれる。留意されるべきことは、前記マイクロシステム150は、別々に扱い得るいくつかの別々の部品からなり得る、ということである。それぞれに部品は、前記ボックス1内の1又はそれ以上のマイクロ構造化チャンバ15を含む。
【0072】
このマイクロシステム150は種々の実施態様の対象となるが、有利には図で示されるように、12のチャンバ15で構成されて24ウェルプレートに適合される。これらのチャンバ15は、同じ寸法のマイクロ構造化表面を持ち、1列に2つ配列されている。それぞれは特に好ましくは仏国特許第0954288号に基づくバイオリアクタであり得るが、これらの限定されるものではない。本発明は、しかしこの構成に限定されるものではなく、1つのチャンバ当たり少なくとも1つのウェルが必要である。例えば、他の実施態様では、本発明によるボックスは、6つのマイクロ構造化チャンバと6ウェルプレートを含み得る。
【0073】
図5で示される2つの部品は、前記マイクロシステム150を構成し:前記チャンバ15の底部の形状を持つ下部プレート152と上部プレート151である。
【0074】
これらのプレートを密閉一体化してキャビティとしたものが前記チャンバ15である。これらは小容量であり、その中に細胞が非常に好ましい状態で成長し得る。事実、前記マイクロ構造は複雑なチャンネルを形成、前記流体との大きい接触表面を与える。
【0075】
しかしながら前記マイクロシステム150は選択的であり、当業者に知られた細胞培養のチャンバ15を収容できる他の構造であればよい。
【0076】
マイクロシステムの上部プレートの実施態様
上部プレート151は2つの有利な実施態様の対象となる。本発明は、これらの実施態様のいずれにも限定されるものではなく、上部プレート151は選択的な部品であることは、明らかである。しかしながらこれらの2つの実施態様のそれぞれは、これまで説明されてきた全ての特徴と完全に組み合わされる。
【0077】
材料、ポリジメチルシロキサン(PDMS)は、これらの実施態様の全ての1つ又はその他の実施態様に適するものであり、又マイクロシステム150の残る部品についてもそうである。実際に、その材料は透明であり、酸素及び一般にガスに対し多孔性であり、細胞培養のためを含めてマイクロ構造化するために高い適合性を持つ。さらにその材料は容易に変形可能である。
【0078】
第1の実施態様では、全ての図、特に図5から分かるように、上部プレート151は、前記マイクロシステム150の一組の入口と出口コネクタ16を持つ。これらのコネクタ16は小さいチューブであり、前記ウェル10の穴11に挿入され、通常の操作での流体流通を確実にする。前記ウェル10がマルチウェルプレート110のウェルである場合、密閉は、場合により、例えばそれぞれのウェル10の底部でシリコーン材料成形から作られるジョイントにより強化され得る。
【0079】
コネクタ16を形成する材料がシリコーン材料である場合には、これらのコネクタ16は弾性的に、細胞を注入するツールとして使用されるピペット2の先端を受け入れる。実際には、ピペットはクラシックタイプであり、正確な量の流体の移送装置であり、一般的には上に置かれるプロピペットと呼ばれる一種のポンプにより吸引される。ミクロピペットとは、本発明で好ましく使用される、ニューマチック機構が統合化されている正確なシステムを意味する。かかるシステムにおいて、先端部のみ(使い捨て部分コーン部)が流体に接触するものである。明細書を通じて前記流体の容器として一般的タイプのピペットを意味することは正しくない。
【0080】
ピペット2、又はより正確にはピペット2の先端部は従って細胞播種の流体で満たされ得る。コネクタ16に挿入されると、ピペット2の先端部は前記上部プレート151のベースの端部、即ち前記チャンバ15の1つのシーリングの高さとなる。前記チャンバの内部へ直接アクセスすることが可能となる。また、コネクタ16の円錐形変形による応力のために、コネクタ16とピペット先端部2との密閉が確実となる。ピストンは、オペレータが圧縮により前記ピペットから流体を空にすることを可能にする。排出容量は非常に正確に制御され、特にピペットがマイクロピペットの場合にはそうである。流体は前記マイクロ構造化チャンバのシーリング部へ直接注入されることから、流体はこのチャンバ以外の他の部品には接触しない。最初に存在する前記流体は、例えば培養培地又は生理的食塩水であり得るが、浮力により前記チャンバからコネクタ16を介して移動される。コネクタ16により最適化細胞播種が可能となる。
【0081】
ダイヤグラムに示される構成は、それぞれのチャンバ15の入口及び出口でのコネクタの組み16、流体入口である中心コネクタの組み及び前記ウェル10の配置と類似の流体出口である横向きのコネクタが示される。明らかなことは、1つのチャンバについて2組みのコネクタ16が可能であるが、1組みのコネクタが上で説明された、ウェルに直接細胞播種を可能にするように接続され得るには十分である、ということである。入口及び出口のコネクタの組みはまた、様々に使用され得る。明らかなことは、これらのコネクタの組みは前記ウェル10及び特に出口ウェルが前記チャンバにできるだけ近くに存在するようにできる、ということである。細胞を生物異体に暴露させる間に細胞により生成された代謝物は、場合により、前記チャンバの出口で直ぐにサンプリングされることができ、前記パイプの長さによる吸収減少によるバイアスのかかっていないより信頼性の高い結果を与えることとなる。
【0082】
第2の実施態様では、図6に示されるように、同様に前記ボックス1はマイクロシステム150および前記マイクロシステム150の少なくとも1組みのインタフェースコネクタ16を含むが、これは、1つのマイクロ構造化チャンバ15が、入口及び/又は出口で、前記上部プレート151の穴内に脱着可能に挿入された1組みのコネクタ16で流体流通的に接続されている。
【0083】
言い換えると、後部プレート151は、前記第1の実施態様の1組のコネクタ16に代えて穴が設けられている。これらは前記マイクロシステム150へ一体化されていないが、前記ボックス1の残部と一個体となっている。コネクタの組み16は好ましくハードコネクタであり、前記ウェル10の穴11内に固定(例えばネジで)されるが、また接着剤、モールド又は全ての他の知られた技術で固定されてよい。これらのコネクタ16は常に前記マイクロ構造化チャンバ15を灌流するが、前記穴に脱着可能に挿入され(それらは、前記プレート151を形成する、例えば、前記材料、特にシリコーンの弾性を用いた力により駆動される)、前記マイクロシステム150は前記ボックス1の残部から容易に取り外され得る。この取り外しできるということは、研究(蛍光標識、活性試験、分離及び細胞数カウント)のために多くの可能性を提供する。コネクタ16の組みの材料は好ましくはポリカーボネート又はポリプロピレンである。
【0084】
PDMSの柔軟性はプレート151にとって非常に重要である。前記穴の直径を弾性で調節することで、上で説明したように前記マイクロシステムとコネクタ16との確実な結合が可能となる。これにより、前記マイクロシステム150の取り外し及び再組み立ての後でさえ、漏れの恐れなく操作することを可能する。
【0085】
培養中の細胞の顕微鏡による観察
これらの材料によっては、前記フード200及びマイクロシステム150はオートクレーブ処理が可能である。即ちある場合に、ユーザの必要性に応じて、洗浄され殺菌された後新鮮な培地のために再使用することを可能とする。種々の材料が前記マルチウェルプレート110のために存在する。図7aで示されるように、第1の選択はポリスチレンから作られる。この材料から作られるプレート110は一回使用のみであり、培養の完了の際に廃棄される必要がある。これは実際には安価であり完全に透明な材料であり、培地を通じて細胞を観察することを容易にする。即ち、本発明による全マルチリアクタボックスの全体は1つのペトリボックスよりも大きくないので、完全に顕微鏡下に置くことができる。実際、細胞を撹乱することなくいつでもモニタすることができるということが好ましい。これにより適切な成長を確認し、物質の直接の毒性を観察することができるからである。
【0086】
又は、ポリカーボネートで作られるプレート110が選択され得る。これは前記フード200と同じ材料である。この装置全体はオートクレーブ処理可能であるが、ポリカーボネートは機械加工されると不透明になるという欠点があり、このことは前記ウェルの下のチャンバ部分を観察するには問題である。マルチウェルプレート110がポリカーボネートで作られてる場合には、最初の方法は、図7bに示されるように選択され、ウェル10の底部に切断部を持ち、前記ボックス110とマイクロシステム150の間にポリカーボネートとPDMS接続のための追加の小プレート111を挿入し、前記ケーシング100とフード200との間と同様の密閉を確実にする。その後前記手段20と類似のクランプ手段が前記下部ケーシングを共に保持する。この追加のプレート111により、顕微鏡による観察のために機械加工されない場合のような完全な透明性が得られ、また同時にオートクレーブ処理を行うことができる。
【0087】
第2の方法は、図7cに示されるように、半球状ウェルを持つプレート110を選択することを含む。事実、図5に示されるように、最も興味のある観察領域は前チャンバ15の中心部分である。実際に、これは前記培養細胞のコアの部分であり、チャンバ15の横部分はむしろ流体の分配チャンネルである。及びこの中心領域は前記ウェル10の下に位置せず、ウェル10aとウェル10bの間に位置される(具体的には図2a及び2bに示される)。半球状ボックスの場合には、これは、前記半球状ウェルの前記「平坦」部に対応する離散的な長方形領域である。半球状ウェルを持つプレートは従って、前記ウェルの底部を修正する必要がなく観察するために適合される。
【0088】
全マルチバイオリアクタボックスを通じて細胞の観察から得られる画像はその前記プラスチックの厚さに拘わらず精度において顕著である。図8aはこの1例であり、10分の1ミクロンの精度が達成され、細胞の存在の評価、細胞の数、均一性などを観察するには十分である。それにもかかわらず、すでに説明された脱着可能なマイクロシステム150(図6)を持つボックスによりより高い光学的精度を達成することも可能であり、この場合には特に細胞の形態学的評価をすることを可能にする。
【0089】
細胞培養の間に、流体の循環を止め、前記ケーシング100のバイオリアクターをゆっくりと引っ張って前記PDMSマイクロシステム150上に取り出すことが十分可能である。上で説明したように、いくつかの部品(それぞれの部品は1つのチャンバ15のみ含むことができる)により構成されるマイクロシステム150を持つこともあり得る。特に1つのチャンバ15が観察される場合には、それを含むマイクロシステム150の部分が取り外され、前記循環は前記残る部分へ流れることを可能とする。
【0090】
前記マイクロシステム150(又はマイクロシステム部品)は、透明殺菌容器に導入され、視野が僅か数ミリメートルのプラスチックを通じて直接であることから異なる高さとコントラストで観察され得る。前記細胞の内部が、図8bに示されるように、例えば試験物質のある効果を広範囲に分析するために観察され得る。前記取り外しの間に、前記マイクロシステム150へ接続された前記ウェル10は空にされている。即ち循環から切り離され、流体は前記ネジ付きコネクタ16の微細なチャンネル中にキャピラリ効果で保持され得る。前記マイクロシステム150はその後前記コネクタ16を介して前記ボックス1の残部へ再接続され、続いて灌流される。実験的に試験されたことは、1滴の培地を前記チャンバ15のそれぞれの入口及び出口穴に再接続する前に置くことで、空気泡がチャンバ15内に導入されるリスクを避けることができる、ということである。
【0091】
動的細胞培養システム
他の側面によれば本発明は、本発明の前記第1の側面によるボックス1を含む動的細胞培養システムに関し、少なくとも1つの流れ回路300及びポンプ320、好ましくはペリスタポンプ、又は当業者に知られた任意の流体循環の他の手段を含む。異なる部品が、好ましくはできるだけ短く及び内部表面でできるだけ吸収が少ないチューブにより構成されるパイプ310による回路300へ接続され、それにより前記回路300に注入された物質の濃度の変動を制限する。
【0092】
前記培地は動的であるという事実は、流体の閉鎖回路内で循環されているということである。かかる構成では、細胞増殖条件は、流体が静的であるか又は完全な回路交代(チャンバ内の流体の両方の方向での動きであり、特にこれはチャンバ入口での流体と、チャンバを出る流体又は再使用されない流体によるチャンバの単一通路との比較を不可能にする)の効果を持たない従来の技術に比較して生物体の細胞増殖条件にできるだけ近い。
【0093】
ペリスタポンプは、流体がチューブの圧縮及び変形により動かされるポンプであり、例えば食道周りの筋肉の圧縮に類似する。このシステムは、いくつかの理由で採用され、特に細胞培養の応用に適合されている。最初に、それは低スループットへ主に適用され、高い精度及び相当な柔らかさがある。前記ポンプを停止することは、正確に前記回路中の流体の移動を停止させる。次に、前記流体と接触するのは、前記フレキシブルチューブ以外には存在しない。従って、汚染や漏れの恐れがない。最後に、単一のポンプが、同時にいくつかの流体、具体的には24の流体を制御し得るということであり、具体的には、特に好ましくはIsmatec(R)IPC−Nポンプである。これは、上で説明された、2つのマルチリアクタボックスの全てのチャンバに対応する。前記パイプ310の内部直径を調節することで、前記回路により異なる速度で同時に作用させることを可能とし、これは例えば物質への異なる暴露動力学を比較するために有用である。試験は例えば、単一のペリスタポンプを同時に3つのチャンネルで11、25及び40μL/分(種々の直径の色分けされた標準パイプを用いて)で動作させることができることを示した。図10は、4つのパイプ直径について前記ポンプの操作速度の関数として得られた速度を示すグラフである。具体的には、上で説明された操作の好ましい点がグラフ上に与えられている。
【0094】
本発明による12チャンネルポンプ320及びボックス1を持つ回路の一例が図9に示される。チャンバ15につき1つの流体回路300がある。明らかなことは、タンクや泡トラップなどの追加の部品が必要ないということである。それぞれの回路300の長さは最小であり、及び注入される物質の濃度での変動は最小となる。またそれぞれの回路は、有利にはサンプリングポート22を持ち、従って独立して試験され得る。
【0095】
この例では全ての培地は並列化されている。コネクタ201の組みにより、それにもかかわらず、異なるバイオリアクタの直列又は並列での多くの変形構成が想到され得る。本発明による前記システムの細胞培養の動的な側面のために、このモジュール化の側面は、複雑な代謝系、例えば生体組織及び/又は同じ組織の異なる細胞特性の連鎖をシミュレートすることを可能とする。これは共培養と呼ばれるものである。事実、ある物質への代謝応答はいくつかの段階があり得る。即ち第1の組織には影響を与えないが第2の組織には影響を与え、第2の組織などに影響を持ち得る第1の組織を介して物質の分泌を起こす。1つの具体的な好ましい実施態様では、前記マルチリアクタボックスのそれぞれのチャンバ15は異なる組織(肝臓、腎臓、すい臓など)をシミュレートし、これらの組織が人の構成(腎臓、肝臓の下流など)を最も近く代表するマルチ回路により可能となる。
【0096】
膜挿入
より有利には、本発明によるボックスは、生物体に存在する「フィルタ」をシミュレートする。従って、脳血液関門は解剖学的バリアであって、血液成分の通過をフィルタし制御して、血液成分が中枢神経系の細胞外液中に自由に通過することを抑制する。これは、生物体の残りから前記問題のある物質分離して特定する。僅か2%の分子が脳血液関門を自由に通過し得る。脳を介さずに直接注入される場合には神経毒が証明され得る物質は、普通に注入されると完全に安全とされ得る。
【0097】
このことを考慮すると、前記ウェル内に膜を挿入することが可能となる。これらは市販されており、シミュレートされる解剖学的膜の物理的化学的性質を持つ小さいディスクであり、分離されるべき組織について前記ウェル10の入口と出口に挿入される。本発明によるシステムにより提供される動的培養が、この可能性を使用するために必要となる。上で説明された構成は、腸合成粘膜により摂取された分子の血液中での通過をシミュレートすることで完成され得る。
【0098】
細胞播種の方法
他の側面では、本発明は、マルチリアクタボックスの細胞播種の方法に関する。上で説明されたように、コネクタ16の組みがピペット2の先端部を受けることができる。
【0099】
細胞播種を実施する前に、通常グリップ手段20のネジを緩めて前記フード200を開けることでコネクタ16の組みにアクセスすることが必要である。その後、前記ウェル10の下部及びコネクタ16の組みにアクセス可能となる。オペレータはピペット2を細胞播種道具として使用する。
【0100】
細胞播種構成は図2cで明らかである。それぞれのチャンバが細胞播種されたなら、前記フードを閉じ、回路を300を接続し、栄養流体の灌流を開始して細成長を開始する。
【0101】
好ましくはピペット2は標線付きミクロピペットである。目盛り付きピペットとは異なり、このピペットは特定の容量を含むように設計され、非常に正確である。注入されるべき細胞の量として、チャンバ15の容量が知られているので、チャンバの受付に対応する最適容量を決定し、ウェルに適合される標線付きミクロピペットを選択することが可能となる。
【0102】
ある道具を用いることで、オペレータは、前記チャンバのそれぞれにつき次のステップを繰り返す必要はない。即ち、ピペット2を充填し、その先をチャンバのコネクタ16へ導入し、内容物を注入しかつピペット先端を引き出す、というステップである。それぞれの細胞播種には数秒かかるだけであり、よく知られたかつ最小量の細胞流体を使用し、かつ最適培養条件が保証される。
【0103】
特に好ましくは、前記マルチウェルがプレート110の寸法に適合されたマルチチャンネルピペットが使用され得る。これは、1つの単一のスリーブを持つが、多数の先端を持つピペットである(図に示されるように24ウェルボックスの場合には6である)。この道具は、それぞれの列からの1つのチャンバに同時に細胞播種し、2回の操作のみで全ボックスに細胞播種する。
マルチチャンネルピペットはまた、自動分配システムに適合され得る。かかるシステムは、ロボットアームと供給タンク又は流体タンクを含む。これは1つの位置から他の位置へ自動的に動いて1つのマルチリアクタボックス(それ以上でも)の全チャンバに細胞播種する。このタイプの装置は、生体組織の大量培養への道を拓くことになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロシステム及び前記マイクロシステムの少なくとも1つのインタフェースコネクタの組みを含むボックスであり、
前記マイクロシステムが、動的細胞培養の少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバの形状を持つ下部プレート及び上部プレートを含み、
前記少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバが、前記上部プレートの穴に脱着可能に挿入された前記少なくとも1つの組みのコネクタにより、入口及び/又は出口で流体流通的に接続されることを特徴とする、ボックス。
【請求項2】
請求項1に記載のボックスであり、前記ボックスがまた、少なくとも1つのウェルを含み、前記マイクロ構造化チャンバが前記コネクタの組みの1つを介してウェルに接続される、ことを特徴とする、ボックス。
【請求項3】
請求項2に記載のボックスであり、前記ウェルの底部が、前記チャンバの全ての部分の位置よりも高い位置であることを特徴とする、ボックス。
【請求項4】
請求項3に記載のボックスであり、前記コネクタの組みが、前記ウェルの底部で穴へ固定されたコネクタである、ことを特徴とする、ボックス。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項に記載のボックスであり、それぞれのマイクロ構造化チャンバが、入口ウェルと出口ウェルに接続され、それぞれが入口及び出口のコネクタの組みにより灌流される、ことを特徴とする、ボックス。
【請求項6】
請求項5に記載のボックスであり、前記ボックスが、グリップ手段で保持された密閉フードでカバーされた下部ケーシングを含む、ことを特徴とする、ボックス。
【請求項7】
請求項6に記載のボックスであり、前記下部ケーシングが前記マイクロシステム及びマルチウェルプレートを含み、前記ウェルが前記マルチウェルプレートのウェルである、ことを特徴とする、ボックス。
【請求項8】
請求項7に記載のボックスであり、前記マルチウェルプレートが、ポリスチレンで作られる使い捨てプレートである、ボックス。
【請求項9】
請求項7に記載のボックスであり、前記マルチウェルプレートがポリカーボネートで作られるオートクレーブ処理可能なプレートである、ことを特徴とする、ボックス。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか一項に記載のボックスであり、前記フードがオスコネクタの組みを含み、前記ウェルとメス入口コネクタの組みを灌流する、ことを特徴とする、ボックス。
【請求項11】
請求項10に記載のボックスであり、前記ボックスが、入口ウェル当たり1つのオスコネクタ及びメスコネクタを含み、出口ウェル当たり1つのオスコネクタ及び2つのメスコネクタを含む、ことを特徴とする、ボックス。
【請求項12】
請求項11に記載のボックスであり、前記マイクロシステムがポリジメチルシロキサンで構成される、ことを特徴とする、ボックス。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のボックスであり、膜挿入が、前記ウェルの少なくとも1つの設けられる、ことを特徴とする、ボックス。
【請求項14】
動的細胞培養システムであり、前記システムが、
− 請求項1乃至13のいずれか一項に記載のボックス、及び
− 循環手段に適合され、かつ少なくとも1つのマイクロ構造化チャンバに接続された循環パイプを含む、ことを特徴とする、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであり、前記循環手段が、マルチチャンネルペリスタポンプである、ことを特徴とする、システム。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7a−7c】
image rotate

【図8a】
image rotate

【図8b】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2013−520975(P2013−520975A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555414(P2012−555414)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【国際出願番号】PCT/EP2011/053128
【国際公開番号】WO2011/107519
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(512074401)ユニヴェルシテ テクノロジエ デ コンピエーニュ−ユテセ (2)
【出願人】(510309020)セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(セ・エン・エル・エス) (9)
【Fターム(参考)】