説明

動脈瘤治療のための生物活性材料

【課題】動脈瘤における密集した結合組織の急速な内部増殖を促進するために有用な方法および動脈瘤における密集した結合組織の急速な内部増殖を促進するために有用な組成物を提供すること。
【解決手段】 血管閉塞用の構造体(composition)であって、上記構造体は:
血管閉塞部材と、
フィブリン;ポリエチレングリコール誘導体;トロンビン被覆ゼラチン顆粒剤;鉄ミクロスフェアで被覆されたバルーン、微量金属、血栓安定化分子;およびそれらの組み合わせ;からなる群より選択される材料と
を備える、構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
動脈瘤の治療のための構造体および方法が、記載される。特に、液状の塞栓、血管閉塞部材およびそれらの組合せが、記載される。さらに、これらの材料の使用の方法も記載される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
動脈瘤は、血管の拡張(風船に似る)であり、これは、破裂、凝固、または切開の可能性によって、健康への危険性を高める。脳での動脈瘤の破裂は、脳卒中を起こし、そして腹部での動脈瘤の破裂は、ショックを起こす。大脳の動脈瘤は、通常患者の発作または出血を受けて検出され、そして著しい病的状態または死亡に至る。
【0003】
動脈瘤の処置のために使用されてきた、多くの材料またはデバイスがあり、白金およびステンレス鋼マイクロコイル、ポリビニルアルコールスポンジ(Ivalone)、ならびに他の機械デバイスが挙げられる。例えば、血管閉塞用のデバイスは、外科用の器具または移植片であり、この器具または移植片は、代表的にはカテーテルによって人体の血管系に設置されて、塞栓の形成を通して血管系の一部を構成している血管を通る血液の流れを遮断するか、または血管から生じる動脈瘤の内部にこのような塞栓を形成する。1つの広範に使用される血管閉塞用のデバイスは、血管の壁にはめ込むための寸法に合され得る巻線を有する、らせん状ワイヤーコイルである。(例えば、Ritchartらの米国特許第4,994,069号を参照のこと)。他のより柔軟ならせん状に巻かれたデバイス、ならびに織られた組みひも(woven braid)に関係するものが、記載されてきた。
【0004】
共にGuglielmiらによる米国特許第5,354,295号およびその親特許、米国特許第5,122,136号は、電気分解により分解可能な塞栓デバイスを記載する。改変GDCコイルはまた、動脈瘤においても使用され得る(例えば、Murayamaら、(1999)American J Neuradiol 20(10):1992−1999に記載されるような表面改変GDC)。固有の2次形状をわずかに有するかまたは備えていない血管閉塞用コイルもまた、記載されている。例えば、Berensteinらによって共有される米国特許第5,690,666および同第5,826,587号は、血管空間の中へ導入した後、ほとんどまたは全く形作らないコイルを、記載する。
【0005】
種々の機械的に分離可能なデバイスもまた、公知である。例えば、Sepetkaの米国特許第5,234,437号は、噛み合う表面を有するプッシャー(pusher)かららせん状に巻かれたコイルを回して抜く方法を示す。Palermoらの、米国特許第5,250,071号は、プッシャー上および塞栓コイル上の両方に取り付けられた、噛み合い留め具(clasp)を使用する、塞栓コイル組立て品を示す。Engelsonらの米国特許第5,261,916号は、組み合うボールおよび鍵穴型の継手を有する、分離可能なプッシャー−血管閉塞用コイル組立て品を示す。Twyfordらの米国特許第5,304,195号は、固定された、その近位端部にボールを備える近位に延びるワイヤーおよび同様の端部を有するプッシャーを有する、プッシャー−血管閉塞用コイル組立て品を示す。2つの端部は、噛み合わされ、そしてカテーテルの遠位端部から押し出される場合に外れる。Palermoの米国特許第5,312,415号はまた、ガイドワイヤーを用いて単一プッシャーから多数のコイルを放出するための方法を示し、ここでガイドワイヤーは、らせん状に巻かれたコイルの内部と相互接続可能な区域を有する。Palermoらの米国特許第5,350,397号は、その遠位端部に喉部をおよびその軸を通るプッシャーを備える、プッシャーを示す。このプッシャーのシースは、塞栓コイルの端部を保持し、次いで、軸の方向に設置されるプッシャーワイヤを血管閉塞用コイルの近位端部にある部材に対して押すことによって開放される。
【0006】
さらに、いくつかの特許は、その血栓形成性を増加するために設計された材料を加えた、配置可能な血管閉塞用コイルデバイスを記載する。例えば、繊維を有する血管閉塞用デバイスが、Fremont、CalifのTarget Therapeutics、Inc.に譲渡された多くの特許に記述されている。このような、接着された繊維を有する血管閉塞用コイルは、共にCheeらの米国特許第5,226,911号および同第5,304,194号に示される。接着された繊維性物質を有する別の血管閉塞用コイルは、Phelpsらの米国特許第5,382,259号に見出される。Phelpsらの特許は、その外面がポリマー繊維性の組みひもで覆われた血管閉塞用コイルを記載する。Snyderらの米国特許第5,658,308号は、生物活性コアを有するコイルに関する。このコイルは、アガロース、コラーゲンまたは糖質で覆われ得る。Kupieckiの米国特許第5,669,931号は、血栓用の材料または医薬材料によって満たされ得るかまたは被覆され得るコイルを開示する。Englesonの米国特許第5,749,894号は、ポリマー被覆された血管閉塞用デバイスを開示する。McGurkの米国特許第5,690,671号は、コラーゲンのような微細繊維表面上の被覆を含み得る塞栓成分を開示する。
【0007】
Neussの米国特許第5,536,274号は、種々の2次形状と見なされ得るらせん状の移植片を示す。複雑な形状のいくつかは、2つ以上のらせん型移植片との相互接続によって、形成され得る。血液の凝固を促進するために、移植片は、金属粒子、シリコーン、PTFE,ゴムラテックス、またはポリマーによって被覆され得る。米国特許第5,980,550号は、生物活性な内部被覆および水溶性の外部被覆を備える血管閉塞用デバイスを記載する。共有に係るWO/027445、表題「Bioactive Coating for Vaso−occlusive Devices,」は、コラーゲンに基づく材料により被覆される血管閉塞用デバイスを記述し、そして、さらに、デバイスとコラーゲンに基づく被覆との間の連結層の使用を記載する。
【0008】
シアノアクリレート接着剤およびフィブリンシーラントのような液状の塞栓剤はまた、動物およびヒト被験体において使用される。例えば、Interventional Radiology、Dandlingerら、編、Thieme、N.Y.、1990:295−313;Sugaら、(1992)No Shinkei Geka 20(8):865−873;Moringlaneら、(1987)Surg Neurol 28(5):361−366;Moringlaneら、(1988)Acta Neurochir Suppl.(Wein)43:193−197を参照のこと。これらの液状の塞栓剤の中で、シアノアクリレート接着剤は、脳神経外科医が現在使用し得る唯一の液状の塞栓である。しかしながら、慢性の炎症は、代表的には、シアノアクリレート処置に伴って見られ(Herreraら(1999)Neurol Med Chir(Tokyo)39(2):134−139)、そしてその分解産物、ホルムアルデヒドは、隣接する組織に対しきわめて有毒である。Vintersら(1995)Neuroradiology 27:279−291を参照のこと。シアノアクリレート材料の別の不都合な点は、ポリマーが血管およびカテーテルの先端の両方に付着することである。従って、医師は、シアノアクリレート塞栓材料の注入の直後にカテーテルを引っ込めなくてはならず、さもなければシアノアクリレートとカテーテルとが血管に接着する危険に曝される。
【0009】
液状の塞栓材料の別のクラス−−沈殿性の材料−−が、80年代の終わりに考案された。Sugawaraら(1993)Neuro Med Chir(Tokyo)33:71−76;Takiら(1990)AJNR 11:163−168;Mandaiら(1992)J.Neurosurgery 77:497−500を参照のこと。単量体で、血液との接触により急速に重合するシアノアクリルレート接着剤とは異なり、沈殿性の材料は、血液との接触により沈殿して凝集する予め重合した鎖を有する。沈殿性ポリマーの使用における潜在的な問題の1つは、ポリマーを溶解するために有機溶媒(すなわち、PVAcのためにエタノールを、EVALおよびCAのためにDMSO)を使用することである。これらの物質は、カテーテルのハブを溶かし得る強い有機溶媒であり、そしてDMSOについては、毛細管および周囲の組織を損傷し得る。これらの溶媒はまた、血管の血管痙攣を引き起こすことが知られている。さらに、これらの沈殿剤は、しばしば送達が困難であり、そして一般的には多管腔(multi−lumen)カテーテルの使用を必要とする(例えば、米国特許第6,146,373号を参照のこと)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、動脈瘤における密集した結合組織の急速な内部増殖(ingrowth)を促進するために有用な方法および組成物が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は、新規の閉塞用構造体ならびにこれらの構造体を使用および作製する方法を包含する。
【0012】
1つの局面において、本発明は、血管閉塞部材およびさらなる材料(例えば、フィブリン;ポリエチレングリコール誘導体;トロンビン被覆ゼラチン顆粒剤;鉄ミクロスフェアにより被覆されたバルーン、微量金属、血栓安定化分子、およびこれらの材料のうちの2つ以上の組み合わせを含む)を含む血管閉塞構造体を含む。この血管閉塞部材は、任意の移植可能なデバイスであり得、例えば、血管閉塞用コイル、ステント、フィルターなどであり得る。ある実施形態において、さらなる材料は、銅のような微量金属であり得る。他の実施形態において、さらなる材料は、血栓安定化分子(例えば、第XIII因子、α−抗プラスミンまたはプラスミノゲン活性化因子インヒビター(PAI−1))またはそれらの機能的フラグメントである。さらに、さらなる材料が、血管閉塞部材に吸着され得るか、または別な方法で付着され得る。
【0013】
ある局面において、構造体はまた、さらなる生物活性材料を含み、例として、1つ以上のサイトカイン(例えば、PDGF、bFGF、VEGF、TGF−βまたはこれらの機能的フラグメント);細胞外基質材料(例えば、コラーゲン);遺伝物質(例えば、DNAおよび/またはRNA);2つ以上の生物活性材料の組み合わせ;1つ以上の生物活性材料の機能的フラグメントなどが挙げられる。ある実施形態において、生物活性材料は、PDGF、bFGF、VEGF、TGF−βのようなサイトカインである。生物活性材料は、血管閉塞部材に吸着され得るか、または別な方法で付着され得、そして、ある実施形態において、材料および生物活性材料がともに、血管閉塞部材に吸着され得るか、または別な方法で付着される。
【0014】
他の局面において、本明細書中に記載される任意の構造体は、さらなる表面改変(例えば、プラズマ処理、イオン注入、微細折り目加工、連結層の使用など)を有する、血管閉塞部材を含み得る。本明細書中に記載される構造体のうちのいずれかにおいて、血管閉塞部材は、例えば、1つ以上の血管閉塞用コイル、1つ以上のフィルター、1つ以上の保持デバイスおよびそれらの組み合わせであり得る。
【0015】
別の局面において、本発明は、血管を閉塞する方法を包含し、この方法は、必要のある被験体に本明細書中に記載される血管閉塞構造体のいずれかを施す工程を含む。ある実施形態において、血管は、直径の小さな神経血管の動脈瘤のような、動脈瘤である。
【0016】
さらに別の局面において、本発明は、動脈瘤を閉塞する方法を包含し、この方法は、それを必要とする被験体にフィブリン;ポリエチレングリコール誘導体;トロンビン被覆ゼラチン顆粒剤;鉄ミクロスフェアで被覆されたバルーン、微量金属(例えば、銅)、血栓安定化分子(例えば、第XIII因子;α−抗プラスミン、PAI−1またはそれらの組み合わせ)を施す工程を含む。ある実施形態において、この方法はさらに、生物活性材料を施す工程を包含し、ここで生物活性材料は、例えば、少なくとも1つのサイトカイン(例えば、PDGF、bFGF、VEGFおよびTGF−β、2つ以上のサイトカインまたは1つ以上のサイトカインの機能的フラグメントの組み合わせ);細胞外基質分子(例えば、コラーゲン);遺伝材料(例えば、DNAおよび/またはRNA);2つ以上の生物活性材料の組み合わせ;および2つ以上の生物活性材料の組み合わせ;ならびに2つ以上の生物活性材料の機能的フラグメントである。
【0017】
本発明のこれらおよび他の実施形態は、本明細書中の開示を踏まえ当業者に容易に理解される。
・本出願はさらに、以下を提供し得る:
・(項目1)血管閉塞用の構造体(composition)であって、上記構造体は:
血管閉塞部材と、
フィブリン;ポリエチレングリコール誘導体;トロンビン被覆ゼラチン顆粒剤;鉄ミクロスフェアで被覆されたバルーン、微量金属、血栓安定化分子;およびそれらの組み合わせ;からなる群より選択される材料と
を備える、構造体。
・(項目2)項目1に記載の構造体であって:
(i)少なくとも1つのサイトカイン;
(ii)細胞外基質材料;
(iii)DNA;
(iv)RNA;
(v)(i)、(ii)、(iii)および(iv)の組み合わせ;ならびに
(vi)(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)の機能的フラグメント;
からなる群より選択される生物活性材料をさらに含有する、構造体。
・(項目3)上記生物活性材料は、少なくとも1つのサイトカインである、項目2に記載の構造体。
・(項目4)上記サイトカインが、PDGF、bFGF、VEGFおよびTGF−βからなる群より選択される、項目3に記載の構造体。
・(項目5)上記材料が、微量金属を含む、項目1に記載の構造体。
・(項目6)上記微量金属が、銅を含む、項目5に記載の構造体。
・(項目7)上記材料が、血栓安定化分子を含む、項目1に記載の構造体。
・(項目8)上記血栓安定化分子が、第XIII因子またはその機能的フラグメントである、項目7に記載の因子。
・(項目9)上記血栓安定化分子が、プラスミノゲン活性化因子インヒビター(PAI−1)またはその機能的フラグメントである、項目7に記載の構造体。
・(項目10)上記血栓安定化因子が、α−抗プラスミンまたはその機能的フラグメントである、項目7に記載の構造体。
・(項目11)上記材料が、血管閉塞部材に吸着される、項目1〜10のいずれかに記載の構造体。
・(項目12)上記材料および上記生物活性材料が、血管閉塞部材に吸着される、項目11に記載の構造体。
・(項目13)上記血管閉塞部材が、プラズマ処理済みの、項目1〜12のいずれかに記載の構造体。
・(項目14)上記血管閉塞部材が、イオン注入済みの、項目1〜12のいずれかに記載の構造体。
・(項目15)上記血管閉塞部材が、微細な織物である、項目1〜12のいずれかに記載の構造体。
・(項目16)上記血管閉塞部材が、さらに、上記血管閉塞部材と上記材料との間の連結層を含む、項目11に記載の構造体。
・(項目17)上記血管閉塞部材が、1つ以上の血管閉塞用コイル、1つ以上のフィルター、1つ以上の保持デバイス、およびそれらの組み合わせ、からなる群より選択される、項目1〜16のいずれかに記載の構造体。
・(項目18)上記血管閉塞構造体を必要とする被験体に、項目1〜17のいずれかに基づく上記血管閉塞構造体を施す工程を包含する、血管を閉塞する方法。
・(項目19)項目18に記載の方法であって、さらに:
(i)サイトカイン;
(ii)細胞外基質材料;
(iii)DNA;
(iv)RNA;
(v)(i)、(ii)、(iii)および(iv)の組み合わせ;
(vi)(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)の機能的フラグメント;
からなる群より選択される上記生物活性材料を、施す工程をさらに包含する、方法。
・(項目20)上記サイトカインが、PDGF、bFGF、VEGFおよびTGF−βからなる群より選択される、項目18に記載の方法。
・(項目21)上記微量金属が、銅である、項目18に記載の方法。
・(項目22)上記血栓安定化分子が、第XIII因子、α−抗プラスミン、プラスミノゲン活性化因子インヒビター−1(PAI−1)、それらの組み合わせ、およびそれらの機能的フラグメントからなる群より選択される、項目18に記載の方法。
・(項目23)上記血管が動脈瘤である、項目18に記載の方法。
・(項目24)動脈瘤を閉塞する方法であって、上記方法は、必要のある被験体に:
フィブリン;ポリエチレングリコール誘導体;トロンビン被覆ゼラチン顆粒剤;鉄ミクロスフェア、微量金属、血栓安定化分子、およびそれらの組み合わせで被覆されたバルーン、
からなる群より選択される物質を、施す工程を包含する、方法。
・(項目25)項目24に記載の方法であって:
(i)サイトカイン;
(ii)細胞外基質分子;
(iii)DNA;
(iv)RNA;
(v)(i)、(ii)、(iii)および(iv)の組み合わせ;ならびに
(vi)(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)の機能的フラグメント、
からなる群より選択される生物活性材料を施す工程をさらに包含する、方法。
・(項目26)上記サイトカインが、PDGF、bFGF、VEGFおよびTGF−βからなる群より選択される、項目25に記載の方法。
・(項目27)上記微量金属が、銅である、項目25に記載の方法。
・(項目28)上記血栓安定化分子が:
(i)第XIII因子;
(ii)α−抗プラスミン;
(iii)(i)および(ii)の組み合わせ;ならびに
(vi)(i)、(ii)および(iii)の機能的フラグメント、
からなる群より選択される、項目25に記載の方法。
・(項目29)上記動脈瘤が、神経血管の動脈瘤である、項目24〜28に記載いずれかに記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(発明の説明)
閉塞用(例えば、塞栓性の)構造体が、記載される。塞栓性構造体として、例えば、1つ以上の液状塞栓デバイスおよび/または1つ以上の血管閉塞用デバイスが挙げられる。さらなる生物活性材料として、またこれらの塞栓性構造体も使用され得る。本明細書中に記載される構造体は、血管および神経血管における使用が見出され、そして特に動脈瘤(例えば、直径の狭い、曲がったまたはさもなければ脳動脈瘤のような接近が困難な血管系)の処置において有用である。これらのデバイスの作製法および使用法もまた、本発明の局面である。
【0019】
本発明の利点として、(i)表面改変血管閉塞用デバイスの使用による動脈瘤の治癒の促進;(ii)液状塞栓デバイスおよび/または血管閉塞用デバイスを用いる動脈瘤の処置;および(iii)液状塞栓デバイスおよび/または血管閉塞用デバイスを組み合わせたさらなる生物活性材料を使用する動脈瘤の処置の改善、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書中および付加された特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、内容に明瞭な別の指示がなければ、複数の対象も含むことに注意しなければならない。従って、例えば、「a coil」という言及は、このようなデバイスなどの2つ以上の混合物をも含む。
【0021】
1つの局面において、本発明は、動脈瘤の閉塞に有用である、液状塞栓材料を含む。用語、「液状塞栓」とは、閉塞性の因子として作用し得る任意の因子をいい、これは、送達の際のいくつかの段階で流体形態であり、かつ完全にまたは部分的に凝固する。従って、この用語は、水溶液中にまたは懸濁液中に投与され得る粒子状材料(例えば、顆粒、ビーズ、ミクロスフェア、など)を含む。液体の接着剤および密封剤(例えば、塞栓)は、手術の間の出血を制御するための使用が承認されてきた。しかしながら本明細書中には、動脈瘤(例えば、蛇行している経路に位置する動脈瘤または径の細い動脈瘤)を閉塞するための、これらと他の液状塞栓の使用法が、記載される。ある実施形態において、液状塞栓は、フィブリンを含有する。フィブリン含有組成物は、例えばBaxterにより市販されている。コラーゲン含有組成物は、例えばCohesion Technologies、Inc.、Palo Alto、Californiaから市販されている。他の実施形態において、液状塞栓は、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)誘導体、例えば、Cohesion Technologies、Inc.、Palo Alto、Californiaから市販されるPEG誘導体を含む。トロンビン含有材料(例えば、トロンビン被覆されたゼラチン顆粒は、例えばFusionから市販されている)および鉄含有材料(例えば、鉄微粒子で被覆されたバルーン)はまた、本発明において使用法が見出されている。これらの液状塞栓材料は、単独でまたは任意の組合せとして使用され得る。
【0022】
さらに、液状塞栓材料はまた、さらなる生物活性材料との組み合わせにおいて使用され得る。用語「生物活性」とは、インビボにおいて効果を示す任意の薬剤(例えば、血栓の薬剤、治療剤など)のことをいう。生物活性材料の非限定的な例として、サイトカイン;細胞外基質分子(例えば、コラーゲン);微量金属(例えば、銅);および血栓形成を安定化するかまたは血餅の溶解を阻害する他の分子(例えば、第XIII因子、α−抗プラスミン、プラスミノゲン活性化因子インヒビター(PAI−1)など)を含むがこれらに限定されない、タンパク質またはタンパク質の機能的フラグメント)が挙げられる。本発明の実施において単独でかまたは組合せとして使用される、サイトカインの非限定的な例として、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、トランスホーミング増殖因子βなどが挙げられる。サイトカイン、細胞外基質分子および血栓安定化分子(例えば、第XIII因子、PAI−1など)は、いくつかの供給メーカー、例えば、Genzyme(Framingham、MA)、Genentech(South San Francisco、CA)、Amgen(Thousand Oaks、CA)、R&D Systems and Immunex(Seattle、WA)から市販されている。さらに、生物活性ポリペプチドは、これらの分子の多くの配列が例えばGenBankデータベースから利用可能であるので、組み換えによって合成され得る。従って、本発明は任意の生物活性分子をコードするDNAまたはRNAの使用を含むことが意図される。さらに、常には明記されないが、野生型サイトカインまたは精製されたサイトカイン、細胞外基質分子および血栓安定化タンパク質(例えば、組換えにより産生されるかまたはその変異体)と類似の生物活性を有する分子およびこれらの分子をコードする核酸は、本発明の精神および範囲内で使用されることが意図される。さらに、液状塞栓および/または本発明の実施において有用な他の生物活性材料の量および濃度は、当業者により容易に決定され得、そして被験体に対し有害でない限りにおいて、材料、濃度または投薬量の任意の組合せが、使用され得ることが理解される。
【0023】
他の実施形態において、液状塞栓および/または他の生物活性材料は、1つ以上の血管閉塞用デバイス(例えば、血管閉塞用コイル、ステント、フィルター、バルーン、保持デバイスおよび/または動脈瘤ライナー)の組み合わせとして使用される。従って、例えば、空間充填型液状塞栓材料および/または本明細書中に記載される任意の他の生物活性材料は、血管閉塞用コイルのようなデバイスの組合せにおいて使用され得る。このデバイスおよび空間充填材料は、同時にまたは相次いで投与され得る。
【0024】
表面改変血管閉塞用デバイスはまた、単独でまたは1つ以上の液状塞栓材料および/もしくは1つ以上の他の生物活性材料の組合せとして、本発明のひとつの局面を形成する。本明細書中に記載される場合、用語「表面改変」は、血管閉塞部材についての任意の改変のことをいい、血管閉塞部材として、このような部材の表面上への1つ以上の材料の吸着(例えば、被覆);液状塞栓および/または生物活性材料を血管閉塞部材への接着するための層連結としての使用;イオン注入処置;プラズマ処理またはコロナ処理;微細パターン形成または微細折り目加工(例えば、サンドブラスト)などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、血管閉塞用デバイス上への液状塞栓および/または生物活性材料の吸着(例えば、被覆)のための方法として、浸漬塗装、押し出しコーティング、スプレー沈着(spray deposition)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
コイルのプラズマ処理は、例えば、同時係属の米国出願番号第08/598,325号に記載される。これらのプラズマ処理されたコイルは、既知の化学的方法を使用して測定され得る、アミノ官能基(amino−functionality)を示す。このプロセスによって処理されるデバイスが、血流中に設置される場合、アミノ官能基は、繊維の表面上でわずかに正のイオン電荷を生じ得る。このアミノ官能基は、血流中から血小板およびトロンボゲン形成タンパク質を引き付ける。プラズマ処理は、例えば、米国特許第3,847,652号に見出されるようなプラズマ発生器を用いて、行われ得る。プラズマは、好ましくは二分子の窒素またはアンモニアを含有する、窒素含有ガスを含み得る。ガスの圧力は、非常に低いレベルに都合よく維持され、例えば、水銀柱(mercury)で約5ミリメートルより低く、好ましくは水銀柱で0.1〜2ミリメートルである。血管閉塞用デバイスがプラズマ処理を受ける期間は、長い必要はない。すなわち、約200ワット未満の適用出力設定の大部分について、1〜50メガヘルツの高周波数領域においては、本明細書中に記載される結果を達成するための反応時間は、10分を超える必要はない。
【0026】
イオン注入は、高エネルギーイオンビーム衝突に起因する物理化学的な表面改変プロセスであり、例えば、Murayamaら、(1997)Neurosurgery 40(6):1233−1243に記載される。同様に、例えば、X線、電子ビームおよび光リソグラフィー、微小密着焼付け(microcontact printing)、エンボス加工、微細モールディング(micromoulding)、低温溶接またはサンドブラスト技術を用いて微細折り目加工または微細パターン形成する方法はまた、当業者に公知である。本明細書中に記載された表面改変の任意の組み合わせが、使用され得ることは明らかである。従って、血管閉塞部材は、そこに吸着された1つ以上の液状塞栓および/またはそれに付着した生物活性材料を所有することに加えて、1つ以上の物理的な表面改変(例えば、プラズマ処理、イオン注入など)を含み得る。好ましい実施形態において、血管閉塞用デバイスは、液状塞栓および/または1つ以上のさらなる生物活性材料により被覆される。
【0027】
本発明において有用な血管閉塞部材は、従来の機器および手順を用いて作製され得る。例えば、らせん状コイルは、適切なワイヤーを円柱型または円錐型のマンドレルの周りに巻き付けるによって用意され得る。コイル(例えば、らせん形)の中心は、空であるかまたは1つ以上の材料(例えば、繊維のひも)で満たされている。次いで、このひもは、らせんの中心を通って軸の方向に取り付けられ、そして多数のひもが使用される場合、それらの末端は、熱、接着剤、または機械的な手段により固定される。基本的なフィラメントはまた、結びつけるかまたは接着剤によりらせんの巻き付きに付着され得る。
【0028】
これらのデバイスは、通常人体への移植片としての使用が認められるか、またはそのように承認され得る材料である。これは、ポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリアクリル酸、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ナイロンのようなポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリビリルアルコール、ポリビニルアセテート、酢酸セルロース、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテルフタレート(Dacron)のようなポリエステル、絹、綿などであり得る。ポリマーが繊維質の場合、それらはしばしばループ状であるか、房状である。本発明にはそれほど重要ではないが、通常それらは、1つの束あたり5〜100の繊維が束になって集合している。血管閉塞用デバイスのポリマー成分体として好ましい材料には、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、およびポリフルオロカーボンが挙げられる。特に好ましくは、Dacronとして販売される、ポリエチレンテレフタレートである。
【0029】
コイルは、任意の広範に種々の生体適合性金属から作製され得る。特に、金属は、金、レニウム、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、種々のステンレス鋼、タングステンおよびこれらの合金より選択され得る。好ましい合金は、90%より多くの白金および、残りの少なくとも一部にタングステンを含む合金である。この合金は、優れた生体適合性を示し、に十分な強度かつコイルを1次形状および2次形状に曲げられる柔軟性を有し、そして人体中に血管閉塞用デバイスを配置する際に、その形状を維持する。代表的にはコイルを作製するワイヤーの直径は、しばしば0.005〜0.050インチの範囲である。主に得られるコイルの直径は、代表的には、0.008〜0.085インチの範囲にある。より小さな直径を有するコイルは、より細かな問題ために使用され、より大きな直径を有するコイルおよびワイヤーは、人体中のより大きな孔において使用される。代表的なコイルの主な直径は、0.015〜0.018インチである。血管閉塞用デバイスの軸の長さは、0.5〜100センチメートルであり得る。このコイルは、代表的には、1センチメートル当たり10〜75回転であるように巻き付けられる。
【0030】
さらに、血管閉塞用デバイスは、らせん状のコイルよりも、織られた組みひもを含む基質を含有し得る。血管閉塞様デバイスは、コイルおよびひもの組み合わせを含み得る。実際、コイルのすべてまたは一部が、重合体または金属およびポリマーの組合せであるものは、本発明の範囲内である。さらに、血管閉塞用デバイスは、吸収性の材料(例えば、WO99/44538に記載される)から作製され得る。
【0031】
さらに、コイルまたは組みひも以外の形状または構造(例えば、中実の球体構造など)を備える血管閉塞用デバイスもまた、本発明の範囲内である。
【0032】
本明細書中に記載される塞栓性構造体(例えば、液状塞栓、血管閉塞部材および/または他の生物活性材料)は、以下に略述される手順を用いて選択された部位にしばしば導入される。この手順は、種々の疾患の処置において使用され得る。例えば、動脈瘤の処置において、動脈瘤それ自体が、本明細書中に記載される構造体を用いて満たされ得る(部分的にまたは全体的に)。
【0033】
ガイドワイヤーまたは流れ指定デバイス(flow−directed device)が関与する従来のカテーテル挿入および操縦技術は、カテーテルを用いて部位に接近するために使用され得る。この機構は、カテーテルを全体的に貫いて進められて、移植可能なデバイスを標的部位に配置することができるようなものであるが、それでもやはり送達機構の遠位端部の十分な部分が移植可能なデバイスの分離を可能にするために、カテーテルの遠位端部から突き出ている。末梢の外科手術または神経の外科手術における使用のために、送達機構は、標準的には約100〜200cmの長さであり、より標準的には130〜180cmの長さである。送達機構の直径は、通常0.25〜約0.90mmの範囲にある。簡単にいうと、本明細書中に記載される液状塞栓および/または塞栓用デバイスは、代表的には、送達カテーテルの中に導入するためのキャリアに装備され、そして以下に概説される手順を用いて選択された部位に導入される。この手順は、種々の疾患の処置において使用され得る。例えば、動脈瘤の処置において、動脈瘤それ自体は、塞栓(例えば、機械装置ならびに/または液状塞栓材料および生物活性材料)を用いて満たされ得、このことは塞栓の形成を引き起こし、そしてその後、移植されたデバイスの周りに形成された新生血管形成によるコラーゲン性材料によって、少なくとも部分的に取り換えられる。
【0034】
選択された部位には、具体的に選ばれたカテーテルおよび/またはガイドワイヤーの収集物を使用して、脈管系を通して到達される。この部位が、遠方の部位(例えば、脳において)にあると、この部位に到達する方法は多少限定されることが明らかである。広範に受容される手順の一つが、Ritchartらの米国特許第4,994,069号に見出される。この手順は、Engelsonらの米国特許第4,739,768号に見出されるような細い血管内カテーテルを使用する。まず第一に、大きなカテーテルを、血管系の中の入口を通して導入する。代表的には、これは鼡径部の大腿動脈を通してなされる。他の入口としては、時に頚部において選ばれ、これはこの種の医学を実施する医者によって周知である。一旦導入器が配置されると、次いでガイドカテーテルは、入り口から処置される部位の近くの領域まで安全な通路を提供するために、使用される。例えば、ヒトの脳における部位を処置するにあたり、選ばれた誘導カテーテルは、大腿動脈の入り口から伸び、心臓に向かって伸びる大きな動脈を通り、心臓の周りの大動脈弓を通り、そして大動脈の上部から伸びる動脈の1つを下る。次いで、Engelsonらの特許に記載されるようなガイドワイヤーおよび神経血管カテーテルを、ガイドカテーテルを通して設置する。一旦カテーテルの遠位端部が、その場所に配置されると、多くの場合放射線不透過性のマーカー材料およびX線透視の使用によるカテーテル遠位端部の位置決めにより、カテーテルは取り除かれる。例えば、ガイドワイヤーがカテーテルを位置付けるために使用される場合、ガイドワイヤーは、カテーテルから引き離され、そして次いで組立部品(例えば、遠位端液状塞栓および/または移植可能なデバイスを含む)は、カテーテルを通り前進する。塞栓は、カテーテルの遠位端部を通り過ぎ、そして所望の処置部位に正確に設置されるかまたは押し出される。これらは、重力、形状、大きさ、容積、磁場またはこれらの組合せによって適切な位置に保たれる。上記に述べたように、血管閉塞用構造体(例えば、液状塞栓:血管閉塞部材;保持デバイス;および/または他の生物活性材料)の構成要素がカテーテルから開放される順序は、本発明の実施において重要ではなく、そして操作者によって決定され得る。
【0035】
上記に記載される手順およびデバイスの変更、ならびに本発明を踏まえてこれらを使用する方法は、この機構および外科についての当業者には明瞭である。これらの変化は、以下の本発明の特許請求の範囲内にあることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈瘤を治療するための方法。

【公開番号】特開2008−220990(P2008−220990A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136084(P2008−136084)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【分割の表示】特願2002−552601(P2002−552601)の分割
【原出願日】平成13年12月26日(2001.12.26)
【出願人】(596164238)ボストン・サイエンティフィク・サイムド・インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】