説明

包装体

【課題】縦ピロー包装により、製剤袋が収納包装されてなる包装体では、製剤袋は塊状になっていたので、均一に散布させることができない。
【解決手段】粉末又は顆粒形態の農薬製剤を水溶性フィルム袋内に封入した複数個の製剤袋15が、横ピロー包装により外袋18内に、各々偏平な形状を保って且つ偏ることなく配列された状態にて収納包装されてなる包装体19である。包装体19においては、前記製剤袋3が水田散布用除草剤袋である場合には、該製剤袋3を水田に投げ込んだとき、製剤袋3を、偏平な形状にて水田の水の上に浮遊させることができるので、粉末状又は顆粒状の水田散布用除草剤を、水田の水全体にほぼ均一に拡散させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装体、更に詳しくは、例えば、粉末又は顆粒形態の農薬製剤、例えば水田散布用除草剤を封入した複数個の製剤袋が外袋内に収納包装されてなる包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農薬製剤、例えば水田散布用除草剤として、粉末又は顆粒形態の除草剤を水溶性フィルムからなる製剤袋に封入したもの(例えば、いわゆるジャンボ製剤)が使用されている。前記製剤袋は、通常、複数個まとめて、外袋内に収納包装されるが、従来、その収納は、縦ピロー包装により行われていた。
縦ピロー包装は、例えば、食品、例えばソーセージ、ウィンナー、麺、パン、菓子、冷凍食品の包装のために広く利用されている。農薬製剤における縦ピロー包装においても、プラスチックフィルムがセンターシール(背中シール)されてチューブが形成され、該チューブは円筒形態にて縦方向(垂直方向)に移動され、一端が横方向にカットシールされて底部が形成された後、該底部に収納すべき除草剤袋が投入(落下)される。その後、他端が横方向にカットシールされて、ピロー(枕)形状の包装体が形成される。
ところで、ピロー包装には、縦ピロー包装の他に横ピロー包装がある。従来、横ピロー包装機は、例えば特開平6−1372号公報(特許文献1)に記載されているように、食品の包装などに使用されている。しかしながら、横ピロー包装により、上述のような、粉末又は顆粒形態の水田散布用農薬製剤を封入した複数個の製剤袋を外袋内に収納包装した例は、従来、報告されていない。
【特許文献1】特開平6−1372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
顆粒形態の水田散布用除草剤を封入した、水溶性フィルムからなる複数個の製剤袋を、外袋内に、縦ピロー包装により、収納包装する場合を例として説明する。図1は、包装体1における製剤袋の収納形態を示す説明図である。図1(a)に、開封前の包装体1の斜視図を示す。ピロー包装機として縦ピロー包装機を使用した場合の、包装体1における外袋2内の製剤袋3の状態を図1(c)に示す。
縦ピロー包装機を使用する場合は、カットシールにより一端が封鎖されたチューブ状フィルム内に複数個の製剤袋3を垂直に落下させて収納し、その後、カットシールにより他端を封鎖して外袋2を形成するため、本来はほぼ偏平形状である製剤袋3が、落下時の衝撃により変形(内容物が移動)して塊状になる。また、垂直に落下させるので、複数個の製剤袋3を、偏ることなく配列された状態で外袋2内に収納することは困難である。従って、図1(c)に示されるように、外袋2内に、塊状になった複数個の製剤袋3がランダムに詰まった状態で収納包装されていた。
【0004】
図4は、従来の包装体1に収納した、図1(c)に示す顆粒形態の水田散布用除草剤の使用時の説明図である。塊状になった製剤袋3を外袋2から取り出し、水稲4が植えられた水田5の水6上に、畦から、複数個投げ込む。製剤袋3内には、除草剤以外に、木粉などの浮遊材が適量配合されているので、本来、投げ込まれた製剤袋3は、水田5の水6の水面7上に落下し、水面7上を浮遊しながら徐々に溶解するはずである。しかしながら、製剤袋3は塊状になっているのでかなりの距離(例えば、5〜20m)投げられるとき勢い良く落下し、図4(a)に示すように、落下時の衝撃で、一部又はほぼ全部が、水田5の泥面9内にめり込むことが時々起きる。一旦、浮遊できない状態で散布されると、図4(b)に示すように、たとえ製剤袋3の水溶性フィルムが溶解し、内容物である顆粒形態
の除草剤8が水6に溶出したとしても、除草剤8が周辺に十分に拡散されない。その結果、除草剤8の大部分が、製剤袋3が投げ込まれた場所に残留するか、又は、除草剤8の一部が、製剤袋3が投げ込まれた場所に残留する場合があった。
【0005】
製剤袋3が水田5内のある場所に留まってしまうと、除草剤8が、投げ込まれた場所の周囲の水田5の水6全体に均一に溶解されず、水田5の水6内に、除草剤濃度が薄過ぎる部分と除草剤濃度が濃過ぎる部分とが生じる。水田5の水6内の除草剤濃度が薄過ぎると、水田5において十分な除草効果が発揮されない。水田5の水6内の除草剤濃度が濃過ぎると、水稲4に対して薬害が生じ易くなる。
投げ込む前に、塊状に変形した製剤袋3を、例えば両手の指にて、ある程度偏平な形状に修正することは可能であるが、この場合、製剤袋3の投げ込みに多くの手間と労力を費やすこととなり、除草剤8の投げ込みにおける作業効率を著しく低下させる。
【0006】
本発明者らは、包装体、特に、粉末又は顆粒状の農薬製剤、例えば水田散布用除草剤を封入した複数個の製剤袋が外袋内に収納包装されてなる包装体の包装形態及び包装手法について鋭意研究した結果、従来の縦ピロー包装に代えて横ピロー包装を使用することが、前記従来技術の問題点を解決するために有用であることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の観点は、粉末又は顆粒形態の農薬製剤を水溶性フィルム袋内に封入した複数個の製剤袋が、横ピロー包装により外袋内に、各々偏平な形状を保って且つ偏ることなく配列された状態にて収納包装されてなる包装体である。
本発明の第二の観点は、前記製剤袋が水田散布用除草剤袋である包装体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の包装体においては、複数個の製剤袋を外袋内に収納包装する際の包装手段として、従来の縦ピロー包装に代えて横ピロー包装を用いることにより、複数個の製剤袋を、外袋内に、各々偏平な形状を保って且つ偏ることなく配列された状態にて収納包装することができる。従って、前記製剤袋が水田散布用除草剤袋である場合には、該製剤袋を水田に投げ込んだとき、製剤袋を、偏平な形状にて水田の水の上に浮遊させることができるので、粉末状又は顆粒状の水田散布用除草剤を、水田の水全体にほぼ均一に拡散させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
横ピロー包装は横ピロー包装機により行われる。横ピロー包装においては、プラスチックフィルムがセンターシールされて形成されたチューブが横方向(水平方向)に移動され、その中に、収納すべき製剤袋が押入れ収納され、製剤袋を収納したピロー形状の包装体が形成される。
横ピロー包装機は、通常使用されているものを用いることができる。横ピロー包装は、外袋用フィルムを製剤袋に対して上から供給する正ピロータイプのものであってもよいし、外袋用フィルムを製剤袋に対して下から供給する逆ピロータイプのものであってもよい。また、製剤袋を外袋に収納包装する際のシール方法も、回転シール、ボックスモーションシールなどの慣用のシール方法を適宜選択する。
横ピロー包装により、複数個の製剤袋を外袋内に収納する際には、複数個の製剤袋を、各々偏平な形状を保って且つ偏ることなく配列された状態にて収納する必要がある。この目的を達成し得る限りは、手段は特に限定されない。例えば、複数個の製剤袋を予めトレイ上に載置し、一端をシールした外袋内にトレイごと複数個の製剤袋を挿入する。
農薬製剤における粉末又は顆粒の種類、大きさ、形状、粒度分布等は適宜選択する。粉末又は顆粒が、例えば水田散布用除草剤である場合には、水田散布用に適する如何なる除草剤も使用することが可能である。また、除草剤以外に、木粉、ガラス中空体、プラスチ
ック中空体等の適する浮遊材を適当比率にて配合することができる。更に結合剤、固体担体等の各種補助剤を含有させることができる。
水溶性フィルムは、ポリビニルアルコール、ポリオキシポリアルキレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸、ゼラチン、プルラン、可溶化澱粉等、水溶性フィルムの素材として通常使用されるものを用いることができる。水溶性フィルムの材質、厚さ等は、製剤袋の水面上での浮遊時間内に該水溶性フィルムが溶解し得るように適宜選択する。水溶性フィルムの厚さは特に限定されないが、一般に20μm〜100μm程度が好ましい。
製剤袋の大きさ、形状等は、収納する粉末又は顆粒の種類や量に応じて適宜選択する。
外袋の材質は特に限定されず、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等のフィルムからなるものであってよい。外袋の大きさ、形状等は、収納する製剤袋の数、大きさ、形状等に応じて適宜選択する。
外袋内の製剤袋の収納形態は、製剤袋が各々偏平な形状を保って且つ偏ることなく配列された状態にて収納されていればよく、例えば製剤袋を外袋内に、縦及び横に規則的に並べた状態で収納してよい。
【実施例】
【0010】
以下に示すように、10個の製剤袋を、ポリプロピレンフィルム製の外袋内に、横ピロー包装機により、収納包装した。
1.製剤袋(略矩形状)
除草有効成分、結合剤、界面活性剤、浮力向上剤及び増量剤等を混合し、次いで所定量の造粒水を加え混練し、1.0〜1.5mmのスクリーンを装着した押出造粒機で造粒した後、乾燥して、顆粒状の水田散布用除草剤を得た。この水田散布用除草剤30〜50gをポリビニルアルコールフィルム(厚さ20〜40μm)で包装して製剤袋を得た。
2.横ピロー包装機による包装
図2に一例を示す。ロール10に巻かれた外袋用フィルム11をシール機12でセンターシールしてチューブを作り、その中に、ベルトコンベヤー13にて図中矢印方向に移送されている製剤袋15を順次収納する。製剤袋15は、本例では、図中円A内に示すように、10個の製剤袋15からなる。10個の製剤袋15は、整列した状態でベルトコンベヤー13上に載置されている。ヒータ16及びカッター17により、チューブが製剤袋15の前後でカットシールされ、外袋18が形成され、製剤袋15を収納したピロー形状の包装体19が形成される。
包装体19の形成において、輸送及び保管中に外袋18内で製剤袋15が配列された状態を維持するように、包装体19の厚さLを適宜調節する(例えば、外袋18の縦寸法、横寸法、カットシール時に外袋18により製剤袋15を押圧する力等を調節する)。なお、包装体19の輸送及び保管は、包装体19が水平状態(横ピロー包装機による形成時の状態)を維持するように注意する。
3.水田散布用除草剤の使用
図1(a)に示す包装体19において、外袋18を開封して、図1(b)に示すように、各々偏平な形状を保って且つ偏ることなく配列された状態で収納されている製剤袋15を取り出す。次いで、図3(a)に示すように、水田5の水6の水面に、畦などから、平らに広がるように注意して投げ込む。このようにすると、製剤袋15は、水田5の水6の水面7上に落下し、水面7上を浮遊しながら徐々に溶解して、図3(b)に示すように、消滅する。従って、除草剤8は、投げ入れた場所の周辺にほぼ均一に拡散するので、水田の大きさに応じた適する数の製剤袋15を使用することにより、除草剤8を水田5全体に均一に拡散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、包装体における製剤袋の収納形態を示す説明図である。
【図2】図2は、本発明の包装体をよこピロー包装により製造する工程の説明図である。
【図3】図3は、本発明の包装体に収納包装した水田散布用除草剤の使用時の説明図である。
【図4】図4は、従来の包装体に収納包装した水田散布用除草剤の使用時の説明図である。
【符号の説明】
【0012】
1,19:包装体 2,18:外袋
3,15:製剤袋 4:水稲
5:水田 6:水
7:水面 8:除草剤
9:泥面 10:ロール
11:外袋用フィルム 12:シール機
13:ベルトコンベヤー 16:ヒータ 17:カッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末又は顆粒形態の農薬製剤を水溶性フィルム袋内に封入した複数個の製剤袋が、横ピロー包装により外袋内に、各々偏平な形状を保って且つ偏ることなく配列された状態にて収納包装されてなる、包装体。
【請求項2】
前記製剤袋は、水田散布用除草剤袋である、請求項1に記載の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−23918(P2010−23918A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191161(P2008−191161)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】