説明

包装体

【課題】包装材料の内面に印字画像を施し、この印字画像を挟んで包装材料をヒートシールした場合の利点を生かしながら、しかも、印字画像が食品などの内容物に接触した場合でも、その品質を損なうことのない包装体を提供すること。
【解決手段】フィルム製の包装袋に内容物を収容し、その一部又は全部でフィルム同士をヒートシールして密封して構成される包装体であって、前記ヒートシール部のフィルム間に印字画像を有する包装体において、前記印字画像を可食性インクで構成し、この印字画像を外面から視認可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋中に食品などの内容物を収容して密封した包装体に関するものである。特に、本発明は、これら包装体に賞味期限などを印字する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装袋中に食品などの内容物を収容して密封した包装体は、一般に、予め印刷絵柄などを施した包装材料に内容物を収容し、その開口部をヒートシールして密封することによって製造されている。ところで、賞味期限や消費期限は、予め印刷しておくことができず、内容物の収容時に印字する必要がある。
【0003】
このような印字画像は、例えば、インクジェット方式で包装袋の外面に施されている。しかし、包装袋の外面に施された印字画像は外部に露出しているため、磨耗して消えることがある。
【0004】
これに対し、包装材料を構成する複数のフィルムの間に印字画像を挟んだ包装体も知られている(特許文献1)。この場合には、これら複数のフィルムの間の全面に予めインキ層を設けておき、内容物を収容する際にレーザー等によってインキ層の一部を破壊する必要がある。
【0005】
また、包装材料の内面に印字画像を施し、この印字画像を挟んで包装材料をヒートシールした包装体も知られている。これらの場合には、印字画像は、その両側を包装材料やフィルムによって覆われているから、高い耐摩耗性を有することになる。なお、この場合には、印字画像を外部から視認可能とするため、包装材料の基材として透明フィルムが使用されることが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−168847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述のように包装材料の内面に印字画像を施し、この印字画像を挟んで包装材料をヒートシールする場合にあっては、その印字位置がずれると、印字画像が食品などの内容物に接触することがある。また、印刷の際にインク飛沫が包装材料の内面に付着すると、このインク飛沫は内容物に接触する。そして、前述のように印字画像は一般にインクジェットインクで構成されているから、このインクジェットインクが食品などに接触してその品質を損なうことがある。
【0008】
そこで、本発明は、包装材料の内面に印字画像を施し、この印字画像を挟んで包装材料をヒートシールした場合の利点を生かしながら、しかも、印字位置がずれたり、飛沫が付着するなどの原因によって、印字画像が食品などの内容物に接触した場合があっても、その品質を損なうことのない包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、フィルム製の包装袋に内容物を収容し、その周縁の一部又は全部でフィルム同士をヒートシールして密封して構成される包装体であって、前記ヒートシール部のフィルム間に印字画像を有する包装体において、
前記印字画像が可食性インクを印字して構成されたものであり、
かつ、前記印字画像が視認可能であることを特徴とする包装体である。
【0010】
この発明においては印字画像が可食性インクを印字して構成されたものであるから、仮に食品などの内容物に接触した場合でも、その品質を損なうことがない。
【0011】
次に、請求項2記載の発明は、前記可食性インクが、エタノール、セラック、可食性色素、炭酸アンモニウム、乳酸ナトリウム、水及び糊料を混合したインクであることを特徴とする請求項1記載の包装体である。
【0012】
後述する実施例から明らかなように、このインクを使用した印字画像を挟んでヒートシールした包装体は、シーラント層とシーラント層との間に印字画像が介在しているにも拘らず、しかも、この印字画像が親水性のインクから構成されているにも拘らず、極めて高いヒートシール強度を示す。
【0013】
次に、請求項3記載の発明は、前記可食性インクがインクジェットインクであることを特徴とする請求項1又は2記載の包装体である。
【0014】
また、請求項4記載の発明は、前記フィルムのシーラント層が線状低密度ポリエチレンから構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の包装体であり、後述する実施例から明らかなように、ヒートシール部分は極めて高いヒートシール強度を示す。
【0015】
次に、請求項5記載の発明は、前記印字画像が賞味期限、消費期限又は製造日を示す画像であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の包装体である。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、印字位置がずれたり、飛沫が付着するなどの原因によって、印字画像が食品などの内容物に万一接触した場合でも、その品質を損なうことがないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係る包装体の平面図
【図2】本発明の実施例に係る包装材料の要部断面図
【図3】本発明の実施例に係る包装体の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面を参照して本発明を説明する。
【0019】
図1は本発明の実施例に係る包装体の平面図で、この図では、図示左右方向に多数の包装体が連接されている。この包装体は、長尺の包装材料を中央から二つ折りし、その両側縁同士を重ねてヒートシールすると共に、多数の横シール部により密封して構成されている。そして、そのヒートシール部(縦シール部)に画像が印字されている。図の例では、印字画像は賞味期限である。
【0020】
図2は、この包装材料の要部を示す断面図で、この包装材料は基材フィルムとシーラント層とを重ねて構成されたもので、この基材フィルムとシーラント層との間に印刷絵柄が施されている。そして、印字画像はシーラント層の内側に施されている。
【0021】
ヒートシール部(縦シール部)の断面構造は、図3に示されている。すなわち、この部
位では、包装材料のシーラント層同士が印字画像を介してヒートシールされており、印字画像はその全周囲をシーラント層に包囲されている。
【0022】
この包装体は、次の工程によって製造することができる。すなわち、まず、長尺の包装材料の両側縁を縦シール予定位置として、この縦シール予定位置のシーラント層上に画像を印字する。次に、この包装材料を鉛直方向に走行させながら、二つ折りし、その両側縁同士を重ねてヒートシールして筒状に加工する。そして、この鉛直方向の走行を続けながら、下端に横シールを施し、上端の開口部から内容物を充填する。そして、筒状包装材料にこの横シールと充填とを繰り返すことにより、この包装体を製造することができる。
【0023】
印字画像の印字位置がずれて内容物と接触した場合であっても、その品質を損なうことを防止するため、印字画像は可食性インクを印字して構成されたものである必要がある。可食性インクとしては、エタノール、セラック、可食性色素、炭酸アンモニウム、乳酸ナトリウム、水及び糊料を混合したインクが好ましく使用できる。このインクを使用する場合には、ヒートシール時に発泡などの不良現象もなく、しかも、ヒートシール部分は極めて高いヒートシール強度を示す。なお、可食性色素としては、例えば、植物炭末色素が使用でき、糊料としてはでんぷんが使用できる。また、このインクはインクジェット方式で印字できる。
【0024】
なお、この例では縦シール部に印字画像を設けたが、横シール部に印字画像を設けることもできる。また、包装体が背シール部を有する場合には、この背シール部に印字画像を設けることも可能である。いずれの場合でも、印字画像はシーラント層に挟まれた位置に設けられることが必要である。
【0025】
次に、包装材料の基材としては任意の材質のフィルムが使用できるが、前記印字画像を外面から視認可能とするため、透明なプラスチックフィルムを使用することが望ましい。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムなどである。あるいは、これらプラスチックフィルムに透明な無機薄膜を積層した蒸着フィルムを使用することも可能である。透明無機薄膜としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどの薄膜が利用できる。これら薄膜をプラスチックフィルムに積層する方法は公知であるが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などで可能である。なお、これら各フィルムを積層した多層フィルムを基材として使用できることはもちろんである。
【0026】
次に、シーラント層としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、中密度ポリエチレン(MDPE)フィルム、未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマーフィルムなどが使用できる。これらの中でもLLDPEフィルムが好ましく使用でき、例えば、シーラント層としてLLDPEフィルムを使用し、かつ、可食性インクとして、エタノール、セラック、可食性色素、炭酸アンモニウム、乳酸ナトリウム、水及び糊料を混合したインクを使用した場合、高いヒートシール強度が得られる。
【0027】
次に、印刷絵柄は包装材料の任意の位置に設けることができるが、内容物との接触を避けるため、包装材料の最内面に印刷絵柄を設けることは避けるべきである。また、印刷絵柄の磨耗を避けるため、包装材料の最外面に印刷絵柄を設けることも避けるべきである。すなわち、印刷絵柄は基材とシーラント層との間に設けることが望ましい。また、基材が複数のフィルムの積層体から構成されている場合には、これら複数のフィルムの間に印刷絵柄を設けることもできる。
【0028】
印刷絵柄は包装材料の全面に設けることもできるが、前記印字画像を外面から視認可能
とするため、この印字画像が施される位置は印刷絵柄のない無地とすることが望ましい。
【0029】
印刷絵柄は、公知の印刷方法によって設けることができる。例えば、グラビア印刷である。また、前記印字画像と異なり、内容物と接触するおそれはないから、有機溶剤を含有する印刷インクで印刷することも可能である。
【0030】
また、本発明に係る内容物としては、例えば、液体調味料、粉末調味料などが例示できる。
【実施例】
【0031】
包装材料の基材として酸化アルミニウム薄膜を真空蒸着した長尺のポリアミドフィルム(厚さ15μm)を用意した。このポリアミドフィルムにグラビア印刷で印刷絵柄を施した後、シーラントフィルムを積層して包装材料とした。なお、シーラントフィルムは、厚さ50μmのLLDPEフィルムである。また、印刷絵柄は長尺のポリアミドフィルムの中央に施し、その両側縁は印刷絵柄のない無地とした。
【0032】
次に、充填包装機にインクジェットプリンタをセットし、充填包装速度を20m/分として、包装材料の側縁に「賞味期限20xx.xx.xx」の文字をインクジェット方式で印字し、続いて、この包装材料を折り曲げて両側縁同士をヒートシールして縦シール部を形成した。また、これに引き続き、水を内容物として開口部から充填し、横シールを施して密封した。使用したインクの組成は次のとおりである。また、充填包装機は大成ラミック(株)製ダンガンタイプを使用し、インクジェットプリンタは紀州技研工業(株)製CCS−EG型インクジェットプリンタを使用した。
【0033】
インク組成
エタノール 60〜80重量%
セラック 1〜10重量%
植物炭末色素 1〜 5重量%
炭酸アンモニウム 0.05〜2重量%
乳酸ナトリウム 0.05〜2重量%
水 10〜30重量%
糊料 0.05〜2重量%
こうして得られた包装体の縦シール部を目視にて観察した。「賞味期限20xx.xx.xx」の文字はシーラント層の間にはさまれており、包装体外面からこの文字を明瞭に読み取ることができた。また、この縦シール部に発泡などの不良現象は認められなかった。
【0034】
次に、この包装体の耐圧強度を測定したところ、静加圧で80kg,1分保持しても破袋することがなく、また動加圧でも500kg以上の耐圧強度を有しており、介在物なしにシーラント層をヒートシールした場合と同等の強度を有していることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム製の包装袋に内容物を収容し、その周縁の一部又は全部でフィルム同士をヒートシールして密封して構成される包装体であって、前記ヒートシール部のフィルム間に印字画像を有する包装体において、
前記印字画像が可食性インクを印字して構成されたものであり、
かつ、前記印字画像が視認可能であることを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記可食性インクが、エタノール、セラック、可食性色素、炭酸アンモニウム、乳酸ナトリウム、水及び糊料を混合したインクであることを特徴とする請求項1記載の包装体。
【請求項3】
前記可食性インクがインクジェットインクであることを特徴とする請求項1又は2記載の包装体。
【請求項4】
前記フィルムのシーラント層が線状低密度ポリエチレンから構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の包装体。
【請求項5】
前記印字画像が賞味期限、消費期限又は製造日を示す画像であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−157117(P2011−157117A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21052(P2010−21052)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】