説明

包装容器

【課題】底材に薄肉化したフィルムを用いた際にも、優れた透明性、シール性を併せて有し、必要最低限の易開封性を持つ不活性ガス置換包装容器及び真空包装容器を提供する。
【解決手段】少なくとも蓋材20と、厚さ50μm以下のフィルムを加工して得られる底材10とを熱融着した包装容器100であって、前記蓋材20が少なくとも基材層とポリオレフィン系樹脂を主成分とする熱融着層とを有するものであり、前記底材10が少なくとも基材層と易剥離層とを有するものであり、前記易剥離層が少なくともポリエチレン系樹脂(A)およびポリプロピレン樹脂(B)を重量比率(A/B)=50/50〜30/70で含むことを特徴とする包装容器100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種包装用容器、特に食品の不活性ガスによる置換包装や真空包装用途において好適に用いられる易剥離性包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、食品用包装容器には、多層フィルムを加工した蓋材と底材とをヒートシールしたものが多く使用されている。そして、ヒートシールされた蓋材と底材とをユーザーが手で容易に開封することができる、いわゆる易剥離機能が付与されたものが主流となっている。これまで易剥離機能については、ヒートシール部分の樹脂層を凝集破壊させることで安定した易剥離性を付与する技術が開発されている(例えば特許文献1)。
しかしながら、容器底材用フィルムの薄肉化が進むことにより、従来の易剥離処方ではフィルム押出しにおける流れ方向(MD方向)に比べ、幅方向(TD方向)のシール強度が高くなり易剥離性が低下するという問題が生じる場合がある。これは、MD方向のシール強度を適度な範囲に合わせた際にTD方向のシール強度が著しく高くなり、剥離時に底材フィルムが伸びてしまうことで剥離感が重くなってしまうためである。このような問題から薄肉フィルムを用いたものであっても安定した易剥離性を有する包装容器の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−139065号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、透明性、シール性および易剥離性に優れた包装容器を提供することにある。より具体的には、厚み50μm以下の薄肉フィルムを用いた底材と蓋材とをシールした場合であっても包装容器を開封するときに必要とする力を低く抑えながらも、必要最低限の密封性をも有する包装容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、下記の本発明により解決することができる。
〔1〕少なくとも蓋材と、厚さ50μm以下のフィルムを加工して得られる底材とを熱融着した包装容器であって、前記蓋材が少なくともポリオレフィン系樹脂を主成分とする熱融着層と基材層とを有するものであり、前記底材が少なくとも基材層と易剥離層とを有するものであって、前記易剥離層が少なくともポリエチレン系樹脂(A)、ポリプロリレン樹脂(B)とを含み、且つ重量比率がA/B=50/50〜30/70となる包装容器。
【0006】
〔2〕前記蓋材の熱融着層と底材の易剥離層をシールした際にシール強度が80g/15mm以上あり、かつ幅方向(TD方向)と流れ方向(MD方向)のシール強度比(TD/MD)が1.5以下である請求項1記載の包装容器。
【0007】
〔3〕前記易剥離層中のポリエチレン系樹脂(A)がエチレン−メタクリル酸共重合体である前記いずれか記載の包装容器。
【0008】
〔4〕前記ポリプロピレン樹脂(B)がプロピレン−エチレンランダム共重合体である前記いずれか記載の包装容器。
【0009】
〔5〕前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレンである前記いずれか記載の包装容器。
【0010】
〔6〕前記ポリエチレン系樹脂が直鎖状低密度ポリエチレンである前記いずれか記載の包装容器。
【発明の効果】
【0011】
本発明の包装容器は、透明性、シール性および易剥離性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に関わる包装容器の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明に用いられる蓋材の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明に用いられる蓋材の基材層の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明に用いられる底材の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明に用いられる底材の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を用いて本発明について詳細に説明する。
本発明の包装容器100は、図1に示すように蓋材10と底材20とをヒートシールされたものである。内容物を取り出す際にはヒートシールされた蓋材10を底材20から、剥離することにより開封する。
【0014】
(蓋材)
蓋材10は、図2に示すように少なくとも基材層11と熱融着層12とを有しており、熱融着層12は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とするものである。
【0015】
基材層11は、本発明の目的を達成できるものであれば公知の樹脂を用いることができるが、加工性の観点からは、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、ポリエステル系樹脂の中では、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
また、ポリオレフィン系樹脂の中では、ポリプロピレンが特に好ましい。
【0016】
さらに包装容器表面への印刷性の観点からは、前記基材層には二軸延伸ポリプロピレン等の延伸フィルムを用いることが好ましい。
【0017】
また、基材層が、水蒸気バリア層、ガスバリア層または耐衝撃層等を有するものとすることにより包装容器に対し各種機能を付与することができる。水蒸気バリア層としては、二軸延伸ポリプロピレン等を、ガスバリア層としてはエチレン−ビニルアルコール共重合体等を、耐衝撃層としては、ポリエチレン樹脂等を用いることができる。
【0018】
例えば図3に示すように、蓋材の基材層11をアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートからなるコア層11aの片面に二軸延伸ポリプロピレンからなる表面層11bを有するものとすることによりガスバリア性及び水蒸気バリア性と印刷性とを有する包装容器を得ることができる。
【0019】
熱融着層12の主成分となるポリオレフィン系樹脂は、公知のポリオレフィン系樹脂を用いることができるが、低温シール性の観点からは、ポリエチレン系樹脂を用いることが好ましく、その中でも特に直鎖低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0020】
(底材)
本発明の包装容器は、図4に示すように少なくとも基材層21と易剥離性を示す易剥離層22とを有する。
【0021】
熱融着層22は、易剥離性を付与する観点からポリエチレン系樹脂及びエチレン−ポリプロピレン共重合体の混合物を用いるのが好ましい。特にポリエチレン系樹脂としては、高温状態でのシールの安定性の観点から、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂が好ましい。
【0022】
ここで用いられるエチレン−プロピレン共重合体樹脂としては、プロピレン−エチレンのランダムコポリマーあるいはプロピレン−エチレンのブロックコポリマーいずれのタイプであっても良い。また、ポリプロピレン樹脂としては、上記ポリエチレン樹脂との混ざりやすさの観点から、所定の方法により測定されたMFRが20g/10min以下のものが好ましく、特にプロピレン−エチレンランダム共重合体が好ましい。ポリプロピレン樹脂の配合量は、熱融着層中、50重量%以上70重量%以下であるのが好ましい。
【0023】
基材層21は、本発明の目的を達成できるものであれば公知の樹脂を用いることができ、またその構造も単層、多層のいずれでもかまわないが、加工性の観点からは、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
基材層21様々の樹脂層を設けたものを使用することによって、包装容器に様々な機能を付与することができる。熱融着層22に隣接する支持層を設けることにより、耐衝撃性、耐屈曲性及び耐突き刺し性を付与することができる。また易剥離層との接着性の観点から支持層は、ポリエチレン系樹脂を主成分とすることが好ましく。またポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレン、特に成形時のカット性の観点からはエチレン−酢酸ビニル共重合体が好適に使用できる。但し、本発明の包装体用底材の支層には、これに限定するものではなく、各種ポリエチレン樹脂が使用できる。また、支持層の厚さは10以上20μm以下であるのが望ましい。
前記範囲とすることにより、十分な耐衝撃性、耐屈曲性、柔軟性あるいは成形性を付与することができるからである。
【0025】
また、補強を目的として補強層を配置することにより耐衝撃性、耐屈曲性及び耐突き刺し性を有する包装容器を得ることができる。容器の補強という目的のためには、ポリアミド樹脂を用いることが好ましい。補強層に使用できるポリアミドとしては、例えば、ポリカプラミド(ナイロン−6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン−7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン−9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン−2、6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン−4、6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6、6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6、10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン−6、12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン−8、6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン−10、8)や、共重合樹脂であるカプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−6/6、6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−12/6、6)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−2、6/6、6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6、6/6、10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6、6/6、10)等といった結晶性ポリアミドや、その主骨格がヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸及び/又はイソフタル酸が重合したもの、具体的には、ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン−テレフタル酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン−テレフタル酸−ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸の共重合体等といった非晶性のポリアミド樹脂を用いることができる。これらは、単独あるいは2種以上を併用して用いることができる。なお、これらの中でも耐突刺性と耐熱性の観点からは、ポリカプラミド(ナイロン−6)を用いることが好ましい。
【0026】
また、ガスバリア層を基材層中に配置することにより、酸素バリア性を備え、内容物の酸化劣化を防ぐ包装容器を得ることができる。ガスバリア性樹脂としては、ガス透過性の観点から、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)が好ましい。
【0027】
前記EVOH樹脂を使用することで、多層フィルムに酸素バリアー性を付与することが可能となる。EVOH樹脂以外にも酸素バリアー性を付与する目的でポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及びジアミン成分に芳香環を有するポリアミド樹脂等を含有することができるが、多層フィルムの製膜性やフィルム剛性の点でEVOH樹脂を用いることが好ましい。中でもエチレン共重合比率が24〜44モル%のEVOH樹脂が好適に用いられる。EVOH樹脂のエチレン共重合比率が24モル%未満では、容器形状への加工性に劣ったり、加熱水や蒸気の影響より酸素バリア性の低下を起こしやすくなる。一方、エチレン共重合比率が44モル%を超えると、乾燥状況下における酸素バリア性が充分でなく、内容物の変質が起こり易くなる。
【0028】
蓋材21には、包装体の見栄えや手にしたときの質感を向上させるために、外層を設けることができる。また、外層を設けることで底材と蓋材をシールした際にフランジ部に発生するカールを抑制することができる。外層として好適に用いられる樹脂はポリエステル系樹脂である。これにより、ポリエステル系樹脂は剛性が高いことに加え、フィルムにした際の透明性や表面光沢度が良いことから、包装体の見栄えや質感を優れたものにすることができる。
【0029】
前記ポリエステル系樹脂は、酸成分としてテレフタル酸等の2価の酸またはエステル形成能を持つそれらの誘導体を用い、グリコール成分として炭素数2〜10のグリコール、その他の2価のアルコールまたはエステル形成能を有するそれらの誘導体等を用いて得られる飽和ポリエステル樹脂をいう。前記ポリエステル系樹脂として、具体的にはポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリヘキサメチレンテレフタレート樹脂等のポリアルキレンテレフタレート樹脂が挙げられる。これにより、特に包装体の見栄えや質感を向上することができる。
【0030】
前記共重合可能な酸成分としては、例えば2価以上の炭素数8〜22の芳香族カルボン酸、2価以上の炭素数4〜12の脂肪族カルボン酸、さらには、2価以上の炭素数8〜15の脂環式カルボン酸、及びエステル形成能を有するこれらの誘導体が挙げられる。前記共重合可能な酸成分の具体例としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボジフェニル)メタンアントラセンジカルボン酸、4−4’−ジフェニルカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びエステル形成能を有するこれらの誘導体が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を併用して用いることができる。
【0031】
前記共重合可能なアルコール及び/またはフェノール成分としては、例えば2価以上の炭素数2〜15の脂肪族アルコール、2価以上の炭素数6〜20の脂環式アルコール、炭素数6〜40の2価以上の芳香族アルコールまたは、フェノール及びエステル形成能を有するこれらの誘導体が挙げられる。前記共重合可能なアルコール及び/またはフェノール成分の具体例としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ハイドロキノン、グリセリン、ペンタエリスリトール、などの化合物、及びエステル形成能を有するこれらの誘導体、ε−カプロラクトン等の環状エステルが挙げられる。
【0032】
前記共重合可能なポリアルキレングリコール成分としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及び、これらのランダムまたはブロック共重合体、ビスフェノール化合物のアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれらのランダムまたはブロック共重合体等)付加物等の変性ポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。
【0033】
このようなポリエステル系共重合体樹脂の中でも、降温過程における結晶化温度が185℃以下である結晶性ポリエステル系樹脂が多層フィルムの製膜性の点で好ましい。ここで言う降温過程における結晶化温度とは、試料を約5mg秤量し、それを示差走査熱量測定装置にセットし、昇温速度5℃/分で上限温度を350℃に設定して昇温した後、降温速度5℃/分で25℃まで冷却した際に現われたピークの内、最大ピークが現われた温度のことである。降温過程における結晶化温度が185℃より大きいものは、ポリエステル系樹脂の結晶化速度が速く、多層フィルムを共押出法で製膜する際に、ポリエステル系樹脂層の結晶化が起こりやすく、推奨生産条件幅が狭いといった問題点があるだけでなく、条件によっては多層フィルムの透明性が損なわれる場合がある。
【0034】
前記降温過程における結晶化温度が185℃以下であるポリエステル系樹脂としては、酸成分としてテレフタル酸を用い、グリコール成分としてエチレングリコール及びシクロヘキサンジメタノールを用いて得られる飽和ポリエステル樹脂があり、前記グリコール成分におけるシクロヘキサンジメタノールの含有量が3〜10モル%であるポリエステル樹脂が具体的な例として挙げられる。このポリエステル樹脂は透明性に優れるため、外層として用いることにより外観の良いフィルムを作製することができる。
【0035】
図5は底材の基材層を多層化したものの一例であり、層の順番は本発明の目的を達する限り特に限定されるものではない。図5に示す底材は、最外層/ガスバリア層/補強層/支持層/易剥離層の順に積層された例であり、このような底材を使用することにより、包装容器に上記の様々な性能を付与することができる。包装容器底材の多層フィルムの層構成は、本発明の各請求項に記載した要件を満たしていればこれらに限定するものではない。また、各樹脂層の相関強度を高める為に、易剥離層と支持層の層間以外には既に公知の接着性樹脂層を配置してもよい。
【0036】
(接着性樹脂層)
また、各樹脂間の相関強度を高めるために、本発明の効果を達成できる範囲において各層間に公知の接着性樹脂層を配置してもよい。接着性樹脂層に使用する接着性樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリレート−グリシジルアクリレート三元共重合体、あるいは各種ポリオレフィンに、アクリル酸、メタクリル酸などの一塩基性不飽和脂肪酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの二塩基性不飽和脂肪酸またはこれらの無水物をグラフトさせたもの、例えばマレイン酸グラフト化エチレン−酢酸ビニル共重合体、マレイン酸グラフト化エチレン−α−オレフィン共重合体など、公知のものを適宜使用することができる。
【0037】
(添加剤)
また、本発明に用いる各層には、滑り性、耐ブロッキング性、防曇性等の各種性能改善ため公知の添加剤を付与しても良い。以下に限定されるものではないが好ましい例として、滑り性やブロッキング防止では、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の有機系滑剤、シリカ、ゼオライト、炭酸カルシウム等の無機系滑剤を挙げることができる。その添加量としては0.1〜5重量%が好適であり、通常マスターバッチの形で加える。また、防曇性を付与する為には、既に公知の界面活性剤等を適宜添加し、使用することができる。
【0038】
(製膜方法及び包装体の製造法)
本発明の包装容器に用いられる蓋材および底材の製造方法については特に限定するものではなく、例えば、これらの各層は、それぞれ別個に適宜の技術によって製膜して、必要に応じ延伸したフィルムをラミネート、ドライラミネートによって複合フィルム化したものでも良いし、塗布または公知の共押出法によって多層、複合フィルムとしたものでも何ら差し支えない。
【0039】
本発明の包装容器は、不活性ガスを用いたガス置換体及び、真空包装体などの気密性包装体として使用され、公知の深絞り技術を適用して成形し、これに内容物を収容してヒートシールを行い製品化される。深絞り成形では、フィルムの片面より熱版による接触加熱を行い、フィルム全体が十分な熱量を与えられて軟化した時点で圧空または真空成形により金型通りの成形品を得る。その後、不活性ガスによる置換を施したり、真空脱気により包装体内の空気を除去した上、生肉などの生鮮食品、ハム、ソーセージ、ウインナー、ハンバーグなどの加工食品、その他惣菜、水産練り製品などの内容物を底材の収容し、蓋材とヒートシールすることで密封される。
【0040】
本発明の包装用器は、蓋材と底材とのシール強度が80g/15mm以上とすることにより包装容器として求められる密封性を維持できる。また、フィルム同士の幅方向(TD方向)と流れ方向(MD方向)とのシール強度比を1.5以下とすることにより剥離感を軽くすることができる。なお、幅方向とは、製膜時にフィルムが流れる方向と垂直の方向のことをいい、流れ方向とは、製膜時にフィルムが流れる方向のことをいう。
【実施例】
【0041】
つぎに実施例および比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。多層フィルムの製造に使用した原料樹脂はつぎの通りである。
(樹脂材料)底材
(1)PET−G:共重合ポリエチレンテレフタレート;
イーストマンケミカルジャパン(株)製、GN071
(2)AD1:三菱化学(株)製、モディックF515
(3)EVOH:(株)クラレ製、エバールJ171B
(4)NY:宇部興産(株)製、宇部ナイロン1030B2
(5)AD2:三菱化学(株)製、モディックM555
(6)EVA:三井デュポン・ポリケミカル(株)製、
エバフレックスV961RC (7)熱融着層:
(S1)エチレン−メタクリル酸共重合体:三井デュポン・ポリケミカル(株)製、
ニュークレルN0903HC
(S2)プロピレン−エチレンランダム重合体:三井デュポンポリケミカル(株)製、 ノーブレンS131
【0042】
(実施例1)
底材易剥離層中のS1/S2の配合比率を表1に示すものとし、7層構成の易剥離製多層フィルムを底材として製膜した。層構成はPETG/AD1/EVOH/NY/AD2/EVA/EPの順で押し出し加工して成形させた。得られたフィルムの各層厚み(μm)は最外層より4/3/6/4/3/17/3の計40μmであった。また、蓋材としては、2軸延伸ポリプロピレンフィルム5(OPPフィルム、厚さ30μm)とアルミ蒸着を施した2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム6(VM−PETフィルム、厚さ12μm)及びLLDPE樹脂(品番ウルトゼックス2022L、(株)プライムポリマー製)をTダイ押出法にて製膜したLLDPEフィルム7(30μm)をドライラミネート法により貼り合せた多層のフィルムをシール強度測定試験に用いる試験用蓋材フィルムとした。
【0043】
(実施例2)
底材易剥離層中のS1/S2の配合比率を表1に示すものとした以外は、実施例1と同様のものとして底材及び蓋材を作製した。
【0044】
(比較例1)
底材易剥離層中のS1/S2の配合比率を表1に示すものとした以外は、実施例1と同様のものとして底材及び蓋材を作製した。
【0045】
(比較例2)
底材易剥離層中のS1/S2の配合比率を表1に示すものとした以外は、実施例1と同様のものとして底材及び蓋材を作製した。
【0046】
(評価方法)
実施例および比較例にて得られた底材及び蓋材について、オートカップシーラーを用いて、MD方向及びTD方向のシール強度の評価を行った。シール条件は、シール圧力が2.0kg/cm2、シール時間が2.0s、シール温度120℃および130℃の条件で行った。尚、加熱は試験用蓋材フィルム側のみとした。自然冷却した試験片を15mm幅にカットし、テンシロン万能試験機を用いて、MD方向及びTD方向に500mm/分の引張速度で剥離し、シール強度を測定した。各符号は、以下の通りである。なお、評価は試験用底材フィルムの幅方向15cm毎に各n=3で行った。結果を表1に示す。
【0047】
また、大森機械工業(株)製真空成形機(FVシリーズ)で成形したサンプルの剥離時
の剥離感を以下の基準で判定した。結果を表1にまとめて示す。
【0048】
適当:モニター10名による開封試験で、6名以上が適度な堅さと判定した。
堅い:モニター10名による開封試験で、6名以上が重い・堅いと判定した。
軽い:モニター10名による開封試験で、6名以上が軽すぎると判定した。
【0049】
【表1】

【0050】
本発明の包装容器である実施例1、2はTD/MDのピール強度は1.5以下であり、開封感は好適なものとなった。一方、易剥離層中のポリエチレン系樹脂が過剰となる比較例1は、TD方向のシール強度がMD方向のシール強度に比べて高い為に開封感が重かった。また、易剥離層中のポリプロピレン系樹脂が過剰となる比較例2は十分なシールが行われず、開封感は非常に軽かった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の易剥離性を持つ真空包装体は、底材に50μm以下の薄いフィルムを用いたにも関わらず、高い密封性を有しつつも開封が容易で、透明性も良好である。また、一旦開封すると開封痕が明確に残るため、例えば、販売店の陳列棚での開封などによる改竄や悪戯の防止に有効である。さらに底材を薄肉化しているため、使用量の低減化でき、環境への配慮が期待できる。
【符号の説明】
【0052】
10・・・底材
11・・・基材層
11a・・ガスバリア層
11b・・外層
12・・・熱融着層
20・・・蓋材
21・・・基材層
21a・・支持層
21b・・補強層
21c・・ガスバリア層
21d・・外層
22・・・易剥離層
100・・包装容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも蓋材と、厚さ50μm以下のフィルムを加工して得られる底材とを熱融着した包装容器であって、
前記蓋材が少なくとも基材層と熱融着層とを有するものであり、
前記底材が少なくとも基材層と易剥離層とを有するものであり、
前記易剥離層が少なくともポリエチレン系樹脂(A)およびポリプロピレン樹脂(B)を重量比率(A/B)=
50/50〜30/70で含むことを特徴とする包装容器。
【請求項2】
前記蓋材と底材とのシール強度が80g/15mm以上あり、かつフィルム同士の幅方向(TD方向)と流れ方向(MD方向)のシール強度比(TD/MD)が1.5以下である請求項1記載の包装容器。
【請求項3】
前記易剥離層中のポリエチレン系樹脂(A)がエチレン−メタクリル酸共重合体である請求項1乃至2のいずれか1項に記載の包装容器。
【請求項4】
前記ポリプロピレン樹脂(B)がプロピレン−エチレンランダム共重合体である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の包装容器。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレンである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の包装容器。
【請求項6】
前記熱融着層が直鎖状低密度ポリエチレン主成分とするものである請求項5記載の包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−240977(P2011−240977A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116370(P2010−116370)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】