説明

包装材及びその製造方法

【課題】真空包装体を得る場合において、チルド時の内填物の急激な冷却時や包装体の流通過程で、印刷がされた包装材の表面に霜が付着するのを抑制し、よって包装材の表面の印刷表示の視認性を確保することのできる包装材の提供。
【解決手段】本発明の包装材1は、内填物を収容する袋部11と、この袋部11の表面に部分的に接合されたフィルム部12とを備え、この袋部11とこのフィルム部12との間が大気と連通している。袋部11は少なくとも基層11aとヒートシール層11bとを有する二枚の積層体の縁部を熱融着して形成された三方袋である。フィルム部12は少なくとも基層12aとヒートシール層12とを有する積層体よりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品固形物を真空充填した包装体を得るための包装材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品固形物のなかで、例えば冷凍ハンバーグは、包装材に固形物としてのハンバーグを収容した後、真空状態で包装材を封止して、すなわち真空包装して包装体とされる。この包装体は、その後に急冷により内填物である食品固形物が冷凍され、この冷凍状態で出荷されて流通過程を経て販売される。真空包装は、内填物の新鮮さを保持することができるために従来からよく利用されている包装形態である。しかし、このような真空包装された包装体を冷凍によりチルド包装とすると、真空包装時には包装内部が減容することにより内填物と包装材とが接当し、その状態で冷凍されるから、内填物が急激に冷却される結果、包装材の表面には結露が生じ、更には霜が大量に発生してしまう。また、チルド包装の製造時ばかりでなく、包装体の流通の過程で霜が付着することもある。
【0003】
この包装体の表面に霜が付着すると、包装体の流通、販売の過程で、この包装体の包装材の表面に印刷で付された内容等の表示を視認することが困難となる。これでは包装材が具備する内容等の表示としての機能を十分には果たし得ないことになる。
【0004】
透明性に優れ、また、料理に押圧力が加わった時に、料理を押し潰すことがないフィルムとすることができ、更に、冷凍時には霜が発生しない包装体に関して、調理済み食品を収容した、電子レンジ加熱が可能な容器が、密着状態で覆う透明な非透水性フィルムによって真空包装された包装体であって、この透明フィルムを、アイオノマー樹脂を含む積層フィルムとすることが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−327658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように包装材を構成するフィルムを特定の積層フィルムにしただけでは、急冷した真空包装体の霜の発生を十分には防止することはできなかった。
【0007】
本発明は、上記の問題を有利に解決するものであり、真空包装体を得る場合において、チルド時の内填物の急激な冷却時や包装体の流通過程で、印刷がされた包装材の表面に霜が付着するのを抑制し、よって包装材の表面の印刷表示の視認性を確保することのできる包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を有利に解決する、本発明の包装材は、内填物を収容する袋部と、この袋部の表面に部分的に接合されたフィルム部とを備え、この袋部とこのフィルム部との間が大気と連通していることを特徴とする。
【0009】
本発明の包装材においては、袋部が少なくとも基層とヒートシール層とを有する二枚の積層体の縁部を熱融着して形成された三方袋であり、フィルム部が少なくとも基層とヒートシール層とを有する積層体よりなる構成とすることができる。
【0010】
また、このフィルム部は、袋部のうちフィルム部と接する積層体の縁部に形成された空隙を介して前記袋部の他の積層体と熱融着して接合されている構成とすることができる。
【0011】
更に、フィルム部が、そのフィルム部の四隅で袋部と接合されている構成とすることもできる。
【0012】
本発明の包装材の製造方法は、袋部を構成し少なくとも基層とヒートシール層とを有する二枚の積層体のうちの一枚の積層体の縁部に孔を形成し、これら二枚の積層体を、互いのヒートシール層が接するように重ね合わせるとともに、フィルム部を構成し少なくとも基層とヒートシール層とを有する積層体を、そのヒートシール層が、上記孔が形成された積層体の表面に接するように重ね合わせ、重ね合わされた袋部及びフィルム部を構成する積層体の縁部を熱融着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の包装材によれば、袋部の表面にフィルム部が接合されていて、袋部とフィルム部との間が大気と連通していることから、内填物の冷凍により袋部の表面が結露し、霜が発生していても、この霜が発生した袋部との表面と、印刷がされるフィルム部とは離隔されているので当該フィルム部には霜が発生付着しない。このため、包装材の表面の印刷表示の視認性を維持することができる。
本発明の包装材の製造方法によれば、本発明の包装材を生産性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の包装材の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態の包装材の分解断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の包装材の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の包装材の実施形態を、図面を用いて具体的に説明する。
【0016】
図1に示す斜視図において、包装材1は、平面が矩形の袋部11を備えている。この袋部11は、包装材1に内填物を収容するためのものである。この袋部の表面には、袋部11よりも長さが小さい矩形のフィルム部12が部分的に接合されている。より具体的には、図1に示した例では、矩形のフィルム部12の四隅近傍に形成された孔状のシール部12sでフィルム部12は袋部11と部分的に接合されている。フィルム部12の表面には、印刷によって付された包装材1に収容される内填物の内容等の表示が可能になっている。
【0017】
上記のように袋部11とフィルム部12とは部分的に接合されていることにより、袋部11とフィルム部12との間には、大気が連通している。これにより、袋部11に収容され、真空包装された内填物の冷凍により袋部11の表面が結露し、霜が発生していても、この霜が発生した袋部11との表面と、印刷がされるフィルム部12とは離隔されているので、フィルム部12には霜が発生付着しない。このため、包装材1を構成するフィルム部12表面に付された印刷表示の視認性を維持することができる。
【0018】
本実施形態の包装材1は、袋部11に収容する内填物が、ハンバーグのような袋部11に真空包装され、かつ、冷凍される内填物に使用して特に効果が顕著である。
【0019】
図1の包装材では、袋部11は、二枚の積層体11A及び積層体11Bがいずれも基層11aとヒートシール層11bとからなっている。積層体11A及び積層体11Bがヒートシール層11bを有することにより、熱融着によって積層体11A及び積層体11Bを接合して袋部11を製造することができるので、袋部11の生産性がよい。また、これらの積層体11A、11Bは、互いに対向する面がどちらもヒートシール層11bであるように重ね合わされ、この重ね合わされた三辺の縁部を加熱押圧することにより熱融着させることで三方袋の袋部11としている。袋部11は、少なくとも基層11aとヒートシール層11bとを有する積層体11A、11Bのフィルムの二枚をそれぞれの縁部で接合した三方袋であることが、ハンバーグ程度の大きさの食品の内填物を収容し得る包装材1を生産性よく製造することができるので好ましい。
【0020】
袋部11を構成する積層体11A及び積層体11Bのうちで、フィルム部12と接する側の積層体11Aは、積層体11Bと熱融着する縁部に、切欠き又は孔が形成されていることが好ましい。この積層体11Aの縁部に切欠き又は孔を有することにより、この切欠き又は孔を介して袋部11の積層体11Bのヒートシール層11bがフィルム部12の積層体のヒートシール層12bと熱融着することができる。
【0021】
袋部11の積層体11A及び積層体11Bを構成する基層11aとヒートシール層11bの具体例は、例えば、基層11aがポリアミド系樹脂であり、ヒートシール層11bがヒートシール性樹脂である組み合わせ等がある。
【0022】
積層体11A及び積層体11Bは、図示した基層11aとヒートシール層11bとの2層よりなる例に限られない。基層11aとヒートシール層11bとを少なくとも有していれば合計で3層以上の構成の例とすることもできる。例えば、〔ポリエチレン系樹脂/ポリアミド系樹脂/ヒートシール性樹脂〕の組み合わせ等がある。
【0023】
また、基層11aとヒートシール層11bとを、接着剤で接合することにより積層体とすることもできる。好ましく使用できる積層フィルムの代表的な構成例として、以下のような構成が挙げられる。もっとも、これらの構成に限定されるものではなく様々な組み合わせの積層フィルムを使用することができる。なお、下記において、上記において、ONフィルムは、2軸延伸ナイロンフィルムを、OPPフィルムは2軸延伸ポリプロピレンフィルムを、PETフィルムは2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、L・LDPEは直鎖状低密度ポリエチレンを、HDPEは高密度ポリエチレンを、LDPEは低密度ポリエチレンを、CPPフィルムはキャスト(無延伸)ポリプロピレンフィルムを、また、EVOHフィルムはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルを、それぞれ指す。
【0024】
(1) ONフィルム/接着剤/L・LDPEフィルム(シーラント層)
(2) ONフィルム/接着剤/PETフィルム/接着剤/L・LDPEフィルム(シーラント層)
(3) ONフィルム/接着剤/PETフィルム/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
(4) ONフィルム/接着剤/2軸延伸HDPEフィルム/接着剤/L・LDPEフィルム(シーラント層)
(5) ONフィルム/接着剤/OPPフィルム/接着剤/L・LDPEフィルム(シーラント層)
(6) ONフィルム(シリカまたはアルミナ蒸着層)/接着剤/2軸延伸HDPEフィルム/接着剤/L・LDPEフィルム(シーラント層)
(7) ONフィルム/アンカーコート層/共押し出しコート層(HDPE)層/L・LDPE層)(シーラント層はL・LDPE層)
(8) ONフィルム/アンカーコート層/共押し出しコート層(HDPE層/LDPE層)/接着剤/L・LDPEフィルム(シーラント層)
(9) PETフィルム/接着剤/L・LDPEフィルム(シーラント層)
(10)PETフィルム/接着剤/ONフィルム/接着剤/L・LDPEフィルム(シーラント層)
(11)PETフィルム/接着剤/(シリカまたはアルミナ蒸着層)ONフィルム/接着剤/L・LDPEフィルム(シーラント層)
(12)PETフィルム/接着剤/ONフィルム/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
(13)PETフィルム/接着剤/EVOHフィルム/接着剤/ONフィルム/接着剤/CPPフィルム(シーラント層)
【0025】
なお、上記において、アンカーコートは、押し出しコーティングで樹脂を積層する際、接着性を向上させるために基材フィルム側に予めコーティングするものでプライマーコートの一種である。
【0026】
また、上記において、シーラント層のL・LDPEフィルム、CPPフィルムは、シングルサイト触媒を用いて重合したエチレン・α−オレフィン共重合体に置き換えることができる。これらのシーラント層は、上記のように、予め製膜したフィルムを接着剤を用いてドライラミネーション法などで貼り合わせるほか、押し出しコート法などで積層することもできる。
【0027】
前記の積層フィルムの構成において、ONフィルム、PETフィルムは、最外層に用いる場合は、基材フィルムとして食品用袋に機械的強度や印刷適性を付与し、中間層に用いる場合は、主に機械的強度を補強するために用いられる。また、中間層に用いる2軸延伸HDPEフィルム、OPPフィルムは、厚さを増し剛性を高めると同時に透湿度を向上させるために用いられる。上記2軸延伸HDPEフィルム、OPPフィルムは、1軸延伸HDPEフィルム、1軸延伸PPフィルムとすることもでき、その場合、延伸方向が、袋の切り取り線の方向と一致するように積層することにより、引き裂きを容易にし、かつ、その方向性を安定化させることができる。ただし、袋の切り取り線が、袋の縦横、両方向にある時は、2軸延伸フィルムを用いることが好ましい。
【0028】
そして、シリカまたはアルミナ蒸着層、EVOHフィルムは、ガスバリヤー性を向上させるために積層するものであり、これらのほか、ポリアクリロニトリルフィルム、或いは、ポリ塩化ビニリデンの塗膜層などのガスバリヤー性材料を積層することもできる。
【0029】
そして、シーラント層としては、L・LDPEフィルム、CPPフィルム、シングルサイト触媒を用いて重合したエチレン・α−オレフィン共重合体の3種類の例を挙げたが、L・LDPEフィルムは、ヒートシールの安定性や耐内容物性、耐ストレスクラッキング性などに優れており、CPPフィルムは、耐熱性、低臭性に優れている。また、メタロセン系触媒などシングルサイト触媒を用いて重合したエチレン・α−オレフィン共重合体は、分子量分布の幅が狭く、共重合比も安定しているため、低温ヒートシール性や、熱間シール性に優れると共に、特に低臭性に優れている。従って、包装する内容物(食品)の種類や使用条件に応じて、最適なものを選択して使用することにより、樹脂臭などで内容物の風味を損なうことがなく、安全で性能に優れた食品用袋を提供することができる。
【0030】
シーラント層には上記のほか、高圧法ポリエチレンなど通常の低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリエステル系樹脂なども適宜選択して使用することができる。
【0031】
また、積層体11Aと積層体11Bとは、層の構成が同一の積層体である例に限定されない。すなわち、積層体11Aと積層体11Bとで、基層11a及び/又はヒートシール層11bが異なる種類のものであってもよい。積層体11Aは基層フィルムとヒートシール可能なフィルムとが積層されていれば構成は問わないし、積層体11Bは裏刷りによる印刷化粧加工が可能である基層フィルムとヒートシール可能なフィルムとが積層されていれば構成は問わない。
【0032】
袋部11と部分的に接合されるフィルム部12は、少なくとも基層12aとヒートシール層12bとを有する積層体よりなることが好ましい。例えば〔ポリエチレン系樹脂/ヒートシール性樹脂〕の組み合わせや、〔ポリアミド系樹脂/ヒートシール性樹脂〕の組み合わせや、〔ポリエチレン系樹脂/ポリアミド系樹脂/ヒートシール性樹脂〕の組み合わせなどがある。フィルム部12の基層は、裏刷りによる印刷化粧加工が可能な層とする。
【0033】
袋部11の積層体11A及び/又は積層体11Bのヒートシール層11bや、フィルム部12の積層体のヒートシール層12bのヒートシール性樹脂は、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよく、例えば、熱可塑性樹脂として、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸、その他の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、その他の樹脂の1種又は2種以上からなる樹脂を、フィルム又はシートの形態で使用することができる。
【0034】
図2に示す、包装材1の模式的な分解断面図から分かるように、フィルム部12は、袋部11における当該フィルム部12と接する側の積層体である積層体11Aの縁部に形成された孔11h又は切欠きよりなる空隙を介して袋部11の積層体11Bと熱融着して接合することができる。この接合部が図1に示したシール部12sである。フィルム部12が積層体11Aの縁部の空隙(図2では孔11h)を介して袋部11の他の積層体と熱融着により接合されていることにより、積層体11Aにあらかじめシール部12sとなる空隙を設けているだけで、熱融着によりフィルム部12と袋部11とを部分的に接合することができるので、包装材1を生産性よく製造することができる。
【0035】
袋部11とフィルム部12とを部分的に接合するシール部12sは、フィルム部12の四隅に設けられていることができる。熱圧着による袋部11とフィルム部12との接合を考えると、三方袋の袋部11を形成するために積層体11Aと積層体11Bとが熱融着されている袋部11の側縁部に沿ってシール部12sを連続的又は断続的に設けることもできるが、袋部11とフィルム部12との間を大気と連通させることでフィルム部12に形成された印刷表示への霜付着を防止していることを考えると、できるだけシール部12sの数を少なくして、上述した大気との連通を良好な状態にすることが好ましい。したがって、シール部12sは、フィルム部12の四隅に設けられていることが好ましい。
【0036】
次に、本発明の包装材の製造方法の実施形態について説明する。
【0037】
図2に示した包装材の分解断面図及び図3に示す分解斜視図のように、袋部11用の積層体11A、積層体11Bと、フィルム部12用の積層体とを用意する。これらの積層体は、包装材1をバッチ式に製造するための短片状のものに限られず、包装材1を連続式に製造するための長尺なものであってもよい。フィルム部12には印刷により内容等の表示が付されている。また、積層体11Bにも印刷により内容等の表示を付すことができる。
【0038】
袋部11用の積層体11Aの縁部近傍に孔11hを形成する。これは打抜き加工による
パンチ孔とすることができる。
【0039】
次に袋部11用の積層体11A、積層体11Bと、フィルム部12用の積層体とを重ね合わせる。このとき、積層体11Aのヒートシール層11bと積層体11Bのヒートシール層11bとが互いに対向するように重ね合わせる。また、積層体11Aの基層11aに、フィルム部12の積層体のヒートシール層12bが接するように重ね合わせる。
【0040】
次に、重ねあわされた袋部11用の積層体11A、積層体11B及びフィルム部12用の積層体の縁部をヒータで加熱すると共にそれらの厚さ方向に押圧して熱融着させた後、この熱融着部分を冷却器で冷却して固化する。この熱融着を、重ねあわされた積層体の三辺の縁部で行うことにより、三方袋の袋部11とこの袋部11の表面にシール部12sで部分的に接合されたフィルム部12とを備える包装材1が得られる。熱融着のためのヒータ及び冷却器は、各積層体がロールから巻き出された長尺物である場合には、その積層体の進行方向に平行な方向と、垂直な方向にそれぞれ設けられていて、これにより積層体の進行に従って多数の包装材を連続的に製造することができる。
以上のような製造方法によれば、本発明の包装材を生産性よく製造することができる。
【実施例】
【0041】
次に、実施例により本発明の包装材をより具体的に説明する。
【0042】
(実施例1)
〔フィルム部の積層体の作製〕
裏刷りによる化粧加工印刷が付されている厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレ太レートフィルムに、ヒートシール層として低密度ポリエチレンフィルムによるシーラント層(厚さ60μm)を有する積層体を得た。
【0043】
〔袋部の積層体の作製〕
厚さ15μmのポリアミドフィルムに、更に厚さ60μmの低密度ポリエチレンフィルムをドライラミネート接着剤でラミネートして積層体を得た。これらの積層体は、2枚を、互いのヒートシール層を内側にして積み重ねることによって、熱融着により三方袋が得られる。
【0044】
〔包装材の作製〕
袋部用の積層体の縁部近傍にパンチ孔を形成した。次に、袋部用の二枚の積層体と、フィルム部12の積層体とを重ね合わせた。このとき、フィルム部の積層体のヒートシール層が袋部の積層体に接するように重ね合わせた。
【0045】
次に、重ね合わされた袋部用の二枚の積層体及びフィルム部用の積層体の縁部をヒータで加熱すると共にそれらの厚さ方向に押圧して熱融着させた後、この熱融着部分を冷却器で冷却して固化する。この熱融着を、重ねあわされた積層体の三辺の縁部で行うことにより、三方袋の袋部とこの袋部の表面にパンチ孔を介して部分的に接合されたフィルム部とを備える包装材が得られた。
【0046】
(比較例1)
比較例1は、一般的なチルド包装材であり、実施例1の包装材におけるフィルム部を具備していない例である。
【0047】
裏刷りによる化粧加工印刷が付された厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、厚さ60μmの低密度ポリエチレンフィルムによるシーラント層とを有するフィルムとを、上記化粧加工印刷が付された面においてドライラミネート接着剤でラミネートすることで得られた2枚の積層体を各積層体のシーラント層を互いに内側にしてヒートシールすることにより、比較例1の三方体の包装材を得た。
【0048】
(比較例2)
比較例2は、包装材が二重密封袋である例である。
【0049】
裏刷りによる化粧加工印刷が付されている厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、低密度ポリエチレンフィルムによるシーラント層(厚さ60μm)とを有するフィルムとを、上記化粧用印刷が付された面においてドライラミネート接着剤でラミネートすることで外側用の積層体を得た。また、厚さ60μmの低密度ポリエチレンフィルムと厚さ15μmのポリアミドフィルムと厚さ60μmの低密度ポリエチレンフィルムとをドライラミネート接着剤でラミネートすることで内側用の積層体を得た。この内側用の積層体の二枚を、互いのヒートシール層が内側になるように重ね合わせた。重ね合わされた内側用の積層体の外側に、外側用の積層体の二枚を、互いのヒートシール層が内側になるように重ね合わせた後、ヒートシールして完全な二重密封袋を得た。この二重密封袋は、外側用の積層体と内側用の積層体との間で空気が連通することはなく、外側積層体と内側積層体との間には空気が常に介在することになる。
【0050】
(比較例3)
比較例3は、比較例2の二重密封袋における外側積層体に孔を形成することにより、外側用の積層体と内側用の積層体との間でわずかに空気が連通する以外は、比較例2と同様にした例である。
【0051】
外側積層体に孔は、孔径が0.3mm、孔密度が64個/cmの条件で形成されていた。
【0052】
(試験)
上記実施例1及び比較例1〜3の包装材を用いて、以下の試験を行った。
【0053】
(1)外観変化試験
ハンバーグを真空充填し、ボイル処理後、マイナス10℃の冷蔵庫にサンプルを10個保存し、外観変化を観察した。
【0054】
(2)落下強度試験
上記方法にて作製したレトルト処理包装体を、高さ120cmからコンクリート面に、水平方向及び垂直方向に1回ずつ(計2回)落下させ、包装体の破損及び内容物の漏れの有無を確認した。
【0055】
(3)突刺強度試験
上記方法にて作製したレトルト処理包装体から内容物を取り出し、積層体の表面から、直径1mmφの針を200mm/minの突刺速度で突刺して、針がフィルムを貫通するのに要した強度(N)を測定した。
【0056】
以上の試験の結果を表1に示す。表1から明らかなように、実施例1の包装材は、比較例1〜3の包装材と比べてレトルト後の外観変化、落下強度及び突刺強度の全ての項目においてバランスよく優れた特性を示した。
【0057】
【表1】

【0058】
以上、実施の形態及び実施例を用いて本発明の包装材及びその製造方法を具体的に説明したが、本発明の包装材及びその製造方法は、これらの実施形態及び実施例の記載に限定されることなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲で幾多の変形が可能である。例えば、本発明において、包装材の形状は、包装材の生産性の観点からは平面が矩形又は正方形であることが好適であるが、形状は矩形又は正方形に限定されない。要は、袋部の表面の一部にフィルム部が部分的に接合されてなり、その袋部とフィルムとの間に大気と連通している包装材であって、真空包装および冷凍包装に適用可能でフィルムに印刷可能な包装材であれば、本発明の上記効果を有する。
【符号の説明】
【0059】
1 包装材
11 袋部
11a、12a 基層
11b、12b ヒートシール層
12 フィルム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内填物を収容する袋部と、
この袋部の表面に部分的に接合されたフィルム部と
を備え、
この袋部とこのフィルム部との間が大気と連通していることを特徴とする包装材。
【請求項2】
前記袋部が、少なくとも基層とヒートシール層とを有する二枚の積層体の縁部を熱融着して形成された三方袋であり、
前記フィルム部が少なくとも基層とヒートシール層とを有する積層体よりなる
請求項1記載の包装材。
【請求項3】
前記フィルム部は、前記袋部のうちフィルム部と接する積層体の縁部に形成された空隙を介して前記袋部の他の積層体と熱融着して接合されている請求項2記載の包装材。
【請求項4】
前記フィルム部が、そのフィルム部の四隅で袋部と接合されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装材。
【請求項5】
袋部を構成し少なくとも基層とヒートシール層とを有する二枚の積層体のうちの一枚の積層体の縁部に孔を形成し、
これら二枚の積層体を、互いのヒートシール層が接するように重ね合わせるとともに、フィルム部を構成し少なくとも基層とヒートシール層とを有する積層体を、そのヒートシール層が、上記孔が形成された積層体の表面に接するように重ね合わせ、
重ね合わされた袋部及びフィルム部を構成する積層体の縁部を熱融着する
ことを特徴とする包装材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−12082(P2012−12082A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150381(P2010−150381)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】