説明

包装用容器の製造方法および包装用容器

【課題】包装用容器の製造方法において、包装用容器に対して、コストを大幅に抑制して凹凸模様を形成する。
【解決手段】凹凸模様13が予め形成された既成の壁紙(10)(既成シート)からその凹凸模様(13)を薄厚の樹脂シート50に転写し、その薄厚の樹脂シート50を、製品用元型60の表面61に貼り付けて製品用原型70を作成し、製品用原型70を用いて製品用鋳型(80)を生成することで、放電加工やエッチング処理を施すことなく、製品用鋳型(80)に凹凸模様(81)を形成し、コストを大幅に抑制して、包装用容器(100)に凹凸模様(102)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用容器の製造方法および包装用容器に関し、詳細には、その表面に凹凸模様が形成される容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、刺身や肉類等の生鮮食料品を複数並べて収容し、透明な蓋やラップなどで覆う等して用いられる食品包装用容器が知られている。
【0003】
この食品包装用容器は、例えば発泡性の合成樹脂シートなどを原材料として、金型によって主にトレイ状に形成されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−076591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、いわゆる本物志向の高まりにより、上述した食品包装用容器も、単に白色で平板なもの(変化に乏しく、単調なもの)よりも、本物の皿や重箱を模した色彩の施されたものが要望されている。
【0005】
また、単なる色付けの模様だけでなく、その表面に立体的な凹凸模様を設けることで、質感を一層向上させることも試みられている。
【0006】
ここで、そのような質感を高めるような凹凸模様としては、比較的微細なピッチで凹凸が繰り返されるものが効果的であり、代表的には、例えば自動車の内装部品などに多く採用されているシボ模様などがある。
【0007】
しかし、このシボ模様等の微細ピッチで繰り返される凹凸模様は、型に対して放電加工を施したり、エッチング処理を施すことで形成するものであるため、手間もコストも掛かるという問題がある。
【0008】
ここで、この食品包装用容器が使用される場面を考えると、末端の消費者にとって本来の商品は、その食品包装用容器に収容された内容物である生鮮食品等であって、それを収容している食品包装用容器ではないため、その食品包装用容器自体に大きなコストを掛けることはできない。特に、食品包装用容器は、1回使い切りのものである場合が多く、そのコストを回収する機会も限定されるため、多大なコストを掛けて上述した凹凸模様を付すのは困難であった。
【0009】
なお、上述した凹凸模様を形成することの要望と、その凹凸模様を形成するために要するコストの問題との兼ね合いは、使い切りの食品包装用容器において特に大きな課題であるが、他の食品包装用容器や食品用途に限定されない一般的な包装用容器においても生じうる問題であって、このような一般的な包装用容器においても、コストの抑制を図る必要がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、包装用容器に対して、コストを大幅に抑制して凹凸模様を形成することができる、包装用容器の製造方法および包装用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る包装用容器の製造方法は、凹凸模様が予め形成された既成シートからその凹凸模様を薄厚樹脂シートに転写し、その薄厚樹脂シートを、製品用元型の表面に貼り付けて製品用原型を作成し、製品用原型を用いて製品用鋳型を生成することで、放電加工やエッチング処理を施すことなく、製品用鋳型に凹凸模様を形成することができ、コストを大幅に抑制して、包装用容器に凹凸模様を形成するものである。
【0012】
すなわち、本発明に係る包装用容器の製造方法は、板状体の表面に、凹凸模様が予め形成された既成シートを密着させて元型を生成し、前記元型を用いた鋳造により、前記元型に対応した前記凹凸模様を有するシート用型を生成し、生成された前記シート用型の前記凹凸模様を有する面に、薄厚の樹脂シートを加熱密着させて、前記樹脂シートに前記凹凸模様を転写し、前記凹凸模様が転写された前記樹脂シートを、包装用容器を生成するための、前記包装用容器の概略形状が形成された製品用元型の表面に付着させて製品用原型を生成し、前記製品用原型を用いて、前記製品用原型に対応した、前記転写された凹凸模様を有する製品用鋳型を生成し、前記包装用容器の原材料である発泡性の合成樹脂シートを、前記製品用鋳型を用いて成形することを特徴とする。
【0013】
このように構成された本発明に係る包装用容器の製造方法によれば、凹凸模様が予め形成された既成シートを板状体の表面に密着させて元型を生成し、この元型を用いた鋳造により、元型に対応した凹凸模様を有するシート用型を生成し、生成されたシート用型の凹凸模様を有する面に、薄厚の樹脂シートを加熱密着させて、樹脂シートにこのシート用型の凹凸模様を転写し、凹凸模様が転写された樹脂シートを、包装用容器を生成するための製品用元型の表面に付着させて製品用原型を生成し、生成された製品用原型を用いて、製品用原型に対応した、転写された凹凸模様を有する製品用鋳型を生成し、包装用容器の原材料である発泡性の合成樹脂シートを、製品用鋳型を用いて成形することができる。
【0014】
ここで、製品用鋳型には、放電加工やエッチング処理を施すことなく凹凸模様を形成することができるため、放電加工やエッチング処理を施すことによるコストが掛からず、したがって、コストを大幅に抑制して、包装用容器に凹凸模様を形成することができる。
【0015】
しかも、包装用容器に最終的に施される凹凸模様は、既成シートに形成されている凹凸模様をそのまま用いることができるため、新たに種々の凹凸模様を作り出す手間を省くことができ、新たに種々の凹凸模様を作り出すことによって発生するコストも発生することがない。
【0016】
なお、既成シートは、既成の壁紙(クロス)であってもよいし、既成のテーブルクロスであってもよいし、その他既成のシート状のものであって、表面に微細なピッチで凹凸模様が形成されたものであれば、どのようなものであってもよい。
【0017】
また、凹凸模様が予め形成されているのが、シート状のものではなく、シートよりも厚く、ある程度の強度を有する既成の立体物である場合は、本発明において、板状体の表面に既成シートを密着させて元型を生成する工程に代えて、その既成の立体物そのものを元型としてもよい。
【0018】
すなわち、表面に凹凸模様が予め形成された既成の立体物を元型として用いた鋳造により、この元型に対応した凹凸模様を有するシート用型を生成して、その後の工程をおこなえばよい。
【0019】
なお、上述した本発明に係る包装用容器の製造方法が適用される包装用容器が、1回使い切りの包装用容器(特に、食品包装用容器など)である場合は、上述したコスト抑制の効果を一層顕著なものとすることができる。
【0020】
また、元型を生成する工程において、既存シートを板状体に密着させる方法としては、既存シートの裏面または板状体の表面に接着剤を塗布して、既存シートを板状体に貼着することで密着させてもよいし、ステープラの針や釘、ネジなど、既存シートの表面側から板状体に打ち込んで密着させるようにしてもよい。
【0021】
なお、貼着に使用する接着剤の種類は問わないが、板状体との接着性が優れた成分のものを用いればよい。
【0022】
同様に、製品用原型を生成する工程において、樹脂シートを製品用元型の表面に付着させる方法としては、樹脂シートの裏面または製品用元型の表面に接着剤を塗布して、樹脂シートを製品用元型に貼着することで密着させてもよいし、その他、ネジや釘などを樹脂シートの表面側から製品用元型に打ち込んで密着させるようにしてもよい。
【0023】
本発明に係る包装用容器の製造方法においては、前記既成シートは、既成の壁紙(クロス)であることが好ましい。
【0024】
既成の壁紙(クロス)は、その表面に形成されている凹凸模様として多種多様なものがあり、また安価なコストで、かつ容易に入手することができるからである。
【0025】
本発明に係る包装用容器の製造方法においては、前記凹凸模様は、シボ模様であることが好ましい。
【0026】
シボ模様は、微細ピッチで繰り返される凹凸模様の代表的なものであり、このような微細ピッチで繰り返される凹凸模様は、放電加工やエッチング処理で対応しようとする場合に、より多くの手間とコストが掛かるため、本発明の製造方法によって奏される効果を一層顕著にすることができるからである。
【0027】
本発明に係る包装用容器の製造方法においては、薄厚の樹脂シートをシート用型に加熱密着させるのに先だって、シート用型に、凹凸模様を有する面からその背面まで貫通する通気孔を所定間隔で複数形成し、シート用型の凹凸模様を有する面に薄厚の樹脂シートを加熱密着させるに際して、背面側から吸引することが好ましい。
【0028】
シート用型に形成された通気孔から吸引(真空引き)することで、加熱されて軟化した薄厚の樹脂シートが、シート用型の凹凸模様を有する面に密着する程度を向上させることができ、薄厚の樹脂シートに転写される凹凸模様を、より鮮明なものとすることができるからである。
【0029】
本発明に係る包装用容器は、発泡性の合成樹脂シートを、加熱、膨張させて形成され、既成の壁紙(クロス)に予め形成されている凹凸模様が転写されているものであるため、放電加工やエッチング処理によって凹凸模様が形成されたものよりも、大幅にコストを抑制したものである。
【0030】
すなわち、本発明に係る包装用容器は、発泡性の合成樹脂シートを、加熱、膨張させて形成される包装用容器であって、その表面に、既成の壁紙(クロス)に予め形成されている凹凸模様が、転写されていることを特徴とする。
【0031】
このように構成された本発明に係る包装用容器によれば、発泡性の合成樹脂シートを、加熱、膨張させて形成される包装用容器に、既成の壁紙(クロス)に予め形成されている凹凸模様が転写されているものであるため、放電加工やエッチング処理によって凹凸模様が形成されたものよりも、大幅にコストを抑制することができる。
【0032】
本発明に係る包装用容器においては、前記凹凸模様は、シボ模様であることが好ましい。
【0033】
シボ模様は、微細ピッチで繰り返される凹凸模様の代表的なものであり、このような微細ピッチで繰り返される凹凸模様は、放電加工やエッチング処理で付された場合に、より多くの手間とコストが掛かるため、本発明の包装用容器によって奏される効果が一層顕著になるからである。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る包装用容器の製造方法によれば、包装用容器に対して、コストを大幅に抑制して凹凸模様を形成することができる。
【0035】
また、本発明に係る包装用容器によれば、コストを大幅に抑制して凹凸模様が形成されたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係る包装用容器の製造方法および包装用容器の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0037】
本発明の実施形態である包装用容器製造方法は、まず、図1(a)に示す既成の壁紙10(既成シート)を、同図(b)に示す合板(ベニヤ板;板状体)20の表面21に密着させて、同図(c)に示す元型30を作成する。
【0038】
ここで、壁紙10の一方の面(以下、表面11という。)には、シボ模様等の微細なピッチの凹凸模様13が予め形成されている。なお、他方の面(裏面12)には、凹凸模様13が形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。
【0039】
壁紙10を合板20の表面21に密着させる際には、壁紙10の凹凸模様13が外側の面となるように配置する。
【0040】
また、壁紙10を合板20の表面21に密着させる方法としては、壁紙10の裏面12または合板20の表面21に接着剤を塗布して、壁紙10を合板20に貼着することで密着させてもよいし、ステープラの針を壁紙10の表面11側から合板20に打ち込んで密着させるようにしてもよい。
【0041】
なお、使用する接着剤の種類は問わないが、合板10との接着性が優れた木工用ボンドなどを用いればよい。
【0042】
図示の合板20は、その表面21が平面であるものとして示しているが、本発明はそのように表面21が平面であるものに限定されるものではなく、壁紙10が密着される表面21は曲面であってもよい。
【0043】
次に、作成された元型30を用いて鋳造を行う。この鋳造は、図2(a)に示すように砂型による伝統的な鋳造であり、元型30を、その壁紙10が密着された側の面21を図示下方に向けて、鋳造用砂130が充填された下型120に埋設する。
【0044】
そして、この下型120に、同じく鋳造用砂130が充填され、湯口用のリング111が設けられた上型110を被せ、乾燥、硬化させる。
【0045】
乾燥、硬化後に、図2(b)に示すように、下型120から上型110を取り外し、上型110からはリング111を取り除き、下型120からは元型30を取り除き、その後、下型120に上型110を被せ直す。
【0046】
次いで、リング111を取り除いて上型110に形成された湯口空間112から、元型30を取り除いて下型120に形成されたキャビティ121に、溶融したアルミ材49を流し込む。
【0047】
流し込まれたアルミ材49が硬化した後、下型120から上型110を取り外し、さらに下型120から鋳造用砂130を取り除くと、図2(c)に示すように、元型30における凹凸模様13に対応した凹凸模様42を表面41に有するアルミ製のシート用型40が生成される。
【0048】
次に、このシート用型40を用いて、薄厚の樹脂シート50に凹凸模様42を転写するが、それに先だって、図3(a)に示すように、シート用型40の周縁をシート型40の厚さよりも厚い木枠45で囲い込む。
【0049】
また、シート用型40の凹凸模様42を有する面41からその背面まで貫通する通気孔43(直径φ=0.5[mm]程度)を所定間隔で複数形成する。
【0050】
そして、シート用型40の凹凸模様42を有する面41に、図3(b)に示した薄厚の樹脂シート50を加熱密着させて、樹脂シート50に凹凸模様42を転写する。
【0051】
このとき、シート用型40は、真空孔47が形成された定盤46上に配置されているが、図3(b)に示すように、木枠45の底面は定盤46に密着しているが、シート用型40は定盤46から離れた状態とされている。
【0052】
そして、シート用型40の凹凸模様42を有する面41に載せられた樹脂シート50は、加熱によって軟化しているため、シート用型40の凹凸模様42に倣うが、真空孔47を通じて、シート用型40と定盤46との間の空間の空気が、定盤46の下方に吸引される(真空引きされる)ことにより、図3(c)に示すように、シート用型40と定盤46との間の空間に連通した通気孔43を介して、樹脂シート50の裏面52側が、シート用型40の面41に強く吸引され、これによって、樹脂シート50にシート用型40の凹凸模様42が一層鮮明に転写される。
【0053】
樹脂シート40への加熱が完了して樹脂シート50が冷えると、シート用型40から樹脂シート50に転写された凹凸模様52(図4(a)参照)は定着する。
【0054】
なお、本実施形態における樹脂シート50は、例えばポリプロピレン(PP)よって形成されたシートであるが、ポリエチレン(PE)のシートであってもよい。
【0055】
また、この樹脂シート50は、その厚さが0.2[mm]以下であることが好ましい。0.2[mm]を超える厚さのもでは、微細なピッチの凹凸模様42を鮮明に転写するのが困難となるからである。
【0056】
なお、樹脂シート50をシート用型40に加熱密着させるに際して、上述したように背面側から真空引きすることは、本発明において必須の要件ではない。そして、そのような真空引きを行わない場合は、シート用型40に通気孔43を形成するのを省略することができる。
【0057】
以上のようにして、シート用型40の凹凸模様42を転写して得られた凹凸模様53を有する樹脂シート50であるが、シート用型40に密着した側の面(裏面52)を外側の面となるように配置して、製品となる包装用容器100(後述する図8参照)を生成するための、最終製品である包装用容器100の概略形状に形成された製品用元型60(図4(b))の表面61に付着させて、図4(c)に示す製品用原型70を生成する。
【0058】
ここで、樹脂シート50の裏面52を外側に配置するのは、壁紙10の凹凸模様13を、その凹凸が反転しないように包装用容器100に転写する(凹部は凹部として転写し、凸部は凸部として転写すること)ためであり、壁紙10の凹凸模様13の凹凸を反転させて包装用容器100に転写する(凹部は凸部として転写し、凸部は凹部として転写する)場合は、樹脂シート50の表面51(シート用型40に密着した面(裏面52)とは反対の面)を外側に配置して、製品用元型60の表面61に付着させればよい。
【0059】
また、樹脂シート50を製品用元型60の表面61に付着させる方法としては、樹脂シート50の表面51または製品用元型60の表面61に接着剤を塗布して、樹脂シート50を製品用元型60に貼着することで付着させてもよいし、釘やネジあるいはステープラの針を樹脂シート50の裏面52側から製品用元型60に打ち込んで密着させるようにしてもよい。
【0060】
なお、使用する接着剤の種類は問わないが、樹脂シート50および製品用元型60との接着性が優れた成分を有するものを用いればよい。
【0061】
本実施形態において、製品用元型60は樹脂で形成されたものであるが、元型30に用いた合板20と同様、木材で形成されたものであってもよい。
【0062】
また、製品用元型60は、最終製品である包装用容器100の概略形状に形成されたものであり、手彫りされたものであってもよいし、全て機械加工されたものであってもよい。
【0063】
次に、作成された製品用原型70を用いて鋳造を行う。この鋳造も、図5(a)に示すように砂型による伝統的な鋳造であり、製品用原型70を、その凹凸模様53形成された側の面を図示下方に向けて、鋳造用砂130が充填された下型150に埋設する。
【0064】
そして、この下型150に、同じく鋳造用砂130が充填され、湯口用のリング141が設けられた上型140を被せ、乾燥、硬化させる。
【0065】
乾燥、硬化後に、図5(b)に示すように、下型150から上型140を取り外し、上型140からはリング141を取り除き、下型150からは製品用原型70を取り除き、その後、下型150に上型140を被せ直す。
【0066】
次いで、リング141を取り除いて上型140に形成された湯口空間142から、製品用原型70を取り除いて下型150に形成されたキャビティ151に、溶融したアルミ材49を流し込む。
【0067】
流し込まれたアルミ材49が硬化した後、下型150から上型140を取り外し、さらに下型150から鋳造用砂130を取り除くと、図5(c)に示すように、製品用原型70における凹凸模様53に対応した凹凸模様81(壁紙10の凹凸模様13が凹凸反転したもの)を表面に有する、製品用原型70に対応したアルミ製の製品用鋳型(コア型)80が生成される。
【0068】
以上の工程によって生成された製品用鋳型80は、製品となる包装用容器100の周縁の環状突条103(図8参照)を形成するための環状溝82と、エジェクタ用のエアを放出するための通気孔83とが、追加的に機械加工によって形成される。
【0069】
そして、このようにして得られた製品用鋳型80は、同様の工程によって得られた他の複数の製品用鋳型80とともにコア型として、図7に示すように、包装用容器100を製造する工程に並べて配置される。
【0070】
この工程には、これらコア型(製品用鋳型80)に対応したキャビティ型85が配置されており、コア型80とキャビティ型85との間に、製品となる包装用容器100の原材料であるシート状のPSP95(ポリスチレンペーパー;発泡性の合成樹脂シート)が配置され、予熱によって膨張したPSP95が、これらコア型80とキャビティ型85とによって成形されて、図8に示すような、内面101の略全面に凹凸模様102が形成された包装用容器100が生成される。
【0071】
この凹凸模様102は、製品用鋳型80の外側面に形成された凹凸模様81が凹凸反転したものであるため、結果的に、壁紙10の凹凸模様13の凹凸と同じ凹凸(壁紙10の凹部は包装用容器100の凹部に対応し、壁紙10の凸部は包装用容器100の凸部に対応している)を有するものとなっている。
【0072】
なお、図7において、製品用鋳型80を複数個並べて配置しているのは、1回の加工動作で複数個の製品(包装用容器100)を同時に生成するためであり、そのような複数個取りの必要がない場合は、単一の製品用鋳型80と、これに対応した単一のキャビティ型との組合せの工程とすることができる。
【0073】
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る包装用容器100の製造方法によれば、凹凸模様13が予め形成された壁紙110を合板20の表面21に密着させて元型30を生成し、この元型30を用いた鋳造により、元型30の凹凸模様13に対応した凹凸模様42を有するシート用型40を生成し、生成されたシート用型40の凹凸模様42を有する面41に、薄厚の樹脂シート50を加熱密着させて、樹脂シート50にこのシート用型40の凹凸模様42を転写し、凹凸模様42が転写された樹脂シート50を、包装用容器100を生成するための製品用元型60の表面61に付着させて製品用原型70を生成し、生成された製品用原型70を用いて、製品用原型70の凹凸模様53に対応した、転写された凹凸模様81を有する製品用鋳型80を生成し、包装用容器100の原材料であるPSP95を、製品用鋳型80を用いて成形することができる。
【0074】
ここで、製品用鋳型80には、放電加工やエッチング処理を施すことなく凹凸模様81を形成することができるため、製品用鋳型80に放電加工やエッチング処理を施すことによるコストが掛からず、したがって、コストを大幅に抑制して、包装用容器100に凹凸模様102を形成することができる。
【0075】
しかも、包装用容器100に最終的に施される凹凸模様102は、壁紙10に形成されている凹凸模様13をそのまま用いることができるため、新たに種々の凹凸模様を作り出す手間を省くことができ、新たに種々の凹凸模様を作り出すことによって発生するコストも発生することがない。
【0076】
なお、本実施形態においては、壁紙10を既成シートとして用いたが、本発明に係る製造方法においては、この形態に限定されるものではなく、既成の壁紙10に代えて、既成のテーブルクロスであってもよいし、その他既成のシート状のものであって、表面に微細なピッチで凹凸模様が形成されたものであれば、どのようなものであっても適用することができる。
【0077】
また、凹凸模様が予め形成されているのが、シート状のものではなく、シートよりも厚く、ある程度の強度を有する既成の立体物である場合は、本実施形態において、壁紙10を合板20に密着させて元型30を生成する工程に代えて、その既成の立体物そのものを元型30としてもよい。
【0078】
すなわち、表面に凹凸模様が予め形成された既成の立体物を元型30として用いた鋳造により、この元型30に対応した凹凸模様を有するシート用型40を生成して、その後の工程をおこなえばよい。
【0079】
なお、上述した包装用容器100が、1回使い切りの包装用容器(特に、食品包装用容器など)である場合は、上述したコスト抑制の効果を一層顕著なものとすることができる。
【0080】
また、本実施形態に係る包装用容器100の製造方法においては、凹凸模様13,42,53,81,102は、シボ模様であることが好ましい。
【0081】
シボ模様は、微細ピッチで繰り返される凹凸模様の代表的なものであり、このような微細ピッチで繰り返される凹凸模様は、放電加工やエッチング処理で対応しようとする場合に、より多くの手間とコストが掛かるため、本実施形態の製造方法によって奏される効果を一層顕著にすることができるからである。
【0082】
ただし、本発明に係る包装用容器およびその製造方法における凹凸模様は、上述した実施形態のような、凹凸の粒が微細ピッチで繰り返される凹凸模様や上記シボ模様に限定されるものではなく、好ましくは微細ピッチで凹凸が繰り返される模様であれば、どのような形態の凹凸模様であってもよく、例えば、凹の溝と凸の条とが微細なピッチ(1〜2[mm]以下程度の間隔)で複数、平行に配列された凹凸模様(断面が波状となる凹凸模様)などを適用することもできる。
【0083】
なお、本実施形態において、シート用型を生成する工程(図2)および製品用鋳型を生成する工程(図5)では、砂型を用いた鋳造の工程を例示したが、本発明に係る包装用容器の製造方法は、砂型鋳造法(Sand Mold Casting)に限定されるものではなく、石膏鋳造法(Plaster Casting)や、精密鋳造法(Precision Casting)であるシェルモールド鋳造法(Shell Mold Process, Shell molding)、インベストメント鋳造法(Investment Casting Process、ロストワックス鋳造法 Lost wax casting process)や、金型鋳造法(Metal Mold Casting)である重力鋳造法、ダイカスト法(Die Casting, Die-Casting)、低圧鋳造法(Low Pressure Casting)、高圧鋳造法(High Pressure Casting)など、種々の鋳造方法を適用することができる。
【0084】
ただし、砂型鋳造法は、他の鋳造法に比べて低コスト、かつ簡便に実現することができるため、コストを抑制するという本願発明の趣旨に沿うものであり、砂型鋳造を適用するのが好ましい。
【0085】
また、本実施形態における包装用容器100は、PSP95を、加熱、膨張させて形成される包装用容器であって、その表面101に、既成の壁紙10に予め形成されている凹凸模様13が、実質的に転写されているものであり、本発明に係る包装用容器の実施形態となる。
【0086】
そして、このように構成された本実施形態に係る包装用容器100によれば、PSP95を、加熱、膨張させて形成される包装用容器に、既成の壁紙10に予め形成されている凹凸模様13が実質的に転写されているものであるため、放電加工やエッチング処理によって凹凸模様が形成されたものよりも、大幅にコストが抑制されたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態に係る包装用容器の製造方法における、元型を生成する工程を説明する図であり、(a)は既成の壁紙、(b)は合板、(c)は元型、をそれぞれ示す。
【図2】本実施形態に係る包装用容器の製造方法において、シート用型を生成する工程を説明する図であり、(a),(b)は図1において生成された元型を用いて行う砂型鋳造の工程、(c)は砂型鋳造によって生成されたシート用型、をそれぞれ示す。
【図3】本実施形態に係る包装用容器の製造方法において、薄厚の樹脂シートに凹凸模様を転写する工程を説明する図であり、(a)は図2において生成されたシート用型に木枠を付加したもの、(b),(c)はシート用型に樹脂シートを密着させる工程、をそれぞれ示す。
【図4】本実施形態に係る包装用容器の製造方法において、製品用原型を生成する工程を説明する図であり、(a)は図3において生成された樹脂シート、(b)は製品用元型、(c)は製品用原型、をそれぞれ示す。
【図5】本実施形態に係る包装用容器の製造方法において、製品用鋳型を生成する工程を説明する図であり、(a),(b)は図4において生成された製品用原型を用いて行う砂型鋳造の工程、(c)は砂型鋳造によって生成された製品用鋳型、をそれぞれ示す。
【図6】本実施形態に係る包装用容器の製造方法により生成された、凹凸模様が転写された製品用鋳型を示す図である。
【図7】本実施形態に係る包装用容器の製造方法により生成された製品用鋳型を複数配列して、製品である包装用容器を、同時に多数個製造する工程を説明する図である。
【図8】本実施形態に係る包装用容器の製造方法において製造された包装用容器を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
10 既成の壁紙(既成シート)
13,81,102 凹凸模様
50 薄厚の樹脂シート
60 製品用元型
61 製品用元型の表面
70 製品用原型
80 製品用鋳型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体の表面に、凹凸模様が予め形成された既成シートを密着させて元型を生成し、
前記元型を用いた鋳造により、前記元型に対応した前記凹凸模様を有するシート用型を生成し、
生成された前記シート用型の前記凹凸模様を有する面に、薄厚の樹脂シートを加熱密着させて、前記樹脂シートに前記凹凸模様を転写し、
前記凹凸模様が転写された前記樹脂シートを、包装用容器を生成するための、前記包装用容器の概略形状が形成された製品用元型の表面に付着させて製品用原型を生成し、
前記製品用原型を用いて、前記製品用原型に対応した、前記転写された凹凸模様を有する製品用鋳型を生成し、
前記包装用容器の原材料である発泡性の合成樹脂シートを、前記製品用鋳型を用いて成形することを特徴とする包装用容器の製造方法。
【請求項2】
前記既成シートは、既成の壁紙(クロス)であることを特徴とする請求項1に記載の包装用容器の製造方法。
【請求項3】
前記凹凸模様は、シボ模様であることを特徴とする請求項1または2に記載の包装用容器の製造方法。
【請求項4】
前記薄厚の樹脂シートを前記シート用型に加熱密着させるのに先だって、前記シート用型に、前記凹凸模様を有する面からその背面まで貫通する通気孔を、所定間隔で複数形成し、
前記シート用型の前記凹凸模様を有する面に前記薄厚の樹脂シートを加熱密着させるに際して、前記背面側から吸引することを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載の包装用容器の製造方法。
【請求項5】
発泡性の合成樹脂シートを、加熱、膨張させて形成される包装用容器であって、その表面に、既成の壁紙(クロス)に予め形成されている凹凸模様が、転写されていることを特徴とする包装用容器。
【請求項6】
前記凹凸模様は、シボ模様であることを特徴とする請求項5に記載の包装用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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