説明

包装箱

【課題】 物品を包装箱に収納後、ホッチキスあるいは粘着テープなどを用いず、包装箱の上蓋を封緘することができる安価な包装箱を提供する。
【解決手段】 予め定めた形状に切断された一枚のシート材4を予め定めた折線に沿って折り曲げることにより、上蓋部、側壁部、底部を形成した包装箱2において、対向する右側壁部22、左側壁部62の上端より連接される第1右フラップ24、第1左フラップ64に差し込み片28、68を設け、対向する前側壁部42、後側壁部82の上端より連接される第2前フラップ44、第2後フラップ84にスリットを開設する。差し込み片28、68をスリットに挿入し、更に、その状態から第2前フラップ44及び第2後フラップ84を第1右フラップ24及び第1左フラップ64の上に押し下げて差し込み片28、68をスリット48、88に係合し、包装箱2の上蓋部を封緘する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、予め定めた形状に切断された一枚のシート材から組み立てられる包装箱に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の包装箱に物品を収納するときは、一般に、物品を包装箱に収納する前に包装箱の底部を構成する底部側フラップをホッチキスあるいは粘着テープなどで閉じ合わせ、物品を包装箱に収納した後、上蓋部を構成する蓋部側フラップを再びホッチキスあるいは粘着テープなどで封緘する方法が用いられている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、この方法では、ホッチキス装着用の道具が必要となる上ホッチキスのコスト分だけ包装箱としての製造原価が増加するという問題があった。また、ホッチキスを使用する場合は、ホッチキスの針によって収納する物品の傷付やホッチキスを使用する場所によってはホッチキス装着作業に危険を伴うという問題もあった。特に、収納する物品が農作物の場合、農場にて農作物を従来の包装箱に収納するためには、ホッチキス装着用の道具を農場まで運搬する必要があり、例えば、足場が不安定な畑やあぜ道などでのホッチキス装着作業に危険を伴うことがあった。その上、農作物のホッチキスによる傷付という問題もあった。更に、ホッチキスの針が誤って包装箱のなかに落下するという可能性もあった。
【0004】
ホッチキスの代わりに粘着テープが用いられることがあるが、この場合も粘着テープのコスト分だけ包装箱の製造原価が増加するという問題があった。また、粘着テープの場合はテーピング作業に時間に要する時間だけ作業効率が低下するという問題もあった。
【0005】
従って、本考案の目的は、物品を包装箱に収納後、ホッチキスあるいは粘着テープなどを用いず、包装箱の上蓋部を封緘することができる安価な包装箱を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段及び考案の効果】
上記目的を達成するために、本考案による包装箱は、予め定めた形状に切断された一枚のシート材からなる箱体の前後左右の側壁部と、前記側壁部の上端より連接され前記側壁部の上端で前記側壁部の内側へ折り曲げられ前記箱体の上蓋部を構成するフラップとを備え、前記フラップが対向する一組の前記側壁部の上端より連接される第1フラップと、対向する他の一組の前記側壁部の上端より連接される第2フラップとからなる包装箱において、前記第1フラップには差し込み片が設けられ、前記第2フラップには上蓋部をなすよう前記第2フラップを折り畳む際に前記差し込み片と係合可能なスリットが設けられ、前記差し込み片を前記スリットに挿入し、更に、その状態から前記第2フラップを前記第1フラップの上に押し下げることにより、前記差し込み片が前記スリットに係合され前記上蓋部が封緘されることを特徴とする。
【0007】
このように構成すると、前記第2フラップを前記第1フラップの上に押し下げることにより、前記差し込み片が前記スリットに係合され前記上蓋部が封緘されるため、ホッチキスや粘着テープなどを使用する必要がない。従って、ホッチキスや粘着テープなどを使用しなくてすむ分だけ包装箱を安価に製造することができる。また、ホッチキス装着作業が無く収納作業に危険が伴わず、ホッチキスによる収納物品への傷付がない。更に、粘着テープを使用しないため、テーピング作業の時間が不要であるので収納作業の作業効率がよい。
【0008】
前記差し込み片が前記スリットに係止されるロック部を備えるとよい。
そうすると、前記差し込み片が前記スリットへ係合されると、前記ロック部が前記差し込み片を前記スリットにロックするので、前記差し込み片が前記スリットに一層強固に係合される。
【0009】
前記シート材が段ボール紙製であるとよい。
それにより、前記シート材が段ボール紙製であることから包装箱の重量を軽くすることができる。材料に安価な段ボール紙を用いると、包装箱自体を安価に製造することができる。しかも、包装箱を廃棄しても包装箱全体が段ボール紙だけで形成されているため環境を汚染することが無い。
【0010】
【考案の実施の形態】
以下に、本考案の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本考案による包装箱の完成状態を示す斜視図である。図2は、図1の包装箱の下部構造を示す斜視図である。図3は、図1あるいは図2の包装箱を一枚のシート材に展開した展開形状を示す図である。
【0011】
図1〜図3を参照して包装箱2の構成について説明する。
包装箱2は、図3に示すように、予め定めた形状に切断された一枚のシート材4から組み立てられている。
包装箱2の側壁部は、前側壁部42、後側壁部82、右側壁部22、左側壁部62で構成されている。
【0012】
包装箱2の上蓋部を構成する蓋部側フラップは、対向する一組の第1右フラップ24と第1左フラップ64及び対向する他の一組の第2前フラップ44と第2後フラップ84とからなる。
包装箱2の底部を構成する底部側フラップは、対向する一組の第3右フラップ26と第3左フラップ66及び対向する他の一組の第4前フラップ46と第4後フラップ86とからなる。
【0013】
後側壁部82の左側壁部62の側とは反対側の端部から略帯状の糊代98が連接されている。前側壁部42と後側壁部82とは、後側壁部82に設けられた糊代98以外は同じ形状であるので、ここでは前側壁部42についてのみ説明し後側壁部82については説明を省略する。
【0014】
前側壁部42のほぼ中央部には、例えば、円形の通気穴52が設けられている。前側壁部42の下端に連接された第4前フラップ46にも、例えば、円形の通気穴50と半長円形の通気穴54が設けられている。
前側壁部42の上端に連接された第2前フラップ44の左右両端部近辺には、後述の差し込み片28、68を挿入するためのスリット48が2個開設されている。スリット48は、その長さ方向の一端に差し込み片28のロック部34を係止させるための段付部48aを備えている。
【0015】
次に、右側壁部22と左側壁部62とは同じ形状であるので、ここでは右側壁部22についてのみ説明し左側壁部62については説明を省略する。
右側壁部22のほぼ中央部には、包装箱2を持ち運ぶための長円形の指掛け穴30が設けられている。右側壁部22の下端に連接された第3右フラップ26には、例えば、円形の通気穴32が設けられている。
【0016】
同様に、右側壁部22の上端より連接される第1右フラップ24と左側壁部62の上端より連接される第1左フラップ64とは同じ形状であるので、ここでは第1右フラップ24に付いてのみ説明し第1左フラップ64については説明を省略する。
【0017】
第1右フラップ24には、第1右フラップ24の右側壁部22とは反対側の端部の前後両端に、第1右フラップ24の一部を切り欠いて成形された差し込み片28が2個設けられている。差し込み片28は、前述の第2前フラップ44に設けられたスリット48に係合する。即ち、差し込み片28の幅bがスリット48の幅aに等しくなる(b=a)ように作られている。差し込み片28にはロック部34が設けられている。ロック部34は前述のスリット48の段付部48aにロックされ、スリット48から外れ難いように係合される。
【0018】
また、第1右フラップ24の2個の差し込み片28の中間にあるフラップ部分の先端には切り欠き36が2個設けられている。切り欠き36を設けることにより、第2前フラップ44及び第2後フラップ84を第1右フラップ24及び第1左フラップ64に上から押し下げて封緘するとき、第2前フラップ44及び第2後フラップ84の内側面が第1右フラップ24及び第1左フラップ64のそれぞれ2個の差し込み片の間のフラップ部に直接接触しないため封緘時の抵抗が小さくなり、その結果として封緘作業が容易になる。
【0019】
更に、右側壁部22より連接される第1右フラップ24は、その幅を右側壁部22より狭くすることにより(図3のc寸法)、封緘後の第1右フラップ24の上方への反撥力が小さくなり、その結果として封緘作業が容易になる。
シート材4は、段ボール紙製であるから包装箱2の重量を軽くすることができるだけでなく、材料に安価な段ボール紙を用いると包装箱2自体を安価なものとすることができる。しかも、包装箱2を廃棄しても全体が段ボール紙のみで形成されているため環境を汚染することが無い。
【0020】
包装箱2を組み立てるには、図3に示すシート材4において、右側壁部22を折線35に沿って谷折りとなるように折り曲げる。ここで、谷折りとは紙面の上側が凹となるように折り曲げることを意味する。同様に、前側壁部42を折線55に沿って谷折りとなるように折り曲げる。そして、左側壁部62を折線75に沿って谷折りとなるように折り曲げる。更に、後側壁部82の折線75とは反対側の端部に設けられた糊代98を折線95に沿って谷折りとなるように折り曲げる。糊代98を右側壁部22の折線35とは反対側の端部の内側面に接着剤で接着すると、包装箱2の側壁部が形成される。
【0021】
次に、包装箱2の上蓋部を形成するために、第1右フラップ24を折線31に沿って右側壁部22の内側へ折り曲げる。同様に、第1左フラップ64を折線71に沿って左側壁部62の内側へ折り曲げる。また、第2前フラップ44を折線51に沿って前側壁部42の内側へ折り曲げ、第2後フラップ84を折線91に沿って後側壁部82の内側へ折り曲げる。その際、折り曲げられた第1右フラップ24と第1左フラップ64との間に、図1あるいは図2に示すような隙間を必要に応じて設けることができる。同様に、第2前フラップ44と第2後フラップ84との間にも図1あるいは図2に示すような隙間を必要に応じて設けることができる。このような隙間を通して、包装箱2の中の収納物を外側から見ることができる。収納物が農作物の場合、そのような隙間は包装箱2の外部との間の通気穴の役割を果たす。
【0022】
包装箱2の底部を形成するために、第3右フラップ26を折線33に沿って右側壁部22に直角に右側壁部22の内側へ折り曲げる。同様に、第3左フラップ66を折線73に沿って左側壁部62に直角に左側壁部62の内側へ折り曲げる。
【0023】
その後、第4前フラップ46を折線53に沿って前側壁部42に直角に前側壁部42の内側へ折り曲げる。同様に、第4後フラップ86を折線93に沿って前側壁部42に直角に前側壁部42の内側へ折り曲げる。
そして、折り曲げられた第4前フラップ46と第4後フラップ86が既に折り曲げられた第3右フラップ26と第3左フラップ66の下面に包装箱2の下側から接するように組み立てられると包装箱2の底部が形成される。
【0024】
折り曲げられた第4前フラップ46の折線53とは反対側の端部が、折り曲げられた第4後フラップ86の折線93とは反対側の端部と折り曲げられた状態で当接するように第4前フラップ46及び第4後フラップ86の長さを予め定めておく。そうすると、包装箱2の底部に隙間が生ずることがなく収納される物品が包装箱2から脱落することがない。
【0025】
第3右フラップ26の通気穴32と第4前フラップ46の通気穴50とは組み立てられた状態で上下方向に重なるように予めその位置を定めておく。また、通気穴32の直径を通気穴50の直径より大きくすることにより包装箱2の組立寸法誤差を吸収することができる。従って、第3右フラップ26が第4前フラップ46に重ねられた場合、少なくとも通気穴50の大きさの通気穴が確保される。
第4前フラップ46の半長円形の通気穴54と第4後フラップ86の半長円形の通気穴94とによって長円形の通気穴が包装箱2の底部に形成される。
【0026】
この状態で、第4前フラップ46と第4後フラップ86とをホッチキスあるいは粘着テープなどで結合する。収納する物品の重量に応じて必要であれば、更に第3右フラップ26と第3左フラップ66とを第4前フラップ46と第4後フラップ86とにホッチキスあるいは粘着テープなどで結合してもよい。
【0027】
次に、包装箱2を使用するには、組み立てられた包装箱2の第2前フラップ44と第2後フラップ84とを第1右フラップ24と第1左フラップ64との上に押し付け、差し込み片28、68の先端部をスリット48、88から離脱しない程度にスリット48、88に挿入し、更にその状態から第2前フラップ44と第2後フラップ84とを第1右フラップ24と第1左フラップ64との上に押し下げることにより、差し込み片28、68をスリット48、88に係合し包装箱2の上蓋部を封緘する。封緘後は、差し込み片28のロック部34がスリット48の段付部48aに係止され、差し込み片28がスリット48に係合され外れ難くなっている。
【0028】
差し込み片28、68がスリット48、88に係合されるだけで包装箱2の上蓋部が封緘されるため、ホッチキスや粘着テープなどを使用する必要がない。従って、ホッチキスや粘着テープなどを使用しない分包装箱2を安価に製造することができる。ホッチキス装着作業が無いので収納作業が安全である上、ホッチキスによる収納された物品への傷付がない。更に、粘着テープを使用しないため、テーピング作業に要する時間が不要であるので包装箱2への収納作業の作業効率がよい。
【0029】
また、上蓋部を構成する第1右フラップ24と第1左フラップ64及び第2前フラップ44と第2後フラップ84が封緘されたとき、段ボール紙の弾性力により、僅かに上方に開いた状態となる。従って、包装箱2は、例えば、白菜などの農作物の収納に特に適している。これは、白菜などの葉先が上蓋部で傷付くことが無く、また、白菜の葉先が常に包装箱2の外の外気に触れているためである。
【0030】
以上、本考案の実施例を説明したが、本考案はこれに限定されず、本考案の要旨を逸脱しない範囲内で種々の態様を採用することができる。
例えば、本実施例では、第1右フラップ24、第1左フラップ64に差し込み片28、68をそれぞれ設け、第2前フラップ44、第2 後フラップ84にスリット48、88をそれぞれ開設した場合について説明したが、第1右フラップ24、第1左フラップ64にスリットをそれぞれ開設し、第2前フラップ44、第2 後フラップ84にそれぞれ差し込み片を設けることもできる。
【0031】
また、本実施例では、前後左右の側壁部22、62、42、82で形成される包装箱2の形状を直方体としたが、直方体形状に限定されることはなく、例えば、立方体形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 包装箱の完成状態を示す斜視図である。
【図2】 包装箱の下部構造を示す斜視図である。
【図3】 包装箱を一枚のシート材に展開した展開形状を示す図である。
【符号の説明】
・・・包装箱、4・・・シート材、22・・・右側壁部、24・・第1 右フラップ、26・・・第3右フラップ、28・・・差し込み片、30・・・指掛け穴、31・・・折線、32・・・通気穴、34・・・ロック部、35・・・折線、36・・・切り欠き、42・・・前側壁部、44・・・第2前フラップ、46・・第4前フラップ、48・・・スリット、48a・・・段付部、50・・・通気穴、51・・・折線、52・・・通気穴、53・・・折線、54・・・通気穴、55・・・折線、57・・・折線、62・・・左側壁部、64・・・第1左フラップ、66・・第3左フラップ、68・・・差し込み片、70・・・指掛け穴、71・・・折線、72・・・通気穴、73・・・折線、74・・ロック部、75・・・折線、82・・・後側壁部、84・・・第2後フラップ、86・・・第4後フラップ、88・・・スリット、90・・・通気穴、91・・・折線、92・・・通気穴、93・・・折線、94・・・通気穴、95・・・折線、97・・・折線、98・・・糊代

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 予め定めた形状に切断された一枚のシート材からなる箱体の前後左右の側壁部と、前記側壁部の上端より連接され前記側壁部の上端で前記側壁部の内側へ折り曲げられ前記箱体の上蓋部を構成するフラップとを備え、前記フラップが対向する一組の前記側壁部の上端より連接される第1フラップと、対向する他の一組の前記側壁部の上端より連接される第2フラップとからなる包装箱において、前記第1フラップには差し込み片が設けられ、前記第2フラップには上蓋部をなすよう前記第2フラップを折り畳む際に前記差し込み片と係合可能なスリットが設けられ、前記差し込み片を前記スリットに挿入し、更に、その状態から前記第2フラップを前記第1フラップの上に押し下げることにより、前記差し込み片が前記スリットに係合され前記上蓋部が封緘されることを特徴とする包装箱。
【請求項2】 前記差し込み片が前記スリットに係止されるロック部を備えることを特徴とする、請求項1記載の包装箱。
【請求項3】 前記シート材が段ボール紙製であることを特徴とする、請求項1または2記載の包装箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【登録番号】実用新案登録第3090618号(U3090618)
【登録日】平成14年10月2日(2002.10.2)
【発行日】平成14年12月20日(2002.12.20)
【考案の名称】包装箱
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願2002−3478(U2002−3478)
【出願日】平成14年6月10日(2002.6.10)
【出願人】(000229494)日本ハイパック株式会社 (4)
【出願人】(000201641)全国農業協同組合連合会 (69)