説明

包装袋及び包装体

【課題】表裏2枚のフィルムを重ねて底シール部と側シール部を設け、表側フィルムをZ字状に折り曲げた折り込み部に蒸気抜き孔と剥離容易性シール閉鎖線を設けてなる包装袋で、電子レンジ加熱の際、突沸による飛び出しを防ぎながら、加熱に伴う水蒸気を放出して包装袋の破裂を防止する、という利点を生かしながら、シール閉鎖線でイージーピールテープの省略を可能とした包装体を提供すること。
【解決手段】 シール閉鎖線dを蒸気抜き孔xを囲む孔周辺部d1と弧状アーチ部d2とで構成し、アーチ部d2を側シール部に近づくにつれて谷折り線2bに近づくように、かつ、側シール部aにいたるまで設け、孔周辺部のシール強度をアーチ部のシール強度以下とする。加熱による内圧の上昇に伴い、剥離しようという応力が孔周辺部に集中し、しかも、そのシール強度が小さいため、孔周辺部が剥離して、突沸を起すことなく、蒸気抜き孔から水蒸気を放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等を収容する包装袋に関し、特には、電子レンジ等の加熱手段を用いて加熱した時、発生する蒸気の力で蒸気抜き口を開く蒸気抜き機能を有する包装袋とそれを用いた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調理済のあるいは半調理済の食品等を耐熱性のプラスチックフィルムからなる包装袋に充填して、食する直前に電子レンジにより加熱して調理する包装食品が広く市販されるようになってきている。
【0003】
このような加熱調理用の包装食品は、開封せずにそのまま電子レンジで加熱すると、加熱時に食品から発生する蒸気などで内圧が上昇することにより、包装袋が破裂して内容物が飛散し、電子レンジの内部を汚染してしまうことがある。
【0004】
このため、電子レンジで加熱する前に、予め包装袋に、例えば、ハサミ等を用いて小さい通気孔などを開けて、或いは袋の一部を切り取って、包装袋内部の内圧の上昇を抑えて包装袋の破裂を防止していた。
【0005】
しかしながらこの方法では、加熱後発生する水蒸気は,直ぐに包装袋の外に放出されてしまうため、水蒸気による蒸し調理効果が低減されるとともに包装袋内部の食品の乾燥が進行して、食品の劣化をきたす場合がある。
【0006】
そのために、例えば、積層フィルムを筒状にして、そのフィルムの対向する両端部の同一面側を合掌状に互いに重ね合わせ、その重ね合わせ面を、その長手方向の全長に亘って、その一部領域に易剥離領域を形成してヒートシールにて接合し、このヒートシール部が包装袋の上側に位置するように製袋した包装体がある(特許文献1)。
【0007】
この包装袋は、加熱により袋内部の蒸気圧力が上昇したときに、ヒートシール部102の一部領域に設けた易剥離領域が剥離して蒸気抜きして、その蒸気圧力の逃げ圧を行うことができるようにしたものとされている。
【0008】
また、包装袋を構成するフィルムの一部に通気性のフィルムを使用する工夫も提案されている(特許文献2)。
【0009】
さらに、包装袋の背シール部の一部領域に狭いシール幅で形成した狭幅シール部を設け、その狭幅シール部の領域内で切り込みをして、袋内圧の上昇で開くことのできる開口が形成されるようにした工夫も提案されている(特許文献3)。
【0010】
包装袋のフィルムのヒートシールされた一部を易剥離状態として蒸気抜きが行えるようにした包装袋は別素材を用いないことから製造する上で有利であるが、この包装袋を採用しても、加熱後の状況を見ると、包装袋のヒートシール部の一部領域に設けた易剥離領域に内容物の飛散が発生するため、完全な状態での内容物の飛散を回避し、電子レンジ内部の汚損を回避できるとは言い難いものである。
【0011】
これに対し、特許文献4に記載の包装体は、包装体を構成するフィルムの一部を山折り線と谷折り線によってZ字状に折り曲げて折り込み部を設け、この折り込み部に蒸気抜き孔を設けると共に、蒸気抜き孔の周囲に易剥離シール部分を設け、この易剥離シール部分
によって前記蒸気抜き孔を内容物収納室から区分した包装体が記載されている。そして、前記易剥離シール部分は、内板面部と外板面部との間にイージーピールテープを挟んで、剥離容易にヒートシールされているため、この包装体を電子レンジで加熱すると、加熱に伴う内圧の上昇により前記易剥離シール部分が剥離されて内容物収納室が前記蒸気抜き孔に連通し、この蒸気抜き孔から内容物収納室内の水蒸気を包装体外部に放出する。そして、この特許文献4に記載の包装体では、前記易剥離シール部分は、その端部が山折り線に達して、しかも、蒸気抜き孔を囲む形状に設けられていることから、内容物収納室の内圧が上昇したとき、折り込み部の山折り端に向けたシール後退(易剥離シール部分の剥離の進み)が抑えられて、蒸気抜き口を通る蒸気の流れを規制できるようになり、突沸による固形内容物の飛び出しを防ぐことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−150864号公報
【特許文献2】特開平10−129748号公報
【特許文献3】特開平11−278557号公報
【特許文献4】特許第4586728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述のように、特許文献4に記載の包装体は、加熱に伴う内圧の上昇により蒸気抜き孔が開口して水蒸気を放出するから、包装袋の破裂を防止し、しかも、突沸による固形内容物の飛び出しも防止できるという優れたものである。
【0014】
しかしながら、この包装体の易剥離シール部分において、内板面部と外板面部との間にイージーピールテープを挟んでいるため、その製造工程の管理及び製造コストの面で改良の余地を残している。
【0015】
本発明は、特許文献4に記載の包装体の利点、すなわち、突沸による固形内容物の飛び出しを防ぎながら、加熱に伴って内圧が一定の圧力まで上昇したとき、その水蒸気を放出して包装袋の破裂を防止できる、という利点を生かしながら、しかも、その製造条件を改良することにより、イージーピールテープの省略を可能とした包装体と、これに適する包装袋を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち、請求項1に記載の発明は、表裏2枚のフィルムを重ね、天シール予定部を除き、その周囲をシールして底シール部と側シール部を設けてなる包装袋において、
表側のフィルムには、底シール部の近傍で、底シール部と平行な山折り線と谷折り線によりZ字状に折り曲げて折り込み部が設けられており、かつ、この折り込み部は底シール部の近傍に設けられており、
この山折り線と谷折り線との間の部分を内板面部とし、山折り線を介してこの内板面部に対して連続している部分を外板面部とするとき、これら内板面部と外板面部とは対面しており、
前記折り込み部の内板面部又は外板面部には蒸気抜き孔が設けられており、
前記折り込み部にはシール閉鎖線が設けられており、このシール閉鎖線は前記内板面部と外板面部とを直接シールすることにより線状に設けられたものであり、かつ、このシール閉鎖線によって、前記蒸気抜き孔を内容物収納室から分離しており、
前記シール閉鎖線が、前記蒸気抜き孔を囲む孔周辺部と、この孔周辺部と側シール部とをつなぐアーチ部とで構成されており、
孔周辺部は、前記底シール部と平行な線分と、この線分の両側に位置して、前記底シー
ル部に交差する方向に伸びる2本の線分とで構成されるUの字形状を有していて、このU字形状の向きは谷折り線に向けて凸となるように配置されており、
アーチ部は、底シール部に交差する方向に伸びる前記線分の端部を始点として側シール部にいたる弧状を有していて、側シール部に近づくにつれて谷折り線に近づく方向に傾斜しており、かつ、この傾斜は側シール部にいたるまで続いており、
前記孔周辺部のシール強度が、前記アーチ部のシール強度以下であることを特徴とする包装袋である。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、前記アーチ部のヒートシール回数が前記孔周辺部のヒートシール回数より多いことを特徴とする請求項1に記載の包装袋である。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、孔周辺部のシール強度が15N/15mm〜60N/15mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装袋である。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の包装袋に内容物を収納し、天シール予定部を封止して成る包装体である。
【発明の効果】
【0020】
前述のように、本発明は、突沸による固形内容物の飛び出しを防ぎながら、加熱に伴って内圧が一定の圧力まで上昇したとき、その水蒸気を放出して包装袋の破裂を防止できる、という利点を生かしながら、しかも、その製造条件を改良して、イージーピールテープの省略を可能としたものである。
【0021】
本発明においては、まず、折り込み部には設けられたシール閉鎖線の形状を工夫した。すなわち、本発明におけるシール閉鎖線は2種類の部分から構成されている。すなわち、孔周辺部とアーチ部である。
【0022】
孔周辺部は蒸気抜き孔を囲むU字形状に形成されている。U字形状その向きは、谷折り線に向けて凸となるような向きである。また、アーチ部は、孔周辺部の左右両側に位置し、の端部を始点として側シール部にいたる弧状を有している(なお、特許文献4に記載の易剥離シール部分は、その端部が山折り線に達しており、側シール部には到達していない)。しかも、アーチ部は、側シール部に近づくにつれて谷折り線に近づく方向に傾斜しており、かつ、この傾斜は側シール部にいたるまで続いている。
【0023】
このようなシール閉鎖線によれば、電子レンジ加熱によって内圧が上昇したとき、アーチ部が側シール部に近づくにつれて谷折り線に近づく方向に傾斜しており、かつ、この傾斜は側シール部にいたるまで続いているため、その内圧の全体が中央位置の孔周辺部に集中する。そして、孔周辺部は谷折り線に向けて凸となるように配置されているから、谷折り線方向から山折り線方向に向けて、孔周辺部の剥離が進行する。
【0024】
次に、本発明においては、孔周辺部とアーチ部のシール強度について工夫した。すなわち、内圧の集中する孔周辺部のシール強度を、アーチ部のシール強度以下とした。このため、電子レンジ加熱によって内圧が上昇したとき、アーチ部を剥離することなく、孔周辺部を選択的に剥離して、この孔周辺部に囲まれた蒸気抜き孔を開口することが可能となる。
【0025】
孔周辺部のシール強度は、アーチ部のシール強度より小さいことが望ましい。しかしながら、後述する実施例から明らかなように、孔周辺部のシール強度は、アーチ部のシール強度と同一であってもかまわない。なお、孔周辺部のシール強度は15N/15mm〜60N/15mmであることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の包装袋を構成する表側のフィルムの折り曲げ方を説明するための説明用断面図
【図2】本発明の包装袋を構成する表側のフィルムの各部分を説明するための説明用要部拡大断面図
【図3】本発明の包装袋の説明用正面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、表裏2枚のフィルムによって構成される包装袋である。このほか、例えば、イージーピールテープなどを要しない。
【0028】
本発明の包装袋は、前記表裏2枚のフィルムを重ね、天シール予定部を除き、その周囲を互いにシールして底シール部と側シール部を設けて構成されるものである。これら2枚のフィルムを重ねる際、表側のフィルムは、Z字状に折り曲げた状態で裏側のフィルムに重ねられる。この折り曲げ方については、図面の図1を参照して説明する。また、折り曲げた表側フィルムの各部の名称を説明するため、要部を拡大した図2を参照する。これら図1〜2においては、包装袋の天地を逆にして図示している。図1〜2のいずれにおいても、包装袋の上方が底部、下方が天シール予定部である。
【0029】
本発明の包装袋においては、図1に示すように、表側フィルム2は、Z字状に折り曲げた状態で裏側フィルム1に重ねられる。すなわち、表側フィルム2は、まず、山折り線2aによって折り曲げられ、次に、谷折り線2bによって折り曲げられる。この山折り線2aと谷折り線2bはいずれも、底シール部bの近傍に位置している。また、これら山折り線2aと谷折り線2bはいずれも、後述する底シール部bと平行に設けられている。なお、山折り線2aと谷折り線2bとの間の部分を内板面部222と呼んでいる。また、山折り線2aを介してこの内板面部222に対して連続している部分を外板面部221と呼んでいる。
【0030】
次に、こうして山折り線2aと谷折り線2bによって折り曲げられた部分は、内板面部222と外板面部221とが対面した折り込み部22を構成している。このため、こうしてZ字状に折り曲げた表側フィルム2を裏側フィルム1に重ねると、折り込み部22を有する部分では、内板面部222及び外板面部221を含む4枚のフィルムが積層されることになる。また、この折り込み部22より天シール予定部に近い位置では、表側フィルム2の上部21と裏側フィルム1が重ねられる。また、この折り込み部22より底部に近い位置では、表側フィルム2の下部23と裏側フィルム1が重ねられる。
【0031】
そして、Z字状に折り曲げた表側フィルム2と裏側フィルム1とをこのように重ね合わせた状態で、天シール予定部cを除き、その周囲を熱圧して底シール部bと側シール部aを設ける。なお、側シール部aについて説明を補うと、折り込み部22を有する部分では、内板面部222と外板面部221が互いにシールされ、また、表側フィルム2の下部23と裏側フィルム1とが互いにシールされるが、内板面部222と表側フィルム2の下部23とは互いにシールされることなく、分離したままである。このため、後述するように電子レンジ加熱して内圧が上昇すると、折り込み部22の内部(内板面部222と外板面部221の間)に加熱された空気や水蒸気は入り込んで膨張し、膨張した折り込み部22が裏側フィルム1に対して垂直な方向に立ち上がることになる。
【0032】
なお、折り込み部22を有する部分の側シール部aについて、内板面部222と表側フィルム2の下部23とをシールすることなく、内板面部222と外板面部221とをシールし、かつ、内板面部222と表側フィルム2の下部23とをシールするため、裏側フィルム1及び表側フィルム2を、基材フィルムの内面側にシーラント層を積層した積層フィルムで構成することが望ましい。この場合、内板面部222と外板面部221とは、そのシーラント層同士が対面する。このため、ヒートシール時の熱圧によって、これら内板面部222と外板面部221と互いにシールされる。また、表側フィルム2の下部23と裏側フィルム1とは、そのシーラント層同士が対面する。このため、前記熱圧によって、これら表側フィルム2の下部23と裏側フィルム1も互いにシールされる。これに対して、内板面部222と表側フィルム2の下部23とは、その基材フィルム同士が対面する。このため、ヒートシール時の熱圧によっても、これらがシールされることはない。
【0033】
次に、図3に示すように、折り込み部22の一部には蒸気抜き孔xが設けられている。この蒸気抜き孔xは、内板面部222と外板面部221のどちらに設けられていてもよいが、図3では外板面部221に設けられている。また、その形状は任意であるが、表側フィルム2を貫通している必要がる。
【0034】
次に、この折り込み部22の一部にはシール閉鎖線dが設けられている。このシール閉鎖線dは、前記内板面部222と外板面部221との間にイージーピールテープを挟むことなく、これら内板面部222と外板面部221とを直接シールすることにより線状に設けられたものである。また、このシール閉鎖線は、前記蒸気抜き孔xを内容物収納室21から分離する機能を果たしている。
【0035】
そして、このシール閉鎖線dは、大別して、3つの部分から構成されている。すなわち、前記蒸気抜き孔xを囲む孔周辺部d1と、この孔周辺部の両側に配置された2つのアーチ部d2である。
【0036】
孔周辺部d1は、更に3つの部分に区分することができる。すなわち、底シール部bと平行な線分d11と、この線分d11の両側に位置して、前記底シール部bに交差する方向に伸びる2本の線分d12である。そして、これら3本の線分d12,d11,d12によって、孔周辺部d1は、全体として、Uの字形状を有している。そして、このUの字は、谷折り線2bに向けて凸となる向きに配置されている。このため、後述するように電子レンジ加熱して内圧が上昇すると、谷折り線2bから山折り線2aの方向に向けてシール閉鎖線dを開いて折り込み部22を膨張させようとする応力が発生する。ところで、シール閉鎖線dのうち孔周辺部d1は、全体として、谷折り線2bに向けて凸となるU字形状をしているから、この理由からも、その応力は孔周辺部d1に集中する。
【0037】
次に、アーチ部d2は、底シール部に交差する方向に伸びる前記線分d12の端部を始点として側シール部aにいたるなだらかな弧状を有している。そして、その「弧」の傾斜方向は、側シール部aに近づくにつれて谷折り線2bに近づく方向である。この傾斜は側シール部aにいたるまで続いており、この理由からも、電子レンジ加熱して内圧が上昇したとき、シール閉鎖線dを開こうとする応力は、孔周辺部d1に集中する。
【0038】
すなわち、アーチ部d2が、側シール部aにいたるまで、側シール部aに近づくにつれて谷折り線2bに近づく方向に傾斜しており、しかも、孔周辺部d1が谷折り線2bに向けて凸となるU字形状をしているため、この両方の理由に基づいて、シール閉鎖線dを開こうとする応力が孔周辺部d1に集中するのである。
【0039】
次に、本発明の包装袋においては、孔周辺部d1のシール強度が、アーチ部d2のシール強度以下である必要がある。前述のように、電子レンジ加熱して内圧が上昇したとき、シール閉鎖線dを開こうとする応力は、孔周辺部d1に集中する。このとき、その応力により確実に孔周辺部d1を剥離して蒸気抜き孔xを開口するためである。仮に孔周辺部d1のシール強度がアーチ部d2のシール強度より高い場合、アーチ部d2が先に剥離して
、孔周辺部d1が剥離しないことがある。
【0040】
孔周辺部d1のシール強度は、アーチ部d2のシール強度より小さいことが望ましい。しかしながら、アーチ部d2のシール強度と同一であってもかまわない。また、シール強度は、これを15mmの短冊状に切断し、引っ張り試験機で測定したシール強度で評価することができる。電子レンジで加熱したとき、確実に蒸気抜き孔xを開口して包装体の破裂を防ぐため、孔周辺部d1のシール強度は15N/15mm〜60N/15mmであることが望ましい。
【0041】
次に、シール閉鎖線dのヒートシールは、前記底シール部bと側シール部aのヒートシール工程とは別の工程で行うことが望ましい。シール閉鎖線dのヒートシール工程と、底シール部bと側シール部aのヒートシール工程のいずれの工程を先に行なってもかまわない。
【0042】
シール閉鎖線dのヒートシールは、アーチ部d2のヒートシール回数を孔周辺部d1のヒートシール回数d1より多くして行なうことが望ましい。例えば、アーチ部d2を3回熱圧してヒートシールした後、孔周辺部d1を1回熱圧してヒートシールする方法である。また、アーチ部d2を2回熱圧してヒートシールした後、アーチ部d2と孔周辺部d1とを含むシール閉鎖線d全体を1回熱圧してヒートシールする方法である。熱圧の順序はこれに限らず任意である。また、熱圧の回数もこれに限らない。孔周辺部d1やアーチ部d2のヒートシールは、例えば190℃〜230℃に加熱したシールバーを所定の位置に押圧することによって可能である。
【0043】
次に、本発明に係る表裏のフィルム1,2について説明する。これら表側フィルム2及び裏側フィルム1は、互いに、同一のフィルムであってもよく、異なるフィルムであってもよい。また、単体のフィルムから構成されていてもよく、複数のフィルムを積層した積層フィルムであってもよい。望ましくは、非ヒートシール性の基材フィルムの内面側にシーラント層を積層した積層フィルムである。
【0044】
基材フィルムとしては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−αオレフィン共重合体など)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリイミドなど)などプラスチックフィルムが例示できる。これらプラスチックフィルムは、無延伸フィルムであってもよいが、延伸されたフィルムを使用することが望ましい。より望ましくは、2軸延伸フィルムである。
【0045】
また、これらプラスチックフィルムは、添加物を含有するものであってもよい。例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤である。また、これらプラスチックフィルムは、その表面にコロナ放電処理やアンカーコート処理などの表面処理が施されたものであってもよい。
【0046】
次に、これらプラスチックフィルムに金属や無機化合物の薄膜を積層したフィルムを基材フィルムとして使用することも可能である。金属の薄膜としては、例えば、アルミニウムの薄膜を代表例として例示できる。また、無機化合物の薄膜としては、酸化ケイ素の薄膜や酸化アルミニウムの薄膜を代表例として例示できる。これらは、いずれも、真空蒸着、スパッタリング、CVDなどの気相製膜法によって製膜することができる。
【0047】
また、シーラント層としては、熱融着性のあるフィルムが使用できる。包装体内部の食品と直接接触することから、ポリオレフィン系プラスチックを材質とするものが望ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−αオレフィン共重合体などである。無延伸フィルムであることが望ましい。
【0048】
これら基材フィルムとシーラント層とは、例えば、ドライラミネ−ト法によって積層することができる。
【0049】
次に、本発明の包装袋を使用して包装体を製造する方法及びその包装体の使用方法について説明する。
【0050】
すなわち、前記包装袋の天シール予定部cの開口から内容物を充填してその天シール予定部cをヒートシールすることで、天シール部cにてシールされた包装体が得られる。この包装体では、電子レンジに折り込み部22が上方となるように水平に置いて加熱調理し、袋内部で温度上昇によって空気が膨張したり蒸気が発生して内圧が上昇して袋が膨らんだときには、上述したように折り込み部22に気体又は水蒸気が入り込んで内板面部222と外板面部221との間が開き、この折り込み部22が裏側フィルム1に対して垂直な方向、すなわち、鉛直方向に立ち上がる。そして、シール閉鎖線dで谷折り線2bから山折り線2aの方向に向けて剥離が進み、蒸気抜き孔xが開放され、この開放された蒸気抜き孔xから蒸気が外部に排出されるようになる。よって、包装体は破裂することがなく、また、突沸による固形内容物の飛び出しも防いで、電子レンジの庫内を汚すことない。また、蒸気抜きが適正に行われ続けるため、適正な圧力の状態が一度に無くなるということがなく、蒸らし効果などを調理物に加えることができる。
【実施例】
【0051】
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。
【0052】
(実施例1〜11)
裏側フィルム1及び表側フィルム2として、基材フィルムにシーラントフィルムを積層した積層フィルムを使用した。
【0053】
この基材フィルムも多層構造を有するもので、まず、気相製膜法によって厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化アルミニウムの薄膜を製膜し、得られた蒸着フィルムの酸化アルミニウムの薄膜側を、ドライラミネート法によって、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルムに接着して、基材フィルムとした。
【0054】
そして、シーラントフィルムとして厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンを使用し、ドライラミネート法によって、前記基材フィルムのナイロン面に接着して積層フィルムとした。
【0055】
次に、表側フィルム2の所定位置に貫通孔を設けて蒸気抜き孔xとした。この蒸気抜き孔xの位置は、予定された底シール部bの近傍である。
【0056】
次に、表側フィルム2を山折り線2aによって折り曲げ、続いて、谷折り線2bによって折り曲げることにより、表側フィルム2をZ字状に折り曲げて、折り込み部22を形成した。この折り込み部22は、山折り線2aは挟んで互いに対面した外板面部221と内板面部222とで構成されるものである。そして、前記蒸気抜き孔xは外板面部221に位置し、しかも、山折り線2aの近くに位置するようにした。
【0057】
次に、Z字状に折り曲げられた表側フィルム2のシーラントフィルムを裏側フィルム1のシーラントフィルムに重ね、天シール予定部を除いて、その周囲を互いにシールして底シール部bと側シール部aを設けた。なお、折り込み部22を有する部分では、内板面部222のシーラントフィルムと外板面部221のシーラントフィルムが互いにシールされ
、また、表側フィルム2の下部23のシーラントフィルムと裏側フィルム1のシーラントフィルムとが互いにシールされるが、内板面部222と表側フィルム2の下部23とは互いに、基材フィルムが対面しているため、シールされることなく、分離したままであった。
【0058】
そして、次に、図3に示すシール閉鎖線dのうち、予定される孔周辺部d1の両側に位置する2本のアーチ部d2をヒートシールした。このヒートシールは、それぞれ、表1に示すヒートシール温度に加熱したシールバーをアーチ部d2に押圧することによって行なった。なお、押圧は2回行なった。1回目のヒートシールの際のシールバーの温度(ヒートシール温度)と、2回目のヒートシール温度は同一である。
【0059】
例えば、実施例1では、温度を190℃としたシールバーを押圧して1回目のヒートシールを行い、続いて、温度を同じ190℃としたシールバーを押圧して2回目のヒートシールを行った。
【0060】
なお、実施例1〜5においては、1回目のヒートシールの際のヒートシール温度も、2回目のヒートシールの際のヒートシール温度も190℃である。また、実施例6〜8においては210℃であり、実施例9〜11においては230℃である。
【0061】
なお、図3に示すように、アーチ部d2は、予定される孔周辺部d1から側シール部aまで延びる円弧状の部分であり、孔周辺部d1から側シール部aに近づくにつれて、単調に谷折り線に近づく方向に傾斜するなだらかな曲線形状を有している。
【0062】
そして、最後に、孔周辺部d1とアーチ部d2とを含むシール閉鎖線dの全体をヒートシールした。
【0063】
このシール閉鎖線d全体のヒートシールは、それぞれ、表1に示すヒートシール温度に加熱したシールバーをシール閉鎖線dに押圧することによって行なった。なお、押圧は1回である。
【0064】
このため、実施例1においては、アーチ部d2には、190℃(1回目)、190℃(2回目)、190℃(3回目)の計3回、加熱したシールバーが押圧され、ヒートシールされたことになる。これに対し、孔周辺部d1のヒートシールは1回だけ、すなわち、190℃(3回目)だけである。
【0065】
また、実施例2においては、アーチ部d2には、190℃(1回目)、190℃(2回目)、200℃(3回目)の計3回、加熱したシールバーが押圧され、ヒートシールされたことになる。これに対し、孔周辺部d1のヒートシールは1回だけ、すなわち、200℃(3回目)だけである。
【0066】
なお、実施例1〜5においては、3回目のヒートシール温度を10度ずつ上げてヒートシールを行なった。すなわち、3回目のヒートシール温度は、実施例1では190℃、実施例2では200℃、実施例3では210℃、実施例4では220℃、実施例5では230℃である。
【0067】
また、実施例6〜8においては、3回目のヒートシール温度を20度ずつ上げてヒートシールを行なった。すなわち、3回目のヒートシール温度は、実施例6では190℃、実施例7では210℃、実施例8では230℃である。実施例9〜11においても、同様に、3回目のヒートシール温度を20度ずつ上げてヒートシールを行なった。すなわち、3回目のヒートシール温度は、実施例9では190℃、実施例10では210℃、実施例11では230℃である。
【0068】
そして、得られた実施例1〜11の孔周辺部d1のシール強度と、アーチ部d2のシール強度とを測定した。シール強度の測定は、実施例1〜11の孔周辺部d1を幅15mmの短冊状に切断し、引っ張り試験機で測定したシール強度で評価した。この結果を表1に示す。
【0069】
次に、これら実施例1〜11の包装袋について、電子レンジ加熱した際の評価を行なった。すなわち、まず、実施例1〜11の包装袋に水50mlを収納し、天シール予定部cをヒートシールして包装体とした後、電子レンジ中で加熱して、その蒸気抜き孔xが開口して水蒸気を放出することができるか否か、また、水蒸気の放出の際に突沸による固形内容物の飛び出しがないかどうかを評価した。蒸気抜き孔xが開口して水蒸気を放出することができ、しかも、突沸による固形内容物の飛び出しがない場合を○と評価した。
【0070】
なお、この電子レンジ加熱の評価は、各実施例について、サンプル数を3として(N=3)として行なった。その評価結果も併せて表1に示す。
【0071】
【表1】

この表から分かるように、本願発明に係る包装体は、イージーピールテープを省略して、内板面部と外板面部とを直接シールしているにも拘らず、蒸気抜き孔xが開口して水蒸気を放出することができ、しかも、突沸による固形内容物の飛び出しが生じない。
【符号の説明】
【0072】
1 裏側フィルム
2 表側フィルム
22 折り込み部
221 外板面部
222 内板面部
2a 山折り線
2b 谷折り線
a 側シール部
b 底シール部
c 天シール予定部
d シール閉鎖線
d1 孔周辺部
d11 底シール部と平行な線分
d12 底シール部に交差する方向に伸びる線分
d2 アーチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏2枚のフィルムを重ね、天シール予定部を除き、その周囲をシールして底シール部と側シール部を設けてなる包装袋において、
表側のフィルムには、底シール部の近傍で、底シール部と平行な山折り線と谷折り線によりZ字状に折り曲げて折り込み部が設けられており、かつ、この折り込み部は底シール部の近傍に設けられており、
この山折り線と谷折り線との間の部分を内板面部とし、山折り線を介してこの内板面部に対して連続している部分を外板面部とするとき、これら内板面部と外板面部とは対面しており、
前記折り込み部の内板面部又は外板面部には蒸気抜き孔が設けられており、
前記折り込み部にはシール閉鎖線が設けられており、このシール閉鎖線は前記内板面部と外板面部とを直接シールすることにより線状に設けられたものであり、かつ、このシール閉鎖線によって、前記蒸気抜き孔を内容物収納室から分離しており、
前記シール閉鎖線が、前記蒸気抜き孔を囲む孔周辺部と、この孔周辺部と側シール部とをつなぐアーチ部とで構成されており、
孔周辺部は、前記底シール部と平行な線分と、この線分の両側に位置して、前記底シール部に交差する方向に伸びる2本の線分とで構成されるUの字形状を有していて、このU字形状の向きは谷折り線に向けて凸となるように配置されており、
アーチ部は、底シール部に交差する方向に伸びる前記線分の端部を始点として側シール部にいたる弧状を有していて、側シール部に近づくにつれて谷折り線に近づく方向に傾斜しており、かつ、この傾斜は側シール部にいたるまで続いており、
前記孔周辺部のシール強度が、前記アーチ部のシール強度以下であることを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記アーチ部のヒートシール回数が前記孔周辺部のヒートシール回数より多いことを特徴とする請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
孔周辺部のシール強度が15N/15mm〜60N/15mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装袋。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の包装袋に内容物を収納し、天シール予定部を封止して成る包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−47108(P2013−47108A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185800(P2011−185800)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】