説明

化合物の溶解度決定法

一個以上の酸性基か塩基性基含有化合物の溶解度決定法を提供する。この方法はそこにある該化合物固体で飽和溶液近似物を作成し、pH変化が一定速度になるまで一定間隔でテスト溶液のpHを測定し、既知分割量の塩基性滴定液か酸性滴定液をテスト溶液に加えてpH勾配を調製し、且つ測定pHが符号を変えるまでステップ(b)と(c)を繰り返すことを含む。測定pH勾配をゼロに内挿したときの溶液中の非イオン化化合物濃度を決めて化合物溶解度を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化合物の溶解度決定法に関する。特に本発明は一個以上の酸性基か塩基性基を有する有機化合物溶解度のより迅速な決定法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物溶解度の決定は分析化学ラボでの日常業務に必要である。その決定は例えばその多くが水溶液中で水素イオンと反応する一個以上の酸性基や塩基性基を含む新規薬化合物や農薬化合物の開発評価に通常必要である。
【0003】
伝統的な溶解度決定法は規定pHで既知容積の蒸留水に既知質量の化合物を添加することに依存する。生成溶液を平衡状態に達するまでかき混ぜ(例えば攪拌)する。平衡化溶液試料を次いで除去して、既知分析法で溶解度を決定する。この伝統的な方法の問題は平衡状態到達に必要な時間が長時間、ある場合には48時間以上になることも珍しくないことである。従ってそのプロセスは望ましくないほど遅い。更にこのような長時間を通して環境因子により試験溶液が影響されることも珍しくない。例えば大気中の二酸化炭素が溶液に溶解して炭酸を生成し、その結果そのpHに影響するかもしれない。或いは化合物自身が環境劣化(例えば大気中酸素による酸化の結果)を受けやすくなる。それ故、概して溶解度のより迅速な決定法を提供することは効率と精度の観点から望ましい。
【0004】
溶解度決定でのpH計法は文献に記載されている。pH計溶解度文献1:“ビエルムプロットでの溶解度−pH特性。固体状態でのギブス緩衝液とpK”(Solubility-pH Profile from Bjerrum Plots. Gibbs Buffer and pKa in the Solid State)、ファルマスーティカルアンドファルマコロジカルコミュニケーション(Pharm Pharmacol Commun)、1998年、4巻165−178頁;pH計溶解度文献2:酸−塩基滴定と飽和振盪−フラスコ溶解度−pH法間の相関(Correlation Between the Acid-Base Titration and the Saturation Shake-Flask Solubility-pH Methods)、ファルマスーティカルリサーチ(Pharmaceutical Research)、2000年、17巻、85−89頁。実際にはこの方法は通常実施に6から8時間を必要とし、それ故伝統法をわずかに超える進歩を表すに過ぎない。
【0005】
この出願者は一個以上の酸性基か塩基性基含有化合物の溶解度の伝統法やpH計法より遙かに迅速な決定法を開発した。典型的な溶解度決定は1時間以内(例えば30分から60分)で実施でき、その結果プロセス効率に大きな利益をもたらし、結果になにか影響する環境要素の可能性を低減する。この方法は貧溶解性化合物にさえ使用でき、容易に自動化される。更に本発明の方法は特に低溶解度化合物の評価でより伝統法で通常使用する共溶媒を必ずしも用いる必要がない。
【0006】
伝統的な溶解度決定法は例えば以下の文献に記載されている。論文“プロスタグランジンF2α(トロメタミン塩)の生理化学的性質:溶解度挙動、表面物性及びイオン化定数(Physiochemical Properties of Prostaglandin F2α (Tromethamine Salt): Solubility Behavior, Surface Properties and Ionization Constants)、ジャーナルオブファルマシューティカルサイエンス(Journal of Pharmaceutical Sciences)、1973年、62巻、1680−5頁”には平衡到達に48時間を要し、48時間中にpH3かそれ以下で環境劣化が認められる対象プロスタグランジン薬物の溶解度決定法が記載されている。論文”弱酸と弱塩基のpH溶解度特性の一般処理、2報、両性化合物を用いる溶解度特性の温度依存性による熱力学的パラメーターの評価(General treatment of pH solubility profiles of weak acids and bases. II. Evaluation of thermodynamic parameters from the temperature dependence of solubility profiles applied to a zwitterionic compound)、インターナショナルジャーナルオブファルマシューティックス(International Journal of Pharmaceutics)、1985年、25巻、135−145頁“には平衡状態到達に3から5日が必要な溶解度決定法が記載されている。
【0007】
本発明の目的は一個以上の酸性基か塩基性基含有化合物の既知法よりも、より有効な溶解度決定法を提供することである。
【0008】
本発明の目的は一個以上の酸性基か塩基性基を有する薬化合物か農薬化合物の既知法よりも、より迅速な溶解度決定法を提供することである。
【発明の開示】
【0009】
本発明の第一態様によると、一個以上の酸性基か塩基性基含有化合物の溶解度決定法を提供し、
(a)そこにあるこの化合物固体で該化合物の飽和溶液近似物作成し、
(b)pH変化が一定速度になるまで一定間隔でテスト溶液のpHを測定し、pH変化の該定速度勾配を測定し、
(c)pH勾配調製のために既知分割量の塩基性滴定液か酸性滴定液をテスト溶液に加え、
(d)測定pH勾配の符号を変るまでステップ(b)と(c)を繰り返し、
(e)測定pH勾配をゼロに内挿したときの溶液中の非イオン化化合物濃度として化合物溶解度を求めることからなる。
【0010】
該法の第一段階ではそこにある化合物固体で該化合物飽和溶液の近似物を新たに作成する必要がある。“飽和溶液の近似物”とはわずかに亜飽和かわずかに過飽和のいずれかの飽和点(このpHで)に近い溶液を意味する。そこにある化合物はその塩よりはむしろ化合物固体である必要がある。
【0011】
そこにある固体の飽和溶液近似物は任意の適法で作成できる。そこにある固体の飽和溶液近似物を作成する適法の一つは、
(i)既知容量の水と既知量の該化合物を滴定容器に加えてテスト溶液を形成し、
(ii)任意にこの化合物をイオンの形で完全に溶解するようにpHを調製するに十分な容量の塩基性滴定液か酸性滴定液を該テスト溶液に加え、その結果超高濃度溶液を作りだし、
(iii)非イオン化化合物がテスト溶液から沈殿し始めるまで一個以上の既知分割量の酸性滴定液か塩基性滴定液をテスト溶液に加え、
(iv)任意に一個以上の追加既知分割量の酸性滴定液か塩基性滴定液をテスト溶液に加えて、非イオン化化合物がテスト溶液から更に沈殿を起こす手続きを含む。
【0012】
この方法のステップ(c)又は上のステップ(ii)から(iv)で加える酸性滴定液か塩基性滴定液の性質は溶解度を調べる化合物が酸性基か塩基性基のいずれかを有するか否かにより決定されることが分かる。この化合物が酸性基を有する一般的条件では、塩基性滴定液を加えて溶解させ、酸性滴定液を加えて沈殿させる。この化合物が塩基性基をもつ場合には、酸性滴定液を加えて溶解させ、塩基性滴定液を加えて沈殿させる。
【0013】
従って一個以上の酸性基含有化合物のそこにある固体で飽和溶液近似物を作成する適法は、
(i)既知容量の水と既知量の該化合物を滴定容器に加えてテスト溶液を形成し、
(ii)任意にこの化合物をイオンの形で完全に溶解するようにpHを調製するに十分な容量の塩基性滴定液を該テスト溶液に加え、その結果超高濃度溶液を作り出し、
(iii)非イオン化化合物がテスト溶液から沈殿し始めるまで一個以上の既知分割量の酸性滴定液をテスト溶液に加え、
(iv)任意に一個以上の追加既知分割量の酸性滴定液をテスト溶液に加えてテスト溶液から非イオン化化合物を更に沈殿させる手続きを含む。
【0014】
一個以上の塩基性基含有化合物のそこにある固体で飽和溶液近似物を作成する適法は、
(i)既知容量の水と既知量の該化合物を滴定容器に加えてテスト溶液を形成し、
(ii)任意にこの化合物をイオンの形で完全に溶解するようにpHを調製するに十分な容量の酸性滴定液を該テスト溶液に加え、その結果超高濃度溶液を作り出し、
(iii)非イオン化化合物がテスト溶液から沈殿し始めるまで一個以上の既知分割量の塩基性滴定液をテスト溶液に加え、
(iv)任意に一個以上の追加既知分割量の塩基性滴定液テスト溶液に加えて非イオン化化合物がテスト溶液から更に沈殿を起こす手続きを含む。
【0015】
この方法は一個以上の酸性基か塩基性基含有化合物の溶解度決定に適する。ある態様では化合物は塩基性基のみを含有する。又は酸性基のみを含有する。或いは酸性基と塩基性基の両者(例えば両性化合物)を含有する。
【0016】
この方法は(a)溶解が起こるに十分な割合の化合物がイオン化するのに利用できるpH範囲が存在するか、(b)十分な割合の化合物がイオン化せず沈殿できるのに利用できるpH範囲の存在に依存する。
【0017】
酸性基と塩基性基は水溶液中で水素イオンと反応する。水溶液中で水素イオンと反応する酸性基又は塩基性基含有化合物をここでは“イオン化可能溶質”と呼ぶ。化合物は遊離酸か遊離塩基として導入でき、又酸か塩基の塩(例えばナトリウム塩)として導入しても良い。
【0018】
多くの薬化合物と農薬化合物はカルボン酸、フェノール、アミンやピリジンのような一個以上の酸性基か塩基性基を含有する。この方法はこの薬化合物の溶解度決定に特に適する。
【0019】
この方法は広範囲の溶解度、通常100ng/mlから30mg/ml範囲の化合物の溶解度決定に適する。溶解度を容易に測定できる化合物の範囲を広げるために共溶媒を用いても良い。
【0020】
この方法は又溶解度が1μg/ml以下の化合物のような低溶解度の化合物の溶解度決定に適する。
【0021】
イオン化可能溶質(例えば弱酸)AHの水溶液中での解離は
AH水溶液 −> A水溶液+H水溶液
で表せる。
ここでAH水溶液とA水溶液は“種”と呼ぶ。
固体の溶解は
AH固体 −> AH水溶液
で表せる。
【0022】
イオン化可能溶質の“飽和溶液”はここでは溶質を不溶解形で含有し且つ平衡にある溶質溶液と定義する。飽和溶液は所定温度、イオン強度及びpHバックグランドでのこの溶液に溶解する最大濃度の溶質を含有する。
【0023】
“固有溶解度”という用語はここでは溶質飽和溶液でのイオン化可能溶質の非イオン化種濃度と定義する。イオン化可能溶質の固有溶解度は水溶液の所定温度とイオン強度バックグランドに対して定数である。
【0024】
“超高濃度溶液”はここでは溶質が主としてイオン化しているpHでは溶質は完全に溶解し、溶質が主として非イオン化しているpHにpHを調製すると非イオン化形の溶質が沈殿するように十分な重量の溶質を含有するイオン化可能溶質溶液と定義する。
【0025】
“過飽和溶液”はここでは溶液中の非イオン化種濃度が固有溶解度より高い超高濃度溶液と定義する。過飽和溶液は平衡状態ではない。過飽和溶液は酸性滴定液か塩基性滴定液を迅速に加えて溶質がイオン化しているpHからイオン化していないpHへとイオン化溶質溶液のpHを変化して生ずることができる。溶液中の核生成部位に沈殿を形成するのには時間を要し、それ故溶液中の非イオン化種濃度は系が平衡に達するまで固有溶解度を一時的に超えられる。
【0026】
“亜飽和溶液”はここでは非イオン化種濃度が固有溶解度より低い超高濃度溶液と定義する。
【0027】
この方法は一個以上の酸性基か塩基性基含有化合物のそこにある化合物(即ちイオン化可能溶質)固体で飽和溶液近似物を先ず作成する必要がある。一態様では超高濃度溶液を形成するに十分量のイオン化可能溶質を正確に滴定容器に秤量する。他態様では秤量容量の前もって作成した超高濃度溶液を正確に滴定容器にピペットで移す。次いで両態様で、秤量容積(例えば10ml)の水又は不活性電解質水溶液(例えば0.15M塩化カリウム)をテスト溶液が超高濃度溶液のままであるようにこの滴定容器に加える。共溶媒(例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンや任意の他の水混和性有機溶媒)を任意にこのテスト溶液に加える。この作成テスト溶液の容積と濃度を記録する。
この化合物を完全にイオン形で溶解するために、この方法で化合物を完全溶解するpHに調製するに十分な容積の塩基性滴定液か酸性滴定液を該テスト溶液に任意に加える必要がある。特にこの化合物が塩として導入する場合、試料は導入対イオン量が分かるように完全に溶解する必要がある。
【0028】
沈殿させるために次いでこの方法でこの化合物がテスト溶液から沈殿し始めるまで一個以上の既知分割量の酸性滴定液か塩基性滴定液をテスト溶液に加える必要がある。沈殿は通常目視法か分光法(即ちテスト溶液が曇り出す)で検出する。
【0029】
この方法の後段階での実施を有効にするに十分な沈殿を確保するために、この方法で化合物がテスト溶液から更に沈殿を起こすまで一個以上の既知追加分割量の酸性滴定液か塩基性滴定液をテスト溶液に加える必要がある。
【0030】
そこにある化合物固体で飽和溶液近似物が一旦生成すると、この方法は次いでpH変化が一定速度になるまで一定間隔でテスト溶液のpHを測定し、pH変化の該定速度勾配を測定するこが必要である。
【0031】
既知分割量の塩基性滴定液か酸性滴定液をついでこのテスト溶液に加えpH勾配を調製する。実際にはこの段階によりテスト溶液は沈殿との平衡により近づくように働く。
【0032】
pH勾配測定と塩基性滴定液か酸性滴定液ステップを測定pH勾配の符号が変わるまで繰り返す。この化合物の溶解度は測定pH勾配をゼロに内挿したときの溶液中の非イオン化化合物濃度として求める。この決定には通常溶液中の非イオン化化合物濃度(この化合物とテスト溶液の既知特性を参考にして計算)をpH勾配に対してグラフに描き、内挿を用いてpH勾配ゼロでの値を同定する必要がある。
【0033】
続く計算段階で十分なデータポイントを与えるように、この方法の手続き少なくとも1回、好ましくは2回から8回繰り返すことが好ましい。
【0034】
本発明の方法を模範実験室で実施する場合、明確な5段階が想定される。これらの段階をここでは“溶解”、“沈殿の追求”、“追加の沈殿”、“平衡の追求”及び“再溶解”段階と記載する。本発明法の核心は“平衡の追求”段階であることが分かる。適切にはこの方法中溶液のpHを測定し、この方法中このテスト溶液を混合(例えば攪拌により)する。混合速度はこの方法の異なる段階で変わっても良い。
【0035】
1.溶解段階
既知容積の水と既知重量の該化合物を滴定容器に取ってテスト溶液を形成する。イオン化可能溶質がイオン形で完全に溶解するように、秤量容積の酸性滴定液か塩基性滴定液(例えば標準化0.1M塩酸、0.1M苛性カリ)をテスト溶液に加えてpHを調節する。イオン化可能溶質が酸である場合には、塩基性滴定液を加えてpHを調製する。イオン化可能溶質が塩基である場合には、酸性滴定液を加えてpHを調製する。テスト溶液はpH調整後濁ってはいけない。“溶解”段階で加える標準化酸又は塩基の容量を記録する。
【0036】
2.沈殿の追求
この段階は“溶解”段階でpHを調製した後に起こる。試験溶液が曇りだし、貧溶解性非イオン化種が沈殿したことを示すまで、秤量分割量の塩基性滴定液か酸性滴定液を加えてテスト溶液を滴定する。滴定液使用量を記録する。この段階での添加分割量容積を計算して沈殿点が約1pH単位以上越えることなしに迅速に滴定できる。
【0037】
沈殿の発生は目視しても良い。しかし分光光度計に接続の分光器ディッププローブを用いて沈殿の発生を検出するのがより便利である。イオン化溶質溶液が沈殿物の存在しない任意のpHで光を殆ど吸収しないか全く吸収しない波長を選ぶ。最初の沈殿物出現は沈殿物による光吸収か光散乱で起こるその波長での急激な透過光量低下を認めることで検出する。ディッププローブ使用によりテストを監視するのに人が居合わす必要がないので、溶解度分析の自動化を可能にする。
【0038】
良い実施の事実として該出願者は出発化合物が遊離酸、遊離塩基又は遊離両性電解質(即ちこの化合物の塩でない)として利用できる場合、この化合物全部を溶解し次いで沈殿させる必要がないことを見いだした。化合物が一部イオン化するpHで化合物の一部を溶解し、溶液と接触して飽和に近い溶液の必要条件に到達し、次いで直接アッセイの“平衡の追求”段階に進んでも良い。
【0039】
3.追加の沈澱
この任意の段階では“沈殿の追求”段階で使用したのと同じ滴定液の追加分割量を加え、pHが更に既定増分だけ(例えば0.5pH単位)変化するか、一定時間が経過(例えば60秒)するまでテスト溶液のpHを記録する。“追加の沈殿”段階の目的はこの方法の次段階で十分な沈殿が存在することを保証することである。
【0040】
4.平衡の追求
アッセイの終点は本発明法の核心部である“平衡の追求”での決定である。この段階で酸性滴定液か塩基性滴定液を過飽和テスト溶液か亜飽和テスト溶液に加え、平衡に近づくか遠ざかるようにする。
【0041】
“平衡の追求”段階ではpH変化が一定速度になるまでテスト溶液のpHを一定間隔で測定する。既知分割量の塩基性滴定液か酸性滴定液をテスト溶液に加えてpH勾配を調製し、次いでこのpH変化速度勾配の変化が一定速度と再度分かるまで測定する。測定pH勾配が符号を変えるまで(即ち正勾配から負勾配へ、或いはその逆に)これらの段階を繰り返す。
【0042】
測定pH勾配がゼロに内挿したときの溶液中の非イオン化化合物濃度としてこの化合物の溶解度を求める。この決定には通常溶液中の非イオン化化合物濃度(化合物とテスト溶液の既知特性を参考にして計算)をpH勾配に対してグラフに描き、内挿を用いてpH勾配ゼロでの値を同定する必要がある。
【0043】
“平衡の追求”段階のステップはこの化合物の溶解度計算が確信できるに十分なデータポイントを得るに十分に、少なくとも1回、好ましくは2回から8回適切に繰り返す。第一反復で塩基をテスト溶液に加えてpH勾配に必要な符号変化を起こした場合、第二反復では次いで通常酸を加える(逆も同様である)ことが分かる。毎回勾配が符号を変えると、この化合物の溶解度を決定できる。溶解度の複数測定を得るために通常複数の勾配変化を起こす。
【0044】
“平衡の追求”段階中pH応答挙動と溶解度計算をより詳細に以下に示す。
【0045】
良い実施の事実として、該出願者は平衡を追求するときpH変化を小さく保つようにすることが有効であることを見いだした。使用酸性滴定液と塩基性滴定液は通常高濃度(0.5M)であり、系に緩衝がない場合溶液のpHに大きな変化をもたらしうる。このpHの大きな変化は化合物のイオン化で大きな変化をもたらし、最終結果で起こりうる誤りの大きさを大にするので好ましくない。
【0046】
この滴定がpHの約9以上か約5以下で起こる場合、水による十分な緩衝が期待できる。中程度の溶解性化合物は通常その化合物のpKa近くで沈殿し、次いで滴定がそのpKa近くで起こり、この化合物のpKaにより必要な緩衝が与えられる。
【0047】
非常に難溶な化合物では、pHがpKaから遙かに遠くても化合物は沈殿しうる。これがpH7から数単位以内のpHである場合、濃厚滴定液を用いてpHを厳密に制御するには緩衝が不十分である。この場合には予期沈殿pH近くのpKaを有する弱酸か弱塩基が緩衝として働く量を添加するのが有効である。これを通常非常に難溶な化合物と併せて用いるので、塩沈殿による問題を避けることは重要であり、酸性緩衝液だけを酸性化合物と共に使用する必要があり、塩基性緩衝液のみを塩基性化合物と共に使用する必要がある。
【0048】
5.再溶解
この段階はこの方法に合致する溶解度値を計算するための十分なデータを収集した後に起こる。“再溶解”段階ではテスト溶液のpHをイオン化可能溶質が完全にイオン化する値に調製し、溶液をイオン化可能溶質が溶解しながらそのpHに維持する。この段階の目的は以後のアッセイでの実行を妨げる結晶や固体試料が器具に残らないことを保証することである。“再溶解”後プローブをいずれかの以後の活動をする前に洗浄する。
【0049】
この方法は適切にプログラム化したコンピュータ制御のもとで作動するように設定した完全自動ラボ装置で使用するのに適する。
本発明のさらなる態様によると、実行用ソフトウェアコード部位からなり、実行可能な使用者入力を要求するディジタルコンピュータからなる分析ラボ装置で用い、該プログラムを該ディジタルコンピュータで動かす場合に上述の方法のソフトウェアが実施可能手続きからなるコンピュータソフトウェア製品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
該発明を添付図面を参照して更に説明する。
【0051】
次いでこの図面を参照して、図1ではこの方法による化合物の溶解度決定に用いるに適した装置を示す。滴定容器10はテスト試料12を受け入れるように配置する。滴定容器10をチューブ20を通して供給するアルゴンのような不活性ガス雰囲気下に配置する。不活性ガスの目的は大気中二酸化炭素の除去である。適切にはこの不活性ガスは任意に発生する二酸化炭素を除去するように常に補充する。
【0052】
攪拌棒30をモーター(図示しない)と連結し、その回転速度をコンピュータプログラムにより制御する。分注先端40を細い管で作り、既知容積の液体を少量で再現性のある分割量を送れるポンプ(図示しない)と連結する。ポンプはコンピュータプログラム制御で働く。温度センサー50を温度測定用装置に連結する。pH電極60をpH測定用装置に連結し、pH読みが正しいことを保証するように較正する。分光器ディッププローブ70を光ファイバー束(図示しない)により光発生装置と分光光度計(図示しない)に連結する。
【0053】
図2にラボ設定で必要な入力に応じて連結した図1の装置を示す。
【0054】
図2に示すようにチューブ20を不活性ガス供給22と連結して滴定容器10環境に不活性ガス雰囲気を作る。攪拌モーター32をその駆動回転用攪拌棒30と連結する。ポンプ42を既知容積の液体を少量で再現性のある分割量を送れる供給用分注先端40と連結する。温度測定用装置52を温度センサー50と連結する。pH測定用の適切に較正された装置62をpH電極60と連結する。分光光度計と光発生装置72を光ファイバー束により分光器ディッププローブ70と連結する。全体の組み立てをモーター32、ポンプ42、温度測定装置52、pH計62及び分光光度計72と連結したコンピュータ80制御下で自動化するように配置する。
【0055】
この方法を薬化合物のジクロフェナクに関する溶解度決定を参照して説明する。ジクロフェナクは遊離酸として分子量296.1のカルボン酸である。
【0056】
先ず化学式量318.1のジクロフェナクナトリウム塩を0.00556g秤量し、0.15M塩化カリウム溶液10mLを加えて超高濃度テスト溶液を作成した。
【0057】
溶解、沈殿の追求及び追加の沈殿
この方法の“溶解”、“沈殿の追求”及び“追加の沈殿”段階をジクロフェナクテスト溶液を用いて行い、図3に示す。
【0058】
“溶解”段階でテスト溶液を塩基性滴定液で滴定する。“沈殿の追求”及び“追加の沈殿”段階ではこのテスト溶液を酸性滴定液で滴定する。
【0059】
非イオン化溶質がジクロフェナクのような酸の過飽和溶液から沈殿すると、滴定液を加えないと溶液中の非イオン化種AH水溶液濃度が減少するためpHは増加する。非イオン化溶質が沈殿する間に酸性滴定液を加えると、“追加の沈殿”段階に示すようにpH低下が強いられる。
【0060】
平衡の追求
“追加の沈殿”段階での最終データポイント収集後、この方法は“平衡の追求”段階に移行する。酸性試料に関する“平衡の追求”は以下の原理に基づく。
【0061】
非イオン化種の沈殿が起こった後には、イオン化可能溶質は三つの可能状態の内の一つとなる。
1.この溶液は過飽和であり、溶解非イオン化種AH水溶液が沈殿する。滴定液を加えなく且つこの溶液が溶解炭酸塩か二酸化炭素を含有してない場合、pHは溶液が平衡に達するまで増加する。
2.この溶液は亜飽和であり、沈殿非イオン化種AH固体が溶解する。滴定液を加えなく且つ溶液が溶解炭酸塩か二酸化炭素を含有してない場合、pHは溶液が平衡に達するまで減少する。
3.この溶液は平衡状態である。
【0062】
上の事例1と事例2から平衡時のpHを決定することは理論的には可能であるが、以下の二つの理由で実際には困難である。溶液が完全平衡に達するには非常に長時間(例えば数時間)が必要であり、二酸化炭素と炭酸塩を滴定容器から除去するのは非常に困難である。
【0063】
二酸化炭素は水溶液により空気から容易に吸収し、炭酸溶液を形成する。吸収速度、脱着速度、従って二酸化炭素濃度はpHと共に変化する。炭酸のプロトン化度は又pHと共に変化する。その結果空気に暴露した全ての水溶液の測定pHは予測が困難な形で二酸化炭素により影響される。
【0064】
従って本発明によると、分割量の酸性滴定液か塩基性滴定液を過飽和溶液か亜飽和溶液に加えて平衡に近づけるか遠ざける“平衡の追求”を用いる。二酸化炭素を完全に除去するのは困難であるが、その存在を不活性雰囲気で作業して最小化する。
【0065】
“平衡の追求”中のpH応答
“平衡の追求”を理解するために先ず酸か塩基をイオン化可能溶質の沈殿物含有溶液に加えたときのpH電極の応答を調べる必要がある。三つの例を考察する。各例でpH電極は三つのタイプの応答、短期応答、多変量応答及び持続性応答を示す。
【0066】
(a)塩基性滴定液の非イオン化過飽和溶液への添加
図4で分割量の塩基滴定液を時間=0で加え、pH変化が確定方向で安定速度に達するまでpHを一定時間間隔(例えば1秒に1回)で測定記録する。
【0067】
より詳細には図4に非イオン化試料が沈殿している過飽和溶液に塩基性滴定液を添加後の一定時間間隔(例えば毎秒)で測定したpHを示すpH応答曲線を示す。
【0068】
図4でpH電極が溶液の数個の異なる物性に応答することが分かる。この曲線の区域1では、溶液に添加の遊離塩基滴定液に対する応答を示す。まもなく遊離塩基滴定液は溶解溶質と反応し始める。区域2ではpH電極は溶解溶質のイオン化、溶質の沈殿、二酸化炭素の吸収/脱着、炭酸のプロトン化と脱プロトン化及びpH電極の応答時間により支配される多変量応答を示す。区域1と区域2を支配する反応は約60秒後に定常状態に達する。区域3ではpH電極は主として試料が沈殿すると起こるpHの増加に応答する。この持続性応答曲線の多数の最終pH点(例えば15点)の線形適合が要求値(例えばr=0.95)より高い場合、最終pHとその直線勾配を記録する。
【0069】
(b)塩基性滴定液の非イオン化亜飽和溶液への添加
図5で分割量の塩基滴定液を時間=0で加え、pH変化が確定方向で安定速度に達するまでpHを一定時間間隔(例えば1秒に1回)で測定記録する。
【0070】
図5により詳細に非イオン化試料が溶解している亜飽和溶液に塩基性滴定液を添加後の一定時間間隔(例えば毎秒)で測定したpHを示すpH応答曲線を示す。
【0071】
図5でpH電極は溶液の数個の異なる物性に応答する。この曲線の区域1では溶液に添加の遊離塩基滴定液に対する応答を示す。まもなく遊離塩基滴定液は溶解溶質と反応し始める。区域2ではpH電極は溶解溶質のイオン化、溶質の溶解、二酸化炭素の吸収/脱着、炭酸のプロトン化と脱プロトン化及びpH電極の応答時間により支配される多変量応答を示す。区域1と区域2を支配する反応は約60秒後に定常状態に達する。区域3ではpH電極は主として試料が溶解すると起こるpHの低下に応答する。この持続性応答曲線の多数の最終pH点(例えば15点)の線形適合が要求値(例えばr=0.95)より高い場合、最終pHとその直線勾配を記録する。
【0072】
(c)酸性滴定液の非イオン化過飽和溶液への添加
図6で分割量の酸性滴定液を時間=0で加え、pH変化が確定方向で安定速度に達するまでpHを一定時間間隔(例えば1秒に1回)で測定記録する。
【0073】
より詳細には図6に非イオン化試料が沈殿している過飽和溶液に酸性滴定液を添加後の一定時間間隔(例えば毎秒)で測定したpHを示すpH応答曲線を示す。
【0074】
図6でpH電極は溶液の数個の異なる物性に応答する。この曲線の区域1では溶液に添加の遊離酸滴定液に対する応答を示す。まもなく遊離酸滴定液は溶解溶質と反応し始める。区域2ではpH電極は溶解溶質のイオン化、溶質の沈殿、二酸化炭素の吸収/脱着、炭酸のプロトン化と脱プロトン化及びpH電極の応答時間により支配される多変量応答を示す。区域1と区域2を支配する反応は約60秒後に定常状態に達する。区域3ではpH電極は主として試料が沈殿すると起こるpHの増加に応答する。この持続性応答曲線の多数の最終pH点(例えば15点)の線形適合が要求値(例えばr=0.95)より高い場合、最終pHとその直線勾配を記録する。
【0075】
平衡の追求時の監視
図7に“平衡の追求”の進展の監視を示す。持続性pH電極応答勾配(pH/分)を時間(秒)に対してプロットする。
【0076】
塩基性滴定液を過飽和テスト溶液に添加したときの第一の点を収集する。コンピュータプログラムにより滴定液添加を制御する。勾配は添加塩基の各分割量と共に減少する。最後にはその勾配は符号を変え、溶液が亜飽和になったことを示す。追加分割量の塩基を加えて勾配が負であることを確認する。勾配が負のままであると、滴定液を非添加後に追加データポイントを取る。勾配が正になるまで分割量の酸を加え、この溶液が再度過飽和になったことを示す。分割量の塩基と酸を継続的に加えて、強制的にその勾配方向を変える。勾配がその方向を数回(例えば5回)変わると、この手続きの“平衡の追求”段階が完了したと考える。
【0077】
イオン化可能溶質の“再溶解”を次いで実施する。これはイオン化可能溶質が完全にイオン化する値にテスト溶液のpHを調製し、イオン化可能溶質を溶解しながらこのpHに溶液を保持して達成する。
【0078】
“再溶解”の目的は以後のアッセイでの実行を妨げる結晶や固体試料が器具に残らないことを保証することである。種々のプローブをいずれかの以後の活動を起こす前に洗浄する。
【0079】
テスト化合物溶解度の決定
溶液中の非イオン化溶質濃度を図7の各点に対して計算し、図8に示すように勾配(pH/分)に対してプロットする。この点を図7に見られるのと同じ順で線として繋ぐ。線が勾配(pH/分)軸のゼロ値を横切る所に対応する点を内挿して決定する。ゼロ勾配交差点に相当する濃度を決定する。次いで溶解度を数個のゼロ勾配交差点を用いて計算した平均濃度として得ることができる。
【0080】
テスト化合物溶解度値の計算
この方法を実施する前に以下のことが既知である。
(i)試料分子量
(ii)試料を塩として導入する場合分子量が異なる試料の化学式量
(iii)添加試料の重量
(iv)酸性滴定液と塩基性滴定液の濃度
(v)テスト化合物の酸性度定数(pK
各点で添加水の容量、酸性滴定液の容量及び塩基性滴定液の容量は既知であり、pHを測定により得る。
【0081】
ゼロ勾配交差のそれぞれの側にある各点に関して、溶液中の中性試料量を以下の手順で計算できる。
【0082】
1.アッセイの全容積は添加した水、酸性滴定液及び塩基性滴定液の和である。
=v+v+v
2.自由水素イオン濃度は
[H]=10−pH
3.自由水酸化物イオン濃度は
[OH]=K/[H
ここでKは水の酸性度定数(即ち10−14)。
【0083】
4.自由陽イオン(例えばK)濃度は塩基性滴定液(例えば苛性カリ)量に加えて、塩の場合はテスト化合物中のいずれかの陽イオン量から決定する。
[K]=(v+ms+/w)/v
ここでcは塩基性滴定液濃度、
はテスト化合物の試料重量、
s+はいずれかの塩の陽対イオンの電荷、
はテスト化合物の化学式量である。
【0084】
5.自由陰イオン(例えばCl)濃度は酸性滴定液(例えば塩酸)量に加えて、塩の場合は初期試料のいずれかの陰イオン量から決定する。
[Cl]=(v+ms−/w)/v
ここでcは酸性滴定液濃度、
はテスト化合物の試料重量、
s−はいずれかの塩の陰対イオンの電荷
はテスト化合物の化学式量である。
【0085】
6.イオン化試料濃度は次いで電荷バランス式から決定できる。例えばジクロフェナクのようなモノプロトン酸ではこれは単に脱プロトン種濃度である。
[X]=[H]−[OH]+[K]−[Cl
7.既知のpHとイオン化定数(pK)から溶液中の中性種を決定できる。
[X]=[H][X]/K
上記の計算手順の変形では、計算をより正確にするため多くの多因子(温度、イオン強度及び炭酸塩のような)を通常考慮するが、同じ基本手順に従う。
【0086】
ジクロフェナクに関する実施例計算
試験アッセイ開始時に以下の値が既知でアッセイ中一定である。
pK=14、K=1.00E−14
pK=3.98、K=1.05E−4
試料重量m=5.56mg
化学式量w=138.1g/モル
分子量w=296.1g/モル
塩基濃度c=0.1M/kg
酸濃度c=0.1M/kg
点A測定値
ゼロ勾配交差点の片側の第一点(“点A”)での測定値は以下の通りである。
水容量v=10.00000ml
酸容量v=0.19291ml
塩基容量v=0.03000ml
pH=5.64453
pH勾配=2.87E−05。
従って計算値は以下のようになる。
全容量v=10.22291ml
[H]=2.267E−06M
[OH]=4.411E−09M
[K]=2.003E−03M
[Cl]=1.887E−03M
[X]=1.185E−04M
[HX]=2.565E−06M
これにより溶解中性テスト試料の値として759ng/ml得られる。
【0087】
点B測定値
ゼロ勾配交差点の他の側の第二点(“点B”)での測定値は以下の通りである。
水容量v=10.00000ml
酸容量v=0.19291ml
塩基容量v=0.03125ml
pH=5.70437
pH勾配=−3.5E−06。
従って計算値は以下のようになる。
全容量v=10.22416ml
[H]=1.975E−06M
[OH]=5.063E−09M
[K]=2.015E−03M
[Cl]=1.887E−03M
[X]=1.304E−04M
[HX]=2.459E−06M
これにより溶解中性テスト試料の値として728ng/ml得られる。
【0088】
二点AとBのゼロ勾配への直線内挿によりジクロフェナクの平衡溶解度はおおよそ732ng/mlという回答を与える。図9にこの実施例での二点の交差点を強調する図8の一部を示す。
【0089】
この出願者は又記載の方法で収集したデータを用いて別の計算ができることを見いだした。従って沈殿速度及び/又は溶解速度をpH勾配から計算できる。他態様では沈殿及び/又は溶解中のpH勾配を用いて化合物の溶解度を決定できる。
【0090】
本開示は説明目的だけであり、該発明がその修正、変形及び改良で拡大できることが分かる。
【0091】
この明細書と特許請求の範囲からなる部分の適応は任意の後続の応用に関して優先権の基礎として用いることができる。その後続の応用に関する特許請求の範囲はここに記載のいずれかの特性か特性の組み合わせに向う。それらは製品、方法或いは使用請求の形を取っても良く、実施例により制限なしで以下の請求項の一つ以上を含む。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は本発明法に従って用いる滴定装置を示す。
【図2】図2は代表的ラボ設定に設置した図1の滴定装置を示す。
【図3】図3はこの適法の“溶解”、“沈殿の追求”と“追加の沈殿”段階でのテスト溶液の時間(秒)に対するpHの図を示す。
【図4】図4は塩基性滴定液を非イオン化酸性テスト化合物過飽和溶液に加えたこの適法の“平衡の追求”段階の一態様でのテスト溶液の時間(秒)対するpHのグラフを示す。
【図5】図5は塩基性滴定液を非イオン化酸性テスト化合物亜飽和溶液に加えたこの適法の“平衡の追求”段階の他態様でのテスト溶液の時間(秒)対するpHのグラフを示す。
【図6】図6は酸性滴定液を非イオン化酸性テスト化合物過飽和溶液に加えたこの適法の“平衡の追求”段階の一態様でのテスト溶液の時間(秒)対するpHのグラフを示す。
【図7】図7はこの適法の“平衡の追求”段階時のテスト溶液に関する時間に対するpH勾配(pH/分)の図を示す。
【図8】図8はこの適法の“平衡の追求”段階時のテスト溶液に関するpH勾配(pH/分)対する溶液中の非イオン化テスト化合物濃度(μg/ml)の図を示す。
【図9】図9はこの適法を用いて得たテスト溶液中のpH勾配(pH/分)に対する溶解テスト化合物の計算濃度の図を示す。
【符号の説明】
【0093】
図3から図9で以下の呼称を適応する。
A 最初に観察した沈殿
B 酸添加による強制的pHの減少
C 1.遊離塩基滴定液に対する短期応答。この小さい急勾配曲線は時々次の曲線に呑み込まれる。
D 2.多変量応答で通常60秒
E 3.AH(AH水溶液 −> AH固体)の沈殿と炭酸塩濃度変化に対する持続性応答
F 一定勾配が検出されたときにこの直線勾配が報告される。
G 3.AH(AH水溶液→AH固体)の溶解と炭酸塩濃度の変化に対する持続性応答
H 1.遊離酸滴定液に対する短期応答。この小さい急勾配曲線は時々次の曲線に呑み込まれる。
I 溶液は過飽和であり、中性種が沈殿する。
J 溶液は亜飽和であい、中性種が溶解する。
K 溶解、沈殿の追求及び追加の沈殿
L 平衡の追求
M 終点
N 溶解度は図の直線がゼロ勾配線を横切る点の平均値に相当する。
O 732ng/mlでの交差ゼロ勾配

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一個以上の酸性基か塩基性基含有化合物の溶解度決定法で、
(a)そこにある化合物固体で該化合物の飽和溶液近似物を作成し、
(b)pH変化が一定速度になるまで一定間隔でテスト溶液のpHを測定し、pH変化の該定速度勾配を測定し、
(c)既知分割量の塩基性滴定液か酸性滴定液をテスト溶液に加えてpH勾配を調製し、
(d)測定pH勾配が符号を変えるまでステップ(b)と(c)を繰り返し、
(e)測定pH勾配がゼロになったときの溶液中の非イオン化化合物濃度を化合物の溶解度として求めることからなる溶解度決定法。
【請求項2】
ステップ(a)が
(i)既知容量の水と既知量の該化合物を滴定容器に加えてテスト溶液を形成し、
(ii)任意に化合物をイオンの形で完全に溶解するようにpHを調製するに十分な容量の塩基性滴定液か酸性滴定液を該テスト溶液に加え、その結果超高濃度溶液を作り出し、
(iii)非イオン化化合物がテスト溶液から沈殿し始めるまで一個以上の既知分割量の酸滴定液か塩基性滴定液をテスト溶液に加え、
(iv)任意に一個以上の追加既知分割量の酸滴定液か塩基性滴定液をテスト溶液に加えて非イオン化化合物がテスト溶液から更に沈殿を起こす手続きを含む
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物が一個以上の酸性基を含有し、且つステップ(a)が、
(i)既知容量の水と既知量の該化合物を滴定容器に加えてテスト溶液を形成し、
(ii)任意にこの化合物をイオンの形で完全に溶解するようにpHを調製するに十分な容量の塩基性滴定液を該テスト溶液に加え、その結果超高濃度溶液を作り出し、
(iii)非イオン化化合物がテスト溶液から沈殿し始めるまで一個以上の既知分割量の酸性滴定液をテスト溶液に加え、
(iv)任意に一個以上の追加既知分割量の酸性滴定液をテスト溶液に加えて非イオン化化合物がテスト溶液から更に沈殿を起こす手続きを含む
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
化合物が一個以上の塩基性基を含有し、且つステップ(a)が、
(i)既知容量の水と既知量の該化合物を滴定容器に加えてテスト溶液を形成し、
(ii)任意にこの化合物をイオンの形で完全に溶解するようにpHを調製するに十分な容量の酸性滴定液を該テスト溶液に加え、その結果超高濃度溶液を作り出し、
(iii)非イオン化化合物がテスト溶液から沈殿し始めるまで一個以上の既知分割量の塩基性滴定液をテスト溶液に加え、
(iv)任意に一個以上の追加既知分割量の塩基性滴定液を非イオン化化合物がテスト溶液から更に沈殿を起こす手続きを含む手続きを含む
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
化合物が薬化合物か農薬化合物である請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
化合物が100ng/mlから30mg/mlの溶解度を有する請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
化合物の沈殿が目視法か分光法で検出できる請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ステップ(d)を1回から8回繰り返す請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
テスト溶液をこの方法実施中混合する請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
テスト溶液のpHをこの方法実施中監視する請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかによる方法で、更に手続きが
(f)テスト溶液のpHを化合物が溶解する値に調製し、化合物が完全に溶解するまでpHを少なくともその値に保持することを含む方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の方法で、更に滴定容器に不活性ガスを供給して不活性テスト環境を提供することを含む方法、
【請求項13】
共溶媒をテスト溶液に提供する請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
実行用ソフトウェアコード部位からなり、実行可能な使用者入力を要求するディジタルコンピュータからなる分析ラボ装置に用い、該プログラムを該ディジタルコンピュータで動かす場合に請求項1から13のいずれかによる方法のソフトウェア実行可能な手続きからなるコンピュータプログラム製品。

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2008−500526(P2008−500526A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514069(P2007−514069)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001783
【国際公開番号】WO2005/116635
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(506386413)シリウス アナリティカル インストゥルメンツ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】