説明

化合物または薬剤の製造システムおよびその要素技術

【課題】様々な薬剤または化合物の製造のために、製造システムを容易に再構成しうる技術を提供する。
【解決手段】好適な実施形態の一例によれば、ラック及び当該ラックに収容されるモジュール並びに制御装置から構成される薬剤製造システムが提供される。このラックは、薬剤製造用の複数のモジュールを入れ替え自在且つ一列に収容しうる収容部と、該収容部に収容されうるモジュールに対して個別に用意される接続端子と、該接続端子の各々に信号を供給しうる信号供給回路とを備え、前記信号供給回路が、前記接続端子のうち少なくとも1つに対し、該接続端子に接続されるモジュールに備えられるバルブ駆動装置を動作させるための信号を出力しうるように構成される。上記モジュールは、薬剤製造流路の一部を構成するバルブを保持するバルブ保持部と、該バルブ保持部に保持されたバルブの流路切り替えを行うためのバルブ駆動装置とを備え、該バルブ駆動装置は、上記ラックから供給される信号に基づいて動作するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、化合物や薬剤の製造システムおよび当該システムを構成する要素技術に関する。本発明の実施形態は、特に、放射性同位元素標識化合物などの化合物やそれを含む薬剤を、自動的に合成または製造することに好適である。
【発明の背景】
【0002】
[標識化合物用自動合成装置]
【0003】
放射性同位元素標識化合物は、病院等で使用される比較的半減期の短いものの場合、放射性同位元素を所定の原料試薬と化学反応させることにより合成される。この場合、標識化合物用自動合成装置を用いることにより、サイクロトロンで製造される核種を原料試薬と反応させ、標識化し、いくつかの化学プロセスを経て目的とする標識化合物が合成される。この標識化合物用自動合成装置は、作業者の被曝を防止するため、ホットセルと呼ばれる鉛の遮蔽セル内に設置され、多くの場合、遠隔的に自動操作される。標識化合物用自動合成装置は、当初は目的とする化合物に必要なプロセスを有する単一化合物を合成するための装置として発展してきた。
【0004】
このような標識化合物用自動合成装置は、チューブ類、電磁弁や圧力調整弁など流体経路を構成する部品類と、反応器や液溜などの貯留容器、加熱機構や攪拌装置、監視装置などで構成される。また標識化合物用自動合成装置では、シーケンサあるいはコンピュータに予め登録されたプログラムに従って、流体を移動させ自動的に標識反応や分離精製が行なわれる。標識化合物用自動合成装置は、[18F]Fluoro-2-deoxy-2-D-glucose(以下、[18F]FDGと略する)合成用に使用される「[18F]FDG合成装置」に代表されるように、化合物の名称が付けられた標識化合物合成機器として、通常1種類の薬剤を合成するための装置として商品化されている。
[多目的合成装置]
【0005】
一方、研究の進展等により臨床で用いられる標識化合物の種類が増加したことを背景として、一つの施設でも複数の標識化合物を合成することが求められるようになった。
【0006】
しかしながら、一つの施設に設置可能なホットセルの数には制限があることから、標識化合物数に応じたホットセルを設置すること、およびホットセル内に複数の標識化合物用自動合成装置を設置することは困難である。また、従来の単一の標識化合物を合成することを目的とした標識化合物用自動合成装置でも、プログラム等の若干の変更で別化合物の合成が可能な場合があるものの、すべての標識化合物に対応できるとは限らない。
【0007】
これらの事情により、単一の標識化合物しか合成できない標識化合物用自動合成装置では、複数の種類の標識化合物合成といったニーズに対応が困難となっていた。加えて、さらなる被曝低減のため、標識化合物を含む薬剤の原液や最終的な薬剤までの製造プロセスをも自動化する装置が求められている。
【0008】
なお、本明細書においては、標識化合物、標識化合物を含む薬剤の原液、最終的な薬剤を総称して、"放射性薬剤"と略する。また、本明細書においては"薬剤"と"化合物"を必ずしも明確に分けて使用しておらず、薬剤"との用語は"化合物"を意味する場合があり、逆に"化合物"との用語は"薬剤"を意味する場合がある。
【0009】
このような背景から、最近、多目的合成装置と称して、異なる核種や反応機構の異なる多種類の化合物を製造することのできる装置が開発されている。
【0010】
特許文献1には、多目的合成装置として、ユニット化合成システムが開示されている。このシステムでは、三方活弁ユニットや容器ユニットなどのような機構部が、それぞれ各機構部別に小型ユニット化されており、合成する化合物の種類に応じて必要なユニットの種類と個数を選択して組み合わせることで、様々な化合物の合成を行うことができるとされている。
【0011】
特許文献2には、様々な化合物合成に共通の機構を本体部に固定し、特定の化合物の合成にのみ必要な機構部はトレイと称する板に配置し、トレイを交換することで様々な化合物に対応できる多目的合成装置が開示されている。
【0012】
特許文献3には、多目的装置ではないが、流路を使い捨てにできる使い捨てカートリッジを有する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2009−501138
【特許文献2】特開2006−056792
【特許文献3】特開平9−263592
【0014】
しかし、特許文献1に記載のシステムは、必要とするユニットを単純に組み合わせるだけのものであり、ユニットを積み立てていくごとに、システムはだんだん大きくなってしまう。加えて、各ユニットにはあらかじめ所定数の機能部分が備えられているので、化合物の合成に必要な組み合わせを構築したとき、ユニットの中に使用しない機能部分が多く含まれることがあり、無駄が多く、装置の寸法が過大になる場合がある。
【0015】
また、異なる化合物用にシステムをセットする場合においては、一旦システムをユニットに分解し、改めて組みなおす必要がある。つまり、合成装置をばらばらに分解して、自分なりに必要なものを選別して再組立していることと同じであり、かえって煩わしい面がある。このことは、通常は、大変な労力を要する。
【0016】
また、特許文献1記載のシステムでは、ユニット中に使用されない部分も含まれることから、反応流路を構築する場合に流路が交差するなどして、システムの外に多くの配管類が複雑にむき出しになりやすく、視覚的にも複雑になってしまう。このことも、システムを他の化合物用に組み直すことを困難にしている要因である。加えて、化合物の合成経路を視覚的に認識することが容易ではないため、合成経路の設定ミスにつながりかねない。
【0017】
さらに、システムを構成するユニットが故障した場合において、ユニット修理や交換のため、分解・再組立が必要と煩わしく手間がかかる面があり、この点においてメインテナンス性にも乏しい。
【0018】
このような事情から、特許文献1記載の技術は、多目的化合物合成装置のための技術としては必ずしも実用的ではない。
【0019】
特許文献2記載の技術では、多種類の専用トレイを準備しなければならず、柔軟な合成経路の変更には対応できない。そのため、原則として、新規薬剤の提供に対応することはできない。
【0020】
特許文献3記載の技術は、カートリッジを使い捨てにするために、流路の洗浄などを不要としている。
【0021】
しかし、特許文献3には、カートリッジを交換することは記載されているが、流路切替バルブやシリンジ等の機能要素の位置や数をカートリッジに合わせて再構成することは記載されていない。このため、特許文献3記載の技術だけでは、多数の化合物の製造に対応することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、上記事情を鑑み、上記の問題点の少なくとも1つに対する改善をもたらす、化合物または薬剤の製造システムを実現するための技術を開発することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明により提供されうる薬剤製造システムは、新規な3つの要素装置から構成される。その1つは、薬剤製造に必要な機能を搭載するモジュールであり、もう1つはこのモジュールを交換可能に複数収容しうるラックであり、最後の1つは上記ラック及び/または上記ラックに搭載されたモジュールに対して制御を行う制御装置である。
【0024】
上記モジュールは、薬剤製造プロセスに必要な機能の一部を搭載するモジュールであり、搭載する機能によって様々な種類のモジュールとすることができるが、少なくともその一種は、薬剤製造流路の一部を構成するバルブを保持するバルブ保持部と、前記バルブ保持部に保持されたバルブの流路切り替えを行うためのバルブ駆動装置とを備え、前記ラックから供給される信号に基づいて、前記バルブ駆動装置が駆動される ように構成される。また前記バルブ保持部は、前記モジュールが前記ラックに収容された状態において、前記ラックの表面に露出するように配置されると共に、前記ラックに収容される他の複数のモジュールのバルブ保持部に対して、同一線上に並ぶ位置に配置される。
【0025】
これに対して上記ラックは、複数の上記モジュールを、入れ替え自在且つ一列に収容しうる収容部を備える。前記収容部には、該収容部に収容されうるモジュールの1つ1つに対して接続端子が用意され、この接続端子を介して各種の制御信号のやり取りを行えるように構成される。上記制御装置は、少なくとも、上記モジュールが搭載するバルブ駆動装置を動作させるための信号を生成しうるように構成される。ラックには、当該信号を、前記接続端子を介してモジュールへ供給しうる信号供給回路が設けられる。
【0026】
薬剤製造に必要な要素機能を搭載する複数のモジュールを、入れ替え自在にラックに収容するように構成されているので、モジュールを交換したり追加したり、またはラック中における位置を変更したりすることが、非常に容易となる。従って、合成すべき薬剤に応じて、要素機能の種類や数,配置を柔軟に変更することが可能となり、異なる化合物の合成のためにシステムを組み直すことが、引用文献1記載の技術に比べて著しく容易になる。また、いくつかの種類のモジュールを用意し、それを適宜組み合わせて製造システムを構築するという構成であるので、引用文献2記載の技術のように、製造すべき薬剤ごとに多種類のトレイを準備する必要が無く、新しい薬剤の製造にも容易に対応できる。
【0027】
好適な実施形態において、上記制御装置は、合成すべき化合物や、モジュールの配置・数・種類に応じて作成されたプログラムの命令に従い 、上記ラックの複数の接続端子に対して、前記プログラムによって定められる順序および/またはタイミングで、各種制御信号を供給するように構成される。この制御信号には、バルブ駆動装置を動作させるための信号や、他のモジュール機能を制御するための信号、例えばモジュールに備えられるシリンジ駆動装置を動作させるための信号が含まれることができる。またラックには、当該信号を、接続端子を介して意図されたモジュールへ供給しうる信号供給回路が設けられる。従って、目的に応じてモジュールを差し替え、プログラムを変更することにより、様々な化合物の自動合成の目的に、システムを容易に変更することが可能となる。
【0028】
また、上述のように、本発明によるラックは、本発明によるモジュールを一列に収容するように構成されており、且つ、該モジュールのバルブ保持部は、該モジュールがラックに収容された状態において、ラックの表面に露出するように配置されると共に、ラックに収容される他の複数のモジュールのバルブ保持部に対して同一線上に並ぶ位置に配置されている。すなわち、モジュールをラックに組み入れた後、システムの表面には一列に並んだ複数のバルブ保持部が現れることになる。特許文献3のカートリッジにも見られるように、薬剤製造流路は、一般に複数の流路切替バルブを備えているため、上記の一列に並んだバルブ保持部という構造は、引用文献に記載のような薬剤製造流路カートリッジを装着する構造として、非常に適している。薬剤製造流路カートリッジを手軽に着脱しうるという構造は、カートリッジを洗浄せずに使い捨てにすることを容易にするが、かかる利点は、残留不純物が残っては困る薬剤の合成や、放射能被曝を回避するために洗浄することが適当でない放射性薬剤の合成という用途のために、非常に有利な特徴である。
【0029】
このように、上記のモジュール、ラック、制御装置が、それぞれ、従来技術における前述の問題点の1つ以上を改善しうる薬剤製造システムを提供するという目的に資する構成を備えている。
【0030】
以下の説明においては、上記のモジュールやラック、制御装置に更なる利点をもたらす様々な特徴が開示されるが、それらは本発明の全ての実施形態に備えられるべき特徴を説明していると解釈されてはならず、特定の実施形態にのみ関わる特徴でありうることに留意されたい。添付の特許請求の範囲の各請求項に示される実施形態は、本発明の好適な実施形態の一例である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1a】本発明の好適な実施形態の一例である薬剤合成システム100の構成要素を説明するための図
【図1b】薬剤合成システム100のバリエーションの構成を説明するための図
【図2】図1aに描かれるモジュール10jの拡大図
【図3】モジュール取り付け構造の詳細を説明するための図
【図4】薬剤製造システム100の制御信号の流れを説明する図
【図5】薬剤製造システム100の変形例100'を描いた図
【図6】図4に描かれるモジュールの変形例を説明するための図
【図7】モジュールの別の実施例を説明するための図
【図8】モジュールの更に別の実施例を説明するための図
【図9】モジュールの更に別の実施例を説明するための図
【図10】モジュールの更に別の実施例を説明するための図
【図11】薬剤製造システム100に薬剤製造流路カートリッジ50を装着した様子を説明するための図
【図12】薬剤製造流路カートリッジ50の要部を示す図
【図13】[18F]FDG製造への本発明の適用例を説明するための図
【図14】[18F]FLT製造への本発明の適用例を説明するための図
【図15】[18F]FDOPA製造への本発明の適用例を説明するための図
【図16】[11C]ラクロプロライド製造への本発明の適用例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明のより深い理解に資するために、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
【0033】
図1aは、本発明の好適な実施形態の一例である薬剤合成システム100の構成要素を説明するための図であり、薬剤合成システム100の外観の概要が描かれている。薬剤合成システム100は、モジュール10a〜10lと、これらのモジュールを収容するラック20、それに制御装置30から構成される。
【0034】
モジュール10a〜10lは、それぞれ薬剤製造に必要な機能の一部を搭載している。これらのモジュールには、他のモジュールとは異なる機能を有するものもあれば、他のモジュールと同じもの(すなわちハードウェア的に同じもの)であるものもある。が、本実施例においては、全てのモジュール10a〜10lに対して、特に、モジュール10jにおいて符号HLDで示されているように、流路切り替え用の三方活栓を保持するための三方活栓ホルダーHLDが、前面パネルの右端に設けられている。また、特にモジュール10a及び10bについて示されているように、いくつかのモジュールは、シリンジを装着して動作させるためのシリンジ固定治具1031を備えている。
【0035】
図2は、図1aで符号10jで示したモジュールの拡大図である。前述のように、前面パネル12の右端には三方活栓ホルダーHLDが設けられているが、この第一の機能は、薬剤製造流路カートリッジ(例えば図12を参照)を装着することである。薬剤製造流路カートリッジに含まれる三方活栓を、このホルダーHLDに装着することが意図されている。さらに、本実施例に係るモジュールには、三方活栓ホルダーHLDの奥に、三方活栓ホルダーHLDを回転させるためのモータMが搭載されている。このモータMの働きにより、三方活栓ホルダーHLDは、三方活栓を装着したまま回転することができ、装着した三方活栓の流路を切り替えることができる。
【0036】
なお、三方活栓ホルダーHLDは例示であり、他の保持具を用いてもよいことはいうまでもない。求められる機能は、薬剤製造流路カートリッジの一部を保持しうることと、好ましくは流路切り替えバルブの流路を切り替える機能を有していることである。本発明の実施形態に適切に適用しうるバルブ保持具の例が、特願2008−025578の明細書や図面に記載されているので、参照されたい。
【0037】
図2において、CN1はラック20と電気的に接続するためのコネクタであり、複数の内部配線に接続されていることができる。例えば、図示されてはいないが、コネクタCN1とモータMとは、配線で接続されていることができる。符号11で示される直方体状の隆起部分は、ラック20のモジュール収容スロット208(図1a参照)内のスライドレール209(図3参照)に摺動可能に嵌合する内レールであり、モジュールの両側に設けられている。
【0038】
前述のように、図2は図1aにおけるモジュール10jを拡大して描いた図であるが、本実施例において、このモジュールは、他のモジュール10c,10d,10f,10g,10lとも同一のハードウェア構造を有している。また、本実施例における他のモジュール10aや10bなども、同様の要素(すなわちコネクタCN1、ホルダーHLD、モータMなど)を備えている。しかしながら、これらは単なる例示であり、各モジュールの機能構成や位置は、目的に応じて適宜変更できることは言うまでもない。
【0039】
さて、図1aに描かれるように、ラック20には、モジュール10a〜10lを挿入して収容しうるスロット208が設けられる。本実施例において、ラック20は12個のスロットを備えており、12個のモジュールを収容することができるが、図を見やすくするため、そのうちの1つのスロットのみを点線および符号208で示した。なお、12個という数が例示に過ぎず、実施形態によって様々な数のスロットを有しうることはもちろんであるが、多くの場合、少なくとも5個、できれば10個以上のモジュールを格納できるように構成する方が好ましいであろう。
【0040】
図示されるように、ラック20は、モジュール10a〜10lを一列に収容するように構成されている。これは、モジュールを収容した状態において、バルブ保持部HLDが一直線上に並ぶことを可能にするためである。前述のように、一列に並んだバルブ保持部という構造は、取り外し式の薬剤製造流路カートリッジを装着する構造として、非常に適している。薬剤製造流路カートリッジを装着する部分(バルブ保持部)がラック前面に位置するという特徴も、使用者が装着部位へアクセスし易くなるため、流路カートリッジの取り付けや取り外しを容易にするという利点を生む。また、モジュールを整列して配置することにより、操作者がモジュールの配列を視覚的に容易に把握することが可能となり、製造経路の設定ミスを防ぐことが出来る。
【0041】
他の構成部品についても同様であるが、ラック20は、耐腐食性や耐薬品性を有する材質で構成されることが好ましい。また、放射性薬剤を製造する場合には、耐放射線性を有する材質で構成されることが好ましい。
【0042】
図1aにおいて、モジュール10b,10c,10d,10jに関してその様子が描かれているように、各モジュールは、スロット208に自在に抜き差しすることができる。従って、用途に応じてモジュールの位置や種類を自在に変更することが可能である。
【0043】
図3には、モジュール取り付け構造が、より詳しく描かれている。ラック20の側面にはスライドレール209が設けられる。図示されていないが、もう一方の側面にも同様のスライドレールが設けられている。図3に描かれるモジュール10は、図1aのモジュール10a〜10lを例示したものであり、図2に描かれるように、その両側部に内レール11が設けられている。この内レール11を2本のスライドレール209の間にスライドさせるように差し込むことにより、モジュール10をラック20に収容することができる。すなわち、モジュール10は、内レール11をスライドレール209が支持することによって、ラック20内に保持される。また、ラック2の最奥部には、モジュール10と電気的に接合するためのコネクタCN2が設けられており、モジュール10が最奥部まで押し込まれると、モジュール10のコネクタCN1に嵌め込まれるように構成されている。コネクタCN2は、収容可能なモジュールの数だけ設けられている。コネクタCN1がCN2に嵌め込まれることにより、モジュール10とラック20とが電気的に接続される。つまり、モジュール10をラック20に差し込むだけで、モジュール10の固定と電気的接続を完了することができる。
【0044】
特にモジュール10a,10e〜10i,10k,10lに関して図1aに描かれているように、各モジュールが完全にラックの奥まで差し込まれると、これらのモジュールの前面は同一平面上に位置するように構成されている。また、その状態において、三方活栓ホルダーHLDは、図示されるようにラックの表面に露出していると共に、他のモジュールの三方活栓ホルダーHLDに対して一直線上に並ぶ位置に取り付けられている。前述のように、一列に並んだバルブ保持部という構造は、取り外し式の薬剤製造流路カートリッジを装着する構造として、非常に適している。
【0045】
ラック20は、モジュールを収容する機能の他に、薬剤製造のための様々な機能を備えることができる。本実施例においては、反応を行なうための反応容器201、それを監視するためのCCDカメラ部202、未反応の18O水を回収するターゲット水回収バイアル203、洗浄液等を貯留する廃液トラップ部204を有している。また、図1aに点線の枠内に描かれているように、ラック20の筐体内部には、放射性核種を含む溶液を供給するターゲット回収液供給部205や、不活性ガスを供給するガス供給部206、そのガスを処理する廃ガス処理部207が搭載されている。
【0046】
制御装置30は、薬剤製造プロセスに必要な制御信号を生成してモジュール10a〜10lやラック20に供給する。本実施例において、制御装置30とラック20とは、ケーブル32で接続されている。かかる実施形態は、ラックをホットセル内に設置し、制御装置をホットセル外に設置したいような場合に好適である。しかしながら、実施形態によっては、制御装置30はラック20に内蔵される。
【0047】
図4は、薬剤製造システム100の制御信号の流れを説明するための略ブロック図である。簡単のため、図1aのモジュールのうち10a〜10cの3つだけが描かれている。また、説明に必要と思われる要素のみを図示しており、全ての要素を図示していないことには留意されたい。薬剤製造プロセスにおいては、原料や中間生成物のための流路の切り替えが頻繁に必要となるが、そのための制御信号は制御装置30によって生成される。制御装置30は、記憶装置34に格納されたプログラムに従って情報処理を行うMPU36を備えるコンピュータであり、制御信号も当該プログラムに従って生成される。生成された信号は、ケーブル32及びケーブル32に接続されたコネクタCN24を介してラック20内へ供給される。供給された制御信号は、スロット208(図1a参照)毎に分配され、回路22a〜22cによって、モジュールとの接続用のコネクタCN2a〜CN2cへと導かれる。コネクタCN2a〜CN2cは、それぞれモジュール10a〜10cのコネクタCN1a〜CN1cと接続されており、これらのコネクタ内の配線を通じて、制御装置30の制御信号が各モジュール10a〜10cへと導かれる。各モジュール内において、制御装置30の制御信号は、三方活栓ホルダーHLDa〜HLDcの流路切り替えを行うモータMa〜Mcへと導かれる。
【0048】
本実施例において、制御装置30が生成しうる制御信号の一種は、モータMa〜Mcを駆動するためのパルス信号である。すなわち、モータMa〜Mcは、制御装置30からのパルス信号によりモータ電圧が印加されている期間は回転し、その他の期間は回転しない。従って、薬剤製造のプロセスに応じて異なるパルスシーケンスが用いられる。制御装置30の記憶装置34に格納されたプログラムは、製造する薬剤の種類に応じて、適切なパルスシーケンスを生成するようにプログラムされている。
【0049】
制御装置30は、他にも、薬剤製造プロセスに必要な様々な制御信号を生成することができるように構成される。例えば制御装置30は、シリンジ固定治具1031に装着されたシリンジを駆動するモータを動作させるための信号や、ラックに搭載された諸機能を制御するための信号などを生成しうるように構成されてもよい。制御装置30は、これら各種の制御信号を、プログラムの指示に従って、適切な順序及びタイミングでモジュールやラックに供給するように構成されることができる。当該プログラムにおいて、各種制御信号の生成順序やタイミングは、ソースコード上に明示的に定められたり、ラックに搭載された諸機能部からの信号に応じて生成するようにプログラムされたり(例えば反応容器201内の温度が所定値以上になったことに応じて生成するように定められたり)、三方活栓ホルダーHLDa〜HLDc等に取り付けられる薬剤製造流路カートリッジからの信号に応じて生成するようにプログラムされたりすることができる。またラック20の回路22a〜22cやコネクタCN24は、制御装置30によって生成された制御信号を、意図された適切なモジュールへと導くことができるように配線されることができる。
【0050】
様々な薬剤製造プロセスに対応できるように、制御装置30の記憶装置34は、新しいプログラムを記憶し得るものであることが好ましい。例えば、記憶装置34は、フラッシュメモリやハードディスクなどの書き換え可能な記憶装置であることができる。また記憶装置34は、CD−ROMドライブのように、異なるプログラムを記憶したメディアを入れ替えることができる装置であることができる。留意すべきは、制御装置30は、製造や販売の時点においては、上記のようなプログラムを記憶装置34に有している必要は必ずしもないことである。製造者や販売者は、プログラムが入っていない制御装置30と当該プログラムを別々に販売し、プログラムのインストールは別に行うこととしてもよい。
【0051】
また、制御装置30のMPUにより実行されることにより、製造すべき薬剤に応じた適切な順序および/またはタイミングで各種制御信号を生成するようにプログラムされたコンピュータ・プログラムを、制御装置30やラック20などとは別に製造・販売することとしてもよい。当該コンピュータ・プログラムは、CD−ROMやDVD−ROM等の記憶媒体に格納したり、ネットワークを通じたダウンロードという手法を用いるなどの方法により、販売されることが可能である。
【0052】
モジュール10a〜10cは、自身のタイプや機能に関する情報を記憶したメモリIDa〜IDcを備えることができる。このメモリに記憶された情報は、コネクタCN1a〜CN1cを介して外部から読み出すことができるように構成される。制御装置30は、コネクタCN24,回路22a〜22c,コネクタCN2a〜CN2c等により形成される回路を通じて、メモリIDa〜IDc内の情報を読み取るように構成されることが好ましい。そして制御装置30は、読み取った情報を、ディスプレイインタフェースやLANインタフェースなどでありうる外部インタフェース38を通じて外部へ出力するように構成されることができる。
【0053】
外部インタフェース38がディスプレイインタフェースである場合、制御装置30は、当該インタフェース38に接続されたディスプレイに、ラック20に挿入されたモジュールの種類や位置を表示するように構成されることが好ましい。モジュールがラック内のどのスロットに差し込まれているかの情報は、例えばコネクタCN24内の配線の位置などによって得ることができる。かかる構成によれば、ユーザは、スロットに挿入したモジュールの位置や種類をディスプレイ上で確認することができ、配置の誤りがないかなどを確認することができて、非常に便利である。また、キーボードやマウスなどのユーザインタフェース40を用いて、スロットに挿入したモジュールの位置や種類に応じてモータMa〜Mcの制御シーケンスのプログラミングを行いうるように構成してもよい。
【0054】
さらに、制御装置30に、読み取ったモジュール情報を基に、当該モジュールが意図される薬剤の製造に合致したものであるか否かを判断する機能をもたせてもよい。かかる構成は、人為的な製造経路設定ミスを排除する上で有益である。
【0055】
コネクタCN2a〜CN2cは、モジュールへの電源供給機能を有することが好ましい。従って、コネクタCN2a〜CN2cは、モジュールの弁駆動手段(モータM)やシリンジ駆動手段を駆動するための電源端子や信号端子、さらにはモジュールの型を認識するための信号を受け取るための端子などを含んでいることが好ましい。
【0056】
図5は、薬剤製造システム100の変形例の一つを描いた図である。この変形例に係る薬剤製造システム100'は、薬剤製造システム100に比べて、その制御装置30に係る構成が、ラック20の筐体内に内蔵されたことを特徴とする。しかしながら、その余の構成は薬剤製造システム100と同一である。そこで、図5においては、図4と同様の構成については同じ符号を付してそれを表す。また、制御装置30に係る構成を内蔵したラックを、ラック20に対応して符号20'で表す。
【0057】
前の実施例の制御装置30に対応する薬剤製造システム100'の制御回路30'は、制御装置30と同様に、記憶装置34に格納されたプログラムに従ってMPU36が所定の処理を行うことにより、機能する。MPU36によって生成されたモジュール10a〜10cのための制御信号は、回路22やコネクタCN1,CN2を介してモジュール10へと送られる。制御回路30'は、モジュールの各種の内部情報などを外部インタフェース38を介してラック20'へと出力することができる。また制御回路30'は、同じく外部インタフェース38を介して、新たな制御プログラムを受け取って、記憶装置34に格納することができる。
【0058】
図6は、図4や図5に描いたモジュール10a〜10cの回路構成の変形例を描いた図である。この変形例に係るモジュール10'において、図示されるHLD,M,ID,CN1は、それぞれ図4や図5におけるHLDa〜HLDc,Ma〜Mc,IDa〜IDc,CN1a〜CN1cとハードウェア的に同等の要素である。また、メモリIDが、自身のタイプや機能に関する情報を記憶していることも同様である。しかしモジュール10'は、MPU16を別に備え、このMPU16がモータMの制御を直接に司り、またメモリIDとの通信を司るところが、前の実施例におけるモジュールと異なっている。
【0059】
MPU16は、モータMやメモリIDの制御のみならず、モジュール内の他の要素の制御にも用いることができる。従って、モジュール10'は、「インテリジェント」なモジュールであると考えることができる。MPU16がモジュール10'内部要素を直接的に制御するため、ラック20,20'に接続される制御要素30,30'のMPU36は、負担の大きいハードウェアの直接的な制御を行う必要がなくなり、単にMPU16への命令を生成すればよい。例えばMPU36は、モータMを回転させるために、回転期間に応じたパルス信号を生成する必要はなく、モータMを所定時間回転させるべき旨の命令を生成してMPU16へ送信すればよい。従って、MPU36の負担を軽減することが可能となる。
【0060】
例示した薬剤製造システム100や100'によれば、特定の薬剤製造のために必要な機能を有する種々のモジュールを適宜選択し、当該薬剤製造プロセスに応じた順序でラック20内に配列することにより、様々な薬剤の製造に対応した製造システムを構築することができる。モジュールの取り付けや取り外しは、モジュールをラック20に抜き差しするだけで行うことができ、同時に電気的な接続や切断も完了するので、モジュールの配列の変更や交換を容易に行なうことが可能である。また、別の薬剤製造のためにシステムを組み直す場合は、交換すべきモジュールのみを取り出して交換すればよく、変更を要するモジュール以外のモジュールについては、そのままの状態で差し込んでいればよいので、システム再構築の作業量も少なくて済む。このほかに、制御要素30,30'のプログラムの更新を必要とするものの、薬剤製造システム100や100'に例示された構成が、異なる薬剤製造に対応するためのシステム変更を、非常に容易にすることが理解できるであろう。
【0061】
さらに、保持機構の故障、例えば流路切り替え機能の不備に対しても、モジュールを交換するだけで容易に修復することが可能となり、メインテナンス性にも優れるという利点を提供する。
【0062】
〔ラックの更なる実施例〕
【0063】
上記の構成は、本発明の実施形態のほんの一例に過ぎず、本発明は様々な実施形態を取りうる。例えば、上記の実施例におけるラック20は、モジュール10a〜10lを横にして、縦方向に積み重ねるような形態で収容するように構成されているが、実施形態によっては、モジュール10a〜10lを縦にして、横方向に一列に並べるような形態で収容するように構成してもよい。
【0064】
図1aや図3においては、モジュール取り付け部208の大きさは全て同一であるように描かれている。すなわち、ラック20に取り付けられるモジュールの大きさは全て同一であるように描かれている。しかしながら、これは単なる例示に過ぎず、実施形態によっては、様々な大きさのモジュールを取り付けることが可能なように構成してもよいことは言うまでもない。しかしながら、モジュールをどのスロットにも配置し得た方が便利であり、サイズが決まっていた方が製造コストの上でも有利であろうから、実際には、モジュールの大きさは、せいぜい2種類程度に規格化されるであろう。
【0065】
ラックの外形については、複数のモジュールを一列に格納できる限り特に限定する必要は無い。しかし、ラックの外形が、前述の実施例のような直方体様の形状を有することは好ましい。なぜなら、かかる形状によれば、縦方向ないし横方向に一列にモジュールを格納することが容易となるとともに、ラックを安定して(例えばホットセル内に)設置することが容易であるからである。
【0066】
ラックは、格納した状態で一定の数のモジュールを一列に配置しうることが必要なのであって、それが満たされる場合、あるモジュールが他のモジュールとは一列に並ばないような構成を採ることもできる。例えば、モジュールを複数列に配置するような構成を採ることもできる。
【0067】
ラックの大きさについては、ホットセル内に設置が可能である限り特に限定する必要はないが、少なくとも5個、より好ましくは10個のモジュールを格納し得る大きさとすることが好ましい。
【0068】
これまでの説明において、ラックの機能としては、モジュールを収容することと、制御信号をモジュールへ届けることの2点を主に説明してきたが、ラックには他にも様々な機能を搭載することができる。例えば、放射性薬剤の製造という用途に本発明を利用する場合、ラックには、例えば、次のいずれか1つ以上の機能要素を搭載してもよい。
・ 反応器と加熱機構、攪拌機構、放射線検出機構やCCDカメラなどで構成される、反応を行うための機能要素
・ 装置に供給するユーティリティーガスを調整するためのガス流量計や調圧弁、電磁弁などで構成されるガス供給要素
・ 廃ガスを処理するための、真空ポンプ、調圧弁、電磁弁、廃液トラップなどで構成される廃ガス処理要素
・ 加速器で製造された放射性核種を搬送するための液から放射性核種を分離し、回収するための、カラム部、液溜ホルダー、電磁弁などで構成されるターゲット回収液供給要素
・ 放射能検出器とCCDカメラで構成され、監視が必要な場所に設置される監視要素。
【0069】
むろん、上記の機能要素は単なる例示であり、他の機能要素を搭載してもよい。ラックへ搭載する機能要素は、放射性薬剤を製造する上で、放射性薬剤の種類によらずに一般的に要求される機能要素を搭載することが好ましい。また、反応容器やガラス容器など、異なる放射性薬剤を製造する場合には交換する必要はある要素であっても、それ自体はモジュール化できない要素や、あるいはあえてモジュール化する必要がないと思われる要素も、ラックへ搭載する要素として適している。
【0070】
なお、ラックに搭載されるこれらの機能要素を制御するための制御信号は、上述の制御要素30,30'によって生成される。制御要素30,30'のプロセッサは、当該プロセッサに組み合わされるプログラムの指示に従って、これらのラック機能要素のために、薬剤製造プロセス中の適切なタイミングで、必要な制御信号を供給するように構成されることができる。
【0071】
ラックに搭載する機能が多い方が、準備すべきモジュールの種類や数は少なくて済み、異なる種類の薬剤製造プロセスのためのシステム再構成の際の、モジュール選択や配置の作業は軽減される。従って、一定の数及び種類の機能要素はラックに搭載することが好ましい。しかし、ラックに搭載する機能が多すぎると、システム変更の自由度は少なくなり、汎用性が減少すると思われる。一方、ラックに搭載する機能を少なくすると、準備すべきモジュールの種類や数が多くなるが、システム変更の自由度は増し、様々な種類の薬剤製造に対応できるようになると考えられる。本発明を応用する者は、これらの事情を考慮の上、搭載する機能要素の種類や数を、汎用性と簡便性のバランスが取れたものとすることが望まれる。
【0072】
〔モジュールの更なる実施例〕
【0073】
続いて、図2に例示したモジュール10のいくつかのバリエーションについて、図7から図10を用いて説明する。
【0074】
図7に例示するモジュール101は、モジュール前面に三方活弁ホルダーHLDを装備し、内部に三方活弁を駆動するモータMを装備する。また、ラック20との電気的な接続のためにコネクタCN1を有する。さらにモジュール101は、モータMなどの内蔵機能全般を制御する、マイクロプロセッサーユニットMPUを搭載している。
【0075】
モジュール101は、放射性薬剤製造のための機能としては、製造流路保持機能および流路切替機能という基本機能のみを有するモジュールであるため、以下に"基本モジュール"と称する。ただしモジュール101は、マイクロプロセッサーユニットMPUを有しており、図6を用いて以前に説明されたモジュール10'に対応するモジュールである。すなわち、図2に例示したモジュール10に比べると、"インテリジェント"なモジュールである。
【0076】
図8に例示するモジュール102は、主に放射能測定を目的とするモジュール(以下、"放射能測定モジュール"と略す)である。
【0077】
モジュール102の構成は、基本モジュールの構成を備えることに加え、放射線を検出する放射線検出部1021および支持アーム1022を有することを特徴とする。更に、その内部に放射線検出信号を増幅する電気構成部品1023が格納されている。
【0078】
支持アーム1022は、3軸の自由度を有する。この支持アーム1022と、ラック20における適切な配置位置の選択により、製造経路中における任意の位置において放射能測定を行うことが可能となる。
【0079】
放射能測定装置をラック20に搭載すると、搭載位置を変えることができなくなるため、薬剤製造流路中の所望の位置での放射能測定を行うことができない場合がある。モジュール側に検出器を備えることにより、所望の測定位置が支持アーム1022のカバー範囲の外になる場合には、モジュールをラック20の他の位置に移動して、所望の測定位置へ検出器を位置させることを試みることができるようになる。これにより、各種放射性薬剤の製造時における重要な反応ポイントでの放射能測定が可能となり、より効率的な放射性薬剤の自動合成が可能となるとともに、放射性薬剤製造の工程管理を適切に行うことが可能となる。
【0080】
放射線検出部1021による測定の開始や停止は、上述の制御要素30,30'の指示に基づいて、マイクロプロセッサーユニットMPUにより行われる。また、得られた測定データは、コネクタCN1から出力されて、制御要素30,30'に送られる。制御要素30,30'は、得られた測定データに基づいて、薬剤製造プロセスを制御したり、また測定データを外部に出力したりできるように構成されることができる。
【0081】
図9に例示するモジュール103は、シリンジ駆動機構を有することを特徴とし、反応経路への試薬注入を重要な目的とする(以下、"モータ駆動試薬注入モジュール"と略する)。
【0082】
モジュール103の構成は、基本モジュールの構成に加え、表面に設けられるシリンジ固定治具1031と、内部に設けられるシリンジ駆動用モータ1032とを有することを特徴とする。
【0083】
図10に例示するモジュール104も、モジュール103と同様、シリンジ駆動機構を有するモジュールであり、反応経路への試薬注入が可能なモジュールである(以下、"バネ駆動試薬注入モジュール"と略する)。モジュール103との違いは、モジュール104は、シリンジの内筒をバネで引き上げて、三方活弁を通液側に切り替えることで、シリンジから液を全量排出する機能を有することである。これに対してモジュール103は、目的の量に応じてモータを駆動させることにより、目的量の試薬量を注入する機能を有する。
【0084】
モジュール104の構成は、基本モジュールの構成に加え、シリンジの内筒を保持する治具1041と、シリンジを押し下げるためのバネ機構1042とを有することを特徴とする。
【0085】
シリンジ駆動用モータ1032やバネ機構1042を動作させるための信号は、上述の制御要素30,30'の指示に基づいて、マイクロプロセッサーユニットMPUにより生成される。
【0086】
モジュールの構成例についていくつか紹介してきたが、モジュールに搭載しうる機能に特に制約はなく、モジュールの構成例はこれらに止まらない。例えば、放射性薬剤製造のために搭載しうる機能の例を挙げると、反応を行うための機能(反応器としての機能、加熱機能、攪拌機能、試薬注入機能、流路機能、流路切替機能、放射線検出機能、CCDカメラ機能)、ガスを供給する機能(ガス流量測定機能、調圧弁機能、電磁弁機能)、廃ガス処理機能(真空ポンプ機能、調圧弁機能、電磁弁機能、廃液トラップ機能)、ターゲット回収液供給機能(カラム機能、液溜ホルダー機能、電磁弁機能)などが挙げられる。これらの機能もしくはその機能の一部が、モジュールに搭載されることにより、製造経路の多様性が担保される。
【0087】
なお、単一のモジュールに搭載される機能の組み合わせとしては、次のような組み合わせが多くなるであろう。
・ 三方活弁を駆動するモータが取り付けられているモジュール(モジュール101)
・ 三方活弁を駆動するモータと放射能検出器を有するモジュール(モジュール102)
・ 三方活弁を駆動するモータとシリンジ駆動機構を有するモジュール(モジュール103、104)
・ 三方活弁を駆動するモータとカメラなどの監視機構
【0088】
モジュールに搭載されるこれらの機能要素を制御するための各種制御信号は、上述の制御要素30,30'によって生成される。制御要素30,30'のプロセッサは、当該プロセッサに組み合わされるプログラムの指示に従って、これらのモジュール機能要素のために、薬剤製造プロセス中の適切なタイミングで、必要な制御信号を供給するように構成されることができる。
【0089】
これまで例示してきたモジュールには、全て流路切り替えバルブの駆動部が備えられていたが、この駆動部をモジュールから切り離して、ラックへ搭載するような実施形態も考えられる。
【0090】
各モジュールにおいて、モジュールコネクターCN1は、ラックコネクターCN2に対応した共通の規格により構成されていることが好ましい。
【0091】
モジュール101〜104は、図2に例示したモジュール10に比べて、マイクロプロセッサーユニットMPUを搭載していることを特徴とする。MPUは、制御装置30などの外部の制御装置にモジュールの機能を認識させることが可能なように構成されることができる。また、MPUの搭載は、システムの配線の簡略化にも寄与しうる。制御装置30が単独でシステム全体の制御を行う構成を採る場合、モジュールが複数の機能を搭載していると、制御信号を伝達するための配線を、機能毎に個別に設けることが必要となり、配線の規模やコネクタのサイズが大きくなってしまう。しかし、制御装置30がモジュールのMPUに指令を出し、制御装置30は当該MPUを用いて間接的にモジュール機能を制御するような構成とすれば、制御装置30とモジュールとの間の配線は、制御装置30がモジュールのMPUと通信しうる規模で済むため、配線やコネクタの規模を最小限に抑えることができる。
【0092】
本発明の実施形態に従うモジュールの外形は、ラックのモジュール支持スロットに収容されることが可能であれば、如何なる形状でもよい。しかしながら、直方体様の形状であることは、隙間の少ない効率的なモジュールの配置が可能となるため、好ましいことである。
【0093】
モジュールに要求される機能によっては、他のモジュールと比較して多くの部品を搭載する必要があり、大きな筐体を必要とする場合があるだろう。このような場合、ラックのモジュール支持スロットを1つだけ占有するのではなく、複数、例えば2つのスロットを占有するサイズのモジュールを作ってもよい。その結果、より多様な放射性薬剤の製造が可能となるであろう。
【0094】
また、モジュールの大きさについては特に限定する必要は無いが、大きすぎると製造装置全体が大きくなりすぎるため、注意を要する。好ましくは、各モジュールに組み込まれるモータ等の駆動部や、はめ込まれるシリンジ、三方活栓等の大きさを勘案し、モジュールの大きさをできる限り小さくすることがよい。縦に積み重ねた状態でラック内に格納する形態をとった場合においては、各モジュールの縦幅は、複数の三方活栓を直列につなぎ合わせた際に、それぞれの三方活栓が、各モジュールに備えられる保持機構にちょうど嵌まり込むような縦幅とすることが好ましい。特に、各モジュールを縦に並べて用いる構成とし、かつ、各モジュールの幅を直列的に接続させた一つの三方活栓の幅と合わせた場合には、前記特願2008−025578の三方活栓ホルダーを用いることにより、製造流路の主たる部分を、三方活栓を直列的に接続させた構成とすることが可能となる。そのため、装置にはめ込む製造流路に剛性を持たせることができ、その取り付け・取り外しが容易となる。
【0095】
本発明の実施形態に従うモジュールは、ラック20の複数のモジュール支持スロット208のどれにも差し込み可能であるよう、規格化された電気コネクタを有することが好ましい。このコネクタは、コンピュータなどの接続に通常用いられる既存の接続端子を用いてもよい。また、ラックとモジュールの電気的接続は、上述の例のように、モジュールに設けたコネクタをラックに設けたコネクタに接続するというものでもよいが、ケーブル等により接続するような形態を採用しても良い。
【0096】
コネクタは、モジュールのいずれの場所に設けてもよいものの、三方活栓ホルダーHLDが取り付けられる前面とは反対側の背面に設けることが好ましい。このような構成とすることにより、モジュール前面に取り付けられる流路から、最も遠い位置にコネクタが位置することになり、流路からの液漏れが発生した場合に、その影響が端子に及びにくく、電気系統の故障のリスクを減少させることができる。
【0097】
上述の例では、モジュールが備えるバルブ保持部として、三方活栓ホルダーHLDが例示されてきたが、むろんこれは例に過ぎず、実施形態によっては他のバルブ保持具を用いることになるであろう。要求に応じて既存の様々なバルブ保持具を用いることが可能である。バルブの切換にはギアードモータなどを用いることができ、切換位置は光センサーなどで検知することができる。一方、シリンジの駆動はステッピングモータやサーボモータを用いることができ、その制御は、ステッピングモータから送られるパルス数、あるいはサーボモータの場合のエンコーダからのパルス数を利用して行うことができる。
〔モジュール収納部を複数列設けた実施例〕
前述のように、本発明の実施形態のバリエーションは、ラックに収容されるモジュールの全てが一列に配置されないような構成をも含む。例えば、一部のモジュールが、他のモジュールとは別の列に並ぶように収容されたり、他のモジュールとは列の関係を有しない全く別の位置に収容されたりするような構成を含んでいてもよい。かかるバリエーションの一種として、ラックがモジュールを2列に収容するように構成された実施例の概要を、図1bに示した。
本実施例に係る薬剤合成システム1100は、図1aに示した薬剤製造システム100のラック20に対応するラック1020を備えているが、ラック1020は、モジュール1010a〜1010xを、2列に収容するところが、ラック20とは異なっている。すなわち、図示されるように、モジュール1010a〜1010lは、図に向かい合う方向から見て左側の収容部に1列に収容されており、モジュール1010m〜1010xは右側の収容部に1列に収容されている。モジュール1010a〜1010xは、それぞれ、実施形態によって様々な種類のモジュールであることができ、例えばこれまで説明されたモジュールの実施例であるモジュール10,10a〜10l,101〜104のいずれかであることができる。図示されるように、モジュール1010a〜1010xは、いずれもラック1020にすっぽり収容される寸法及び形状を有すると共に、ラック1020に収容された状態で表面に露出するバルブ保持部(三方活栓ホルダHLD)を備えており、そのバルブ保持部HLDが、ラック1020に同じ列に収容される他のモジュールのバルブ保持部HLDと一直線上に並ぶ位置に搭載されている。また、いずれも、図2や図7〜図10に描かれるように、ラック1020と電気的に接続するためのコネクタCN1が背面に設けられており、ラック1020のモジュール収容部の最奥部に設けられるコネクタCN2(図3参照)に接続しうるように構成されている。
ラック1020には、図1aのラック20に搭載されていた要素201〜204に対応する機能要素が2組搭載されており、それぞれ符号1201〜1204及び1201'〜1204'で表されている。また、機能要素205〜207に対応する機能要素1205〜1207が、ラック20と同様に、その筐体内部に搭載されている。さらにラック1020は、図1aでラック20に組み合わされていた制御装置30に相当する制御回路1030を、その筐体内部に搭載している。この点において、ラック1020は、制御装置30がケーブル32で接続された外部機器であったラック20とは異なっており、図5に例示したラック20'と同様の構成となっている。
【0098】
〔薬剤用製造流路カートリッジの搭載例〕
【0099】
図1aの薬剤製造システム100に、放射性薬剤用製造流路カートリッジ50を搭載した様子を図11に示す。なお、図11においては制御装置30の図示を省略している。図示されるように、ラック20には12個のモジュール10a〜10lが完全に収容されており、それぞれの三方活栓ホルダーHLDa〜HLDlが、一列に並んでラックの表面に露出している。そして、これらのホルダーに、製造流路カートリッジ50の三方活栓が嵌め込まれることにより、製造流路カートリッジ50が薬剤製造システム100に固定される。三方活栓ホルダーHLDa〜HLDlは、製造流路カートリッジ50を安定的に保持すると共に、その三方活栓の流路を切り替えることが可能な構造を有するべきであるが、かかる三方活栓ホルダーを製作するために好適な技術が特願2008−025578の明細書や図面に記載されているので、適宜参照されたい。
【0100】
図11に描かれる実施例において、ラック20の最上段のスロット部はモジュールではなく、固定されており、各種のピンチバルブSPa,SPb,DPaと液溜ホルダー210を取り付けるためのパネルが埋め込まれている。また、ラック20におけるモジュール収容部の下部には、やはりピンチバルブDPb〜DPdが設けられている。
【0101】
描かれるピンチバルブのうち、SPaおよびSPbの2つは、ラック20に内蔵されるガス供給部206(図1a参照)に通じているガス供給用のピンチバルブであり、プラスティックチューブを通じて製造流路カートリッジ50に接続される。また、ラック20の最上段のピンチバルブDPaと最下段のピンチバルブDPb〜DPdは、ガス廃棄用のピンチバルブであり、やはりラック20に内蔵される廃ガス処理部207(図1a参照)に繋がっている。ガス廃棄ピンチバルブDPa〜DPdも、プラスティックチューブによって製造流路カートリッジ50に接続される。ラック20の最上段の液溜ホルター取り付け用パネルには、液溜ホルダー210が取り付けられている。図11において、液溜ホルダー210には、製造流路カートリッジ50の一部を形成する液溜502が取り付けられている。
【0102】
前述のように、三方活栓ホルダーHLDの流路切り替えは、内蔵されるモータMが、制御装置30(図1a、図4等参照)により制御されることにより、自動的に行われる。また、ラック20のガス供給ピンチバルブSPやガス廃棄ピンチバルブDPに通じる内部のラインにも切替バルブが設けられる場合があるが、制御装置30は、これらの切替バルブの自動切替制御も行うように構成されてもよい。制御装置30は、内蔵のプログラムの制御に従い、製造すべき薬剤に応じた適切な順序および/またはタイミングで、これらのバルブを動作させるための制御信号のシーケンスを生成し、供給するように構成されることが好ましい。
【0103】
図11に描かれる製造流路カートリッジ50は、三方活栓やプラスティックチューブ、精製用カラム、シリンジなどの部品から構成されている。流路に用いられる部品としては、放射性薬剤の製造に通常使用される部品を用いることができ、特に限定されることはないが、これらの部品は使い捨てとすることが好ましい。例えば、滅菌済みのディスポーザブル1回使用タイプのものを使用し、毎製造ごと交換することが望ましい。これにより、製造に要する準備や後始末が簡便化される。また、滅菌状態が確保されると共に、反応残存物の影響を受けにくくなるため、流路の汚染による反応収率の低下や純度の低下を防止することができ、製品品質の安定性や安全性を高めることができ、また薬剤自動合成の再現性にも寄与することが出来る。
【0104】
図11に描かれる製造流路カートリッジ50は、放射性薬剤である[18F]FDG注射原液の製造に用いうるように構成されているが、むろん単なる例示に過ぎない。カートリッジ50の構成要素のうち、プラスティックチューブ部分を除いたものを、図12に示す。この製造流路カートリッジ50は、三方活栓501a〜501lの12個を連結したものを主たる流路としている。三方活栓501a〜501lは、三方活栓ホルダーHLDa〜HLDlに嵌合しうる形状であることが好ましい。製造流路の主たる部分を、三方活栓を直列的に接続させた構成としていることにより、製造流路に剛性を持たせることができ、ホルダーHLDへの取り付け・取り外しが容易となる。製造流路カートリッジ50の主流路には、三方活栓501a〜501lの他、液溜502、シリンジ503a〜503e、精製用カラム504などが取り付けられ、また、これらをプラスティックチューブ(図11参照)が接続している。
【0105】
なお、製造流路カートリッジ50において、三方活栓以外の流路切り替えバルブが用いられていてもよい。流路切り替えバルブとしては、三方活栓の他に二方活栓などが知られており、医療や薬物合成の分野で利用可能な各種の切り替えバルブを利用することができる。モジュールのホルダーHLDは、利用するバルブに対応した形状を有するように構成される。
【0106】
製造流路カートリッジ50は、さらに、プラスティックチューブを通じて、ラックに搭載される薬剤製造機能へ接続される。例えば図11に描かれるように、製造流路カートリッジ50は、反応容器201、ターゲット水回収バイアル203、廃液トラップ部204、プロダクトバイアルPVへ接続されている。このような接続により、シリンジ503a〜503eからの試薬の供給や、精製カラム504により精製された18F溶液の供給、さらにこれらの残存液の廃棄など、各容器への液の共有や廃棄を行なうことが出来るようにされる。さらに、後述するように、ガスの供給、廃棄も行なうことができるようにされる。
【0107】
また製造流路カートリッジ50は、ラック20のガス供給ピンチバルブSPaおよびSPbへも接続されている。この接続により、ヘリウム等の不活性ガスを製造流路カートリッジ50へ供給することが可能とされ、反応容器201にヘリウムガスを供給するなどして、不活性ガス下での反応を行なうことができるようにされる。
【0108】
また、製造流路カートリッジ50は、ガス廃棄ピンチバルブDPa〜DPdへも同様に接続されている。これにより、真空ポンプによる吸引が可能となり、吸引力による製造流路中の流体の移動を行なうことができるようにされる。
【0109】
〔応用例〕
【0110】
以下、本発明の更なる理解に資するために、上述の実施例に係る製造システムを、実際の放射性薬剤製造に応用した例を説明する。モジュールの種類や数、ラックにおける搭載位置を、化合物に応じて変更することで、様々な種類の化合物製造のためにシステムを簡単に適合させうることを理解し得るであろう。
【0111】
応用例1(図13)は、[18F]HFを原料として[18F]FDGを製造するシステムへの応用である。応用例2(図14)は、応用例1のモジュールの構成を変えて、 [18F]HFを用いて [18F] FLTを合成するシステムへと変形した例である。応用例3(図15)は、 [18F]F2から、異なる化学型の原料物質である [18F]FDOPAを製造するシステムへの応用である。応用例4(図16)は、異なる核種の[11C]ヨウ化メチル、[11C]メチルトリフレートから化合物を製造するシステムへの応用である。これら応用例1から4は、モジュールの種類や配列を少し変更することで、様々な化合物合成へシステムが対応可能であることを示す例である。
【0112】
<応用例1、[18F]FDG(フルオロデオキシグルコース)の製造>
【0113】
図13は、応用例1を説明するための図である。なお、この図13におけるガス供給部206、廃ガス処理部207、ターゲット回収液供給部205は、図1aで点線で囲まれて示されているように、ラック20の表面には現れておらず、その内部に内蔵されている。
【0114】
本応用例では、モジュールを12連にして使用する。破線部内の三方活弁部(アルファベットが記載してある丸)とシリンジ取付部などの組み合わせ1つ1つが各モジュールを表している。この応用例では、ラックが有するスロット番号を上から順に、aからlのアルファベットで三方活栓部の上に示した。
【0115】
この時、三方活弁駆動部のみを有する基本モジュール101がc、d、f、g、j、lの位置に使用されている。同様に、放射能測定モジュール102がk、モーター駆動試薬注入モジュール103がa、バネ駆動試薬注入モジュール104がb、e、h、iの位置に使用されている。
【0116】
かかるモジュール配置により、市販の装置によって多くの施設で一般的に行われている[18F]FDGの製造を行なうことが出来る。なお、試薬量や反応条件を初めとする種々の条件は、公知の方法に従って設定する事ができる。必要とあらば、例えば次の文献を参照されたい。
・ Radioisotopes, 50, (2001), p.205-227
・ Radioisotopes, 50, (2001), p.228-256、
・ 「PET用放射性薬剤の製造および品質管理−合成と臨床使用へのてびき−(第2版)」、PET化学ワークショップ編
【0117】
本応用例における製造は、表1に示す使い捨て部材を使用して実施される。これらの部材は、FDG製造に一般的に使用される部材である。各モジュールの位置によって、シリンジには表2に示す溶液が充填されている。
【表1】

【表2】

【0118】
三方活弁12個は、全て互いに連結された後、ラック20に格納されたモジュールの三方活栓ホルダーに取り付けられる。このうち、モジュールaに取り付けられた三方活弁は、シリンジと液溜502を経由してターゲット回収液供給部205とガス供給部206および廃ガス処理部207に接続されている。また、モジュールbにはシリンジ(1mL)が取り付けられている。さらに、モジュールcは陰イオン交換カラムが取り付けられているモジュールkへと、モジュールdは昇降装置を備えた反応器上部へと、モジュールeはシリンジと接続されている。さらに、モジュールfはガス供給部206、モジュールgは製品回収部、モジュールhとモジュールiはシリンジと接続されている。モジュールjは昇降装置付きの反応部上部へ接続され、モジュールkは陰イオン交換カラムが装着され、kに装備された放射能測定モジュール102により、カラムの放射能量を監視している。さらにモジュールlはターゲット回収バイアルPVと廃液トラップ部204に接続されている。
【0119】
この時、合成反応は下記段階をたどる。
【0120】
1.サイクロトロンあるいは加速器のターゲット部で製造された18F核種を含む18O水が、ガス圧力によって本システムのターゲット回収液供給部205(HF溶液回収部)からモジュールaの三方活弁に接続されている液溜502に供給される。18O水を搬送してきたガスは廃ガス処理部207へ送られる。
【0121】
2.ターゲットからの回収液(18O水)は、ガス供給部206からのガス圧力で液溜502から押し出され、モジュールcの三方活弁を経由してバイパスでモジュールkに送られる。続いて、陰イオン交換カラム506を通過してモジュールlの三方活弁と接続されているターゲット回収バイアルPVに回収される。この時、18O水に含まれる18F核種はカラム506に吸着され、18O水と分離される。
【0122】
3.モジュールaのモーターシリンジで水(1mL)を押し出して、モジュールc、kを経由してlから廃液トラップ部204に廃棄して、カラム506を洗浄する。このことでカラムに含まれる微少の不純物を除去する。さらにガス供給部206から供給されるヘリウムガスをモジュールaから導入して、陰イオン交換カラムを通過させる。
【0123】
4.反応器に接続されている廃ガス処理部207に接続されている真空ポンプの真空圧により、陰イオン交換カラム506に、モジュールbから炭酸カルシウム・相間移動触媒溶液が導入される。シリンジが全て押し切られたあと、ガス供給部206からガスで圧送され、全量がモジュールcの三方活弁を経由してモジュールkのカラムから18Fを溶出させ、反応部内の反応器201に回収する。
【0124】
5.溶液が完全に反応器に送られた後、加熱して、水分と溶媒が完全に除去される。溶媒等は廃ガス処理部207に送られる。
【0125】
6.モジュールiからアセトニトリルを溶出させ、モジュールjを経由して反応器に導入する。その後、再度加熱して水分を完全に除去する。溶媒等は廃ガス処理部207に送られる。
【0126】
7.モジュールeより原料を含むアセトニトリル溶液が吐出され、モジュールdから反応器に加えモジュールfから導入されるヘリウムガスによって完全に反応器に送られる。
【0127】
8.反応器を密閉し、公知の方法によりフッ素化反応を行う。標識反応が実施されたあと、溶媒を蒸発させる。溶媒は廃ガス処理部207へ送られる。
【0128】
9.モジュールhより塩酸を加えてモジュールjから反応器に送液され、さらにモジュールfから導入されるヘリウムガスによって完全に反応器に送られた後、密閉して公知の方法により加水分解が行われる。
【0129】
10.加水分解終了後、モジュールfからモジュールcを経由して、反応器201にヘリウムガスが導入され、昇降装置で反応器下部まで到達したラインからモジュールjを経由して、加圧状態で反応溶液をモジュールgを経由して、製品回収部に送られる。この時、反応液は精製カラムを通過し、中和・精製されたプロダクトが、製品回収部のプロダクトバイアルPVに回収される。
【0130】
<応用例2、[18F]3-フルオロデオキシチミジン(FLT)の合成>
図14は、応用例2を説明するための図である。本例でも一例としてモジュールを12連にして使用する。応用例1と同様、各モジュールをa〜lで表示した。この時、基本モジュール101がb、c、e、f、j、lに、放射能測定モジュール102がkに、バネ駆動試薬注入モジュール104がa、d、g、h、iに使用されている。なお、本応用例においては、モーター駆動試薬注入モジュール103は使用されていない。
【0131】
かかるモジュール配置により、市販の装置によって多くの施設で一般的に行われている[18F]FLTの製造を行なうことが出来る。
【0132】
本応用例における製造は、表3に示す使い捨て部材を使用して実施される。これらの部材は、[18F]FLT製造に一般的に使用される部材である。各モジュールの位置によって、シリンジには表3に示す溶液が充填されている。
【表3】

【表4】

【0133】
三方活弁12個は、全て連結された後、ラック20に格納されたモジュールの三方活栓ホルダーに取り付けられる。このうち、モジュールaに取り付けられた三方活弁はシリンジと液溜502を経由して、ターゲット回収液供給部205とガス供給部206および廃ガス処理部207に接続されている。また、モジュールbは陰イオン交換カラムが取り付けられているモジュールkに、モジュールcは昇降装置を経由して反応器上部に、モジュールdはシリンジに、モジュールeはヘリウムガスに接続されている。さらにモジュールfは本システム系外のHPLCと接続され、モジュールg、h、iはシリンジと接続されている。モジュールjは昇降装置付きの反応部上部へ接続され、モジュールkは陰イオン交換カラムが装着され、kに装備された放射能測定モジュール102がカラムの放射能量を監視している。さらにモジュールlはターゲット回収バイアル203と廃液トラップ部204に接続されている。
【0134】
この時、合成反応は下記の段階をたどる。
【0135】
1.サイクロトロンあるいは加速器のターゲット部で製造された18F核種を含む18O水がガス圧力によって本システムのターゲット回収液供給部205(HF溶液回収部)からモジュールaの三方活弁に接続されている液溜502に供給される。18O水を搬送してきたガスは廃ガス処理部207へ送られる。
【0136】
2.ターゲットからの回収液(18O水)は、ガス供給部206からのガス圧力で液溜502から押し出され、モジュールcの三方活弁を経由してバイパスでモジュールkに送られ、陰イオン交換カラム506を通過してモジュールlの三方活弁と接続されているターゲット回収バイアル203に回収される。この時、18O水に含まれる18F核種はカラム506に吸着され、18O水と分離される。
【0137】
3.モジュールaから炭酸カルシウム・相間移動触媒溶液が導入され、モジュールa上部からのヘリウムガス加圧によりモジュールbを経由してモジュールkのカラムから18Fを溶出させ、モジュールjを経由して反応部内の反応容器201に回収する。
【0138】
4.溶液が完全に反応器に送られた後、加熱して、水分と溶媒が完全に除去される。溶媒等は廃ガス処理部207に送られる。
【0139】
5.モジュールdより原料を含むアセトニトリル溶液が吐出されモジュールcから反応器に加えモジュールeから導入されるヘリウムガスによって、完全に反応器に送られる。
【0140】
6.反応器を密閉し、130度で10分間加熱してフッ素化反応を行う。標識反応が実施された後、モジュールhより1M塩酸を加えてモジュールjから反応器に送液され、さらに、モジュールeから導入されるヘリウムガスによって完全に反応器に送られた後、密閉して120度で5分間加熱して加水分解が行われる。
【0141】
7.反応器を冷却後、80℃で1分間加熱し、溶媒中のアセトニトリルを留去する。溶媒は廃ガス処理部207へ送られる。
【0142】
8.反応器冷却後、モジュールgから酢酸ナトリウム溶液をモジュールjから攪拌し、モジュールcのガス圧で加圧してモジュールjの昇降駆動部でチューブを反応器最下部まで延ばして、溶液をモジュールjとfを経由してHPLCに導入する。
【0143】
9.HPLCで精製されたプロダクトを本システム外のロータリエバポレータに送り、溶媒を留去後生理食塩液に回収する。
【0144】
<応用例3、[18F]フルオロドーパ(FDOPA)の合成>
【0145】
本応用例では、モジュールを5連にして使用する。図15に応用例を示す。この時、図1aのモジュール位置の最下段からあるいは任意の位置から連続する5枚のモジュールを使用すればよい。使用しないモジュールは便宜上、パネルで密閉しておく。
【0146】
本合成例では、基本モジュール101をa、dに、モーター駆動試薬注入モジュールをb、c、eに用いる。
【0147】
本合成では、ターゲット回収ガスとして18F標識酢酸(アセチルハイポフロリド)が使用され、18F標識ドーパが製造される。
【0148】
本応用例における製造は、表5に示す使い捨て部材を使用して実施される。これらの部材は、[18F]FDOPA製造に一般的に使用される部材である。各モジュールの位置によって、シリンジには表6に示す溶液が充填されている。
【表5】

【表6】

【0149】
三方活弁5個は、全て連結された後、ラックに収容されたモジュールの三方活栓ホルダーに取り付けられる。このうち、モジュールaに取り付けられた三方活弁は、ターゲット回収液供給部205とガス供給部206に接続されている。また、モジュールbはシリンジに、モジュールcは昇降装置付きのチューブが反応器上部に接続している。モジュールdは装置外のHPLCと接続されており、モジュールeはシリンジと昇降装置付きのチューブを介して反応器と接続されている。
【0150】
この時、合成反応は下記段階をたどる。
【0151】
1.先ず反応容器201に、原料(4-ピバロイル-L-ドーパ)20mgの酢酸6mL溶液を加える。
【0152】
2.サイクロトロンあるいは加速器で製造された18F2を含むターゲットガス(ネオン)が、ガス圧力によって本システムのターゲット回収液供給部205(F2ガス回収部)内で酢酸ナトリウムカラムを通過させて、18F標識アセチルハイポフロリド(AcO18F)としてモジュールaに供給される。続いて、モジュールcに接続されている昇降装置がチューブを反応器下部に挿入してある反応容器201に導入され、バブリング回収される。この時点で標識反応が終了している。
【0153】
3.回収終了後、反応部で加熱して反応器内の溶媒を除去して、廃ガス処理部207に送液する。
【0154】
4.モジュールeから8Mの塩酸5mLを反応器に吐出し、モジュールaからヘリウムガスを送り、全量が反応器に導入され密閉状態で130度で加熱還流下30分間加水分解される。
【0155】
5.塩酸を減圧下留去する。溶液は廃ガス処理部207に送られる。
【0156】
6.モジュールbから水2mLを反応容器201に吐出し、モジュールaからヘリウムガスで全量を反応器に導入される。
【0157】
7.モジュールcのチューブを昇降装置で上部に戻して、モジュールeのチューブを昇降装置で反応器下部に挿入した状態でヘリウムガスを送り、反応溶液をモジュールeからモジュールdを経由してHPLCライン(系外)に移送される。
【0158】
8.反応液は全量がHPLCに導入され分離精製される。(本システム外)
【0159】
<応用例4、[11C]ラクロプライドの合成>
【0160】
モジュールを4連にして使用する。図15に応用例を示す。この時、図1aのモジュール位置の最下段からあるいは任意の位置から連続する4枚のモジュールを使用すればよい。使用しないモジュールは便宜上、パネルで密閉しておく。
【0161】
本合成例では、基本モジュール101をa、c、dに、モーター駆動試薬注入モジュール103をbに用いる。
【0162】
本応用例では別装置で製造した[11C]ヨウ化メチル、[11C]メチルトリフレートを使用し、本システムに導入することで、様々な11C標識化合物を製造する例を示す。
【0163】
本応用例における製造は、表7に示す使い捨て部材を使用して実施される。これらの部材は、[11C]ラクロプライド製造に一般的に使用される部材である。各モジュールの位置によって、シリンジには表8に示す溶液が充填されている。
【表7】

【表8】

【0164】
三方活弁4個は、全て連結された後、ラックに収容されたモジュールの三方活栓ホルダーに取り付けられる。このうち、モジュールaに取り付けられた三方活弁は[11C]メチルトリフレート(あるいは[11C]ヨウ化メチル)導入部および昇降装置付きのチューブで反応器上部に接続されている。また、モジュールbはシリンジに、モジュールcはガス供給部206に、モジュールdは装置外のHPLCおよび昇降装置付きのチューブで反応器上部に接続されている。
【0165】
この時、合成反応は下記段階をたどる。
【0166】
1.反応器に合成原料(DMRトリフルオロスルホン酸(2μmol,0.97mg)をアセトン(0.4mL)に溶解後、0.5MのNaOH(15μL)を加えたもの)を加える。
【0167】
2.[11C]メチルトリフレートを回収し、室温でトラップさせる。
【0168】
3.反応液にモジュールbから10mMリン酸を加える。
【0169】
4.モジュールaに接続されているチューブにモジュールcからヘリウムガスを導入し、モジュールdと接続されているチューブを反応器下部に挿入した状態で反応液をモジュールdからHPLCに導入する。
【0170】
5.精製されたラクロプライドはロータリーエバポレータ(装置外)で溶媒を除いて回収する。
【0171】
上記応用例1から4により、本発明の実施形態が、モジュールの位置や数、種類を、製造すべき化合物に応じて適切に選択・配置することにより、様々な化合物の製造へとシステムを容易に再構成し、適合させうることが理解されうるだろう。このような柔軟性は、とりわけ製造段階を検討する必要のある実験研究施設や、多種類の化合物を製造する施設にとって、非常に有益な利点である。
【0172】
〔化合物製造への具体的応用へ有用な更なる情報〕
【0173】
以下に、本発明を様々な放射性薬剤の製造へ応用する場合に有用と思われる製造上の知見を載せておく。
【0174】
病院内の小型サイクロトロンで製造されるPET診断用核種は、一般的に半減期が短い。例えば、酸素(15O)は約2分、窒素(13N)は約10分、炭素(11C)は約20分、フッ素(18F)は約110分である。この中ではフッ素(18F)は比較的半減期が長いため、臨床において最も多く使用されている。フッ素化合物は、原料として使用される化学形として主に[18F]HFから製造されるが、一部の化合物については[18F]F2から製造される。
【0175】
ここでは先ず、[18F]HFから製造される化合物に関する標識化合物の製造方法に関する情報を記す。半減期が短い核種の製造は、通常の反応と異なり、短時間で製造を完了させなければならない。従って、複雑な反応流路を有する化合物を製造することはできず、一般には18F標識の一歩手前まで合成されたものを標識合成の原料(以下、"プレカーサ"と称する)として標識が行なわれる。このプレカーサに対し、合成装置では1回、あるいは多くても2回の標識化反応を行なうことにより、18F標識化合物は合成され、製剤化(分離精製と生理食塩液への溶解)をへて、注射剤として診断に利用される。この時、これらの時間的制約から、反応の形態は比較的画一化される。つまり、通常の反応では、反応の回数や反応に用いる試薬の数や種類などが異なっても、一般的に次の反応プロセスを経由して合成される。
1.18Fを陰イオンカラムでターゲット液から分離回収する。
2.18Fを、K2CO水溶液などを用いて陰イオンカラムから溶出する。
3.反応器に導入し、水分を除去する。
4.原料と触媒を加えて標識反応を行う。
5.原料から有機溶媒を除く。
6.原料を加水分解する(原料が特定の位置にしか入らないように官能基を保護する保護基を外す)。
7.原料を精製する(イオン交換カラム、HPLCなどを用いて目的物を分離する)。
【0176】
このプロセスを経由する反応としては、たとえば、[18F]2-フルオロデオキシ-グルコース(FDG)、 [18F]3-フルオロデオキシチミジン(FLT)、[18F]フルオロエストラジオール(FES)、[18F]フルオロミソニダゾール(FMISO)などが挙げられる。
【0177】
次に[18F]F2から製造される化合物に関する標識化合物の製造方法に関する適用例を述べる。
【0178】
[18F]F2はガスに同伴されて直接、あるいは酢酸ナトリウムカラムを通過させ、アセチルハイポ[18F]CHCOOFとして装置に導入され、反応器でバブリングによって回収され、反応に供される。回収された後の反応工程は[18F]HFと大きく異なるものではない。通常の反応では、反応の回数や反応に用いる試薬などが異なっても、一般的に次の反応プロセスを経由して合成される。
1.反応器に原料を含む溶液を導入する。
2.反応器にサイクロトロンで製造された[18F]F2あるいは[18F]アセチルハイポを導入する。
3.加熱してF2付加反応を促進させる。
4.酸またはアルカリ溶液を加えて加水分解を行う。あるいは加えずに反応溶媒を留去する。
5.加熱して溶媒を留去する。
6.蒸留水を供給して回収する。あるいはHPLC溶離液を加えてHPLCにより分離精製する。
【0179】
このプロセスを経由する反応としては、たとえば、[18F]フルオロドーパ、[18F]フルオロフェニルアラニン、[18F]ボロノフェニルアラニンなどの化合物が製造される。
【0180】
また、[11C]化合物においては、半減期が20分とさらに短い。そのため、反応の形態は概ね画一化している。
【0181】
合成は、[11C]ヨウ化メチルあるいは[11C]メチルトリフレートを製造する装置とそれらを用いて誘導体を製造する装置に分離できる。ここでは合成原料([11C]ヨウ化メチル、[11C]メチルトリフレート)の製造についての説明は除く。ちなみに、[11C]ヨウ化メチル、[11C]メチルトリフレートの合成は例えば、GE社製MicroLab-FX-MeIなどの市販の専用装置が使用できる。
【0182】
[11C]化合物については一般的に次の反応プロセスを経由して合成される。
1.プレカーサを所定の溶媒に溶解して反応器に導入する。
2.[11C]ヨウ化メチルあるいは[11C]メチルトリフレートを反応器にバブリング導入する。場合によっては反応液を加熱しながら導入する。
3.反応器にアルカリ、塩などの試薬を供給する。反応液を留去するか、あるいは留去せず直ちに反応液にHPLC溶離液などを加えてHPLCにより分離する。
【0183】
この反応ではたとえば、[11C]メチオニン、[11C]FLB457、[11C]コリン、[11C]SCH23390、[11C]ラクロプライド、[11C]N-メチルスピペロン、[11C]β-CFT、[11C]N-メチル-3-ピペリジルベンジレート(NMPB)、[11C]ドネペエジル、[11C]フルマゼニルなどの化合物が製造できる。
【0184】
以上、本発明の好適な実施例の詳細について説明してきたが、これらの説明や図面は本発明の範囲を限定する意図で提示されたものではなく、あくまで本発明の理解に資すべく提示されたものに過ぎないことは理解されたい。本発明の好適な実施形態のいくつかは、添付の特許請求の範囲に特定されているが、本発明の実施形態は、特許請求の範囲や明細書及び図面に明示的に記載されるものに限定されず、本発明の思想を逸脱することなく、様々な形態をとることが可能である。本発明は、本願特許請求の範囲や明細書及び図面に明示的に開示されるか否かにかかわらず、これらの書類から感得されうるあらゆる新規かつ有益な構成を、その範囲に含むものである。
【符号の説明】
【0185】
10a〜10l モジュール
11 内レール
12 前面パネル
20 ラック
22a〜22c 回路
30,30' 制御要素
32 ケーブル
34 記憶装置
38 外部インタフェース
40 ユーザインタフェース
50 薬剤製造流路カートリッジ
100,100' 薬剤合成システム
101〜104 モジュール
201 反応容器
202 カメラ部
203 ターゲット水回収バイアル
204 廃液トラップ部
205 ターゲット回収液供給部
206 ガス供給部
207 廃ガス処理部
208 モジュール収容スロット
209 スライドレール
210 液溜ホルダー
502 液溜
503a〜e シリンジ
504 精製カラム
506 陰イオン交換カラム
1020 ラック
1021 放射線検出部
1022 支持アーム
1023 電気構成部品
1030 制御回路
1031 シリンジ固定治具
1032 シリンジ駆動用モータ
1041 治具
1042 バネ機構
1100 薬剤合成システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤製造用の機能を搭載する複数のモジュールを入れ替え自在且つ一列に収容しうる収容部と、
前記収容部に収容されうる前記モジュールの1つ1つに対して用意される接続端子と、
前記接続端子の各々に信号を供給しうる信号供給回路と、
を備え、前記信号供給回路が、前記接続端子のうち少なくとも1つに対し、該接続端子に接続される前記モジュールに備えられるバルブ駆動装置を動作させるための信号を出力しうるように構成される、
薬剤製造システム用ラック。
【請求項2】
薬剤反応容器、薬剤反応容器の加熱機構、薬剤反応容器の撹拌機構、薬剤反応を観察するための画像監視装置、放射線検出機構、ガス供給機構、廃ガス処理機構、ターゲット回収液供給機構、廃液回収機構の少なくとも1つを更に備える、請求項1に記載の薬剤製造システム用ラック。
【請求項3】
前記収容部が、前記モジュールを複数の列に収容しうるように構成される、請求項1または2に記載の薬剤製造システム用ラック。
【請求項4】
前記信号供給回路は、前記接続端子のうち少なくとも1つに対し、該接続端子に接続される前記モジュールに備えられるシリンジ駆動装置を動作させるための信号を出力しうるように構成される、請求項1から3のいずれかに記載の薬剤製造システム用ラック。
【請求項5】
前記信号供給回路は、前記接続端子のうち少なくとも1つに対し、該接続端子に接続される前記モジュールに備えられる放射線検出装置を制御するための信号を出力しうるように構成される、請求項1から4のいずれかに記載の薬剤製造システム用ラック。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載の薬剤製造システム用ラックに組み合わされて使用される薬剤製造システム用制御装置であって、前記バルブ駆動装置を動作させるための前記信号を生成しうるように構成される、薬剤製造システム用制御装置。
【請求項7】
プログラムによって制御されることにより、前記薬剤製造システム用ラックの複数の前記接続端子に対して、前記プログラムによって定められる順序および/またはタイミングで、前記バルブ駆動装置を動作させるための前記信号を供給するように構成される、請求項6に記載の薬剤製造システム用制御装置。
【請求項8】
前記薬剤製造システム用ラックの複数の前記接続端子の少なくとも1つに関して、該接続端子を介した信号のやり取りにより、該接続端子に接続された、薬剤製造用の機能を搭載する前記モジュールのタイプおよび/または機能を特定しうるように構成されると共に、前記特定したモジュールのタイプおよび/または機能に関する情報を外部に出力しうるように構成される、請求項6または7に記載の薬剤製造システム用制御装置。
【請求項9】
前記バルブ駆動装置を動作させるための前記信号は、該バルブ駆動装置のハードウェアを直接駆動するための駆動信号である、請求項6から8のいずれかに記載の薬剤製造システム用制御装置。
【請求項10】
前記バルブ駆動装置を動作させるための前記信号は、該バルブ駆動装置の動作を制御するコンピュータに用いられる情報である、請求項6から9のいずれかに記載の薬剤製造システム用制御装置。
【請求項11】
請求項4に記載の薬剤製造システム用ラックに組み合わされて使用される薬剤製造システム用制御装置であって、前記バルブ駆動装置を動作させるための前記信号および/または前記シリンジ駆動装置を動作させるための前記信号を生成しうるように構成される、薬剤製造システム用制御装置。
【請求項12】
請求項4に記載の薬剤製造システム用ラックに組み合わされて使用される薬剤製造システム用制御装置であって、前記バルブ駆動装置を動作させるための前記信号および/または前記放射線検出装置を制御するための前記信号を生成しうるように構成される、薬剤製造システム用制御装置。
【請求項13】
請求項6から12のいずれかの薬剤製造システム用制御装置に用いられるコンピュータ・プログラムであって、前記制御装置のCPUに対して、所定の順序および/またはタイミングで、前記バルブ駆動装置を動作させるための前記信号を生成することを命令するように構成される、コンピュータ・プログラム。
【請求項14】
請求項6から10のいずれかに記載の薬剤製造システム用制御装置を内蔵する、請求項1から3のいずれかに記載の薬剤製造システム用ラック。
【請求項15】
請求項11に記載の薬剤製造システム用制御装置を内蔵する、請求項4に記載の薬剤製造システム用ラック。
【請求項16】
請求項12に記載の薬剤製造システム用制御装置を内蔵する、請求項5に記載の薬剤製造システム用ラック。
【請求項17】
請求項1から3のいずれか、または請求項14に記載の薬剤製造システム用ラックの前記収容部に収容される、薬剤製造システム用のモジュールであって、
薬剤製造流路の一部を構成するバルブを保持するバルブ保持部と、
前記バルブ保持部に保持されたバルブの流路切り替えを行うためのバルブ駆動装置と、
前記薬剤製造システム用ラックの前記接続端子と接続するモジュール側接続端子と、
を備え、前記薬剤製造システム用ラックの前記接続端子から前記モジュール側接続端子へ供給される、前記バルブ駆動装置を動作させるための前記信号に基づいて、前記バルブ駆動装置が駆動されるように構成される、薬剤製造システム用モジュール。
【請求項18】
前記バルブ保持部は、前記収容部に収容された状態において、前記ラックの表面に露出するように配置されると共に、前記収容部に収容される他の複数のモジュールのバルブ保持部に対して同一線上に並ぶ位置に配置される、請求項17に記載の薬剤製造システム用モジュール。
【請求項19】
自身のタイプおよび/または機能を特定しうる情報を格納する記憶部を備え、前記モジュール側接続端子を通じて該情報を外部へ出力しうるように構成される、請求項17または18に記載の薬剤製造システム用モジュール。
【請求項20】
前記バルブ駆動装置が、前記モジュール側接続端子を介して供給される、前記バルブ駆動装置を動作させるための前記信号によって、直接駆動されるように構成される、請求項17から19のいずれかに記載の薬剤製造システム用モジュール。
【請求項21】
薬剤反応容器、薬剤反応容器の加熱機構、薬剤反応容器の撹拌機構、薬剤反応を観察するための画像監視装置、放射線検出機構、ガス供給機構、廃ガス処理機構、ターゲット回収液供給機構、廃液回収機構の少なくとも1つを更に備える、請求項17から20のいずれかに記載の薬剤製造システム用モジュール。
【請求項22】
前記バルブ駆動装置を動作させるための前記信号に基づいて、前記バルブ駆動装置の動作を制御するように構成されるコンピュータを更に備える、請求項17から21のいずれかに記載の薬剤製造システム用モジュール。
【請求項23】
請求項4または15に記載の薬剤製造システム用ラックの前記収容部に収容される、薬剤製造システム用のモジュールであって、
薬剤製造流路の一部を構成するバルブを保持するバルブ保持部と、
前記バルブ保持部に保持されたバルブの流路切り替えを行うためのバルブ駆動装置と、
薬剤製造流路の一部を構成するシリンジを保持するシリンジ保持部と、
前記シリンジ保持部に保持されたシリンジを動かすためのシリンジ駆動部と、
前記薬剤製造システム用ラックの前記接続端子と接続するモジュール側接続端子と、
を備え、前記薬剤製造システム用ラックの前記接続端子から前記モジュール側接続端子へ供給される、前記バルブ駆動装置を動作させるための前記信号に基づいて、前記バルブ駆動装置が駆動されるように構成されると共に、該接続端子から前記モジュール側接続端子へ供給される、前記シリンジ駆動装置を動作させるための信号に基づいて、前記シリンジ駆動装置が駆動されるように構成される、薬剤製造システム用モジュール。
【請求項24】
請求項5または16に記載の薬剤製造システム用ラックの前記収容部に収容される、薬剤製造システム用のモジュールであって、
薬剤製造流路の一部を構成するバルブを保持するバルブ保持部と、
前記バルブ保持部に保持されたバルブの流路切り替えを行うためのバルブ駆動装置と、
放射線検出装置と、
前記薬剤製造システム用ラックの前記接続端子と接続するモジュール側接続端子と、
を備え、前記薬剤製造システム用ラックの前記接続端子から前記モジュール側接続端子へ供給される、前記バルブ駆動装置を動作させるための前記信号に基づいて、前記バルブ駆動装置が駆動されるように構成されると共に、該接続端子から前記モジュール側接続端子へ供給される、前記放射線検出装置を制御するための信号に基づいて、薬剤製造プロセスにおける放射線検出を行うように構成される、薬剤製造システム用モジュール。
【請求項25】
請求項1から3のいずれかに記載の薬剤製造システム用ラックと、
請求項6から10のいずれかに記載の薬剤製造システム用制御装置と、
請求項17から22のいずれかに記載の薬剤製造システム用モジュールと、
を有する、薬剤製造システム。
【請求項26】
請求項5に記載の薬剤製造システム用ラックと、
請求項11に記載の薬剤製造システム用制御装置と、
請求項23に記載の薬剤製造システム用モジュールと、
を有する、薬剤製造システム。
【請求項27】
請求項14に記載の薬剤製造システム用ラックと、
請求項12に記載の薬剤製造システム用制御装置と、
請求項24に記載の薬剤製造システム用モジュールと、
を有する、薬剤製造システム。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−270068(P2010−270068A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123696(P2009−123696)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000230250)日本メジフィジックス株式会社 (75)
【出願人】(594118958)株式会社ユニバーサル技研 (11)
【Fターム(参考)】