説明

化合物半導体太陽電池セル

【課題】大面積で作製した場合でも、優れた光電変換特性を有するセルを歩留まり良く製造することができる化合物半導体太陽電池セルを提供する。
【解決手段】格子定数差の大きいサブセルの間に中間第一層83、中間第二層82および中間第三層81を含む中間層35を設けて格子不整合を緩和した化合物半導体太陽電池セルであって、第2のサブセル36に最も近い位置に配置されている中間第一層83と中間第一層83に隣接する中間第二層82との間の格子定数差の比である第1格子定数差比が、中間第二層82に隣接する中間第三層81と中間第二層82との間の格子定数差の比である第2格子定数差比よりも大きく、かつ第1格子定数差比が0.78%以下であって、複数層の隣接する層間のそれぞれの格子定数差比が第1のサブセル34に近づくにつれて小さくなる化合物半導体太陽電池セルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体太陽電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池セルとも称される光電池は、過去数年間に利用できるようになった最も重要な新規エネルギ源の一つである。
【0003】
従来の化合物半導体太陽電池セルを高効率化する方法としては、半導体基板上に半導体基板と同程度の格子定数を有する化合物半導体層を成長させて複数個のサブセルを形成することによって、結晶性に優れた化合物半導体太陽電池セルを製造する方法が用いられてきた。
【0004】
しかしながら、化合物半導体層を成長させるための主な半導体基板となるSi、Ge、GaAsまたはInPなどと同程度の格子定数を有し、さらに好適なバンドギャップを有するサブセルを用いた化合物半導体太陽電池セルとしては、GaAs基板を用いたGaInP/GaAs化合物半導体太陽電池セルや、Ge基板を用いたGaInP/GaAs/Ge化合物半導体太陽電池セルに限られていた。
【0005】
これらの化合物半導体太陽電池セルをさらに高効率化する方法として、1eV程度のバンドギャップを有するサブセルをさらに追加することが考えられている。
【0006】
しかしながら、GaAs基板あるいはGe基板と格子定数が同等で、バンドギャップが1eV程度の適当な半導体が存在しない。たとえば、1eV程度のバンドギャップを有するGaInAs層はGaAs基板と格子定数差比が2.3%程度もある。
【0007】
したがって、GaAs基板上にGaInAs層を成長させた場合には、結晶性の悪いGaInAs層しか得られず、GaInAs層上にGaInP層などの他の化合物半導体層を成長させた場合でも結晶性の悪い化合物半導体層しか得られないため、化合物半導体太陽電池セル全体の変換効率が低下するおそれがあった。
【0008】
このような問題を解決するために、たとえば特許文献1には、GaAs基板と格子整合したGaInPサブセルおよびGaAsサブセルと、GaAsと格子整合していないGaInAsサブセルと、GaAsサブセルとGaInAsサブセルとの間に、GaAs基板に対する格子定数が一定の相対値で階段状に変化する計10層からなるGaInP中間層を有する化合物半導体太陽電池セルが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−182951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1に記載の化合物半導体太陽電池セルを小面積で作製した場合には、優れた光電変換特性を示す化合物半導体太陽電池セルが得られる。
【0011】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の化合物半導体太陽電池セルを大面積で作製した場合には、化合物半導体太陽電池セルの作製途中で割れが発生し、優れた光電変換特性を示さなくなり、歩留まりが低下することが多かった。
【0012】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、大面積で作製した場合でも、優れた光電変換特性を有するセルを歩留まり良く製造することができる化合物半導体太陽電池セルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第1のサブセルと、第1のサブセル上に設けられた第2のサブセルと、第2のサブセル上に設けられた第3のサブセルと、第1のサブセルと第2のサブセルとの間に設けられた中間層とを備え、第1のサブセルは、第1のバンドギャップを有する第1の化合物半導体を含み、第2のサブセルは、第2のバンドギャップを有する第2の化合物半導体を含み、第3のサブセルは、第3のバンドギャップを有する第3の化合物半導体を含み、中間層は、第4のバンドギャップを有する第4の化合物半導体を含む複数層を有し、複数層を構成するそれぞれの層は、第2のサブセル側から第1のサブセル側にかけて、格子定数が増加するように配置されており、複数層は、第2のサブセルに最も近い位置に配置されている中間第一層と、中間第一層に隣接する中間第二層と、中間第二層に隣接する中間第三層とを有しており、中間第二層と中間第一層との間の格子定数差の比である第1格子定数差比が、中間第三層と中間第二層との間の格子定数差の比である第2格子定数差比よりも大きく、第1格子定数差比が0.78%以下であって、複数層の隣接する層間のそれぞれの格子定数差比が第1のサブセルに近づくにつれて小さくなる化合物半導体太陽電池セルである。
【0014】
また、本発明の化合物半導体太陽電池セルにおいて、第4の化合物半導体は、AlaGabIncP(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、a+b+c≠0)の式で表わされる化合物半導体を含むことが好ましい。
【0015】
また、本発明の化合物半導体太陽電池セルにおいて、第1の化合物半導体は、0.8eV以上1.2eV以下の範囲のバンドギャップを有するGadIneAs(0≦d≦1、0<e≦1、d+e≠0)の式で表わされる化合物半導体を含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明の化合物半導体太陽電池セルにおいて、第2の化合物半導体は、1.3eV以上1.5eV以下の範囲のバンドギャップを有するGafIngAs(0≦f≦1、0≦g≦1、f+g≠0)の式で表わされる化合物半導体を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、大面積で作製した場合でも、優れた光電変換特性を有するセルを歩留まり良く製造することができる化合物半導体太陽電池セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は実施の形態および実施例の化合物半導体太陽電池セルの模式的な断面構成図であり、(b)は(a)に示す実施の形態および実施例の化合物半導体太陽電池セルの中間層を構成する各化合物半導体層の格子定数の変化を示す図である。
【図2】実施の形態および実施例の化合物半導体太陽電池セルの製造方法の一例の製造工程の一部について図解する模式的な断面構成図である。
【図3】実施の形態および実施例の化合物半導体太陽電池セルの製造方法の一例の製造工程の他の一部について図解する模式的な断面構成図である。
【図4】実施の形態および実施例の化合物半導体太陽電池セルの製造方法の一例の製造工程の他の一部について図解する模式的な断面構成図である。
【図5】(a)は比較例1の化合物半導体太陽電池セルの模式的な断面構成図であり、(b)は(a)に示す比較例1の化合物半導体太陽電池セルの中間層を構成する各化合物半導体層の格子定数の変化を示す図である。
【図6】(a)は比較例2の化合物半導体太陽電池セルの模式的な断面構成図であり、(b)は(a)に示す比較例2の化合物半導体太陽電池セルの中間層を構成する各化合物半導体層の格子定数の変化を示す図である。
【図7】(a)は比較例3の化合物半導体太陽電池セルの模式的な断面構成図であり、(b)は(a)に示す比較例3の化合物半導体太陽電池セルの中間層を構成する各化合物半導体層の格子定数の変化を示す図である。
【図8】(a)は比較例4の化合物半導体太陽電池セルの模式的な断面構成図であり、(b)は(a)に示す比較例4の化合物半導体太陽電池セルの中間層を構成する各化合物半導体層の格子定数の変化を示す図である。
【図9】(a)は比較例5の化合物半導体太陽電池セルの模式的な断面構成図であり、(b)は(a)に示す比較例5の化合物半導体太陽電池セルの中間層を構成する各化合物半導体層の格子定数の変化を示す図である。
【図10】(a)は比較例6の化合物半導体太陽電池セルの模式的な断面構成図であり、(b)は(a)に示す比較例6の化合物半導体太陽電池セルの中間層を構成する各化合物半導体層の格子定数の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0020】
図1(a)に、本発明の化合物半導体太陽電池セルの一例である本実施の形態の化合物半導体太陽電池セルの模式的な断面構成図を示し、図1(b)に、図1(a)に示す本実施の形態の化合物半導体太陽電池セルの中間層を構成する各化合物半導体層の格子定数の変化を示す。なお、図1(b)においては、中間層以外の層の格子定数の変化についてはその記載を省略している。また、図1(b)の横軸の右側に進むにつれて格子定数が大きくなることを示している。
【0021】
図1(a)に示すように、本実施の形態の化合物半導体太陽電池セルにおいては、Si支持基板33(例えば厚さ300μm)上に、支持基板33側からAu層(例えば厚さ3μm)とAg層(例えば厚さ0.1μm)とがこの順序で積層された金属層1と、p型GaInAsからなるコンタクト層2(例えば厚さ0.5μm)とがこの順序で積層されている。
【0022】
コンタクト層2上には、p型GaInPからなるBSF層3(例えば厚さ0.1μm)、p型GaInAsからなるベース層4(例えば厚さ3.0μm)、n型GaInAsからなるエミッタ層5(例えば厚さ0.1μm)およびn型GaInPからなる窓層6(例えば厚さ0.1μm)がこの順序で積層されている。なお、ベース層4とエミッタ層5との接合体から第1のサブセル34が構成されている。
【0023】
窓層6上には、n型Ga0.22In0.78Pからなる中間第七層77(例えば厚さ1μm)、n型Ga0.23In0.77Pからなる中間第六層78(例えば厚さ0.25μm)、n型Ga0.26In0.74Pからなる中間第五層79(例えば厚さ0.25μm)、n型Ga0.30In0.70Pからなる中間第四層80(例えば厚さ0.25μm)、n型Ga0.35In0.65Pからなる中間第三層81(例えば厚さ0.25μm)、n型Ga0.42In0.58Pからなる中間第二層82(例えば厚さ0.25μm)およびn型Ga0.52In0.48Pからなる中間第一層83(例えば厚さ0.25μm)がこの順序で積層されている。なお、中間第七層77、中間第六層78、中間第五層79、中間第四層80、中間第三層81、中間第二層82および中間第一層83の積層体から中間層35が構成されている。
【0024】
中間第一層83上には、n型GaAsからなる中間バッファ層16(例えば厚さ0.1μm)、n型AlGaAsからなるトンネル層17、およびp型AlGaAsからなるトンネル層18がこの順に積層されている。なお、中間バッファ層16は積層しなくてもよい。
【0025】
トンネル層18上には、p型AlInPからなるBSF層19(例えば厚さ0.1μm)、p型GaAsからなるベース層20(例えば厚さ3.0μm)、n型GaAsからなるエミッタ層21(例えば厚さ0.1μm)、およびn型AlInPからなる窓層22(例えば厚さ0.1μm)がこの順に積層されている。ベース層20とエミッタ層21との接合体から第2のサブセル36が構成されている。
【0026】
窓層22上には、n型AlGaAsからなるトンネル層23およびp型AlGaAsからなるトンネル層24がこの順序で積層されている。
【0027】
トンネル層24上には、p型AlInPからなるBSF層25(例えば厚さ0.1μm)、p型GaInPからなるベース層26(例えば厚さ1.0μm)、n型GaInPからなるエミッタ層27(例えば厚さ0.1μm)、およびn型AlInPからなる窓層28(例えば厚さ0.1μm)がこの順序で積層されている。ベース層26とエミッタ27層との接合体から第3のサブセル37が構成されている。
【0028】
窓層28上には、n型GaAs層29(例えば厚さ0.5μm)および金属層30(例えば厚さ5.0μm)が形成されている。
【0029】
なお、本実施の形態の化合物半導体太陽電池セルにおいて、下部の第1のサブセル34を構成する第1の化合物半導体(GaInAs)の第1のバンドギャップ、中間の第2のサブセル36を構成する第2の化合物半導体(GaAs)の第2のバンドギャップ、および上部の第3のサブセル37を構成する第3の化合物半導体(GaInP)の第3のバンドギャップの順にバンドギャップが大きくなっている。
【0030】
ここで、本実施の形態の化合物半導体太陽電池セルにおいて、(i)下部の第1のサブセル34を構成する第1の化合物半導体(GaInAs)は、0.8eV以上1.2eV以下の範囲のバンドギャップを有するGadIneAs(0≦d≦1、0<e≦1、d+e≠0)の式で表わされる化合物半導体であることが好ましい。なお、上記の式中の「d」はGaの組成比を示し、「e」はInの組成比を示す。
【0031】
また、(ii)中間の第2のサブセル36を構成する第2の化合物半導体(GaAs)は、1.3eV以上1.5eV以下の範囲のバンドギャップを有するGafIngAs(0≦f≦1、0≦g≦1、f+g≠0)の式で表わされる化合物半導体であることが好ましい。なお、上記の式中の「f」はGaの組成比を示し、「g」はInの組成比を示す。
【0032】
さらに、(iii)上部の第3のサブセル37を構成する第3の化合物半導体(GaInP)は、1.8eV以上2eV以下の範囲のバンドギャップを有するGahIniP(0≦h≦1、0≦i≦1、h+i≠0)の式で表わされる化合物半導体であることが好ましい。なお、上記の式中の「h」はGaの組成比を示し、「i」はInの組成比を示す。
【0033】
少なくとも上記の(i)の条件を満たしていることによって、太陽光をより有効に光電変換できるため、本実施の形態の化合物半導体太陽電池セルの理論光電変換効率を45%以上とすることができる。また、上記の(i)の条件に加えて、上記の(ii)および(iii)の少なくとも1つ、好ましくは上記の(ii)および(iii)のすべての条件を満たしていることによって、太陽光をさらに有効に光電変換できるため、本実施の形態の化合物半導体太陽電池セルの理論光電変換効率をさらに高くすることができる傾向が大きくなる。
【0034】
以下、図2〜図4の断面構成図を参照して、図1に示す本実施の形態の化合物半導体太陽電池セルの製造方法の一例について説明する。
【0035】
まず、図2に示すように、n型GaAsからなる大面積の表面を有する成長基板32をMOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)装置内に設置し、MOVPE法により、成長基板32の表面上に、n型GaAs層41、n型GaInP層42およびn型GaAs層29をこの順序でエピタキシャル成長させる。
【0036】
次に、n型GaAs層29上に、窓層28、エミッタ層27、ベース層26およびBSF層25をこの順序でMOVPE法によりエピタキシャル成長させる。
【0037】
次に、BSF層25上に、トンネル層24、トンネル層23、窓層22、エミッタ層21、ベース層20およびBSF層19をこの順序でMOVPE法によりエピタキシャル成長させる。
【0038】
次に、BSF層19上に、トンネル層18、トンネル層17、および中間バッファ層16をこの順序でMOVPE法によりエピタキシャル成長させる。
【0039】
次に、中間バッファ層16上に、中間第一層83、中間第二層82、中間第三層81、中間第四層80、中間第五層79、中間第六層78および中間第七層77をこの順序でMOVPE法によりエピタキシャル成長させる。
【0040】
次に、中間第七層77上に、窓層6、エミッタ層5、ベース層4、BSF層3およびコンタクト層2をこの順序でMOVPE法によりエピタキシャル成長させる。
【0041】
次に、図3に示すように、コンタクト層2の表面上にコンタクト層2側からAg層(例えば厚さ0.1μm)とAu(例えば厚さ3μm)とをこの順序で積層することによって金属層1を形成し、その後、金属層1にSi支持基板33を貼り付ける。
【0042】
次に、図4に示すように、n型GaAs基板32とn型GaAs層41とをアルカリ水溶液でエッチングして除去した後に、n型GaInP層42を酸水溶液でエッチングして除去する。
【0043】
次に、n型GaAs層29上にフォトリソグラフィ技術によりレジストパターンを形成した後、n型GaAs層29の一部をアルカリ水溶液を用いたエッチングにより除去する。その後、残されたn型GaAs層29上に、再度フォトリソグラフィ技術によりレジストパターンを形成し、真空蒸着法により、例えばAg層、Ni層およびAuGe層がこの順序で積層された積層体からなる金属層30を形成する。
【0044】
その後、メサエッチングパターンを形成した後、アルカリ水溶液および酸水溶液を用いて、メサエッチングを行なう。これにより、図1(a)に示す構成の本実施の形態の化合物半導体太陽電池セルを製造することができる。
【0045】
図1(b)に示すように、本実施の形態の化合物半導体太陽電池セルの中間層35を構成するそれぞれの層は、第2のサブセル36側から第1のサブセル34側にかけて、格子定数が増加するように配置されている。
【0046】
また、中間第二層82と中間第一層83との間の格子定数差の比である第1格子定数差比が0.78以下であって、中間第三層81と中間第二層82との間の格子定数差の比である第2格子定数差比よりも大きくなっている。
【0047】
さらに、中間層35を構成する複数層の隣接する層間のそれぞれの格子定数差比が、第1のサブセル34に近づくにつれて小さくなっている。
【0048】
本発明者は、中間層35のエピタキシャル成長初期に形成される層については、隣接する層間の格子定数差比をより大きな値とし、エピタキシャル成長の進行につれて格子定数差比を小さくしていくことによって、格子定数差に起因して生じる応力を十分に緩和することができ、結晶内に蓄積される残留応力が少ない結晶成長が可能となることを見い出した。
【0049】
そして、本発明者は、上記のように中間層35を形成することによって、化合物半導体太陽電池セルをたとえば4cm2以上といった大面積の表面を有するように作製した場合でも、成長基板32を除去したときの化合物半導体太陽電池セルの割れの発生を大幅に抑制することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0050】
すなわち、本実施の形態によれば、化合物半導体太陽電池セルを大面積で作製した場合でも、成長基板を除去したときの化合物半導体太陽電池セルの割れの発生を抑制することができることから、優れた光電変換特性を示す化合物半導体太陽電池セルを歩留まり良く製造することができる。
【0051】
なお、格子定数差比(%)は、中間層35を構成する複数層のうち、隣接する中間第x層の格子定数をaxとし、中間第(x+1)層の格子定数をax+1としたとき、中間第(x+1)層と中間第x層との格子定数差比△x(%)は、下記の式(1)により算出することができる。
格子定数差比△x(%)=100×(ax+1−ax)/ax …(1)
【0052】
図1(b)に示すように、本実施の形態の化合物半導体太陽電池セルにおいては、成長基板の格子定数に対する、中間層35を構成する複数層の隣接する層間のそれぞれの格子定数差比は、以下のようになっている。
中間第二層と中間第一層との格子定数差比△1=0.78(%)
中間第三層と中間第二層との格子定数差比△2=0.52(%)
中間第四層と中間第三層との格子定数差比△3=0.42(%)
中間第五層と中間第四層との格子定数差比△4=0.31(%)
中間第六層と中間第五層との格子定数差比△5=0.21(%)
中間第七層と中間第六層との格子定数差比△6=0.10(%)
すなわち、本実施の形態の化合物半導体太陽電池セルにおいては、第1格子定数差比と第2格子定数差比との関係は、△1>△2であると言い換えることができる。
【0053】
また、中間層35を構成する複数層の隣接する層間のそれぞれの格子定数差比は、第1のサブセル34に近づくにつれて小さくなっている。すなわち、本実施の形態においては、△1>△2>△3>△4>△5>△6の関係を満たしている。この場合には、結晶内に蓄積される残留応力による歪みエネルギをさらに小さくすることができ、良好な結晶性の第1のサブセル34を形成することができるため、優れた光電変換特性を有する化合物半導体太陽電池セルを歩留まり良く製造することができる。
【0054】
また、中間層35を構成する第4の化合物半導体は、AlaGabIncP(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、a+b+c≠0)の式で表わされる化合物半導体であることが好ましい。通常のエピタキシャル成長装置には、Al、Ga、InおよびPなどの材料が具備されていることから、材料を追加する必要がなく、製造コストを低減することができる傾向にある。また、他の化合物半導体と比較すると、AlaGabIncP(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、a+b+c≠0)の式で表わされる化合物半導体は高温成長が可能であり、結晶性が高く、より高品質の良好な結晶を形成することができる傾向にある。また、高温成長が可能であるため、サブセルの成長温度に近い温度で成長することができることから、サブセルの成長時の成長温度を下げるのに必要な無駄な成長時間を短くすることができ、化合物半導体太陽電池セルの製造コストを低減することができる傾向にある。なお、上記の式において、「a」はAlの組成比を示し、「b」はGaの組成比を示し、「c」はInの組成比を示す。
【0055】
第1格子定数差比(△1)は、0.26%以上であることが好ましく、0.52%以上であることがより好ましい。この場合には、格子定数差の緩和に必要な中間第二層82を厚く形成する必要がないため、中間第二層82のエピタキシャル成長時間を短くすることができる。そのため、この場合には、化合物半導体太陽電池セルの量産性を向上することができる。
【0056】
中間第二層82の厚さt2は、t2=1(nm)/△1以上であることが好ましい。中間第二層82の厚さt2が1(nm)/△1以上である場合には、中間第二層82と中間第一層83との格子定数差に起因して発生する歪を十分に緩和することができる傾向にある。なお、上記の中間第二層82の厚さt2の算出において、「△1」としては、「%」の単位の数値を用いるのではなく、「%」のない単位の数値を用いることとする(たとえば△1=0.26%の場合には、「t2=1(nm)/0.0026」となる。)。
【0057】
中間層35の全体の厚さは、3μm以下であることが好ましい。中間層35の全体の厚さが3μm以下である場合には、エピタキシャル成長による中間層35の形成時間を短くして成長装置のスループットを向上することができるとともに、使用材料を低減することによる製造コストの低下によって、(発電量)/(価格)の値を従来の化合物半導体太陽電池セルよりも低減することができる傾向にある。
【0058】
第1格子定数差比(△1)と、中間第二層82の厚さt2との最も良好な組み合わせは、△1が0.52%以上0.78%以下であり、かつt2が200nm以上450nm以下である。この場合には、特に優れた光電変換特性を有する大面積の化合物半導体太陽電池セルを特に歩留まり良く製造することができる傾向にある。
【0059】
第2格子定数差比(△2)は、△1の1/3倍以上2/3倍以下であることが好ましい。この場合には、中間第二層82の結晶のx軸、y軸およびz軸のそれぞれの格子定数がほぼ等しくなり、格子不整合が緩和されて、格子定数差に起因する歪エネルギの蓄積が少ない良好な結晶性の中間層35が得られ、ひいては中間層35上に形成される第1のサブセル34の結晶性が向上し、化合物半導体太陽電池セルの特性および歩留まりが向上する傾向にある。
【0060】
第2格子定数差比(△2)は、0.26%以上0.52%以下であることが好ましい。第2格子定数差比(△2)が0.26%以上である場合には、格子不整合を緩和するために中間第三層81を厚く形成する必要がないため、中間第三層81のエピタキシャル成長時間を短くすることができる。そのため、この場合には、化合物半導体太陽電池セルの量産性を向上することができる。また、第2格子定数差比(△2)が0.52%以下である場合には、中間第三層81における転位の発生を抑えて、中間層35の結晶性が向上し、ひいては中間層35上に形成される第1のサブセル34の結晶性が向上し、化合物半導体太陽電池セルの特性および歩留まりが向上する傾向にある。
【0061】
中間第三層81の厚さt3は、t3=1(nm)/△1以上であることが好ましい。中間第三層81の厚さt3が1(nm)/△1以上である場合には、中間第三層81と中間第二層82との格子定数差に起因して発生する歪を十分に緩和することができる傾向にある。なお、上記の中間第三層81の厚さt3の算出においても、「△1」としては、「%」の単位の数値を用いるのではなく、「%」のない単位の数値を用いることとする(たとえば△1=0.26%の場合には、「t3=1(nm)/0.0026」となる。)。
【0062】
第2格子定数差比(△2)と、中間第三層81の厚さt3との最も良好な組み合わせは、△2が0.26%以上0.52%以下であり、かつt3が100nm以上450nm以下である。この場合には、特に優れた光電変換特性を有する大面積の化合物半導体太陽電池セルを特に歩留まり良く製造することができる傾向にある。
【0063】
一般に、禁制帯幅が異なる複数の半導体材料から成るpn接合を、同一基板上に禁制帯幅が大きいものから順に光が入射する方向に縦積みした構造を有し、両端にだけ出力端子を設けることで、光電変換可能な波長範囲の拡大と高電圧化を図った太陽電池セルを「モノリシック2端子多接合型太陽電池セル」と呼び、その代表的なものが、本件のGaInP/GaAs/Ge三接合型太陽電池セルである。サブセルとは上記多接合型太陽電池セルを構成する禁制帯幅が異なる個々の太陽電池セル(pn接合を一つ有す)を指し、本件ではGaInPセル、GaAsセル、Geセルに対応する。
【実施例】
【0064】
<実施例>
実施例においては、図1(a)に示す断面構成および図1(b)に示すように格子定数を階段状に増加させた中間層を有する化合物半導体太陽電池セルを作製した。
【0065】
まず、図2に示すように、直径4インチの円形状の大面積の表面を有するn型GaAsからなる成長基板32をMOVPE装置内に設置し、成長基板32上に、n型GaAsからなるバッファ層41、n型Ga0.52In0.48Pからなるエッチングストップ層42およびn型GaAsからなるコンタクト層29をこの順序でMOVPE法によりエピタキシャル成長させた。
【0066】
次に、コンタクト層29上に、n型Al0.51In0.49Pからなる窓層28(厚さ0.1μm)、n型Ga0.52In0.48Pからなるエミッタ層27(厚さ0.1μm)、p型Ga0.52In0.48Pからなるベース層26(厚さ1.0μm)、p型Al0.51In0.49PからなるBSF層25(厚さ0.1μm)をこの順序でMOVPE法によりエピタキシャル成長させた。これにより、ベース層26とエミッタ27層との接合体からなる第3のサブセル37が形成された。
【0067】
次に、BSF層25上に、p型Al0.35Ga0.65Asからなるトンネル層24(厚さ0.02μm)およびn型Al0.35Ga0.65Asからなるトンネル層23(厚さ0.02μm)をこの順序でMOVPE法によりエピタキシャル成長させた。
【0068】
次に、トンネル層23上に、n型Al0.51In0.49Pからなる窓層22(厚さ0.1μm)、n型GaAsからなるエミッタ層21(厚さ0.1μm)、p型GaAsからなるベース層20(厚さ3.0μm)、p型Al0.51In0.49PからなるBSF層19(厚さ0.1μm)をこの順序でMOVPE法によりエピタキシャル成長させた。これにより、ベース層20とエミッタ層21との接合体からなる第2のサブセル36が形成された。
【0069】
次に、BSF層19上に、p型Al0.35Ga0.65Asからなるトンネル層18(厚さ0.02μm)およびn型Al0.35Ga0.65Asからなるトンネル層17(厚さ0.02μm)をこの順序でMOVPE法によりエピタキシャル成長させた。
【0070】
次に、トンネル層17上にn型GaAsからなる中間バッファ層16をMOVPE法によりエピタキシャル成長させた。
【0071】
次に、中間バッファ層16上に、n型Ga0.52In0.48Pからなる中間第一層83(厚さ0.25μm)、n型Ga0.42In0.58Pからなる中間第二層82(厚さ0.25μm)、n型Ga0.35In0.65Pからなる中間第三層81(厚さ0.25μm)、n型Ga0.30In0.70Pからなる中間第四層80(厚さ0.25μm)、n型Ga0.26In0.74Pからなる中間第五層79(厚さ0.25μm)、n型Ga0.23In0.77Pからなる中間第六層78(厚さ0.25μm)およびn型Ga0.22In0.78Pからなる中間第七層77(厚さ1μm)をこの順序でMOVPE法によりエピタキシャル成長させた。
【0072】
次に、中間第七層77上に、n型GaInPからなる窓層6(厚さ0.1μm)、n型GaInAsからなるエミッタ層5(厚さ0.1μm)、p型GaInAsからなるベース層4(厚さ3.0μm)、p型GaInPからなるBSF層3(厚さ1μm)およびp型GaInAsからなるコンタクト層2(厚さ0.5μm)をこの順序でMOVPE法によりエピタキシャル成長させた。
【0073】
なお、上記において、Ga材料としてはTMG(トリメチルガリウム)を用い、Al材料としてはTMA(トリメチルアルミニウム)を用い、In材料としてはTMI(トリメチルインジウム)を用いた。また、As材料としてはAsH3(アルシン)を用い、P材料としてはPH3(ホスフィン)を用いた。
【0074】
その後、図3に示すように、コンタクト層2の表面にAg層(厚さ3μm)とAu層(厚さ0.1μm)との積層体からなる金属層1を形成した後に、金属層1にSi支持基板(厚さ300μm)33を貼り付けた。
【0075】
次に、図4に示すように、成長基板32とバッファ層41とをアルカリ水溶液でエッチングして除去した後に、n型Ga0.52In0.48Pからなるエッチングストップ層42を酸水溶液でエッチングして除去して、コンタクト層29の表面を露出させた。
【0076】
次に、コンタクト層29上にフォトリソグラフィ技術によりレジストパターンを形成した後、コンタクト層29の一部をアルカリ水溶液を用いたエッチングにより除去した。そして残されたコンタクト層29上に再度フォトリソグラフィ技術によりレジストパターンを形成し、真空蒸着法により、Ag層(厚さ5μm)、Ni層(厚さ0.1μm)およびAuGe層(厚さ0.1μm)をこの順序で積層して金属層30を形成した。
【0077】
次に、メサエッチングパターンを形成した後、アルカリ水溶液および酸水溶液を用いてメサエッチングを行なった。
【0078】
上記のようにして、図1(a)に示す断面構成を有するとともに、金属層1乃至窓層28がそれぞれ幅2cm×長さ2cmの正方形状の大面積の表面を有する実施例の化合物半導体太陽電池セルをウエハから切り出して作製した。図1(b)に示すように、実施例の化合物半導体太陽電池セルにおいては、中間層35を構成する複数層の隣接する層間のそれぞれの格子定数差比は、以下のようになっている。
中間第二層と中間第一層との格子定数差比△1=0.78(%)
中間第三層と中間第二層との格子定数差比△2=0.52(%)
中間第四層と中間第三層との格子定数差比△3=0.42(%)
中間第五層と中間第四層との格子定数差比△4=0.31(%)
中間第六層と中間第五層との格子定数差比△5=0.21(%)
中間第七層と中間第六層との格子定数差比△6=0.10(%)
また、実施例の化合物半導体太陽電池セルを合計120個作製したときの歩留まりを求めた。その結果、実施例の化合物半導体太陽電池セルの歩留まりは93%(112個/120個)であった。
【0079】
なお、歩留まりの算出においては、短絡電流密度(Jsc)>9.5mA/cm2、開放電圧(Voc)>2.9V、かつフィルファクタ(F.F.)>0.8のすべての特性を示す化合物半導体太陽電池セルを良品として判断し、それ以外を不良品として判断した。すなわち、実施例においては、120個の化合物半導体太陽電池セルのうち、良品は112個であった。
【0080】
<比較例1>
比較例1においては、図5(a)に示す断面構成および図5(b)に示すように格子定数を階段状に増加させた中間層35を有するとともに、金属層1乃至窓層28がそれぞれ幅2cm×長さ2cmの正方形状の大面積の表面を有する化合物半導体太陽電池セルを作製した。なお、図5(b)においては、中間層以外の層の格子定数の変化についてはその記載を省略している。また、図5(b)の横軸の右側に進むにつれて格子定数が大きくなることを示している。
【0081】
比較例1の化合物半導体太陽電池セルは、第2のサブセル36から第1のサブセル34にかけて以下の層を配置することによって中間層35を形成したこと以外は実施例と同様にして作製した。
n型Ga0.52In0.48Pからなる中間第一層15(厚さ0.25μm)
n型Ga0.42In0.58Pからなる中間第二層14(厚さ0.25μm)
n型Ga0.39In0.61Pからなる中間第三層13(厚さ0.25μm)
n型Ga0.35In0.65Pからなる中間第四層12(厚さ0.25μm)
n型Ga0.32In0.68Pからなる中間第五層11(厚さ0.25μm)
n型Ga0.29In0.71Pからなる中間第六層10(厚さ0.25μm)
n型Ga0.25In0.75Pからなる中間第七層9(厚さ0.25μm)
n型Ga0.22In0.78Pからなる中間第八層8(厚さ0.25μm)
n型Ga0.19In0.81Pからなる中間第九層7(厚さ0.25μm)
図5(b)に示すように、比較例1の化合物半導体太陽電池セルにおいては、中間層35を構成する複数層の隣接する層間のそれぞれの格子定数差比は、以下のようになっている。
中間第二層と中間第一層との格子定数差比△1=0.78(%)
中間第三層と中間第二層との格子定数差比△2=0.26(%)
中間第四層と中間第三層との格子定数差比△3=0.26(%)
中間第五層と中間第四層との格子定数差比△4=0.26(%)
中間第六層と中間第五層との格子定数差比△5=0.26(%)
中間第七層と中間第六層との格子定数差比△6=0.26(%)
中間第八層と中間第七層との格子定数差比△7=0.26(%)
中間第九層と中間第八層との格子定数差比△8=0.26(%)
中間第九層と中間第八層との格子定数差比△8=0.26(%)
また、実施例と同一の基準で、比較例1の化合物半導体太陽電池セルを合計120個作製したときの歩留まりを求めた。その結果、比較例1の化合物半導体太陽電池セルの歩留まりは90%(108個/120個)であった。
【0082】
<比較例2>
比較例2においては、図6(a)に示す断面構成および図6(b)に示すように格子定数を階段状に増加させた中間層35を有するとともに、金属層1乃至窓層28がそれぞれ幅2cm×長さ2cmの正方形状の大面積の表面を有する化合物半導体太陽電池セルを作製した。なお、図6(b)においては、中間層以外の層の格子定数の変化についてはその記載を省略している。また、図6(b)の横軸の右側に進むにつれて格子定数が大きくなることを示している。
【0083】
比較例2の化合物半導体太陽電池セルは、第2のサブセル36から第1のサブセル34にかけて以下の層を配置することによって中間層35を形成したこと以外は比較例2と同様にして作製した。
n型Ga0.52In0.48Pからなる中間第一層60(厚さ0.25μm)
n型Ga0.49In0.51Pからなる中間第二層59(厚さ0.25μm)
n型Ga0.45In0.55Pからなる中間第三層58(厚さ0.25μm)
n型Ga0.42In0.58Pからなる中間第四層57(厚さ0.25μm)
n型Ga0.39In0.61Pからなる中間第五層56(厚さ0.25μm)
n型Ga0.35In0.65Pからなる中間第六層55(厚さ0.25μm)
n型Ga0.32In0.68Pからなる中間第七層54(厚さ0.25μm)
n型Ga0.29In0.71Pからなる中間第八層53(厚さ0.25μm)
n型Ga0.25In0.75Pからなる中間第九層52(厚さ0.25μm)
n型Ga0.22In0.78Pからなる中間第十層51(厚さ0.25μm)
図5(b)に示すように、比較例2の化合物半導体太陽電池セルにおいては、中間層35を構成する複数層の隣接する層間のそれぞれの格子定数差比は、以下のようになっている。
中間第二層と中間第一層との格子定数差比△1=0.26(%)
中間第三層と中間第二層との格子定数差比△2=0.26(%)
中間第四層と中間第三層との格子定数差比△3=0.26(%)
中間第五層と中間第四層との格子定数差比△4=0.26(%)
中間第六層と中間第五層との格子定数差比△5=0.26(%)
中間第七層と中間第六層との格子定数差比△6=0.26(%)
中間第八層と中間第七層との格子定数差比△7=0.26(%)
中間第九層と中間第八層との格子定数差比△8=0.26(%)
中間第十層と中間第九層との格子定数差比△9=0.26(%)
また、実施例と同一の基準で、比較例2の化合物半導体太陽電池セルを合計120個作製したときの歩留まりを求めた。その結果、比較例2の化合物半導体太陽電池セルの歩留まりは33%(39個/120個)であった。
【0084】
<比較例3>
比較例3においては、図7(a)に示す断面構成および図7(b)に示すように格子定数を階段状に増加させた中間層を有するとともに、金属層1乃至窓層28がそれぞれ幅2cm×長さ2cmの正方形状の大面積の表面を有する化合物半導体太陽電池セルを作製した。なお、図7(b)においては、中間層以外の層の格子定数の変化についてはその記載を省略している。また、図7(b)の横軸の右側に進むにつれて格子定数が大きくなることを示している。
【0085】
比較例3の化合物半導体太陽電池セルは、中間層35を構成する中間第一層から中間第十層の厚さをそれぞれ1μmとしたこと以外は比較例2と同様にして作製した。
【0086】
図7(b)に示すように、比較例3の化合物半導体太陽電池セルにおいては、中間層35を構成する複数層の隣接する層間のそれぞれの格子定数差比は、以下のようになっている。
中間第二層と中間第一層との格子定数差比△1=0.26(%)
中間第三層と中間第二層との格子定数差比△2=0.26(%)
中間第四層と中間第三層との格子定数差比△3=0.26(%)
中間第五層と中間第四層との格子定数差比△4=0.26(%)
中間第六層と中間第五層との格子定数差比△5=0.26(%)
中間第七層と中間第六層との格子定数差比△6=0.26(%)
中間第八層と中間第七層との格子定数差比△7=0.26(%)
中間第九層と中間第八層との格子定数差比△8=0.26(%)
中間第十層と中間第九層との格子定数差比△9=0.26(%)
また、実施例と同一の基準で、比較例3の化合物半導体太陽電池セルを合計120個作製したときの歩留まりを求めた。その結果、比較例3の化合物半導体太陽電池セルの歩留まりは80%(96個/120個)であった。
【0087】
<比較例4>
比較例4においては、図8(a)に示す断面構成および図8(b)に示すように格子定数を階段状に増加させた中間層35を有するとともに、金属層1乃至窓層28がそれぞれ幅2cm×長さ2cmの正方形状の大面積の表面を有する化合物半導体太陽電池セルを作製した。なお、図8(b)においては、中間層以外の層の格子定数の変化についてはその記載を省略している。また、図8(b)の横軸の右側に進むにつれて格子定数が大きくなることを示している。
【0088】
比較例4の化合物半導体太陽電池セルは、第2のサブセル36から第1のサブセル34にかけて以下の層を配置することによって中間層35を形成したこと以外は実施例と同様にして作製した。
n型Ga0.52In0.48Pからなる中間第一層69(厚さ1μm)
n型Ga0.45In0.55Pからなる中間第二層68(厚さ0.25μm)
n型Ga0.42In0.58Pからなる中間第三層67(厚さ0.25μm)
n型Ga0.39In0.61Pからなる中間第四層66(厚さ0.25μm)
n型Ga0.35In0.65Pからなる中間第五層65(厚さ0.25μm)
n型Ga0.32In0.68Pからなる中間第六層64(厚さ0.25μm)
n型Ga0.29In0.71Pからなる中間第七層63(厚さ0.25μm)
n型Ga0.25In0.75Pからなる中間第八層62(厚さ0.25μm)
n型Ga0.22In0.78Pからなる中間第九層61(厚さ0.25μm)
図8(b)に示すように、比較例4の化合物半導体太陽電池セルにおいては、中間層35を構成する複数層の隣接する層間のそれぞれの格子定数差比は、以下のようになっている。
中間第二層と中間第一層との格子定数差比△1=0.52(%)
中間第三層と中間第二層との格子定数差比△2=0.26(%)
中間第四層と中間第三層との格子定数差比△3=0.26(%)
中間第五層と中間第四層との格子定数差比△4=0.26(%)
中間第六層と中間第五層との格子定数差比△5=0.26(%)
中間第七層と中間第六層との格子定数差比△6=0.26(%)
中間第八層と中間第七層との格子定数差比△7=0.26(%)
中間第九層と中間第八層との格子定数差比△8=0.26(%)
また、実施例と同一の基準で、比較例4の化合物半導体太陽電池セルを合計120個作製したときの歩留まりを求めた。その結果、比較例4の化合物半導体太陽電池セルの歩留まりは86%(103個/120個)であった。
【0089】
<比較例5>
比較例5においては、図9(a)に示す断面構成および図9(b)に示すように格子定数を階段状に増加させた中間層35を有するとともに、金属層1乃至窓層28がそれぞれ幅2cm×長さ2cmの正方形状の大面積の表面を有する化合物半導体太陽電池セルを作製した。なお、図9(b)においては、中間層以外の層の格子定数の変化についてはその記載を省略している。また、図9(b)の横軸の右側に進むにつれて格子定数が大きくなることを示している。
【0090】
比較例5の化合物半導体太陽電池セルは、図5に示すn型Ga0.19In0.81Pからなる中間第九層7を積層しなかったこと以外は比較例1と同様にして作製した。
【0091】
図9(b)に示すように、比較例5の化合物半導体太陽電池セルにおいては、中間層35を構成する複数層の隣接する層間のそれぞれの格子定数差比は、以下のようになっている。
中間第二層と中間第一層との格子定数差比△1=0.78(%)
中間第三層と中間第二層との格子定数差比△2=0.26(%)
中間第四層と中間第三層との格子定数差比△3=0.26(%)
中間第五層と中間第四層との格子定数差比△4=0.26(%)
中間第六層と中間第五層との格子定数差比△5=0.26(%)
中間第七層と中間第六層との格子定数差比△6=0.26(%)
中間第八層と中間第七層との格子定数差比△7=0.26(%)
また、実施例と同一の基準で、比較例5の化合物半導体太陽電池セルを合計120個作製したときの歩留まりを求めた。その結果、比較例5の化合物半導体太陽電池セルの歩留まりは81%(97個/120個)であった。
【0092】
<比較例6>
比較例6においては、図10(a)に示す断面構成および図10(b)に示すように格子定数を階段状に増加させた中間層35を有するとともに、金属層1乃至窓層28がそれぞれ幅2cm×長さ2cmの正方形状の大面積の表面を有する化合物半導体太陽電池セルを作製した。なお、図10(b)においては、中間層以外の層の格子定数の変化についてはその記載を省略している。また、図10(b)の横軸の右側に進むにつれて格子定数が大きくなることを示している。
【0093】
比較例6の化合物半導体太陽電池セルは、第2のサブセル36から第1のサブセル34にかけて以下の層を配置することによって中間層35を形成したこと以外は実施例と同様にして作製した。
n型Ga0.52In0.48Pからなる中間第一層76(厚さ1μm)
n型Ga0.39In0.61Pからなる中間第二層75(厚さ0.25μm)
n型Ga0.35In0.65Pからなる中間第三層74(厚さ0.25μm)
n型Ga0.32In0.68Pからなる中間第四層73(厚さ0.25μm)
n型Ga0.29In0.71Pからなる中間第五層72(厚さ0.25μm)
n型Ga0.25In0.75Pからなる中間第六層71(厚さ0.25μm)
n型Ga0.22In0.78Pからなる中間第七層70(厚さ0.25μm)
図10(b)に示すように、比較例6の化合物半導体太陽電池セルにおいては、中間層35を構成する複数層の隣接する層間のそれぞれの格子定数差比は、以下のようになっている。
中間第二層と中間第一層との格子定数差比△1=1.04(%)
中間第三層と中間第二層との格子定数差比△2=0.26(%)
中間第四層と中間第三層との格子定数差比△3=0.26(%)
中間第五層と中間第四層との格子定数差比△4=0.26(%)
中間第六層と中間第五層との格子定数差比△5=0.26(%)
中間第七層と中間第六層との格子定数差比△6=0.26(%)
また、実施例と同一の基準で、比較例6の化合物半導体太陽電池セルを合計120個作製したときの歩留まりを求めた。その結果、比較例6の化合物半導体太陽電池セルの歩留まりは18%(22個/120個)であった。
【0094】
以下の表1に、実施例および比較例1〜比較例6の実験結果をまとめる。表1に示すように、第1格子定数差比(△1)が0.78%以下であって、第2格子定数差比(△2)よりも大きく、中間層の隣接する層間のそれぞれの格子定数差比が第2のサブセルから第1のサブセルに近づくにつれて小さくなっている実施例の化合物半導体太陽電池セルは、中間層がそのように形成されていない比較例1〜比較例6の化合物半導体太陽電池セルよりも歩留まりが良好であることが確認された。
【0095】
【表1】

【0096】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、化合物半導体太陽電池セルに利用することができ、特にメタモルフィック層を含む化合物半導体太陽電池セルに好適に利用することができる。メタモルフィック層を含む化合物半導体太陽電池セルは、反転型メタモルフィック太陽電池セルと呼ばれる太陽電池セルをも含む。
【符号の説明】
【0098】
1 金属層、2 コンタクト層、3 BSF層、4 ベース層、5 エミッタ層、6 窓層、7 中間第九層、8 中間第八層、9 中間第七層、10 中間第六層、11 中間第五層、12 中間第四層、13 中間第三層、14 中間第二層、15 中間第一層、16 中間バッファ層、17 トンネル層、18 トンネル層、19 BSF層、20 ベース層、21 エミッタ層、22 窓層、23 トンネル層、24 トンネル層、25 BSF層、26 ベース層、27 エミッタ層、28 窓層、29 n型GaAs層、30 金属層、32 成長基板、33 支持基板、34 第1のサブセル、35 中間層、36 第2のサブセル、37 第3のサブセル、41 バッファ層、42 エッチングストップ層、51 中間第十層、52 中間第九層、53 中間第八層、54 中間第七層、55 中間第六層、56 中間第五層、57 中間第四層、58 中間第三層、59 中間第二層、60 中間第一層、61 中間第九層、62 中間第八層、63 中間第七層、64 中間第六層、65 中間第五層、66 中間第四層、67 中間第三層、68 中間第二層、69 中間第一層、70 中間第七層、71 中間第六層、72 中間第五層、73 中間第四層、74 中間第三層、75 中間第二層、76 中間第一層、77 中間第七層、78 中間第六層、79 中間第五層、80 中間第四層、81 中間第三層、82 中間第二層、83 中間第一層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のサブセルと、
前記第1のサブセル上に設けられた第2のサブセルと、
前記第2のサブセル上に設けられた第3のサブセルと、
前記第1のサブセルと前記第2のサブセルとの間に設けられた中間層と、を備え、
前記第1のサブセルは、第1のバンドギャップを有する第1の化合物半導体を含み、
前記第2のサブセルは、第2のバンドギャップを有する第2の化合物半導体を含み、
前記第3のサブセルは、第3のバンドギャップを有する第3の化合物半導体を含み、
前記中間層は、第4のバンドギャップを有する第4の化合物半導体を含む複数層を有し、
前記複数層を構成するそれぞれの層は、前記第2のサブセル側から前記第1のサブセル側にかけて、格子定数が増加するように配置されており、
前記複数層は、前記第2のサブセルに最も近い位置に配置されている中間第一層と、前記中間第一層に隣接する中間第二層と、前記中間第二層に隣接する中間第三層とを有しており、
前記中間第二層と前記中間第一層との間の格子定数差の比である第1格子定数差比が、前記中間第三層と前記中間第二層との間の格子定数差の比である第2格子定数差比よりも大きく、
前記第1格子定数差比が0.78%以下であって、
前記複数層の隣接する層間のそれぞれの格子定数差比が、前記第1のサブセルに近づくにつれて小さくなる、化合物半導体太陽電池セル。
【請求項2】
前記第4の化合物半導体は、AlaGabIncP(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、a+b+c≠0)の式で表わされる化合物半導体を含む、請求項1に記載の化合物半導体太陽電池セル。
【請求項3】
前記第1の化合物半導体は、0.8eV以上1.2eV以下の範囲のバンドギャップを有するGadIneAs(0≦d≦1、0<e≦1、d+e≠0)の式で表わされる化合物半導体を含む、請求項1または2に記載の化合物半導体太陽電池セル。
【請求項4】
前記第2の化合物半導体は、1.3eV以上1.5eV以下の範囲のバンドギャップを有するGafIngAs(0≦f≦1、0≦g≦1、f+g≠0)の式で表わされる化合物半導体を含む、請求項1から3のいずれかに記載の化合物半導体太陽電池セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−115414(P2013−115414A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263510(P2011−263510)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】