説明

化合物及びカラーフィルタ

【課題】長時間に亘って光線照射を受けても色相変化の小さい着色物となるトリアリールメタン顔料組成物の提供。
【解決手段】例えば式(VII)で表される化合物を含有する顔料組成物。


〔但し、式中、R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基等を表す。Xは、水素原子、ハロゲン原子等を示す。Zは水素原子等を示す。An−は、任意のn価のヘテロポリオキソメタレートアニオンである。nは任意の自然数を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、着色剤として用いた際に、光線照射を受けても長時間に亘って色相変化の小さい着色物を提供できるトリアリ−ルメタン化合物及びそれを青色画素部に含有してなるカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等のカラーフィルタは、赤色画素部(R)、緑色画素部(G)及び青色画素部(B)を有する。これらの各画素部は、いずれも有機顔料が分散した合成樹脂の薄膜が基板上に設けられた構造であり、有機顔料としては、赤、緑及び青の各色の有機顔料が用いられている。
【0003】
これら画素部のうち、青色画素部を形成するための青色有機顔料としては、一般に、ε型銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:6)が用いられており、必要に応じて調色のために、これに紫色有機顔料のジオキサジンバイオレット顔料(C.I.ピグメントバイオレット23)が少量併用されている。
【0004】
カラーフィルタを作成する際の有機顔料は、従来の汎用用途とは全く異なる特性、具体的には、液晶表示装置等の表示画面がより明るくなる様にする(高輝度化)等の要求がある。しかしながら、ε型銅フタロシアニン顔料にジオキサジンバイオレット顔料を併用したのでは、高輝度が達成できないことから、特に青色画素部(B)に用いる有機顔料には、高輝度化がとりわけ要求されている。
【0005】
この様な高輝度化に対応するために、輝度の点においてはε型銅フタロシアニン顔料より優れた、C.I.ピグメントブルー1の様なトリアリールメタン顔料をカラーフィルタの青色画素部に用いることが最近検討されてきている(特許文献1〜3)。
【0006】
このC.I.ピグメントブルー1としては、以下の化学構造のBASF社のファナルカラー(FANAL BLUE D6340、同D6390)が著名であり、C.I.ピグメントブルー1は、塩基性トリアリールメタン染料であるビクトリアピュアブルーBOを、リンモリブデン酸やリンタングステンモリブデン酸の様なヘテロポリ酸でレーキ化して得られる。こうして得られたC.I.ピグメントブルー1は、カチオンの対イオンAがケギン型PMo12−x40であるとされている。
【0007】
【化1】

【0008】
〔但し、一般式(IX)中、An−は、ケギン型リンタングステンモリブデン酸アニオンまたはリンモリブデン酸アニオンである。nは任意の自然数を表す。〕
【0009】
また、上記したトリアリールメタン顔料ではなく、トリアリールメタン染料をカラーフィルタの青色画素部に用いることも最近検討されてきている(特許文献4〜5)。これらトリアリールメタン染料は、アニオンとしては、ハロゲン化物アニオン、テトラフェニルホウ素の様なホウ素アニオン、有機カルボン酸アニオン、無機硫酸アニオン、無機リン酸アニオン、脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、アントラキノン色素やフタロシアニン色素やインジゴ色素の対応するスルホナトアニオン等を用いることが出来るとされている。
【0010】
更に、トリアリールメタン染料として、金属フタロシアニンスルホン酸とトリアリールメタンカチオンとの塩からなる染料をカラーフィルタの青色画素部に用いることも検討されている(特許文献6)。
【0011】
また、特定構造のトリアリールメタンと特定構造のヘテロポリオキソメタレートアニオンにより形成されている塩からなる化合物をカラーフィルタの青色画素部に用いることも検討されている(特許文献7、8)。
しかしながら、これら従来のトリアリールメタン顔料やトリアリールメタン染料をカラーフィルタの青色画素部の調製に用いた場合、光線を長時間に亘って受けた場合、画素の色相変化は著しく低下してしまい、依然として長時間に亘って満足のいく輝度を維持できず、耐光性の点では不充分であるというのが実態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−81348号公報
【特許文献2】特開2010−83912号公報
【特許文献3】特開2010−85444号公報
【特許文献4】特開2011−68866号公報
【特許文献5】特開2011−70171号公報
【特許文献6】特開2011−70172号公報
【特許文献7】WO/2012/039416号
【特許文献8】WO/2012/039417号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、光線照射を受けても長時間に亘って色相変化の小さい着色物を提供できる、例えば、カラーフィルタの青色画素部の調製に用いた際に、高輝度で、光線照射を受けても長時間に亘って輝度に優れた液晶表示が可能となる液晶表示装置等を提供できるトリアリールメタン化合物及びそれを青色画素部に含有してなるカラーフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記実状に鑑みて鋭意検討した結果、トリアリールメタン化合物として、塩基性トリアリールメタン染料カチオンの対アニオンが、特定のアニオンである化合物の場合に、選択的に着色物の色相変化が小さく耐光性を大きく改善できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち本発明は、下記一般式(I)で表される化合物を提供する。
【0016】
【化2】

【0017】
〔但し、一般式(I)中、R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R〜Rが置換基を有していてもよいアルキル基を表す場合、隣接するRとR、RとR、又はRとRが結合して環構造を形成していてもよい。Xは、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。Yは各々独立に、水素原子、または任意の置換基を示す。An−は、任意のn価のヘテロポリオキソメタレートアニオンである。nは任意の自然数を表す。なお、1分子中に複数の下記一般式(II)
【0018】
【化3】

【0019】
で表わされるカチオンが含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。〕
【0020】
また、本発明は、下記一般式(III)で表される化合物を提供する。
【0021】
【化4】

【0022】
〔但し、一般式(III)中、R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R〜Rが置換基を有していてもよいアルキル基を表す場合、隣接するRとR、RとR、又はRとRが結合して環構造を形成していてもよい。Xは、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。Yは各々独立に、水素原子、または任意の置換基を示す。An−は、任意のn価のヘテロポリオキソメタレートアニオンである。nは任意の自然数を表す。なお、1分子中に複数の下記一般式(IV)
【0023】
【化5】

【0024】
で表わされるカチオンが含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。〕
【0025】
また、本発明は、下記一般式(V)で表される化合物を提供する。
【0026】
【化6】

【0027】
〔但し、一般式(V)中、R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R〜Rが置換基を有していてもよいアルキル基を表す場合、隣接するRとR、RとR、又はRとRが結合して環構造を形成していてもよい。Xは、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。Zは、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。An−は、任意のn価のヘテロポリオキソメタレートアニオンである。nは任意の自然数を表す。なお、1分子中に複数の下記一般式(VI)
【0028】
【化7】

【0029】
で表わされるカチオンが含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。〕
【0030】
また、本発明は、下記一般式(VII)で表される化合物を提供する。
【0031】
【化8】

【0032】
〔但し、一般式(VII)中、R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R〜Rが置換基を有していてもよいアルキル基を表す場合、隣接するRとR、RとR、又はRとRが結合して環構造を形成していてもよい。Xは、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。Zは、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。An−は、任意のn価のヘテロポリオキソメタレートアニオンである。nは任意の自然数を表す。なお、1分子中に複数の下記一般式(VIII)
【0033】
【化9】

で表わされるカチオンが含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。〕
【0034】
更に本発明は、上記一般式(I)、(III)、(V)、(VII)から選択される少なくとも一種の化合物を、青色画素部に含有するカラーフィルタを提供する。
【発明の効果】
【0035】
本発明のトリアリールメタン化合物は、特定一般式(I)、(III)、(V)、(VII)で表される様な、トリアリールメタン顔料なので、光線照射にあっても選択的に着色物の色相変化が小さく耐光性を大きく改善でき、特に、液晶表示装置等のカラーフィルタの輝度の耐光性を大きく改善できるという格別顕著な技術的効果を奏する。
【0036】
本発明のカラーフィルタは、青色画素部に、特定一般式(I)、(III)、(V)、(VII)で表される様な、トリアリールメタン顔料を含有するので、光線照射にあっても長時間に亘りより明るい画像表示が可能な液晶表示装置等を提供できるという格別顕著な技術的効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明のトリアリールメタン化合物は、下記一般式(I)、(III)、(V)、(VII)で表される化合物である。
【0038】
【化10】

【0039】
〔但し、一般式(I)中、R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R〜Rが置換基を有していてもよいアルキル基を表す場合、隣接するRとR、RとR、又はRとRが結合して環構造を形成していてもよい。Xは、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。Yは各々独立に、水素原子、または任意の置換基を示す。An−は、任意のn価のヘテロポリオキソメタレートアニオンである。nは任意の自然数を表す。なお、1分子中に複数の下記一般式(II)
【0040】
【化11】

【0041】
で表わされるカチオンが含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。〕
【0042】
【化12】

【0043】
〔但し、一般式(III)中、R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R〜Rが置換基を有していてもよいアルキル基を表す場合、隣接するRとR、RとR、又はRとRが結合して環構造を形成していてもよい。Xは、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。Yは各々独立に、水素原子、または任意の置換基を示す。An−は、任意のn価のヘテロポリオキソメタレートアニオンである。nは任意の自然数を表す。なお、1分子中に複数の下記一般式(IV)
【0044】
【化13】

【0045】
で表わされるカチオンが含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。〕
【0046】
【化14】

【0047】
〔但し、一般式(V)中、R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R〜Rが置換基を有していてもよいアルキル基を表す場合、隣接するRとR、RとR、又はRとRが結合して環構造を形成していてもよい。Xは、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。Zは、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。An−は、任意のn価のヘテロポリオキソメタレートアニオンである。nは任意の自然数を表す。なお、1分子中に複数の下記一般式(VI)
【0048】
【化15】

【0049】
で表わされるカチオンが含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。〕
【0050】
【化16】

【0051】
〔但し、一般式(VII)中、R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R〜Rが置換基を有していてもよいアルキル基を表す場合、隣接するRとR、RとR、又はRとRが結合して環構造を形成していてもよい。Xは、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。Zは、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。An−は、任意のn価のヘテロポリオキソメタレートアニオンである。nは任意の自然数を表す。なお、1分子中に複数の下記一般式(VIII)
【0052】
【化17】

で表わされるカチオンが含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。〕
【0053】
本発明の各一般式の化合物は、水不溶性の有機顔料であり、Aからなるアニオン部分と、Aを除いた部分である、トリアリールメタンカチオンからなる。
【0054】
一般式(I)、(III)、(V)、(VII)において、R〜Rは同一であっても異なるものであってもよい。従って、−NRR(RRは、R、R、及びRのいずれかの組み合わせを表わす。)基は左右対称であっても、左右非対称であってもよい。また、XおよびZも同様に同一であっても異なるものであってもよい。
【0055】
隣接するR(Rは、R〜Rのいずれかを表わす。)が結合して環を形成する場合、これらはヘテロ原子で架橋された環であってもよい。この環の具体例として、例えば以下のものが挙げられる。これらの環は置換基を有していてもよい。
【0056】
【化18】

【0057】
また、R〜Rは、化学的安定性の点から、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基であることが好ましい。
【0058】
また、XおよびZは、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよいアルキル基が好ましい。Yは、各々独立に、水素原子、または任意の置換基であることが好ましい。
【0059】
中でも、R〜Rは、各々独立に水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2‐エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、チエニル基、フリル基、チアゾリル基等のアリール基のいずれかであることがより好ましい。
【0060】
〜RおよびX、Y、Zは、アルキル基又はアリール基を示す場合、該アルキル基又はアリール基は更に任意の置換基を有していてもよい。そのアルキル基又はアリール基が更に有していてもよい任意の置換基としては、例えば、下記[置換基群R]が挙げられる。
【0061】
[置換基群R]
メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2‐エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、チエニル基、フリル基、チアゾリル基等のアリール基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基など炭素原子数1〜8のアルコキシ基;アミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、アセチルアミノ基など置換基を有していてもよいアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;等が挙げられる。
【0062】
〜Rとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基が更に好ましく、より具体的には、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec‐ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2‐エチルヘキシル基など無置換のアルキル基;2‐メトキシエチル基、2‐エトキシエチル基等のアルコキシアルキル基;2‐アセチルオキシエチル基等のアシルオキシ基;2‐シアノエチル基等のシアノアルキル基;2,2,2‐トリフルオロエチル基、4,4,4‐トリフルオロブチル基等のフルオロアルキル基、などが挙げられる。
【0063】
中でも、R〜Rのうち、少なくとも1つがフッ素原子含有基であることが、一般式(I)、(III)、(V)、(VII)の正電荷を帯びたトリアリールメタンカチオンとフッ素原子含有基とが分子間相互作用することで、得られるカラーフィルタの耐熱性が向上する点から特に好ましく、具体的には、フルオロアリール基又はフルオロアルキル基等が挙げられ、より好ましくはフルオロアルキル基である。
【0064】
つまり、R〜Rのうち、少なくとも一つが水素原子であることが、分子間水素結合を形成することによる耐熱性の向上の点で好ましい。加えて、R〜Rの少なくとも一つが炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基であることが疎水性を有することで、耐熱性が向上する点で好ましく、より好ましくは、R及びR(又は、R及びR)が、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0065】
尚、前記フルオロアルキル基の炭素原子数は、通常1〜10、好ましくは2〜8、更に好ましくは4〜6である。上記範囲内であると、疎水性が適度であり、耐熱性が向上する点で好ましい。XおよびZは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2‐エチルヘキシル基など炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。
【0066】
XおよびZは、上記アルキル基である場合、更に任意の置換基を有していてもよい。これらの置換基として、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、などが挙げられる。XおよびZとして、具体的には、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基等のハロアルキル基;メトキシメチル基等のアルコキシアルキル基、などが挙げられる。
【0067】
XおよびZとしては、メチル基、塩素原子、トリフルオロメチル基などねじれに影響を与えない程度の適度な立体障害を有する置換基であることが好ましい。XおよびZは、耐熱性の点からメチル基であることが最も好ましい。
【0068】
又、Yとしては、本発明の効果を損なわない限り、任意の基であってもよいが、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2‐エチルヘキシル基など炭素原子数1〜8のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基など炭素原子数1〜8のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;シアノ基等が挙げられる。
【0069】
又、上記アルキル基及びアルコキシ基には、更に他の任意置換基を有していてもよい。他の任意置換基は、例えば、アルコキシ基等が挙げられる。尚、隣接するYが結合して更に環構造を形成していてもよい。本発明におけるYは、色純度が高い点で、水素原子であることが最も好ましい。
【0070】
これら一般式(I)、(III)、(V)、(VII)で表わされるトリアリールメタン化合物が、複数のトリアリールメタンカチオンとヘテロポリオキソメタレートアニオンで構成される場合、トリアリールメタンカチオン構造は、同じ構造であっても、異なる構造であってもよく、異なる構造の構成比も特に限定されるものではない。
【0071】
前記一般式(I)、(V)で表される化合物のカチオン骨格の具体例としては、例えば、以下の構造等を挙げることが出来る。
【0072】
【化19】

【0073】
【化20】

【0074】
前記一般式(III)または一般式(VII)で表される化合物のカチオン骨格の具体例としては、例えば、以下の構造等を挙げることが出来る。
【0075】
【化21】

【0076】
【化22】

【0077】
一般式(I)、(III)、(V)、(VII)の基となるトリアリールメタン染料は、予め4,4’−ビス(ジ置換アミノ)ベンゾフェノン化合物を調製した後、それと、芳香環、複素環またはアミノ基に置換基を有していても良い、アミノナフタレン化合物またはインドール化合物とを、無水溶媒中で、オキシ塩化リン(塩化ホスホリル)等の脱水触媒下にて、100〜150℃で1〜5時間、加熱することで調製することが出来る。
【0078】
こうして得られたトリアリールメタン染料を、後記するヘテロポリ酸アニオンでレーキ化することで、本発明のトリアリールメタン化合物(顔料)を得ることが出来る。
【0079】
本発明のトリアリールメタン化合物は、対アニオンAが、特定のアニオンであることに特徴がある。一般式(I)、(III)、(V)、(VII)のトリアリールメタン化合物は、上記したカチオンと、ヘテロポリ酸アニオンとからなる。本発明では、ヘテロポリ酸アニオンを、ヘテロポリオキソメタレートアニオンという。
【0080】
ヘテロポリ酸は、有機構造を含まない比較的大きな分子量の無機酸であり、塩酸や硫酸の様な低分子の無機酸や有機酸に無い、特異な性質を発現させることが出来る。その第一は、カチオンのヘテロポリ酸によるレーキ化で水不溶のトリアリールメタン顔料を生成することである。第二は、レーキ化に用いるヘテロポリ酸を選択することで、得られるトリアリールメタン顔料の耐熱性や耐光性を向上させうる余地があることである。ヘテロポリ酸は、有機構造を含ませない或いは金属を含めた上で分子量も比較的大きく出来るが故に、それを適切に選択することで、高温や光線に曝された場合でも、アニオン構造に由来するトリアリールメタン顔料の変質を大きく抑制することが可能となる。
【0081】
本発明で、より高い耐光性を有するトリアリールメタン化合物を得たい場合は、例えば、Aが、W(タングステン)、O(酸素)を必須元素として、P(リン)とSi(珪素)の少なくとも一種を含有するヘテロポリオキソメタレートアニオンとすることが好ましい。
【0082】
本発明で、より高い耐光性を有するトリアリールメタン化合物は、例えば、Aが、(PMo18−y626−で表され、y=0,1,2または3の整数であるヘテロポリオキソメタレートアニオンか、(SiMo12−z404−で表され、z=0,1,2または3の整数であるヘテロポリオキソメタレートアニオンか、欠損ドーソン型リンタングステン酸ヘテロポリオキソメタレートアニオンから選ばれる少なくとも一種のアニオンのトリアリールメタン化合物である。
【0083】
尚、欠損ドーソン型リンタングステン酸ヘテロポリオキソメタレートアニオンAとは、(P176110−である。
【0084】
ヘテロポリ酸またはそのアルカリ金属塩としては、例えば、H(PMo18−y62)、Na(PMo18−y62)、H(SiMo1240−Z)、Na(SiMo12−Z40)、H10(P1761)及びNa10(P1761)等を用いることが出来る。
【0085】
(PMo18−y62)といったヘテロポリ酸は、例えば、Inorganic Chemistry, vol47, p3679に記載された方法に従って、容易に得ることが出来る。具体的には、タングステン酸アルカリ金属塩とモリブデン酸アルカリ金属塩とを水に溶解させ、これに燐酸を加え、加熱攪拌しながら5〜10時間加熱還流することで得ることが出来る。
こうして得られたヘテロポリ酸は、アルカリ金属塩化物と反応させることで、上記と同様にして、ドーソン型ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩であるNa(PMo18−y62)とすることが出来る。
【0086】
モリブデン(Mo)とタングステン(W)の仕込みモル比を変えること、すなわちタングステン酸アルカリ金属塩とモリブデン酸アルカリ金属塩のモル比を調整することで、上記ヘテロポリオキソメタレートアニオンにおけるモリブデン数yを、0〜3の範囲に調製することが出来る。
【0087】
別法としては、モリブデン酸アルカリ金属塩を水に溶解させ、これに塩酸を加え、次いで、K10(α2型P1761)の様な、α2型の欠損ドーソン型リンタングステ
ン酸アルカリ金属塩を加えて、10〜30℃にて、30分〜2時間攪拌することで得ることが出来る。こうして得られたヘテロポリ酸は、アルカリ金属塩化物と反応させることで、上記と同様にして、ドーソン型ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩とすることが出来る。
【0088】
例えば、P1862より加水分解反応でα2型P1761を調製して、これにMoを反応させることで、PMoW1762のみを得ることも出来る。こうすることで、yの数値に分布の無い上記したヘテロポリ酸やそのアルカリ金属塩を得ることが出来る。
【0089】
(SiMoW1140)といったヘテロポリ酸、ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩は、例えばJournal of American Chemical Society, 104(1982), p3194に記載された方法に従って、容易に得ることが出来る。具体的には、硝酸水溶液とモリブデン酸アルカリ金属塩水溶液を混合攪拌し、これにK(α型SiW1139)を加え、2〜6時間攪拌することで得ることが出来る。こうして得られたヘテロポリ酸は、アルカリ金属塩化物と反応させることで、上記と同様にして、ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩とすることが出来る。
【0090】
(P1862)やH10(P1761)といったヘテロポリ酸は、例えば、Inorganic Chemistry, vol47, p3679に記載された方法に従って、容易に得ることが出来る。具体的には、タングステン酸アルカリ金属塩を水に溶解させ、これに塩酸及び燐酸を加えて、加熱攪拌しながら10〜50時間加熱還流することで得ることが出来る。
ヘテロポリ酸は、アルカリ金属塩化物と反応させることで、ドーソン型ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩とすることが出来る。
【0091】
欠損ドーソン型ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩は、前者のドーソン型リンタングステン酸ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩を原料として、例えば、Inorganic Synthesis, vol27, p104に記載された方法に従って、容易に得ることが出来る。具体的には、ドーソン型リンタングステン酸ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩を水に溶解させ、これにアルカリ金属炭酸水素化物を加えて、必要に応じて加熱しながら、攪拌することで得ること出来る。
【0092】
本発明のトリアリールメタン化合物は、例えば、上記した対応する染料と、上記した対応するヘテロポリ酸またはヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩とを反応させることで容易に製造することが出来る。アニオンが塩化物イオンの上記染料を用いかつヘテロポリ酸を用いる場合には、脱塩化水素反応により、アニオンが塩化物イオンの上記染料を用いかつヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩を用いる場合には、脱アルカリ金属塩化物反応により、塩置換することで製造することが出来る。
【0093】
上記ヘテロポリ酸を用いる脱塩化水素反応に比べて、ヘテロポリ酸をいったんヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩としてから脱アルカリ金属塩化物反応を行う方が、塩置換を確実に行うことが出来、より収率高く本発明のトリアリールメタン化合物が得られるばかりでなく、副生成物がより少ない純度の高い本発明のトリアリールメタン化合物が得られるので好ましい。勿論、ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩は、再結晶等により精製してから用いることも出来る。
【0094】
反応液からの沈殿が得られ難い場合には、当該反応液を冷却するなどして溶解度を低下させることにより、対応するヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩をより収率高く得ることが出来る。
【0095】
染料由来のカチオンは、一価であることから、アニオン源である、ヘテロポリ酸またはヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩の使用量は、それらのイオン価に応じて、等モル数となる様に仕込んで上記反応を行うことが好ましい。
【0096】
本発明のトリアリールメタン化合物は、ヘテロポリ酸でレーキ化(水不溶化)する工程を含むので(或いはヘテロポリ酸でレーキ化(水不溶化)されているので)、製造工程中または製造後の何らかの工程で水を用いる場合、より確実な反応を行ったり、得られた化合物のレーキ構造が破壊されないようにするには、例えば、精製水、イオン交換水、純水等のような、金属イオンやハロゲンイオンの含有率が極力少ない水を用いることが好ましい。
【0097】
本発明のトリアリールメタン化合物は、それ自体公知のカチオン構造と、それ自体公知のアニオン構造とを選択し組み合わせた構造を有することから、上記製造方法に従って得られた生成物について、上記カチオン構造とアニオン構造とがいずれも含まれていることを確認することで、容易に同定することが出来る。生成物の赤外線吸収スペクトルを測定することで、上記反応に用いた原料の構造が残っていることを確認できる。また生成物には、反応に用いた原料の、染料のアニオンやヘテロポリオキソメタレートのカチオンが含まれていないことから、蛍光X線分析による原料に固有のピーク強度の低下やピーク消失により、上記レーキ化反応が行われたことを確認することが出来る。(必要であれば、生成物について元素分析を行うことで、より確実な同定が可能となる。)
【0098】
本発明のトリアリールメタン化合物は、顔料であることが堅牢性に大きく寄与しており、カチオンとアニオンから構成されていたとしても染料である場合には、本発明の優れた技術的効果は発揮できない。また、本発明のトリアリールメタン化合物は、顔料であって、結晶水を持つ水和物であっても良いし、結晶水を持たない無水物であっても良い。
【0099】
本発明のトリアリールメタン化合物は、レーキ構造を有し水不溶であることから顔料である。こうして得られた本発明のトリアリールメタン化合物は、そのままで、合成樹脂等の着色剤として用いることが出来るが、必要であれば、公知慣用の粉砕や造粒により、粒子径を調整することで、各種の用途に最適な着色剤とすることが出来る。着色剤は、乾燥粉体において、一次粒子の平均粒子径100nm以下であると、より鮮明な青色の着色物を得られやすいので好ましい。
【0100】
本発明において一次粒子の平均粒子径とは、次の様に測定される。まず、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡で視野内の粒子を撮影する。そして、二次元画像上の、凝集体を構成する一次粒子の50個につき、個々の粒子の内径の最長の長さ(最大長)を求める。個々の粒子の最大長の平均値を一次粒子の平均粒子径とする。
【0101】
本発明のトリアリールメタン化合物は、公知慣用の各種の用途において、光線照射での履歴を経ても色相変化が小さく、優れた耐光性を有していることから、カラーフィルタ画素部の製造に用いた場合に、高輝度であり、その輝度の耐光性に優れ、長時間に亘り明るい画像表示が可能な液晶表示装置のカラーフィルタを得ることができる。
【0102】
本発明のカラーフィルタにおいては、バックライト光源としては、従来の冷陰極管(CCFL光源)、白色LED(LED;Light Emitting Diode)光源、3色独立LED光源、白色有機EL(EL;Electro Luminescence)光源等をいずれも用いることが出来る。
【0103】
本発明のトリアリールメタン化合物には、必要に応じて、ε型銅フタロシアニン顔料、ジオキサジン顔料(C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー80等)等や、無金属または金属フタロシアニンのスルホン酸誘導体、無金属または金属フタロシアニンのN−(ジアルキルアミノ)メチル誘導体、無金属または金属フタロシアニンのN−(ジアルキルアミノアルキル)スルホン酸アミド誘導体、ジオキサジンバイオレットのスルホン酸誘導体、インダンスレンブルーのスルホン酸誘導体、フタロシアニンスルホン酸等の有機顔料誘導体等や、ビックケミー社のディスパービック130、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック185、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2020、ディスパービック2050、ディスパービック2070、ディスパービック2096、ディスパービック2150、ディスパービックLPN21116、ディスパービックLPN6919エフカ社のエフカ46、エフカ47、エフカ452、エフカLP4008、エフカ4009、エフカLP4010、エフカLP4050、エフカLP4055、エフカ400、エフカ401、エフカ402、エフカ403、エフカ450、エフカ451、エフカ453、エフカ4540、エフカ4550、エフカLP4560、エフカ120、エフカ150、エフカ1501、エフカ1502、エフカ1503、ルーブリゾール社のソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース13240、ソルスパース13650、ソルスパース13940、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース36000、ソルスパース37000、ソルスパース38000、ソルスパース41000、ソルスパース42000、ソルスパース43000、ソルスパース46000、ソルスパース54000、ソルスパース71000、味の素株式会社のアジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB814、アジスパーPN411、アジスパーPA111等の分散剤や、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキッド系樹脂、ウッドロジン、ガムロジン、トール油ロジン等の天然ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、酸化ロジン、マレイン化ロジン等の変性ロジン、ロジンアミン、ライムロジン、ロジンアルキレンオキシド付加物、ロジンアルキド付加物、ロジン変性フェノール等のロジン誘導体等の、室温で液状かつ水不溶性の合成樹脂を含有させることが出来る。これら分散剤や、樹脂の添加は、フロッキュレーションの低減、顔料の分散安定性の向上、分散体の粘度特性を向上にも寄与する。
【0104】
本発明のトリアリールメタン化合物は、顔料としてそれ自体でカラーフィルタ青色画素部の調製に適した色相を有しているが、必要ならば、その質量換算100部当たりε型銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:6)を0.1〜30部併用することで、色相の最適化を行うことが出来る。
【0105】
本発明のトリアリールメタン化合物は、顔料としてそれ自体でカラーフィルタ青色画素部の調製に適した耐光性を有しているが、必要ならば、トリアリールメタン化合物100部当たり、酸化防止剤不揮発分0.1〜10部となる様に、中でも、0.5〜8部用いることが出来る。ここで酸化防止剤とは、酸化劣化を防止する添加剤の総称であり、熱による酸化劣化を防止するもの(狭義の酸化防止剤)と、光(主に紫外線)による酸化劣化を防止するもの(狭義には、光安定剤と呼ばれる)とが包含される。
【0106】
この様な酸化防止剤は、ラジカルを捕捉し自動酸化の防止作用(ラジカル連鎖防止作用)を有するものと、ハイドロパーオキサイド(過酸化物)を無害なものに分解する作用(過酸化物分解作用)を有するものとがあり、前者は一次酸化防止剤、後者は二次酸化防止剤と呼ばれる。これら両方の作用を兼備した、一次二次両用酸化防止剤も知られている。一次酸化防止剤としては、例えば、フェノール系(ヒンダードフェノール系を含む)やアミン系(ヒンダードアミン系を含む)の各酸化防止剤が、二次酸化防止剤としては、例えば、硫黄系やリン系の各酸化防止剤が典型的なものである。
【0107】
本発明のトリアリールメタン化合物は、顔料としてそれ自体でカラーフィルタ青色画素部の調製に適した耐熱性を有しているが、必要ならば、カチオン性樹脂を併用することで、耐熱性や耐光性をもう一段高めることが出来る。
【0108】
この様なカチオン性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等を用いることが、熱履歴の下でも色相変化が小さく、カラーフィルタの耐熱性を大きく改善できるので好ましい。
【0109】
本発明では、トリアリールメタン化合物とカチオン性樹脂の不揮発分の質量基準での割合は、特に制限されるものではないが、前者化合物100部当たり、後者樹脂の不揮発分0.1部以上10部未満となる様に、中でも、0.5〜5部、特に1〜3部とすることが好ましい。
【0110】
トリアリールメタン化合物とカチオン性樹脂とを含有する顔料組成物を調製する際に、前記化合物と樹脂とを加熱する場合には、両者を混合した後、密閉系にて、顔料自体に不具合が生じない温度での攪拌下、30分〜5時間の範囲にて行なうことができる。こうして加圧状態が形成されることで、前記した様に、化合物粒子の空隙にまで、カチオン性樹脂が浸透することになり、単に粒子表面だけを被覆するのに比べて、より優れた効果が発現される。
【0111】
本発明のトリアリールメタン化合物は、従来公知の方法でカラーフィルタ画素部の形成に使用することができる。本発明のトリアリールメタン化合物の分散方法で代表的な方法としては、フォトリソグラフィー法であり、これは、後記する光硬化性組成物を、カラーフィルタ用の透明基板のブラックマトリックスを設けた側の面に塗布、加熱乾燥(プリベーク)した後、フォトマスクを介して紫外線を照射することでパターン露光を行って、画素部に対応する箇所の光硬化性化合物を硬化させた後、未露光部分を現像液で現像し、非画素部を除去して画素部を透明基板に固着させる方法である。この方法では、光硬化性組成物の硬化着色皮膜からなる画素部が透明基板上に形成される。
【0112】
赤色、緑色、青色の色ごとに、後記する光硬化性組成物を調製して、前記した操作を繰り返すことにより、所定の位置に赤色、緑色、青色の着色画素部を有するカラーフィルタを製造することができる。本発明のトリアリールメタン化合物からは、青色画素部を形成することができる。尚、赤色画素部および緑色画素部を形成するための光硬化性組成物を調製するには、公知慣用の赤色顔料と緑色顔料を使用することができる。
【0113】
赤色画素部を形成するための顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド177、同209、同242、同254等が、緑色画素部を形成するための顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、同10、同36、同47、同58等が挙げられる。これら赤色画素部と緑色画素部の形成には、黄色顔料を併用することもできる。その後、必要に応じて、未反応の光硬化性化合物を熱硬化させるために、カラーフィルタ全体を加熱処理(ポストベーク)することもできる。
【0114】
後記する光硬化性組成物をガラス等の透明基板上に塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット法等が挙げられる。
【0115】
透明基板に塗布した光硬化性組成物の塗膜の乾燥条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、通常、50〜150℃で、1〜15分間程度である。また、光硬化性組成物の光硬化に用いる光としては、200〜500nmの波長領域の光線を使用するのが好ましい。この波長範囲の光を発する各種光源が使用できる。
【0116】
現像方法としては、例えば、液盛り法、ディッピング法、スプレー法等が挙げられる。光硬化性組成物の露光、現像の後に、必要な色の画素部が形成された透明基板は水洗いし乾燥させる。こうして得られたカラーフィルタは、ホットプレート、オーブン等の加熱装置により、90〜280℃で、所定時間加熱処理(ポストベーク)することによって、着色塗膜中の揮発性成分を除去すると同時に、光硬化性組成物の硬化着色皮膜中に残存する未反応の光硬化性化合物が熱硬化し、カラーフィルタが完成する。
【0117】
カラーフィルタの青色画素部を形成するための光硬化性組成物は、本発明のトリアリールメタン化合物と、分散剤と、光硬化性化合物と、有機溶剤とを必須成分とし、必要に応じて熱可塑性樹脂を用いて、これらを混合することで調製することができる。青色画素部を形成する着色樹脂皮膜に、カラーフィルタの実生産で行われるベーキング等に耐え得る強靱性等が要求される場合には、前記光硬化性組成物を調製するに当たって、光硬化性化合物だけでなく、この熱可塑性樹脂を併用することが不可欠である。熱可塑性樹脂を併用する場合には、有機溶剤としては、それを溶解するものを使用するのが好ましい。
【0118】
前記光硬化性組成物の製造方法としては、本発明のトリアリールメタン化合物と、有機溶剤と分散剤とを必須成分として使用し、これらを混合し均一となる様に攪拌分散を行って、まずカラーフィルタの画素部を形成するための顔料分散液を調製してから、そこに、光硬化性化合物と、必要に応じて熱可塑性樹脂や光重合開始剤等を加えて前記光硬化性組成物とする方法が一般的である。
【0119】
ここで分散剤、有機溶剤は、前記のものが使用可能である。
【0120】
光硬化性組成物の調製に使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等が挙げられる。
【0121】
光硬化性化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3−メチルペンタンジオールジアクリレート等のような2官能モノマー、トリメチルロールプロパトントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の比較的分子量の小さな多官能モノマー、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート等の様な比較的分子量の大きな多官能モノマーが挙げられる。
【0122】
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルパーオキサイド、2−クロロチオキサントン、1,3−ビス(4’−アジドベンザル)−2−プロパン、1,3−ビス(4’−アジドベンザル)−2−プロパン−2’−スルホン酸、4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルホン酸等が挙げられる。市販の光重合開始剤としては、たとえば、チバスペシャルティーケミカルズ社製「イルガキュア(商標名)−184」、「イルガキュア(商標名)−369」、「ダロキュア(商標名)−1173」、BASF社製「ルシリン−TPO」、日本化薬社製「カヤキュアー(商標名)DETX」、「カヤキュアー(商標名)OA」、ストーファー社製「バイキュアー10」、「バイキュアー55」、アクゾー社製「トリゴナールPI」、サンド社製「サンドレー1000」、アップジョン社製「デープ」、黒金化成社製「ビイミダゾール」などがある。
【0123】
また上記光重合開始剤に公知慣用の光増感剤を併用することもできる。光増感剤としては、たとえば、アミン類、尿素類、硫黄原子を有する化合物、燐原子を有する化合物、塩素原子を有する化合物またはニトリル類もしくはその他の窒素原子を有する化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0124】
光重合開始剤の配合率は、特に限定されるものではないが、質量基準で、光重合性あるいは光硬化性官能基を有する化合物に対して0.1〜30%の範囲が好ましい。0.1%未満では、光硬化時の感光度が低下する傾向にあり、30%を超えると、顔料分散レジストの塗膜を乾燥させたときに、光重合開始剤の結晶が析出して塗膜物性の劣化を引き起こすことがある。
【0125】
前記した様な各材料を使用して、質量基準で、本発明のトリアリールメタン化合物100部当たり、300〜1000部の有機溶剤と、1〜100部の分散剤とを、均一となる様に攪拌分散して前記顔料分散液を得ることができる。次いでこの顔料分散液に、本発明のトリアリールメタン化合物1部当たり、熱可塑性樹脂と光硬化性化合物の合計が3〜20部、光硬化性化合物1部当たり0.05〜3部の光重合開始剤と、必要に応じてさらに有機溶剤を添加し、均一となる様に攪拌分散してカラーフィルタ画素部を形成するための光硬化性組成物を得ることができる。
【0126】
現像液としては、公知慣用の有機溶剤やアルカリ水溶液を使用することができる。特に前記光硬化性組成物に、熱可塑性樹脂または光硬化性化合物が含まれており、これらの少なくとも一方が酸価を有し、アルカリ可溶性を呈する場合には、アルカリ水溶液での洗浄がカラーフィルタ画素部の形成に効果的である。
【0127】
顔料分散法のうち、フォトリソグラフィー法によるカラーフィルタ画素部の製造方法について詳記したが、本発明のトリアリールメタン化合物を使用して調製されたカラーフィタ画素部は、その他の電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(PhotovoltaicElectrodeposition)法、インクジェット法、反転印刷法、熱硬化法等の方法で青色画素部を形成して、カラーフィルタを製造してもよい。
【0128】
カラーフィルタは、有機顔料として、赤色顔料、緑色顔料、本発明のトリアリールメタン化合物を使用して得た各色の光硬化性組成物を使用し、平行な一対の透明電極間に液晶材料を封入し、透明電極を不連続な微細区間に分割すると共に、この透明電極上のブラックマトリクスにより格子状に区分けされた微細区間のそれぞれに、赤、緑および青のいずれか1色から選ばれたカラーフィルタ着色画素部を交互にパターン状に設ける方法、あるいは基板上にカラーフィルタ着色画素部を形成した後、透明電極を設ける様にすることで得ることができる。
【0129】
本発明のトリアリールメタン化合物は、鮮明性と明度に優れる着色顔料分散体を提供でき、カラーフィルタ用途の他、塗料、プラスチック(樹脂成型品)、印刷インク、ゴム、レザー、捺染、静電荷像現像用トナー、インクジェット記録用インク、熱転写インキ等の着色にも適用することができる。
【0130】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、もとより本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」、「%」及び「ppm」はいずれも質量基準である。
【0131】
<ベンゾフェノン1の合成>
4−ジエチルアミノ安息香酸(東京化成工業株式会社製試薬)24.0部とトルエン87.8部の混合物に塩化チオニル21.4部を加え、80℃で1時間攪拌後、減圧濃縮し、4−ジエチルアミノ安息香酸クロライドを得た。無水塩化アルミニウム19.8部と1,2−ジクロロエタン126部の混合物を氷浴で冷却し、前記4−ジエチルアミノ安息香酸クロライドを1,2−ジクロロエタン30部に溶かした溶液を80分かけて滴下した。30分攪拌後、N,N−ジエチル−m−トルイジン(和光純薬株式会社製試薬)20.2部を60分かけて滴下し、室温に昇温しながら2時間攪拌した。氷水に注ぎ、15%水酸化ナトリウム水溶液でpH10以上にして、ろ過で沈殿物を除いた後、クロロホルムで抽出した。クロロホルム層を5%水酸化ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=15/1から5/1)で精製して、ベンゾフェノン1(9.2部、収率22%)を得た。
【0132】
<ベンゾフェノン2の合成>
4−ブロモ−2−メチル安息香酸(和光純薬株式会社製試薬)21.5部とクロロホルム28部の混合物に塩化チオニル17.8部、N,N−ジメチルホルムアミド(2滴)を加え、80℃で2時間攪拌後、減圧濃縮し、4-ブロモ−2−メチル安息香酸クロライドを得た。無水塩化アルミニウム15.8部と1,2−ジクロロエタン50部の混合物を氷浴で冷却し、前記4−ブロモ−2−メチル安息香酸クロライドを1,2−ジクロロエタン30gに溶かした溶液を40分かけて滴下した。15分攪拌後、N,N−ジエチル−m−トルイジン(和光純薬株式会社製試薬)16.3部を60分かけて滴下し、そのまま1時間攪拌した。室温に昇温しながら、さらに2時間攪拌した。氷水に注ぎ、15%水酸化ナトリウム水溶液でpH10以上にした後、クロロホルムで抽出した。クロロホルム層を5%水酸化ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=15/1から5/1)で精製して、中間体2(14.5部、収率40%)を得た。
中間体2とトルエン100部の混合物に、ジエチルアミン(和光純薬株式会社製試薬)7.0部、ナトリウムエトキシド3.8部、酢酸パラジウム(II)0.1部、トリエチルホスフィン2.2部(トルエン8.8部に溶解して)を加え、100℃で5時間還流した。室温に冷却し、水130部を加え、ろ過で沈殿物を除いた後、ろ液をトルエンで抽出した。トルエン層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル15/1から9/1)で精製して、ベンゾフェノン2(5.3部、収率35%)を得た。
【0133】
<ベンゾフェノン3の合成>
m−クロロアニリン(和光純薬株式会社製試薬)19.6部、ヨードエタン60.1部、炭酸カリウム53.1部、N−メチル-2-ピロリドン(150ml)の混合物を70℃に昇温して4時間攪拌した。室温に冷却し、水300部に注ぎ、トルエンで抽出した。トルエン層を水で3回、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、中間体3(22.8部、収率79.5%)を得た。
4−ジエチルアミノ安息香酸(東京化成工業株式会社製試薬)24.0部とトルエン87.8部の混合物に塩化チオニル21.4部を加え、80℃で1時間攪拌後、減圧濃縮し、4−ジエチルアミノ安息香酸クロライドを得た。無水塩化アルミニウム19.8部と1,2−ジクロロエタン126部の混合物を氷浴で冷却し、4−ジエチルアミノ安息香酸クロライドを1,2−ジクロロエタン30部に溶かした溶液を80分かけて滴下した。30分攪拌後、中間体3を60分かけて滴下し、室温に昇温しながら2時間攪拌した。氷水に注ぎ、15%水酸化ナトリウム水溶液でpH10以上にして、ろ過で沈殿物を除いた後、クロロホルムで抽出した。クロロホルム層を5%水酸化ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=15/1から5/1)で精製して、ベンゾフェノン3(9.2部、収率22%)を得た。
【0134】
<染料1の合成>
ベンゾフェノン1、4.4部と、N−エチル−1−ナフチルアミン(東京化成工業株式会社製試薬)2.2部をトルエン30mlに混合した後、オキシ塩化リン2.0部を加え、120℃で2時間攪拌した。室温に冷却後、1N塩酸23.5部を加えて15分攪拌し、クロロホルムで抽出した。クロロホルム層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=15/1から5/1)で精製して、染料1(4.9部、収率77%)を得た。
【0135】
<染料2の合成>
ベンゾフェノン1に代えて、ベンゾフェノン2、4.5部を用いる以外は、染料1の合成と同様な操作を行い、染料2(3.9部、収率62%)を得た。
【0136】
<染料3の合成>
ベンゾフェノン1に代えて、ベンゾフェノン3、4.6部を用いる以外は、染料1の合成と同様な操作を行い、染料4(1.5部、収率23%)を得た。
【0137】
<染料4の合成>
4,4'−ビス(ジ−iso−プロピルアミノ)ベンゾフェノン4.9部と1−メチル−2−フェニルインドール2.7部をトルエン13部に混合した後、オキシ塩化リン2.9部を加え、115℃で2時間攪拌した。室温冷却後、1N塩酸20.0部を加えて15分攪拌し、クロロホルムで抽出した。クロロホルム層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=1/0から7/1)で精製して、染料4を得た。
【0138】
<染料5の合成>
4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(シグマ・アルドリッチ社製試薬)4.3部と1−エチル−2−フェニルインドール(和光純薬株式会社製試薬)2.9部をトルエン30部に混合した後、オキシ塩化リン2.0部を加え、120℃で2時間攪拌した。室温冷却後、1N塩酸23.9部を加えて15分攪拌し、クロロホルムで抽出した。クロロホルム層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=20/1から8/1)で精製して、染料5(5.0部、収率71%)を得た。
【0139】
<染料6の合成>
4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンに代えて、ベンゾフェノン1、4.5部を用いる以外は、染料5の合成と同様な操作を行い、染料6(1.5部、収率20%)を得た。
【0140】
<染料7の合成>
4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンに代えて、ベンゾフェノン2、4.6部を用いる以外は、染料5の合成と同様な操作を行い、染料7(4.8部、収率64%)を得た。
【0141】
【化23】

【0142】
<K(PMoW1762)の調整>
NaWO・2HO(和光純薬工業株式会社製試薬)44.0部、NaMoO・2HO(関東化学株式会社製試薬)1.90部を精製水230部に溶解した。この溶液に攪拌しながら85%リン酸64.9部を滴下ロートを用いて添加した。得られた溶液を8時間、加熱還流した。反応液を室温に冷却し、臭素水1滴を加え、攪拌しながら塩化カリウム45.0部を添加することで、K(PMoW1762)を得た。更に1時間攪拌後、生じた黄色の沈殿K(PMoW1762)をろ別し、90℃で乾燥し、収量29.4部の乾燥物を得た。
【0143】
<K(SiMoW1140)の調整>
13mol/LのHNO水溶液9.8部に1mol/LのNaMoO水溶液16.4部を加えて攪拌した。この溶液に下記文献1に記載の方法で調整したK(SiW1139)・13HOを少量ずつ16.4部添加した。室温で4時間攪拌後、飽和KCl水溶液26部を添加することで、K(SiMoW1140)の沈殿物を得た。この沈殿物をろ別し、飽和KCl水溶液で洗浄した。得られた固体を室温で減圧下乾燥した。収量12.2部の乾燥物を得た。
文献1:Inorganic Synthesis vol.27 p85
【0144】
<トリアリールメタン化合物1の合成>
染料1、1.8部をイソプロピルアルコール20%水溶液110部に投入し、40℃で攪拌させて溶解した。次に、K(PMoW1762)2.8部を精製水9.1部に溶解した後、染料1の溶液にゆっくりと加え、そのまま40℃で1時間攪拌した。次いで、内温を80℃に上げ、さらに該温度で1時間攪拌した。冷却後ろ過し、300部の精製水で3回洗浄した。得られた固体を90℃で乾燥させた後、黒青色固体が4.0部得られた。該固体を市販のジューサーにて粉砕して、トリアリールメタン化合物1を得た。
【0145】
<トリアリールメタン化合物2の合成>
染料1、1.9部をイソプロピルアルコール20%水溶液110部に投入し、40℃で攪拌させて溶解した。次に、K(SiMoW1140)2.3部を精製水9.1部に溶解した後、染料1の溶液にゆっくりと加え、そのまま40℃で1時間攪拌した。次いで、内温を80℃に上げ、さらに該温度で1時間攪拌した。冷却後ろ過し、300部の精製水で3回洗浄した。得られた固体を90℃で乾燥させた後、黒青色固体が3.5部得られた。該固体を市販のジューサーにて粉砕して、トリアリールメタン化合物2を得た。
【0146】
<トリアリールメタン化合物3の合成>
染料1に代えて、染料2、1.9部を用いる以外は、トリアリールメタン化合物1の合成と同様な操作を行い、トリアリールメタン化合物3を3.8部得た。
【0147】
<トリアリールメタン化合物4の合成>
染料1に代えて、染料2、1.9部を用いる以外は、トリアリールメタン化合物2の合成と同様な操作を行い、トリアリールメタン化合物4を2.9部得た。
【0148】
<トリアリールメタン化合物5の合成>
染料1に代えて、染料3、1.9部を用いる以外は、トリアリールメタン化合物1の合成と同様な操作を行い、トリアリールメタン化合物5を3.7部得た。
【0149】
<トリアリールメタン化合物6の合成>
染料1に代えて、染料3、1.9部を用いる以外は、トリアリールメタン化合物2の合成と同様な操作を行い、トリアリールメタン化合物6を2.8部得た。
【0150】
<トリアリールメタン化合物7の合成>
染料1に代えて、染料4、1.8部を用いる以外は、トリアリールメタン化合物1の合成と同様な操作を行い、トリアリールメタン化合物7を3.8部得た。
【0151】
<トリアリールメタン化合物8の合成>
染料1に代えて、染料4、1.8部を用いる以外は、トリアリールメタン化合物2の合成と同様な操作を行い、トリアリールメタン化合物8を2.9部得た。
【0152】
<トリアリールメタン化合物9の合成>
染料1に代えて、染料5、1.8部を用いる以外は、トリアリールメタン化合物1の合成と同様な操作を行い、トリアリールメタン化合物9を3.8部得た。
【0153】
<トリアリールメタン化合物10の合成>
染料1に代えて、染料5、1.8部を用いる以外は、トリアリールメタン化合物2の合成と同様な操作を行い、トリアリールメタン化合物10を2.9部得た。
【0154】
<トリアリールメタン化合物11の合成>
染料1に代えて、染料6、1.9部を用いる以外は、トリアリールメタン化合物1の合成と同様な操作を行い、トリアリールメタン化合物11を3.7部得た。
【0155】
<トリアリールメタン化合物12の合成>
染料1に代えて、染料6、1.9部を用いる以外は、トリアリールメタン化合物2の合成と同様な操作を行い、トリアリールメタン化合物12を3.0部得た。
【0156】
<トリアリールメタン化合物13の合成>
染料1に代えて、染料7、1.8部を用いる以外は、トリアリールメタン化合物1の合成と同様な操作を行い、トリアリールメタン化合物13を3.8部得た。
【0157】
<トリアリールメタン化合物14の合成>
染料1に代えて、染料7、1.8部を用いる以外は、トリアリールメタン化合物2の合成と同様な操作を行い、トリアリールメタン化合物14を2.9部得た。
【0158】
<トリアリールメタン化合物15の合成>
染料1、12部を精製水600部に投入し、40℃で攪拌させて溶解した。次に、銅フタロシアニンスルホン酸(スルホン化度=1)10部を0.5%水酸化ナトリウム水溶液600部に溶解した後、染料1の溶液にゆっくりと加え、そのまま40℃で1時間攪拌した。次いで、内温を80℃に上げ、さらに該温度で1時間攪拌した。その後、20%の水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを6から7に調整した。冷却後ろ過し、300部の精製水で3回洗浄した。得られた固体を90℃で乾燥させた後、市販のジューサーにて粉砕して、トリアリールメタン化合物15を得た。
【0159】
【化24】

【0160】
【化25】

【0161】
【化26】

【実施例1】
【0162】
トリアリールメタン化合物1、1.80部、BYK―2164(ビックケミー社製分散剤)2.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート11.10部、0.3−0.4mmφのセプルビーズをポリビンに入れ、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で4時間分散し、顔料分散液1を得た。
【0163】
この顔料分散液1、75.00部とポリエステルアクリレート樹脂(アロニックス(商標名)M7100、東亜合成化学工業株式会社製)5.50部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD(商標名)DPHA、日本化薬株式会社製)5.00部、ベンゾフェノン(KAYACURE(商標名)BP−100、日本化薬株式会社製)1.00部、ユーカーエステルEEP(ユニオンカーバイド社製)13.5部を分散攪拌機で攪拌し、孔径1.0μmのフィルターで濾過し、カラーレジストを得た。
【0164】
このカラーレジストは50mm×50mm、1mmの厚ガラスに乾燥膜厚が2μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、その後90℃で20分間予備乾燥して塗膜を形成させ、青色画素部を含むカラーフィルタとした。
【実施例2】
【0165】
トリアリールメタン化合物1に代えて、化合物2を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液2を調整し、カラーフィルタとした。
【実施例3】
【0166】
トリアリールメタン化合物1に代えて、化合物3を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液3を調整し、カラーフィルタとした。
【実施例4】
【0167】
トリアリールメタン化合物1に代えて、化合物4を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液4を調整し、カラーフィルタとした。
【実施例5】
【0168】
トリアリールメタン化合物1に代えて、化合物5を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液5を調整し、カラーフィルタとした。
【実施例6】
【0169】
トリアリールメタン化合物1に代えて、化合物6を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液6を調整し、カラーフィルタとした。
【実施例7】
【0170】
トリアリールメタン化合物1に代えて、化合物7を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液7を調整し、カラーフィルタとした。
【実施例8】
【0171】
トリアリールメタン化合物1に代えて、化合物8を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液8を調整し、カラーフィルタとした。
【実施例9】
【0172】
トリアリールメタン化合物1に代えて、化合物9を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液9を調整し、カラーフィルタとした。
【実施例10】
【0173】
トリアリールメタン化合物1に代えて、化合物10を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液10を調整し、カラーフィルタとした。
【実施例11】
【0174】
トリアリールメタン化合物1に代えて、化合物11を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液11を調整し、カラーフィルタとした。
【実施例12】
【0175】
トリアリールメタン化合物1に代えて、化合物12を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液12を調整し、カラーフィルタとした。
【実施例13】
【0176】
トリアリールメタン化合物1に代えて、化合物13を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液13を調整し、カラーフィルタとした。
【実施例14】
【0177】
トリアリールメタン化合物1に代えて、化合物14を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液14を調整し、カラーフィルタとした。
【0178】
〔比較例1〕
トリアリールメタン化合物1に代えて、染料1を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液15を調整し、カラーフィルタとした。
【0179】
〔比較例2〕
トリアリールメタン化合物1に代えて、化合物15を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液16を調整し、カラーフィルタとした。
【0180】
〔比較例3〕
トリアリールメタン化合物1に代えて、染料5を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液17を調整し、カラーフィルタとした。
【0181】
実施例で用いた顔料分散液と使用した化合物を表1に示した。
【0182】
【表1】

【実施例15】
【0183】
トリアリールメタン化合物1、1.80部に代えて、トリアリールメタン化合物1 1.60部とFASTOGEN(登録商標) BLUE EP−193(DIC株式会社製カラーフィルタ用ε型銅フタロシアニン顔料)0.20部を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液を調整し、カラーフィルタとした。
【実施例16】
【0184】
トリアリールメタン化合物1、100部を容器に仕込み、攪拌しながら、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 100部と、ヒンダードフェノール系1次酸化防止剤としてIRGANOX 1098〔BASF社製N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)〕55部との混合溶液を、常温で1時間かけて滴下した後、引き続き攪拌しながら前記溶剤を常温で蒸散させ、トリアリールメタン化合物1と酸化防止剤との乾燥混合物を得た。トリアリールメタン化合物1に代えて、同量の上記乾燥混合物を用いる以外は、上記実施例1と同様な操作を行い、顔料分散液を調整し、カラーフィルタとした。
【0185】
<耐光試験評価方法>
上記実施例1〜16及び比較例1〜3で得られた青色カラーフィルタのy=0.110における光照射前の輝度Yを、コニカミノルタ株式会社製分光光度計CM−3500(C光源)で測定した。その後、ATLAS社製キセノン耐光性試験機Suntest CPS+を用い、550W/m、63℃、48時間の条件で光照射後、同様に輝度およびの色差ΔEabを測定した。これらの結果を表2に示した。
【0186】
【表2】

【0187】
表2より、トリアリールメタンカチオンの構造が同一であっても、アニオンの種類によって耐光性に顕著な差異があり、アニオンとして特定のヘテロポリオキソメタレーロアニオンを用いた本発明のトリアリールメタン化合物は、耐光性に極めて優れていることがわかる。また、本発明のトリアリールメタン化合物を含有するカラーフィルタ青色画素部は、初期における輝度が優れているだけでなく、長時間に亘って光線照射の履歴を受けた後であっても、ほぼ初期と同様の輝度を有することがわかる。
【0188】
これにより、光線の照射を長時間に亘って受けても、輝度に優れた液晶表示が可能となる液晶表示装置等を提供できることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明は、そのトリアリールメタン化合物の特異な耐光性により、光線照射を長時間に亘って受けても色相変化の小さい着色物を提供でき、特に、カラーフィルタの青色画素部の調製に用いた際に、高輝度で、光線照射を長時間に亘って受けても、輝度に優れた液晶表示が可能となる液晶表示装置を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】

〔但し、一般式(I)中、R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R〜Rが置換基を有していてもよいアルキル基を表す場合、隣接するRとR、RとR、又はRとRが結合して環構造を形成していてもよい。Xは、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。Yは各々独立に、水素原子、または任意の置換基を示す。An−は、任意のn価のヘテロポリオキソメタレートアニオンである。nは任意の自然数を表す。なお、1分子中に複数の下記一般式(II)
【化2】

で表わされるカチオンが含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。〕
【請求項2】
下記一般式(III)で表される化合物。
【化3】

〔但し、一般式(III)中、R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R〜Rが置換基を有していてもよいアルキル基を表す場合、隣接するRとR、RとR、又はRとRが結合して環構造を形成していてもよい。Xは、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。Yは各々独立に、水素原子、または任意の置換基を示す。An−は、任意のn価のヘテロポリオキソメタレートアニオンである。nは任意の自然数を表す。なお、1分子中に複数の下記一般式(IV)
【化4】

で表わされるカチオンが含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。〕
【請求項3】
下記一般式(V)で表される化合物。
【化5】

〔但し、一般式(V)中、R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R〜Rが置換基を有していてもよいアルキル基を表す場合、隣接するRとR、RとR、又はRとRが結合して環構造を形成していてもよい。Xは、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。Zは、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。An−は、任意のn価のヘテロポリオキソメタレートアニオンである。nは任意の自然数を表す。なお、1分子中に複数の下記一般式(VI)
【化6】

で表わされるカチオンが含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。〕
【請求項4】
下記一般式(VII)で表される化合物。
【化7】

〔但し、一般式(VII)中、R〜Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R〜Rが置換基を有していてもよいアルキル基を表す場合、隣接するRとR、RとR、又はRとRが結合して環構造を形成していてもよい。Xは、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。Zは、水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を示す。An−は、任意のn価のヘテロポリオキソメタレートアニオンである。nは任意の自然数を表す。なお、1分子中に複数の下記一般式(VIII)
【化8】

で表わされるカチオンが含まれる場合、それらは同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。〕
【請求項5】
請求項1〜4記載の化合物から選択される少なくとも一種を青色画素部に含有するカラーフィルタ。

【公開番号】特開2013−79370(P2013−79370A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−200469(P2012−200469)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】