説明

化学分析装置

【課題】保管用容器からの反応容器の取り出しにおける抗体・抗原層の損傷を抑制することができる。
【解決手段】反応容器3内に試料及び試薬を入れて分析処理を行う化学分析装置において、内部に反応容器3を収容し、両端に設けた開口部を保護フィルム4,5によって塞がれた複数の収納セル2によって構成された反応容器マガジン1を収納する収納部を備え、収納セル2の一方の開口部に対向して設けられた切開刃9によって収納セル2の保護フィルム5を切開し、収納セル2の他方の開口部に対向して設けられたプッシュロッド8により反応容器3を収納セル2の切開刃9が設けられた一方の開口部から押し出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査容器内に検査試料および試薬を入れて分析する化学分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、固相方式の免疫自動分析においては、試料収容部分の表面に分析項目に応じた抗体や抗原を配置した反応容器を用いて分析が行われている。
【0003】
このような反応容器における抗体・抗原層は、外部環境変化の影響を受けやすいため保管状態の管理が重要である。例えば、反応容器が高湿状態に晒されるのを抑制するためには、乾燥剤を内包した保管用の容器などに収納し、防湿効果が期待できる保護フィルムなどでシールすることが有効であると考えられる。反応容器は、使用の直前に保管用の容器から取り出され、周囲の環境変化の影響が出来るだけ少ない状態で使用される。
【0004】
このように保管用の容器に収納した分析用部材を取り出す技術としては、例えば、テストストリップを収容したマガジンの少なくとも一方の端面に、それぞれシール膜で密閉されていてよいそれぞれ1つの穴を有する複数のチャンバを備え、取り出し装置によってシール膜で密閉されたチャンバの穴を突き破って収容されたテストストリップをチャンバから押し出すことにより、そのテストストリップをマガジンから取り出す技術が公開されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−517202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術を用いた場合には、取り出し装置によって押された分析用部材によってシール膜を押し破り、その分析用部材を取り出すので、反応容器などの分析用部材に配置された抗体・抗原層がシール膜に接触して損傷する恐れがあった。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、保管用容器からの反応容器の取り出しにおける抗体・抗原層の損傷を抑制することができる化学分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、反応容器内に試料及び試薬を入れて分析処理を行う化学分析装置において、内部に前記反応容器を収容し、両端に設けた開口部を保護フィルムによって塞がれた複数の収納セルによって構成された反応容器マガジンを収納する収納部と、前記収納セルの一方の開口部に対向して設けられ、前記収納セルの保護フィルムを切開する切開手段と、前記収納セルの他方の開口部に対向して設けられ、前記他方側の保護フィルムを貫通して前記収納セル内に進入し、前記反応容器を前記収納セルの前記切開手段が設けられた一方の開口部から押し出す押出手段とを備えたものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、保管用容器からの反応容器の取り出しにおける抗体・抗原層の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施の形態に係る反応容器マガジンの外観を示す斜視図である。
【図2】反応容器マガジンを構成する複数の収納セルの1つを取り出して示す斜視図である。
【図3】収納セルに収納された反応容器を示す縦断面図である。
【図4】収納セルに収納容器が収納された状態を示す縦断面図である。
【図5】収納セルに収納容器が収納された状態を示す透視上面図である。
【図6】第1の形態に係る化学分析装置の収納部を反応容器マガジンとともに示す図である。
【図7】切開刃の刃部の保護フィルムに沿う平面における断面図である。
【図8】切開刃のその他の例を示す断面図である。
【図9】収納セルに対する切開刃及びプッシュロッドの位置を示す縦断面図である。
【図10】収納セルに対する切開刃及びプッシュロッドの位置を示す透視上面図である。
【図11】収納セルからの反応容器の取り出し行程の第1の状態を示す縦断面図である。
【図12】収納セルからの反応容器の取り出し行程の第2の状態を示す縦断面図である。
【図13】収納セルからの反応容器の取り出し行程の第3の状態を示す縦断面図である。
【図14】収納セルからの反応容器の取り出し行程の第4の状態を示す縦断面図である。
【図15】収納セルからの反応容器の取り出しにおける第1の段階を示す斜視図である。
【図16】収納セルからの反応容器の取り出しにおける第2の段階を示す斜視図である。
【図17】第2の実施の形態に係る収納セルと切開刃の様子を示す図である。
【図18】切開刃の貫入角度と保護フィルムの切開時応力との関係を示す図である。
【図19】第3の実施の形態に係る収納セルと切開刃の様子を示す図である。
【図20】第4の実施の形態に係る収納セルと切開刃の様子を示す図である。
【図21】第5の実施の形態に係る切開刃の形状を示す図である。
【図22】第6の実施の形態に係る切開刃の形状を示す図である。
【図23】第7の実施の形態に係る切開刃の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<第1の実施の形態>
図1は本実施の形態に係る反応容器マガジンの外観を示す斜視図であり、図2は反応容器マガジンを構成する複数の収納セルの1つを取り出して示す斜視図、図3は収納セルに収納された反応容器を示す縦断面図である。また、図4は収納セルに収納容器が収納された状態を示す縦断面図であり、図5はその透視上面図である。
【0013】
図1において、反応容器マガジン1は、長手方向の両端に開口部を有する方形筒状の複数(例えば4つ)の収納セル2によって構成されている。また、図2に示すように、複数の収納セル2には、分析に用いる反応容器3がそれぞれ収納されている。
【0014】
反応容器マガジン1において、反応容器3の保管用容器である収納セル2は、開口部を横方向に向けた状態で、上下方向に複数(例えば4つ)連ねて配置されており、さらに、開口部側から見て横方向に複数(例えば2つ)連ねて配置されている。反応容器マガジン1を構成する複数の収納セル2の一方の開口部は、一括して保護フィルム4により塞がれて封止されている。また、複数の収納セル2の他方の開口部においても、同様に、一括して保護フィルム5(図4及び図5等参照)により塞がれて封止されている。本実施の形態においては、上下方向に連ねて配置された複数の収納セル2毎に保護フィルム4,5により封止されている。なお、図1においては、説明のため、保護フィルム4の封止中の様子を示している。
【0015】
保護フィルム4,5は、例えば、PET(Polyethylene Terephthalate)材表面にAl(アルミ)金属膜を蒸着させた構造、つまり、樹脂性フィルムの表面に金属薄膜を形成した構造である。また、図4に示すように、収納セル2の内側上部には、収納セル2内部の吸湿を目的とする乾燥剤が封入された乾燥剤容器6が設けられている。収納セル2の内部は、保護フィルム4,5により封止され、乾燥剤により吸湿されることにより低湿環境が維持される。
【0016】
図3において、反応容器3は、反応容器3を分析装置等における所定の位置に固定する際の押さえ部分となる容器翼部3bと、分析対象の試料を収容する試料収容部3aとを備えている。試料収容部3aには、その試料収容部3aに収容される検体溶液中における目的の抗体/抗原を捕捉・固定する抗体/抗原スポット(抗体・抗原層)が形成されている。
【0017】
図5に示すように、収納セル2の内側下部には、収納セル2の横方向(図5における上下方向)両側に設けられ、収納セル2内部における反応容器3の横方向への移動を抑制する反応容器ガイド7が設けられている。
【0018】
図6は、本実施の形態に係る化学分析装置の反応容器マガジン1を収納する収納部を反応容器マガジン1とともに示す図である。また、図7は切開刃9の刃部9aの保護フィルム4,5に沿う平面における断面図であり、図9及び図10はそれぞれ収納セル2に対する切開刃9及びプッシュロッド8の位置を示す縦断面図及び透視上面図である。
【0019】
図6、図9及び図10において、化学分析装置は、収納部に収納された反応容器マガジン1における収納セル2の一方の開口部に対向して設けられた切開手段としての切開刃9と、収納セルの他方の開口部に対向して設けられた押出手段としてのプッシュロッド8と、切開刃9及びプッシュロッド8を、それぞれ、上下左右前後方向に駆動するための駆動装置(図示せず)とを備えている。また、切開刃9の保護フィルム5と対向する位置には、保護フィルム5の表面に沿って設けられ、保護フィルム5に接触して切開するための刃部9aが設けられている。
【0020】
図7に示すように、切開刃9の刃部9aの断面、つまり、収納セル2側から見た刃部9aの形状は、両端を下方に向けて前記開口部の下端まで延伸した形状であり、下方の一片を欠損した方形形状である。また、刃部9aの両端を収納セル2の下端に合わせた時の刃部9aの高さは、その収納セル2に収納された反応容器3よりも高く、両端の間の距離は収納セル2の横方向(図10中上下方向)の幅よりも狭く、かつ反応央軌3の幅より広くなるよう形成されている。
【0021】
なお、切開刃9は、収納セル2側から見た形状が、両端を下方に向けて開口部の下端まで延伸した形状であり、その高さが反応容器3よりも高く、両端の間の距離が収納セル2の横方向(図10中上下方向)の幅よりも狭く、かつ反応央軌3の幅より広ければ良く、例えば、図8の断面図に示すように、楕円円弧形状の断面形状を有する切開刃9であっても良い。
【0022】
図11〜図14は、収納セル2からの反応容器3の取り出し行程を示す縦断面図である。
【0023】
まず、切開刃9の下端を所望の収納セル2の下端に合わせ、続いて、収納セル2側に駆動することにより、刃部9aを収納セル2の保護フィルム5に接触させて貫入させることにより、保護フィルム5を切開する(図11及び図12参照)。
【0024】
次に、切開刃9を退避させ、続いて、プッシュロッド8を収納セル2側に駆動して保護フィルム4を貫通させ、収納セル2の内部に挿入する(図13参照)。
【0025】
さらに、プッシュロッド8を収納セル2の内部に深く挿入し、収納セル2に収納された反応容器3を切開された保護フィルム5a側から収納セル2外に押し出す(図14参照)。なお、反応容器3の移動先には、図示しない反応容器搬送装置を配置し、反応容器3を化学分析装置内の所定の位置に搬送する。
【0026】
図15及び図16は、収納セル2から反応容器3が取り出される様子を示す斜視図である。図15に示すように、収納セル2の保護フィルム5は切開刃9により切開され、その一部が保護フィルム5aのように切り取られる(第1の段階)。その後、図16に示すように、プッシュロッド8により反応容器3が保護フィルム5側に押されると、反応容器3は切開された保護フィルム5aを押しのけつつ収納セル2の外部に取り出される(第2の段階)。
【0027】
以上のように構成した本実施の形態においては、収納セル2の一方の開口部に対向して設けた切開手段である切開刃9により収納セル2の保護フィルム5を切開し、収納セル2の他方の開口部に対向して設けた押出手段であるプッシュロッド8により反応容器3を収納セル2の一方の開口部から押し出すように構成したので、保管用容器からの反応容器の取り出しにおける抗体・抗原層の損傷を抑制することができる。
【0028】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態は、第1の実施の形態における収納セル2に対する切開刃9の貫入角度を変えて、保護フィルム5を切開するように構成したものである。
【0029】
図17は本実施の形態に係る収納セル2と切開刃9の様子を示す図であり、図18は切開刃9の貫入角度と保護フィルム5の切開時応力との関係を示す図である。図17中、第1の実施の形態で説明したものと同等の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0030】
図17において、切開刃9は収納セル2の長手方向に対してα°傾けて配置されている。これは同時に切開刃9の刃部9aと保護フィルム5のなす角度もα°の角度となるよう接触するということである。
【0031】
図18に示すように、切開刃9の貫入角度αが大きくなるに従って、切開刃9により保護フィルム5を切開するときの応力が小さくなる傾向があり、特に、貫入角度αが3°以上であるときに応力が小さくなることがわかる。したがって、本実施の形態では貫入角度α≧3°とする。
【0032】
以上のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0033】
また、保護フィルム5の切開に必要な切開刃9の駆動力を抑制することができるので、駆動機構にかかる負荷を抑制することができ、駆動機構の故障の発生を抑制することができる。
【0034】
<第3及び第4の実施の形態>
第2の実施の形態においては、切開刃9を収納セル2の長手方向に対してα°傾けることにより、収納セル2に対する切開刃9の貫入角度αを変え、保護フィルム5を切開するように構成したが、この実施の形態は本発明の精神の範囲内で種々の変形が可能である。すなわち、収納セル2に対する切開刃9の貫入角度αを変えることができれば、切開刃9による保護フィルム5の切開時の応力を抑制することができる。図19及び図20は、そのような変形例を本発明の第3及び第4の実施の形態として示すものである。図19及び図20中、図17に示した部材と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0035】
すなわち、図19に示す本発明の第3の実施の形態における切開刃29は、保護フィルム5の表面に対してα°の角度を有するように刃部29aを備えている。このように構成した本実施の形態においても、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
同様に、図20に示す本発明の第4の実施の形態における収納セル12は、切開刃9の刃部9aに対してα°の角度を有するように開口部及び開口部を封止する保護フィルム5を配置している。このように構成した本実施の形態においても、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0037】
<その他の実施の形態>
以上に本発明の幾つかの実施の形態を説明したが、これら実施の形態は本発明の精神の範囲内で種々の変形が可能である。それらの変形例を図21〜図23を参照しつつ説明する。図21〜図23は、変形例の切開刃39,49,59の構成を示す図であり、それぞれ、(a)は上面図、(b)は側面図を示している。例えば、図21に示した切開刃39は、上方の刃部39aの保護フィルム5に対する貫入角度αを変えることにより、切開時の応力を抑制するよう構成されている(第5の実施の形態)。また、図22に示した切開刃49は、上方の刃部49aの保護フィルム5に対する貫入角度αを変えるとともに、左右の刃部49aの保護フィルム5に対する貫入角度αを変ことにより、切開時の応力を抑制するよう構成されている(第6の実施の形態)。また、図23に示した切開刃59は、左右の刃部59aの保護フィルム5に対する貫入角度αを変ことにより、切開時の応力を抑制するよう構成されている(第7の実施の形態)。
【符号の説明】
【0038】
1・・・反応容器マガジン、2,12・・・収納セル、3・・・反応容器、4,5・・・保護フィルム、6・・・乾燥容器、7・・・反応容器ガイド、8・・・プッシュロッド、9・・・切開刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内に試料及び試薬を入れて分析処理を行う化学分析装置において、
内部に前記反応容器を収容し、両端に設けた開口部を保護フィルムによって塞がれた複数の収納セルによって構成された反応容器マガジンを収納する収納部と、
前記収納セルの一方の開口部に対向して設けられ、前記収納セルの保護フィルムを切開する切開手段と、
前記収納セルの他方の開口部に対向して設けられ、前記他方側の保護フィルムを貫通して前記収納セル内に進入し、前記反応容器を前記収納セルの前記切開手段が設けられた一方の開口部から押し出す押出手段と
を備えたことを特徴とする化学分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の化学分析装置において、
前記切開手段は、前記保護フィルムの表面に沿って設けられ、両端を下方に向けて前記開口部の下端まで延伸して設けられた刃部を有することを特徴とする化学分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の化学分析装置において、
前記切開手段の刃部は、該刃部と前記保護フィルムのなす角度が3°以上の角度となるよう接触し、前記保護フィルムを切開することを特徴とする化学分析装置。
【請求項4】
請求項2記載の化学分析装置において、
前記切開手段の刃部は、前記保護フィルムに沿う平面における断面形状が下方の一片を欠損させた方形となるように形成されたことを特徴とする化学分析装置。
【請求項5】
請求項2記載の化学分析装置において、
前記石灰手段の刃部は、前記保護フィルムに沿う平面における断面形状が下方の一部を欠損させた楕円円弧形状となるように形成されたことを特徴とする化学分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−53110(P2011−53110A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202909(P2009−202909)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】