説明

化学実験玩具及びそれを用いた化学実験玩具セット

【課題】 温度の異なる水を入れることにより別異の色彩を視認でき、安全且つ簡便に科学への興味を持たせることができる化学実験玩具及びそれを用いた化学実験玩具セットを提供する。
【解決手段】 化学実験器具の形態を有する透明性容器2の表面に、互いに色調の異なる可逆熱変色性顔料(A)と、可逆熱変色性顔料(B)とを含む可逆熱変色層3を設けてなり、可逆熱変色性顔料は、色濃度−温度曲線において消色状態からの降温過程で発色開始温度(T)に達すると発色し始め、完全発色温度(T)に達すると完全に発色状態になり、発色状態からの昇温過程で消色開始温度(T)に達すると消色し始め、完全消色温度(T)に達すると完全に消色状態になるヒステリシス曲線を示す顔料であり、可逆熱変色性顔料(A)と(B)のヒステリシス曲線が互いに重複しない化学実験玩具1及びそれを用いた化学実験玩具セット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学実験玩具及びそれを用いた化学実験玩具セットに関する。更に詳細には、温度変化により多彩な色変化を視認させる化学実験玩具及びそれを用いた化学実験玩具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器中にpH指示薬水溶液を入れ、酸性またはアルカリ性の水溶液を滴下することにより水溶液のpHが段階的に変化してこれに対応した複数の色が発生し、時間経過や振ったり混ぜたりすることで水溶液が色変化する玩具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記玩具は、現象の不思議さから科学への興味を持たせることができるとしても、pH指示薬水溶液をその都度用意する必要があり、取り扱いにも注意が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−218806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、この種の科学への興味を持たせることができる実験玩具であって、温度の異なる水を入れることにより、化学反応により液体が変色する様相を視認できる化学実験玩具及びそれを用いた化学実験玩具セットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、化学実験器具の形態を有する透明性容器の表面に、互いに色調の異なる可逆熱変色性顔料(A)と、可逆熱変色性顔料(B)とを含む可逆熱変色層を設けてなり、前記可逆熱変色性顔料は、色濃度−温度曲線において消色状態からの降温過程で発色開始温度(T)に達すると発色し始め、完全発色温度(T)に達すると完全に発色状態になり、発色状態からの昇温過程で消色開始温度(T)に達すると消色し始め、完全消色温度(T)に達すると完全に消色状態になるヒステリシス曲線を示す顔料であり、前記可逆熱変色性顔料(A)と(B)のヒステリシス曲線が互いに重複しない化学実験玩具、或いは、化学実験器具の形態を有する透明性容器の表面に、可逆熱変色性顔料(A)を含む可逆熱変色層と、前記可逆熱変色性顔料(A)とは色調が異なる可逆熱変色性顔料(B)を含む可逆熱変色層を積層してなり、前記可逆熱変色性顔料は、色濃度−温度曲線において消色状態からの降温過程で発色開始温度(T)に達すると発色し始め、完全発色温度(T)に達すると完全に発色状態になり、発色状態からの昇温過程で消色開始温度(T)に達すると消色し始め、完全消色温度(T)に達すると完全に消色状態になるヒステリシス曲線を示す顔料であり、前記可逆熱変色性顔料(A)と(B)のヒステリシス曲線が互いに重複しない化学実験玩具を要件とする。
更には、前記可逆熱変色性顔料(A)の完全発色温度(T)より1℃以上低温側に可逆熱変色性顔料(B)の発色開始温度(t)を有する、或いは、可逆熱変色性顔料(B)の完全消色温度(t)より1℃以上高温側に可逆熱変色性顔料(A)の消色開始温度(T)を有すること、可逆熱変色性顔料(B)のヒステリシス曲線は、可逆熱変色性顔料(A)のヒステリシス曲線に内在したものであること、前記可逆熱変色層は、透明性容器の外表面に設けられてなること、前記透明性容器が内容器と外容器からなる二重容器により形成されてなり、内容器外面又は外容器内面に可逆熱変色層を設けてなること、前記可逆熱変色層は、透明性容器の底部から上部まで連続的に設けられてなること、試験管、ビーカー、フラスコのいずれかの形態を有すること等を要件とする。
更には、前記実験用玩具を複数備えた化学実験玩具セットを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、温度の異なる水を入れることにより別異の色彩を視認でき、安全且つ簡便に科学への興味を持たせることができる化学実験玩具及びそれを用いた化学実験玩具セットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】可逆熱変色性顔料(A)の温度−色濃度曲線を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施例の可逆熱変色性顔料(A)、(B)の温度−色濃度曲線を示す説明図である。
【図3】他の可逆熱変色性顔料(A)、(B)の温度−色濃度曲線を示す説明図である。
【図4】他の可逆熱変色性顔料(A)、(B)の温度−色濃度曲線を示す説明図である。
【図5】他の可逆熱変色性顔料(A)、(B)の温度−色濃度曲線を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施例の化学実験玩具の拡大縦断面説明図である。
【図7】本発明の他の実施例の化学実験玩具の拡大縦断面説明図である。
【図8】本発明の他の実施例の化学実験玩具の拡大縦断面説明図である。
【図9】本発明の他の実施例の化学実験玩具の拡大縦断面説明図である。
【図10】本発明の他の実施例の化学実験玩具の拡大縦断面説明図である。
【図11】本発明の他の実施例の化学実験玩具の拡大縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記可逆熱変色性顔料としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び前記(イ)、(ロ)の電子授受反応による呈色反応を可逆的に生起させる(ハ)有機化合物媒体の三成分を含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させたマイクロカプセル顔料を挙げることができる。
前記におけるマイクロカプセル顔料は、公知のマイクロカプセル化技術、例えば、界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等の適用により得られる。
前記した可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包して使用することにより、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができ、化学的及び物理的に安定な顔料を構成できる。
尚、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の粒子径は、0.2〜30μmの範囲、好ましくは、1〜30μm、更に好ましくは2〜15μmの範囲のものが、変色の鋭敏性、持久性、加工適性等の面で効果的である。
前記可逆熱変色性顔料の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性について詳しく説明する。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されており、温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。
消色状態からの降温過程で発色開始温度(T)に達すると発色し始め、完全発色温度(T)に達すると完全に発色状態になり、発色状態からの昇温過程で消色開始温度(T)に達すると消色し始め、完全消色温度(T)に達すると完全に消色状態になる。
温度Tにおいては発色状態と消色状態の2相が共存する状態にあり、この温度Tを含む、発色状態と消色状態が共存できる温度域が変色の保持可能な温度域であり、(T+T)/2−(T+T)/2がヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
前記可逆熱変色性顔料(A)、(B)は、前記ヒステリシス曲線を示す互いに色調の異なる可逆熱変色性顔料である。
【0009】
一例として図2に示す一方の可逆熱変色性顔料(A)のヒステリシス曲線に、他方の可逆熱変色性顔料(B)のヒステリシス曲線が内在したものについて説明する。
この場合、T以上の温度域では無色を呈してなり、降温によりtの温度に達すると可逆熱変色性顔料Bが発色を開始し、tの温度に達すると完全に発色する。この時点で無色から有色(1)への色変化が視認される。
更に降温していくと、Tの温度に達すると可逆熱変色性顔料(A)が発色を開始し、Tの温度に達すると完全に発色し、有色(1)と混色になった有色(2)の色調が視認される。
この状態から昇温していくと、tの温度に達すると先に可逆熱変色性顔料(B)が消色を開始し、tの温度に達すると完全に消色し、可逆熱変色性顔料(A)のみが発色状態となるため、有色(2)から有色(3)への色変化が視認される。
更に昇温していくと、Tの温度に達すると可逆熱変色性顔料(A)が消色を開始し、Tの温度に達すると完全に消色するため、有色(3)から無色の色変化が視認される。
従って、前記図2に示されるヒステリシス特性を示す可逆熱変色性顔料(A)、(B)を用いることにより、無色、有色(1)、有色(2)、有色(3)の四状態の色変化が視認できる。
また、非変色性着色剤を添加することにより、前記四状態の色彩と非変色性着色剤の色彩が混色となった有色(1)、有色(2)、有色(3)、有色(4)の色変化が視認される。
【0010】
また、図3のように一方の可逆熱変色性顔料(A)の完全発色温度(T)より低温側に他方の可逆熱変色性顔料(B)の発色開始温度(t)を有する系においては、可逆熱変色性顔料(A)、(B)はT以上の温度域では無色を呈してなり、降温によりTの温度に達すると可逆熱変色性顔料(A)が発色を開始し、Tの温度に達すると完全に発色する。この時点で無色から有色(1)への色変化が視認される。
更に降温していくと、tの温度に達すると可逆熱変色性顔料(B)が発色を開始し、tの温度に達すると完全に発色するため、有色(1)と混色になった有色(2)の色調が視認される。
この状態から昇温していくと、Tとt、及び、Tとtは重複しているため、T(=t)の温度に達すると可逆熱変色性顔料(A)、(B)が共に消色を開始し、T(=t)の温度に達すると完全に消色するため、有色(2)から無色への色変化が視認される。
なお、非変色性着色剤を添加することにより、前記三状態の色彩と非変色性着色剤の色彩が混色となった有色(1)、有色(2)、有色(3)の色変化が視認される。
【0011】
また、図4のように一方の可逆熱変色性顔料Bの完全消色温度(t)より高温側に他方の可逆熱変色性顔料(A)の消色開始温度(T)を有する系においては、可逆熱変色性顔料(A)、(B)はT以下の温度域では有色(2)を呈してなり、加温によりtの温度に達すると可逆熱変色性顔料(B)が消色を開始し、tの温度に達すると完全に消色する。この時点で有色(2)から有色(1)への色変化が視認される。
更に加温していくと、Tの温度に達すると可逆熱変色性顔料(A)が消色を開始し、Tの温度に達すると完全に消色するため、有色(1)から無色への色変化が視認される。
この状態から降温していくと、Tとt、及び、Tとtは重複しているため、T(=t)の温度に達すると可逆熱変色性顔料(A)、(B)が共に発色を開始し、T(=t)の温度に達すると完全に発色するため、無色から有色(2)への色変化が視認される。
なお、非変色性着色剤を添加することにより、前記三状態の色彩と非変色性着色剤の色彩が混色となった有色(1)、有色(2)、有色(3)の色変化が視認される。
【0012】
また、図5のように可逆熱変色性顔料(A)と(B)のヒステリシス曲線が互いに重複しない場合でも、前述のような降温過程で無色から有色(1)、更に有色(1)から有色(2)への3状態の色変化や、非変色性の着色剤を添加した有色(1)、有色(2)、有色(3)の色変化が視認でき、昇温過程で有色(2)から有色(1)、更に有色(1)から無色への3状態の色変化や、非変色性着色剤を添加した有色(3)、有色(2)、有色(1)の色変化を視認できる。
【0013】
図2の一方の可逆熱変色性顔料(A)のヒステリシス曲線に、他方の可逆熱変色性顔料(B)のヒステリシス曲線が内在したものについて詳しく説明する。
前記可逆熱変色性顔料(A)としては、本出願人が提案した特公平4−17154号公報、特開平7−33997号公報、特開平7−179777号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている、大きなヒステリシス特性(ΔH)を示して変色する可逆熱変色性顔料、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から温度を上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、T以下の低温域またはT以上の高温域で変化させた状態を互変的に特定の温度域で記憶保持できる顔料が好適である。
【0014】
前記可逆熱変色性顔料(B)としては、本出願人の提案による特公昭51−35414号公報、特公昭51−44706号公報、特公平1−17154号公報、特開平7−186546号公報等に記載されているヒステリシス幅の比較的小さい熱変色性材料や、3℃以下のΔT値(融点−曇点)を示す脂肪酸エステルを前記(ハ)成分として適用した、3℃以下のヒステリシス幅(ΔH)を発現させる高感度の可逆熱変色性顔料(特公平1−29398号公報)が好適である。
この種の可逆熱変色性顔料は、変色温度を境として、その前後で変色し、変色前後の両状態のうち特定の温度域では特定の一方の状態しか存在しえない。即ち、もう一方の状態はその状態が発現するのに要した熱または冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば特定の温度域で呈する元の状態に戻るタイプの顔料である。
【0015】
前記大きなヒステリシス幅(ΔH)を呈して変色する熱変色性顔料(A)と、該熱変色性顔料(A)とは発色時の色調を異にし、ΔHより小さいヒステリシス幅(ΔH)を呈し、前記熱変色性顔料(A)の変色温度領域に内在して変色する熱変色顔料Bを用いると、特定温度域での高感度の変色性、色彩記憶性、多色変色性、変色の意外性、変色の妙味等を効果的に発現させることができる。
更にtとTの温度差を1℃以上、Tとtの温度差を1℃以上の関係を共に満たすことにより、可逆熱変色性顔料(B)の変色状態の視覚判別のための可視時間を適正に保持し、色変化を認識させる。1℃未満では、熱変色性顔料(A)、(B)の発消色が連続的となり、色変化を認識し難い。
【0016】
前記熱変色性顔料(A)、(B)をブレンドした組成物をバインダー樹脂を含むビヒクル中に分散させ、塗料、インキ形態となして各種支持体にコーティング、吹き付け等により、可逆熱変色層を形成させて実用に供する。
尚、非変色性着色剤は同一層に混在させることなく、非変色性着色剤による着色層を設けた系にあっても、前記同様の色変化を視覚させることができる。
前記非変色性着色剤としては、公知の染料、顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、パール顔料、体質顔料、フォトクロミック着色剤等が挙げられる。
【0017】
前記可逆熱変色性顔料(A)、(B)の可逆熱変色層中における占有率は5〜80重量%、好ましくは10〜60重量%の範囲が熱変色効果からみて有効である。即ち、5重量%未満では発色濃度が低く、色変化が明瞭に視覚できず、一方、80重量%を越えると残色が視覚され、明瞭な消色状態を視覚させ難い。
前記可逆熱変色層の厚みは、少なくとも0.5μm以上、好ましくは1〜400μm、より好ましくは10〜200μmであり、0.5μm未満では色変化の鮮明性に欠け、一方、400μmを越える系では外観上の美観が損なわれがちであり、好ましくない。
前記ビヒクル中に含まれる樹脂は透明状の膜形成樹脂が好適であり、以下に例示する。
アイオノマー樹脂、イソプレン−無水マレイン酸共重合樹脂、アクリロニトリル−アクリリックスチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル塩素化ポリエチレン−スチレン共重合樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト共重合樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、リニヤ低密度ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール変性アルキド樹脂、エポキシ変性アルキド樹脂、スチレン変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル系エマルジョン樹脂、スチレン−ブタジエン系エマルジョン樹脂、アクリル酸エステル系エマルジョン樹脂、水溶性フェノール樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ブタジエン樹脂、酢酸セルローズ、硝酸セルローズ、エチルセルローズ等を挙げることができる。
【0018】
前記化学実験器具の形態を有する透明性容器としては、プラスチック、ガラスが有効である。
前記透明性容器の形態としては、液体を収容する化学実験器具の形態であれば特に限定されるものではないが、試験管、ビーカー、フラスコのいずれかの形態が好適である。
また、前記可逆熱変色層は透明性容器の内表面に形成することもできるが、透明性容器の外表面に可逆熱変色層を形成すると、支持体自体の温度変化が遅く、変色に感応する温度への到達も遅くなるため、温水や冷水を容器内に入れて暫くすると変色するため、あたかも化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができる。
更に、前記透明性容器が内容器と外容器の二重容器により形成されてなり、内容器外面又は外容器内面に可逆熱変色層を設けることもできる。
前記二重容器に可逆熱変色層を設ける場合、内容器外面に可逆熱変色層を設けると、可逆熱変色層の擦過等による剥離を防止できると共に、支持体自体の温度変化が遅く、変色に感応する温度への到達も遅くなるため、温水や冷水を容器内に入れて暫くすると変色するため、あたかも化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができる。
なお、前記可逆熱変色層は、透明性容器の底部から上部まで連続的に設けることにより、
収容した水が変色したような様相変化を付与し易い。
【0019】
本発明においては、透明性容器の表面に、互いに色調の異なる可逆熱変色性顔料(A)と可逆熱変色性顔料(B)とを含む可逆熱変色層を設ける他、透明性容器の表面に、可逆熱変色性顔料(A)を含む可逆熱変色層と、前記可逆熱変色性顔料(A)とは色調が異なる可逆熱変色性顔料(B)を含む可逆熱変色層を積層することもできる。
前記可逆熱変色性顔料(A)、(B)は前述の顔料を用いることができる。
また、一方或いは両方の可逆熱変色層中に非変色性着色剤を含有させたり、非変色性着色剤を可逆熱変色層に混在させることなく、非変色性着色剤による着色層を設けることもできる。
【0020】
更に、前記可逆熱変色層上、或いは、透明性容器の可逆熱変色層を設けていない箇所には、低屈折率顔料とバインダー樹脂を含み、水を吸液した状態と吸液しない状態で透明性を異にする多孔質層を設けることもできる。
前記多孔質層について説明する。
前記多孔質層は、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた層であり、乾燥状態と吸液状態で透明性が異なる層である。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及びその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4〜1.8の範囲にあり、水を吸液すると良好な透明性を示すものである。
なお、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
又、前記低屈折率顔料は2種以上を併用することもできる。
前記低屈折率顔料はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に分散され、支持体に塗布した後、揮発分を乾燥させて多孔質層を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例中の部は質量部である。
実施例1(図6参照)
可逆熱変色性顔料A(ΔH:18℃、T:10℃、T:15℃、T:28℃、T:33℃、青色から無色の可逆的色変化)6.0部、可逆熱変色性顔料B(ΔH:2℃、t:18℃、t:20℃、t:20℃、t:22℃、黄色から無色の可逆的色変化)4.0部を、バインダー樹脂を含む油性ビヒクル中に分散して油性スプレーインキを調製した。
試験管形状のアクリロニトリルスチレン共重合樹脂製透明容器2の外表面に、前記油性スプレーインキを吹き付け塗装し、可逆熱変色層3を形成して化学実験玩具1を得た。
前記玩具は、35℃の水を注いだ状態では、可逆熱変色性顔料A及び可逆熱変色性顔料Bが消色するため、無色の液体が収容された状態が視認される。
前記容器内に17℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Bが発色して黄色になるため、あたかも無色の液体が黄色になったように視認される。
この際、容器を通して可逆熱変色層に冷熱が伝わるため、無色から黄色への色変化は攪拌に伴って変色したような視覚効果を発現でき、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、前記容器内に10℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Aが発色して青色と黄色が混色となった緑色になるため、あたかも黄色の液体が緑色になったように視認される。
この際も容器を通して可逆熱変色層に冷熱が伝わるため、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、前記容器内に25℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Bが消色して青色になるため、あたかも緑色の液体が青色になったように視認される。
この際も容器を通して可逆熱変色層に熱が伝わるため、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、35℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Aが消色して無色の液体が収容された状態に戻り、前記様相変化は繰り返し行うことができた。
【0022】
実施例2(図7参照)
可逆熱変色性顔料A(ΔH:18℃、T:10℃、T:15℃、T:28℃、T:33℃、赤色から無色の可逆的色変化)6.0部、可逆熱変色性顔料B(ΔH:2℃、t:25℃、t:27℃、t:27℃、t:29℃、青色から無色の可逆的色変化)4.0部を、バインダー樹脂を含む油性ビヒクル中に分散して油性スプレーインキを調製した。
ビーカー形状のアクリロニトリルスチレン共重合樹脂製透明容器2の外表面に、前記油性スプレーインキを吹き付け塗装し、可逆熱変色層3を形成して化学実験玩具1を得た。
前記玩具は、35℃の水を注いだ状態では、可逆熱変色性顔料A及び可逆熱変色性顔料Bが消色するため、無色の液体が収容された状態が視認される。
前記容器内に23℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Bが発色して青色になるため、あたかも無色の液体が青色になったように視認される。
この際、容器を通して可逆熱変色層に冷熱が伝わるため、無色から青色への色変化は攪拌に伴って変色したような視覚効果を発現でき、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、前記容器内に10℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Aが発色して赤色と青色が混色となった紫色になるため、あたかも青色の液体が紫色になったように視認される。
この際も容器を通して可逆熱変色層に冷熱が伝わるため、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、前記容器内に30℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Bが消色して赤色になるため、あたかも紫色の液体が赤色になったように視認される。
この際も容器を通して可逆熱変色層に熱が伝わるため、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、35℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Aが消色して無色の液体が収容された状態に戻り、前記様相変化は繰り返し行うことができた。
【0023】
実施例3(図8参照)
可逆熱変色性顔料A(ΔH:18℃、T:10℃、T:15℃、T:28℃、T:33℃、紫色から無色の可逆的色変化)5.0部、可逆熱変色性顔料B(ΔH:2℃、t:25℃、t:27℃、t:27℃、t:29℃、黄色から無色の可逆的色変化)5.0部を、バインダー樹脂を含む油性ビヒクル中に分散して油性スプレーインキを調製した。
三角フラスコ形状のアクリロニトリルスチレン共重合樹脂製透明容器2の外表面に、前記油性スプレーインキを吹き付け塗装し、可逆熱変色層3を形成して化学実験玩具1を得た。
前記玩具は、35℃の水を注いだ状態では、可逆熱変色性顔料A及び可逆熱変色性顔料Bが消色するため、無色の液体が収容された状態が視認される。
前記容器内に23℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Bが発色して黄色になるため、あたかも無色の液体が黄色になったように視認される。
この際、容器を通して可逆熱変色層に冷熱が伝わるため、無色から黄色への色変化は攪拌に伴って変色したような視覚効果を発現でき、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、前記容器内に10℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Aが発色して紫色と黄色が混色となった茶色になるため、あたかも黄色の液体が茶色になったように視認される。
この際も容器を通して可逆熱変色層に冷熱が伝わるため、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、前記容器内に30℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Bが消色して紫色になるため、あたかも茶色の液体が紫色になったように視認される。
この際も容器を通して可逆熱変色層に熱が伝わるため、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、35℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Aが消色して無色の液体が収容された状態に戻り、前記様相変化は繰り返し行うことができた。
【0024】
実施例4(図9参照)
可逆熱変色性顔料A(ΔH:18℃、T:10℃、T:15℃、T:28℃、T:33℃、赤色から無色の可逆的色変化)6.0部、可逆熱変色性顔料B(ΔH:2℃、t:18℃、t:20℃、t:20℃、t:22℃、青色から無色の可逆的色変化)4.0部、非熱変色性着色剤C〔黄色蛍光顔料(商品名:エポカラーFP−117、(株)日本触媒製)〕0.7部を、バインダー樹脂を含む油性ビヒクル中に分散して油性スプレーインキを調製した。
丸型フラスコ形状のアクリロニトリルスチレン共重合樹脂製透明容器2の内表面に、前記油性スプレーインキを吹き付け塗装し、可逆熱変色層3を形成して化学実験玩具1を得た。
前記玩具は、35℃の水を注いだ状態では、可逆熱変色性顔料A及び可逆熱変色性顔料Bが消色するため、黄色の液体が収容された状態が視認される。
前記容器内に17℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Bが発色して青色と黄色が混色となった緑色になるため、あたかも黄色の液体が緑色になったように視認される。 この際、黄色から緑色への色変化は攪拌に伴って変色したような視覚効果を発現でき、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、前記容器内に10℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Aが発色して赤色と緑色が混色となった紫色になるため、あたかも緑色の液体が紫色になったように視認される。
この際、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、前記容器内に25℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Bが消色して赤色になるため、あたかも紫色の液体が赤色になったように視認される。
この際、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、35℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Aが消色して黄色の液体が収容された状態に戻り、前記様相変化は繰り返し行うことができた。
【0025】
実施例5(図10参照)
可逆熱変色性顔料A(ΔH:18℃、T:10℃、T:15℃、T:28℃、T:33℃、青色から無色の可逆的色変化)6.0部を、バインダー樹脂を含む油性ビヒクル中に分散して油性スプレーインキを調製した。
試験管形状のアクリロニトリルスチレン共重合樹脂製透明容器2の外表面に、前記油性スプレーインキを吹き付け塗装し、可逆熱変色層(A)31を形成した。
次いで、可逆熱変色性顔料B(ΔH:2℃、t:18℃、t:20℃、t:20℃、t:22℃、黄色から無色の可逆的色変化)4.0部を、バインダー樹脂を含む油性ビヒクル中に分散して油性スプレーインキを調製し、可逆熱変色層(A)31上に吹き付け塗装し、可逆熱変色層(B)32を形成して化学実験玩具1を得た。
前記玩具は、35℃の水を注いだ状態では、可逆熱変色性顔料A及び可逆熱変色性顔料Bが消色するため、無色の液体が収容された状態が視認される。
前記容器内に17℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Bが発色して黄色になるため、あたかも無色の液体が黄色になったように視認される。
この際、容器を通して可逆熱変色層に冷熱が伝わるため、無色から黄色への色変化は攪拌に伴って変色したような視覚効果を発現でき、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、前記容器内に10℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Aが発色して青色と黄色が混色となった緑色になるため、あたかも黄色の液体が緑色になったように視認される。
この際も容器を通して可逆熱変色層に冷熱が伝わるため、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、前記容器内に25℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Bが消色して青色になるため、あたかも緑色の液体が青色になったように視認される。
この際も容器を通して可逆熱変色層に熱が伝わるため、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、35℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Aが消色して無色の液体が収容された状態に戻り、前記様相変化は繰り返し行うことができた。
【0026】
実施例6(図11参照)
可逆熱変色性顔料A(ΔH:18℃、T:10℃、T:15℃、T:28℃、T:33℃、青色から無色の可逆的色変化)6.0部、可逆熱変色性顔料B(ΔH:2℃、t:18℃、t:20℃、t:20℃、t:22℃、黄色から無色の可逆的色変化)4.0部を、バインダー樹脂を含む油性ビヒクル中に分散して油性スプレーインキを調製した。
内容器21と外容器22とからなる試験管形状のアクリロニトリルスチレン共重合樹脂製透明容器2の内容器外表面に、前記油性スプレーインキを吹き付け塗装し、可逆熱変色層3を形成して化学実験玩具1を得た。
前記玩具は、35℃の水を注いだ状態では、可逆熱変色性顔料A及び可逆熱変色性顔料Bが消色するため、無色の液体が収容された状態が視認される。
前記容器内に17℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Bが発色して黄色になるため、あたかも無色の液体が黄色になったように視認される。
この際、内容器を通して可逆熱変色層に冷熱が伝わるため、無色から黄色への色変化は攪拌に伴って変色したような視覚効果を発現でき、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、前記容器内に10℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Aが発色して青色と黄色が混色となった緑色になるため、あたかも黄色の液体が緑色になったように視認される。
この際も内容器を通して可逆熱変色層に冷熱が伝わるため、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、前記容器内に25℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Bが消色して青色になるため、あたかも緑色の液体が青色になったように視認される。
この際も内容器を通して可逆熱変色層に熱が伝わるため、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、35℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Aが消色して無色の液体が収容された状態に戻り、前記様相変化は繰り返し行うことができた。
【0027】
実施例7
可逆熱変色性顔料A(ΔH:18℃、T:10℃、T:15℃、T:28℃、T:33℃、赤色から無色の可逆的色変化)6.0部、可逆熱変色性顔料B(ΔH:2℃、t:25℃、t:27℃、t:27℃、t:29℃、青色から無色の可逆的色変化)4.0部を、バインダー樹脂を含む油性ビヒクル中に分散して油性スプレーインキを調製した。
ビーカー形状のアクリロニトリルスチレン共重合樹脂製透明容器の外表面に、前記油性スプレーインキを吹き付け塗装し、可逆熱変色層を形成した。
次いで、前記透明容器内面の一部に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水50部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1.5部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて印刷し、吸液状態と非吸液状態とで透明性を異にする多孔質層を形成して化学実験玩具1を得た。
前記玩具は、35℃の水を注いだ状態では、可逆熱変色性顔料A及び可逆熱変色性顔料Bが消色するため、無色の液体が収容された状態が視認される。
前記容器内に23℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Bが発色して青色になるため、あたかも無色の液体が青色になったように視認される。
この際、容器を通して可逆熱変色層に冷熱が伝わるため、無色から青色への色変化は攪拌に伴って変色したような視覚効果を発現でき、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、前記容器内に10℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Aが発色して赤色と青色が混色となった紫色になるため、あたかも青色の液体が紫色になったように視認される。
この際も容器を通して可逆熱変色層に冷熱が伝わるため、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、前記容器内に30℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Bが消色して赤色になるため、あたかも紫色の液体が赤色になったように視認される。
この際も容器を通して可逆熱変色層に熱が伝わるため、あたかも攪拌したことによる化学反応の促進によって変色したような印象を付与することができた。
次いで、35℃の水を注いで攪拌すると、可逆熱変色性顔料Aが消色して無色の液体が収容された状態に戻り、前記様相変化は繰り返し行うことができた。
なお、透明性容器内面に設けた多孔質層は、乾燥状態では白色を呈し、吸水状態では透明になるため、片付ける際に容器が乾燥した状態と濡れた状態のいずれかを目視により確認することができ、利便性を向上させることができた。
【0028】
実施例8
実施例1乃至3で得た化学実験玩具を組み合わせて化学実験玩具セットを得た。
前記化学実験玩具セットは、試験管に温水や冷水を注ぐと無色、黄色、緑色、青色に変色し、ビーカーに温水や冷水を注ぐと無色、青色、紫色、赤色に変色し、三角フラスコに温水や冷水を注ぐと無色、黄色、茶色、紫色に変色する。
また、試験管に収容された水と、ビーカーに収容された水を混合したり、試験管と三角フラスコに収容された水をビーカーに入れることにより、使用者が意図しない色調の水溶液を作り出すことができ、あたかも実験をしているような様相変化を付与できる商品性の高い実験玩具セットが得られた。
【符号の説明】
【0029】
可逆熱変色性顔料(A)の完全発色温度
可逆熱変色性顔料(A)の発色開始温度
可逆熱変色性顔料(A)の消色開始温度
可逆熱変色性顔料(A)の完全消色温度
可逆熱変色性顔料(B)の完全発色温度
可逆熱変色性顔料(B)の発色開始温度
可逆熱変色性顔料(B)の消色開始温度
可逆熱変色性顔料(B)の完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅
1 化学実験玩具
2 透明性容器
21 内容器
22 外容器
3 可逆熱変色層
31 可逆熱変色層(A)
32 可逆熱変色層(B)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学実験器具の形態を有する透明性容器の表面に、互いに色調の異なる可逆熱変色性顔料(A)と、可逆熱変色性顔料(B)とを含む可逆熱変色層を設けてなり、前記可逆熱変色性顔料は、色濃度−温度曲線において消色状態からの降温過程で発色開始温度(T)に達すると発色し始め、完全発色温度(T)に達すると完全に発色状態になり、発色状態からの昇温過程で消色開始温度(T)に達すると消色し始め、完全消色温度(T)に達すると完全に消色状態になるヒステリシス曲線を示す顔料であり、前記可逆熱変色性顔料(A)と(B)のヒステリシス曲線が互いに重複しない化学実験玩具。
【請求項2】
化学実験器具の形態を有する透明性容器の表面に、可逆熱変色性顔料(A)を含む可逆熱変色層と、前記可逆熱変色性顔料(A)とは色調が異なる可逆熱変色性顔料(B)を含む可逆熱変色層を積層してなり、前記可逆熱変色性顔料は、色濃度−温度曲線において消色状態からの降温過程で発色開始温度(T)に達すると発色し始め、完全発色温度(T)に達すると完全に発色状態になり、発色状態からの昇温過程で消色開始温度(T)に達すると消色し始め、完全消色温度(T)に達すると完全に消色状態になるヒステリシス曲線を示す顔料であり、前記可逆熱変色性顔料(A)と(B)のヒステリシス曲線が互いに重複しない化学実験玩具。
【請求項3】
前記可逆熱変色性顔料(A)の完全発色温度(T)より1℃以上低温側に可逆熱変色性顔料(B)の発色開始温度(t)を有する、或いは、可逆熱変色性顔料(B)の完全消色温度(t)より1℃以上高温側に可逆熱変色性顔料(A)の消色開始温度(T)を有する請求項1又は2記載の化学実験玩具。
【請求項4】
可逆熱変色性顔料(B)のヒステリシス曲線は、可逆熱変色性顔料(A)のヒステリシス曲線に内在したものである請求項1又は2記載の化学実験玩具。
【請求項5】
前記可逆熱変色層は、透明性容器の外表面に設けられてなる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の化学実験玩具。
【請求項6】
前記透明性容器が内容器と外容器からなる二重容器により形成されてなり、内容器外面又は外容器内面に可逆熱変色層を設けてなる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の化学実験玩具。
【請求項7】
前記可逆熱変色層は、透明性容器の底部から上部まで連続的に設けられてなる請求項1乃至6のいずれか一項に記載の化学実験玩具。
【請求項8】
試験管、ビーカー、フラスコのいずれかの形態を有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の化学実験玩具。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の実験用玩具を複数備えた化学実験玩具セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−147645(P2011−147645A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12092(P2010−12092)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】