説明

化学的にプログラム可能な免疫

任意の分子又は化合物に対して個体を即時的に免疫する方法及び組成物が提供される。本発明は、少なくとも2つの部位を有する免疫リンカーに関する: (1) 個体において免疫応答成分に結合する少なくとも1つの第1の結合部位、及び(2)所望の化合物又は分子、すなわち標的に特異的に結合する少なくとも1つの第2の結合部位。第2の結合部位は、増加した安定性、分解耐性及びより長い循環半減期の利益を有する、好ましくはチオール化されたアプタマーである。チオール化されたアプタマーを有する免疫リンカー分子を含む医薬組成物の製造方法及び使用方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願についての相互参照)
本件出願は、2009年5月5日出願の米国仮特許出願第61/175,602号の利点を主張し、その開示は引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、任意の所望の抗原に対する即時免疫を提供するための組成物及び方法に関する。本明細書で使用される「免疫」とは、特異的標的に対し免疫成分の機能的な結合を示す。特異的標的は、第一の場所で免疫を生じさせた薬剤と同じではなく、又は構造的に関連がなく、実際に、本明細書に開示される方法により、当該標的の性質は、免疫原単独によってではなく、「リンカー」と称される医薬実体によっても決定される。「リンカー」は、当該リンカー上の2つの構造認識部位により、1の実体すなわち汎用免疫原により誘発された免疫応答を、別の実体すなわち標的へと結びつける。これらの第1の部位は、免疫応答の認識成分に結合する。これらの第2の部位は、標的に結合する。標的結合部位はアプタマーであり得、いくつかの実施態様において、アプタマーは、ホスホロチオエート又はホスホロジチオエートなどのリン酸骨格上のいくつかの又は全ての修飾型リン酸エステルを含むことができる。
【背景技術】
【0003】
(本発明の背景)
免疫は、ヒト及び動物を疾患から保護するために、100年以上にわたり使用されてきた。従来の免疫の前提は、個体が2回以上その同じ抗原を受けた後、抗原又は抗原を含んでいる病原体に最も有効な免疫応答が発生するということである。この現象は、免疫記憶又は二次免疫応答とよばれる。免疫が成功した場合、該個体は、該抗原が由来する病原体の影響から保護される。
【0004】
例えば、いったん個体が細菌性微生物由来の抗原で成功裏に免疫されたなら、その個体の免疫系は、遭遇した場合にその細菌に対して予備刺激されており、かつ用意ができている。成功した免疫は、抗原が個体の免疫系にアクセス可能である細菌の領域にあることが必要である。成功した場合、免疫系は反応し、細菌は殺され、包含され、中和され、又はそうでなければ身体から掃去され、該細菌性微生物による感染からはほとんど又は全く疾患が生じない。この保護の鍵は、抗原による免疫が、該抗原が由来する細菌性微生物への曝露の前に起こらなければならないということである。
【0005】
したがって、従来の免疫プロセスは、一般に、個体に抗原を注射して、適当な時間を待って、該個体が免疫応答を開始させることを含む。免疫応答を開始するために必要とされる時間は、大部分の抗原について約2週〜数ヵ月である。ほとんどの場合、抗原のブースタ投与は、免疫応答を維持するために必要とされる。このブースタは、通常、抗原の第1の投与の数週間あるいは数ヶ月後に与えられる。
【0006】
それゆえ、抗原又は病原体への曝露に先立って数カ月与えられる場合、従来の免疫は保護を提供することにつき非常に成功的であるが、個体が以前曝露されておらず、即時的に有効な免疫応答が要求される新規抗原に曝される場合、従来の免疫はほとんど有用ではない。このような状況の良好な例は、バイオテロリズム剤からの保護を必要とする部隊である。個体の集団は該剤への任意の潜在的曝露に先立ってバイオテロリズム剤に対してワクチン接種を受けることができるが、従来のワクチン接種は単純な答えでない。集団の従来のワクチン接種は一部の者に有害な反応を引き起こし、該集団が該剤に決して曝され得ない可能性があるが、それでもリスクを取っていた。加えて、政府は、バイオテロリズムの可能性がある全ての剤についてロジスティックにワクチンを開発できず、生産できず、かつ必須要員をワクチンで免疫することができない。病原体と接触した又は接触が疑わしい個体に対し直前に又は後にさえのいずれかで投与できる組成物が必要とされ、該投与は該個体において即時的な保護又は有効な免疫応答の生成を可能にする。
【0007】
免疫リンカー及び汎用免疫原は、以前には、米国特許公報20030017165及び20040146515(引用によりその全てが本明細書に組み込まれる)に記載されているものなどの実質的に即時免疫を提供することで構築されていた。これらの先に記載した免疫リンカーは、標的結合要素としてアプタマー核酸を組み込むことができる。標的結合部位としてアプタマー核酸を使用することの1つの不利点は、核酸分子がヌクレアーゼ分解を受けることである。これは、当該分子の半減期を減少させ、及び伸長により、それらが提供する治療的な利点の期間を減少させる。
【0008】
以前の研究は、修飾ポリヌクレオチドがヌクレアーゼ分解にいくらか抵抗性であり得ることを示した。オリゴヌクレオチドのホスホリル酸素のチオール化によるものなどのオリゴヌクレオチドの修飾は、ヌクレアーゼ抵抗性を与えることができる(Gorenstein (Farschtschi, N.及びGorenstein, D. G.の文献, Tetrahedron Lett. (1988) 29:6843,及びNielsenらの文献 Tetrahedron Lett. (1988) 29:291)。ホスホロチオエート及びホスホロジチオエートなどの様々な骨格修飾は、薬剤をよりヌクレアーゼ耐性にする。(Verma及びEcksteinの文献; Annu Rev Biochem, 1998 67:99-134)。残念なことに、高いチオリン酸エステル骨格置換を保持するオリゴヌクレオチドは、通常のリン酸エステルよりもタンパク質の方へ「粘着性」であるようであり、これはおそらくスルホン化されたヌクレオチドの電荷特性に基づく非特異性相互作用に寄与し得る。このように、チオール化されたODNの増加した粘着性は、特異性の損失を結果的に生じ、それゆえアプタマー技術により提供される特異的標的化の見込みを打破する。特異性の損失は、DNA結合タンパク質-DNA相互作用において決定的である。なぜなら、タンパク質とそれらのDNA結合部位との大部分の直接的な接触はリン酸基に対するものであるからである。更なる複雑化要因として、特定のチオ置換が二重鎖構造における構造的撹乱をもたらし得ることが見出されている(Choらの文献 J. Biomol. Struct. Dyn. (1993) 11, 685-702)。従って、ヌクレオチドの限定的チオール化は、ヌクレアーゼ抵抗性を増加させることが可能である。しかしながら、これは、結合特異性を犠牲にすることなく、インビボ投与などの治療的な用途のために認識し得る循環半減期を未だ提供しない。
【0009】
従って、必要とされているものは、結合特異性の減少なく、実質的に全てのホスホロチオエート又はホスホロジチオエートをポリヌクレオチド骨格に含むことにより安定化するアプタマー結合部位を有する免疫リンカーである。
【発明の概要】
【0010】
(本発明の要旨)
本発明は、プログラム可能な免疫のための組成物及び方法を提供し、これはインビボでの治療用途及び標的特異性のための安定性を保持する病原体又は他の望ましくない物質などの標的に対する個体による実質的即時免疫応答を提供できる。即時的に有効な免疫応答が達成されるので、これらの組成物は、病原体との個体の接触の前の任意の時、又は病原体との個体の接触のすぐ後でさえ、個体に投与できる。一実施態様において、本発明は、バイオテロリズム剤からの当該人員の保護に関して軍隊が面している多くの課題を解決する。
【0011】
本発明の組成物及び方法は、従来の免疫技術を超える効果も提供する。これは、本方法が、修飾病原体又は病原体の部分が病原体に対して有効な免疫のために個体に投与されることを必要としないことによる。さらに、アプタマー標的-結合部位を含む本明細書に記載される免疫リンカーは、インビボ投与のための増加した安定性を提供するリン酸骨格を修飾し得る。このような修飾には、実質的に全てのホスホロチオエート又はホスホロジチオエートを含むリン酸骨格修飾を含む。これらの修飾アプタマー標的-結合部位は、治療的な投与のための顕著な安定性及び循環半減期を有し、標的結合特異性を有することが見出されている。これらの修飾アプタマー、より詳しくはチオアプタマー、免疫リンカーは、以前にはトレードオフと考えられていた付随する結合特異性を有する顕著な安定性を含む先に記載した免疫リンカーを超える改良を提供する。
【0012】
本発明の組成物は、一実施態様において、免疫応答成分に結合する少なくとも1つの第1の結合部位を含み、かつ標的に結合する少なくとも1つの第2の結合部位を含む免疫リンカーを含む。これらのリンカー組成物は、個体の既存の免疫応答を利用して、既存の免疫応答を異なる標的に関連づけ、これは免疫リンカーにより提供される当該2つの間の結合を除いて、当該既存の免疫応答とは無関係である。既存の免疫応答は、免疫リンカーの第1の結合部位を含む抗原に方向付けられ、該第1の結合部位を含む汎用免疫原の投与により個体において誘導できる。免疫応答を標的に関連づけることは、標的に対する一次免疫応答の必要なく、即時的に関連付けられた免疫応答を可能にさせる。
【0013】
免疫リンカーは、微生物、バクテリオファージ、タンパク質、核酸、多糖、合成物質又はこれらの組み合わせなどの任意の型の化学的又は生物学的物質であり得る。一実施態様において、少なくとも1つの第1の結合部位は、少なくとも1つの第2の結合部位を含む分子に、物理的に若しくは化学的に連結又は抱合される。この実施態様において、スペーサー分子は、第1の結合部位と第2の結合部位との間に存在できる。別の実施態様において、免疫リンカーは、少なくとも1つの第1の結合部位及び少なくとも1つの第2の結合部位を含む単一分子である。
【0014】
既存の免疫応答の開始又は生成の後、即時免疫が要求される新規化合物又は病原体に個体が曝露されるか、又は曝露される疑いがある場合、該個体は、汎用免疫原に対応する第1の結合部位、及び新規化合物又は病原体に結合する第2の結合部位を含む本明細書に記載されている免疫リンカーを投与される。免疫リンカーは、既存の免疫応答の間に生じる免疫応答成分に1つの第1の結合部位で結合し、更に少なくとも1つの第2の結合部位で新規化合物又は病原体に結合し、これにより該新規化合物又は病原体にも結合する免疫リンカーに結合した免疫応答成分の免疫複合体が提供される。個体の免疫系は、これらの免疫リンカー複合体を認識し、身体からそれらを取り除くか又は掃去する。
【0015】
従って、本明細書に記載されている免疫リンカーを含む組成物を投与することにより、個体の既存の免疫応答は、汎用免疫原から新規化合物又は病原体にまで再び方向付けられる。上記したように、本発明の別の利点は、ただ1つの第1の開始免疫分子又は汎用免疫原が、後の抗原特異的免疫応答のための個体の免疫系を開始するために要求されることである。従って、本発明は、個体のために現在推奨されるか又は必要とされるワクチン接種の数(及び、おそらく製剤の複雑さ)を減少させることができる。本発明の更なる利点は、免疫リンカー及び汎用免疫原の調製の容易さである。本発明の免疫リンカーは、容易に組み立てることができ、かつパンデミック感染、バイオテロリズム的脅威、又は特異的病原体の限定的発生のような公衆衛生ニーズに対する迅速な対応のための健康管理専門家に提供できる。本発明のなお更なる利点は、個体が免疫され得る化合物の幅である。任意の化合物又は外来物質、例えば抗原、病原体、化学物質、又は内因性物質、例えばウイルス感染又は癌で見出される変化した細胞に結合する免疫リンカーを作成できる。
【0016】
本発明は、個体において存在する免疫応答を使用して、免疫応答を異なる標的に再び方向付け、安定的かつ特異的な即時免疫を提供できる。従って、個体が特定の抗原に既に免疫がある場合、当該個体が免疫される抗原を含むか又はこれに対応する第1の結合部位、及び望ましくない病原体、化学物質又は剤に方向付け得る第2の結合部位を有する免疫リンカー分子を作成することができる。
【0017】
本発明のこれらの及び他の目的、特徴及び利点は、開示された実施態様に係る以下の詳細な説明の再検討後に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】70%ウシ胎児血清の存在又はヌクレアーゼの存在下における、非修飾(UN)対修飾(ホスホロチオエート(PA))アプタマーカクテルのイメージを提供する。
【図2】培地単独(コントロール)、致死毒素LeTx(LeTx)単独をいずれかの非チオ修飾防御抗原アプタマー(チオApt/LeTx)と併用した細胞毒性を示す棒グラフを提供する。マウスマクロファージ(RAW 264.7細胞)上でそれぞれ一晩のインキュベーション後、LeTx単独、又はチオ修飾アプタマーと非チオ修飾アプタマーのいずれかと混合されたLeTx(LeTx O/N、Reg Apt/LeTx O/N、チオApt/LeTx O/N)を細胞に加えた。細胞生存率は、XTT細胞増殖アッセイを使用するチャレンジ後24時間後に評価した。
【図3】ドキシサイクリン及びチオール化された抗致死因子-免疫リンカーを有する及び有しない炭疽菌(Bacillus anthracis)に曝されたマウスの群の生存曲線のグラフを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
本発明は、本明細書において標的と記載する、任意の分子又は微生物に対してヒト又は動物を即時的に免疫する方法及び組成物に関する。これは、化学的にプログラム可能な免疫又はプログラム可能な免疫という。プログラム可能な免疫は、プログラム可能な免疫が1つの抗原に向かって方向付ける既存の免疫応答の標的への再方向付けを可能にすることにおいて、古典的な免疫と異なる。免疫応答は、本発明の免疫リンカーを使用して再び方向付けられる。
【0020】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」及び「the」には、文脈が明らかに他を明示しない限り、複数形の言及を含む。従って、例えば、「化合物」への言及は、1以上の当該化合物への言及であり、当業者に公知のその等価物などを含む。
【0021】
本発明の免疫リンカーは、少なくとも2つの部位を含む:(1) 個体の少なくとも1つの免疫応答成分に結合する第1の結合部位、及び(2) 標的に結合する第2結合部位。免疫応答成分は、個体への免疫リンカーの投与前に個体において存在するものである。例えば、免疫応答成分は、第1の結合部位に対する以前の免疫応答の一部であった抗体、又は分子、又は分子の大きな組立体、又は該第1の結合部位を含む微生物でさえあり得る。したがって、本明細書に使用される用語「既存の免疫応答」とは、第1の結合部位又は第1の結合部位に免疫学的に類似するエピトープに向かって方向付けられた免疫応答に関する。換言すれば、「既存の免疫応答」は、第1の結合部位に結合する免疫応答成分が生成されるか又は存在する免疫応答である。既存の免疫応答は、第1の結合部位に対応する汎用免疫原の個体への以前の投与により生成でき、又はこのような投与なく個体において存在できる。
【0022】
したがって、本発明は、個体に1以上の免疫リンカーを含む組成物の有効量を投与することを含む、第1の抗原から標的への個体の既存の免疫応答を変更する方法を含み、該リンカーは少なくとも1つの第1の結合部位及び少なくとも1つの第2の結合部位を含み、該第2の結合部位は該標的に結合し、かつ該第1の抗原は該第1の結合部位又はその免疫学的等価物を含む。本発明はまた、個体に1以上の免疫リンカーを含む組成物の有効量を投与することを含む、標的に対する免疫応答を増強する方法を包含し、該リンカーは少なくとも1つの第1の結合部位及び少なくとも1つの第2の結合部位を含み、該第2の結合部位は該標的に結合し、かつ該個体は第1の結合部位又はその免疫学的等価物に対する既存の免疫応答を有する。
【0023】
(汎用免疫原)
第1の結合部位に「対応する」汎用免疫原は、第1の結合部位と同一であり得、全第1の結合部位を含むことができ、第1の結合部位の部分を含むことができ、又は第1の結合部位の免疫学的等価物であり得る。2以上の分子に言及する場合、用語「免疫学的等価物」は、本明細書において、同じ免疫応答成分に結合される分子をいう。本発明は、汎用免疫原によって抗体産生される免疫応答成分も第1の結合部位に結合することのみを必要とする。一実施態様において、汎用免疫原は、免疫応答を開始するか又はそれに参加できる複合体の生産を結果的に生じるのに十分な親和性で免疫応答成分に結合する。好ましい実施態様において、汎用免疫原及び第1の結合部位以外の分子に対する免疫応答成分の交差反応性は、最小限である。
【0024】
汎用免疫原は、個体が免疫応答を開始する任意の分子、生物体又は化合物であることができ、任意の経路を介して投与できる。汎用免疫原は、分子、微生物又は毒素又はこれらに由来するトキソイド;タンパク質又はポリペプチド;ポリヌクレオチド;多糖;合成物質又はこれらの組み合わせ;であり得るがこれらに限定されない。好ましくは、汎用免疫原は、持続性免疫記憶を提供する個体の免疫応答を引き起こし、促進用量で個体に再投与されることができ、かつ個体において疾患、病理又は長期的疾患を引き起こさない。病原体の部分又は病原体の修飾部分を含む免疫原は汎用免疫原であり得るが、汎用免疫原は、それが誘発する補完的な免疫応答を除く全ての任意の関係を負うことを必要としない。例えば、ヒトは、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、破傷風トキソイド、及びポリオウイルス由来の免疫原抗原でルーチン的に免疫される。ネコ及びイヌなどの動物は、狂犬病ウイルス由来の免疫原抗原でルーチン的に免疫される。これらの及び他の従来の免疫原は汎用免疫原として使用できるが、これは便宜の問題であって必要ではないであろう。
【0025】
あるいは、非伝統的免疫原を汎用免疫原として使用できる。好ましくは、非伝統的免疫原は、病原体の部分又は修飾部分のいずれも含まない。一実施態様において、汎用免疫原は、ハプテンが結合されているタンパク質又はタンパク質の部分である。「ハプテン」は、本明細書において、特異抗体と反応する分子として定義されるが、キャリアータンパク質又は他の大きな抗原性分子に結合される場合を除き、追加的な抗体の形成又は生成を誘発できない。大部分のハプテンは小分子であるが、いくつかの巨大分子はハプテンとして機能することもできる。一実施態様において、実証目的で実施され、実施例1として本明細書に記載されるように、ハプテンは、フェニルアルソナート(phenylarsonate)であり、汎用免疫原はフェニルアルソン化された(phenylarsonylated)タンパク質である。
【0026】
別の実施態様において、汎用免疫原は、バクテリオファージ又はバクテリオファージのエピトープを含む。免疫応答成分は、バクテリオファージの任意の部分に結合でき、一実施態様において、バクテリオファージの表面に発現されるペプチドに結合する。バクテリオファージ汎用免疫原は、任意の経路を介して個体に投与でき、いくつかの実施態様において、バクテリオファージは、投与の便利な手段として細菌内に含まれ得る。
【0027】
(第1及び第2結合部位並びに免疫リンカーのスペーサー)
本発明は、汎用免疫原が免疫リンカーの第1の結合部位に対応するので、部分的に、汎用免疫原に向かって方向付けられた既存の免疫応答を異なる抗原に再び方向付けることができる。第1の結合部位は、汎用免疫原及び免疫リンカー分子の両方の一部であるので、汎用免疫原に方向付けられた既存の免疫応答又は既存の免疫系成分も免疫リンカーを認識する。免疫リンカーの第1の結合部位は、個体の免疫系により認識されるか若しくは個体の免疫応答成分により結合される、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、有機化学物質、微生物、例えばバクテリオファージ、バクテリア、ウイルス若しくはウイルス粒子、又は原生動物、前記の任意の断片又は部分、前記の任意の組合せ、又は任意の他の組成物を含むことができる。
【0028】
一実施態様において、第1の結合部位は、α-Galエピトープ、すなわちガラクトシル-α-1,3-ガラクトシル-β-1,4-N-アセチルグルコサミンなどのオリゴ糖である。別の実施態様において、第1の結合部位は、バクテリオファージの部分、及びより好ましくは、バクテリオファージの表面に発現されるポリペプチドを含む。
【0029】
第2の結合部位は、標的に結合する、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、有機化学物質、微生物、例えばバクテリオファージ、バクテリア、ウイルス、原生動物、又は前記の任意の断片若しくは部分、前記の任意の組合せ、又は任意の他の組成物を含むことができる。1つの具体的実施態様において、第1の結合部位及び第2の結合部位は、同じ微生物に含まれる。本明細書中で使用されるように、ポリヌクレオチド又は核酸は、DNA又はRNAのいずれかであって、任意の鎖状立体構造、例えば、単鎖、二重鎖、三重鎖、及びその任意の化学修飾体のものを意味し、核酸と会合するタンパク質の存在又は不在を予期する。化学修飾は、核酸の増幅又は合成の前に個々のヌクレオチドにあることができ、又はマルチマーへの組込み後にヌクレオチドに付加できる。このような修飾には、シトシンでの修飾、環外アミン、5-ブロモ-ウラシルの置換、骨格修飾、メチル化、普通でない塩基対組合せ、及び当業者に公知の他のものを含むが、これらに限定されない。一実施態様において、第2の結合部位は、抗体又は抗体断片、好ましくは抗体可変領域を含む抗体断片、及びより好ましくはFab断片を含む。別の実施態様において、第2の結合部位は、バクテリオファージにより発現されるポリペプチド、及び好ましくはバクテリオファージの表面に発現されるポリペプチドを含む。
【0030】
一実施態様において、骨格修飾は、ホスホロチオエート又はホスホロジチオエートの包含体である。ホスホロチオエート又はホスホロジチオエートは、ポリヌクレオチドリン酸骨格の実質的に全て又はリン酸骨格の一部に含まれることができる。いくつかの実施態様において、リン酸バックグラウンドの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%がチオール化される。リン酸骨格が標的に対する結合特異性を犠牲にすることなくチオール化されることが意図される。ポリヌクレオチドのチオール化の1つの利点は、本明細書に記載される免疫リンカーにより提供される治療的利点に係る半減期及び持続期間を増加させる、ヌクレアーゼ分解に対する増加した抵抗性である。
【0031】
上記のように、免疫リンカーは、免疫応答成分に結合できる第1の結合部位を含み、かつ標的を結合できる第2の結合部位を含む、任意の型の分子又は微生物を含む。いくつかの実施態様において、免疫リンカーは、複数の第1の結合部位及び/又は複数の第2の結合部位を含むことができる。複数の第1の結合部位は、同一であることができ、又は異なることができる。また、複数の第2の結合部位は、同一であることができ、又は異なることができる。結合部位は、異なる分子についてのそれらの特異性、又は同じ分子についてのそれらの親和性において、異なり得る。免疫リンカーは、それ自身の免疫原性を低減させるように修飾することもできる。
【0032】
免疫応答成分及び標的に対する第1及び第2の結合部位による結合は、それぞれ、他の分子(例えば多糖又は核酸)により提供される結合を介するものを含む任意の相互作用により達成できる。好ましい実施態様において、第1の結合部位は免疫応答分子に特異的であり、第2の結合部位は標的に特異的である。上記のように、分子は、2つの分子が免疫系に係る機能的な複合体の産生を結果的に生じるのに十分な親和性で結合する場合、別の分子「に特異的」である。さらに好ましい実施態様において、標的以外の分子と1つの第2の結合部位との交差反応性は、最小限である。別の好ましい実施態様において、免疫応答成分以外の分子と1つの第1の結合部位との交差反応性は、最小限である。
【0033】
個体に対する免疫リンカーの投与の後、免疫応答成分、免疫リンカー及び標的を含む免疫リンカー複合体が形成される。免疫リンカーは、免疫系成分への免疫リンカーの結合に先立って又はその後に標的を結合できる。免疫リンカー複合体の形成の後、標的は、免疫系経路を介して掃去される。抗原の「掃去」とは、本明細書において、身体にもはや有害でなくなるような抗原の除去、不活性化又は修飾をいう。
【0034】
別の実施態様において、免疫リンカーは、α-ガラクトシル又はα-Galエピトープ(Galili, U.及びAvila, J.L.の文献, 「Α-Gal及びAnti-Gal」, Subcellular Biochemistry, Vol. 32, 1999 に記載される)に対応する第1の結合部位を含む。異物移植研究は、ヒトが、通常ヒトでは見出されず、他の動物及び多くの微生物で見出されるα-ガラクトシルエピトープに対して免疫応答を開始することを決定付けた。本発明の1つの具体的実施態様において、α-ガラクトシルエピトープは、抗体のFab断片又はチオール化されたアプタマーポリヌクレオチドを含む第2の結合部位に抱合される。
【0035】
さらに別の実施態様において、免疫リンカーは、バクテリオファージを含む。第1の結合部位は、バクテリオファージの任意の部分に対応できるが、好ましくは、バクテリオファージにより発現される第1のポリペプチドに対応する。バクテリオファージ上の第2の結合部位は、標的に結合する第2の及び異なるバクテリオファージ発現されたポリペプチドに対応する。第1の及び第2のポリペプチドの両方は、バクテリオファージの表面に発現される。
【0036】
以下の実施例3は、バクテリオファージ汎用免疫原と共に使用することができるバクテリオファージ免疫リンカーの一例を提供する。いくつかの実施態様において、免疫リンカーは、ファージパニング法による、野生型バクテリオファージに由来する組換えバクテリオファージを含む。第1の結合部位は、野生型バクテリオファージに対する対象の免疫学的な第1の曝露での野生型バクテリオファージ機能のいかなる部分からも構成され、リンカーとして使用される組換えバクテリオファージによりさらに保持される。リンカーとして使用される組換えバクテリオファージ上の第2の結合部位は、標的に結合するので、選択される組換えバクテリオファージ発現されたペプチドに対応する。
【0037】
別の実施態様において、免疫リンカーは、第1の結合部位として作用するα-Galエピトープ及び第2の結合部位として作用する合成ペプチドの抱合体であって、該ペプチド配列はバクテリオファージパニング実験に由来するものであり、該ペプチドは、固相支持体に付着された意図される抗原によって、ランダムペプチドライブラリからパンされ(panned)、組換えバクテリオファージのコレクションで提示される。他の実施態様において、第1の及び/又は第2の結合部位は、アプタマー核酸、より好ましくはSELEXプロセスにより生産されたアプタマーを含む。SELEXは、指数関数的富化によるリガンドの体系的進化(Systemic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)を表す。SELEX法は当該技術分野で公知であり、少なくとも以下の米国特許公報に記載されている:米国特許5,475,096; 6,261,774; 6,395,888; 6,387,635; 6,387,620; 6,376,474; 6,346,611; 6,344,321; 6,344,318; 6,331,398; 6,331,394; 6,329,145; 6,300,074; 6,280,943; 6,280,943; 6,280,932; 6,261,783; 及び6,232,071。
【0038】
一般に、SELEX法は、三次元標的に特異的に結合する核酸を同定することに関する。核酸は、いくつかの配列が実質的に任意の化学物質に特異的に結合することを発見できるように、様々な二次元及び三次元構造を形成するのに十分な能力、並びにそれらのモノマーの中で利用可能な十分な化学的多用途性を有する。生体液での安定性のために、好ましいアプタマーは、2'-フルオロ-又は2'-アミノ-2'-デオキシピリミジンなどの1以上の修飾ヌクレオチドを含む。これらの塩基を使用する核酸は、天然存在型核酸よりインビボで非常に安定である。M. Famulok及びG. Mayerの文献, Cur. Top. Micro. Immunobiol. 243:123-146, 1999を参照されたい。同様の方法に由来するスピーゲルマー(Spiegelmer)(Vater, A.及びKlussmann, S.の文献 Current Opin. Drug Discov Devel. 2003 Mar; 6(2):253- 61を参照されたい)も血清におけるそれらの固有の安定性のために利用できる。
【0039】
一実施態様において、SELEX法における使用のためのオリゴヌクレオチドライブラリは、GS FLXチタニウム連続プロトコルなどのロシュ(Mannheim、Germany)製の市販のキット、及びアンプリコンライブラリ調製プロトコル(Amplicon Library Preparation Protocol)などの試薬を使用してなされる。GS FLXチタニウム融合プライマー(ロシュ、Mannheim、Germany)を使用して、同定されるアプタマーの配列を決定できるが、他の塩基配列決定法が公知技術であり、同様に使用できる。
【0040】
上記のように、本発明は、実質的に全てチオール化されたヌクレオチドから構成される免疫リンカーアプタマーを含む。米国特許6,867,289; Yangらの文献 J. Bioorganic & Med. Chem. Lett (1997) 7:2651;米国特許5,218,088; Nielsenらの文献 Tetrahedron Lett. (1988) 29:2911;を参照されたく、これらは引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。ホスホロチオエートインターヌクレオチド結合は、ヌクレアーゼに対するホスホジエステル結合よりかなり安定であり、この特徴はそれを細胞培養及びインビボ使用に有用にさせる。チオール化されたヌクレオチドを有するアプタマーを調製することにより、結果として生じるチオール化された免疫リンカーはインビボで一般により長い半減期を有し、これにより、チオール化された免疫リンカーの有効な活性を増加させる。上記のように、チオール化されたアプタマー免疫リンカーは、実質的に全てのチオール化されたヌクレオチドを含むことができ、又はチオール化されたヌクレオチドを部分的に含むことができる。
【0041】
1つの具体的実施態様において、免疫リンカー分子は、リンカー分子又は直接的な共有結合により第2の結合部位に連結されるα-ガラクトシルエピトープを有する第1の結合部位を含む。第2の結合部位は、炭疽菌の致死因子に方向付けられたアプタマーを含み、以下の配列を有する:
【化1】

【0042】
アプタマーポリヌクレオチドは、リン酸骨格のチオール化によって任意に修飾され、より長い半減期を提供し、免疫リンカーが治療効果を有する期間を延長させる。
【0043】
本明細書に記載される免疫リンカーの第1及び第2の結合部位は、当業者に知られている任意の手段によって連結でき、又は抱合できる。用語「抱合」及び「抱合体」は、本明細書において、2以上の分子を連結する共有又は他の形態をいうものとして定義する。抱合体は、化学的手段、遺伝子工学的手段、又は生物学的手段によるインビボを含むがこれらに限定されない任意の手段によって達成できる。第1及び第2の結合部位は、二重鎖核酸、ポリペプチド、化学構造又は任意の他の適切な構造により連結できるか、又は単純な化学結合により連結できる。
【0044】
1つの具体的実施態様において、リンカーの第1及び第2の結合部位は、第2の結合部位が標的に結合した後に、第1の結合部位が単に免疫応答成分と相互作用する方法などにおいてインビトロで進化する。このような挙動をもたらすアロステリック相互作用は、タンパク質及び他の巨大分子において周知であり、かつリンカーのインビトロ進化における選択プロセスの成分であり得る。
【0045】
(免疫応答成分)
上記のように、免疫リンカーの1以上の第1の結合部位は、免疫応答成分に結合する。用語「免疫応答成分」は、本明細書において、個体の免疫応答に関与する任意の分子又は細胞をいうために使用される。用語「個体」は、動物及びヒトを包含する。免疫応答成分の非限定的な例は以下のものである:抗体;T細胞、B細胞及びナチュラルキラー細胞を含むがこれらに限定されないリンパ球;マクロファージ;好中球、好塩基球及び好酸球を含むがこれらに限定されない顆粒球;及び、T細胞受容体及びB細胞受容体を含むがこれらに限定されない前記の細胞のいずれかにおける受容体。用語抗体には、全てのクラス及びサブクラスの抗体、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE等、該抗体の分泌物及び分泌形態、抗体断片、例えば可変、超可変及び定常領域、重鎖及び軽鎖、断片の組み合わせ及び断片の混合物、並びに全抗体を含む。当該抗体は、ヒト化された、ポリクローナルの又はモノクローナルの、天然由来又は合成された抗体であり得る。
【0046】
一実施態様において、少なくとも1つの第1の結合部位は、免疫応答成分の活性結合部位に結合する。例えば、免疫応答成分がIgG分子などの抗体である場合、免疫リンカーの第1の結合部位は、IgG分子の可変領域の活性結合部位が通常結合する抗原エピトープである。
【0047】
(標的)
免疫リンカーの1以上の第2の結合部位は標的に結合し、好ましくは、第2の結合部位は、標的に特異的である。用語「標的」は、本明細書において、増加した免疫応答が個体において望まれる任意の組成物をいう。
【0048】
一実施態様において、抗原は、対象個体が曝露されていない化合物又は微生物である。しかしながら、抗原は、対象個体が曝露されたが、最適な免疫応答が開始されなかった化合物又は微生物であってもよい。
【0049】
標的には、微生物、病原体、ウイルス、ウイルス粒子、細菌、ポリペプチド、有毒な化学物質、非自己分子、及びこれらの任意の断片、部分又は組み合わせを含むが、これらに限定されない。本明細書において使用される標的には、個体における免疫応答によって通常は標的とされない分子又は組成物、例えば自己として同定可能な分子、小さすぎて免疫系に応答できない分子、非免疫原性化合物又は化学物質、及び免疫系の免疫原成分から捕捉される分子又は物質も含む。一実施態様において、標的は、個体が自己免疫性障害を軽減するように取り除きたい免疫系の抗体又は細胞成分である。
【0050】
別の実施態様において、標的は、細菌毒素である。このような細菌毒素には、破傷風毒素、ボツリヌス毒素、ジフテリア毒素、コレラ毒素、毒素B、毒素A、フラジリシン(バクテロイデス・フラジリス(bacteroides fragilis)由来)、炭疽菌由来の致死因子、浮腫因子又は防御抗原、大腸菌由来の熱不安定性毒素及び熱安定性毒素、又はC.ソルデリ由来の致死毒素若しくはヘモラジック(heamorragic)毒素を含むが、これらに限定されない。他の毒素産生細菌及びそれらの毒素は、以下の表1に提供される。
【表1】

【0051】
(免疫リンカー集団)
上記のように、本発明の免疫リンカーは、複数の第1の結合部位及び/又は複数の第2の結合部位を有し得る。本発明は、免疫リンカーの1以上の集団の使用も包含し、当該各集団は異なる第1の結合部位及び/又は第2の結合部位を有する。複数の結合部位は、異なる分子若しくはエピトープについてのそれらの特異性、又は同じ分子若しくはエピトープについてのそれらの親和性のいずれかにおいて、異なり得る。本発明の一実施態様において、免疫リンカーは、各々が異なる標的に特異的な2以上の第2の結合部位を含む。別の実施態様において、免疫リンカーは、各々が同じ標的上の異なるエピトープに特異的である2以上の第2の結合部位を含む。さらに別の実施態様において、免疫リンカーは、各々が標的上の同じエピトープに特異的であるが、該標的に異なる親和性を有する、2以上の第2の結合部位を含む。
【0052】
さらに他の又は更なる実施態様において、免疫リンカーは、各々が異なる免疫応答成分に結合できる2以上の第1の結合部位を含む。さらに別の実施態様において、免疫リンカーは、各々が同じ免疫応答成分の異なる下位構造に結合できる2以上の第1の結合部位を含む。別の実施態様において、免疫リンカーは、各々が免疫応答成分の同じ下位構造に結合できるが、該免疫応答成分に異なる親和性を有し得る、2以上の第1の結合部位を含む。
【0053】
本発明の免疫リンカーは、上述した複数の第1の結合部位及び第2の結合部位の任意の組合せを有し得る。本発明は、各々の集団が上述した複数の第1の結合部位及び第2の結合部位の任意の組合せを有する、免疫リンカーの異なる集団の投与も包含する。
【0054】
一実施態様において、免疫リンカーの集団は個体に投与され、該各リンカーは同一の第1の結合部位を有し、かつ第2の結合部位は同じ標的に結合するが該標的に異なる親和性を有する全てのアプタマーである。別の実施態様において、免疫リンカーの集団は個体に投与され、該各リンカーは同一の第1の結合部位を有し、かつ第2の結合部位は異なる標的に結合する全ての抗体又は抗体の部分である。さらに他の実施態様において、集団の免疫リンカーは、全て同一の第1の結合部位及び異なる型の第2の結合部位(すなわち、抗体結合部位、アプタマー結合部位、その他)を有し、該各第2の結合部位は同じ標的又は異なる標的に特異的である。
【0055】
本発明は、本明細書に記載される少なくとも1つの第1の結合部位を含む免疫リンカーの集団を意図する。当該集団は、全てが同じ結合特異性又は結合特異性の組合せを有する第1の結合部位を有する免疫リンカーを有してよい。更に、結合は、核酸分子又は全てのタンパク質である全てのものなどの同じ型の第1の結合部位により達成でき、同じ結合特異性を有してよく、又は異なる結合特異性を有してよい。結合は、1つの免疫リンカー上の異なる型の第1の結合部位、又は異なる第1の結合部位を有する異なる免疫リンカーの集団により達成できる。異なる型の第1の結合部位は、1以上の免疫応答成分について同じ又は異なる結合特異性を有し得る。
【0056】
加えて、本発明は、本明細書に記載される少なくとも1つの第2の結合部位を含む免疫リンカーの集団を意図する。当該組成物は、全てが同じ結合特異性又は結合特異性の組合せを有する第2の結合部位を有する免疫リンカーを含む。更に、結合は、全てが核酸分子又は全てタンパク質であるものなどの、同じ型の第2の結合部位により達成でき、同じ又は異なる結合特異性を有してよい。結合は、1つの免疫リンカー上の異なる型の第2の結合部位、又は異なる第2の結合部位を有する異なる免疫リンカーの集団により達成できる。異なる型の第2の結合部位は、1以上の標的について同じ又は異なる結合特異性を有し得る。
【0057】
従って、組成物は、少なくとも1つの第1の結合部位の結合特異性及び少なくとも1つの第2の結合部位の結合特異性が全て同型である免疫リンカー、すなわち、各々の第1の結合部位がその結合パートナーに同じ結合特異性を有し、かつ各々の第2の結合部位がその結合パートナーに同じ結合特異性を有する免疫リンカーを含む。あるいは、組成物は、各集団が異なる結合特異性を有する第1の結合部位を有し、かつ異なる結合特異性を有する第2の結合部位も有する、複数の免疫リンカー集団を含むことができる。
【0058】
(使用方法)
本発明は、第1の抗原から第2の標的まで個体における既存の免疫応答を変更する方法及び組成物を含む。第1の抗原又は第1の抗原の免疫学的同等物はリンカー分子に存在し、免疫応答の「変更(diverting)」は、該第1の抗原への免疫応答の停止を必要としない。本発明は、個体において標的への免疫応答を増強させる方法及び組成物を更に提供する。標的に対する以前の免疫応答は、当該個体において既に存在してよく、又は存在していなくてもよい。本発明は、病原体又は他の望ましくない物質に対して個体の即時的かつ特異的な免疫を提供する、個体に対する化学的にプログラム可能な免疫も提供する。
【0059】
本発明によれば、個体は、汎用免疫原によって最初に免疫される。その後、個体は、免疫応答成分に結合する少なくとも1つの第1の結合部位、及び標的に結合する第2の結合部位を有する免疫リンカーを含む組成物を該個体に単に投与することにより、選択された標的に対し即時的に免疫され得る。汎用免疫原と本明細書に記載される免疫リンカーとの任意の組合せは、該免疫リンカーの第1の結合部位が汎用免疫原による接種の結果として産生される免疫応答成分のいくつかに結合されるという唯一の必要性により使用することができる。汎用免疫原に対する免疫は、意図的な接種の結果として、又はα-Galエピトープ及びその付随する抗Gal免疫の場合の様に自然なプロセスによって、起こり得る。
【0060】
本発明は、部隊が病原体、毒素、又は毒性化学物質に予想外に曝され得る軍隊において特に有用であり得る。軍人は、免疫リンカーの第1の結合部位に対応する汎用免疫原で前免疫される。軍人が予想外に病原体、毒素又は化学薬品に曝露され又は曝露されると考えられている場合、病原体、毒素又は化学薬品を結合する第2の結合部位を有する免疫リンカーが軍人に投与され、これにより当該病原体から直ちに保護される。
【0061】
本発明は、炭疽菌、デング熱ウイルス及びマールブルグウイルスを含むがこれらに限定されない生物体からの疾患又は感染を予防及び/又は治療するために使用できる。例えば、戦闘地域において炭疽菌が検出されたら、炭疽菌特異的免疫リンカーは汎用免疫原で以前に免疫された部隊及び一般人に経口で投与され、炭疽菌に対する保護が与えられる。免疫は、該人員が免疫リンカーの適切なインビボ濃度を維持し続ける限り、持続する。一実施態様において、免疫リンカーは、免疫リンカーの適切なインビボ濃度を維持するために、継続的に個体に投与される。免疫リンカーは、1時間ごと、1日ごと、1週ごと、又は1月ごとの間隔を含むがこれらに限定されない任意の間隔で投与できる。長期間必ず投与されなければならない免疫リンカーの場合、第2の結合部位がそれ自身免疫原でないリンカーが探索される。いったん脅威が過ぎ去ったならば、免疫リンカーの投与を止める。従って、本発明の可能的副作用は一時的であり、これは免疫されたヒト又は動物における持続的副作用又は合併症をしばしば生じる従来の免疫とは異なる。
【0062】
より一般的な集団に関して、薬局は、多様な異なる病原体及び有害物質に利用できる異なる免疫リンカーのライブラリを有し得る。いったん個体が汎用免疫原で前免疫されたならば、これらの異なる免疫リンカーの1以上の投与は、様々な異なる病原体及び有害物質に対する防御免疫応答の生成を結果的に生じる。
【0063】
本発明により治療可能な感染の1つの例は、インフルエンザ又はインフルエンザウイルスによる感染である。本発明の免疫リンカーを使用することにより、その年のインフルエンザの新株に対応するために毎年ワクチンの新株を開発する必要がない。インフルエンザウイルスがその抗原性マーカーを変えるにつれて、免疫リンカーの1つの部分のみを変更することが必要とされる。少なくとも1つの第2の結合部位は、毎年又は必要に応じて、その発生に係る新しいインフルエンザウイルスに結合するように変更できる。好ましくは、少なくとも1つの第2の結合部位は、修飾ヌクレオチドから作られるDNA アプタマーである。当該DNA分子は、代謝酵素に対して非常に安定である。例えば、個体は、適当な第1及び第2の結合部位を有する免疫リンカーの組成物を吸入し、インフルエンザウイルスによる接着及び感染を予防することができる。この吸入療法は、必要のある限り続けられ、インフルエンザシーズンが過ぎたときに止められる。
【0064】
本発明は、免疫リンカーを含む組成物を投与することにより、ヒト又は動物の身体から他の不必要な物質を除去する方法を更に含む。免疫リンカーは、タンパク質、脂肪、核酸ポリマー、ホルモン、細胞因子、神経化学物質、毒性細胞因子、アポトーシス因子、細胞シグナル分子、抗体又は不必要な細胞、カルシウム又はマグネシウムなどのミネラル、並びにこれら及び他の分子の組合せ又は混合物を含む化合物を含むがこれらに限定されない、身体により合成されるか又は体内に見出される過剰な若しくは不必要な分子又は化学物質を除去するために使用できる。一部の場合において、免疫リンカー結合に影響されやすくするような方法で、マーキングなどの複雑な方法が不必要な細胞を除去するために利用され得ることが意図される。免疫リンカーを使用して、不必要な物質を結合する第2の結合部位を提供すること、及び免疫応答成分への第1の結合部位の結合を使用することにより、身体から任意の不必要な物質を除去することができ、このようにして身体の自然のクリアランスメカニズムは不必要な物質を除去することができる。第2の結合部位により結合できる任意の物質は本発明の方法により作用でき又は除去でき、それゆえ作用でき又は除去できる物質のリストは不必要な物質に対する結合パートナーを提供する能力によって限定されるのみである。不必要な物質に対する結合パートナーを提供することは、当業者に周知の範囲内であり、本明細書に記載される方法及び当業者に使用される他の方法の両方を含む。
【0065】
化学的にプログラム可能な免疫の方法及び組成物を用いて、免疫応答は、免疫応答が直接不必要な物質により誘発された場合などに、これらの不必要な物質を掃去するか又は含むように使用できる。例えば、免疫リンカーを含み、抗体に対する1の部位、及び不必要な物質に対する別の部位で結合した抗体複合体は、身体の免疫クリアランスメカニズムにより除去される。標的の包含は、細胞が、不必要な物質に結合した免疫リンカー周辺を壁で防御し、又はバリアを形成するようなものなどの機構を含むことができ、これは結核病原体を壁で仕切るために使用される細胞反応と同様である。いくつかの方法において、血液又は他の流体が身体の外側に濾過される血漿交換法などの人工的機構を使用して、免疫リンカーと形成された免疫複合体又は細胞複合体を捕捉できる。結合した免疫リンカーの特異的除去は、例えば、カラム又は免疫リンカー自体に対する抗体を使用する分離システムを使用することにより、使用することができる。
【0066】
したがって、本発明は、多重感染、疾患及び状態の治療のために使用することができる。用語「治療」、「治療すること」、「治療する」及びその同類は、本明細書において、一般に、所望の薬理学的及び/又は生理的効果を得ることをいうのに使用される。効果は、1つの抗原から別の抗原へ完全に又は部分的に移転する免疫質に関して予防的であってよく、及び/又は疾患及び/若しくは該疾患に寄与し得る副作用について部分的な若しくは完全な安定化又は治癒に関して治療的でもよい。本明細書に使用される「治療」は、対象(特にヒト)における疾患の任意の治療などの別の抗原又はその効果の制御について1つの抗原に方向付けられた免疫応答を使用することをカバーし、かつ、以下を含む: (a)疾患又は症状の素因を有し得るが、未だそれを有すると診断されていない対象で、疾患又は症状が起こることを予防すること; (b)病徴を阻害すること、すなわち、その発現を抑止すること;又は、(c)病徴を軽減すること、すなわち、疾患又は症状の後退を引き起こすこと。用語「治療」、「治療すること」、「治療する」及びその同類は、個体における、抗原などの不必要な物質の減少、制御又は包含も含む。物質の減少は、任意の方法により決定できる。
【0067】
表現「治療的有効量」とは、例えば、疾患又は状態の開始を予防し、寛解し、治療し、又は遅延させるために有効である本明細書に開示される組成物の量をいう。「予防的有効量」とは、例えば、疾患又は状態を予防するために有効である本明細書に開示される組成物の量をいう。
【0068】
(投与方法)
本発明により、汎用免疫原は、対応する免疫リンカーの投与の前に、個体に投与される。汎用免疫原は、対応する免疫リンカーの投与の前にいつでも投与でき、対応する免疫リンカーの投与の前に複数回投与できる。これらの複数回投与は、「ブースタ」投与ということもできる。本発明により意図される1つの方法は、異なる汎用免疫原の複数回投与を含む。異なる汎用免疫原の投与により、可能的免疫リンカーのレパートリが増加する。
【0069】
免疫リンカーの複数回投与も本発明に含まれる。方法は、1つの汎用免疫原を使用し、その後に同じ又は異なる免疫リンカーの1以上の投与が続く、個体の免疫を含む。方法は、いくつかの異なる汎用免疫原を使用し、その後に同じ又は異なる免疫リンカーの1以上の投与が続く、個体の免疫も含む。
【0070】
免疫リンカーは、必要とされる限り、適当な間隔で個体に投与され、免疫リンカーの適切なインビボ濃度を維持して、感染又は疾患を治療し、又は個体から不必要な物質の十分量を除去することが好ましい。免疫リンカーは、1時間1回、毎日、毎週若しくは毎月の間隔で、又はその任意の区分を含むがこれらに限定されない任意の間隔で投与できる。適当な投与間隔は、当業者により決定でき、標的又は病原体の同一性、個体において検出される標的又は病原体の量、曝露時間、免疫リンカー薬物動態学、年齢、体重、性別などの個体の特徴、及び任意の他の関連因子に基づく。免疫リンカーの投与時間は、経験的に決定されることが必要であり、特異的病原体、毒素など、曝露時間、リンカー薬物動態学などにより変更できる。
【0071】
チオール化されたリン酸骨格を含む修飾アプタマーを含む免疫リンカーの使用は、チオール化されたリン酸エステルの使用がアプタマーのヌクレアーゼ分解に対する抵抗性を増強させるという点で、有利である。従って、チオール化されたアプタマー免疫リンカーは、循環系におけるより長い半減期、及び治療利益のより長い持続期間を有する。これは、標的による感染/浸潤の期間に、免疫リンカーの多くの次なる投与の必要性を減少させる。
【0072】
本発明の汎用免疫原及び免疫リンカーは、任意の適切な経路を使用して個体に投与される。投与の適切な経路には、以下を含むがこれらに限定されない:経口、吸入、腸管外、皮下、筋肉内、静脈内、関節内(intrarticular)、気管支内、眼内(intraoccular)、腹腔内、包内、軟骨内、腔内(intracavitary)、腔内(intracelial)、小脳内、脳室内、大腸内、子宮頸内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、皮下、胸膜腔内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、髄腔内、関節滑液嚢内、胸内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣、直腸、頬、舌下、経粘膜、鼻腔、イオン泳動手段、及び経真皮手段。異なる型の免疫応答はしばしば抗原の異なる投与経路により誘発され、特異的免疫応答について好ましい経路は当業者に公知である。本発明は、汎用免疫原又は免疫リンカーの投与経路によっては限定されない。
【0073】
バクテリオファージリンカー分子及びバクテリオファージ汎用免疫原に関して、両方とも、精製されたファージとして、又はそれを含む細菌クローンとして投与できる。好ましい実施態様において、溶解バクテリオファージは、バクテリアの中で部分として、又は含まれたものとして、個体に投与される。バクテリオファージは、標的に対する最適な応答を可能にし得る公知の投与方法により送達できる。
【0074】
本明細書に記載される組成物は、免疫リンカー又は汎用免疫原を含む医薬組成物、並びに任意の適切な助剤、例えば希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、防腐剤、アジュバント等のうちの少なくとも1つを含むことも意図される。医薬として許容し得る助剤が好ましい。当該無菌液を調製する例及び方法は、当該技術分野において周知であり、周知のテキスト、例えば、これに限定されないが、「レミントンの薬学(REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES)」(Gennaro編、第18版、Mack Publishing Co. (1990))に見出すことができる。化合物の投与様式、溶解性及び/又は安定性について適切である医薬として許容し得る担体は、ルーチン的に選択できる。本発明に有用である医薬賦形剤及び添加剤には、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質及び炭水化物を含むが、これらに限定されない。本発明の化合物を含む医薬組成物は、緩衝剤又はpH調整剤を含むこともできる。加えて、本発明の医薬組成物は、ポリマー性賦形剤/添加剤を含むことができる。
【0075】
本明細書に使用される用語「助剤」は、汎用免疫原との混合物が、それより生成する免疫応答を増加させるか又は修飾する任意の物質である。当該技術分野において公知の任意の助剤系が、本発明の組成物において使用できる。当該助剤には、フロイント不完全アジュバント、フロイント完全アジュバント、ポリ分散β-(1,4)結合アセチル化マンナン(「アセマンナン(Acemannan)」)、Titermax(登録商標)(CytRx社製ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーアジュバント)、Chiron社製改質脂質アジュバント、Cambridge Biotech製サポニン誘導体アジュバント、死滅ボルダテラ・ペルツシス(Bordatella pertussis)、グラム陰性菌のリポポリサッカリド(LPS)、硫酸デキストランなどの大きな重合アニオン、及び、ミョウバン、酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウムなどの無機ゲルを含むがこれらに限定されない。
【0076】
経口投与のために、医薬組成物は、各々予め定められた量の免疫リンカーを含むカプセル、カシェ剤又は錠剤などの別々の単位などの錠剤又はカプセルの形態;散剤又は顆粒剤として;水性液体又は非水性液体中の液剤又は懸濁剤として;又は水溶液中油エマルジョン又は油中水エマルジョンとして、及びボーラス、その他として;であり得る。錠剤は、任意に1以上の副成分と共に、圧縮、又は成形で作ることができる。錠剤は、任意に被覆又はスコア化でき、かつ、その中の活性成分の遅延又は制御放出を提供するように製剤できる。一実施態様において、免疫リンカー又は汎用免疫原は、バクテリオファージ免疫リンカー又はバクテリオファージ汎用免疫原で感染させた大腸菌を経口投与することにより、提供される。
【0077】
加えて、本発明の組成物は、免疫リンカーの徐放を可能にする生分解性ポリマー、例えば免疫リンカーの遅延放出のために移植される生分解性ポリマーに組み込むことができる。生分解性ポリマー及びそれらの使用は、例えば、Bremらの文献 74 J. NEUROSURG. 441-46 (1991)に記載される。
【0078】
非経口投与に適する製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び該製剤を意図された受取人の血液と等張にする溶質を含むことができる、水性及び非水性の無菌の注入溶液;並びに、懸濁剤及び増粘剤を含むことができる水性及び非水溶無菌の懸濁剤;を含む。製剤は、単位投与量又は複数回投与容器(例えば、密封アンプル及びバイアル)で提供でき、かつ、使用の直前に滅菌液体担体(例えば、注射用蒸留水)の添加のみを必要とする冷凍乾燥(凍結乾燥)状態で保存できる。即時注入溶液及び懸濁液は、先に記載した種類の無菌の粉、顆粒及び錠剤から調製できる。
【0079】
口の局所投与に適する製剤には、以下のものを含む:風味基剤、通常ではスクロース及びアカシア又はトラガカンタ成分を含むトローチ剤(lozenge);ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアなどの不活性基剤に活性成分を含む香錠(pastille);及び、適切な液体担体に投与される免疫リンカー又は汎用免疫原を含む洗口剤。液体形態には、合成及び天然ゴム(例えば、トラガカンタ、アカシア、メチルセルロース、その他)などの、適切に風味をつけた懸濁剤又は分散剤を含むことができる。直腸投与用製剤は、例えば、カカオ脂又はサリチル酸塩を含む、適切な塩基を有する坐薬として提供できる。膣内投与に適する製剤は、活性成分に加え、当該技術分野において適切であることが公知の担体を含む、膣座薬、タンポート(tamports)、クリーム、ゲル、ペースト、泡、又はスプレー製剤として提供できる。
【0080】
本発明の組成物は、例えば、コアセルベーション技術によって又は界面重合によって調製されるマイクロカプセルに、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリラート)マイクロカプセルを、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)で、又はマクロエマルジョンで、捕捉することもできる。レミントンの薬学(A. Osol編、第16版、(1980))。
【0081】
本発明は、医薬として許容し得る製剤で本明細書に開示される免疫リンカー組成物を含む、安定製剤、並びに防腐剤並びに医薬的又は獣医学的使用に適する複数回使用保存製剤を含む保存溶液及び製剤を提供する。
【0082】
一般に、本明細書に開示される組成物は、任意の潜在的毒性を最小化すると共に最適有効性を得るためにルーチン試験により定義される適切な投与量で、単独で、又は治療剤と共に、使用することができる。本発明の組成物を利用する投与計画は、以下のものを含む様々な因子に従って選択できる:患者の型、種、年齢、体重、性別、医学的状態;治療される状態の重篤度;投与経路;患者の腎臓及び肝機能;及び、利用される具体的な組成物又は治療剤。通常の技量の医師又は獣医師は、状態の進行を予防し、対抗し、又は抑えるために、免疫リンカー及び/又は汎用免疫原の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0083】
所望の効果を成し遂げるために併用される場合、本明細書に開示される組成物の投与量は調整できる。開示された医薬組成物について治療的及び予防的目的のための有効量を決定する方法は、当該技術分野において公知である。より具体的には、医薬組成物は、単一用量若しくは単一日用量で投与でき、又は1日総投与量は、1日2回、3回若しくは4回の分割用量で投与できる。組成物の投与量は、1個体につき約0.0001〜約1,000mgまで広範囲に渡って変更でき、又は有効な応答が達成されるまで変更できる。範囲は、より具体的には、成人(約60kg)につき、体重の約0.001mg/kg〜10mg/kg、約0.1〜100mg、約1.0〜50mg又は約1.0〜20mgであり得る。組成物は、1日若しくは数日間、若しくは週1回、若しくは月1回、1日につき約1〜約10回の計画で投与でき、又は有効な応答が達成されるまで投与できる。本発明の医薬組成物は、数週間あるいは数ヶ月の過程にわたり、少なくとも週1回投与できる。細胞培養アッセイ及び動物試験から得られるデータは、ヒトにおける使用のための投与量の範囲を策定する際に使用できる。
【0084】
加えて、本発明及び他の治療剤の組成物の同時投与又は経時投与は望ましい場合がある。本明細書に記載される組成物は、任意の他の治療剤の投与の間、その前、又はその後に、投与できる。
【0085】
(製造方法)
免疫リンカーは、多くの方法で作成でき、そのいくつかは本明細書に記載され、かつ免疫リンカーを作成する方法を制限するものとみなされない。汎用免疫原又は第1の結合部位は、公知の化学抱合法又は分子などと、標的を結合する少なくとも1つの第2の結合部位を有する分子又は微生物に、物理的に連結又は抱合化できる。別の実施態様において、免疫リンカーは、第1及び第2の結合部位を含む単一分子として生産又は製造できる。免疫リンカーは、生物体も含み得る。さらに別の実施態様において、免疫リンカーは、RNA又はDNAの二重螺旋領域などの堅い又は可撓性のスペーサーで共に連結される2つの活性結合部位から構成される。スペーサーの機能は、リンカーの2つの端を共に保持することであるとともに、相互作用を妨げることである。
【0086】
本発明の第1及び第2の結合部位は、任意の方法により同定及び単離できる。標的に対する結合部分又は免疫応答成分を単離する方法は、Mario Geysenの方法などの方法を使用して決定できる。Geysenらの文献 PNAS 1984 81(13):3998-4002及びGeysenらの文献 J. Immunol. Methods, 1987, 102 (2) 259-74は、Geysenのピン装置を使用するペプチド合成及びスクリーニングの初期の方法を記載する。原法に対する改良及び該方法の適用は、以下の刊行物を含むがこれらに限定されない多くの刊行物に教示されている:例えば、Geysenらの文献 Chem. Biol. 1996, 3(8):679-88; Schultzらの文献 Biotechnol. Prog.の文献, 1996, 12(6):729-43; Carter, JM, Methods Mol. Biol. 1994, 36:207-23 (Geysen PEPSCAN procedure); Int. J. Pept. Protein Res. 1993, 42(l):1-9; Wagnerらの文献 Comb. Chem. High Throughput Screen 1998 1(3):143-153; Edmundsonらの文献 Proteins, 1993, 16(3):246-67; Alexanderらの文献 PNAS 1992 89(8):3352-6; Edmundsonらの文献 Ciba Found. Sump 1991, 158:213-25; Roddaらの文献 Australas Biotechnol. 1993, 3(6) 346-7; Tribbeckらの文献 J. Immunol. Methods 1991, 139(2):155-66; Smith, G. P.の文献, Curr. Opin. Biotechnol. 1991, 668-73。
【0087】
これらのコンビナトリアル合成法は、標的を結合する際の第2の結合部位として機能する結合ペプチドを迅速に決定するために使用できる。ランダムに生成されたペプチドは、標的に結合することを迅速に試験することもでき、標的に結合するための第2の結合部位を提供することもできる。これらのペプチド、タンパク質断片又はペプチドを第1の結合部位に抱合化させ、免疫リンカーを形成することができる。
【0088】
本発明のいくつかの実施態様において、汎用免疫原は、第1のポリペプチドを発現する第1のバクテリオファージを含み、該免疫リンカーは、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを発現する第2のバクテリオファージを含む。いくつかの実施態様において、第1のバクテリオファージは、バクテリオファージの野生型形態であり、第2のバクテリオファージは、同バクテリオファージの変異体形態又は組換え型形態である。ファージディスプレイ技術を使用して、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドのいずれか又は両方を発現するバクテリオファージについて選択することができる。より具体的には、ファージディスプレイは、ペプチド又はタンパク質がバクテリオファージのコートタンパク質との融合体として発現され、該ファージビリオンの外面上の融合タンパク質の提示を結果的に生じる選択技法である。ファージディスプレイは、標的に結合するバクテリオファージの外側に提示されるペプチドの選択を可能にする。このペプチド又はその一部は、第2の結合部位として機能する。
【0089】
第1及び/又は第2の結合部位の一実施態様を形成する核酸アプタマーを作成する方法は、従来技術において公知であり、先に言及した少なくともいくつかの特許において教示されている。一般に、本方法は、任意の所望の標的に対する核酸リガンドを作成することを含む。本方法は、同じ一般的選択テーマを使用する、核酸候補の混合物からの選択、及び構造改良の段階的反復を含み、結合親和性及び選択性の任意の所望の基準を実質的に達成する。例えば、SELEX法は、少なくとも1014の配列異型を含む混合物の単一の配列異型の単離を可能にする。SELEX法又は改良法又は他の方法を使用して生産されたアプタマーはそれから、免疫リンカーに対する第2の結合部位として使用される。任意の標的に対するアプタマーは、数時間あるいは数日で生成でき、リンカー部及び免疫リンカーの第1の結合部位に連結でき、集団の保護のために提供できる。
【0090】
チオ置換アプタマーを作成する方法は、例えば米国特許公報2005/0214772において当該技術分野に公知である。これらには、dATP(αS)、dTTP(αS)、dCTP(αS)及びdGTP(αS)並びにdATP(S2)、dTTP(S2)、dCTP(S2)及びdGTP(S2)などのチオ修飾ヌクレオチドを使用することを含む。チオール化アプタマーは、化学オリゴヌクレオチド合成の間のチオ酸化を使用することにより作成できる。
【0091】
本明細書で言及した全ての刊行物及び特許は、例えば本明細書に記載した発明との関連で使用できる刊行物に記載される構築物及び方法論を記載及び開示する目的のために引用により本明細書に組み込まれる。先に記載した刊行物及び本文全体にわたって記載された刊行物は、本願の出願日前におけるそれらの開示のためだけに提供される。本明細書には、発明者が先行発明の特徴により当該開示に先立つ権利がないという承認として解釈されるものはない。
【0092】
無論、前述のものは、本発明の好ましい実施態様にのみ関連しており、多数の修飾又は変更が本開示において説明したように本発明の精神及び範囲を逸脱しない範囲でなし得ることは理解されるべきである。
【実施例】
【0093】
(実施例1):新生仔マウスへのインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)B型免疫リンカーの投与
インフルエンザ菌B型(Hib)は、特に幼児及び易感染者において重篤な浸潤性疾患を引き起こすカプセル化された細菌病原体である。Hibに対する防御免疫応答は、莢膜多糖(PS)のエピトープに向けられる。感染前に腹膜内に10〜100のHib生物体を接種されたマウスに対する抗莢膜多糖抗体の受動投与が菌血症/敗血症から保護することは公知である。Hibに対する保護の主要なエフェクタ様式は、抗PS抗体の補足依存的殺菌活性によるものである。
【0094】
本発明の目的のために、Hib莢膜多糖(PS)特異的ヒトFab断片がクローン化された。このFab断片は「天然型」抗体の同じ重鎖及び軽鎖可変領域を使用するが、それはIgG重鎖のCH2及びCH3領域を欠いている。したがって、このFab断片のみでは、補体を結合して殺菌/保護活性を顕在化させることができない。Fab断片(Fab41)は、免疫リンカーの第2の結合部位として機能する。このFab断片は、免疫リンカーの第1の結合部位として機能するフェニルアルソン酸ハプテンに連結した。結果として生じる免疫リンカーは、Fab41-ARSでラベルした。
【0095】
新生仔マウスは、成マウスにフェニルアルソン酸化されたキーホールリンペットタンパク質を注入し、フェニルアルソン酸カラムで生成した抗体を親和性精製することにより作成された抗フェニルアルソン酸抗体の皮下注を受けた。18時間後、Hib生物体が新生仔マウスに腹膜内投与された。2時間後、Fab41-ARS、すなわちリンカーが新生仔マウスに腹膜内注入された。18〜24時間後に、新生仔マウスからの血液をチョコレート寒天培地上に塗布し、Hibのコロニーを計数した。結果を下記の表2に示す。
【0096】
【表2】

【0097】
(実施例2):α-ガラクトシルエピトープ免疫リンカー
α-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼを欠き、従ってその産物、すなわちα-1,3-ガラクトシル-ガラクトース結合又はα-ガラクトシルエピトープに対するB細胞及びT細胞免疫応答を有する組換え型ノックアウトマウスは、α-ガラクトシルエピトープを含む免疫リンカーを投与される。α-ガラクトシルエピトープは、Galili, U.及びAvila, J. L.の文献, 「α-Gal及び抗Gal(Αlpha-Gal and Anti-Gal)」, Subcellular Biochemistry, Vol. 32, 1999に記載されている。免疫リンカーは、Gal(α1,3)Gal(β1,4)-GlcNAc-Rを含み、式中、Rはインフルエンザ菌B型(Hib)の莢膜多糖に特異的なヒトFab断片を表す。10分後、マウスは、Hibの有意な生存投与量を腹膜内投与される。24時間後、チョコレート寒天培地上にそれらの血液を塗布することにより、実験マウスの血液におけるcfuの数を、病原体を受けたが、先に免疫リンカーを用いる治療を受けていないマウスにおける同測定値と比較する。α-ガラクトシルエピトープに連結されたFab断片を用いる治療は、リンカーを受けなかったマウスと比較して、菌血症を阻害する。リンカーのいくつかの量で、阻害は、用量依存的である。
【0098】
(実施例3):炭疽菌に特異性を有するファージディスプレイ免疫リンカーの発現
1. 多数のランダムペプチドをコードするランダムオリゴヌクレオチドを有する標準的なファージディスプレイ技術、例えばNew England BioLabsにより販売されるものを使用して、炭疽菌(B. anthracis)胞子又は他の毒素、炭疽菌の毒素成分(PAなどの)又は抗原に特異的であるペプチドを提示する組換えバクテリオファージを単離する。
2. 組換え型バクテリオファージが、1) バクテリオファージの非組換え型形態及び組換え型バクテリオファージに対する抗体の結合、及び2) 炭疽菌胞子に対する組換え型バクテリオファージの結合により免疫リンカーとして作用することをインビトロで証明する。
3. 対象を非組換え型バクテリオファージで免疫する。この免疫は、注入で、又は吸入で生じる。
4. 炭疽菌胞子結合ペプチドを発現する組換え型バクテリオファージを含む組成物に対象を曝す。吸入投与経路を使用することは、対象の肺における炭疽菌感染を予防するのに効果的な組成物の十分量を提供する。
5. 吸入手段を介しての炭疽菌への対象の曝露により、対象は、吸入型炭疽菌による感染から保護される。
当該手順は、皮膚又は胃腸での炭疽菌曝露を止めるか又は阻害するためにも使用できる。
【0099】
(実施例4):ヌクレアーゼ分解に抵抗性の修飾アプタマーの作成
アプタマーは、炭疽菌からの致死因子毒素に特異的な結合活性を有したSELEX法を使用して発現された。このアプタマーは、配列
【化2】

を有しており、かつ、ヌクレアーゼ分解に対する抵抗性を評価するために修飾された。
【0100】
アプタマーポリヌクレオチドは、(S. Agrawal編,「オリゴヌクレオチド及びアナログのためのプロトコル(Protocols for Oligonucleotides and Analogs)」、第8節, 165頁, Humana Press 1993におけるGerald Zonの文献「オリゴヌクレオチドホスホロチオエート(Oligonucleotide Phosphorothioates)」に記載される方法を使用する)化学オリゴヌクレオチド合成の間のチオ酸化を使用することによりチオール化され、
【化3】

を生じた。
【0101】
修飾及び非修飾アプタマーを70%のウシ胎児血清で1、2、4、6又は24時間処理し、アプタマーの分解を評価した。ホスホロチオエート修飾アプタマーは24時間の時点で70%FBSでの分解に耐えたが、非修飾アプタマーは4時間で分解した。
【0102】
同様に、修飾及び非修飾アプタマーをヌクレアーゼで処理し、アプタマーの分解を評価した。非修飾アプタマーは、30分間ヌクレアーゼで処理された。逆に、ホスホロチオエート修飾アプタマーは24時間の時点でヌクレアーゼにおける分解に耐えたが、非修飾アプタマーは1時間以内に分解された。
【0103】
これらの結果は、治療剤としてホスホロチオエートアプタマーを使用することが、標的に対する即時免疫を引き起こし、維持するための有効治療濃度を維持するために必要な投与数を減少させることを示唆するヌクレアーゼ分解に対するホスホロチオエートアプタマーの抵抗性を強調する。
【0104】
(実施例5):チオール化されたアプタマー-α-galエピトープ免疫リンカーの生成
チオエート化されたアプタマーに対するα-galエピトープの抱合体は、オリゴヌクレオチド抱合体の作成についての文献において知られている多くの方法のいずれかにより遂行できる(「オリゴヌクレオチド抱合体のプロトコル(Protocols for Oligonucleotide Conjugates,)」S. Agrawal編, Humana Press, 1994, T. Zatsepinらの文献 「核酸抱合体合成のためのカルボニル基付加-削除反応の使用(Use of Carbonyl Group Addition- Elimination Reactions for Synthesis of Nucleic Acid Conjugates)」, Bioconjugate Chemistry, Volume 16(3), 471-489頁, 2005)。α-galエピトープは、Vector labs (Covington, LA)などの販売元から市販されており、カルボキシ及びアミノを含むがこれらに限定されないいくつかの抱合用官能基に利用できる。チオール化されたアプタマーは、選択されたα-galエピトープの抱合に適当な様々な5'官能基により調製できる。例えば、適当な対には、カルボキシ/アミン;チオール/マレイミド;カルボニル/アミン;アジド/アルキンなどを含む。(「修飾オリゴヌクレオチド及び抱合体の合成(Synthesis of Modified Oligonucleotides and Conjugates)」、第4章、「核酸化学における最新プロトコル(Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry)」、2009年12月、John Wiley及びSonsの文献を参照されたい)。
【化4】

結果として生じる抱合体は、オリゴヌクレオチド合成の分野において公知の標準的な方法を使用して精製される。
【0105】
(実施例6):炭疽菌に曝露されたマウスにおける抗炭疽菌致死因子免疫リンカーの投与
この研究において使用されたマウスの種はα-Galエピトープに対する免疫応答をなすことができないので、このエピトープに対し免疫されたヒト血清が全てのヒト抗体に対する免疫をなすようにされたマウスに注射されるという間接的な方法が考案された。
【0106】
従って、免疫リンカー(α-Galとして命名される)は、血清中で安定であり、かつ炭疽菌致死因子に高親和性を有することにより、選択されたジチオ誘導体化DNAアプタマーであるその「病原体標的化末端(pathogen targeting end)」の特性により炭疽菌致死因子を捕捉し、α-Galエピトープである他の末端は、マウスにおいて抗ヒト抗体に順次結合し、致死因子に対する免疫攻撃を指示するα-Galに対するヒト抗体に結合する。十分な致死因子が該動物に既に放出されているので、抗生物質(ドキシサイクリン)を用いた感染マウスの治療は、炭疽菌を殺すが、動物の死亡を阻止する。これは、HSブースト+ BAS+ドキシ(doxy)(12時間及び24時間ごと)曲線により実証される。
【0107】
生存実験:1% ヒト血清で免疫され、かつα-gal TPAA-12アプタマーA/Jマウスで処理したA/Jマウスは、5週間、週1回、1×PBS又は1% ヒト血清のいずれかで腹膜内に免疫された(200μl)。その後、マウスは、1.0×106炭疽菌スターン(Sterne)株胞子(50μl)の鼻点滴注入の2時間後及びその後10日間24時間ごとに(合計11回の投与)、PBS単独、PBS+1%ヒト血清、75μg/50μL濃度(μg/マウス)の1% ヒト血清を有するα-galチオ修飾TPAA-12アプタマーで処理した。加えて、1つの処理群は、曝露の12時間後1.5μg/gマウス用量のドキシサイクリンを腹膜内に受け、曝露の2時間後鼻腔内に75μg/50ul用量の1% ヒト血清を有するα-galチオ修飾PAA 12アプタマーを受けた。これらはその後、両方とも24時間毎に10日間(アプタマー)及び14日間(ドキシサイクリン)受けた。また、1つの処理群は、上記と同用量のドキシサイクリンを曝露の24時間後、及び鼻点滴注入の2時間後1% ヒト血清用量を有するα-galチオ修飾PAA-12アプタマーを受けた。これらはその後、両方とも24時間毎に10日間(アプタマー)及び14日間(ドキシサイクリン)受けた。全てのマウスは、曝露の直前及び9日間毎日、秤量し、体温を測定した。ヒト血清は、実験の朝にアプタマーに添加した。マウスは、炭疽菌感染を治療するための通常の標準的な治療に近づけるために、コントロールとして炭疽菌で処理し、炭疽菌/ドキシサイクリンで処理した。ドキシサイクリンは、炭疽菌を殺すために使用されるが循環性致死因子は残り、これが、ドキシサイクリン治療で見られる低い生存率を結果的に生じる。
【0108】
炭疽菌に曝露されたマウスのそれぞれの群は、ドキシサイクリンの存在下及び不在下で、抗致死因子/α-gal免疫リンカーで処理される。表3は、この調査における試験群のリストを提供する。
【表3】

【0109】
図3は、標的として炭疽菌致死因子に結合し、かつ第1の結合部位としてα-galエピトープを提供する免疫リンカーで処理したマウスについての生存曲線を提供する。コントロール炭疽菌処理マウスは、最低の生存を有する(第2群)。生存は、12時間以内にドキシサイクリンの投与で約30%増加するが(第5群)、24時間に投与した場合には増加しない(第7群)。生存は、炭疽菌処理マウスへの免疫リンカー単独の投与により長くなるが、生存は依然として劣る(第4群)。これは、免疫リンカーがマウスの致死因子をまだ能動的に産生する炭疽菌を標的としないので、未だ最適には至らない。生存は、感染炭疽菌を殺すドキシサイクリン、及び循環致死因子タンパク質に対する免疫リンカーの複合投与でほぼ100%に増加する(第6群)。第1群について曲線で示されるとおり、1匹のマウスが当該研究の間にコントロール群において死んだ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫系分子に結合する少なくとも1つの第1の結合部位、及び標的に結合する少なくとも1つの第2の結合部位を含み、該第2の結合部位がチオール化されたアプタマーである、免疫リンカー分子。
【請求項2】
前記第1の部位が抗体に結合する、請求項1記載の免疫リンカー分子。
【請求項3】
前記抗体が、前記第1の部位に対して予め免疫されたヒト又は動物由来のものである、請求項2記載の抗体。
【請求項4】
前記標的が微生物体である、請求項1記載の免疫リンカー分子。
【請求項5】
前記微生物体が、細菌、ウイルス又は真菌である、請求項4記載の免疫リンカー分子。
【請求項6】
前記化合物又は分子が細菌毒素である、請求項1記載の免疫リンカー分子。
【請求項7】
前記細菌毒素が、破傷風毒素、ボツリヌス毒素、ジフテリア毒素、コレラ毒素、毒素B、毒素A、フラジリシン、炭疽菌致死因子、炭疽菌浮腫因子、炭疽菌防御抗原、大腸菌熱不安定性毒素及び大腸菌熱安定性毒素、又はC.ソルデリ致死毒素若しくはC.ソルデリヘモラジック毒素から選択される、請求項6記載の免疫リンカー分子。
【請求項8】
ヒト又は動物を分子又は化合物に対して免疫する方法であって、ヒト又は動物に免疫リンカー分子を投与することを含み、該免疫リンカー分子が、免疫系分子に結合する少なくとも1つの第1の部位、及び標的に結合する第2の部位を含み、該第2の結合部位がチオール化されたアプタマーである、前記方法。
【請求項9】
前記ヒト又は動物が、前記免疫リンカー分子上の第1の部位に対して予め免疫されている、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記免疫に望ましい化合物又は分子が、微生物体である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記微生物体が、細菌、ウイルス又は真菌である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記化合物又は分子が、薬剤である、請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記免疫リンカー分子がアプタマーである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
個体において標的に対する免疫応答を増加させる方法であって、該個体に1以上の免疫リンカーを含む組成物の有効量を投与することを含み、該リンカー分子が少なくとも1つの第1の結合部位及び少なくとも1つの第2の結合部位を含み、該個体が該第1の結合部位に対する既存の免疫応答を有し、かつ該第2の結合部位が該標的に結合するチオール化されたアプタマーである、前記方法。
【請求項15】
前記個体がヒトであり、かつ前記第1の結合部位がα-ガラクトシルエピトープを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記個体が、前記免疫リンカーの投与前に前記標的に対する有効な免疫応答を開始できない、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が異なる免疫リンカーの集団を含み、前記第1の結合部位が、a)前記免疫応答成分上の異なるエピトープについてのそれらの特異性、又はb)前記免疫応答成分上の同じエピトープについてのそれらの親和性において異なる、請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記免疫応答成分が抗体である、請求項14記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、a)前記標的上の異なるエピトープについてのそれらの特異性、又はb)前記標的上の同じエピトープについてのそれらの親和性において異なる第2の結合部位を含む、異なる免疫リンカーの集団を含む、請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−526130(P2012−526130A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509945(P2012−509945)
【出願日】平成22年5月5日(2010.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/033716
【国際公開番号】WO2010/129666
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511267790)アルテルムネ テクフノロジエス,エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】