説明

化粧シート

【課題】可視光領域の光照射により、大気中のアルデヒド等の揮発性有機化合物を分解する等の可視光型光触媒活性を有する壁紙を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも可視光型光触媒を含む光触媒層(L)、調湿材料を含む中間層(C)、及び低透湿性樹脂からなる低透湿樹脂層(T)が積層された壁紙において、最外層を形成する光触媒層(L)に中間層(C)が隣接して積層され、低透湿樹脂層(T)が中間層(C)よりも壁側に積層配置され、
かつ光触媒層(L)と中間層(C)のバインダーが無機材料であることを特徴とする壁紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中のアルデヒド等の揮発性有機化合物(VOC(volatile organic compounds))を分解する機能を有する、可視光型光触媒機能を有する化粧シートを提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
住宅内装材においては、住宅部材から発生するシックハウスの問題、ペット臭、及び生活臭などの問題から揮発性有機化合物の分解に関するニーズが高まっている。
光触媒機能を有する内装材について商品化が検討されているが、従来は、光触媒は紫外光領域で光触媒活性を有し、住宅内装材に使用した場合、可視光領域の光しか利用できないため、光触媒活性能力に問題があった。近年、光触媒についても技術革新が進み可視光領域で光触媒活性を有するものが上市されている。住宅内装部材での有機揮発性物質の分解を検討する場合、内装部材として最も面積を有する壁面に機能を持たせることが有効と考えられる。また、光触媒の性能の発現には、上記光と共に酸素が必要であり、更に後述するように調湿材料を含む層を積層させて水も共存させることが望ましい。
【0003】
従来、化粧シート等の内装仕上げ材として代表的なものとして、ポリ塩化ビニル樹脂層が形成された塩ビクロスが使用されている。さらに近年のアルミサッシの普及による住宅の高断熱、高気密化により、居住空間に湿気や悪臭、揮発性有機化合物などの有害ガスがこもりやすいという問題があった。近年では、このような問題を解決するために、調湿性能を有した建材の開発が行われており、珪藻土を用いた壁紙(特許文献1)や、壁紙表面に光触媒を固定化した壁紙(特許文献2、3)が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示された壁紙では、調湿性能はあるものの、悪臭の分解性を有しておらず、また、特許文献2、3に開示された壁紙では、悪臭分解性を有してはいるが、調湿材料層が設けられていないので更なる悪臭分解性の向上が求められる。そこで、調湿機能をもつ珪藻土あるいは石膏ボードなどの上に化粧シート層(裏打ち紙/発泡層/フィルム層/光触媒層)を配置し、フィルム層に小孔をあけた壁紙(特許文献4)、基材の上にゼオライト層、光触媒層を積層した壁装材(特許文献5)、発泡裏打ち紙の上に調湿材含有発泡樹脂、光触媒と調湿材の混合層を配置した発泡壁紙(特許文献6)、また特許文献7には調湿材料を含有してなる樹脂層上に、光触媒活性を有する樹脂層が形成された内装用化粧材などが提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献4では、フィルム層に穴があいているため穴部分への汚染物の付着がおき耐汚染性に問題点がある。また、特許文献5・6のように裏打ち紙の上に調湿層がある場合、調湿性能とともに水分吸収による光触媒能の向上期待できる。しかしながら、化粧シートを壁面などに張り付けた場合、建材面側にも裏打ち紙を通過して湿気が吸収されてしまうため、該化粧シートを貼着する構造物である壁、天井等の構造物にカビを発生するという問題点が生じる。特許文献7では調湿材料を含有してなる層のバインダーに有機バインダーが使用されているために、該有機バインダーの一部が隣接して積層されている光触媒層中の光触媒により分解される結果、触媒層との密着性が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−336094号公報
【特許文献2】特開2002−155498号公報
【特許文献3】特開2010−84448号公報
【特許文献4】特開2009−52376号公報
【特許文献5】特許4427403号
【特許文献6】特開平10−86259号公報
【特許文献7】特開平11−254632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を解決して可視光領域の光照射により大気中のアルデヒド等の揮発性有機化合物を分解する光触媒活性を有し、密着性、化粧シートを貼着する壁、天井等の構造物の防カビ性に優れる化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、可視光型光触媒を含む光触媒層、調湿材料を含む中間層、及び低透湿性樹脂からなる低透湿層が少なくとも積層された化粧シートにおいて、最外層を形成する光触媒層に、調湿材料と無機バインダーを含む中間層がそれぞれ特定の厚みになるように隣接して積層し、かつ低透湿層を中間層よりも内層側(中間層の触媒層と相対する側)に積層配置することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の(1)から(9)に記載する発明を要旨とする。
(1)少なくとも可視光型光触媒を含む光触媒層(L)、調湿材料を含む中間層(C)、及び低透湿性樹脂からなる低透湿樹脂層(T)が積層された化粧シートにおいて、
最外層を形成する厚み0.5〜3μmの光触媒層(L)に厚み0.2〜5μmの中間層(C)が隣接して積層され、
中間層(C)が調湿材料20〜80質量%、無機バインダー20〜80質量%、及び有機バインダー0〜30質量%(ここで、質量%の合計は100質量%)からなる、
ことを特徴とする化粧シート。
(2)前記中間層(C)が調湿材料20〜80質量%、無機バインダー20〜80質量%、及び有機バインダー5〜20質量%(ここで、質量%の合計は100質量%)からなる、ことを特徴とする前記(1)に記載の化粧シート。
(3)前記低透湿樹脂層(T)の透湿度(温度25℃、湿度90%における測定値)が50g/m・24hr以下である、ことを特徴する前記(1)又は(2)に記載の化粧シート。
(4)発泡樹脂層(F)が前記低透湿樹脂層(T)の内層側(低透湿樹脂層(T)の光触媒層(L)側と相対する側)に設けられている、ことを特徴する前記(1)から(3)のいずれかに記載の化粧シート。
(5)前記化粧シートが少なくとも光触媒層(L)、中間層(C)、低透湿樹脂層(T)である非発泡樹脂層(A1)、発泡樹脂層(F)、及び非発泡樹脂層(A3)の順に積層されている、ことを特徴する前記(1)から(4)のいずれかに記載の化粧シート。
(6)前記化粧シートが少なくとも光触媒層(L)、中間層(C)、低透湿樹脂層(T)である樹脂フィルム層(A2)、及び発泡樹脂層(F)の順に積層されている、ことを特徴する前記(1)から(4)のいずれかに記載の化粧シート。
(7)前記中間層(C)と非発泡樹脂層(A1)、又は樹脂フィルム層(A2)と発泡樹脂層(F)との間に絵柄層(P)が設けられていることを特徴する、前記(5)又は(6)に記載の化粧シート。
(8)前記化粧シートが貼着される構造物(W)と、非発泡樹脂層(A3)又は発泡樹脂層(F)間に裏打ち層(B)が設けられている、ことを特徴する前記(5)から(7)のいずれかに記載の化粧シート。
(9)前記光触媒層(L)と中間層(C)がそれぞれ印刷手段を用いて形成された層である、ことを特徴する前記(1)から(8)のいずれかに記載の化粧シート。
【発明の効果】
【0009】
(イ)上記(1)に記載された本発明の化粧シートは、光触媒層(L)に隣接する中間層(C)に調湿材料が含有されていることにより、光触媒層(L)中の可視光型光触媒の正孔が水あるいは表面水酸基と反応して水酸ラジカル(・OH)を生成して室内中のアルデヒド等の揮発性有機化合物等を分解する等の光触媒の光活性機能を向上することができる。
また、化粧シートの中間層(C)のバインダー中の有機バインダーの含有量が0〜30質量%に制限されているので、中間層(C)のバインダーが隣接する光触媒層(L)中の光触媒により分解されるのが抑制されて、光触媒層(L)と中間層(C)の密着性を向上することができる。
更に、化粧シートには調湿材料を含有する中間層(C)が積層されているが、該中間層(C)よりも内層側(中間層(C)の触媒層(L)と相対する側)に低透湿樹脂層(T)が設けられているので化粧シートが貼着される壁、天井等の構造物(W)の防カビ性に優れている。
(ロ)上記(2)に記載された化粧シートは、前記中間層(C)中の有機バインダーの含有量が5〜20質量%であるので、中間層(C)のバインダーは隣接する光触媒層(L)中の光触媒により分解されるのが抑制されて、光触媒層(L)と中間層(C)の密着性に優れると共に、中間層(C)に隣接する光触媒層(L)と相対する層側との密着性にも優れる。
(ハ)上記(3)に記載された本発明の化粧シートには、透湿度が一定値以下の低透湿樹脂層(T)が設けられているので該化粧シートを貼付する壁、天井等の構造物(W)の防カビ性により優れている。
(ニ)上記(4)に記載された化粧シートは、発泡樹脂層(F)が設けられることにより全体の厚みを500〜600μmとすることが可能になるので、その最外層である光触媒層(L)表面のエンボス加工性に優れている。
(ホ)上記(5)及び(6)に記載された化粧シートは、上記光触媒活性、密着性、防カビ性、エンボス加工性に優れ、更に非発泡樹脂層(A1)又は樹脂フィルム層(A2)の存在により、光触媒層(L)表面にエンボス加工する際に光触媒層(L)にひび、割れ等が発生するのを防止して耐汚染性にも優れる。
(ヘ)上記(7)に記載された化粧シートにおいて、中間層(C)と非発泡樹脂層(A1)、又は樹脂フィルム層(A2)と発泡樹脂層(F)との間に設けられる絵柄層(P)は形成が容易であり、かつ、意匠性に優れる。
(ト)上記(8)に記載された化粧シートにおいて、裏打ち層(B)を設けることにより、接着層機能を有する非発泡樹脂層(A3)、発泡樹脂層(F)を形成する未発泡樹脂層、低透湿樹脂層(T)である非発泡樹脂層(A1)等を形成する際に共押出を採用することが可能になるので生産性を向上することができる。
(チ)上記(9)に記載された化粧シートにおいて、光触媒層(L)と中間層(C)の形成にそれぞれ印刷手段を用いることにより、層の厚みの制御が容易になるのでこれらの層を安定的に形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1〜13で作製した層構成の化粧シートの模式図である。
【図2】実施例14〜16で作製した層構成の化粧シートの模式図である。
【図3】比較例1、4〜7で作製した層構成の化粧シートの模式図である。
【図4】比較例2で作製した層構成の化粧シートの模式図である。
【図5】比較例3で作製した層構成の化粧シートの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の化粧シート(以下、単に化粧シートということがある。)は、少なくとも可視光型光触媒を含む光触媒層(L)、調湿材料を含む中間層(C)、及び低透湿性樹脂からなる低透湿樹脂層(T)が積層された化粧シートにおいて、
最外層を形成する厚み0.5〜3μmの光触媒層(L)に厚み0.2〜5μmの中間層(C)が隣接して積層され、中間層(C)が調湿材料20〜80質量%、無機バインダー20〜80質量%、及び有機バインダー0〜30質量%(ここで、質量%の合計は100質量%)からなる、ことを特徴とする。
以下に〔1〕本発明の化粧シートを構成する光触媒層(L)、中間層(C)、及び低透湿樹脂層(T)、並びに、任意に設けることができる発泡樹脂層(F)、非発泡樹脂層(A3)、及び裏打ち層(B)、〔2〕これらの層構成、並びに〔3〕化粧シートの製造方法について説明する。
【0012】
〔1〕化粧シートを構成する各層について
(1)光触媒層(L)
光触媒層(L)は、最外層を形成する厚み0.5〜3μmで、可視光型光触媒粒子がバインダーにより保持されている層であり、中間層(C)が隣接して積層されている。
(イ)可視光型光触媒
光触媒層(L)に使用する可視光型光触媒としては、可視光線によりアルデヒド類等の有機揮発性物質を分解する光触媒作用を奏する化合物であれば特に制限なく使用可能であり、例えば可視光応答性を有する酸化チタン粒子の製造法として特開2001−278625号公報、特開2001−302241号公報、特開2003−275600号公報等に開示されているものを使用することができる。
また、可視光型光触媒としては、特開2007−268523号公報に開示されているように、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、La、Ceのような金属元素の1種又は2種以上の酸化物、窒化物、硫化物、酸窒化物、酸硫化物、窒弗化物、酸弗化物、酸窒弗化物なども使用することができる。これらの中でもアナターゼ型又はルチル型の酸化チタンが好ましく、可視光線ないし蛍光灯の照射で触媒活性を示すものとしてアナターゼ型酸化チタンが好ましい。
【0013】
上記可視光型光触媒には、必要に応じて、各種添加剤を分散体として含有させることができる。このような添加剤としては、例えば、非晶質シリカ、シリカゾルのような珪素酸化物、非晶質アルミナ、アルミナゾルのようなアルミニウムの酸化物や水酸化物、ゼオライト、カオリナイトのようなアルミノ珪酸塩、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムのようなアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、リン酸カルシウム、モレキュラーシーブ、活性炭、ならびにTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、La、Ceのような金属元素の水酸化物およびこれらの金属元素の非晶質酸化物などが挙げられる。これら添加物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。これらの添加剤は、下層に絵柄層(P)を設けることを考慮すると透明性を有する共に、化粧シート表面に、光を散乱してぎらつき(シンチレーション)と呼ばれるきらきら光る輝きを防止できるものが好ましく、これらの点を考慮するとシリカ粒子を光触媒層(L)中に5〜50質量%添加することが好ましい。
本発明における可視光型光触媒は、蛍光灯による光照射に対して光触媒活性を示すものであることが好ましい。詳しくは、波長約430nm〜約830nmの光照射に対して光触媒活性を示す光触媒が好ましい。
【0014】
(ロ)バインダー
本発明の光触媒層(L)に使用されるバインダーとして、無機バインダーの使用が好ましい。
光触媒層(L)のバインダーに樹脂組成物を使用すると、可視光型光触媒は樹脂組成物中に分散するか、樹脂によりコートされた状態で存在するので、可視光型光触媒が十分に露出されず、可視光型光触媒機能が十分に発現しないおそれがあり、また樹脂組成物は光触媒により一部が分解されて劣化するおそれがある。従って、本発明においては、可視光型光触媒のバインダーとして無機物バインダーを使用し、光触媒層(L)を多孔質層として、可視光型光触媒を層の表面に多く露出させることが望ましい。
【0015】
本発明の光触媒層(L)は、例えば、前記した可視光型光触媒と無機バインダーを溶媒に分散させた分散液を、グラビアコート、スプレーコート、ディップコート、又はハケ塗りなどの方法により中間層(C)上に塗布し、その後、分散液中の溶媒を除去しうる温度で加熱する方法が挙げられるが本発明は該方法に限定されるものではない。無機バインダーとしては、例えば、アルコキシシラン類の縮合物、オルガノポリシロキサン、有機ポリシロキサン化合物の重縮合物、加水分解物、シリコンワニス等のシリカ化合物;リン酸亜鉛、重リン酸塩、リン酸アルミニウムなどのリン酸塩;シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、セメント、石灰、セッコウ、ほうろう用フリット、グラスライニング用うわぐすり、プラスターなどの無機系バインダーを挙げることができる。
また、光触媒層(L)中の無機バインダーの割合としては20〜80質量%が好ましい。
バインダーの割合が前範囲の下限未満では光触媒層(L)の中間層(C)に対する密着力が低下する傾向にあり、上限を超えると光触媒が無機バインダー中に埋没してしまい、十分な光活性を発揮できなくなる。
【0016】
光触媒層(L)形成の具体例としては、特開2007−185556号公報に記載されているように、酸化チタン(TiO)、酸化ニオブ、及び無機バインダーを溶媒に混合した水又は有機溶媒中で混合して可視光型光触媒分散液を得ることができる。該可視光型光触媒分散液は、光触媒層転写フィルムを作製して転写法によって転写することも可能である。塗布する手段は、例えば、前述した通りのグラビアコート、スプレーコート、ディップコート等、各種の塗布方法を選択しうる。コート液の塗布は、一回のみならず、複数回行ってもよい。塗布量は0.1〜5g/m量が好ましく、0.5〜3g/mが更に好ましい。なお、本明細書において「塗付量」とは、特に断りの無い限り、乾燥後の単位面積当たりの質量を指す。
その後、溶媒を除去しうる程度の温度で加熱乾燥して溶媒を除去する。乾燥が完了した後、30〜60℃程度の温度で所要時間エージングを行うこともできる。これにより、コーティングした光触媒層(L)の剥離強度を向上させることができる。
【0017】
(2)中間層(C)
中間層(C)は、光触媒層(L)に隣接して積層され、厚み0.2〜5μmで、調湿材料20〜80質量%、無機バインダー20〜80質量%、及び有機バインダー0〜30質量%(ここで、質量%の合計は100質量%)から形成される。中間層(C)中の有機バインダーの配合量が30質量%を超えると、有機物である有機バインダーは、一般に無機化合物と比べて結合エネルギーが低いので光触媒で分解される割合が増加して、揮発性有機化合物の分解性が低下すると共に、中間層(C)と光触媒層(L)間の密着性が低下するおそれがある。
光触媒層(L)を後述する低透湿樹脂層(T)、又は絵柄層(P)の表面上に直接設けられる場合には、光触媒層(L)に隣接することに起因する光触媒作用によりこれらの樹脂層の劣化が発生したり、密着性が低下するおそれがある。また、これらの層に存在する樹脂等の有機物の分解に光触媒層(L)の光触媒機能が消費されて光触媒機能が低下するおそれがある。
特に、意匠性や密着性向上のため、エンボス加工などを施した場合には、可視光型光触媒化合物が光触媒層(L)の下方に位置する絵柄層(P)、低透湿樹脂層(T)、発泡樹脂層(F)等に埋没しやすく、これらの問題が生じやすい。
本発明においては、光触媒層(L)と、これらの低透湿樹脂層(T)、非発泡性樹脂層(A1)、樹脂フィルム層(A2)、又は絵柄層(P)との間に中間層(C)を設けることによって、これらの問題が生じるのを回避することが可能である。また、屋外で太陽光に含まれる紫外線量は0.1〜0.5mW/cmであるのに対し、室内の蛍光灯に含まれる紫外線量は1〜5μW/cmと太陽光の100分に1であるので有機バインダーの分解性も低い。
【0018】
(イ)調湿材料
中間層(C)に添加される調湿材料として、珪藻土、珪質頁岩、シリカゲル、アロフェン、酸性白土、セピオライトなどが挙げられるが、珪藻土などの調湿材料は、多孔質構造を有する材料の表面あるいは細孔内面で吸放湿作用を果たす。したがって、吸放湿機能を有効に発揮させるには、出来るだけ表面積が大きな形態にしておくことが望まれる。そこで、珪藻土などの調湿材料の原料を粉砕して細かな粉体にしたものを調湿材料として使用している。
珪藻土は、水に溶解したり、水で膨潤したりせず、更に空気中で長時間曝露されても、変質したり黴を生じたりせず、吸湿と放湿の周期を良好に繰り返すことができる。使用する珪藻土の平均粒径は、0.1〜100μmが好ましい。また、珪藻土の平均細孔径は、2〜8nmが好ましく、比表面積は100m/g以上が好ましい。珪藻土は具体的には、稚内、秋田、岡山、石川、大分等で採掘された各地産のものがあるが、なかでも稚内産の珪藻頁岩を用いるのが好ましい。稚内産の珪藻頁岩は細孔半径2〜8nmの細孔容量が全細孔容量の70%以上を占め、その細孔容量も大きい。
光触媒層(L)中に存在する、光触媒の酸化チタン等は光半導体であり、光が当たると粒子表面に電子とプラスの正孔が発生し、生成した電子は表面酸素を還元してスーパーオキサイドイオン(O)を生成し、一方、正孔は水分子を酸化して水酸ラジカル(・OH)を生成する。これらの極めて反応性に富む活性種(O2−、及び・OH)の酸化還元反応によって酸化チタンの表面に付着した揮発性有機化合物成分等を分解すると考えられている。従って、水分が中間層(C)から光触媒層(L)中の光触媒近傍に移動してくると、水分から更に水酸ラジカル(・OH)が発生して触媒作用が向上すると考えられる。
【0019】
(ロ)バインダー
中間層(C)に使用するバインダーは、該層中に無機バインダー20〜80質量%、及び有機バインダー0〜30質量%含有される。
最外層を形成する光触媒層(L)の光触媒機能の持続性の観点からは、中間層(C)に使用するバインダーは無機系材料のみが好ましいが、光触媒層(L)との密着性、及び中間層(C)の内層側に隣接する層との密着性を考慮して、該層中に有機バインダーが上記0〜30質量%含有されている。
中間層(C)中の有機バインダー含有量が30質量%を超えると、中間層(C)と光触媒層(L)との界面における有機バインダーと光触媒との接触点が増加して、有機バインダーの分解に光触媒層(L)の光触媒機能が消費される量も増加する。かかる観点から、中間層(C)中の有機バインダー含有量が20質量%以下であることが好ましい。
【0020】
無機バインダーの具体例としては、アルコキシシラン類の縮合物、オルガノポリシロキサン、有機ポリシロキサン化合物の重縮合物、加水分解物、シリコンワニス等のシリカ化合物;リン酸亜鉛、重リン酸塩、リン酸アルミニウムなどのリン酸塩;シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、セメント、石灰、セッコウ、ほうろう用フリット、グラスライニング用うわぐすり、プラスターなどの無機系バインダーを挙げることができる。
有機バインダーの具体例としては、デンプン、デキストリン、アルギン酸塩等の天然物、セルロースエステル、セルロースエーテル等の天然物誘導体及びポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアミン、アクリル硝化綿等の合成樹脂が挙げられ、コロイダルディスパージョン系のバインダー成分として、セラック、スチレン化セラック、カゼイン、スチレン−マレイン酸樹脂、ロジン−マレイン酸樹脂等が挙げられ、エマルジョン系のバインダー成分として、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、合成ゴムラテックス、ポリウレタン、ポリエステル、アルキッド樹脂、エポキシエステル、ロジンエステル等が挙げられる。
また、バインダーとして、公知で、市販の有機・無機ハイブリッド材料が使用できる。このようなハイブリッド材料として、例えば、石原産業(株)製のアンダーコート剤「STK−102」を挙げることができる。なお、有機・無機ハイブリッド材料を用いた場合、材料同士の相性から、無機成分が触媒層(L)側へ、有機成分が発泡樹脂層(F)や低透湿樹脂層(T)、絵柄層(P)側へ偏在するので、光触媒機能の低下を当該無機成分によって抑制することができる。
【0021】
(ハ)中間層(C)の形成
中間層(C)の塗付量としては、特に限定されないが、0.2〜5g/mが好ましい。
塗布後乾燥して形成される中間層(C)の厚みは0.2〜5μmである。該厚みが0.2μm未満では調湿材料が少なく中間層(C)の機能が充分に発揮せず、一方、5μmを超えると硬くなり、割れ易くなる等の不都合を生ずる。
【0022】
中間層(C)は発泡樹脂層(F)を形成する未発泡層を発泡する前に、未発泡層、低透湿樹脂層(T)、絵柄層(P)に、中間層コーティング液を塗布した後、乾燥させることにより形成することができる。未発泡層の発泡後に低透湿樹脂層(T)上に中間層コーティング液を塗布してもよいが、発泡樹脂層(F)の凹凸の影響により中間層(C)を綺麗に塗付することが難しくなるため、発泡前の低透湿樹脂層(T)上に中間層コーティング液を塗布する方が好ましい。
中間層コーティング液は、上述した無機系材料若しくは有機・無機ハイブリッド系材料と、溶媒とを含む。前記溶媒は、特に限定されず、例えば、水;エタノール、メタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類と水との混合溶媒のような水性媒体;などが挙げられる。これらの中でも特に、水が好ましい。本発明の中間層コーティング液を用いて中間層(C)を形成するに際しては、例えば、スピンコート、ディップコート、ドクターブレード、スプレーまたはハケ塗りなど従来公知の方法により中間層コーティング液を塗布し、その後、中間層コーティング液中の溶媒を除去しうる温度で加熱すればよい。
【0023】
(3)低透湿樹脂層(T)
本発明の化粧シートにおいて、少なくとも低透湿樹脂層(T)は、中間層(C)の内層側(中間層(C)の光触媒層(L)と相対する側)に積層され、発泡樹脂層(F)が形成される場合には該発泡樹脂層(F)よりも外層側に形成される、前記非発泡性樹脂層(A1)、又は樹脂フィルム層(A2)とすることが好ましい。このような層構成とすることにより、中間層(C)に吸収された水分の内層側への移動を抑制し、裏打ち紙(B)、壁、天井などの構造物(W)にカビが発生するのを抑制できる。
また、低透湿樹脂層(T)は、発泡樹脂層(F)を形成する際の発泡工程で発泡ガス等の揮発分成分による光触媒層(L)中の可視光型光触媒機能の低下を防止する機能を有する。
低透湿樹脂層(T)の透湿度(温度25℃、湿度90%における測定値、以下同じ)は50g/m・24hr以下であることが望ましく、又、低透湿樹脂層(T)の厚みは、透湿性、柔軟性を考慮すると5〜30μmが好ましい。
低透湿樹脂層(T)の透湿度は0g/m・24hrに近いのが特に好ましいが、この場合には低透湿樹脂層(T)の厚みを厚くする必要があるので、実用的には透湿度5〜45g/m・24hrがより好ましい。なお、低透湿樹脂層(T)の透湿度は、JIS Z 0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」の条件Bに準拠して測定されたものをいう。
【0024】
低透湿樹脂層(T)としての非発泡性樹脂層(A1)、又は樹脂フィルム層(A2)の形成には、種々の形成方法を採用することができる。
非発泡性樹脂層(A1)は、樹脂組成物を押出成形により形成することができ、樹脂フィルム層(A2)は、片面に接着剤が塗布された樹脂フィルムを貼着面に貼着して形成することができる。
その他の低透湿樹脂層(T)の形成法としては、バリア性樹脂等が配合された塗料を塗布後、乾燥させることにより、あるいはホットメルト型樹脂を加熱溶融して塗付し、冷やして固化させる方法も採用できる。
このような低透湿樹脂層(T)を形成する非発泡性樹脂層(A1)用の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のエステル系熱可塑性樹脂などの合成樹脂製フィルムが使用できる。
また、樹脂フィルム層(A2)用の樹脂製フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート等のエステル系熱可塑性樹脂;ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂;ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等の非ハロゲン系熱可塑性樹脂などが挙げられる。またこれらの樹脂フィルムは、一軸又は二軸方向に延伸したシートであっても、未延伸であってもよい。
【0025】
(4)その他の層
本発明の化粧シートには、以下に記載する発泡樹脂層(F)、絵柄層(P)、非発泡樹脂層(A3)、裏打ち層(B)等の層を任意に積層することができる。
(4−1)発泡樹脂層(F)
発泡樹脂層(F)は、発泡剤含有未発泡樹脂層が発泡することにより形成された層である。発泡剤含有樹脂層は、化学発泡剤又は物理発泡剤の作用により発泡するもの(例えば加熱された際に発泡するもの)であれば特に制限されるものではないが、エチレン系樹脂であることが好ましい。
発泡樹脂層(F)を形成する樹脂としては例えば、エチレン単独重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体樹脂(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂(EEA)、炭素原子数3〜5のエチレン−アルキルアクリレート共重合体樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂(EMMA)、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)、塩化ビニル樹脂等のエチレン系共重合体樹脂、ポリエチレン、プロピレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のポリオレフィン系樹脂やこれらの樹脂の混合物等が挙げられる。
これらの樹脂は、後述する電離放射線を照射することにより、容易に樹脂架橋させることでき、その照射により優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等、表面強度などが向上させることができる。これらの樹脂の中で、優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等、表面強度が優れる点で、EVA樹脂、EMAA樹脂が好ましく、特にEMAA樹脂が好ましい。
例えば、エチレン系樹脂(EVA樹脂、EMAA樹脂等)、無機充填剤、顔料、熱分解型発泡剤及びセル調整剤を含む樹脂組成物を好適に用いることができる。その他にも、安定剤、滑剤等を添加剤として用いることができる。発泡樹脂層(F)の厚みは特に限定されるものではないが、50〜600μm程度が好ましく、100〜500μm程度がより好ましい。
【0026】
樹脂成分としてEVA樹脂を用いる場合、EVA樹脂中の酢酸ビニル単位(共重合比率)は特に限定されるものではないが、5〜30質量%程度であることが好ましく、10〜20質量%程度がより好ましい。樹脂成分のメルトフローレート値(MFR)は特に限定されないが、5〜75g/10分程度が好ましく、40〜70g/10分程度がより好ましい。なお、本明細書においてMFRは、JIS K 7210(熱可塑性プラスチックの流れ試験方法)記載の試験方法により測定した値である。試験条件は、JIS K 6760記載の「190℃、21.18N(2.16kgf)」を採用したものである。発泡樹脂層の発泡状態(例えば、発泡セルの大きさ、発泡セル密度等)は特に限定されず、化粧シートの種類、用途等に応じて適宜設計することができる。
また、樹脂成分として、EMAA樹脂を用いる場合は、EMAA樹脂中のメタクリル酸単位(共重合比率)は、4〜20質量%程度であることが好ましい。樹脂成分のメルトフローレート値は、用いる重合体の種類等によるが、通常は60〜200g/10分とすることが好ましい。特に、100〜200g/10分という高い範囲でも、良好な発泡状態を維持できるという点で有利である。
【0027】
発泡樹脂層(F)に使用する発泡剤は、上記した発泡剤の中でも化学発泡剤が好ましく、化学発泡剤の中でも熱分解型発泡剤が好ましい。熱分解型発泡剤としては公知の発泡剤から選択することができる。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のビドラジド系などが挙げられる。熱分解型発泡剤の配合量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率は、1.5倍以上、好ましくは3〜7倍程度であることから、熱分解型発泡剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、1〜20質量部程度とすることが好ましい。また、物理発泡剤としては、熱膨張型マイクロカプセルが挙げられ、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン等の揮発性液体膨張剤を塩化ビニリデン−アクリロニトリル−ジビニルベンゼンコポリマー、メタアクリレート−アクリロニトリル−ジビニルベンゼンコポリマー等の熱可塑性高分子重合体殻中に内包したマイクロカプセルであって、平均直径が1〜100μmの範囲にあるようなものが利用可能である。
【0028】
発泡樹脂層(F)中には、以下に記載するセル調整剤、無機充填剤、顔料等の添加剤を配合することができる。
セル調整剤は、例えばステアリン酸亜鉛等の金属石鹸等を使用することができる。セル調整剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、0.3〜10質量部程度が好ましく、1〜5質量部程度がより好ましい。
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物、シリカ、アルミナ、カオリン、等が挙げられる。該無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果等が得られる。該無機充填剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して0〜100質量部程度が好ましく、20〜70質量部程度がより好ましい。
顔料については、例えば酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等の無機顔料;例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等の有機顔料が挙げられる。該顔料の含有量は、樹脂成分100質量部に対して10〜50質量部程度が好ましく、15〜30質量部程度がより好ましい。発泡剤含有オレフィン系樹脂層の発泡方法としては、後記の製造方法に記載された方法等に従って実施することができる。
【0029】
(4−2)絵柄層(P)
本発明の化粧シートは、必要に応じて中間層(C)と非発泡樹脂層(A1)、又は樹脂フィルム層(A2)と発泡樹脂層(F)との間に絵柄層(P)を形成することができる。
絵柄層(P)は、化粧シートの意匠性を向上する。絵柄層(P)の絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。該絵柄模様は、本発明の化粧シートの種類に応じて選択できる。絵柄層(P)は、例えば、非発泡樹脂層(A1)の表側面、未発泡樹脂層表面等に絵柄模様を印刷することで形成できる。なお、絵柄層(P)を形成する際には、必要に応じてあらかじめプライマー層を形成しても良い。印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、バインダー樹脂、溶剤(又は分散媒)を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用しても良い。
【0030】
前記着色剤としては、例えば、前記の発泡剤含有樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。バインダー樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンアクリル樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0031】
前記溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。絵柄層(P)の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0032】
(4−3)非発泡樹脂層(A3)
本発明の化粧シートには、低透湿樹脂層(T)としての機能を有する非発泡樹脂層(A1)以外に、該非発泡樹脂層(A1)と同種又は異種の樹脂から形成され、低透湿樹脂層(T)及び/又は接着層としての機能をも有する非発泡樹脂層(A3)を発泡樹脂層(F)の内層側等に設けることができる。
非発泡樹脂層(A3)は、主として発泡樹脂層(F)を保護する。非発泡樹脂層(A3)に使用する樹脂は、非発泡樹脂層(A1)に使用する樹脂種と同一でも良く、異なるものであってもよいが、非発泡樹脂層(A3)と発泡樹脂層(F)との間の密着性を向上するために、発泡樹脂層(F)に使用されている樹脂と同種類の樹脂もしくは樹脂組成物、また、原料モノマーと物性が近似しているものを使用することが望ましい。
【0033】
前記非発泡樹脂層(A3)成分としては、例えばアクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種のモノマーとエチレンとの組合せにより得られる共重合体を樹脂成分として好適に用いることができる。より具体的には、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体及びアイオノマー樹脂の少なくとも1種を用いることが望ましい。アイオノマー樹脂としては、エチレン−メタクリル酸共重合体及び/又はエチレン−アクリル酸共重合体の分子間をナトリウム、亜鉛等の金属のイオンで分子間結合した構造を有する樹脂が使用できる。このような樹脂成分を用いる場合には、特に樹脂中の水素結合等に起因する強固な層を形成することができるので、優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。これらは、公知又は市販のものを使用することができる。
【0034】
前記共重合体におけるアクリル酸又はメタクリル酸の含有量は4〜15質量%程度であることが好ましい。このような樹脂も市販品を使用することができる。前記樹脂組成物には、公知の添加剤を配合することもできる。非発泡樹脂層の厚みは特に限定されないが、10〜50μm程度が好ましく、10〜20μm程度がより好ましい。また、樹脂組成物中の前記樹脂成分の含有量は限定的ではないが、通常70〜100質量%の範囲内で適宜設定することが好ましい。
前記樹脂成分のメルトフローレート値(MFR)は、用いる樹脂成分の種類等によるが、一般に10g/10分以上の範囲内で適宜設定すれば良い。通常は10〜100g/10分、特に10〜95g/10分、さらに20〜80g/10分の範囲にあることが好ましい。このような数値範囲のものを使用することにより、より優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。尚、メルトフローレート値(MFR)の測定条件は、発泡樹脂層(F)の項に記載したのと同様である。
【0035】
(4−4)裏打ち層(B)
本発明の化粧シートの裏面には、裏打ち紙層(G)を積層させることがきる。特に、本発明の裏側面に裏打ち紙層(B)を設ける場合に、発泡樹脂層(F)と裏打ち紙層(B)との間に設けられる非発泡樹脂層(A3)が接着剤層として形成される場合は、優れた密着性を得ることができる。
裏打ち層(B)を形成する裏打ち紙としては公知の針葉樹の晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹の晒しクラフトパルプ(LBKP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)を、単独または任意の配合率で混合して抄紙したもの、また、これらの木材繊維に、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂繊維、ナイロン等のポリアミド系樹脂繊維、ポリ塩化ビニル等の含ハロゲン系樹脂繊維等の合成繊維を配合しても良い。
裏打ちシート層の坪量は特に限定されないが、50〜300g/m程度が好ましく、50〜80g/m程度がより好ましい。
【0036】
(4−5)構造物(W)
本発明の化粧シートを添着する構造物(W)としては、壁、天井等が上げられる。
【0037】
〔2〕化粧シートの層構成について
本発明の化粧シートの層構成については、最外層を形成する光触媒層(L)、該光触媒層(L)に隣接して形成される中間層(C)、及び該中間層(C)よりは内層側(中間層(C)の触媒層(L)と相対する側)に低透湿樹脂層(T)が設けられていれば特に制限されるものではない。
以下に、図1、図2に示す、好ましい化粧シートの層構成の具体例を記載する。
(イ)図1に示す層構成の化粧シート
図1に示す化粧シートは、光触媒層(L)/中間層(C)/絵柄層(P)/非発泡樹脂層(A1)/発泡樹脂層(F)/非発泡樹脂層(A3)/裏打ち紙層(B)からなる層構成の化粧シートである。
低透湿樹脂層(T)として、非発泡樹脂層(A1)を使用する場合に好ましい層構成となる。このような層構成の化粧シートは、分解性、密着性、耐汚染性、及びエンボス加工性に優れている。
【0038】
(ロ)図2に示す層構成の化粧シート
図2に示す化粧シートは、光触媒層(L)/中間層(C)/樹脂フィルム層(A2)/絵柄層(P)/発泡樹脂層(F)/裏打ち紙層(B)からなる層構成の化粧シートである。
低透湿樹脂層(T)として、樹脂フィルム層(A2)を使用する場合に好ましい層構成となる。このような層構成の化粧シートは、分解性、密着性、耐汚染性、及びエンボス加工性に優れている。
【0039】
〔3〕化粧シートの製造方法
本発明の化粧シートの製造方法を低透湿樹脂層(T)として、非発泡樹脂層(A1)、樹脂フィルム層(A2)をそれぞれ使用する場合に分けて例示する。
(イ)低透湿樹脂層(T)として非発泡樹脂層(A1)を使用する場合
基材となる裏打ち紙層(B)上に、非発泡樹脂層(A3)、発泡樹脂層(F)形成用の未発泡樹脂層、非発泡樹脂層(A1)を共押出により積層し、該積層体の表面層側(裏打ち紙層(B)と相対する側)の表面に絵柄層形成液を印刷後、乾燥して絵柄層(P)を形成する。その後、絵柄層(P)上に中間層形成溶液を塗布後乾燥して中間層(C)を形成し、次いで、触媒層形成溶液を塗布後乾燥して光触媒層(L)を形成する。
その後、加熱発熱炉内で、加熱して未発泡樹脂層中の発泡剤を発泡させ、必要によりエンボス加工して化粧シートを得る。
尚、前記加熱発泡処理の前に、電子線照射を行ってもよい。電子線照射より樹脂成分を架橋できるため、樹脂からなる層の表面強度、発泡程度等を制御することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましい。照射量は、1〜7Mrad程度が好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。なお、架橋は、化学架橋剤(架橋剤又は架橋助剤ともいう。)を用いて実施することもできる。
【0040】
(ロ)低透湿樹脂層(T)として樹脂フィルム層(A2)を使用する場合
裏打ち紙層(B)上に発泡樹脂層(F)形成用の未発泡樹脂組成物コーティングし、次いで、前記未発泡樹脂層の上に、絵柄層(P)形成用のインキ印刷を施し、その後インキ中の溶媒を蒸発させて絵柄層(P)を形成して、絵柄層(P)/未発泡樹脂層/裏打ち紙層(B)の順に積層された積層体を作製する。その後、該積層体を加熱発熱炉内で加熱して未発泡樹脂層中の発泡剤を発泡させて、未発泡樹脂層から発泡樹脂層(F)を形成する。
一方、樹脂フィルムの接着剤が塗布されていない表面上に、中間層形成溶液を塗工後、乾燥して中間層(C)を形成し、さらに該中間層(C)上に光触媒層形成溶液を塗工後、乾燥して光触媒層(L)を形成して、光触媒層(L)/中間層(C)/樹脂フィルム層(A2)の順に積層された積層体を得る。
次いで、エンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間に、後者積層体の光触媒層(L)表面がエンボス賦型面となり、絵柄層(P)と、前者積層体における樹脂フィルム層の接着剤塗布面とが相対するように通して、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面に凹凸模様を有する化粧シートを得ることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は以下に記載する方法になんら限定されるものではない。先ず、本実施例と、比較例で使用した原材料、及び評価方法について記載する。
(1)原材料
(イ)光触媒層の形成に使用した可視光型光触媒コーティング液
酸化チタン光触媒コーティング剤:住友化学(株)製、商品名:TC−S4115(無機系バインダー入り)、不揮発成分:5質量%) 100質量部
無機粒子:メラミンとシリカからなる粒子(日産化学工業(株)製、商品名:オプトビーズ3500M、平均粒子径:3.5μm) 0.25質量部
(ロ)中間層の形成に使用した調湿材含有中間層コーティング液
調湿材:平均粒径20μmの珪藻土(鈴木産業社製「稚内層珪頁岩」)を粒子径1μmに粉砕したもの
無機バインダー:エチルシリケート(コルコート(株)製、エチルシリケート40(SiO分:40質量%))
有機バインダー:水性ポリウレタン樹脂(TAP162、荒川化学工業(株)製)
【0042】
(ハ)非発泡オレフィン系樹脂
エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂(住友化学(株)製、商品名:エバテートCV5053)
(ニ)樹脂フィルム
予め接着剤が片面に塗布されたエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂からなる壁紙用フィルム((株)クラレ製、商品名:エバール(登録商標)フィルムHF−ME(エチレン含有量:44mol%)、厚み:12μm)
【0043】
(ホ)未発泡樹脂層を形成する樹脂組成物
未発泡樹脂層を形成する樹脂組成物として、下記成分と配合割合からなる樹脂組成物1、樹脂組成物2を使用した。
(i)樹脂組成物1
エチレン−酢酸ビニル系共重合体(住友化学(株)製、商品名:エバテートCV5053)100質量部
発泡剤(永和化成製、商品名:ADCA#3):4質量部
炭酸カルシウム(白石工業製、商品名:ホワイトンH):30質量部
二酸化チタン(顔料)(デュポン製、商品名:タイピュアR−108):20質量部
光安定材((株)ADEKA製、商品名:OF−101):1質量部
架橋剤(JSR(株)製、商品名:オブスターJVA−702):1質量部
【0044】
(ii)樹脂組成物2
塩化ビニル樹脂(東ソー(株)製、商品名:R−720):100質量部
炭酸カルシウム(白石工業製、商品名:ホワイトンH):100質量部
発泡剤(大塚化学(株)製、商品名:ユニフォームAZウルトラ):3質量部
防カビ剤(タイショウテクノス製、商品名:ビオサイト7663DS):0.2質量部
光安定剤((株)ADEKA製、商品名:O−1305):5質量部
希釈剤(シェル石油製、商品名:シェルゾールS):20質量部
可塑剤(フタル酸ジイソノニル):38質量部
(ヘ)インキ1
カーボンブラックと弁柄を着色剤とする水性インキ(大日精化工業(株)製、商品名:ハイドリック)
(ト)裏打ち紙
米秤量60g/mの壁紙用裏打紙(興人(株)製、商品名:WK−FKKD)
【0045】
(2)評価方法
(イ)アセトアルデヒド分解性試験
壁紙試験片(10cm×10cm)を、RH90%に24h保管した後に内容量5リットル(L)のテドラーバック内に挿入し、5Lの合成空気〔(窒素:酸素)容積比:4/1、相対湿度(RH)0、20、50、70%〕の条件でテドラーバック内に送り込み、ブラックライト2mW/cmで16時間初期化処理をした。その後、テドラーバック内のアセトアルデヒド濃度が20ppmとなるように1体積%のアセトアルデヒド0.94mlをテドラーバック内に送り込み、ブラックライト1mW/cmを照射し1.5時間後のアセトアルデヒド濃度を測定した。尚、テドラーバック内のアセトアルデヒド濃度は検知管により測定した。
測定結果を表1に示す。評価基準は下記の通りである。
◎:1.5h後のホルムアルデヒド濃度が5ppm未満
○:1.5h後のホルムアルデヒド濃度が5ppm以上、10ppm未満
△:1.5h後のホルムアルデヒド濃度が10ppm以上、15ppm未満
×:1.5h後のホルムアルデヒド濃度が15ppm以上
【0046】
(ロ)密着性試験
化粧紙試験片2×5cmを耐候性試験機(紫外線カーボンアーク灯式耐光性試験機)に50時間設置した。
設置前後のサンプル表面にセロハンテープ(ニチバン(株)製、商品名:CT24)を用い、指の腹でフィルムに密着させた後剥離した。評価基準は下記の5段階で判定し、「c」以上を合格とした。
a:剥離が全く認められなかった。
b:試験片の剥離した面積は5%未満であった。
c:試験片の剥離した面積は5%以上、30%未満であった。
d:試験片の剥離した面積は30%以上、50%未満であった。
e:試験片の面積の剥離した面積は50%以上であった。
【0047】
(ハ)汚染試験
汚染物質4種類(醤油、コーヒー、クレヨン、水性サインペン)をサンプル上に乗せたガーゼに各々滴下、または直に線を描き、24時間後に水及び中性洗剤を用いて拭取った。
評価基準は下記の通りとした。
×:目視評価にて、拭取り不可のものが2種以上ある場合
○:目視評価にて、拭取り不可のものが1種以下ある場合
【0048】
[実施例1〜13]
実施例1〜13において、図1に示す、光触媒層/中間層/絵柄層/非発泡樹脂層(A1)/発泡樹脂層/非発泡樹脂層(A3)/裏打ち紙層からなる層構成の化粧シートを作製し、評価を行った。
(1)化粧シートの作成
(イ)積層体A1の作製
公知のTダイ押出機を用いて、裏打ち紙層上に、前記非発泡オレフィン系樹脂(A1)、組成物1、非発泡オレフィン系樹脂(A2)の順に、各層の厚みが10μm/100μm/15μmになるように共押出により製膜して、非発泡樹脂層(A1)/未発泡樹脂層/非発泡樹脂層(A3)/裏打ち紙層の4層からなる積層体A1を得た。
(ロ)積層体B1の作製
その後、該積層体A1の表面強度の向上を図る目的で、積層体Aに対して、200kV、5Mradにて電子線照射を行った。
次いで、グラビア印刷により、積層体Aの非発泡樹脂層(15μm)の表面にインキ1を用いて、塗布量3g/mにてグラビア印刷し、140℃で5秒間加熱してインキ1中の溶媒を蒸発させて絵柄層を形成し、絵柄層/非発泡樹脂層(A1)/未発泡樹脂層/非発泡樹脂層(A3)/裏打ち紙層の4層からなる積層体B1を得た。
【0049】
(ハ)積層体C1の作製
前記積層体B1の絵柄層上に表1、2に示す成分と配合割合の中間層形成溶液を、乾燥後の厚みがそれぞれ表1、2に示す厚みになるように塗工後、乾燥して中間層を形成した。さらに該中間層上に、表1、2に示す成分と配合割合の、可視光型光触媒層形成溶液をそれぞれ表1、2に示す厚みになるように塗工後、乾燥して光触媒層を形成して積層体C1を得た。
尚、実施例1〜9における、触媒層の厚みが1μmでは、乾燥後の質量が1g/mとなるように可視光型光触媒層形成溶液を塗工した。
(ニ)化粧シートの作製
前記該積層体C1を加熱発熱炉内で、230℃に加熱して未発泡樹脂層中の発泡剤を発泡させた。次いで、積層体をエンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間を通し、エンボス賦型をさせて表面に凹凸模様を有する、図1に示す層構成の化粧シートを得た。
実施例1〜13における、エンボス型が形成された化粧シートの厚みは、エンボスの凸部の厚みで約500〜600μmの範囲であった。
【0050】
(2)化粧シートの評価
得られた化粧シートについて、アセトアルデヒド分解性試験、密着試験、及び汚染試験を行った。評価結果をまとめて表1、2に示す。
【0051】
[実施例14〜16]
実施例14〜16において、図2に示す光触媒層/中間層/樹脂フィルム層/絵柄層/発泡樹脂層/裏打ち紙層からなる層構成の化粧シートを作製し、評価を行った。
(1)化粧シートの作製
(イ)積層体A2の作製
裏打ち紙層上に組成物2をコンマコート法によりコーティングして未発泡樹脂層を形成した。次いで、前記未発泡樹脂層の上に、インキ1を用いて、塗布量3g/mにてグラビア印刷を施し、その後140℃で5秒間加熱してインキ1中の溶媒を蒸発させて絵柄層を形成し、絵柄層/未発泡樹脂層/裏打ち紙層の順に積層された積層体A2を作製した。
【0052】
(ロ)積層体B2の作製
前記樹脂フィルムの接着剤が塗布されていない側の表面上に、表2に示す成分と配合割合の中間層形成溶液を、乾燥後の厚みがそれぞれ表2に示す厚みになるように塗工後、乾燥して中間層を形成した。さらに該中間層上に表2に示す成分と配合割合の、可視光型光触媒層形成溶液をそれぞれ表2に示す厚みになるように塗工後、乾燥して光触媒層を形成して、触媒層/中間層/樹脂フィルム層の順に積層された積層体B2を得た。
(ハ)化粧シートの作製
前記積層体A2を加熱発熱炉内で、230℃に加熱して未発泡樹脂層中の発泡剤を発泡させた。次いで、エンボス型が形成された冷却ロールと加圧ロールの間に、積層体A2の触媒層面がエンボス賦型面となり、絵柄層と積層体B2における樹脂フィルム層の接着剤塗布面とが相対するように通して、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、図2に示す表面に凹凸模様を有する化粧シートを得た。
実施例14〜16における、エンボス型が形成された化粧シートの厚みは、エンボスの凸部の厚みで約500〜600μmの範囲であった。
【0053】
(2)化粧シートの評価
得られた化粧シートについて、アセトアルデヒド分解性試験、密着試験、及び汚染試験を行った。評価結果をまとめて表2に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
[比較例1]
比較例1において、中間層の成分(固形分)を珪藻土50質量%、有機バインダー50質量%となるようにした以外は実施例1に記載したのと同様にして、図3に示す、光触媒層/中間層/絵柄層/非発泡樹脂層(A1)/発泡樹脂層/非発泡樹脂層(A3)/裏打ち紙層からなる層構成の化粧シートを作製した。次に、実施例1に記載したと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表3に示す。
【0057】
[比較例2]
比較例2において、中間層を形成しなかった以外は実施例1に記載したと同様にして、図4に示す、光触媒層/絵柄層/非発泡樹脂層(A1)/発泡樹脂層/非発泡樹脂層(A3)/裏打ち紙層からなる層構成の化粧シートを作製し、得られた化粧シートについて、実施例1に記載した通りの評価を行った。評価結果をまとめて表3に示す。
【0058】
[比較例3]
比較例3において、光触媒層の厚みを2μmとし、光触媒層中の成分を光触媒30質量%、珪藻土30質量%、シリカ25質量%、無機バインダー15質量%として、中間層を形成しなかった以外は実施例1に記載したと同様にして、図5に示す、光触媒層/絵柄層/非発泡樹脂層(A1)/発泡樹脂層/非発泡樹脂層(A3)/裏打ち紙層からなる層構成の化粧シートを作製し、得られた化粧シートについて、実施例1に記載した通りの評価を行った。評価結果をまとめて表3に示す。
【0059】
[比較例4]
比較例4において、光触媒層の厚みを0.1μmとした以外は実施例2に記載したと同様にして、図3に示す、光触媒層/中間層/絵柄層/非発泡樹脂層(A1)/発泡樹脂層/非発泡樹脂層(A3)/裏打ち紙層からなる層構成の化粧シートを作製し、実施例1に記載したと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表3に示す。
【0060】
[比較例5]
比較例5において、光触媒層の厚みを5μmとした以外は実施例2に記載したと同様にして、図3に示す、光触媒層/中間層/絵柄層/非発泡樹脂層(A1)/発泡樹脂層/非発泡樹脂層(A3)/裏打ち紙層からなる層構成の化粧シートを作製し、実施例1に記載したと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表3に示す。
【0061】
[比較例6]
比較例6において、中間層の厚みを0.1μmとした以外は実施例2に記載したと同様にして、図3に示す、光触媒層/中間層/絵柄層/非発泡樹脂層(A1)/発泡樹脂層/非発泡樹脂層(A3)/裏打ち紙層からなる層構成の化粧シートを作製し、実施例1に記載したと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表3に示す。
【0062】
[比較例7]
比較例7において、中間層の厚みを7μmとした以外は実施例2に記載したと同様にして、図3に示す、光触媒層/中間層/絵柄層/非発泡樹脂層(A1)/発泡樹脂層/非発泡樹脂層(A3)/裏打ち紙層からなる層構成の化粧シートを作製し、実施例1に記載したと同様の評価を行った。評価結果をまとめて表3に示す。
尚、比較例1〜7における、エンボス型が形成された化粧シートの厚みは、エンボスの凸部の厚みで約500〜600μmの範囲であった。
【0063】
【表3】

【0064】
[評価結果]
(イ)アセトアルデヒド分解性評価
実施例1〜13において、低透湿樹脂層をエチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂から押出成形により形成した化粧シートを高湿度雰囲気に保管した後に、RH0%、20%の雰囲気下にそれぞれ保管した場合でも、中間層から光触媒層への水蒸気の移動により光触媒表面の局所的湿度が上昇し、表1、2に示す通り高いアセトアルデヒド分解性を示した。
実施例14〜16において、低透湿樹脂層にエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂からなる壁紙用フィルムを使用した場合でも、エンボス加工の際に樹脂層中への光触媒の落ち込みが抑制されて、表2に示す通り高いアセトアルデヒド分解性を示した。
一方、中間層のバインダーとして有機バインダーを使用した比較例1では、有機バインダー分解に光触媒活性が使用されて、アセトアルデヒドの分解性は低い結果が得られた。
中間層が形成されていない比較例2では、アセトアルデヒドの分解性は低い結果が得られた。
光触媒層中に珪藻土を添加し、中間層が形成されていない比較例3では、珪藻土粒径が光触媒粒径よりも非常に大きいため光触媒への光照射量が少なくなりアセトアルデヒドの分解性は低い結果が得られた。
比較例4では、光触媒層の厚みが薄いために低性能となり、比較例5では、光触媒層の厚みが厚過ぎたためアセトアルデヒドの分解性は良好であったが、中間層との密着性が低下し、エンボス加工で光触媒層表面にひびや割れが生じたため耐汚染性が低下した。
比較例6では、中間層が薄いためにエンボスにより光触媒層が樹脂中への落ち込み光触媒が樹脂を分解したために低性能となった。比較例7では、中間層が厚いために光触媒層の密着性が乏しく、エンボス工程で再表層光触媒層の一部に剥がれが生じたために、光触媒量が減少し、低性能となった。
【0065】
(ロ)密着性試験
中間層のバインダーとして、無機バインダーのみを使用した実施例1、2、13〜16では耐候試験後も密着性の低下はなく良好な密着性を示した。
尚、実施例1、14、16では、無機バインダーの配合量が比較的少なかったために初期密着性がcとなった。
無機バインダーと有機バインダーを混合して使用した実施例3〜12では初期密着性はbであったが光触媒による有機バインダーの経時劣化が一部生じ密着性がcへとわずかに低下した。
さらに、有機バインダー成分が多く配合された実施例6では初期密着性はaとなり、50hr経過後の密着性はbを示した。
中間層のバインダーとして、有機バインダーのみを使用した比較例1では、有機バインダーを多量に含むため初期密着性は非常に高いaを示したが、光触媒による有機バインダーの分解が生じ50hr経過後の密着性はeを示した。
中間層のない比較例2、3では、エンボス加工の際に光触媒層が樹脂から形成された層中に落ち込み、光触媒による樹脂の分解が生じたことで50hr経過後の密着性はeを示した。
比較例4では光触媒層が薄いために密着性はbを示し、比較例5では光触媒層が厚すぎたために密着性はdを示した。
無機バインダーを使用した比較例6では、中間層膜厚が薄いためエンボスにより中間層が割れ光触媒層の樹脂中への落ち込みが生じ、密着性がeとなった。
中間層バインダーに無機バインダーを使用した比較例7では、光触媒による有機物の分解は生じなかったが、無機バインダーを使用した中間層の膜厚が厚いために初期から密着性はdとなった。
【0066】
(ハ)耐汚染性試験
比較例2は、樹脂フィルム層がないために汚染物が発泡層まで移動してしまい耐汚染性が低下した。比較例5では光触媒層が5μmと厚いために光触媒が汚染物を吸着し耐汚染性が低下した。比較例7では、珪藻土を含む中間層厚が7μmと厚過ぎるために汚染物が中間層中にも入り込み耐汚染性が低下した。
【符号の説明】
【0067】
10 化粧シート
11 光触媒層(L)
12 中間層(C)
13 絵柄層(P)
14 非発泡樹脂層(A1)
15 樹脂フィルム層(A2)
16 発泡樹脂層(F)
17 非発泡樹脂層(A3)
18 裏打ち紙層(B)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも可視光型光触媒を含む光触媒層(L)、調湿材料を含む中間層(C)、及び低透湿性樹脂からなる低透湿樹脂層(T)が積層された化粧シートにおいて、
最外層を形成する厚み0.5〜3μmの光触媒層(L)に厚み0.2〜5μmの中間層(C)が隣接して積層され、
中間層(C)が調湿材料20〜80質量%、無機バインダー20〜80質量%、及び有機バインダー0〜30質量%(ここで、質量%の合計は100質量%)からなる、
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記中間層(C)が調湿材料20〜80質量%、無機バインダー20〜80質量%、及び有機バインダー5〜20質量%(ここで、質量%の合計は100質量%)からなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記低透湿樹脂層(T)の透湿度(温度25℃、湿度90%における測定値)が50g/m・24hr以下である、ことを特徴する請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
発泡樹脂層(F)が前記低透湿樹脂層(T)の内層側(低透湿樹脂層(T)の光触媒層(L)側と相対する側)に設けられている、ことを特徴する請求項1から3のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項5】
前記化粧シートが少なくとも光触媒層(L)、中間層(C)、低透湿樹脂層(T)である非発泡樹脂層(A1)、発泡樹脂層(F)、及び非発泡樹脂層(A3)の順に積層されている、ことを特徴する請求項1から4のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項6】
前記化粧シートが少なくとも光触媒層(L)、中間層(C)、低透湿樹脂層(T)である樹脂フィルム層(A2)、及び発泡樹脂層(F)の順に積層されている、ことを特徴する請求項1から4のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項7】
前記中間層(C)と非発泡樹脂層(A1)、又は樹脂フィルム層(A2)と発泡樹脂層(F)との間に絵柄層(P)が設けられている、ことを特徴する請求項5又は6に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記化粧シートが貼着される構造物(W)と、非発泡樹脂層(A3)又は発泡樹脂層(F)間に裏打ち層(B)が設けられている、ことを特徴する請求項5から7のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項9】
前記光触媒層(L)と中間層(C)がそれぞれ印刷手段を用いて形成された層である、ことを特徴する請求項1から8のいずれかに記載の化粧シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−39707(P2013−39707A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177383(P2011−177383)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】