説明

化粧品用容器

【課題】化粧筆と化粧筆を収納する収納室とを具備した化粧品用容器において、化粧筆の取り出しが容易且つ確実に行えるようにする。
【解決手段】棒状の把持部12の先端に塗布具13,14を有する化粧筆7と、この化粧筆7を収納する収納室8とを具備した化粧品用容器において、収納室8の側壁面9aと塗布具13との当接を阻害する突起15が収納室8の内部に突設されており、この突起15には、この突起15に向けて化粧筆7を移動させたときに、この化粧筆7を収納室8から脱出させる上方向に案内するガイド部16が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧筆と化粧筆を収納する収納室とを具備した化粧品用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アイシャドー等の化粧品用の容器は、通常、化粧筆と化粧筆を収納する収納室が設けられている。かかる化粧品用容器は、携帯し易いように小型であることが望ましく、それ故に化粧筆を収納する収納室も一般に化粧筆が収納できる最小限の広さとされ、余分なスペースが無いものとなっており、化粧筆が取り出し難いという欠点がある。
図15は、従来の一般的な化粧品用容器51における化粧筆52の取り出し状況を示しており、化粧筆52は、収納室53の周壁54に押しつけられて上方の開口部55から取り出される。しかし、化粧筆52の塗布具56がスポンジのような比較的摩擦係数の大きなものである場合には、周壁54との摩擦抵抗も大きく、収納室53が狭小であることと相俟って、一層、化粧筆52の取り出しを困難にしていた。
【0003】
そこで、化粧筆を収納する収納室内に弾性片を設けて化粧筆を弾発的に昇降可能とする化粧品用容器が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭52−25355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のコンパクトは、蓋体を開くと弾性片の弾発力で化粧筆が凹部(収納室)から上昇するので、化粧筆を掴み出し易い。しかし、蓋体を開く動作で化粧筆を取り落としてしまうといった問題が生じる可能性がある上に、弾性片を別途組み付ける必要があり、部品点数や組立工数の増加によるコストアップが問題となる。勿論、弾性片をコンパクトの容器本体と一体的に制作することも考えられるが、弾性片が容器本体の材質との関係で十分な弾発力を得られなかったり、破損し易い等といった問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、化粧筆と化粧筆を収納する収納室とを具備した化粧品用容器において、コストアップや化粧筆の取り出しの際の取り落としといった如上の問題がなく、化粧筆の取り出しが容易且つ確実に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。
即ち、棒状の把持部の先端に塗布具を有する化粧筆と、この化粧筆を収納する収納室とを具備した化粧品用容器において、
前記収納室は、前記化粧筆を囲繞する周壁と上方向に開放された開口部とを備えており、
この収納室の内部に前記化粧筆を収納した状態において、前記周壁のうち前記把持部の軸心方向に直交する方向に対面する側壁面と前記把持部との間には、前記側壁面と前記塗布具との当接を阻害する突起が、前記収納室の内部又は前記把持部の胴部外周の少なくとも何れか一方に突設されており、
この突起には、前記化粧筆を前記側壁面に向けて移動させたときに、前記化粧筆を前記収納室の開口部から脱出させる上方向に案内するガイド部が形成されているものとした。
【0008】
このような構成であると、収納室から化粧筆を取り出す際に、化粧筆を把持部の軸心方向に直交する方向に移動させても、突起の存在により塗布具が側壁面に圧接されることがないので、たとえ塗布具が摩擦係数の大きな材質で形成されていても化粧筆の取り出しの抵抗とはならない。しかも、突起には、化粧筆を収納室の開口部から脱出させる上方向に案内するガイド部が形成されているので、スムーズに化粧筆を取り出すことができる。
【0009】
なお、突起は、収納室と把持部の何れか一方に設けてもよく、また両方に設けることもできる。ここで「突起」を特定する「側壁面と前記塗布具との当接を阻害する」とは、塗布具が側壁面に当接するのを邪魔すれば足り、当接するのを完全に阻止する場合の他、接触する程度の当接は許容しつつも塗布具が側壁面に対して圧接されるのを妨害することを意味するものである。
【0010】
前記収納室の内部に突設される場合の突起のガイド部は、上凸の湾曲形状又は上凸の屈曲形状とすることができる。
このように、上凸の湾曲形状又は上凸の屈曲形状(山型に折り曲がった傾斜状)とすれば、化粧筆の把持部をより取り出し方向に円滑に案内できる。なお、ガイド部はこれらの形状に限定されず、上凸に山型に曲がっていない単一の傾斜面や、上凸に山型に曲がっていない単一の傾斜面を有する複数の突起の組み合わせ等としてもよい。
【0011】
また、前記収納室の内部に突設された突起には、この突起と前記把持部との間に隙間を形成する窪みを設けることができる。
このようにすると、収納室から化粧筆を取り出している最中に指先が突起に接触しなくなるか又は接触し難くなるので、操作が一層容易となる。
更に、前記収納室の内部には、複数の化粧筆を並行に収納し、前記収納室の内部に突設された突起は、各化粧筆の間に配置されたものとすることができる。
【0012】
一方、前記把持部の胴部外周に突設される場合の突起は、前記化粧筆を把持部の領域と塗布具の領域とに仕切るフランジ状に形成されており、把持部の軸心方向から見た形状が楕円形又は菱形とされていて、この楕円形又は菱形の外周部分で前記ガイド部が構成される。
このような構成であると、突起を収納室の内部に突設した場合と同様に、収納室から化粧筆を取り出す際に、化粧筆を把持部の軸心方向に直交する方向に移動させても、突起の存在により塗布具が側壁面に圧接されることがないので、たとえ塗布具が摩擦係数の大きな材質で形成されていても化粧筆の取り出しの抵抗とはならず、ガイド部の存在により、スムーズに化粧筆を取り出すことができる。
【0013】
また、把持部の胴部外周に突起を突設すると、収納室の内部には必ずしも突設が必要でなく、また、突起により把持部と塗布具が仕切られているので、塗布具に付着した化粧品で手指を汚すこともない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、化粧筆と化粧筆を収納する収納室とを具備した化粧品用容器において、化粧筆を収納状態から取り出すのが極めて容易且つ確実に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る化粧品用容器の第1実施形態を示した斜視図である。
【図2】第1実施形態の化粧品用容器の主要部を示した平面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図1のA−A断面図に相当させて化粧筆の取り出し状況を説明した図である。
【図5】本発明に係る第2実施形態の化粧品用容器の主要部を示した平面図である。
【図6】本発明に係る第3実施形態の化粧品用容器の主要部を示した平面図である。
【図7】本発明に係る化粧品用容器の第4実施形態を示した斜視図である。
【図8】本発明に係る第4実施形態の化粧品用容器の主要部を示した平面図である。
【図9】図1のA−A断面図に相当させて本発明に係る第5実施形態の化粧品用容器を説明した図面である。
【図10】本発明に係る第6実施形態の化粧品用容器の主要部を示した斜視断面図である。
【図11】本発明に係る化粧品用容器の第7実施形態を示した斜視図である。
【図12】本発明に係る第7実施形態の化粧品用容器の主要部を示した平面図である。
【図13】図11のB−B断面図に相当させて化粧筆の取り出し状況を説明した図である。
【図14】本発明に係る第8実施形態の化粧品用容器を示す図面であって、図11のB−B断面図に相当させて化粧筆の取り出し状況を説明した図である。
【図15】従来の一般的な化粧品用容器における化粧筆の取り出し状況を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至図4は、本発明に係る化粧品用容器1の第1実施形態を示している。本第1実施形態の化粧品用容器1は、正方形乃至長方形状の皿形をした容器本体2と、この容器本体2を開閉する略同形の蓋体3とが、ヒンジ部4を介して互いに揺動自体に連結されたものを示している。
【0017】
容器本体2には、複数種の化粧品の内容物5を区画して収容可能にした化粧品収容部6と、化粧筆7を収納する収納室8とが互いに隣接して設けられており、ヒンジ部4を支点として蓋体3を揺動させれば、容器本体2の化粧品収容部6及び収納室8を開閉させることができる。なお、収納室8は、化粧筆7を収納した状態において、化粧筆7を囲繞する周壁9と、内部底面10と、化粧筆7を出し入れする為に上方に開放された開口部11とを備えている。
【0018】
一方、化粧筆7は、棒状の把持部12を中央において、その先端両側に塗布具13,14を有するものであって、一端側の塗布具13が把持部12よりも太くて丸いタイプのスポンジ材からなるハケとされ、他端側の塗布具14が把持部12よりも細身のタイプのスポンジ材からなるハケとされたものとしてある。把持部12は断面形状が扁平な楕円形に形成されたものとしてある。
【0019】
本第1実施形態では、化粧筆7を取り出し易くするための突起15が収納室8の内部に突設されている。即ち、突起15は、収納室8の内部に化粧筆7を収納した状態において、周壁9のうち、把持部12の軸心方向に直交する方向に対面する側壁面9a(本第1実施形態では収納室8において化粧品収容部6から遠い方の側壁面であって、化粧筆7の取り出しを予定した方向の側壁面、以下では「取出側壁面」とも言う)と、内部底面10とによって形成される隅角部(立ち上がり隅部)に配置されたものとしてある。
【0020】
また、突起15は、取出側壁面9aの長手方向(把持部12の軸心方向に同じ)の全長にわたって設けられたものではなく、周壁9のうち把持部12の軸心方向に対面する側壁面9b,9cには届かない状態で略中央部に配置されており、突起15の長手方向中央部が取出側壁面9aと対面する側の壁面9d方向へ最も膨出する曲面を描いた形状となっている。つまり、本第1実施形態の突起15の外観形状は、概ねラグビーボールを長軸方向に1/4にしたような形状を呈している。これにより、収納室8に化粧筆7を収納したとき、原則として化粧筆7における両側の塗布具13,14が突起15に接触しない(取出側壁面9aと塗布具13,14との当接を阻害する)ようにしてある。
【0021】
その上でこの突起15は、化粧筆7を、その把持部12の軸心方向に直交する方向であって取出側壁面9aに近接する方向へ向け、且つ、収納室8の内部底面10に沿って移動(横移動)させたときには、確実に化粧筆7の把持部12と当接するように設定されている。
なお、ここにおいて「内部底面10に沿って移動(横移動)」とは、化粧品用容器1を水平にして使用すると仮定すれば、水平移動に相当する。
【0022】
また、「収納室8に化粧筆7を収納したとき、原則として化粧筆7における両側の塗布具13,14が突起15に接触しない(取出側壁面9aと塗布具13,14との当接を阻害する)」とは、収納室8に対して化粧筆7を収納させたとき、塗布具13,14が突起15乃至取出側壁面9aと全く接触しないことに限定されるものではなく、軽度の接触程度は許容される。また、化粧筆7を収納室8へ収納した段階(移動前の状態)で、その把持部12が突起15と接触するか否かについても何ら限定されるものではなく、軽度の接触程度は許容されるし、勿論、接触しないものとしてもよい。
【0023】
突起15は、その外面がガイド部16として構成されたものである。このガイド部16は、図3及び図4に示すように、上凸の湾曲形状とされており、内部底面10側の第1ガイド部16aと、開口部11側の第2ガイド部16bとを有する。
図3に示すように、本実施形態では、第1ガイド部16aの接線Taの内部底面10に対する傾斜角度は45°以上であって、第2ガイド部16bの接線Tbの内部底面10に対する傾斜角度よりも大きくなっている。
【0024】
従って、図4に示すように、収納室8内の化粧筆7を前記したように突起15に向けて横移動させ、把持部12が突起15と当接した後も更に化粧筆7の横移動を続けるとき、第1ガイド部16aは、把持部12を横移動成分(例えばL)よりも上方への押し上げ成分(Lに対応するH)が過大になる方向(矢符R参照)へ案内する。このため化粧筆7は、突起15上へ乗り上げるようにして高い位置へ移動し、収納室8から浮き出すようになる。
【0025】
なお、化粧筆7を突起15に向けて横移動させると、本第1実施形態では化粧筆7の把持部12を断面楕円形に形成してあるので、把持部12は、第1ガイド部16aに案内されると、断面楕円形の長径aが矢符Rで示した取出方向に向くように、先ず立ち上がり状に姿勢変更する。この状態で把持部12を指先で掴み、収納室8から摘み出すことも可能である。しかし、更に化粧筆7の横移動を続けると、把持部12が第1ガイド部16a及び第2ガイド部16b上を摺接しながら移動し、化粧筆7は収納室8から脱出する。
【0026】
このような取出時において、化粧筆7は、収納室8内の取出側壁面9a等に対して塗布具13,14が強く押し付けられるようなことがなく、非接触又は軽度の接触で済むようになっているので、収納室8内が汚れたり、塗布具13,14が変形したりすることはない。もとより、摩擦抵抗の増大が原因で化粧筆7の取り出しが困難になることもない。
ところで、ガイド部16における上凸の湾曲形状は、そのカーブの曲率半径(数値的な範囲)が限定されるものではない。また、一定の曲率半径で設けられているか、複数種の曲率半径を組み合わせたカーブであるか(サイクロイド曲線やインボリュート曲線等)が限定されるものでもない。
【0027】
要は、化粧筆7を取り出し易いように案内できるようにしたカーブで形成されたものであればよい。従って例えば、化粧筆7における把持部12の断面形状が円形、正方形、長方形、長丸形など、種々に変更されたり、その断面大きさが変更されたりすれば、当然にガイド部16の上凸湾曲形状も相応の変更が可能である。
また、化粧筆7の全長おける把持部12と塗布具13,14との長さ割合や、塗布具が一端部のみに設けられたような場合では、突起15(ガイド部16)も相応に変更させればよいものである。例えば、本第1実施形態では図2に示すように、突起15は、平面視したときの長手方向中央部が最も膨出するような湾曲形状としてあるが、一端部のみに塗布具を設ける場合であれば、突起15の一端部を取出側壁面9aと交差する壁面9b,9c(図2の左側又は右側の壁面)まで届かせるように形成してもよい。
【0028】
図5は、本発明に係る化粧品用容器1の第2実施形態を示している。本第2実施形態の化粧品用容器1が前記第1実施形態と最も異なるところは突起15の形状にある。その他の構成については略同様である為、同様の構成部分は同一符号を付して説明を省略する(以下、同じ)。
本第2実施形態の突起15には、化粧筆7における把持部12の長手方向中途部との間に、隙間を形成する為の窪み17が設けられている。つまり、本第2実施形態の突起15の外観形状は、概ね瓢箪型を長軸方向に1/4にしたような形状を呈している。そのため、主としてガイド部16を構成する部分は、突起15の長手方向に2箇所存在することになる。窪み17の存在により、収納室8から化粧筆7を取り出している最中に、指先が突起15に接触しなくなるか又は接触し難くなるので、操作が一層容易となる。
【0029】
図6は、本発明に係る化粧品用容器1の第3実施形態を示している。本第3実施形態の化粧品用容器1では、収納室8において化粧品収容部6から遠い方の側壁面9aと内部底面10とによって形成される隅角部だけでなく、化粧品収容部6に近い方の側壁面9dと内部底面10とによって形成される隅角部にも、突起15が配置されている。
なお、突起15については、第1実施形態で説明したものでも第2実施形態で説明したものでもよい(図例は第2実施形態で説明したのと同様に、窪み17が形成されたものとしてある)。
【0030】
従って、本第3実施形態では、化粧筆7の取出方向が側壁面9a,9dの何れの方向でも任意に選択できるようになっており、利き腕の違いや容器本体2を使用する際の向きの違いなど、臨機応変な使い方ができるという利点に繋がる。
図7及び図8は、本発明に係る化粧品用容器1の第4実施形態を示している。本第4実施形態の化粧品用容器1では、収納室8に複数(図例では2本)の化粧筆7を並行且つ隣接して収納可能となっている。そして、この収納室8の内部底面10に突起15(以下、15Bとする)が各化粧筆7の隣接間を仕切る底部位置から突設されたものとなっている。
【0031】
なお、化粧品収容部6から遠い方の側壁面9aと内部底面10とによって形成される隅角部に対しても、第1〜第3実施形態の場合と同様に、突起15(以下、15Aとする)が設けられている。いずれの突起15についても、第2実施形態(図5参照)で説明したのと同様に、窪み17が設けられたものとしてある。
内部底面10から突設された突起15Bは、ガイド部16及び窪み17を化粧品収容部6に近い方の側壁面9dへ向けるようにして形成されている。この突起15Bにおいて、化粧品収容部6から遠い方の側壁面9aに面する部分は内部底面10から直立する立面としてあり(ガイド部16や窪み17は形成させておらず)、これによって収納室8の内部が徒に広くなりすぎないようにしてある。即ち、化粧品用容器1全体としての大型化を抑制してある。
【0032】
このような構成を具備する第4実施形態の化粧品用容器1では、収納室8内において、化粧品収容部6に近い方の側壁面9d寄りに収納した化粧筆7(以下、7Bとする)は、内部底面10に突設された突起15Bに押し付けるようにして取り出せばよい。また、化粧品収容部6から遠い方の側壁面9a寄りに収納した化粧筆7(以下、7Aとする)は、この側壁面9aと内部底面10との隅角部に設けられた突起15Aに押し付けるようにして取り出せばよい。
【0033】
このように、収納室8に対して複数の化粧筆7A,7Bを収納したとき、いずれの化粧筆7A,7Bもその順番を気にすることなく、容易且つ確実に取り出すことができるものである。
なお、内部底面10に突設された突起15Bにおいては、その両側に収納した化粧筆7A,7Bの取り出しを容易化させるために、化粧品収容部6から遠い方の側壁面9aへ向く側と、化粧品収容部6に近い方の側壁面9dへ向く側との両方に、ガイド部16や窪み17を形成させてもよい。つまり、突起15Bの外観形状を概ねラグビーボールや瓢箪型を長軸方向に1/2にしたような形状を呈するようにすることもできる。
【0034】
また、収納室8は、3本以上の化粧筆7を収納可能なものとして、各隣接間となるそれぞれの底面位置に突起15を設けるようにしてもよい。
図9は、本発明に係る化粧品用容器1の第5実施形態を示している。本第5実施形態の化粧品用容器1が前記第1実施形態等と異なるところは、突起15のガイド部16が、第1実施形態が上凸の湾曲形状であるのに対し、上凸の直線状の傾斜面の組合せで構成されている点であり、その他の構成については略同様である。
【0035】
即ち、突起15のガイド部16は、化粧筆7の把持部12を横移動成分よりも上方への押し上げ成分が過大になる方向へガイドすれば足りるので、上凸の湾曲形状であることに限定されるものではなく、本第5実施形態のように、上凸の屈曲形状が付された直線状の傾斜面(山型に折り曲がった傾斜面)として形成することもできる。
なお、以上の実施形態では、突起15のガイド部16が、湾曲面か傾斜面で構成されているが、第1ガイド部16a及び第2ガイド部16bの一方が、湾曲面で他方が直線上の傾斜面というような組合せも可能である。
【0036】
図10は、本発明に係る化粧品用容器1の第6実施形態を示している。図10に示すように、収納室8に設ける突起15において、ガイド部16は、上凸の山型に折り曲がっておらず、内部底面10から45°以上で傾斜した単一の傾斜面を有したものとして形成してもよい。この場合、45°よりも小さな角度の傾斜面を有する補助ガイド18を並設させるようにすると、化粧筆7の把持部12を上方へ向けて円滑に押し上げることができるようになり、好適である。
【0037】
次に、図11乃至図13は、本発明に係る化粧品用容器1の第7実施形態を示していおり、第1実施形態等と同様の構成部分は同一符号を付して説明を省略している。本第7実施形態の化粧品用容器1では、突起を収納室8ではなく、化粧筆7側に突設したものであり、この突起30は、化粧筆7の把持部12の胴部外周が、塗布具13,14と同じくらいか又はそれ以上に太くなるように膨出して、化粧筆7を把持部12の領域と塗布具13,14の領域とに仕切るフランジ状に形成されている。また、この突起30は、把持部12の軸心方向側から見た形状が楕円形となっていて、この楕円形の外周部分でガイド部31が構成されている。
【0038】
かかる構成において化粧筆7を収納部8から取り出すには、図13に示すように、突起30の楕円形の長径aが矢符Rで示した取出方向に向くように、立ち上がり状に姿勢変更させる。この際、ガイド部31は、突起30の楕円形の外周部分で構成されているので、収納部8の内部底面10上を転動して化粧筆7が姿勢変更される。この状態で把持部12を指先で掴み、収納室8から摘み出すことも可能である。しかし、更に化粧筆7を取り出しを予定した方向の側壁面9aに向けて移動させ、この側壁面9aに対して突起30を当接させ、更に同方向に移動させると、化粧筆7は、突起30の楕円形の外周部分で構成されたガイド部31が側壁面9aに対して摺接し、このガイド部31に案内されて収納室8から脱出する。
【0039】
図14は、本発明に係る化粧品用容器1の第8実施形態を示しており、第1実施形態等と同様の構成部分は同一符号を付して説明を省略している。本第8実施形態が、第7実施形態と異なる点は、取り出しを予定した方向の側壁面9aの内部底面10からの高さが、突起30の楕円形の短径bの1/2以下の高さにしてあるところである。
本第8実施形態では、上記第7実施形態したように化粧筆7を立ち上がり状に姿勢変更させるまでもなく、化粧筆7を取り出しを予定した方向の側壁面9aに向けて移動させるだけで、化粧筆7は、突起30の楕円形の外周部分で構成されたガイド部31が側壁面9aに対して摺接し、側壁面9aの頂部9a’を乗り越えるようにガイド部16に案内されて収納室8から脱出する。
【0040】
上記第7及び第8実施形態の取出時において、化粧筆7は、収納室8内の取出側壁面9a等に対して塗布具13,14が強く押し付けられるようなことがなく、非接触又は軽度の接触で済むようになっているので、収納室8内が汚れたり、塗布具13,14が変形したりすることはない。もとより、摩擦抵抗の増大が原因で化粧筆7の取り出しが困難になることもない。また、突起30により把持部12と塗布具13,14が仕切られているので、塗布具13,14に付着した化粧品で手指を汚すこともない。
【0041】
なお、突起30となる把持部12の胴部外周の形状は、楕円形ではなく、例えば菱形に形成し、ガイド部31を直線状の傾斜面としてもよい。
以上の各実施形態では、突起15として収納室8側にのみ設けた場合と、突起30として把持部12側にのみ設けた場合を説明しているが、収納室8側と把持部12側の両方に、それぞれ突起15と突起30を設けることも当然可能である。このように両者を併設した場合には、より一層、化粧筆7を取り出し易くなるという効果が期待できる。
(その他)
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく適宜変更可能である。容器本体2の外形状、化粧品収容部6や収納室8の形状、ヒンジ部4や蓋体3の有無など、何ら限定されるものではない。また、化粧筆7において、塗布具13,14は、スポンジ材料からなるハケとする他、毛筆としてもよく、把持部12の一端側にのみ設けてもよく、把持部12は、断面形状を円形、正方形、長方形、長丸形など、種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 化粧品用容器
7 化粧筆
8 収納室
9 周壁
9a 側壁面(取出側壁面)
11 開口部
12 把持部
13 塗布具
14 塗布具
15 突起
16 ガイド部
30 突起
31 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の把持部の先端に塗布具を有する化粧筆と、この化粧筆を収納する収納室とを具備した化粧品用容器において、
前記収納室は、前記化粧筆を囲繞する周壁と上方向に開放された開口部とを備えており、
この収納室の内部に前記化粧筆を収納した状態において、前記周壁のうち前記把持部の軸心方向に直交する方向に対面する側壁面と前記把持部との間には、前記側壁面と前記塗布具との当接を阻害する突起が、前記収納室の内部又は前記把持部の胴部外周の少なくとも何れか一方に突設されており、
この突起には、前記化粧筆を前記側壁面に向けて移動させたときに、前記化粧筆を前記収納室の開口部から脱出させる上方向に案内するガイド部が形成されていることを特徴とする化粧品用容器。
【請求項2】
棒状の把持部の先端に塗布具を有する化粧筆と、この化粧筆を収納する収納室とを具備した化粧品用容器において、
前記収納室は、前記化粧筆を囲繞する周壁と上方に向けて開放された開口部とを備えており、
この収納室の内部に前記化粧筆を収納した状態において、前記周壁のうち前記把持部の軸心方向に直交する方向に対面する側壁面と前記塗布具との当接を阻害する突起が前記収納室の内部に突設されており、
この突起には、この突起に向けて前記化粧筆を移動させたときに、この化粧筆を前記収納室の開口部から脱出させる上方向に案内するガイド部が形成されていることを特徴とする化粧品用容器。
【請求項3】
前記収納室の内部に突設された突起のガイド部は、上凸の湾曲形状又は上凸の屈曲形状とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧品用容器。
【請求項4】
前記収納室の内部に突設された突起には、この突起と前記把持部との間に隙間を形成する窪みが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の化粧品用容器。
【請求項5】
前記収納室の内部には、複数の化粧筆を並行に収納しており、前記収納室の内部に突設された突起は、各化粧筆の間に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の化粧品用容器。
【請求項6】
棒状の把持部の先端に塗布具を有する化粧筆と、この化粧筆を収納する収納室とを具備した化粧品用容器において、
前記収納室は、前記化粧筆を囲繞する周壁と上方に向けて開放された開口部とを備えており、
この収納室の内部に前記化粧筆を収納した状態において、前記周壁のうち前記把持部の軸心方向に直交する方向に対面する側壁面と前記塗布具との当接を阻害する突起が前記把持部)の胴部外周に突設されており、
この突起には、前記側壁面に向けて前記化粧筆を移動させたときに、この化粧筆を前記収納室の開口部から脱出させる上方向に案内するガイド部が形成されていることを特徴とする化粧品用容器。
【請求項7】
前記把持部の胴部外周に突設された突起は、前記化粧筆を把持部の領域と塗布具の領域とに仕切るフランジ状に形成されており、把持部の軸心方向から見た形状が楕円形又は菱形とされていて、この楕円形又は菱形の外周部分で前記ガイド部が構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項6に記載の化粧品用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−24772(P2011−24772A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173425(P2009−173425)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【特許番号】特許第4431188号(P4431188)
【特許公報発行日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000241625)エム・エフ・ヴィ株式会社 (22)