説明

化粧料容器

【課題】小形化することができ、しかも小さな力で開蓋することができ、耐久性に優れ化粧料等が溜まりにくい化粧料容器を提供する。
【解決手段】上面に化粧皿収容凹部が形成された容器本体1と、この容器本体1の上面を蓋する蓋体2とを備え、容器本体1の一端部に係合凸部14aを設け、蓋体2の一端部に係合爪2aを設け、容器本体1の他端部に蓋体2の他端部を回動自在に連結した化粧料容器であって、容器本体1と蓋体2との間に、容器本体1の他端側から一端側に向かって移動可能な薄板3を配設し、この薄板3を容器本体1の一端側に向かって押圧することにより上記薄板3を容器本体1の一端側に移動可能に構成し、容器本体1の一端部の、上記係合凸部14aの近傍部分に、容器本体1の他端側に向かって下り傾斜状に傾斜する前側傾斜面14bを形成し、薄板3の一端部の部分に、上記移動時に上記前側傾斜面14bに摺接する摺接用傾斜面22を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片手で開蓋することのできる化粧料容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、化粧料容器は、図17に示すように、化粧料52が収容された容器本体51と、この容器本体51の上面を蓋する蓋体53とを備えており、上記容器本体51の後端部に蓋体53の後端部が連結ピン54によりヒンジ連結されたもので構成されている。そして、閉蓋状態では、上記容器本体51の前端部に形成された係合突起51aに、上記蓋体53の前端部から垂下する係合爪53aを着脱自在に係合させておき、使用の際には、上記蓋体53を上方に押し上げて上記係合を解除するようにしている。
【0003】
ところが、上記使用の際には、一方の手指で容器本体51を持ち、他方の手指で蓋体53を上方に押し上げ、係合突起51aと係合爪53aとの係合をこじ開けるようにして解除しなければならない。このため、開蓋動作が煩雑であるとともに、片手で上記係合を解除することができない。また、上記係合が固い場合には、蓋体53を上方に押し上げる力が強すぎて蓋体53が勢いよく開き、容器本体51内の化粧料52が飛び散るという事態が生じてしまう。
【0004】
そこで、片手で開蓋することのできる化粧料容器として、図18に示すようなコンパクトが提案されている。このコンパクトは、上面に2つの凹部55a,55bが形成された容器本体55と、この容器本体55の後端部に回動自在に連結された蓋体56と、この蓋体56の下面に前後方向にスライド自在に固定さた薄板57とを備えており、上記容器本体55の上面の左右両側縁の前端部分に左右一対の嵌合凹部58(図では、左側の嵌合凹部58しか図示せず)が形成され、これら両嵌合凹部58の前面が、後方に向かって下り傾斜のテーパ面58aに形成されている。また、上記薄板57には、その左右両側面の前端部分から、上記両嵌合凹部58に着脱自在に嵌合する左右一対の嵌合凸部59が突設されており、これら両嵌合凸部59の前面が、前方に向かって上り傾斜のテーパ面59aに形成されている。また、上記薄板57には、その後端縁の略中央から押圧片57aが延設されており、閉蓋状態では、上記蓋体56の後端部に切欠き形成された凹み部56bから後方に突出している。図において、55cは上記容器本体55の前壁から立設された係合爪で、56aは上記蓋体56の前壁から垂下する係合突起で、60は軸棒である。
【0005】
そして、開蓋時には、上記薄板57の押圧片57aを手指で前方に押圧し、上記薄板57を前方にスライドさせることを行う。これにより、上記薄板57の両嵌合凸部59のテーパ面59aが上記容器本体55の両嵌合凹部58のテーパ面58aに摺接しながら上記薄板57が斜め上方に移動し、これに伴なって上記蓋体56が斜め上方に持ち上げられて上記係合が解除される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平5−39407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記コンパクトでは、上記薄板57の左右両側面から左右一対の嵌合凸部59が突設されているため、これら両嵌合凸部59の分だけ上記薄板57の左右幅が長くなり、これにより、(両嵌合凸部59に嵌合する両嵌合凹部58が形成された)上記容器本体55の上面の左右幅も長くしなければならず、コンパクト全体が大形化する。しかも、上記薄板57の左右両側面の前端部分から上記両嵌合凸部59を突設しているため、上記薄板57の後端縁の押圧片57aを前方に押圧しても、この押圧力が、上記両嵌合凸部59を斜め外側に押圧する力としても作用し、上記両嵌合凸部59を前方に押圧する力としては少ししか作用せず、大きな力で薄板57を押圧する必要がある。しかも、上記左右幅が長くなるのを防止するため、上記薄板57の両嵌合凸部59の左右幅を短く(すなわち肉厚を小さく)するとともに、上記容器本体55の両嵌合凹部58の左右幅を短くすると、上記したように、上記両嵌合凸部59に対しこれを斜め外側に押圧する力が作用するため、上記両嵌合凸部59が左右に撓んで歪みやすく、開蓋しにくくなったり、両嵌合凹部58,両嵌合凸部59が破損等しやすくなったりして、耐久性に劣る。しかも、上記両嵌合凹部58,両嵌合凸部59により凹凸が多い形状になっており、構造が複雑化するうえ、これら両嵌合凹部58,両嵌合凸部59に化粧料や塵芥等が溜まりやすい。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、小形化することができ、しかも、小さな力で開蓋することができ、耐久性に優れ、化粧料等が溜まりにくい化粧料容器の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の化粧料容器は、上面に化粧料収容孔部が形成された容器本体と、上記容器本体の上面を蓋する蓋体とを備え、上記容器本体の一端部に係合部を設け、上記蓋体の一端部に、上記係合部に着脱自在に係合する被係合部を設け、上記容器本体の他端部に上記蓋体の他端部を回動自在に連結した化粧料容器であって、上記容器本体と蓋体との間に、上記容器本体の他端側から一端側に向かって移動可能な可動体を配設し、この可動体の他端部を上記容器本体の他端側に延設して上記容器本体もしくは蓋体の他端部に露呈させ、この露呈する可動体の部分を上記容器本体の一端側に向かって押圧することにより上記可動体を上記容器本体の一端側に移動可能に構成し、上記容器本体の一端部の、上記係合部の近傍部分に、上記容器本体の他端側に向かって下り傾斜状に傾斜する第1傾斜面を形成し、上記第1傾斜面に対応する上記可動体の一端部の部分に、上記移動時に上記第1傾斜面に摺接する第2傾斜面を形成したという構成をとる。
【発明の効果】
【0009】
すなわち、本発明の化粧料容器は、上面に化粧料収容孔部が形成された容器本体と、上記容器本体の上面を蓋する蓋体とを備えている。そして、上記容器本体の一端部に係合部を設け、上記蓋体の一端部に、上記係合部に着脱自在に係合する被係合部を設け、上記容器本体の他端部に上記蓋体の他端部を回動自在に連結した化粧料容器であって、上記容器本体と蓋体との間に、上記容器本体の他端側から一端側に向かって移動可能な可動体を配設し、この可動体の他端部を上記容器本体の他端側に延設して上記容器本体もしくは蓋体の他端部に露呈させ、この露呈する可動体の部分を上記容器本体の一端側に向かって押圧することにより上記可動体を上記容器本体の一端側に移動可能に構成し、上記容器本体の一端部の、上記係合部の近傍部分に、上記容器本体の他端側に向かって下り傾斜状に傾斜する第1傾斜面を形成し、上記第1傾斜面に対応する上記可動体の一端部の部分に、上記移動時に上記第1傾斜面に摺接する第2傾斜面を形成している。したがって、本発明の化粧料容器では、上記容器本体と蓋体の間に配設した可動体を、上記容器本体もしくは蓋体の他端部から一端側に向かって押圧して上記容器本体の一端側に移動させることができ、この移動により、上記容器本体の一端部に形成した(上記容器本体の他端側に向かって下り傾斜状に傾斜する)第1傾斜面と、上記可動体の一端部に形成した(上記第1傾斜面に摺接するよう、上記容器本体の一端側に向かって上り傾斜状に傾斜する)第2傾斜面と摺接させ、この第2傾斜面に沿って上記可動体を斜め上向きに移動させ、これに伴って上記可動体の上側にある蓋体を斜め上向きに回動させて上記係合を外し、開蓋できるようにしている。
【0010】
このように、本発明の化粧料容器では、上記容器本体の一端部の、上記係合部の近傍部分に第1傾斜面を形成しているため、上記容器本体の一端部から他端側に向かう方向(例えば、前後方向)に対し直交する方向(例えば、左右方向)に、上記容器本体を長くする(例えば、左右幅を長くする)必要がない。しかも、上記容器本体の係合部の近傍部分にはフックピース等を配設することが多いため、そのための大きなスペースが必要とされることが多く、このような個所に、容器本体の一端部から他端側に向かう方向(例えば、前後方向)に第1傾斜面を形成しても、化粧料容器全体があまり大形化しない。しかも、上記容器本体の一端部の、上記係合部の近傍部分に第1傾斜面を形成しているため、上記係合部,第1傾斜面が1個所に集中して形成されており、上記可動体を上記容器本体の一端側に押圧すると、その押圧力の大部分が、第1傾斜面およびこれに摺接する第2傾斜面を上記容器本体の一端部から他端側に向かう方向(例えば、前後方向)に押圧する力として作用し、小さな力で可動体を押圧して開蓋することができる。
【0011】
しかも、上記容器本体の一端部の、上記係合部の近傍部分に第1傾斜面を形成しているため、この第1傾斜面およびこれに対応する第2傾斜面を、上記直交する方向(例えば、左右方向)に長く形成しても、この方向に上記容器本体を長くすることなく、上記両傾斜面を必要な長さに形成することができ、これにより、開蓋時に上記容器本体の一端部や可動体の一端部が撓んだり、破損等したりすることがなく、耐久性に優れる。しかも、上記したように、上記容器本体の一端部の、上記係合部の近傍部分に上記両傾斜面が集中しており、凹凸が少ない形状であるため、構造が簡単化するうえ、化粧料や塵芥等が溜まりにくい。
【0012】
また、上記容器本体の一端部に切欠き凹部を形成し、この切欠き凹部の奥面に上記係合部を設けるとともに、上記奥面に対向する面に上記第1傾斜面を形成すると、上記容器本体の一端部に形成した切欠き凹部を利用して係合部および第1傾斜面を形成することができ、凹凸が少なく、構造が簡単化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、これに限定されるわけではない。
【0014】
図1および図2は本発明の化粧料容器の一実施の形態を示している。この実施の形態では、上記化粧料容器は、合成樹脂製の容器本体1と、この容器本体1の上面を蓋する合成樹脂製の蓋体2と、この蓋体2に前後方向にスライド自在に固定された合成樹脂製の薄板(可動体)3と、上記容器本体1と蓋体2とを回動自在に連結する合成樹脂製もしくは金属製の連結ピン4とで構成されている(図3参照)。
【0015】
上記容器本体1は、図3に示すように、平面視略長方形に形成された皿状体からなり、その上面に化粧皿収容凹部(化粧料収容孔部)1aと化粧用具収容凹部1bが前後に並べた状態で形成されている。すなわち、上記皿状体を構成する略長方形環状の周側壁11の内部空間が仕切壁12により前後に仕切られており、この仕切壁12の前後空間がそれぞれ化粧皿収容凹部1aと化粧用具収容凹部1bとに形成されている。そして、上記化粧皿収容凹部1aに、化粧料5aが充填された化粧皿5が収容されており、化粧用具収容凹部1bにパフ等の化粧用具(図示せず)が収容されている。
【0016】
また、上記容器本体1には、その上面の左右両側縁部に、その前後両端間にわたって一直線状に延びる左右一対の帯状突部13が相対向状に立設されており、これら両帯状突部13の内側部分が段差部13a(図3では、左側の段差部13aしか図示せず)に形成されている。そして、閉蓋状態では上記段差部13aに上記蓋体2の下端部が収まるようにしている。
【0017】
また、上記容器本体1には、その周側壁11のうちの前側壁(一端部)11aの中央部分に、その前側面およびこれに続く上側面が開口する前側切欠き形成部14が切欠き形成されており、この前側切欠き形成部14の奥面に、上記蓋体2の係合爪2aが着脱自在に係合する係合凸部(係合部)14aが突設されている。また、上記前側切欠き形成部14は、その前側面が、後方に向かって下り傾斜状に傾斜する前側傾斜面(第1傾斜面)14bに形成されているとともに、その底面が水平面14cに形成されており(図4参照)、上記前側傾斜面14bに上記薄板3の摺接用傾斜面22が摺動自在に当接し、上記水平面14cに上記薄板3の水平面23が当接している。
【0018】
また、上記周側壁11には、その後側壁(他端部)11bの左右両側部分に、その後側面およびこれに続く上下両側面が開口する左右一対の後側切欠き形成部15が切欠き形成されており、これら両後側切欠き形成部15に上記蓋体2の両連結部18が回動自在に配設されている。また、上記両後側切欠き形成部15間に切り残された上記後側壁11bの部分(すなわち、上記後側壁11bの中央部分)が連結支受部16に形成されており、この連結支受部16の後部の、上記両連結部18の貫通穴18aに対応する部分に、上記連結支受部16を左右方向に貫通する状態で上面開放状の凹条16aが形成されている。そして、この凹条16aと、この凹条16aの上部(上面開口部)を蓋する蓋材16b(図4参照)とで軸孔17が形成されている。
【0019】
上記蓋体2には、その下面に上記薄板3が前後方向にスライド可能に固定されている。より詳しく説明すると、上記蓋体2には、その下面の左右両縁部から左右一対の帯状側壁19が相対向状に垂設されており、これら両帯状側壁19の内側面上部に左右一対のガイド溝部19a(図3では、左側のガイド溝部19aしか図示せず)が相対向状に形成されている。そして、これら両ガイド溝部19aに、上記薄板3の両ガイド突条25が遊嵌状に係合しており、これにより、上記蓋体2の下面に薄板3が前後方向にスライド可能に取り付けられている。
【0020】
また、上記蓋体2には、その前端部(一端部)の中央部分から、上記容器本体1の係合凸部14aに着脱自在に係合する係合爪(被係合部)2a(図5参照)が垂設されているとともに、その左右両側部に、上記薄板3の左右両側板部21bを挿通しうる左右一対の切欠き部20が切欠き形成されている。また、上記蓋体2には、その後端部(他端部)の左右両側部分から、上記容器本体1の両後側切欠き形成部15に回動自在に収容される左右一対の連結部18が垂設されており、これら両連結部18間を上記薄板3の押圧部24が挿通しうるようにしている。また、上記蓋体2の後端面には、円弧状に湾曲する湾曲部2bが形成されており、この湾曲部2bに上記薄板3の押圧部24が突出して外部に露呈するようにしている(図1参照)。
【0021】
上記薄板3には、その前端部(一端部)に、上記容器本体1の前側切欠き形成部14内に収まる枠状摺接部21が前方に突設されている(図6参照)。この枠状摺接部21は略コ字状の枠体に形成されており、この枠体で囲まれた中央孔21cを上記蓋体2の係合爪2aが挿通しうるようにしている。また、上記枠状摺接部21は、その略コ字状の前板部21aの下面が、上記前側傾斜面14bに摺接しうる(すなわち、前方に向かって上り傾斜状に傾斜する)摺接用傾斜面(第2傾斜面)22に形成されている。また、上記枠状摺接部21の略コ字状の左右両側板部21bの下面は、上記摺接用傾斜面22に続く摺接用傾斜面22に形成されているとともに、その底面が、上記容器本体1の前側切欠き形成部14の水平面14cに当接する水平面23に形成されている。
【0022】
また、上記薄板3には、その後端縁の中央部分から後方に、閉蓋状態で上記蓋体3の湾曲部2bから突出する押圧部24が延設されており、その後端面は、手指をかけやすくするために円弧状に切欠き形成されている。図3において、6は上記薄板3の下面に貼着された鏡で、25は上記薄板3の左右両側面上部から突設される左右一対のガイド突条(図3では、右側のガイド突条25しか図示せず)である。
【0023】
上記連結ピン4は、図18に示すコンパクトの軸棒60と同様の構造をしており、それ自体の外周面に軸心方向に沿つて1条の突条25aが形成された丸棒状の軸体25と、この軸体25の左右両端に取り付けられた左右一対の丸棒状のねじり軸部26とで構成されている。また、上記連結ピン4には、その内部に、図7に示すように、細長い環が折り曲げ形成された針金27が、その端部をそれぞれ上記両ねじり軸部26の端面に固着された状態で取り付けられており、上記軸体25の両ねじり軸部26との連結部分には、それぞれグリス28が塗布されている。
【0024】
そして、上記連結ピン4が容器本体1の軸孔17と蓋体2の両連結部18の貫通穴18aと挿通されており、これにより、容器本体1と蓋体2とが回動自在に連結されている。ここで、上記連結ピン4を上記軸孔17と上記両貫通穴18aとに配挿することは、上記両ねじり軸部26を上記両貫通穴18a内にそれぞれ嵌挿し、上記容器本体1に対し蓋体2を約135°開いた状態で、上記軸体25を容器本体1の凹条16aに配設し、この凹条16aの上部に蓋材16bを固着することにより行われる。この状態では、上記軸体25の突条25aが、図4に示すように、凹条16aと蓋材16bとからなる前側角部に嵌合しており、これにより、軸体25が容器本体1の連結支受部16に固定された状態になっている。また、左側ねじり軸部26の外周面に形成された突起(図示せず)が、左側連結部18の貫通穴18aの内周面に形成された角部18bに嵌合しており、これにより、左側ねじり軸部26が左側連結部18に固定された状態になっている。
【0025】
上記の構成において、不使用時には、容器本体1の係合凸部14aに蓋体2の係合爪2aを係合させて閉蓋状態にしておく。これにより、左側連結部18に固定されている左側ねじり軸部26が前方に約135°回動し、連結ピン4内の針金27がねじれた状態になる。なお、この閉蓋状態では、上記蓋体2の下面に固定された薄板3の摺接用傾斜面22が容器本体1の前側切欠き形成部14の前側傾斜面14bに当接し、その水平面23が上記前側切欠き形成部14の水平面14cに当接している(図4参照)。
【0026】
この閉蓋状態から開蓋する場合には、上記薄板3の押圧部24を手指で前方に押圧し、薄板3を前方にスライド移動させる。これにより、図8に示すように、上記前側傾斜面14bに当接している摺接用傾斜面22が上記前側傾斜面14bに沿って前方に(斜め上方に)移動する(図8中の矢印参照)。そして、上記蓋体2の前端部が上記薄板3の移動によって斜め上方に持ち上げられ上記係合が解除される。その結果、左側ねじり軸部26が針金27のねじれた状態から復元する力に付勢されて上記蓋体2が自動的に後方に回動してゆっくりと開蓋し、容器本体1から135°開いた状態になる。
【0027】
上記のように、この化粧料容器では、上記容器本体1の前側壁11aの前側切欠き形成部14に係合凸部14a,前側傾斜面14bが集中して形成されているため、上記容器本体1を左右方向に長くする必要がないうえ、上記薄板3を前側に押圧する押圧力の大部分が、上記前側切欠き形成部14に対し上記薄板3の摺接用傾斜面22を前方に押圧する力として作用し、小さな力で開蓋することができる。しかも、上記容器本体1の前側切欠き形成部14に前側傾斜面14bを形成しているため、上記両傾斜面14b,22を左右方向に長く形成しても、この方向に上記容器本体1を長くせずとも、上記両傾斜面14b,22を必要な長さに形成することができ、これにより、開蓋時に上記両傾斜面14b,22が撓んだり、破損等したりすることがなく、耐久性に優れる。しかも、上記前側切欠き形成部14を利用して上記係合凸部14aや両傾斜面14b,22を形成しているため、凹凸が少ない形状であり、構造が簡単化するうえ、化粧料や塵芥等が溜まりにくい。しかも、上記薄板3を前方に押圧するだけで、上記係合を解除して開蓋することができる。
【0028】
図9および図10は本発明の化粧料容器の他の実施の形態を示している。この実施の形態では、上記化粧料容器は、合成樹脂製の容器本体31と、この容器本体31の上面を蓋する合成樹脂製の蓋体32と、上記容器本体31と蓋体32との間に前後方向にスライド自在に配設された合成樹脂製の中皿(可動体)33と、上記容器本体1と蓋体2とを回動自在に連結する合成樹脂製もしくは金属製の左右一対の連結ピン(図示せず)とで構成されている(図11参照)。
【0029】
上記容器本体31は、図12に示すように、平面視略四角形に形成された皿状体からなり、その上面に、パフ等の化粧用具(図示せず)を収容する化粧用具収容凹部31aが形成されている。すなわち、上記皿状体を構成する略四角形環状の周側壁35の内部空間が化粧用具収容凹部31aに形成されている。また、上記周側壁35のうちの前側壁(一端部)35aの中央部分に、その前側面およびこれに続く上側面が開口する前側切欠き形成部14(図13参照)が切欠き形成されている。この前側切欠き形成部14の形状は、上記実施の形態における容器本体1の前側切欠き形成部14と同様であり、その説明を省略する。
【0030】
また、上記周側壁35には、その後側壁(他端部)35bの中央部分に、その後側面およびこれに続く上下両側面が開口する後側切欠き形成部31bが切欠き形成されており、この後側切欠き形成部31bの左右両側部分に、これを貫通するようにして、上記各連結ピンの一部を挿通する左右一対の挿通孔31cが穿設されている。
【0031】
上記蓋体32には、図14に示すように、その周側壁の後端部(他端部)の左右両側部分から、上記容器本体31の後側切欠き形成部31b(のうち左右両側部分)に回動自在に収容される左右一対の連結部36が垂設されており、これら両連結部36間に上記中皿33の中間連結部40が配設されるようにしている。また、上記蓋体32には、その周側壁の後端部のうち、上記両連結部36間に対応する部分が、その下面から半円弧状に切欠き形成されており、この切欠き形成部32aに、上記中皿33の押圧部43を収容しうるようにしている。
【0032】
また、上記両連結部36には、その外側部分(すなわち、右側連結部36の右側部分および左側連結部36の左側部分)に、上記各連結ピンの他部を挿通する左右一対の挿通凹部36a(図13では、左側の挿通凹部36aは図示せず)が形成されている。また、上記両連結部36には、その内側面(すなわち、右側連結部36の左側面および左側連結部36の右側面)に、その前側面から後方に向かって所定個所(上記各挿通凹部36aに対応する部分)まで先細り状に延びる係合溝部37(図15参照)が相対向状に形成されている。
【0033】
上記中皿33は、図16に示すように、平面視略四角形に形成された化粧料収容部39と、この化粧料収容部39の後端縁から垂設される中間連結部40と、上記化粧料収容部39の前端縁から突設される枠状摺接部21(図11参照)とで構成されている。この枠状摺接部21の形状(図15参照)は、上記実施の形態における薄板3の枠状摺接部21と同様であり、その説明を省略する。
【0034】
上記化粧料収容部39は、(内部に化粧料41aが充填された)化粧皿41を保持する有底角筒状の保持部42と、この保持部42の外周面から突設される略四角形環状の鍔部42aとからなり、この鍔部42aが上記容器本体31の上面(上記周側壁35の上面)に前後方向に摺動自在に載置されている。
【0035】
上記中間連結部40は、上記鍔部42aの後端縁から垂設されており、その左右両側面から、上記両係合溝部37に摺動自在にかつ回動自在に係合するピン40aが相対向状に突設されている。これら両ピン40aは、上記両係合溝部37内にその先端開口部37aから挿入され(図15参照)、両係合溝部37内では、その先端開口部37aと奥部(上記各挿通凹部36aに対応する部分)との間で摺動自在でかつどの個所でも回動自在になっており、奥部に到達すると、これに回動自在にかつ着脱自在に係合するように構成されている。また、上記中間連結部40には、その上面後部から押圧部43が立設されており、閉蓋状態で上記蓋体32の切欠き形成部32a内に収容されているとともに、その後側面が外部に露呈している。それ以外の部分は上記実施の形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0036】
上記の構成において、閉蓋状態から開蓋する場合には、中皿33の押圧部43を手指で前方に押圧し、中皿33を前方にスライド移動させることを行う。これにより、容器本体31の前側傾斜面14bに当接している枠状摺接部21の摺接用傾斜面22が上記前側傾斜面14bに沿って前方に移動しながら斜め上方に回動する(図8中の矢印参照)。そして、この回動に伴って上記蓋体32の前端部が斜め上方に持ち上げられ上記係合が解除され、開蓋することができる。この実施の形態でも、上記実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0037】
なお、図1〜図8に示す実施の形態では、上記容器本体1に化粧皿収容凹部1aを形成しているが、これに限定するものではなく、上記容器本体1に化粧皿5収容用の貫通孔を穿設し、この貫通孔に化粧皿5を着脱自在に収容してもよいし、上記化粧皿収容凹部1aに直接化粧料5aを収容してもよい。図9〜図16に示す実施の形態についても同様である。
【0038】
また、図1〜図8に示す実施の形態において、連結ピン4を通常の丸棒状の同径のピンで構成してもよい(すなわち、図9〜図16に示す実施の形態と同様の連結構造にしてもよい)し、図9〜図16に示す実施の形態において、その連結構造を、図1〜図8に示す実施の形態の連結構造と同様にしてもよい。また、上記両実施の形態では、押圧部24,43を蓋体2,32の後端部から突出させて外部に露呈させているが、容器本体1,31の後端部から突出させて外部に露呈させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の化粧料容器の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】上記化粧料容器の開蓋状態を示す斜視図である。
【図3】上記化粧料容器の分解斜視図である。
【図4】上記化粧料容器の断面図である。
【図5】蓋体の斜視図である。
【図6】薄板の斜視図である。
【図7】連結ピンの断面図である。
【図8】上記化粧料容器の作用を示す要部の断面図である。
【図9】本発明の化粧料容器の他の実施の形態を示す斜視図である。
【図10】上記化粧料容器の要部の斜視図である。
【図11】上記化粧料容器の開蓋状態を示す斜視図である。
【図12】容器本体の斜視図である。
【図13】上記化粧料容器の要部の断面図である。
【図14】蓋体の斜視図である。
【図15】上記蓋体の連結部の説明図である。
【図16】中皿の斜視図である。
【図17】従来例を示す断面図である。
【図18】他の従来例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 容器本体
2 蓋体
2a 係合爪
3 薄板
14a 係合凸部
14b 前側傾斜面
22 摺接用傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に化粧料収容孔部が形成された容器本体と、上記容器本体の上面を蓋する蓋体とを備え、上記容器本体の一端部に係合部を設け、上記蓋体の一端部に、上記係合部に着脱自在に係合する被係合部を設け、上記容器本体の他端部に上記蓋体の他端部を回動自在に連結した化粧料容器であって、上記容器本体と蓋体との間に、上記容器本体の他端側から一端側に向かって移動可能な可動体を配設し、この可動体の他端部を上記容器本体の他端側に延設して上記容器本体もしくは蓋体の他端部に露呈させ、この露呈する可動体の部分を上記容器本体の一端側に向かって押圧することにより上記可動体を上記容器本体の一端側に移動可能に構成し、上記容器本体の一端部の、上記係合部の近傍部分に、上記容器本体の他端側に向かって下り傾斜状に傾斜する第1傾斜面を形成し、上記第1傾斜面に対応する上記可動体の一端部の部分に、上記移動時に上記第1傾斜面に摺接する第2傾斜面を形成したことを特徴とする化粧料容器。
【請求項2】
上記容器本体の一端部に切欠き凹部を形成し、この切欠き凹部の奥面に上記係合部を設けるとともに、上記奥面に対向する面に上記第1傾斜面を形成した請求項1記載の化粧料容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2007−159783(P2007−159783A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359286(P2005−359286)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)