説明

化粧板の曲面施工方法

【課題】フレキシブル性があり、曲面施工可能な化粧板を簡便かつ安全に施工する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、溶剤ゴム系接着剤及び水系マスチック接着剤を併用することを特徴とする化粧板の曲面施方法である。好ましい形態としては、端部に溶剤ゴム系接着剤を用いて端部以外は水系マスチック接着剤を用いることであり、水系マスチック接着剤が、アクリル系樹脂エマルジョン及びウレタン樹脂エマルジョンを含有することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレキシブル性があり、曲面施工可能な化粧板を簡便かつ安全に曲面に施工する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築内装用の化粧板として、合板等の木質基材の表面をDAP樹脂(ジアリルフタレート樹脂)でコーティングしたDAP化粧板、木質基材の表面に木目等の意匠をプリントとした紙やプラスチックフィルムをラミネートとしたラミネート化粧板、メラミン樹脂等を含浸した紙を積層圧締して成型された樹脂含浸化粧板等が挙げられる。
【0003】
化粧板を施工する際には通常接着剤が使用されるが、特許文献1、2ではビスや粘着テープを用いることにより作業性の改善を図る試みがなされている。これらの方法はいずれも平面部への施工にのみ対応できるものである。
【特許文献1】特開2004-114659
【特許文献2】特開平7-18818
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、化粧板を曲面に施工したいという要求があるが、施工後に化粧板が平らに戻ろうとする復元力が働くため平面に施工するよりも難易度が高く、施工方法としては初期接着力に優れる溶剤ゴム系接着剤を用いる工法に限られていた。しかしながら、溶剤ゴム系接着剤は有機溶剤を放散するため作業環境が悪く、両面塗布しなければならないため作業性が悪い、貼り合わせ後に化粧板をすらすことができないため位置合わせが難しい等の問題があった。
【0005】
本発明は前記課題に鑑み、フレキシブル性があり、曲面施工可能な化粧板を簡便かつ安全に施工する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、溶剤ゴム系接着剤及び水系マスチック接着剤を併用することを特徴とする化粧板の曲面施方法である。好ましい形態としては、端部に溶剤ゴム系接着剤を用いて端部以外は水系マスチック接着剤を用いることであり、水系マスチック接着剤が、アクリル系樹脂エマルジョン及びウレタン樹脂エマルジョンを含有することである。
【発明の効果】
【0007】
本発明からなる化粧板の曲面施工方法は溶剤ゴム系接着剤の使用量を低減できるため、作業環境への影響が少なく、両面塗布する面積を減少できるため作業性が向上する。さらに、水系マスチック接着剤部分から貼り合わせることにより、貼り合わせ後もずらしが可能であり、位置合わせを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の化粧板の曲面施工方法においては、溶剤ゴム系接着剤及び水系マスチック接着剤が併用される。溶剤ゴム接着剤は優れた初期接着力を有するため、化粧板の自重に加えて平らに戻ろうとする力が働く端部等にも使用できる。ただし、有機溶剤を含有することと、両面塗布しなければならないという欠点があり、使用は最小限に留められるべきである。水系マスチック接着剤は有機溶剤を含有せず、片面塗布にて化粧板を保持できる程度の初期接着力を有し、貼り合わせ直後であればずらしも可能なため、端部以外に使用することができる。従って、作業環境、作業性の観点から端部には溶剤ゴム系接着剤を用い、端部以外は水系マスチック接着剤を用いることが好ましい。さらに、端部以外の水系マスチック接着剤部分から貼り合わせを行うことにより、貼り合わせ後にずらしが可能なため位置合わせが容易になるという特徴を有する。
【0009】
本発明に用いる溶剤ゴム系接着剤は、クロロプレンゴム及び粘着付与樹脂を主成分とし、金属酸化物、加硫剤、加硫促進剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、老化防止剤、安定剤、補強剤、架橋剤等を適宜添加したものを有機溶剤に溶解したものである。有機溶剤としては従来トルエンやキシレンが用いられてきたが、厚生労働省指定13物質やPRTR法における第一種指定化学物質に該当するため好ましくない。メチルシクロへキサンに対してアセトンやMEK(メチルエチルケトン)などのケトン系、酢酸エチルや酢酸ブチルなどエステル系、n−ヘキサンやシクロヘキサンなどの炭化水素系、メタノールやエタノールなどのアルコール系溶剤を混合させたものが好ましく、接着剤の安定性や接着強度、乾燥性等の点から有機溶剤中のメチルシクロへキサンが5〜50%とすることがより好ましい。
【0010】
本発明に用いる水系マスチック接着剤としては、アクリル系樹脂エマルジョン及びウレタン樹脂エマルジョンを含有することが好ましい。アクリル系樹脂エマルジョンは粘着性により初期接着力に寄与し、ガラス転移温度(Tg)が−20度以下であることが好ましい。ウレタン樹脂エマルジョンは化粧板への密着性に寄与し、難接着性である樹脂含浸化粧板を接着する際に顕著に効果が現れる。水系マスチック接着剤にはロジン系樹脂やテルペン系樹脂等から構成される粘着付与剤を添加することができ、硬化後の皮膜強度を向上させ、最終接着強度を向上させられる。また、カオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸カルシウム、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉、椰子粉等の充填材を用いることができ、接着剤の粘度、構造粘性を調整して接着剤組成物の塗布性を調整することができる。さらに、増粘剤、分散剤、レベリング剤、耐水化剤、防腐剤、消泡剤、界面活性剤、殺菌剤、可塑剤、pH調整剤、着色顔料、防錆剤、老化防止剤、難燃剤、架橋剤としてイソシアネート化合物、エポキシ化合物、シランカップリング剤、オキサゾリン系化合物、金属酸化物等を適宜使用することができる。
【0011】
本発明に用いる化粧板は曲面状を保つことができるものであれば特に制限を受けず使用することができる。
【0012】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。当然、本発明は実施例に何ら制約されるものではない。
【実施例】
【0013】
クロロプレンゴムとして、A90(電気化学工業株式会社製、商品名)100重量部、酸化マグネシウム4重量部、及び酸化亜鉛5重量部を9インチロールにて20分間混練りして練りゴムを得た。前記練りゴム109重量部、フェノール樹脂として、CKM−1634(昭和高分子株式会社製、商品名)30重量部、老化防止剤(ジフェニルアミン系)2重量部を、メチルシクロヘキサン88重量部、n−へキサン88重量部、酢酸エチル176重量部、アセトン88重量部からなる溶剤に溶解し、接着剤Aとした。
【0014】
アクリル系樹脂エマルジョンとして、ECX−100−13(不揮発分58%、Tg−45℃、ガンツ化成株式会社製)60重量部、ウレタン系樹脂エマルジョンとして、パーマリンUA−150(不揮発分30%、三洋化成工業株式会社製、商品名)20重量部、粘着付与剤として、KNS120(重合ロジン系エマルジョン、不揮発分50%、軟化点120℃、荒川化学工業株式会社製、商品名)30重量部、充填材として、ホワイトンSB(炭酸カルシウム、比表面積10000cm2/g、白石工業株式会社製、商品名)80重量部、増粘剤として、ラテコールD(BASFジャパン株式会社製、商品名)2.5重量部を混合し、接着剤Bとした。
【0015】
エチレン酢酸ビニル共重合系樹脂エマルジョンとして、#80(電気化学工業株式会社製、商品名)を接着剤Cとした。
接着条件
合板にて作製した半径300mm、中心角90°の曲面部と曲面部の両端にそれぞれ300mmの平面部を有する高さ900mmの扇形コーナー(図1)を下地とし、以下の条件にて曲面に沿って曲面施工用メラミン化粧板(アイカ工業株式会社製、1mm厚)を接着した。なお、圧締は手で押さえつけることにより行った。
実施例1
接着剤Aを下地、化粧板の端部100mmにそれぞれ200g/m2塗布し、5分乾燥した。その後、接着剤Bを下地側接着剤A未塗布部分(端部100mm以外の箇所)に400g/m2塗布し(図2)、中央部(接着剤Bの塗布部分)より貼り合わせを行い、圧締した。
比較例1
接着剤Aを下地、化粧板の全面にそれぞれ200g/m2塗布し、室温にて5分乾燥した後、貼り合わせ圧締した。
比較例2
接着剤Bを下地の全面に400g/m2塗布し、貼り合わせ圧締した。
比較例3
接着剤Aを下地、化粧板の端部100mmにそれぞれ200g/m2塗布し、5分乾燥した。その後、接着剤Cを下地側接着剤A未塗布部分(端部100mm以外の箇所)に400g/m2塗布し、中央部(接着剤Cの塗布部分)より貼り合わせを行い、圧締した。
比較例4
接着剤Cを下地の全面に400g/m2塗布し、貼り合わせ圧締した。
試験評価方法
貼り合わせ作業性
一度貼り合わせた後に位置合わせを想定したずらしを行い、ずらすことが可能であるものを○、不可能であるものを×とした。
納まり性
曲面へ化粧材を貼り合わせ圧締後、化粧材が納まっているものを○、浮きや剥離が発生したものを×とした。
接着性能
試験体を室温にて3日養生後、(40℃、90%RH雰囲気下に7日放置、40℃、30%RH雰囲気下に7日間放置)を2サイクル行い、異常がないものを○、浮きやはく離が発生したものを×とした。
有機溶剤放散量
試験に用いた曲面パネル1枚から放散される有機溶剤の量を、接着剤Aの使用量から計算した。
【0016】
【表1】

実施例1は貼り合わせ後にも位置ずらしが可能であり良好な作業性を有し、納まり性、接着性能も良好であった。また、溶剤ゴム系接着剤を全面に使用した場合と比較して有機溶剤の発生量が少なかった。比較例1は全面に溶剤ゴム系接着剤を使用した従来方法であり、接着性能には優れるものの、貼り合わせ後のずらしが不可能で有機溶剤の放散量も多かった。端部に溶剤ゴム系接着剤を使用していない比較例2及び比較例4は初期接着力が不足して納まりが悪かった。比較例3は納まりは良好であったものの、接着性能が不十分であった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】試験に用いた扇形コーナーの図。
【図2】扇形コーナーに接着剤を塗布した図。
【符号の説明】
【0018】
1 接着剤A
2 接着剤B
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明からなる化粧板の曲面施工方法は溶剤ゴム系接着剤の使用量を低減できるため、作業環境への影響が少なく、両面塗布する面積を減少できるため作業性が向上する。また、水系マスチック接着剤部分から貼り合わせるため、貼り合わせ後もずらしが可能であり、位置合わせを容易に行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤ゴム系接着剤及び水系マスチック接着剤を併用することを特徴とする化粧板の曲面施工方法
【請求項2】
端部に溶剤ゴム系接着剤を用い、端部以外は水系マスチック接着剤を用いることを特徴とする化粧板の曲面施工方法。
【請求項3】
前記水系マスチック接着剤が、アクリル系樹脂エマルジョン及びウレタン樹脂エマルジョンを含有することを特徴とする請求項1または2記載の化粧板の曲面施工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−75332(P2008−75332A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255398(P2006−255398)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】